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特許7396880更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物および更生タイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物および更生タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20231205BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20231205BHJP
   C08K 5/31 20060101ALI20231205BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K5/37
C08K5/31
B60C1/00 Z
B60C11/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019219225
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021088652
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂籠 健斗
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107428(WO,A1)
【文献】特開2013-032440(JP,A)
【文献】特開2016-216671(JP,A)
【文献】特開2009-108117(JP,A)
【文献】特開2004-043640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/00
C08K 5/37
C08K 5/31
B60C 1/00
B60C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともジエン系ゴムを含有するゴム成分、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、および1,3-ジフェニルグアニジンを含有し、
前記1,3-ジフェニルグアニジンの配合量をW(D)、前記ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドの配合量をW(DM)としたとき、1.0<W(D)/W(DM)≦1.5である更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物。
【請求項2】
1.4≦W(D)/W(DM)≦1.5である請求項1に記載の更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物を加硫成形してなるクッションゴムを備える更生タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物および更生タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みのタイヤを更生する方法として、使用済みのタイヤのトレッドゴムを研磨して台タイヤを成形し、台タイヤ上にクッションゴムを配置し、クッションゴムにプレキュアトレッドを貼り付け、プレキュアトレッド装着済みの台タイヤを加硫缶で加熱する方法が知られている。クッションゴムは、プレキュアトレッドを台タイヤに固定する役割を担う。
【0003】
下記特許文献1には、ジエン系ゴムおよび1,3-ジフェニルグアニジンを混練することにより混練物を得る工程と、混練物、2-メルカプトベンゾチアゾール、おおび末端にベンゼン環を含むジチオカルバミン酸塩系促進剤を混練する工程とを含むゴム組成物の製造方法が記載されている。得られたゴム組成物は、更生タイヤ用クッションゴムの原料となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-8286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の技術は、クッションゴムの原料となるゴム組成物の加硫速度を速めつつ、耐スコーチ性を向上する効果を奏する。しかしながら、前記特許文献1に記載の技術で使用される2-メルカプトベンゾチアゾールは、環境問題の見地から使用を控えることも想定される。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫速度が速く、耐スコーチ性に優れ、かつ環境問題にも適合可能な更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物および耐久性に優れた更生タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は下記構成により解決可能である。すなわち本発明は、少なくともジエン系ゴムを含有するゴム成分、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、および1,3-ジフェニルグアニジンを含有する更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物、および前記記載の更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物を加硫成形してなるクッションゴムを備える更生タイヤに関する。
【0008】
本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物は、加硫速度が速く、耐スコーチ性に優れる。また、本発明に係る更生タイヤはトルク値が大きく、破壊強度が高いことから、耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物は、少なくともジエン系ゴムを含有するゴム成分、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、および1,3-ジフェニルグアニジンを含有する。
【0010】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエン(BR)、ポリスチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられ、特に天然ゴム(NR)、ポリブタジエンゴム(BR)、およびポリスチレンブタジエンゴム(SBR)を使用することが好ましい。なお本発明においては、ジエン系ゴム以外のゴム成分を含有してもよいが、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、ジエン系ゴムを80質量部以上含有することが好ましく、90質量部以上含有することがより好ましく、100質量部含有することが好ましい。
【0011】
ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、および1,3-ジフェニルグアニジンは加硫促進剤として作用する。ゴム成分の全量を100質量部としたとき、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドの含有量は0.1~3.0質量部とすることが好ましく、0.5~2.0質量部とすることがより好ましい。また、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、1,3-ジフェニルグアニジンの含有量は0.02~6.0質量部とすることが好ましく、0.1~4.0質量部とすることがより好ましい。
【0012】
また、本発明においてはジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよび1,3-ジフェニルグアニジンの配合量の質量比を調整することが好ましく、具体的には、1,3-ジフェニルグアニジンの配合量をW(D)、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドの配合量をW(DM)としたとき、0.2≦W(D)/W(DM)≦2.0とすることが好ましく、1.0≦W(D)/W(DM)≦1.5とすることがより好ましい。
【0013】
