(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】回転電機および駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20231205BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20231205BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20231205BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20231205BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20231205BHJP
H02K 5/06 20060101ALI20231205BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H02K5/24 Z
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60K6/26
B60K6/405
H02K5/06
B60K17/04 G
(21)【出願番号】P 2019208198
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】舟山 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】上村 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】澤口 慎司
(72)【発明者】
【氏名】堂薗 健次
(72)【発明者】
【氏名】横田 純一
(72)【発明者】
【氏名】池邨 将史
(72)【発明者】
【氏名】大木 崇生
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171640(JP,A)
【文献】特開2012-039763(JP,A)
【文献】特開2013-224082(JP,A)
【文献】特開2009-207258(JP,A)
【文献】特開昭61-049630(JP,A)
【文献】特開2020-018068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
B60K 6/48
B60K 6/547
B60K 6/26
B60K 6/405
H02K 5/06
B60K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータおよびロータと、前記ステータおよび前記ロータを収容する第1ケースとを備える回転電機であって、
前記第1ケースは、軸方向における一端側が開口されたハウジングと、前記ステータが固定されると共に前記ハウジングの前記一端側を覆うように前記ハウジングに固定されるカバーとを有し、
前記カバーは、内面から前記ハウジングの他端側に向かって突出する環状リブを有し、
前記環状リブには、前記ステータを締結するためのボルトが螺合される複数のボス部が周方向に間隔をおいて形成されて
おり、
前記環状リブの隣り合う2つの前記ボス部の間には、周方向に間隔をおいて等間隔に複数の切欠が形成されており、
前記切欠は、前記ハウジングの前記他端側で開口すると共に前記軸方向における長さが前記環状リブよりも短く形成されている、
回転電機。
【請求項2】
請求項
1記載の回転電機であって、
前記複数の切欠は、V字状に形成されている、
回転電機。
【請求項3】
請求項
1または2記載の回転電機であって、
前記カバーは、前記ステータを形成する材料よりも大きい熱膨張係数を有する材料により形成されている、
回転電機。
【請求項4】
請求項
1ないし3のうちの何れか1つの請求項に記載の回転電機であって、
前記環状リブの先端部には、前記ステータの位置決め部が形成されている、
回転電機。
【請求項5】
請求項
1ないし4のうちの何れか1つの請求項に記載の回転電機を備える駆動ユニットであって、
前記回転電機に接続された伝達軸の動力を出力軸に伝達する動力伝達装置を備え、
前記第1ケースは、前記動力伝達装置の第2ケースに固定される、
駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機および駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回転電機としては、ステータおよびロータと、ステータおよびロータを収容するケースとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この回転電機では、ケースは、軸方向における一端側が開口されたハウジングと、ステータが固定されると共にハウジングの一端側を覆うようにハウジングに固定されるカバーとを有する。カバーには、ステータを締結するためのボルトが螺合する複数のボス部が周方向に間隔をおいて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした回転電機が用いられる駆動ユニットにおいて、カバーのボス部周辺の剛性、ひいては、一体にされたステータおよびケースの剛性が低いと、駆動ユニットの共振周波数が低くなり、駆動ユニットの出力軸の回転数が低い領域(例えば、車両に搭載される場合、低車速領域)で振動や騒音が大きくなる可能性がある。
【0005】
本開示の発明は、回転電機が用いられる駆動ユニットの共振周波数を高くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の回転電機は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の回転電機は、
ステータおよびロータと、前記ステータおよび前記ロータを収容する第1ケースとを備える回転電機であって、
前記第1ケースは、軸方向における一端側が開口されたハウジングと、前記ステータが固定されると共に前記ハウジングの前記一端側を覆うように前記ハウジングに固定されるカバーとを有し、
前記カバーは、内面から前記ハウジングの他端側に向かって突出する環状リブを有し、
前記環状リブには、前記ステータを締結するためのボルトが螺合される複数のボス部が周方向に間隔をおいて形成されている、
ことを要旨とする。
【0008】
本開示の回転電機では、第1ケースは、軸方向における一端側が開口されたハウジングと、ステータが固定されると共にハウジングの一端側を覆うようにハウジングに固定されるカバーとを有し、カバーは、内面からハウジングの他端側に向かって突出する環状リブを有し、環状リブには、ステータを締結するためのボルトが螺合される複数のボス部が周方向に間隔をおいて形成されている。これにより、カバーのボス部周辺の剛性、ひいては、一体にされたステータおよび第1ケースの剛性を高くすることができる。したがって、回転電機が用いられる駆動ユニットの共振周波数を高くすることができる。この結果、駆動ユニットの出力軸の回転数が低い領域(例えば、車両に搭載される場合、低車速領域)で振動や騒音が大きくなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の回転電機を搭載するハイブリッド車両10の概略構成図である。
【
図2】ハイブリッド車両10のモータMGおよびクラッチC1周辺の断面図である。
【
図3】ケース70のフロントカバー80の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示の回転電機を有する駆動ユニットを搭載するハイブリッド車両10の概略構成図である。本開示のハイブリッド車両10は、図示するように、エンジン11と、モータ(回転電機)MGと、クラッチC1と、動力伝達装置15とを備える。ここで、実施例の「駆動ユニット」としては、モータMGおよび動力伝達装置15が該当する。
【0012】
エンジン11は、ガソリンや軽油などの燃料を用いて動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン11のクランクシャフト12は、ダンパ13を介して第1伝達軸14aに接続されている。ダンパ13は、捩り振動を減衰する複数のコイルスプリング(弾性体)を有する。
【0013】
モータMGは、周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ(図示省略)により回転駆動される。クラッチC1は、油圧駆動の摩擦クラッチとして構成されており、第1伝達軸14aとモータMGとの接続および接続の解除を行なう。
【0014】
動力伝達装置15は、トルクコンバータ16と、自動変速機(変速機構)17と、オイルポンプ18と、油圧制御装置19とを備える。トルクコンバータ16は、一般的な流体伝動装置として構成されており、モータMGに接続された第2伝達軸14bに取り付けられたポンプインペラと、自動変速機17の入力軸17iに接続されたタービンランナと、タービンランナからポンプインペラへの作動油の流れを整流するステータと、ステータの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチと、ポンプインペラとタービンランナとの接続および接続の解除を行なう油圧駆動のロックアップクラッチとを備える。このトルクコンバータ16は、第2伝達軸14bの動力を自動変速機17の入力軸17iにトルクを増幅して伝達したり、トルクを増幅することなく伝達したりする。
