(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B25J19/00 F
(21)【出願番号】P 2019227345
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳邉 清子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 英樹
(72)【発明者】
【氏名】朴 振均
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-058521(JP,A)
【文献】特開2010-042479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に基端が枢着されたロアアームと、
前記ロアアームの先端に枢着されるアッパアームと、
前記アッパアームの先端に枢着された支持アームと、
少なくとも前記アッパアームに配置されたケーブルと、を備えた産業用ロボットであって、
前記アッパアームは、前記ロアアームの先端に枢着される関節部と、前記アッパアームの長手方向に沿った回転軸で回転自在となるように、前記関節部に取り付けられたアーム部と、を備えており、
前記ケーブルは、前記長手方向に沿って配設されており、
前記アーム部には、前記支持アームを前記アッパアームに対して枢動させる枢動モータが、前記回転軸からオフセットした位置で固定されており、
前記アーム部は、前記アーム部の基端において、前記ケーブルが挿通される挿通部と、前記挿通部から前記ケーブルに並設されるように延在したアーム本体と、が形成されており、
前記アーム本体には、前記枢動モータに対向する位置において、
前記ケーブルを周回するように、前記ケーブルを前記アーム本体に保持するクランプ部と、
前記クランプ部および前記枢動モータよりも、前記アーム部の先端側において、前記ケーブルを可動自在に案内するガイド部と、が設けられて
おり、
前記挿通部は、リング状であり、前記クランプ部と前記ガイド部と前記枢動モータとは、前記長手方向に沿った前記アーム本体の中央に配置されており、
前記クランプ部は、
前記アーム本体とは反対側に延在するように、ベースプレートに立設された支持ブラケットと、
前記支持ブラケットに取り付けた状態で、前記ケーブルを挿通し、前記ケーブルを保持する保持孔を形成するU字状の留め具と、を備えており、
前記ベースプレートは、前記アーム本体に取り付けられており、
前記留め具のU字状の底部が、前記枢動モータと前記ケーブルとで挟まれた空間に位置するように、前記クランプ部が、前記ガイド部とともに、前記ベースプレートに固定されていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記クランプ部と前記ガイド部との間には、前記枢動モータに配線が接続された接続部が配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記アーム部に立設され、前記ケーブルを案内するガイド孔が形成された枠体であり、前記ガイド部の周縁部は、前記ガイド孔の外側方向に向かって屈曲していることを特徴とする請求項1
または2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記アーム部には、
前記枢動モータを挟んで前記ケーブルとは反対側の位置において前記枢動モータを囲うように、前記アーム本体から張り出した第1補強リブと、
前記枢動モータが固定された位置よりも前記挿通部側において、前記ケーブルを挟んで前記第1補強リブに対向するように、前記アーム本体から張り出した第2補強リブと、
が形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアームが連接された産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の産業用ロボットとして、特許文献1には、基台に基端が枢着されたロアアームと、ロアアームの先端に枢着されるアッパアームと、アッパアームの先端に枢着された支持アームと、を備えた産業用ロボットが提案されている。
【0003】
このアッパアームは、長手方向に沿った回転軸に沿ってケーブルが配置されており、アッパアームのアーム本体と併設するようにケーブルを配置することにより、ケーブルはアッパアームから露出している。これにより、アッパアームにケーブルを取り付けることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る産業用ロボットでは、アッパアーム内に支持アームを枢動させる枢動モータが内蔵されているので、枢動モータが駆動した際に発生する熱を十分に放熱することができない。
