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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231205BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231205BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/175 503
B41J2/01 129
B41J2/01 401
B41J2/17
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019209397
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079638
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹花 宗一郎
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-313654(JP,A)
【文献】特開2006-213061(JP,A)
【文献】特開2008-144349(JP,A)
【文献】特開2015-116776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0188562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
インク貯留部から前記インクジェットヘッドに供給される前記インクを、流量調整しながら前記インクジェットヘッドに供給する圧力制御部と、
前記インクジェットヘッドから突出して設けられ、前記インクを前記インクジェットヘッドへ流通させるための突出流路が形成された突出部と、
前記インクを前記突出部の前記突出流路へと供給するインク流路部と、を有し、
前記インク流路部は、前記インクを加熱するインク加温ブロックを備え、
前記突出部の外部には、前記インク加温ブロック自身、または前記インク加温ブロックとは別体に形成されるとともに当該インク加温ブロックからの熱が伝導され、伝導された熱で前記突出部を加温する伝導部が隣接して配設され、
前記圧力制御部は、前記インク加温ブロックより上方に配置され、水頭差により前記インク流路部に前記インクを供給するものであり、
前記突出部は、前記インクジェットヘッドの上方に突出して設けられているインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記伝導部は、前記インク加温ブロックとは別体であり、
前記インク加温ブロックは、前記突出部の外部をシールするシール部材を備え、
前記シール部材は、前記伝導部により位置決めされる、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記伝導部は、前記突出部の周囲を包囲するように配設される、
請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記突出部は、内部に前記インクを流通させるための突出流路を有し、
前記インク加温ブロックは、内部に前記インクを流通させるための加温流路を有し、
前記突出流路の流路断面積は、前記加温流路の流路断面積より小さい、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドから突出して設けられ、前記インクを前記インクジェットヘッドへ流通させるための突出部と、
前記インクを前記突出部へと供給するインク流路部と、を有し、
前記インク流路部は、前記インクを加熱するインク加温ブロックを備え、
前記インク加温ブロックは、前記インクを流通させるための加温流路を備え、
前記突出部は、内部に前記インクを流通させるための突出流路を備え、
前記突出流路の流路断面積は、前記加温流路の流路断面積より小さく、
前記インクは、インク貯留部から水頭差により前記インク流路部に前記インクを供給するものであり、
前記突出部は、前記インクジェットヘッドの上方に突出して設けられているインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インクは紫外線の照射により硬化するUVインクである、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて高い粘度を有するインクを吐出させて行う印刷は、インクジェットヘッドへインクを供給する流路にてインクを加熱して粘度を低下させ、流動性を向上させることによりインクジェットヘッドに供給して行われる。
【0003】