【0015】
自動変速機17は、例えば4段~10段変速の変速機として構成されており、入力軸17iと、駆動輪DWにデファレンシャルギヤDFを介して連結された出力軸17oと、複数の遊星歯車と、油圧駆動の複数の摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)とを備える。この自動変速機17は、入力軸17iに伝達された動力を複数段階に変速して出力軸17oから出力する。なお、自動変速機17に代えて、無段変速機が用いられるものとしてもよい。
【0016】
オイルポンプ18は、トルクコンバータ16のポンプインペラに取り付けられており、第2伝達軸14bの動力により駆動される。油圧制御装置19は、バルブボディや複数のバルブを有し、オイルポンプ18からの油圧を調圧してトルクコンバータ16のロックアップクラッチや自動変速機17のクラッチやブレーキに供給する。
【0017】
図2は、ハイブリッド車両10のモータMGおよびクラッチC1周辺の断面図である。
図2に示すように、モータMGは、ステータ20と、ステータ20の径方向内側に配置されるロータ30と、ステータ20およびロータ30を収容すると共にハウジング71およびフロントカバー80を有するケース70とを備える。
【0018】
ステータ20は、ステータコア21と、ステータコア21に巻回される三相コイル22とを備える。ステータコア21は、例えばプレス加工により円環状に形成された電磁鋼板を複数積層して積層方向に連結することにより一体に形成されており、ボルト25によりケース70のフロントカバー80に固定されている。
【0019】
ロータ30は、ロータコア31と、ロータコア31を保持する保持部材40とを備える。ロータコア31は、例えばプレス加工により円環状に形成された電磁鋼板を複数積層することにより形成されており、周方向に間隔をおいてそれぞれ軸方向に貫通するように形成された複数の貫通孔のそれぞれに永久磁石31aが埋設されている。ロータコア31の軸方向における両端側には、エンドプレート32,33が配置されている。
【0020】
保持部材40は、外側部材41と、外側部材41に溶接される内側部材45とを備える。外側部材41は、例えば鉄を鍛造、切削加工することにより形成され、筒状の筒状部42と、筒状部42の一端部(
図2における左端部)から径方向外側に延出されるフランジ部43と、筒状部42の軸方向における中央よりも他端側(
図2における右側)から径方向内側に延出される環状壁部44とを備える。ロータコア31は、焼き嵌めにより、エンドプレート32,33と共に以下のように筒状部42に取り付けられる。
【0021】
最初に、保持部材40の筒状部42の外径よりも若干小さい内径に形成したロータコア31を加熱し、ロータコア31の内径が筒状部42の外径よりも大きくなるようにロータコア31を熱膨張させる。続いて、エンドプレート32、ロータコア31、エンドプレート33を、フランジ部43側からこの順に、筒状部42を包囲すると共に互いに当接し且つエンドプレート32がフランジ部43に当接するように配置する。そして、ロータコア31を冷却すると、ロータコア31の収縮により、ロータコア31と筒状部42とが固定される。そして、エンドプレート33のカシメなどにより、エンドプレート33が筒状部42に固定される。
【0022】
内側部材45は、例えば鉄を鍛造、切削加工することにより形成され、環状壁部46と、環状壁部46の内周から軸方向における一方側(
図2における左側)に延出される筒状の筒状部47と、環状壁部46の筒状部47よりも径方向外側から軸方向における他方側(
図2における右側)に延出される筒状の筒状部48と、環状壁部46の筒状部48よりも径方向外側から軸方向における一方側に延出されると共に断面が三角形状の突出部49とを備える。
【0023】
環状壁部46の外周は、外側部材41の環状壁部44の内周に溶接により固定されている。筒状部47の内周は、第2伝達軸14bの外周にスプライン嵌合されている。筒状部48の外周と、ハウジング71の筒状部75の内周との間には、軸受90が配置されている。したがって、筒状部48は、軸受90を介してハウジング71により回転自在に支持される。
【0024】
