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特許7396904無線機、試験器、試験システム、及び試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】無線機、試験器、試験システム、及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/00 20150101AFI20231205BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20231205BHJP
   H04B 17/16 20150101ALI20231205BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20231205BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04B17/00 N
G01M17/007 K
H04B17/16
H04B17/29 100
B61L23/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020000652
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111818
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】内田 清巳
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-285185(JP,A)
【文献】実開昭57-102252(JP,U)
【文献】特開2018-014633(JP,A)
【文献】特開2005-017241(JP,A)
【文献】特開平07-162379(JP,A)
【文献】特開2016-220161(JP,A)
【文献】特開平11-064416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00 - 17/40
G01M 17/007
B61L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前面透過板に近接して取り付けられる無線機であって、
無線通信を行う無線機本体と、
前記無線機本体を前記車両の天井に固定するための取付金具とを備え、
前記取付金具に、前記無線機本体の試験を行う可搬型の試験器を、前記前面透過板と前記無線機本体との間に保持する補助金具が設けられていることを特徴とする無線機。
【請求項2】
請求項1記載の無線機における無線機本体と通信して試験を行う試験器本体と、
補助金具に係合するブラケットと、
前記無線機から受信した前記無線機における受信レベルを表示する表示部を備え、
前記表示部は、前記無線機の試験を行う際に前記無線機に対向する面に、前記ブラケットを前記無線機の補助金具に係合した状態で前記無線機と重ならず、目視可能な位置に設けられていることを特徴とする可搬型の試験器。
【請求項3】
請求項1記載の無線機と、請求項2記載の試験器とを備え、
前記無線機が車両の前面透過板に近接して取り付けられた状態で、前記試験器のブラケットが前記無線機の補助金具に係合して、前記試験器が前記無線機と前記前面透過板との間に保持されることを特徴とする試験システム。
【請求項4】
車両の前面透過板に近接して取り付けられる無線機を、前記無線機と通信を行う試験器で試験する試験方法であって、
前記前面透過板と前記無線機との間に前記試験器を挿入し、前記試験器を前記無線機に取り付けて試験を行うことを特徴とする試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車等の車両に取り付けられる画像伝送用の無線機と、無線機の試験を行う試験器に係り、特に試験時の作業を軽減し、試験の効率及び精度を向上させることができる無線機、試験器、試験システム、及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、駅ホームの状況を列車内の運転士が確認するため、駅ホームで撮影した映像データを無線機(地上無線機)で無線送信して、車両内の無線機(車上無線機)で受信し、モニタ画面に表示させる画像伝送用無線システムがある。
車上無線機は、運転席の天井に取り付けられ、各駅のホーム近傍(例えば線路脇の壁面等)に設けられた地上無線機と通信を行う。
そして、画像伝送用システムで用いられる列車用の無線機については、運行前の点検に加えて、定期的な性能測定を実施している。
【0003】
[従来の無線機の概略構成:図9
従来の車上無線機(以下、「無線機」とする)の概略構成について図9を用いて説明する。図9は、従来の無線機の概略構成を示す斜視図である。