特許文献1には、予熱プレートを備えるインク供給部と、補助ヒータを備えるプリントヘッドチップ等と、インク供給装置とプリントヘッドチップ等とを連結するインクホースとを有するインクジェットプリントヘッドパッケージの技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-213061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インク供給装置とプリントヘッドチップ等とを接続する突出部ではインクが加熱されないため、インクの粘度が増大し、流動性が維持できないことがあった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、突出部は、インク加温ブロック自身、または前記インク加温ブロックとは別体に形成される伝導部が隣接して配設される伝導部から熱が移動することにより、内部を流通するインクを加熱して粘度の増大を防止し、流動性を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから突出して設けられ、前記インクを前記インクジェットヘッドへ流通させるための突出部と、前記インクを前記突出部へと供給するインク流路部と、を有し、前記インク流路部は、前記インクを加熱するインク加温ブロックを備え、前記突出部の外部には、前記インク加温ブロック自身、または前記インク加温ブロックとは別体に形成されるとともに当該インク加温ブロックからの熱が伝導される伝導部が隣接して配設される。
【0008】
上記課題を解決するためのインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから突出して設けられ、前記インクを前記インクジェットヘッドへ流通させるための突出部と、前記インクを前記突出部へと流通するためのインク流路部と、を有し、前記インク流路部は、前記インクを加熱するインク加温ブロックを備え、前記インク加温ブロックは、前記インクを流通させるための加温流路を備え、前記突出部は、内部に前記インク流路部を構成する突出流路を備え、前記突出流路の流路断面積は、前記加温流路の流路断面積より小さい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェットプリンタは、突出部が、インク加温ブロックから熱が移動する隣接して配設される伝導部を有するので、突出部を加熱することができる。これにより、インクジェットプリンタは、突出部の内部を流通するインクを加熱することができるので、突出部においても、インク加温ブロックでのインクの粘度を維持し、インクの流動性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施例に係るインクジェットプリンタの斜視図である。
図2図2は、本実施例に係るインクジェットプリンタのキャリッジの概略正面図である。
図3図3は、本実施例に係るインクジェットプリンタの要部の右側面断面図である。
図4図4は、本実施例に係る加温流路および突出流路におけるインクの伝熱面積を示す概念図である。
図5図5は、本実施例の変形例に係る突出流路の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施例について、図を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、本実施例のみに限定されるものではない。
【0012】
<インクジェットプリンタ>
以下に、本実施例に係るインクジェットプリンタについて、図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施例に係るインクジェットプリンタの斜視図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタの要部の構成を説明するための概略平面図である。
【0013】
インクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、インクジェットヘッド300(以下、「ヘッド300」とする。)から、UV(UV;Ultra Violet)インクを印刷媒体3に対して吐出して印刷を行う。プリンタ1は、図2に示すように、ヘッドユニット2と、プラテン4と、キャリッジ5と、インク貯留部7と、貯留部接続部9と、ホース10と、キャリッジ駆動部11と、を有する。
【0014】
以下の説明では、印刷媒体3の送り方向をX方向、ヘッド300の移動する方向をY方向、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向とする。また、X方向において、図1におけるプリンタ1の正面方向をX+方向、プリンタ1の背面方向をX-方向とする。また、Y方向において、図1におけるプリンタ1の左側面方向をY+方向、プリンタ1の右側面方向をY-方向とする。また、Z方向において、図1におけるプリンタ1の鉛直方向と逆方向をZ+方向、プリンタ1の鉛直方向をZ-方向と称する。また、X方向およびY方向により構成される面をXY面と称する。XY面に沿う方向を水平方向と称する。
【0015】