保持部材40のフランジ部43のロータコア31とは反対側には、ボルト50により連結部材51が固定されている。連結部材51は、例えば鉄により形成され、外周部にフランジ部43との固定部(ボルト孔)を有すると共に板状の環状壁部52と、環状壁部52の内周から軸方向における一方側に延出される筒状の筒状部53とを有する。筒状部53の外周とフロントカバー80の筒状部85の内周との間には、軸受91が配置されており、筒状部53の内周と第1伝達軸14aとの間には、軸受92が配置されている。これにより、連結部材51やこれに連結される保持部材40などは、軸受91を介してフロントカバー80により回転自在に支持され、第1伝達軸14aは、軸受92を介して連結部材51により相対回転自在に支持される。
【0025】
これにより、保持部材40の筒状部42の径方向内側には、保持部材40の環状壁部44,46と連結部材51の環状壁部52とにより軸方向における両側が区画される空間が形成される。
【0026】
クラッチC1は、第1伝達軸14aに連結されたクラッチハブ61と、第2伝達軸14bに連結されると共にクラッチドラムとしても機能する保持部材40と、複数の摩擦プレート63と、摩擦プレート63と交互に配設される複数のセパレータプレート64と、バッキングプレート65と、スナップリング66と、セパレータプレート64および摩擦プレート63を押圧して摩擦係合させるピストン67と、複数のリターンスプリングSPと、キャンセルプレート(キャンセル油室画成部材)68とを備える。
【0027】
クラッチハブ61は、筒状の筒状部61aと、筒状部61aの一端部から径方向内側に延出される環状壁部61bとを備える。筒状部61aの外周面には、スプライン61sが形成されている。環状壁部61bの内周は、第1伝達軸14aに溶接により連結されている。
【0028】
クラッチドラムとしても機能する保持部材40の筒状部42の環状壁部44よりもフランジ部43側の内周面には、スプライン42sが形成されている。そして、そのスプライン42sには、径方向外側に向かって凹む環状凹部42aが形成されている。環状凹部42aは、ロータ30の径方向からみて、フランジ部43のロータコア31側の端面(
図2における右側の端面)とロータ30の軸方向に重なっている。
【0029】
複数の摩擦プレート63は、それぞれ両面に摩擦材が貼着された環状部材であり、外周部が保持部材40(クラッチドラム)の筒状部42のスプライン42sに嵌合される。これにより、複数の摩擦プレート63は、筒状部42と一体に回転すると共に筒状部42により軸方向に移動可能に支持される。
【0030】
複数のセパレータプレート64は、それぞれ両面が平滑に形成された環状部材であり、内周部がクラッチハブ61のスプライン61sに嵌合される。これにより、複数のセパレータプレート64は、クラッチハブ61と一体に回転すると共にクラッチハブ61により軸方向に移動可能に支持される。
【0031】
バッキングプレート65は、環状部材であり、複数の摩擦プレート63のうちピストン67から最も遠い摩擦プレート63と当接可能に外周部が筒状部42のスプライン42sに嵌合される。スナップリング66は、筒状部42の環状凹部42aに装着(嵌合)される。このスナップリング66により、バッキングプレート65などの軸方向の移動(ピストン67から離間する側の移動)が規制される。
【0032】
ピストン67は、環状の受圧部67aと、受圧部67aの外周から軸方向におけるクラッチハブ61側に延出される筒状の筒状部67bと、筒状部67bから径方向外側に延出される押圧部67cとを備える。
【0033】
受圧部67aの内周面は、シール部材を介して保持部材40の筒状部47の外周面により軸方向に移動自在に支持される。受圧部67aの外周面は、シール部材を介して保持部材40の突出部49の内周面により軸方向に移動自在に支持される。保持部材40の環状壁部46および筒状部47,49とピストン67の受圧部67aとにより、クラッチC1の係合油室69aが画成される。係合油室69aは、油路(図示省略)を介して油圧制御装置19に接続されており、係合油室69aには、油圧制御装置19により調圧された係合油圧(作動油)が供給される。係合油室69aに係合油圧が供給されると、ピストン67は、係合油圧の作用によりキャンセルプレート68に向けて移動し、押圧部67cによりセパレータプレート64および摩擦プレート63を押圧し、これにより、クラッチC1が係合する。
【0034】
押圧部67cの外周面には、保持部材40の筒状部42のスプライン42sに遊嵌される複数の凹部(溝)が周方向に間隔をおいて形成されている。これにより、ピストン67を筒状部42に対して回り止めして両者を一体に回転させることができる。
【0035】