本発明においては、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよび1,3-ジフェニルグアニジン以外の加硫促進剤、具体的にはゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤も併用可能である。ただし、環境問題に適合させるため、ゴム組成物中の2-メルカプトベンゾチアゾールの配合量は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、ゴム組成物中に2-メルカプトベンゾチアゾールを含有しないことが好ましい。
【0014】
本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物は、ゴム成分、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよび1,3-ジフェニルグアニジン以外の成分として、当業者に公知の配合剤を配合可能であり、例えばカーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、加硫系配合剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、やオイルなどの軟化剤、加工助剤などを配合することができる。
【0015】
カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを10~120質量部配合することが好ましく、20~100質量部であることがより好ましい。
【0016】
シリカとしては、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル-ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。
【0017】
シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。
【0018】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0019】
加硫系配合剤としては、前記加硫促進剤以外に、硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などが挙げられる。
【0020】
加硫系配合剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0021】
本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物は、ゴム成分、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよび1,3-ジフェニルグアニジン、さらにはカーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、加硫系配合剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、やオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0022】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄系加硫剤、および加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0023】
本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物は、更生タイヤを構成するクッションゴムの原料となる。本発明に係る更生タイヤは、プレキュア方式により製造することが可能である。例えば、本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物を成形した、未加硫のクッションゴムを介して、台タイヤとプレキュアトレッドとを貼り合わせ、これを加硫缶内で加熱加硫することにより、本発明に係る更生タイヤを製造することができる。プレキュア方式により更生タイヤを製造する場合、低温で長時間加熱することにより加硫する点が特徴であるが、本発明に係る更生タイヤ用クッションゴム用ゴム組成物は、加硫速度が速く、かつ耐スコーチ性に優れるため、特にプレキュア方式により更生タイヤを製造する際のクッションゴムの原料として特に有用である。
【実施例
【0024】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。
【0025】
(1)レオメーターによる未加硫ゴム組成物の加硫挙動測定試験における最大トルク(MH)と加硫速度(T90)
JIS K6300-2:2013に準拠して、未加硫ゴム組成物の加硫挙動測定試験における最大トルク(MH)と加硫速度(T90)を測定した。T90は、レオメーターによる未加硫ゴム組成物の加硫挙動測定試験において、トルクの最大値をMH、最小値をMLとしたときにトルクが(MH-ML)の90%になるまでの測定開始からの時間(分)である。評価はいずれも、比較例1を100としたときの指数評価で表し、MHについては指数が大きいほどトルクが大きいことを意味し、T90については数値が小さいほど加硫速度が速いことを意味する。
【0026】
(2)耐スコーチ性(スコーチタイムt5)
JIS K6300に準拠して、東洋精機製作所社製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴム組成物を125℃で1分間予熱後、最低粘度Vmより5ムーニー単位上昇するのに要した時間t5を測定し、比較例1の値を100とし、比較例2および実施例1はその指数を示す。数値が大きいほど、スコーチタイムが長く、耐スコーチ性に優れることを意味する。
【0027】
(3)破壊強度
実施例および比較例の未加硫ゴムシートを、120℃で30分間加硫することによりゴムサンプルを得た。JIS K6251に準じて、引張試験(ダンベル3号形)を実施して、ゴムサンプルの引張り強さを測定した。破壊強度の評価結果は、比較例1および2の引張強さの値を100とした指数で示した。数値が大きいほど破壊強度が優れていることを意味する。
【0028】
(ゴム組成物の調製)
表1の配合処方に従い、実施例1および比較例1~2のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表1に記載の各配合剤を以下に示す(表1において、各配合剤の配合量を、ゴム成分100質量部に対する質量部数で示す)。
a)天然ゴム(NR):「RSS#3」
b)スチレン-ブタジエンゴム(SBR):「NIPOL1502」日本ゼオン社製
c)ブタジエンゴム(BR):「UBEPOL BR150B」宇部興産社製
d)カーボンブラック1:「ショウブラックN326」キャボットジャパン社製
e)カーボンブラック2:「ショウブラックN330T」キャボットジャパン社製
f)ステアリン酸:「ステアリン酸」日油社製
g)酸化亜鉛:「酸化亜鉛2種」三井金属鉱業社製
h)老化防止剤:「ノクラック6C」大内振興化学工業社製
i)オイル:「プロセスP200」JX日鉱日石エネルギー社製
j)粘着付与剤:「エスコレッツ1102」エクソンモービル社製
k)硫黄:「粉末硫黄」鶴見化学工業社製
l)加硫促進剤DM(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド):「ノクセラーDM」大内振興化学社製
m)加硫促進剤M(2-メルカプトベンゾチアゾール):「ノクセラーM」大内振興化学社製
n)加硫促進剤DPG(1,3-ジフェニルグアニジン):「ノクセラーD」大内振興化学社製
o)加硫促進剤PZ(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛):「ノクセラーPZ」大内振興化学社製
p)加硫促進剤ZTC(ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛):「ノクセラーZTC」大内振興化学社製
q)ブルカレント:「ブルカレントE/C」ランクセス社製
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から、実施例1に係るゴム組成物は、加硫速度が速く耐スコーチ性に優れることが分かる。また、その加硫ゴムはトルクおよび破壊強度が高いことから、耐久性に優れることが分かる。