図9に示すように、従来の無線機30は、無線機本体31と、無線機本体31の上面に設けられた取付金具32とを備えている。
【0004】
無線機本体31は、筐体の内部に無線通信に伴う処理を行う無線部を備え、駅ホーム等に設けられた地上無線機と通信を行う通信装置である。
取付金具32は、無線機本体31を車両の運転席の天井に取り付けるための金具であり、無線機本体31の上面を覆う上面部と、無線機本体31の左右の側面の一部を覆う側面部とを備えている。
【0005】
取付金具32の上面の中央部には、円形の穴が形成され、当該穴の周囲に、取付金具32を天井に固定するための取付穴321が形成されている。取付穴321は、水平方向(左右方向)の角度調整を行えるように、細長い形状(長穴)に形成されている。
また、取付け金具32の両側面には、無線機本体31を取付金具32に固定する取付穴が2つ形成されている。図示は省略するが、下側の取付穴は長穴となっており、上側の取付穴を軸として、無線機本体31の垂直方向(上下方向)の角度を調整することが可能となる。
【0006】
そして、取り付け時には、無線機本体31が地上無線機と良好な通信を行うことができるように、まず取り付け金具32について、水平方向の角度を調整しつつ運転席の天井に取り付け、その後、無線機本体31を、垂直方向の傾きを調整しつつ取付金具32に取り付けて固定する。
【0007】
[従来の試験方法:図10
従来の試験方法について図10を用いて説明する。図10は、従来の試験方法を示す説明図である。ここで、「試験」は、列車運行前の動作確認を行う点検、及び定期的に機器の性能をチェックする性能測定を含むものとする。
図10に示すように、車両内に取り付けられた無線機30に設けられた無線機本体31の試験を行う際には、作業員が、持ち運び可能な可搬型試験器(以下、「試験器」とする)40を持って無線機30の正面から特定の距離(例えば10m)となる地点に立ち、受信レベルが最適となるよう、電波の放射方向(試験器40の向き)を調整し、その後、車上無線機における受信レベルの測定を行う。
【0008】
通常の点検時では、受信レベルの確認は、試験器40に実装された簡易レベルランプ(図示省略)で確認するが、性能測定時は正確な受信レベルを測定するため、図10に示すように、試験器40に測定器50を接続して、測定を実施する。
【0009】
無線機30は、車両ごとに取付位置に違いがある。運用時に地上無線機と良好な通信を行うために、車両ごとに電波放射方向を調整して設置しており、車両ごとに水平、垂直方向の角度が微妙に異なっている。
そのため、点検、性能測定時は、仮設時に車両ごとに試験器40の向きを変えて、電波放射方向を合わせなければならず、作業員による差異が生じて測定結果の誤差が大きくなってしまう。
【0010】
特に、画像伝送用無線通信機器では、電波の特性上、直進性が強く放射エリアが狭いため、受信レベルの低下を招き性能測定に誤差を生じやすい。そのため、試験器40の電波放射方向を、無線機本体31に正確に合わせる必要があり、試験器40の角度合わせに時間がかかっていた。
【0011】
従来の試験方法では、性能測定時に試験器40の位置や向きを変えると、測定誤差が生じるため、試験器40を保持する作業員は、点検が終了するまで静止して同じ姿勢を保つ必要があり、負担となっていた。
【0012】
また、点検時は、車両内の無線機本体31のモニタ出力画像を確認する人員と、車両外部の試験器40を操作する人員の2名の作業員が必要となり、性能測定時は、更に試験器40に接続した測定器50を確認する人員を加えた3名の作業員が必要となる。
【0013】
[関連技術]
尚、無線機に関する従来技術としては、特開2010-213077号公報「無線機」(特許文献1)がある。
特許文献1には、識別信号を無線機内部で折り返し、当該折り返した識別信号が表す番号を表示部に表示することで、識別信号の専用の試験器がなくても、識別信号が正常に送信されているか否かを確認できる無線機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2010-213077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、従来の無線機及び試験器では、試験器を保持する作業員が、車両ごとに可搬型試験器の向きを細かく調整する必要があり、また、測定が完了するまで試験器を適切な状態で保持し続けなければならず、作業員の負荷が大きいだけでなく、試験の効率や精度が低下するという問題点があった。
【0016】
