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特許7396893タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20231205BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20231205BHJP
   C08K 5/44 20060101ALI20231205BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/30
C08K5/44
B60C1/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019239128
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107500
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 絢菜
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/133097(WO,A1)
【文献】特開2009-155637(JP,A)
【文献】特開2010-121089(JP,A)
【文献】特開昭56-079135(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を70~100質量部含むゴム成分100質量部に対して、
硫黄3~10質量部と、
スルフェンアミド系加硫促進剤とを含有し、
スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄との含有割合(スルフェンアミド系加硫促進剤/硫黄)が、質量比で0.05~0.3である、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記スルフェンアミド系加硫促進剤が、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドである、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
引張り応力、引張り破断強度などの機械的特性を維持向上しながら、ウエットグリップ性能やグリップ性能を向上させる方法として、特許文献1に記載のように、有機微粒子を配合する方法や、特許文献2に記載のように、スルフィド結合を主鎖に有する微粒子を配合する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、水素添加率の高い水添共重合体をゴム成分として用いた場合に、破断強度を維持しつつ、ウエットグリップ性能を向上させる方法は知られておらず、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-206628号公報
【文献】特開2017-149885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、破断強度を維持しつつ、優れたウエットグリップ性能が得られる、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、上記課題を解決するために、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を70~100質量部含むゴム成分100質量部に対して、硫黄3~10質量部と、スルフェンアミド系加硫促進剤とを含有し、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄との含有割合(スルフェンアミド系加硫促進剤/硫黄)が、質量比で0.05~0.3であるものとする。
【0007】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドであるものとすることができる。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて作製したものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、破断強度を維持しつつ、優れたウエットグリップ性能を有する空気入りタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態に係るゴム組成物において用いられるゴム成分は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むものである。ここで、本明細書において、「ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量」とは、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/min、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した値とする。また、水素添加率は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算した値とする。
【0012】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を構成する芳香族ビニルとしては、特に限定されないが、例えばスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を構成する共役ジエンとしては、特に限定されないが、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は、特に限定されないが、スチレン及び1,3-ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)であることが好ましい。従って、水添共重合体としては、水添スチレンブタジエン共重合体であることが好ましい。また、水添共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。
【0015】
上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を合成し、水素添加処理を行うことで合成することができる。芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の合成方法は、特に限定されないが、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法等を挙げることができ、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。なお、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は市販のものを使用することも可能である。
【0016】
水素添加の方法は、特に限定されず、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4~11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
【0017】
水添共重合体の水素添加率(芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の共役ジエン部に対して水素添加された割合)は80モル%以上であり、好ましくは80~95モル%であり、より好ましくは85~95モル%であり、さらに好ましくは90~95モル%である。水素添加率が80モル%以上であることにより、架橋の均質化による耐摩耗性の改善効果に優れる。
【0018】
水添共重合体の重量平均分子量は、30万以上であれば特に限定されないが、30万~200万であることが好ましく、30万~100万であることがより好ましく、30万~60万であることがさらに好ましい。
【0019】
上記ゴム成分には、上記水添共重合体以外のジエン系ゴムが含まれていても良く、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらジエン系ゴムは、いずれか1種単独で、又は2種以上ブレンドして用いることができる。
【0020】
ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、特に限定されないが、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態に係るゴム組成物は、加硫剤として、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄を含有する。その含有量は、ゴム成分100質量部に対して3~10質量部である。
【0022】
本実施形態に係るゴム組成物は、加硫促進剤として、スルフェンアミド系加硫促進剤を含有する。スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(MBS)、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DZ)などが挙げられ、これらの中でも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)であることが好ましい。
【0023】
スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄との含有割合(スルフェンアミド系加硫促進剤/硫黄)は、質量比で、0.05~0.3である。
【0024】
スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して、0.5~2.5質量部であることが好ましく、0.5~1.5質量部であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係るゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、スルフェンアミド系加硫促進剤以外の加硫促進剤を含有するものであってもよく、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤などを用いるものであってもよい。これらの中でも、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤であることが好ましく、グアニジン系加硫促進剤とジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤との併用であることがより好ましい。
【0026】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(D)、ジ-O-トリルグアニジン(DT)などが挙げられる。
【0027】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBzDTC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaEDC)、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(FeMDC)などが挙げられる。
