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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】歯車および歯車機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/14 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
F16H55/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020008239
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021116818
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】305018823
【氏名又は名称】盛岡セイコー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】柏田 将大
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 広通
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-149662(JP,U)
【文献】特開2007-205480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が複数形成された歯車本体と、
前記貫通孔それぞれの内側に配置され、両端部が前記貫通孔の内周縁に接続し、前記両端部の間に前記両端部よりも前記歯車本体の軸方向に突出した突出部を有する弾性腕部と、
を備え
前記歯車本体は、前記軸方向を向く主面を有し、
前記弾性腕部は、前記歯車本体の前記主面に連なる面を有するとともに、前記両端部のそれぞれから前記突出部まで前記軸方向に対して傾斜して延びている、
ことを特徴とする歯車。
【請求項2】
貫通孔が複数形成された歯車本体と、
前記貫通孔それぞれの内側に配置され、両端部が前記貫通孔の内周縁に接続し、前記両端部の間に前記両端部よりも前記歯車本体の軸方向に突出した突出部を有する弾性腕部と、
を備え、
前記弾性腕部は、前記突出部から前記両端部に向かうに従い、前記軸方向に漸次薄くなっている、
ことを特徴とする歯車。
【請求項3】
貫通孔が複数形成された歯車本体と、
前記貫通孔それぞれの内側に配置され、両端部が前記貫通孔の内周縁に接続し、前記両端部の間に前記両端部よりも前記歯車本体の軸方向に突出した突出部を有する弾性腕部と、
を備え、
前記弾性腕部は、前記両端部から前記突出部に向かうに従い、前記軸方向に漸次薄くなっている、
ことを特徴とする歯車。
【請求項4】
貫通孔が複数形成された歯車本体と、
前記貫通孔それぞれの内側に配置され、両端部が前記貫通孔の内周縁に接続し、前記両端部の間に前記両端部よりも前記歯車本体の軸方向に突出した突出部を有する弾性腕部と、
を備え、
前記弾性腕部は、前記両端部から離れた箇所のみで前記軸方向に屈曲している、
ことを特徴とする歯車。
【請求項5】
貫通孔が複数形成された歯車本体と、
前記貫通孔それぞれの内側に配置され、両端部が前記貫通孔の内周縁に接続し、前記両端部の間に前記両端部よりも前記歯車本体の軸方向に突出した突出部を有する弾性腕部であって、前記突出部が前記軸方向の第1側に突出した第1弾性腕部と、
前記弾性腕部であって、前記突出部が前記軸方向の第2側に突出した第2弾性腕部と、
を備えることを特徴とする歯車。
【請求項6】
前記突出部は、前記軸方向から見て前記歯車本体の回転中心を囲うように配置されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の歯車。
【請求項7】
前記突出部は、前記歯車本体の回転中心回りに等角度間隔で並んでいる、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の歯車。
【請求項8】
前記歯車本体は、前記軸方向を向く主面を有し、
前記弾性腕部は、前記歯車本体の前記主面に連なる面を有する、
ことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の歯車。
【請求項9】
前記突出部は、前記軸方向から見て前記両端部を通る直線から離れた位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の歯車。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の歯車と、
前記歯車と相対回転可能に配置され、前記歯車の前記突出部が接触する対向部材と、