インク貯留部7は、図1に示す通り、貯留部接続部9に対して流出口が下向きに取り付けられる。インク貯留部7のインクは、貯留部接続部9に取り付けられたホース10を流通し、キャリッジ5に搭載される圧力制御部100に送られる。ここで、貯留部接続部9に取り付けられたインク貯留部7の高さは、圧力制御部100より高い位置となっている。なお、インク貯留部7および貯留部接続部9は、キャリッジ5に搭載されてもよい。
【0016】
インク貯留部7は可撓性を有する材料で構成される。インク貯留部7は、貯留部接続部9に気密に取り付けられる。インク貯留部7は、インクの残量が減少した場合、内部の空気の圧力を一定に保つよう構成されている。
【0017】
インク貯留部7を有する貯留部接続部9から供給されるインクは、UVインクを含む。UVインクの粘度は、高い温度依存性を有しており、常温においては高い粘度であるが、加熱することで粘度が低下する。すなわちUVインクは加熱することで、流動性を向上させることができる。ここで、UVインクとは、UVを照射すると硬化する性質を有するインクである。
【0018】
UVインクは、着色剤である顔料と、重合して被膜を形成する材料であるモノマーと、UV光を吸収してモノマーの重合反応をスタートさせる光重合開始剤と、印刷後のインクの調整をする調整剤とを含んでおり、紫外線硬化性を有している。UVインクは、紫外線を照射されると光重合開始剤が反応してモノマーの重合反応をスタートさせて重合し、硬化する。
【0019】
ホース10は、一端が貯留部接続部9に接続し、他端がヘッドユニット2の圧力制御部100に接続している。ホース10は、キャリッジ5がY+方向またはY-方向へ移動するのに応じて、水平方向に屈曲して追従する。
【0020】
ヘッドユニット2は後述するプラテン4に対してインクを吐出する。ヘッドユニット2は、図2に示すように、圧力制御部100と、インク加温ブロック200と、伝導部210と、ヘッド300と、突出部310とを有する。ヘッドユニット2は、後述するキャリッジ5に搭載される。
【0021】
圧力制御部100は、インク貯留部7から供給されるインクをインク加温ブロック200に流通させる。圧力制御部100は、インクを流通させるための制御流路110と、バッファ120と、サックバック130とを有している。圧力制御部100は、インク貯留部7よりも下側に配置されている。ここで、インクは、図3に示すインク貯留部7におけるインクの液面の高さと、圧力制御部100の入口におけるインクの高さとの水頭差hによって、インク貯留部7から圧力制御部100に流通される。
【0022】
圧力制御部100は、インクを流通させる際において、インク貯留部7から供給されるインクの流量がヘッド300から吐出するインクの量より多い場合は、バッファ120の容量を大きくすることにより余剰したインクをバッファに保持する。また、圧力制御部100は、インク貯留部7から供給されるインクの流量がヘッド300から吐出するインクの量より少ない場合には、バッファ120の容量を小さくすることにより、バッファに保持しているインクを加えて供給する。これによりヘッド300から吐出するインクの量の急な増減に対応することができる。また、圧力制御部100は、ヘッド300からのインクの吐出が行われない場合には、サックバック130により、バッファ120の容積を大きくして圧力制御部100からヘッド300までの間のインクを、少し引き戻す動作を行う。
【0023】
<インク加温ブロック>
インク加温ブロック200は、圧力制御部100から供給されるインクを加熱する。インク加温ブロック200は、図3に示すように、内部にインクを流通させるための加温流路220を有する。加温流路220は流入口222と接続口230とをつなぐ。インク加温ブロック200は、接続口230から続く接続端面232を有している。インク加温ブロック200は、接続端面232に、シール部材260を取り付けるための穴234を有している。インク加温ブロック200は、シートヒータ240を側面に備えている。インク加温ブロック200は、固定部250をキャリッジ5に対してネジで締結されて固定される。
【0024】
インク加温ブロック200が内部に有する加温流路220は、図3によると、加温流路220は、流入口222からZ-方向に沿う第1加温経路224と、第1加温経路224から続いてY+方向に沿う第2加温経路226と、第2加温経路226から続いてZ-方向に沿い接続口230に到達する第3加温経路228とから構成されている。加温流路220を有するインク加温ブロックは200、後述するシートヒータ240により加熱される。すなわち、加温流路220を流通するインクは、加温流路220により加熱されて粘度が低下し、流動性が向上する。
【0025】
以下の説明において、加温流路220は、特に断りがない限り、第3加温経路228を指すものとする。加温流路220の流路径寸法をdと表す。加温流路220の流路径寸法dは、例えばφ2.2mmである。インク加温ブロック200は、加温流路220を複数有しており、複数のインク貯留部7から、圧力制御部100を介して、インクがそれぞれの加温流路220に供給されるよう構成されてもよい。
【0026】