【0006】
このような点を鑑みて、たとえば、枢動モータをアッパアームのアーム本体の露出した部分に配置することも考えらえるが、この場合、支持アームの枢動により、ケーブルが振れ回り、これらのモータにケーブルが接触するおそれがある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、枢動モータの放熱性を確保するとともに、支持アームの枢動および回転により、ケーブルが枢動モータに接触することを抑えることができる産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、本発明に係る産業用ロボットは、基台に基端が枢着されたロアアームと、前記ロアアームの先端に枢着されるアッパアームと、前記アッパアームの先端に枢着された支持アームと、少なくとも前記アッパアームに配置されたケーブルと、を備えた産業用ロボットであって、前記アッパアームは、前記ロアアームの先端に枢着される関節部と、前記アッパアームの長手方向に沿った回転軸で回転自在となるように、前記関節部に取り付けられたアーム部と、を備えており、前記ケーブルは、前記長手方向に沿って配設されており、前記アーム部には、前記支持アームを前記アッパアームに対して枢動させる枢動モータが、前記回転軸からオフセットした位置で固定されており、前記アーム部は、前記アーム部の基端において、前記ケーブルが挿通される挿通部と、前記挿通部から前記ケーブルに並設されるように延在したアーム本体と、が形成されており、前記アーム本体には、前記枢動モータに対向する位置において、前記ケーブルを前記アーム本体に保持するクランプ部と、前記クランプ部および前記枢動モータよりも、前記アーム部の先端側において、前記ケーブルを可動自在に案内するガイド部と、が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ケーブルは、アッパアームの長手方向に沿って配設されており、アーム本体は、ケーブルと並設されるよう延在している。枢動モータは、挿通部から延在したアーム本体に取り付けられているので、枢動モータは露出している。したがって、枢動モータの駆動時に発生する熱を放熱することができる。なお、アーム本体の基端側において、ケーブルが挿通される挿通部が、たとえばリング状であれば、ケーブルをアッパアームから、より広い範囲で外部に露出させることができる。
【0010】
さらに、アーム本体には、枢動モータに対向する位置において、ケーブルをアーム本体に固定するクランプ部が設けられているので、支持アームの動作時にケーブルの振れ回りにより、ケーブルが枢動モータに接触すること防止することができる。さらに、アーム部の先端側において、ケーブルを可動自在に案内するガイド部を設けることにより、ケーブルの振れ回る範囲を制限することができる。
【0011】
より好ましい態様としては、前記クランプ部と前記ガイド部は、前記長手方向に沿った前記アーム本体の中央に配置されている。この態様によれば、長手方向に沿ったアーム本体の中央では、ケーブルが振れ回りやすいところ、アーム本体の中央にクランプ部とガイド部を設けることにより、ケーブルの振れ回りを抑えることができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記クランプ部と前記ガイド部との間には、前記枢動モータに配線が接続された接続部が配置されている。この態様によれば、クランプ部とガイド部との間に接続部を設けたとしても、ケーブルの振れ回りは拘束されているので、この接続部にケーブルが接触することを防止することができる。
【0013】
より好ましい態様としては、前記クランプ部と前記ガイド部とは、ベースプレートを介して前記アーム本体に固定されている。この態様によれば、クランプ部とガイド部とをアーム本体に取り付ける際に、まず、これらをベースプレートに取り付けてから、ベースプレートをアーム本体に固定することができる。これにより、ベースプレートをアーム本体に取り付ける前に、クランプ部とガイド部との相対位置をより正確に調整しながら、ベースプレートにこれらを取り付けることができる。
【0014】