尚、特許文献1には、列車の運転席に取り付けられる無線機に、可搬型の試験器を保持するための補助金具を備え、当該補助金具に試験器を取り付けて試験を実施することは記載されていない。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、試験時の作業員の負荷を軽減し、試験の効率及び精度を向上させることができる無線機、試験器、試験システム、及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、車両の前面透過板に近接して取り付けられる無線機であって、無線通信を行う無線機本体と、無線機本体を車両の天井に固定するための取付金具とを備え、取付金具に、無線機本体の試験を行う可搬型の試験器を、前面透過板と無線機本体との間に保持する補助金具が設けられていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、可搬型の試験器であって、上記無線機における無線機本体と通信して試験を行う試験器本体と、補助金具に係合するブラケットと、上記無線機から受信した当該無線機における受信レベルを表示する表示部を備え、表示部は、無線機の試験を行う際に無線機に対向する面に、ブラケットを無線機の補助金具に係合した状態で無線機と重ならず、目視可能な位置に設けられていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、試験システムであって、上記無線機と、上記いずれかの試験器とを備え、無線機が車両の前面透過板に近接して取り付けられた状態で、試験器のブラケットが無線機の補助金具に係合して、試験器が無線機と前面透過板との間に保持されることを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、車両の前面透過板に近接して取り付けられる無線機を、当該無線機と通信を行う試験器で試験する試験方法であって、前面透過板と無線機との間に試験器を挿入し、試験器を無線機に取り付けて試験を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両の前面透過板に近接して取り付けられる無線機であって、無線通信を行う無線機本体と、無線機本体を車両の天井に固定するための取付金具とを備え、取付金具に、無線機本体の試験を行う可搬型の試験器を、前面透過板と無線機本体との間に保持する補助金具が設けられている無線機としているので、可搬型の試験器を無線機に取り付けた状態で試験を行うことができ、試験時の作業員の負荷を軽減すると共に、人手で試験器を保持することによるバラツキを防ぎ、試験の効率及び精度を向上させることができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、上記無線機における無線機本体と通信して試験を行う試験器本体と、補助金具に係合するブラケットと、上記無線機から受信した当該無線機における受信レベルを表示する表示部を備え、表示部は、無線機の試験を行う際に無線機に対向する面に、ブラケットを無線機の補助金具に係合した状態で無線機と重ならず、目視可能な位置に設けられている可搬型の試験器としているので、可搬型の試験器を無線機に取り付けた状態で試験を行うことができ、試験時の作業員の負荷を軽減すると共に、人手で試験器を保持することによるバラツキを防ぎ、試験の効率及び精度を向上させることができ、特に、一人の作業員で、無線機に試験器を取り付けて、表示部を目視しながら試験を実施でき、試験の効率を向上させることができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、上記無線機と、上記いずれかの試験器とを備え、無線機が車両の前面透過板に近接して取り付けられた状態で、試験器のブラケットが無線機の補助金具に係合して、試験器が無線機と前面透過板との間に保持される試験システムとしているので、試験時の作業員の負荷を軽減すると共に、人手で試験器を保持することによるバラツキを防ぎ、試験の効率及び精度を向上させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、車両の前面透過板に近接して取り付けられる無線機を、当該無線機と通信を行う試験器で試験する試験方法であって、前面透過板と無線機との間に試験器を挿入し、試験器を無線機に取り付けて試験を行う試験方法としているので、試験時の作業員の負荷を軽減すると共に、人手で試験器を保持することによるバラツキを防ぎ、試験の効率及び精度を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本試験システムの概略構成を示す斜視図である。
図2】本無線機に本試験器を取り付けた状態を示す斜視図である。
図3】取付金具12及び補助金具13の構成を示す説明図である。
図4】補助金具13の突起部131の構成を示す説明図である。
図5】無線機本体の斜視図である。
図6】本試験器の斜視図である。
図7】ブラケットの取付穴の形状を示す説明図である。
図8】ガイドラインの例を示す説明図である。