本実施例では加温流路220の流路断面形状が流路径寸法dを有する円形状であり、また突出流路312の流路断面形状が流路径寸法dを有する円形状である場合について、それぞれ説明を行う。但し、加温流路220および突出流路312の流路断面形状は円形状に限られない。すなわち、加温流路220および突出流路312の流路断面形状が円形状以外の場合には、それぞれの流路断面形状を流路径寸法dおよび流路径寸法dを有する円形状に相当させて、本実施例に適用させることができる。ここで、流路断面形状を円形状に相当させる場合の径寸法は、例えば相当させる円形状の面積と流路断面形状の面積とが等価であるとして算出する。
【0027】
インク加温ブロック200の材料は、熱を伝えやすい材料でできており、例えばアルミニウム合金である。インク加温ブロック200は、例えば、全体形状が鋳型で成形加工された後、流入口222、加温流路220および接続口230、穴234、および接続端面232等が切削加工により設けられる。切削加工で生じた不要な穴等は適宜封止される。
【0028】
シートヒータ240は、インク加温ブロック200を加熱する。シートヒータ240は、可撓性を有しており、主にインク加温ブロック200の側面に配置されている。具体的には、図3によると、シートヒータ240は、インク加温ブロック200のX-方向における端面からX+方向における端面にかけて、第2加温経路223に沿うよう、インク加温ブロック200のY+方向における側面を含んで覆うように配置される。
【0029】
シートヒータ240は、例えば電熱線をシリコンラバーで両面から覆うことで構成されている。また、シートヒータ240は、温度センサを備えている。シートヒータ240は、供給電圧を調整することで、温度を調整することができる。温度センサは、インク加温ブロック200に備えられていてもよい。シートヒータ240の電力出力は、例えば36Wである。また、シートヒータ240の設定温度は、例えば48℃である。
【0030】
<シール部材>
シール部材260は、図3に示すように、インク加温ブロック200と突出部310とをシールして接続する。シール部材260は、例えばリング状のシールリングである。
シールリング(シール部材)260は、インク加温ブロック200の穴234に取り付けられる。シールリング260の外径寸法は、穴234の内径寸法に対応している。シールリング260の内径寸法は、突出部310の外径寸法に対応している。
【0031】
穴234に取り付けられたシールリング260は、伝導部210がインク加温ブロック200に固定されると、端面216により押圧されて変形し、穴234に対して位置が規制される。そして、ヘッド300がキャリッジ5に取り付けられると、突出部310の先端がシールリング260の内周を通りして接続口230と接続する。この時、突出部310は、シールリング260の内周の面を突出部310の外周の面で押圧している。突出部310により変形したシールリング260は、突出部310の先端部の外周の面と、穴234との隙間を塞ぐ。このようにして突出流路312は、加温流路220に対して接続される。
【0032】
<インク流路部>
インク流路部6は、図2に示すように、インク貯留部7と、貯留部接続部9と、ホース10と、圧力制御部100と、インク加温ブロック200と、を含む。
【0033】
<突出部>
突出部310は、図3に示すように、後述するヘッド300から突出して設けられている。突出部310は、内部にインクをヘッド300に流通させるための突出流路312を有する。突出流路312は、図3に示すように、加温流路220と接続する。突出部310は、インクをインク流路部6からヘッド300へ流通させる。
【0034】
突出部310は、管形状をなし、外周面および内周面を有する。突出部310の内周面により形成される流路は、突出流路312である。突出流路312の内周面の内径寸法はdである。突出部310は樹脂製であり、例えば射出成形により製作される。突出流路312の流路断面積は、加温流路220の流路断面積よりも小さく構成される。本実施例では突出流路312を流路径寸法dを有する円形状の場合について説明を行うが、突出流路312は円形状に限られない。
【0035】
<インクジェットヘッド>
ヘッド300は、突出部310から送られたインクを印刷媒体3に吐出する。ヘッド300は、図3に示すように、内部に内蔵ヒータ320と、ノズル330と、インク室340と、基板350と、断熱材352と、放熱器354と、ファン356と、ヘッドカバー360とを有している。ヘッド300は、キャリッジ5の底面にプラテン4と対面するよう配置されている。
【0036】
ノズル330は、ヘッド300のプラテン4と対する面に設けられ、インクを吐出する。ノズル330は、配列された複数の図示しない吐出穴と、吐出穴からインクを吐出させる図示しない圧電素子と、圧電素子を制御する基板350と、断熱材352とを有している。断熱材352は、内蔵ヒータ320と基板350との間に配置される。ノズル330の吐出穴からのインクの吐出は、圧電素子を制御する基板350により制御される。基板350は、断熱材352と接する面の反対面に、放熱器354およびファン356を有している。内蔵ヒータ320は、シートヒータ240と同様に構成される。内蔵ヒータ320の設定温度は、例えば45℃である。