【0028】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とグアニジン系加硫促進剤とを併用する場合の配合割合(グアニジン系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤)は、質量比で、0.5~3.0であることが好ましい。
【0029】
グアニジン系加硫促進剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部であることが好ましく、0.2~2質量部であることがより好ましい。
【0030】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部であることが好ましく、0.2~2質量部であることがより好ましい。
【0031】
加硫促進剤の合計の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~9質量部であることが好ましく、0.5~6質量部であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態に係るゴム組成物は、硫黄を所定含有量で含有し、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄とを所定の割合で含有することにより、破断強度を維持しつつ、優れたウエットグリップ性能が得られる。このメカニズムは定かではないが、次のように推測できる。まず、通常のゴム組成物において、硫黄の配合量を増量すると、架橋密度が増加し、破断強度が低下する傾向にある。しかしながら、本実施形態に係るゴム組成物では、ゴム成分として水添共重合体を用いており、水添共重合体が有する二重結合量(架橋点)が少ないため、硫黄の配合量を増量しても、架橋構造が増えすぎることなく、ゴム組成物全体に架橋構造が均一に広がるため、破断強度が維持され、また、反発弾性率が下がることで、ウエットグリップ性能が改善するものと推測できる。
【0033】
本実施形態に係るゴム組成物には、補強性充填剤として、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることができる。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばゴム成分100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、20~100質量部であることがより好ましく、30~80質量部であることがさらに好ましい。
【0034】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックを含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1~70質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましい。
【0035】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1~150質量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましい。
【0036】
シリカを含有する場合、スルフィドシラン、メルカプトシランなどのシランカップリング剤をさらに含有してもよい。シランカップリング剤を含有する場合、その含有量はシリカ含有量に対して2~20質量%であることが好ましい。
【0037】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されているプロセスオイル、加工助剤、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、液状ゴム、樹脂、ワックス、老化防止剤などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0038】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練して作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ゴム成分に対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0039】
このようにして得られるゴム組成物は、タイヤ用として用いることができ、乗用車用、トラックやバスの大型タイヤなど各種用途・サイズの空気入りタイヤのトレッド部やサイドウォール部などタイヤの各部位に適用することができる。ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせた後、例えば140~180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【0040】
本実施形態に係る空気入りタイヤの種類としては、特に限定されず、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどに用いられる重荷重用タイヤなどの各種のタイヤが挙げられる。
【実施例
【0041】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
〈水添共重合体1の合成例〉
窒素置換された耐熱反応容器に、シクロヘキサンを2.5L、テトラヒドロフラン(THF)を50g、n-ブチルリチウムを0.12g、スチレンを100g、1,3-ブタジエンを400g入れ、反応温度50℃で重合を行った。重合が完了した後にN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシランを1.7g加えて、1時間反応させた後、水素ガスを0.4MPa-ゲージの圧力で供給し、20分間撹拌した。次いで、水素ガス供給圧力を0.7MPa-ゲージ、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主とした触媒を用いて目的の水素添加率となるまで反応させ、溶媒を除去することにより、水添共重合体1を得た。
【0043】
得られた水添共重合体1の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製「LC-10A」を用い、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel-MIXED-C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHFを用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/min、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとして測定し、標準ポリスチレンによるポリスチレン換算で35万であった。結合スチレン量は20質量%であり、ブタジエン部の水素添加率は90モル%であった。なお、結合スチレン量はH-NMRを用いて、スチレン単位に基づくプロトンと、ブタジエン単位(水素添加部を含む)に基づくプロトンとのスペクトル強度比から求めた。
【0044】
〈実施例及び比較例〉
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、加硫促進剤及び硫黄を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で、加硫促進剤及び硫黄を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0045】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・水添SBR1:上記合成例1に従い作製した水添共重合体1
・シリカ:エボニックジャパン社製「UltrasilVN3」
・シランカップリング剤:エボニックジャパン社製「Si69」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・オイル:JXTGエネルギー(株)製「NC-140」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「微粉末硫黄」
・加硫促進剤1:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、住友化学(株)製「ソクシノールCZ」、スルフェンアミド系加硫促進剤
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラ-D」、グアニジン系加硫促進剤
・加硫促進剤3:三新化学工業(株)製「サンセラーZBE」、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤
【0046】
得られた各ゴム組成物について、破断強度、及びウエットグリップ性能を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0047】
・破断強度:JIS K6251に準じて、引張試験(ダンベル状3号形)を実施して引っ張り強さを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、破断強度が大きく、補強性に優れることを示す。比較例1の値を100とした指数で示した。指数が95以上であれば、破断強度は維持されたものと評価した。
【0048】
・ウエットグリップ性能:各ゴム組成物をトレッドに適用した215/45ZR17試験用ラジアルタイヤを乗用車に4本装着し、2~3mmの水深で水をまいた路面上を走行、時速100kmにて摩擦係数を測定し、ウエットグリップ性能を評価し、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど、ウエットグリップ性能に優れることを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
結果は、表1に示す通りであり、比較例1と実施例1~6との対比より、硫黄の含有量を所定含有量まで増量し、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄とを所定割合で含有する場合、破断強度を維持しつつ、ウエットグリップ性能が改善したことがわかる。
【0051】
比較例1と比較例2との対比より、硫黄の含有量が少なく、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄との含有割合が所定範囲外である場合、破断強度を維持できず、ウエットグリップ性能も悪化したことがわかる。
【0052】
比較例1と比較例3との対比より、硫黄の含有量を所定含有量まで増量したが、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄との含有割合が所定範囲外である場合、ウエットグリップ性能が悪化したことがわかる。
【0053】
比較例1と比較例4との対比より、硫黄の含有量を所定含有量の上限値を超えて増量し、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄との含有割合が所定範囲外である場合、破断強度を維持できず、ウエットグリップ性能も悪化したことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤに用いることができる。