より好ましい態様としては、前記ガイド部は、前記アーム部に立設され、前記ケーブルを案内するガイド孔が形成された枠体であり、前記ガイド部の周縁部は、前記ガイド孔の外側方向に向かって屈曲している。この態様によれば、ガイド部内でケーブルが振れ回ったとしても、枠体の周縁のエッジにケーブルが接触し、ケーブルが傷つくことを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、枢動モータの放熱性を確保するとともに、支持アームの枢動および回転により、ケーブルが枢動モータに接触することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る産業用ロボットを正面側から視た斜視図である。
【
図2】
図1に示す産業用ロボットを背面側から視た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る産業用ロボットを
図1の他方側から視た斜視図である。
【
図5】
図4に示すアッパアームの拡大斜視図である。
【
図6】
図5に示すアッパアームを下側から視た拡大斜視図である。
【
図7】
図5に示すアッパアームの要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係る産業用ロボット1(以下、ロボット1という)を
図1~
図7を参照しながら詳述する。
【0018】
図1および
図2に示すように、ロボット1は、その先端に把持装置、溶接装置などエンドエフェクタが取り付けられるものである。
【0019】
1.ロボット1の全体構造
ロボット1は、マニュピュレータである。なお、ロボット1は、各モータ等を制御する制御装置(図示せず)を備えており、制御装置により、ロボット1の動作が制御される。
【0020】
ロボット1は、基台11を備えており、基台11は、設置面に設置されている。基台11は、設置面に固定された固定台11aと、設置面に対して直交する方向に沿った第1軸J1の周りに旋回する旋回台11bと、を備えている。旋回台11bは、第1モータ40Aの出力軸(図示せず)が接続されている。これにより、旋回台11bを固定台11aに対して第1軸J1の周りに枢動する。
【0021】
ロボット1は、基台11に基端が枢着されたロアアーム12と、ロアアーム12の先端に枢着されるアッパアーム20と、アッパアーム20の先端に枢着された支持アーム30と、を備えている。これらのアームは、金属製であり、たとえば、鋳鉄、アルニウム合金鋳物の鋳物からなる。
【0022】
ロボット1には、
図1の二点鎖線の仮想線で示すように、基台11からロアアーム12に沿って、ケーブル50が配設されている。さらに、ケーブル50は、
図2および
図3に示すように、アッパアーム20に配置され、支持アーム30を介して、エンドエフェクタ(図示せず)に接続されている。
【0023】
ロアアーム12は、第2モータ40Bを介して、第1軸J1と直交する方向に平行となる第2回転軸J2に、基台11に対して枢動自在(回転自在)に取り付けられている。アッパアーム20は、第3モータ40Cを介して、第2回転軸J2と平行となる第3回転軸J3の周りに、ロアアーム12に対して枢動自在(回転自在)に取り付けられている。
【0024】
アッパアーム20は、ロアアーム12の先端に枢着される関節部21と、アッパアーム20の長手方向に沿った第4回転軸J4で回転自在となるように、関節部21に取り付けられたアーム部22と、を備えている。
【0025】
具体的は、ロアアーム12と関節部21とが、上述した第3モータ40Cを介して、枢動自在に取り付けられている。アーム部22は、第4モータ40Dの動力により、関節部21に対して第4回転軸J4の周りに回転する。この「第4回転軸J4」が本発明でいう「アッパアームの長手方向に沿った回転軸」に相当する。
【0026】
さらに、アッパアーム20の先端は、ロボット1の手首部に相当する部分であり、エンドエフェクタ(図示せず)を支持する支持アーム30が取り付けられている。本実施形態では、アッパアーム20のアーム部22には、支持アーム30をアーム部22に対して枢動させる第5モータ40Eが固定されている。
図4に示すように、第5モータ40Eは、アーム部22が回転する第4回転軸J4に対してオフセットした位置で固定されている。ここで、第5モータ40Eが、本発明でいう「枢動モータ」に相当する。
【0027】
第5モータ40Eには、アーム本体22Bに内蔵された動力伝達ベルト等を介して、支持アーム30に接続されている。これにより、第5モータ40Eの動力が、アーム本体22Bに内蔵された動力伝達ベルト(図示せず)に伝達されることで、支持アーム30は、アーム部22に対して第5回転軸J5で枢動(揺動)する。