キャンセルプレート68は、ピストン67に対して保持部材40の環状壁部46とは反対側に配置された環状部材であり、その内周部は、スナップリングを用いて保持部材40の筒状部47に固定される。このキャンセルプレート68の外周面は、シール部材を介してピストン67の筒状部67bの先端部の内周面を軸方向に移動自在に支持する。ピストン67の受圧部67aおよび筒状部67bとキャンセルプレート68と保持部材40の筒状部47とにより、係合油室内で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室69bが画成される。遠心油圧キャンセル室69bは、油路(図示省略)を介して油圧制御装置19に接続されており、遠心油圧キャンセル室69bには、油圧制御装置19からドレンされた潤滑・冷却用の作動油の一部が保持部材40などの回転に伴って発生する遠心力により油路を介して供給される。
【0036】
複数のリターンスプリング69は、ピストン67の受圧部67aとキャンセルプレート68との軸方向における間に周方向に間隔をおいて配置され、ピストン67を摩擦プレート63およびセパレータプレート64から離間する側に付勢する。リターンスプリング69としては、例えばコイルばねが用いられる。
【0037】
ケース70は、軸方向におけるエンジン11側(
図2における左側)が開口するハウジング71と、ハウジング71の一端側(開口側)を覆うようにハウジング71に固定されるフロントカバー80とを備える。
【0038】
ハウジング71は、アルミニウム合金などを鋳造することにより形成され、環状壁部72と、環状壁部72の外周から軸方向におけるエンジン11側に延出される筒状部73と、筒状部73の先端側の外周から径方向外側、軸方向におけるエンジン11側、径方向外側の順に延出される延出部74と、環状壁部72の内周よりも径方向における若干外側から軸方向における筒状部73と同一側に延出される筒状部75と、環状壁部72の外周から軸方向におけるエンジン11から離間する側(動力伝達装置15側)に延出される筒状部76とを有する。
【0039】
筒状部73の先端部には、周方向に間隔をおいて、先端面が開口する雌ねじ孔73hが形成されている。延出部74には、周方向に間隔をおいて軸方向に貫通する複数のボルト孔(貫通孔)74hが形成されている。この延出部74は、複数のボルト(図示省略)がそれぞれ対応するボルト孔74hに挿通されて且つエンジン10のエンジンブロック110(
図1参照)に形成された対応する雌ねじ孔(図示省略)に螺合することにより、エンジンブロック110に固定される。
【0040】
筒状部75は、上述したように、軸受90を介して保持部材40の筒状部48を回転自在に支持する。筒状部76には、周方向に間隔をおいて軸方向に貫通する複数のボルト孔(貫通孔)76hが形成されている。この筒状部76は、複数のボルト(図示省略)をそれぞれ対応するボルト孔76hに挿通されて且つ動力伝達装置15のトランスミッションケース150(
図1参照)に形成された対応する雌ねじ孔(図示省略)に螺合することにより、トランスミッションケース150に固定される。
【0041】
図3は、ケース70のフロントカバー80の斜視図である。フロントカバー80は、ステータ20のステータコア21を形成する材料よりも大きい熱膨張係数を有する材料、例えば、アルミニウム合金などを鋳造することにより形成されている。このフロントカバー80は、
図2や
図3に示すように、板状の環状壁部81と、環状壁部81の外周から径方向外側に延出される延出部82と、環状壁部81の外周から軸方向におけるハウジング71側(
図2における右側)に延出される環状リブ83と、環状リブ83に周方向に間隔をおいて形成される複数(例えば、8個)のボス部84と、環状壁部81の内周よりも径方向における若干外側から軸方向におけるハウジング71側に延出される筒状部85とを備える。
【0042】
延出部82には、周方向に間隔をおいて複数のボルト孔(貫通孔)82hが形成されている。延出部82は、複数のボルト94がそれぞれ対応するボルト孔82hに挿通されて且つハウジング71の筒状部73の対応する雌ねじ孔73hに螺合することにより、ハウジング71の筒状部73に固定される。
【0043】
環状リブ83のそれぞれのボス部84の周方向における両側には、環状リブ83の先端部の外周から軸方向に延出される延出部83aが形成されている。環状リブ83の内径は、ステータコア21の外径よりも小さく設計されており、延出部83aの内径は、ステータコア21の外径よりも僅かに大きく設計されている。
【0044】
また、環状リブ83の隣り合う2つのボス部84の間には、それぞれ、先端側で開口すると共に軸方向における長さが環状リブ83よりも短い(例えば、環状リブ83の半分程度の)V字状の切欠83bが形成されている。具体的には、複数の切欠83bは、環状リブ83の周方向において等間隔に形成されている。なお、切欠83bの形状は、V字状に限定されるものではなく、適宜設計される。
【0045】