【0037】
インク室340は、突出部310からのインクをノズル330の全面に供給する。インク室340は、ノズル330と内蔵ヒータ320との間に設けられており、ノズル330の面に対している。すなわち、インク室340のZ+方向の面は内蔵ヒータ320に接しており、インク室340のZ-方向の面は、ノズル330と接している。インク室340において、内蔵ヒータ320により加温されたインクがノズル330に供給される。ヘッド300におけるインクは、内蔵ヒータ320により加熱されることにより、流動性が高い状態を維持する。
【0038】
<伝導部>
伝導部210は、突出部310を加熱する。伝導部210は、インク加温ブロック200と一体に構成され、インク加温ブロック200から熱移動しやすいよう構成される。伝導部210は、インク加温ブロック200と別部材に構成される。伝導部210は、図3に示すように、インク加温ブロック200の接続端面232に配置される。伝導部210の材料は、熱伝導しやすい材料により構成されており、例えばアルミニウム合金である。伝導部210の材料は、インク加温ブロック200と同じ材料により構成されていてもよい。
【0039】
伝導部210は、図3に示すように、円筒形状をなし、伝導部210の外周212および内周214を有している。伝導部210の内周214の直径寸法は、後述する突出部310の外径寸法に対応する寸法となっている。伝導部210の内周214の直径寸法は、突出部310の外径寸法と対応する寸法となっている。伝導部210は、突出部310の周囲を、隣接して包囲することができる。
【0040】
伝導部210の端面216は、精密に研磨加工されている。伝導部210は、図示しない取付穴を有しており、インク加温ブロック200に対して取付穴を下側(Z-方向側)からネジで締結して固定される。なお、伝導部210は、インク加温ブロック200に対する位置決め構造を有してもよい。伝導部210は、例えばインロー構造を有していてもよい。これにより、伝導部210は、インク加温ブロック200に対して簡便に位置決めすることができる。
【0041】
また、本実施例においては、伝導部210がインク加温ブロック200と別部材の場合について説明したが、これに限られない。すなわち、伝導部210は、インク加温ブロック200の部材の一部であってもよい。この場合においても、インク加温ブロック200の部材の一部である伝導部210は、突出部310と隣接して配設される。また、この場合においても、伝導部210は、突出部310の周囲を、隣接して包囲するよう配設されてもよい。
【0042】
本実施例においては、伝導部210が円筒形状である場合について説明したが、これに限られない。伝導部210は、突出部310に隣接して配設されていればよい。ここで、「隣接して配設」とは、突出部310が伝導部210の隣に配設されており、突出部310と伝導部210との距離が、突出部310と伝導部210との間で熱の移動が可能な程度に接触するほど近いことを意味し、接触している状態を含む。伝導部210は、複数の構造体から構成されていてもよい。
【0043】
伝導部210は、図3によると、インク加温ブロック200と、キャリッジ5との間において突出部310に隣接して配設されているが、これに限られない。伝導部210は、インク加温ブロック200と、ヘッド300との間において突出部310に隣接して配設されてもよい。これにより、伝導部210は、より長い距離において、突出部310を加熱することができる。この場合において、キャリッジ5は、伝導部210が貫通して配設されるための、伝導部210の外周212の直径よりも大きい直径の穴を有する。
【0044】
キャリッジ5は、ヘッドユニット2が搭載される。キャリッジ5はヘッドユニット2を複数有していてもよい。キャリッジ5は、キャリッジ駆動部11により、印刷媒体3のY方向における幅全域に渡り、ガイドレール12に案内されてY+方向またはY-方向に移動する。キャリッジ5には、後述するシートヒータ240および内蔵ヒータ320等を制御するための図示しない制御部、および吐出されたUVインクを硬化させるための図示しないUV照射器を有している。
【0045】
キャリッジ駆動部11は、上述の通りキャリッジ5をY+方向またはY-方向に移動させる。キャリッジ駆動部11は、キャリッジ5の移動速度の調整および高い停止位置精度での停止が可能となっている。キャリッジ駆動部11は、例えば図示しないベルトアンドプーリ機構部と、モーターと、を備えている。
【0046】
プラテン4は、印刷媒体3が載置される。プラテン4は、印刷媒体3を送り方向(X+方向)に送るための送りローラー8を有している。プラテン4は、印刷動作に対応して印刷媒体3を送り方向(X+方向)に一定の長さ送る、いわゆる間欠動作を行う。
【0047】