を備えることを特徴とする歯車機構。
【請求項11】
貫通孔が複数形成された歯車本体、および前記貫通孔それぞれの内側に配置され、両端部が前記貫通孔の内周縁に接続する弾性腕部を有し、前記弾性腕部が前記両端部の間に前記両端部よりも前記歯車本体の軸方向に突出した突出部を有する、互いに噛み合う一対の歯車と、
前記一対の歯車と相対回転可能に配置され、前記一対の歯車のうち一方の歯車の前記突出部が接触する第1対向部材と、
前記一対の歯車と相対回転可能に配置され、前記一対の歯車のうち他方の歯車の前記突出部が接触する第2対向部材と、
を備えることを特徴とする歯車機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車および歯車機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車を有する機構にあっては、歯車が他の部品との接触により回転を妨げられることのないように、歯車と歯車の周囲の部品との間に隙間を設けている。しかし、歯車の周囲の隙間によって歯車が傾く場合がある。歯車が傾くと、他の歯車との噛み合いが悪化する。そこで、箔材により形成されたばね性を有する針座を歯車の周囲の隙間に配置して、歯車の傾きを抑制する場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4878408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、針座は箔材により薄く形成されているため、軽量でハンドリング性に難がある。また、針座は、微小な外力で姿勢を崩すので、自動ラインで組み込む際の組み込み性が悪い。さらに、歯車と針座とが別部材であるため、それぞれの累積公差により組上がり寸法が規定値に収まらない可能性がある。また、歯車と針座とが別部材であるため、組み立て工数が増加する傾向にある。したがって、従来技術の歯車にあっては、針座を用いることなく姿勢の安定化を図るという点で改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、針座を用いることなく姿勢を安定化できる歯車、およびその歯車を備えた歯車機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歯車は、貫通孔が複数形成された歯車本体と、前記貫通孔それぞれの内側に配置され、両端部が前記貫通孔の内周縁に接続し、前記両端部の間に前記両端部よりも前記歯車本体の軸方向に突出した突出部を有する弾性腕部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、歯車本体に対して軸方向に対向する部材に突出部を接触させることで、弾性腕部により歯車本体を軸方向に付勢することができる。これにより、針座を用いることなく歯車の姿勢を安定化できる。
【0008】
上記の歯車において、前記突出部は、前記軸方向から見て前記歯車本体の回転中心を囲うように配置されていてもよい。
【0009】
本発明によれば、歯車本体の回転中心回りのいずれの180°領域においても、少なくとも1つの突出部が歯車本体に対して軸方向に対向する部材に接触する。このため、歯車の軸を傾けることなく、歯車本体を軸方向に均等に付勢できる。したがって、歯車の姿勢をより安定化できる。
【0010】
上記の歯車において、前記突出部は、前記歯車本体の回転中心回りに等角度間隔で並んでいてもよい。
【0011】
本発明によれば、歯車本体の回転時の摺動箇所が歯車本体の回転中心回りに均等に配置されるので、歯車に作用する負荷に偏りが生じることを抑制できる。したがって、歯車の偏摩耗を抑制して信頼性を向上させることができる。
【0012】
上記の歯車において、前記歯車本体は、前記軸方向を向く主面を有し、前記弾性腕部は、前記歯車本体の前記主面に連なる面を有していてもよい。
【0013】
歯車本体の主面と、弾性腕部における歯車本体の主面と同じ側に向く面と、の間に段差部が形成されると、段差部に応力集中が生じて歯車本体と弾性腕部との接続部が破損する可能性がある。本発明によれば、歯車本体の主面が弾性腕部の外面に連なるので、歯車本体と弾性腕部との接続部に応力集中が生じることを抑制できる。したがって、歯車の破損を抑制して信頼性を向上させることができる。
【0014】
上記の歯車において、前記弾性腕部は、前記突出部から前記両端部に向かうに従い、前記軸方向に漸次薄くなっていてもよい。
【0015】
本発明によれば、弾性腕部が一定の厚さで延びた構成と比較して、弾性腕部を撓みやすく形成することができる。さらに、弾性腕部は突出部に対する基端側で薄くなるので、両端部から突出部に向かうに従い漸次薄くなる構成と比較して、突出部の軸方向の変位におけるばね定数を小さく設定しやすい。したがって、弾性腕部による歯車本体の付勢力を微小に設定しやすい歯車とすることができる。