複数のボス部84には、それぞれ雌ねじ孔84hが形成されている。ステータコア21は、軸方向における一端側(
図2における左側)が複数の延出部83aの内周により位置決めされ、複数のボルト25がそれぞれステータコア21の対応するボルト孔21hに挿通されて且つ複数のボス部84の対応する雌ねじ孔84hに螺合することにより、フロントカバー80の複数のボス部84に固定される。
【0046】
なお、クラッチC1の摩擦プレート63やセパレータプレート64は、クラッチハブ61とキャンセルプレート68との間や、クラッチハブ61の筒状部61aに形成された油孔などを介して供給される作動油により、潤滑・冷却が行なわれる。そして、この作動油のうちの少なくとも一部は、保持部材40の筒状部42に形成された油孔や、ロータ30のロータコア31と保持部材40の筒状部42やフランジ部43との間を流通することにより、ロータ30の冷却が行なわれる。さらに、この作動油のうちの少なくとも一部がステータ20のコイルエンド22などに供給されることにより、ステータ30の冷却が行なわれる。
【0047】
本実施形態では、ケース70のフロントカバー80は、環状リブ83と、環状リブ83に周方向に間隔をおいて形成された複数のボス部84とを有する。そして、ステータコア21は、複数のボルト25がそれぞれステータコア21の対応するボルト孔21hに挿通されて且つ複数のボス部84の対応する雌ねじ孔84hに螺合することにより、フロントカバー80の複数のボス部84に固定される。このように環状リブ83を設けることにより、フロントカバー80の複数のボス部84周辺の剛性、ひいては、一体にされたステータ20およびケース70(ハウジング71およびケース80)の剛性を高くすることができる。したがって、モータMGおよび動力伝達装置15を有する駆動ユニットの共振周波数を高くすることができる。この結果、出力軸17oの回転数が低い領域(低車速領域)で振動や騒音が大きくなるのを抑制することができる。
【0048】
また、実施形態では、ケース70のフロントカバー80は、ステータ20のステータコア21を形成する材料よりも大きい熱膨張係数を有する材料により形成されており、フロントカバー80の環状リブ83の隣り合う2つのボス部84の間には、それぞれ、先端側で開口する切欠83bが形成されている。これにより、切欠83bを形成しないものに比してフロントカバー80のボス部84周辺の剛性が低くなるから、モータMGなどの発熱によりフロントカバー80が熱膨張するときに、フロントカバー80の変形がボルト25により引き留められやすくなる。しかも、複数の切欠83bがV字状に形成されることにより、フロントカバー80の剛性をある程度確保しつつ、フロントカバー80の熱膨張を複数の切欠83bでより吸収しやすくすることができる。
【0049】
これにより、複数のボルト25が複数のボス部84の対応する雌ねじ孔84hに対して緩むのを抑制することができる。また、ケース70内の作動油(クラッチC1やモータMGなどに供給された作動油)を、フロントカバー80の下部の切欠83bを介して循環させることができる。なお、複数の切欠83bが環状リブ83の周方向において等間隔に形成されていることにより、駆動ユニットの振動や騒音の低減と、複数のボルト25の複数の雌ねじ孔84hに対する緩みの抑制と、の両立を適切に図ることができる。
【0050】
さらに、実施形態では、フロントカバー80の環状リブ83の先端部の外周から軸方向に延出される複数の延出部83aが形成されている。この複数の延出部83aがステータコア21の位置決め用に用いられることにより、ステータ20のステータコア21との締結を容易に行なうことができる。
【0051】
実施形態では、フロントカバー80の環状リブ83の隣り合う2つのボス部84の間に、それぞれ切欠83bが形成されるものとした。即ち、ボス部84の数と切欠83bの数が同一になるものとした。しかし、ボス部84の数に比して切欠83bの数が少ないものとしてもよい。この場合でも、複数の切欠83bが環状リブ83の周方向において等間隔に形成されるのが好ましい。例えば、ボス部84が6個の場合には、3個の切欠83bが120度ごとに形成され、ボス部84が8個の場合には、4個の切欠83bが90度ごとに形成されるものとしてもよい。また、環状リブ83に切欠83bが形成されないものとしてもよい。
【0052】
実施形態では、フロントカバー80は、複数の延出部83aを有するものとしたが、こうした複数の延出部83aを有しないものとしてもよい。
【0053】