図9】従来の無線機の概略構成を示す斜視図である。
図10】従来の試験方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線機(本無線機)は、列車等の車両の運転席の前面透過板に近接して取り付けられる無線機であって、運転席の天井に取り付けるための取付金具を備え、当該取り付け金具に、無線機の試験を行う可搬型の試験器を、前面透過板と無線機との間に保持する補助金具を備えたものであり、補助金具に試験器を保持させれば、無線機と試験器の通信面が互いに対向した状態を保ったまま試験を行うことができ、作業員による角度合わせや試験器の保持作業を無くして作業の負荷を低減し、試験の効率及び測定精度を向上させることができるものである。
【0030】
また、本発明の実施の形態に係る試験器(本試験器)は、本無線機の試験を行う可搬型の試験器であって、本無線機の補助金具に係合するブラケットを備えたものであり、無線機の通信面に対向した状態で容易に固定することができ、作業の負荷を低減し、試験効率や測定精度を向上させることができるものである。
【0031】
また、本発明の実施の形態に係る試験システム(本試験システム)は、本無線機と本試験器とを備えて試験を行うシステムであり、実施の形態に係る試験方法(本試験方法)は、本無線機と本試験器とを用いて試験を行う試験方法である。
【0032】
[本試験システムの概略構成:図1
本試験システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本試験システムの概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本試験システムは、列車等の車両の運転席に取り付けられた無線機(本無線機)10と、持ち運び可能で、無線機10の試験を行う試験器(本試験器)20とを備えている。尚、実施の形態においては、無線機10を鉄道の列車車両の運転席に取り付けた場合を例として説明するが、これに限るものではない。
ここで、無線機10は、従来の無線機30と同様に、列車車両の運転席の天井に、前面透過板に近接して取り付けられるものである。無線機10と前面透過板との間隔は約10cmである。
また、前面透過板とは、車両の前面を覆う保護部材(フロントガラス)を総称しており、ガラスやアクリル等の透明部材で構成されたものである。
【0033】
本無線機10は、無線機本体11と、取付金具12と、本無線機10の特徴部分である補助金具13とを備えている。
無線機本体11は、図9に示した従来の無線機本体31と同様に、地上無線機と無線通信を行う通信装置である。
また、取付け金具12は、従来の取り付け金具32と同等のものである。取付金具12の構成については後述する。
【0034】
補助金具13は、本試験システムの特徴部分であり、取付金具12に固定されて、本試験器20を本無線機11の前面(電波放射面、図1の手前側の面)に対向するように保持するものである。補助金具13には、本試験器20と係合するための複数の突起部が設けられている。補助金具13の構成については後述する。
【0035】
本試験器20は、試験器本体21と、ブラケット22とを備えている。
試験器本体21は、可搬型の試験器であり、無線機本体11と通信を行って無線機本体11の試験を実施する。
ブラケット22は、本システムの特徴部分の係合部であり、試験器本体21の左側面部、上部、右側面部に亘って略コの字型に張り出すように設けられた金属(例えばステンレス)製の板状の部材である。ブラケット22には、複数の穴が形成されており、当該穴が無線機10の補助金具13の突起部に係合することにより、本試験器20が本無線機10の前面に保持されるものである。
本試験器20の厚みは約5cmであり、ブラケット22の厚みは約2mmである。
【0036】
[本無線機に本試験器を取り付けた状態:図2
本無線機10に本試験器20を取り付けた状態について図2を用いて説明する。図2は、本無線機10に本試験器20を取り付けた状態を示す斜視図である。本システム及び本方法では、図2の状態で試験を実施するものである。
図2に示すように、本試験器20において、試験器本体21は、本無線機10に面した面(図2では奥側の面)が電波放射面となっている。
そして、本試験器20のブラケット22が、本無線機10の補助金具13に係合することにより、試験器本体21の電波放射面が、無線機本体11の電波放射面と対向し、近接した状態で保持される。
【0037】
つまり、本試験システムでは、煩雑な試験器の角度調整を行わなくても、最適な状態で試験器と無線機とを対向させて試験を実施することができ、更に作業員が手で試験器を保持する必要がないため、作業を軽減すると共に、誤差の発生を抑えることができるものである。
【0038】