印刷媒体3は、図2に示す通り、プラテン4に載置される。印刷媒体3は、ロール状に巻かれた状態でプリンタ1にセットされ、印刷動作に対応して引き出されてプラテン4に載置される。印刷媒体3の材料は、例えば紙、布帛または樹脂製フィルムである。印刷媒体3は、プリンタ1に対して単票の状態でセットされ、印刷動作に対応して供給されるよう構成されてもよい。
【0048】
<熱の移動について>
以下に、インク加温ブロック200からの熱が、伝導部210および突出部310を介してインクを加熱する仕組みについて説明する。まず、シートヒータ240により加熱されるインク加温ブロック200からの熱が、接続端面232と伝導部210の端面216との接触部分を介して、伝導部210へ移動する。インク加温ブロック200から端面216に移動した熱は、熱伝導により伝導部210内に拡がり、伝導部210の温度が上昇する。
【0049】
突出部310は、隣接して配設される伝導部210により、熱の移動が行われる。伝導部210から突出部310への熱の移動は、主に伝導部210の内周214と突出部310の外部との接触部分を介した熱伝導により行われる。伝導部210の内周214と突出部310の外部とが接触しない場合には、伝導部210から突出部310への熱の移動は、主に伝導部210の内周214から突出部310の外部への、熱伝達または熱放射により行われる。
【0050】
突出部310から突出流路312を流通するインクへの熱の移動は、まず、伝導部210から突出部310へと移動した熱が、突出部310内で熱伝導し、突出部310の温度が上昇する。ここで、その後、温度が上昇した突出流路312の壁面から突出流路312を流通するインクへ熱が移動する。突出流路312の壁面から突出流路312を流通するインクへの熱の移動は、熱伝達により行われる。このようにして、インク加温ブロック200の熱が、伝導部210および突出部310を介して、突出流路312へ移動し、突出流路312を流通するインクを加熱する。
【0051】
<流路断面積について>
以下に、突出流路312と、加温流路220との関係について、図4を参照して説明する。ここで、インク流路部6からヘッド300までの流路におけるインクの密度は一定とみなすことができる。また、インク流路部6からヘッド300までの流路におけるインクの流量は一定である。このため、流路断面積が小さい流路では、流路断面積が大きい流路よりも、流れるインクの流速が速くなる。この場合において、図4に示すように、加温流路220におけるインクの流れの流速をv、突出流路312におけるインクの流れの流速をvとすると、以下式(1)で表される。
/v=A/A・・・式(1)
【0052】
流路断面積について、図3を参照して、具体的に説明する。図3および図4に示すように、突出流路312の流路径寸法dは、加温流路220の流路径寸法dよりも小さい。すなわち、突出流路312の流路断面積Aは、加温流路220の流路断面積Aよりも小さい。加温流路220は、流路径寸法dがφ2.2mmの場合、加温流路220の流路断面積Aは約3.8mmとなる。突出流路312は、流路径寸法dがφ1.6mmの場合、流路断面積Aは約2mmとなる。
【0053】
この場合において、加温流路220の流路断面積Aおよび突出流路312の流路断面積Aを、式(1)に代入し、突出流路312におけるインクの流速vを求めると、加温流路220におけるインクの流れの流速vの約1.9倍となる。このように、突出流路312の流路断面積Aを加温流路220の流路断面積Aよりも小さくとることで、突出流路312において加温流路220よりも流動性を増大させることができる。
【0054】
別の見方をすると、突出流路312の流路断面積Aを加温流路220の流路断面積Aよりも小さくした場合、インクが突出流路312に留まる時間は、インクが加温流路220に留まる時間よりも短くなる。このため、突出部310と突出流路312を流通するインクとの間で熱エネルギーが移動する時間が、加温流路220と加温流路220を流れるインクとの間で熱エネルギーが移動する時間より短くなる。
【0055】
この場合について、具体的に説明する。突出流路312を流れるインクの温度Tが突出流路312の温度Tよりも高い場合、突出流路312を流れるインク持つ熱エネルギーは突出部310に移動する。ここで、上述したように突出流路312におけるインクの流速vは、加温流路220におけるインクの流速vより速いため、突出流路312においてインクから熱エネルギーが放出される時間が短い。このため、突出流路312では、インクから放出される熱エネルギーの量を加温流路220と同じ流路径寸法dである場合よりも抑制することができる。これにより、突出流路312におけるインクの粘度の増大を抑制することができ、インクの流動性を維持することができる。
【0056】
突出流路312を流れるインクの温度Tが突出流路312の温度Tよりも低い場合は、突出流路312を流通するインクは突出流路312からの熱エネルギーを受ける。これにより、突出部310におけるインクの粘度を低下させ、流動性を向上させることができる。