【0028】
より具体的には、支持アーム30は、アッパアーム20に対して片持ち支持されており、アッパアーム20に取り付けられた関節部31と、関節部31に取り付けられた支持部本体32と、を備えている。関節部31は、その片側において、アッパアーム20のアーム部22の先端において、第5回転軸J5で枢動自在となるようにアーム部22に枢着されている。支持部本体32は、関節部31に対して、支持アーム30の軸心周りに回転自在に関節部31に取り付けられている。さらに、関節部31には、支持アーム30の軸心(具体的には第6回転軸J6)の周りに、支持部本体32を回転させる第6モータ40Fが固定されている。
【0029】
これにより、第5モータ40Eの動力で、関節部31が、アーム部22に対して支持部本体32と共に第5回転軸J5の周りを枢動する。これに加えて、第6モータ40Fの動力で、支持部本体32が、関節部31に対して第6回転軸J6の周りを回転する。
【0030】
2.アッパアーム20のアーム部22の構造について
図5に示すように、アッパアーム20のアーム部22は、アーム部22の基端において、ケーブル50が挿通されるリング状の挿通部22Aと、挿通部22Aからケーブル50と並設されるように延在したアーム本体22Bと、が形成されている。挿通部22Aには、ケーブル50が挿通される貫通孔22aが固定されている。なお、ここでいう「リング状」とは、円のループのみならず、楕円のループ、多角形のループなどを挙げることができる。
【0031】
アーム本体22Bは、リング状の挿通部22Aの周縁の一部から連続するように形成されている。後述する第1補強リブ23および第2補強リブ24を除く部分において、アーム本体22Bは、第4回転軸J4を中心として、リング状の挿通部22Aの周りから、一定の角度の範囲をもって、アッパアーム20の先端に向かって延在している。この角度は、たとえば45°~90°程度の範囲にあることが好ましい。
【0032】
アーム部22には、第5モータ40Eを挟んでケーブル50と反対側の位置において、第5モータ40Eを囲うように、アーム本体22Bから張り出した第1補強リブ23が形成されている。第5モータ40Eを囲うように第1補強リブ23を設けることにより、第5モータ40Eを保護するとともに、アーム部22の剛性を高めることができる。
【0033】
本実施形態では、
図4および
図6に示すように、第1補強リブ23は、挿通部22Aからアーム本体22Bの先端側に向かって延在している。これにより、アーム本体22Bの長手方向に沿った撓みを抑えることができる。支持アーム30にエンドエフェクタ(図示せず)を装着した際には、アーム本体22Bの基端に曲げモーメントが作用し易いが、第1補強リブ23を設けることにより、アーム部22の曲げ剛性を高め、アーム部22の強度を確保することができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、
図6に示すように、第1補強リブ23は、アーム本体22Bの先端に進むに従って、アーム本体22Bからの張り出しが減少している。すなわち、第1補強リブ23は、アーム本体22Bの先端に進むに従って、アーム本体22Bからの張り出し量が小さくなっている。
【0035】
これにより、アーム本体22Bの先端側における第1補強リブ23の重量を抑えつつ、アーム本体22Bの基端側で、アーム部22の長手方向に沿った撓みを抑えることができる。さらに、第5モータ40Eが固定された位置からアーム本体22Bの先端側の区間では、先端側に進むに従って、第1補強リブ23の張り出しが減少しているため、第1補強リブ23側から、ケーブル50を視認することができる。
【0036】
具体的には、
図4および
図6に示すように、第1補強リブ23は、ケーブル50(第4回転軸J4)に面したアーム本体22Bの側面22bの長手方向の縁部から、張り出している。より具体的には、第1補強リブ23は、第5モータ40Eよりも挿通部22A側では、第4回転軸J4の周りを周回する方向に沿って(すなわち、リング状の挿通部22Aの周りに沿って)、張り出している。さらに、第1補強リブ23は、第5モータ40Eに対向する部分から、アーム部22(すなわちアーム本体22B)の先端側に延在する部分では、側面22bと交差する方向に沿って張り出している。
【0037】
さらに、本実施形態では、アーム部22には、ケーブル50を挟んで、第1補強リブ23に対向するように、アーム本体22Bから張り出した第2補強リブ24が形成されている。これにより、第1補強リブ23と第2補強リブ24とにより、アーム本体22Bの強度を高めることができる。