また、本システムでは、本試験器20を、本無線機10と同様に運転席に設置できるため、1人の作業員で試験を実施することができるものである。更に、本試験器20に測定器を接続して性能測定を行う場合でも、1人で実施できるものである。これにより、試験を効率的に行うことが可能となる。
【0039】
ここで、試験器本体21は、従来の試験器と同様のテストデータ(試験用のデータ)を保持しており、試験時にはテストデータを送信し、無線機10から送信された当該無線機10における受信レベルを示すデータを受信して、後述する受信レベル表示部に表示する。
但し、従来の試験器40と比べて、本試験器20では、被試験器である無線機本体11との距離が短いため、アッテネータ(減衰器)が挿入されており、図2の状態で最適な試験が実施できるよう、送信レベルが適切に調整されている。
【0040】
同様に、無線機本体11も、実運用における地上無線機との送受信に比べて、試験時は通信距離が短いので、送信レベルが適切となるよう、設定されている。例えば、外部から、「運用」「試験」の動作モードを切り替えることにより、適切な送信レベルで試験を行うことが可能である。
試験器20及び無線機10の適切な送信レベルは、予め実験又はシミュレーションによって求められる。
【0041】
上述したように、本無線機10は、列車車両の運転席の天井に、車両の前面透過板から約10cmの間隔で取り付けられている。
そのため、実際の試験時には、作業員は、本無線機10の下側から、前面透過板と補助金具13との間に本試験器20を挿入して、本試験器20のブラケット22の穴を補助金具13の突起部に引っ掛けて取り付ける。
【0042】
[取付金具12及び補助金具13の構成:図3
次に、本無線機10の取付金具12及び補助金具13の構成について図3を用いて説明する。図3は、取付金具12及び補助金具13の構成を示す説明図である。
図3に示すように、取付金具12は、図9に示した従来の取り付け金具32と同様の構成であり、上面の中央部には円形の穴が形成され、当該穴の周囲に、運転席の天井に固定するための取付穴121が4個形成されている。取付穴121は、細長い形状(長穴)に形成され、水平方向の角度調整を可能としている。
【0043】
また、取付金具12の両側面には、無線機本体11を取付金具12に固定する取付穴122a,122bが形成されている。ここで、下側の取付穴122bは長穴となっており、上側の取付穴12aを軸として、無線機本体11の垂直方向の角度を調整可能となっている。
【0044】
補助金具13は、下側に開口した略コの字型の前面部と、左右の側面部とを備えている。
前面部には、本試験器20のブラケット22と係合する複数の突起部131が設けられている。突起部131は、試験器本体21の電波放射面が、無線機本体11から適切な距離で、且つ無線機本体11の電波放射面と平行に保持されるよう、設置位置や長さが調整されている。突起部131については後述する。
【0045】
また、補助金具13の左右の側面部には、補助金具13を、取付金具12の側面を介して無線機本体11に固定するための取付穴132が2つ形成されている。取付穴132は長穴ではない。
そして、補助金具13の取付穴132、取付金具12の取付穴122a,122bを通るように、ボルト(図示せず)を挿入して、補助金具13の側面を取付金具12及び無線機11の側面に固定する。
これにより、本無線機10では、無線機本体11と補助金具13の位置関係は固定されたものとなる。
【0046】
また、補助金具13は、図9に示した従来の無線機30において、無線機本体31を取付金具32から取り外さなくても取り付けることが可能であり、従来の無線機30を容易に本無線機10の構成に変更することができるものである。
補助金具13の取り付け後に、車上無線機との通信のために垂直方向の調整を行う必要がある場合には、下側のボルト(取付穴122bに嵌合している)を緩めて調整を行うことが可能である。
【0047】
尚、ここでは、取付金具12と補助金具13とを別々の構成として記載しているが、一体に構成してもよい。
この場合には、無線機が上方向又は下方向に傾いた状態で運用されていても、試験の際には、無線機を取付金具に垂直に取り付けることにより、本試験器20の電波放射面と平行になるようにする。
【0048】
[補助金具13の突起部131:図4
次に補助金具13の突起部131の構成について図4を用いて説明する。図4は、補助金具13の突起部131の構成を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図13(a)(b)に示すように、突起部131は、先端部分と根元部分の間に、径が細くなったくびれ部133が形成されている。
後述するように、くびれ部133を形成したことにより、本試験器20のブラケット22に設けられた取付穴がくびれ部133に嵌合して安定し、少しの接触や振動で試験器20がずれたり外れたりするのを防ぐものである。