【0016】
上記の歯車において、前記弾性腕部は、前記両端部から前記突出部に向かうに従い、前記軸方向に漸次薄くなっていてもよい。
【0017】
本発明によれば、弾性腕部が一定の厚さで延びた構成と比較して、弾性腕部を撓みやすく形成することができる。したがって、弾性腕部による歯車本体の付勢力を微小に設定しやすい歯車とすることができる。
【0018】
上記の歯車において、前記突出部は、前記軸方向から見て前記両端部を通る直線から離れた位置に配置されていてもよい。
【0019】
本発明によれば、突出部が自由端とされ、かつ両端部が固定端とされた片持ち梁のように弾性腕部を形成できる。このため、突出部が軸方向から見て両端部を通る直線上に配置された構成と比較して、突出部の軸方向の変位におけるばね定数を小さく設定しやすい。したがって、弾性腕部による歯車本体の付勢力を微小に設定しやすい歯車とすることができる。
【0020】
上記の歯車において、前記弾性腕部は、前記両端部から離れた箇所のみで前記軸方向に屈曲していてもよい。
【0021】
本発明によれば、歯車をプレス加工で形成する際、曲げ加工が弾性腕部のみで行われるので、歪みが歯車本体に及ぶことを抑制できる。したがって、加工精度の高い歯車を提供できる。
【0022】
上記の歯車において、前記弾性腕部であって、前記突出部が前記軸方向の第1側に突出した第1弾性腕部と、前記弾性腕部であって、前記突出部が前記軸方向の第2側に突出した第2弾性腕部と、を備えていてもよい。
【0023】
本発明によれば、第1弾性腕部および第2弾性腕部により歯車本体を軸方向の両側に付勢することができる。
【0024】
本発明の歯車機構は、上記の歯車と、前記歯車と相対回転可能に配置され、前記歯車の前記突出部が接触する対向部材と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、針座を用いることなく姿勢が安定化された歯車を有するので、針座により歯車が付勢された構成と比較して、組み立て工数の削減、および自動ラインでの組み込み性の向上を図ることができる。また、歯車および針座を別部材として備える構成のように累積公差が増大することを抑制できる。
【0026】
本発明の歯車機構は、上記の歯車であり、互いに噛み合う一対の歯車と、前記一対の歯車と相対回転可能に配置され、前記一対の歯車のうち一方の歯車の前記突出部が接触する第1対向部材と、前記一対の歯車と相対回転可能に配置され、前記一対の歯車のうち他方の歯車の前記突出部が接触する第2対向部材と、を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、針座を用いることなく姿勢が安定化された一対の歯車を有するので、針座により歯車が付勢された構成と比較して、組み立て工数の削減、および自動ラインでの組み込み性の向上を図ることができる。また、歯車および針座を別部材として備える構成のように累積公差が増大することを抑制できる。さらに、一対の歯車の軸方向における相対位置がずれることを抑制できる。これにより、一対の歯車によるトルクの伝達効率を安定化することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、針座を用いることなく姿勢を安定化できる歯車、およびその歯車を備えた歯車機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態の歯車機構を示す断面図である。
図2】第1実施形態の第2歯車を示す斜視図である。
図3】第1実施形態の第1変形例の第2歯車を示す斜視図である。
図4】第1実施形態の第2変形例の第2歯車を示す斜視図である。
図5】第2実施形態の第2歯車を示す斜視図である。
図6】第3実施形態の第2歯車を示す斜視図である。
図7】第4実施形態の第2歯車を示す側面図である。
図8】第5実施形態の第2歯車を示す側面図である。
図9】第6実施形態の第2歯車を示す側面図である。
図10】第7実施形態の歯車機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0031】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の歯車機構を示す断面図である。
図1に示すように、歯車機構1は、動力を伝達する複数の歯車11,12,13と、複数の歯車11,12,13を回転可能に支持する第1支持部材21(第1対向部材)および第2支持部材22(第2対向部材)と、を備える。なお、以下の説明では、第2支持部材22から第1支持部材21に向かう方向を上側、その反対側を下側として説明する。
【0032】