【0038】
より具体的には、第2補強リブ24は、第5モータ40Eが固定された位置よりも挿通部22A側に形成されている。より具体的には、第2補強リブ24は、挿通部22Aからアーム本体22Bの長手方向の中央近傍まで形成されている。第2補強リブ24は、アーム本体22Bの長手方向の中央近傍からアーム部22の先端までの区間では形成されていない。これにより、第2補強リブ24側から第4回転軸J2を見たときに、後述するクランプ部25とともに、ケーブル50を視認することができるため、ケーブル50の配線作業がし易い。
【0039】
ここで、第2補強リブ24は、第4回転軸J4の周りを周回する方向に沿って(すなわち、リング状の挿通部22Aの縁部の周りに沿って)、アーム本体22Bから張り出している。これにより、第5モータ40Eよりも挿通部22A側において、第2補強リブ24と第1補強リブ23の一部が、アーム本体22Bから第4回転軸J4の周りを周回する方向に沿って張り出すため、第5モータ40Eよりも挿通部22A側におけるアーム部22の形状は、筒状の部分の周壁を切り取ったような形状となる。
【0040】
このような形状にすることにより、第5モータ40Eが固定された位置よりも挿通部22A側において、ケーブル50をアーム部22から露出させることができるばかりでなく、ケーブル50が挿通される挿通部22Aの貫通孔22aを視認することができる。
【0041】
第1補強リブ23と同様に、第2補強リブ24は、アーム本体22Bの先端に進むに従って、アーム本体22Bからの張り出しが小さくなっている。本実施形態では、第2補強リブ24は、挿通部22Aからアーム本体22Bの長手方向の中央近傍まで形成されている。これに加えて、
図5に示すように、第1補強リブ23は、アーム部22の挿通部22A側において、第2補強リブ24よりも、大きく張り出している。すなわち、第1補強リブ23の張り出し量は、アーム部22の挿通部22A側において、第2補強リブ24の張り出し量よりも大きい。
【0042】
上述したように、アーム本体22Bは、ケーブル50と並設されるよう延在し、アーム本体22Bの基端側において、ケーブル50が挿通される挿通部22Aはリング状であるので、ケーブル50をアッパアーム20から、より広い範囲で露出させることができる。
【0043】
さらに、上述した如く、第5モータ40Eが固定された位置よりも挿通部22A側において、第1補強リブ23は、第2補強リブ24よりも大きく張り出している。このため、アーム部22の長手方向に沿った区間のうち、第5モータ40Eが固定された位置よりも挿通部22A側の区間において、第2補強リブ24側に、ケーブル50の配置作業を行うための開放した空間を確保することができる。
【0044】
さらに、第5モータ40Eが固定された区間では、アーム部22には、第5モータ40Eを挟んでケーブル50と反対側の位置において第5モータ40Eを囲うように、アーム本体から張り出した第1補強リブ23が形成されている。したがって、第5モータ40Eを挟んで第1補強リブ23が形成された位置とは反対側において、ケーブル50が露出するように開放された空間が形成される。これにより、ケーブル50の配置作業を行うための空間を確保することができる。
【0045】
3.ケーブル50の取り付け構造
以下に、ケーブル50の取り付け構造について説明する。ロボット1には、
図1~
図7の仮想線で示すように、ケーブル50が取り付けられている。ケーブル50は複数本あり、図示される仮想線は、複数のケーブルが通過する範囲を示している。
図1に示すように、ケーブル50は、基台11からロアアーム12に沿って配設されている。ケーブル50は、
図2および
図3に示すように、アッパアーム20に配置され、支持アーム30を介して、エンドエフェクタ(図示せず)に接続されている。このエンドエフェクタは、上述したように、支持アーム30に装着され、支持アーム30に支持されている。なお、このケーブル50の一部が、第5モータ40E、第6モータ40Fに接続されていてもよい。
【0046】
ケーブル50は、アッパアーム20において、アーム部22の長手方向に沿って配設されている。なお、図面では、ケーブル50は、便宜上、第4回転軸J4の上に配置されているように図示しているが、支持アーム30の枢動および回転により、ケーブル50に大きな張力が作用しないように、弛みを持たせてアーム部22に配置されている。したがって、本発明でいう、「ケーブルが、アッパアームの長手方向に沿って配設されている」とは、このような状態も含むものである。