試験器20を、補助金具13の突起部131に正しく取り付けた場合、無線機本体11と試験器本体21との間の隙間は1mm~2mm程度となる。
【0049】
[無線機の構成:図5
次に、無線機本体11の構成について図5を用いて説明する。図5は、無線機本体の斜視図である。
図5に示すように、無線機本体11は、従来の無線機本体31とほぼ同様の構成であり、略直方体の筐体の内部に、無線通信に伴う処理を行う回路部が設けられている。
図の手前側の面が電波放射面114であり、送受信面となっている。本無線機10は、無線機本体11の電波放射面114が列車の運転席の前面透過板に対向するように取り付けられる。
側面部には、取付金具12及び補助金具13を固定するための取付穴115が設けられており、図示しないボルトによって取付金具12及び補助金具13が固定される。
【0050】
[試験器の構成:図6
次に、本試験器20の構成について図6を用いて説明する。図6は、本試験器の斜視図である。
図6に示すように、本試験器20は、薄いケースの内部に、試験及び無線通信に必要な回路部品が搭載されたシャーシ(基板)が収納され、固定されている。
そして、当該基板にブラケット22が固定されている。つまり、ブラケット22は、外側から見える部分だけでなく、ケース内部のシャーシまで届く大きさ及び形状となっている。
【0051】
本試験器20のケースは、表面ケースと裏面ケースとで構成され、一方の面のケース(ここでは表面ケースとする)の両側面部には、持ち手213が設けられている。持ち手213は、裏面ケースに設けてもよい。
ケースの表面側の上部3分の1程度が電波放射面214となっている。
【0052】
また、図示は省略するが、本試験器20の一方の面のケース(ここでは裏面ケースとする)の上部約3分の1の外周部には、ブラケット22を挟んだ状態でケースを閉じるために、その厚みを吸収する切り欠き部が形成されている。切り欠き部は、表面ケースに形成してもよい。
これにより、表面ケースと裏面ケースとの間にブラケット22がぴったり挟まった状態で固定されるものである。
【0053】
ブラケット22には、無線機10の補助金具13の突起部131に係合する取付穴221が設けられている。
取付穴221は、試験器本体21を無線機本体11に正しく対向させた場合に突起部131に係合する位置に形成され、更に、係合させやすく、少しの振動では外れにくい形状に形成されている。
取付穴221の形状については後述する。
【0054】
そして、試験器本体21の表面には、受信レベル表示部215が設けられている。受信レベル表示部215は、複数のLEDを備え、試験器本体21が、無線機本体11から通知された無線機本体11における受信レベルに応じて、段階的にLEDを点灯させるようになっている。
【0055】
ここで、受信レベル表示部215は、本試験器20を本無線機10に取り付けた状態において、本無線機10の陰に隠れてしまわないよう(本無線機10と重ならないよう)、試験器本体21の表面の下の方に設けられている。
受信レベル表示部215をこの位置に設けることにより、試験を行う作業員が、運転席側から試験器本体21の受信レベル表示部215を目視して、無線機本体11の受信レベルを確認することができるものである。
尚、受信レベル表示部215以外のスイッチ等も、試験時に本無線機10と重ならない位置に設けられている。
【0056】
[ブラケットの取付穴の形状:図7
次に、本試験器20のブラケット22の取付穴221の形状について図7を用いて説明する。図7は、ブラケットの取付穴の形状を示す説明図である。
図7に示すように、ブラケット22の取付穴221は、径が大きい下穴221aと、径が小さい上穴221bとが接続されたダルマ型の形状となっている。
これは、本試験器20の取付作業を容易にすると共に、安定して本無線機10に係合させるためである。
【0057】
本試験器20を本無線機10に取り付ける際には、作業員が本試験器20の持ち手213を両手で持って、本無線機10と列車の前面透過板との間に挿入し、ブラケット22の取付穴221を、補助金具13の突起部131に係合させるが、係合箇所は本無線機10の陰になるため、作業員は、係合箇所を直接目視することはできない。
【0058】
しかし、ブラケット22の取付穴221をダルマ型とすることで、作業員が、目安の位置より若干上側からブラケット22の補助金具13への係合を試みた場合、下穴221aの径は大きいので比較的容易に突起部131に係合させることができるものである。
更に、下穴221aに係合した後は、本試験器20は自重によって上穴221bで突起部131に係合する位置まで降下する。上穴221bは径が小さいため、突起部131との間の隙間が狭くなって、本試験器20が揺れたり外れたりするのを防ぎ、安定した状態で試験を実施できるものである。
【0059】