【0057】
また、加温流路220内の単位体積V当たりのインクが加温流路220の壁面から熱エネルギーを受ける伝熱面積をRとし、突出流路312内の単位体積V当たりのインクが突出流路312の壁面から熱エネルギーを受ける伝熱面積をRとすると式(2)となる。
=(d/d)・R・・・式(2)
すなわち、突出流路312内の単位体積V当たりの、インクが突出流路312の壁面から熱エネルギーを受ける伝熱面積Rよりも大きくなる。これにより、突出流路312では、加温流路220より効率よくインクが加熱される。
【0058】
ここで、突出流路312の流路径寸法dを、加温流路220の流路径寸法dより小さく構成することにより、インク加温ブロック200から熱が移動する伝導部210に隣接して配設される突出部310では、突出流路312の温度Tが、突出部310を流れるインクの温度Tよりも高い。このため、突出流路312では、インクを効率よく加熱することができる。
【0059】
<突出流路の形状について>
次に、突出流路312の形状について説明する。突出流路312の形状は、図3では、突出部310の全長に渡って同一の流路径寸法dで表されているが、これに限られない。突出部310の流路径寸法は、突出部310の全長における少なくとも一部において、加温流路220の流路径寸法dよりも小さければよい。突出部310の流路径寸法は、これにより、突出流路312を流れるインクの流速は、加温流路220におけるインクの流速より速くなるため、流動性を向上させることができる。
【0060】
また、突出部310の突出流路312の形状は、例えば、図5に示すように、突出部310の接続端面232と面する部分に、オリフィス状に流路径寸法dの部分を有しており、他の部分は加温流路220の流路径寸法dと同じ流路径寸法に構成されてもよい。また、突出部310は、突出部310の接続端面232と接する面においては流路径寸法dであり、例えば、全長において流路径寸法dから加温流路220の流路径寸法dと同径寸法へと一様に拡大して変化してもよい。また、突出部310の流路径寸法は、突出部310の接続端面232と接する面においてはdであり、例えば、全長において流路径寸法dから加温流路220の流路径寸法dと同じ寸法へと段階的に拡大して変化してもよい。
【0061】
<他の実施形態>
<組み立て方法>
本発明に係るプリンタ1のヘッドユニット2の組み立て方法について説明する。ヘッド300は、キャリッジ5に取り付けられたインク加温ブロック200に対して組み立てられる。すなわち、インク加温ブロック200の穴234にシール部材260が配置され、伝導部210がインク加温ブロック200に固定されることによりシール部材260が位置決めされる。その後、ヘッド300の突出部310が、下側から取り付けられる。突出部310は、キャリッジ5に設けられた開口および伝導部210の内周を貫通し、インク加温ブロック200の接続口230に接続される。ここで、突出部310の先端にあるシール面は、シール部材260の内周を押圧することによりシールされる。その後、ヘッド300は、キャリッジ5に対して固定される。
【0062】
<シール部材を備える突出部>
シール部材260は、インク加温ブロック200ではなく、突出部310の先端部に取り付けられてもよい。この場合において、伝導部210は、インク加温ブロック200と別部材に構成される。シール部材260は、予め伝導部210が隣接して配設された突出部310の、先端部に取り付けられる。すなわち、伝導部210を備えた伝導部210は、突出部310に対してシール部材260とヘッド300との間に位置する。その後、伝導部210およびシール部材260を備えた突出部310は、インク加温ブロック200に対して取り付けられる。
【符号の説明】
【0063】
1 インクジェットプリンタ
2 ヘッドユニット
3 印刷媒体
4 プラテン
5 キャリッジ
6 インク流路部
7 インク貯留部
8 送りローラー
9 貯留部接続部
10 ホース
11 キャリッジ駆動部
12 ガイドレール
100 圧力制御部
110 制御流路
120 バッファ
130 サックバック
200 インク加温ブロック
210 伝導部
212 伝導部の外周
214 伝導部の内周
216 伝導部の端面
220 加温流路
222 流入口
224 第1加温経路
226 第2加温経路
228 第3加温経路
230 接続口
232 接続端面
234 穴
240 シートヒータ
250 固定部
260 シール部材
300 ヘッド(インクジェットヘッド)
310 突出部
312 突出流路
320 内蔵ヒータ
330 ノズル
340 インク室
350 基板
352 断熱材
354 放熱器
356 ファン
360 ヘッドカバー
加温流路の流路断面積
突出流路の流路断面積
加温流路の流路径寸法
突出部の内径寸法、突出流路の流路径寸法
V インクの単位体積
加温流路における伝熱面積
突出流路における伝熱面積
加温流路および突出流路の温度
加温流路におけるインクの温度
突出流路におけるインクの温度
図1
図2
図3
図4
図5