【0047】
本実施形態では、アーム部22の挿通部22Aには、貫通孔22aが形成され、支持アーム30にも、貫通孔30aが形成されている。したがって、ケーブル50は、アーム部22の貫通孔22aを挿通され、アーム部22の長手方向に沿って配設され、支持アーム30の貫通孔30aを挿通され、エンドエフェクタ(図示せず)に接続される。
【0048】
本実施形態では、アーム本体22Bには、第5モータ40Eが、第4回転軸J4からオフセットした位置で固定されている。具体的には、第5モータ40Eは、第4回転軸J4よりも第1補強リブ23側に配置されている。さらに、支持アーム30の関節部31には、第6モータ40Fが、第4回転軸J4からオフセットした位置で固定されている。具体的には、第6モータ40Fとアーム部22とで第4回転軸J4を挟むような位置に配置されている。
【0049】
このような位置に、第5モータ40Eと第6モータ40Fとを配置することにより、第4回転軸J4上にケーブル50が通過するスペースを形成することができる。さらに、第5モータ40Eと第6モータ40Fとは、アーム部22から露出しているので、これらの駆動時に発熱する熱を、外部に放熱し易い。
【0050】
アーム部22には、第5モータ40Eに電力を供給する供給線、第5モータ40Eの回転を制御する制御信号用の信号線(図示せず)、第5モータ40Eで検出した回転位置などの検出信号用の検出線(図示せず)などの配線(図示せず)が配置されている。本実施形態では、これらの配線は、ケーブル50とは異なるルートで配置されており、アーム部22には、これらの配線が第5モータ40Eに接続された接続部41Eが設けられている。なお、接続部41Eは、長手方向に沿った位置において、後述するクランプ部25とガイド部26との間に配置されている。
【0051】
本実施形態では、
図6および
図7に示すように、接続部41Eは、これらの配線(図示せず)と、これらの配線を収容した配線ボックスで構成されているが、例えば、これらの配線が結束バンドなどで結束されている状態ものであってもよい。同様に、供給線、信号線、および検出線などの配線(図示せず)が、第6モータ40Fに接続された接続部41Fが設けられている。
図4に示すように、アーム部22の側面視において、接続部41Fは、第6モータ40Fを挟んでケーブル50とは反対側の位置に設けられている。
【0052】
本実施形態では、
図5に示すように、クランプ部25とガイド部26とが、ベースプレート27を介して、アーム本体22Bの側面22bに固定されている。クランプ部25とガイド部26が配置された位置には、上述した第2補強リブ24による張り出しがほとんどないので、クランプ部25およびガイド部26の取り付け位置近傍には、開放した空間が形成されている。したがって、ケーブル50の配線作業において、クランプ部25およびガイド部26とともに、ケーブル50を適切な位置に簡単に配置することができる。
【0053】
ここで、クランプ部25とガイド部26とをアーム本体22Bに取り付ける際には、まず、これらをベースプレート27に取り付けてから、ベースプレート27をアーム本体22Bに固定することができる。これにより、アーム本体22Bに取り付ける前に、クランプ部25とガイド部26の相対的な位置を調整することができる。これにより、アーム本体22Bに、クランプ部25とガイド部26とを正確に固定することができ、ケーブル50の最適なルートを確保することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、ベースプレート27を設けたが、クランプ部25とガイド部26とを、ケーブル50とともにアーム本体22Bの適切な位置に配置することができるのであれば、ボルト等の固定具でアーム本体22Bに直接固定されていてもよい。
【0055】
クランプ部25は、第5モータ40Eに対向する位置において、ケーブル50をアーム本体22Bに保持する部分である。
図7に示すように、クランプ部25は、ボルトまたはネジなどの締結具を介して、ベースプレート27に取り付けられた支持ブラケット25aと、支持ブラケット25aに取り付けられたU字状の留め具25bと、を備えている。
【0056】
支持ブラケット25aは、ベースプレート27に対して、アーム本体22Bとは反対側に延在するように、ベースプレート27に立設されており、留め具25bとともにケーブル50を支持している。支持ブラケット25aに留め具25bが取り付けられた状態で、クランプ部25には、ケーブル50を挿通し、これを保持する保持孔25Aが形成されている。