本試験器20を本無線機10から取り外す際には、作業員は、本試験器20を一旦上方向に持ち上げて、下穴221aが突起部131と重なるようにしてから、取り外す。
ブラケット22の取付穴221をこのような形状とすることにより、本試験器20を容易に本無線機10に着脱可能とすると共に、意図せずに外れてしまうのを防ぐことができるものである。
【0060】
尚、本実施の形態では、無線機10の補助金具13に突起部131を設け、試験器20のブラケット22に取付穴221を設けているが、これとは反対に、無線機10の補助金具13に取付穴を設け、試験器20のブラケット22に突起部を設けてもよい。
この場合には、ブラケット22の突起部が、無線機10の無線機本体11と取付金具12との間、若しくは取付金具12の上部と天井との間に挿入されるように形成される。
【0061】
[ガイドラインの例:図8
次に、本試験器20に設けられるガイドラインの例について図8を用いて説明する。図8は、ガイドラインの例を示す説明図である。
上述したように、試験の際には、作業員が、本送信機10と列車の前面透過板との間に、下から本試験器20を挿入して、ブラケット22と本無線機10の補助金具13とを係合させるが、係合箇所は無線機の陰になるため、作業員は目視することはできない。
【0062】
そこで、本試験器20では、作業員が本試験器20をどのくらいまで持ち上げれば係合できるかの目安となるガイドラインを設けている。
図8に示すように、ガイドライン218は、試験器本体21の表面ケースの上から3分の1程度のところに、試験器本体21の短辺に平行な線として描画されている。
作業員は、ガイドライン218が無線機10に隠れる程度まで本試験器20を持ち上げてから、ブラケット22の取付穴221を補助金具13の突起部131に係合させる。
これにより、本試験器20の取付作業を容易にすることができるものである。
【0063】
尚、ここでは、ガイドライン218は、試験器本体21の長辺同士を結ぶ1本の直線として描かれているが、両端部のみ、中央部のみ等、図8のガイドライン218の一部を示すものであってもよい。また、線に限らず、マークであってもよい。
【0064】
[実施の形態の効果]
本無線機10によれば、列車車両の運転席の前面透過板に近接して取り付けられる無線機であって、無線機本体11と、運転席の天井に取り付けるための取付金具12を備え、当該取り付け金具12に、無線機本体11の試験を行う可搬型の試験器を、前面透過板と無線機本体11との間に保持する補助金具13を備えた無線機としているので、補助金具13に可搬型の試験器(本試験器20)を保持させれば、本無線機10と本試験器20の通信面が互いに対向した状態を保ったまま試験を行うことができ、作業員による角度合わせや試験器の保持作業を無くして作業の負荷を低減し、試験の効率及び測定精度を向上させることができる効果がある。
【0065】
また、本試験器20によれば、本無線機10の無線機本体11と通信して試験を行う可搬型の試験器であって、本無線機10の補助金具13に係合するブラケット22を備えたものであり、本無線機10の通信面に対向した状態で容易に固定することができ、作業の負荷を低減し、作業員によるバラツキを無くし、試験効率や測定精度を向上させることができる効果がある。
【0066】
また、本試験器20によれば、本無線機10の受信レベルを表示する受信レベル表示部215を備え、受信レベル表示部215が、本無線機10の補助金具13にブラケット22が係合した状態で、本無線機10に対向する面に、本無線機10とは重ならず、運転席から目視可能な位置に設けられているので、試験中に作業員が受信レベル表示部215を目視で確認することができ、1人の作業員で試験を実施できる効果がある。
【0067】
また、本試験器20によれば、ブラケット22を補助金具13に係合させる際の高さの目安となるガイドラインを設けているので、取付作業を容易にすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、列車等の車両の運転席に取り付けられる無線機に対する試験時の作業員の負荷を軽減し、試験の効率及び精度を向上させることができる無線機、試験器、試験システム、及び試験方法に適している。
【符号の説明】
【0069】
10,30…無線機、 11,31…無線機本体、 12,32…取付金具、 13…補助金具、 20,40…試験器、 21…試験器本体、 22…ブラケット、 50…測定器、 114,214…電波放射面、 115,121,122a,122b,221,321…取付穴、 131…突起部、 133…くびれ部、 213…持ち手、 215…受信レベル表示部、 221a…下穴、 221b…上穴、 218…ガイドライン
図1
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