以上説明したように、本開示の回転電機は、ステータ(20)およびロータ(30)と、前記ステータ(20)および前記ロータを収容する第1ケース(70)とを備える回転電機(MG)であって、前記第1ケース(70)は、軸方向における一端側が開口されたハウジング(71)と、前記ステータ(20)が固定されると共に前記ハウジング(71)の前記一端側を覆うように前記ハウジング(71)に固定されるカバー(80)とを有し、前記カバー(80)は、内面から前記ハウジング(71)の他端側に向かって突出する環状リブ(83)を有し、前記環状リブ(83)には、前記ステータ(20)を締結するためのボルト(25)が螺合される複数のボス部(84)が周方向に間隔をおいて形成されていることを要旨とする。
【0054】
本開示の回転電機では、第1ケースは、軸方向における一端側が開口されたハウジングと、ステータが固定されると共にハウジングの一端側を覆うようにハウジングに固定されるカバーとを有し、カバーは、内面からハウジングの他端側に向かって突出する環状リブを有し、環状リブには、ステータを締結するためのボルトが螺合される複数のボス部が周方向に間隔をおいて形成されている。これにより、カバーのボス部周辺の剛性、ひいては、一体にされたステータおよび第1ケースの剛性を高くすることができる。したがって、回転電機が用いられる駆動ユニットの共振周波数を高くすることができる。この結果、駆動ユニットの出力軸の回転数が低い領域(例えば、車両に搭載される場合、低車速領域)で振動や騒音が大きくなるのを抑制することができる。
【0055】
本開示の回転電機において、前記環状リブ(83)の隣り合う2つの前記ボス部(84)の間には、周方向に間隔をおいて等間隔に複数の切欠(83b)が形成されているものとしてもよい。こうすれば、ステータとカバーとを締結するためのボルトがボス部に対して緩むのを抑制することができる。また、回転電機に供給される作動油(冷却媒体)を第1ケースの下部の切欠を介して循環させることができる。
【0056】
この場合、前記複数の切欠は、V字状に形成されているものとしてもよい。こうすれば、カバーの剛性をある程度確保しつつ、カバーの熱膨張を複数の切欠でより吸収しやすくすることができる。
【0057】
また、この場合、前記カバー(80)は、前記ステータ(20)を形成する材料よりも大きい熱膨張係数を有する材料により形成されているものとしてもよい。カバーがステータに比して熱膨張しやすいから、環状リブに複数の切欠を設けて、ステータとカバーとを締結するためのボルトがボス部に対して緩むのを抑制することの意義がより大きい。
【0058】
本開示の回転電機において、前記環状リブ(83)の先端部には、前記ステータ(20)の位置決め部(83a)が形成されているものとしてもよい。こうすれば、ステータとカバーとの締結をより容易に行なうことができる。
【0059】
本開示の駆動ユニットは、前記回転電機(MG)に接続された伝達軸(14b)の動力を出力軸(17o)に伝達する動力伝達装置(15)を備え、前記第1ケース(70)は、前記動力伝達装置(15)の第2ケース(150)に固定されることを要旨とする。本開示の駆動ユニットでは、上述の何れかの態様の本開示の回転電機を備えるから、本開示の回転電機が奏する効果と同様の効果を奏することができる。
【0060】
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、回転電機やこれを有する駆動ユニットの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 ハイブリッド車両、11 エンジン、12 クランクシャフト、13 ダンパ、14a 第1伝達軸、14b 第2伝達軸、15 動力伝達装置、16 トルクコンバータ、17 自動変速機、17i 入力軸、17o 出力軸、18 オイルポンプ、19 油圧制御装置、20 ステータ、21 ステータコア、21h ボルト孔、22 三相コイル、25,50,94 ボルト、30 ロータ、31 ロータコア、31a 永久磁石、32,33 エンドプレート、40 保持部材、41 外側部材、42,47,48,53,61a,73,75,85 筒状部、42a 環状凹部、42s,61s スプライン、43 フランジ部、44,46,52,61b,72,81 環状壁部、45 内側部材、49 突出部、51 連結部材、61 クラッチハブ、63 摩擦プレート、64 セパレータプレート、65 バッキングプレート、66 スナップリング、67 ピストン、67a 受圧部、67c 押圧部、68 キャンセルプレート、69 リターンスプリング、69a 係合油室、69b 遠心油圧キャンセル室、70 ケース、71 ハウジング、73h,84h 雌ねじ孔、74,82,83a 延出部、74h,82h ボルト孔、80 フロントカバー、83 環状リブ、83b 切欠、84 ボス部、90,91,92 軸受、110 エンジンブロック、150トランスミッションケース、C1 クラッチ。