【0057】
本実施形態では、ケーブル50は、第4回転軸J4を通過することから、ケーブル50を保持する保持孔25Aは、第4回転軸J4が通過する位置に形成されている。したがって、クランプ部25の保持孔25Aに挿通されたケーブル50は、第4回転軸J4に沿って吊下げられた状態で保持される。
【0058】
なお、保持孔25Aは、クランプ部25によりケーブル50を保持することができる大きさであればよく、支持アーム30の枢動および回転により、ケーブル50が、第4回転軸J4に沿った方向に移動可能なように、ケーブル50を保持してもよい。さらに、
図2に示すように、支持アーム30に、ケーブル50を保持するクランプ部28をさらに設けてもよい。
【0059】
ガイド部26は、クランプ部25および第5モータ40Eよりも、アーム部22の先端側において、ケーブル50を第4回転軸J4の周りに可動自在に案内する部分である。本実施形態では、ガイド部26は、ベースプレート27を介してアーム部22に立設された枠体であり、ケーブル50を案内するガイド孔26Aが形成されている。
【0060】
具体的には、ガイド部26は、ボルトまたはネジなどの締結具を介して、ベースプレート27に取り付けられた一対の第1ブラケット26a、26aと、一対の第1ブラケット26a、26a同士をわたすように、一対の第1ブラケット26a、26aに取り付けられた第2ブラケット26cを備えている。第1ブラケット26aと第2ブラケット26cとは、金属プレートから成形された部材である。
【0061】
一対の第1ブラケット26a、26aは、第4回転軸J4を挟むように間隔をあけて、ベースプレート27から立設されている。一対の第1ブラケット26a、26aに第2ブラケット26cが取り付けられた状態で、ガイド部26にはガイド孔26Aが形成される。ガイド孔26Aは、第4回転軸J4と直交する断面において、矩形の形状を有しており、ガイド孔26Aの開口面積は、保持孔25Aの開口面積よりも大きい。これにより、ガイド部26には、ケーブル50を第4回転軸J4の周りに可動自在な空間が形成される。
【0062】
本実施形態では、枠体であるガイド部26の周縁は、ガイド部26に形成された、ケーブル50が通過するガイド孔26Aの外側方向に向かって屈曲している。具体的には、一対の第1ブラケット26a、26aと、第2ブラケット26cで形成されたガイド孔26Aの両側の周縁部26b、26dが、ガイド孔26Aの外側方向に向かって屈曲している。したがって、本実施形態は、ガイド孔26Aの両側の開口部は、外側に向かって広がっている。このようなガイド孔26Aを設けることにより、ガイド部26内でケーブル50が振れ回ったとしても、ガイド部26のガイド孔を形成する周縁部26b、26dのエッジにケーブル50が接触し、ケーブル50が傷つくことを抑えることができる。
【0063】
本実施形態では、アーム本体22Bには、第5モータ40Eに対向する位置において、ケーブル50を保持するクランプ部25が設けられているので、ケーブル50の振れ回りにより、ケーブル50が第5モータ40Eに接触すること防止することができる。さらに、アーム部22の先端側において、ケーブル50を可動自在に案内するガイド部26を設けることにより、ケーブル50の振れ回る範囲を制限し、第5モータ40Eへのケーブル50の接触を抑えることができる。
【0064】
本実施形態では、上述したように、クランプ部25とガイド部26とは、第4回転軸J4に沿ったアーム本体22Bの中央に配置されている。これにより、第4回転軸J4に沿ったアーム本体22Bの中央では、ケーブル50が振れ回りやすいところ、アーム本体22Bの中央にクランプ部25とガイド部26を設けることにより、ケーブル50の振れ回りを抑えることができる。
【0065】
さらに、このようなケーブル50の振れ回りを制限することにより、クランプ部25とガイド部26との間に、第5モータ40Eの配線が接続された接続部41Eを配置することができる。このため、接続部41Eへのケーブル50の接触を抑えつつ、アーム部22のコンパクト化を図ることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0067】
1:ロボット(産業用ロボット)、11:基台、12:ロアアーム、20:アッパアーム、21:関節部、22:アーム部、22A:挿通部、22B:アーム本体、23:第1補強リブ、24:第2補強リブ、25:クランプ部、26:ガイド部、40E:第5モータ(枢動モータ)、30:支持アーム、50:ケーブル、J4:第4回転軸(回転軸)