複数の歯車11,12,13は、動力の伝達経路に沿って並ぶ第1歯車11、第2歯車12、および第3歯車13を備える。各歯車11,12,13は、軸方向が上下方向に一致するように配置されている。各歯車11,12,13は、円盤状に形成され外周部に歯を有する歯車本体30と、歯車本体30を支持する歯車軸35と、を備える。歯車本体30は、樹脂材料、または金属材料により形成されている。歯車本体30は、樹脂材料により形成される場合、射出成形によって形成される。歯車本体30は、金属材料により形成される場合、プレス加工や電鋳加工等により形成される。第2歯車12の歯車本体30は、第1歯車11および第3歯車13それぞれの歯車本体30と噛み合っている。歯車本体30の中心部には、歯車軸35が挿入される軸孔が形成されている。
【0033】
歯車軸35は、歯車本体30の軸孔に嵌入されている。歯車軸35は、第1支持部材21および第2支持部材22に回転可能、かつ第1支持部材21および第2支持部材22に対して径方向に移動不能に支持されている。第1歯車11の歯車軸35は、円筒状に形成されている。第1歯車11の歯車軸35は、歯車本体30から上方に突出して第1支持部材21に外周面を支持されている。第1歯車11の歯車軸35は、歯車軸35の内側に挿入された軸により、第2支持部材22に支持されている。第2歯車12および第3歯車13それぞれの歯車軸35は、歯車本体30から上下両側に突出して、第1支持部材21および第2支持部材22に外周面を支持されている。なお、歯車軸35は、歯車本体30と一体的に形成されていてもよい。
【0034】
図2は、第1実施形態の第2歯車を示す斜視図である。なお、図2では歯車軸35の図示を省略している(他の斜視図も同様)。
図2に示すように、第2歯車12の歯車本体30には、複数の貫通孔31が形成されている。本実施形態では、貫通孔31は2個設けられている。複数の貫通孔31は、歯車軸35(図1参照)の周囲に形成されている。2個の貫通孔31は、互いに歯車本体30の中心軸線に対して2回対称に形成されている。各貫通孔31は、上下方向から見て矩形状に形成されている。各貫通孔31は、上下方向から見て長手方向の両端部が歯車本体30の回転中心から同じ距離に位置するように形成されている。各貫通孔31の内面は、上下方向に一様に延びている。ただし、貫通孔31の形状は特に限定されない。
【0035】
第2歯車12は、複数の弾性腕部40をさらに備える。弾性腕部40は、貫通孔31それぞれの内側に1個ずつ配置されている。弾性腕部40は、上下方向から見て各貫通孔31内を延在している。弾性腕部40は、上下方向から見て直線状に延びている。弾性腕部40は、上下方向から見て両端部41が歯車本体30の回転中心から同じ距離に位置するように配置されている。これにより本実施形態では、弾性腕部40は、上下方向から見て貫通孔31の長手方向に沿って延びている。弾性腕部40の両端部41は、貫通孔31の内周縁に接続している。弾性腕部40は、歯車本体30と一体的に形成されている。すなわち、弾性腕部40と歯車本体30との接続部は連続性を有している。
【0036】
弾性腕部40は、両端部41の間に両端部41よりも上方に突出した突出部42を有する。突出部42は、歯車本体30の全体よりも上方に突出している。なお突出部42は、歯車本体30のうち上下方向から見て弾性腕部40の回転軌跡と重なる部分よりも上方に突出していればよい。突出部42は、弾性腕部40の両端部41間の中央に位置している。これにより、弾性腕部40は、上下方向から見て歯車本体30と同心かつ突出部42を通る円周の接線方向に延びている。複数の弾性腕部40の突出部42は、歯車本体30の回転中心回りに等角度間隔(180°間隔)で並んでいる。突出部42は、歯車本体30の径方向で互いに同じ位置に位置している。
【0037】
弾性腕部40は、突出部42と端部41との間の部分を撓ませることで、突出部42を上下方向に弾性的に変位させる。弾性腕部40は、各端部41から突出部42に向けて、上下方向に直交する面方向に対して一定の傾斜角で延びている。弾性腕部40は、歯車本体30と同じ一定の厚さで両端部41間を延びている。弾性腕部40の上面40aは、弾性腕部40の端部41において歯車本体30の上面30a(主面)に連なっている。弾性腕部40の下面40bは、弾性腕部40の端部41において歯車本体30の下面30b(主面)に連なっている。弾性腕部40の上面40aは、突出部42において湾曲している。これにより、突出部42の上端部は、曲面上に位置している。複数の突出部42の上端部は、上下方向で互いに同じ位置に位置している。突出部42の上端部は、第1支持部材21の下面に摺接している(図1参照)。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態の第2歯車12は、歯車本体30に形成された貫通孔31それぞれの内側に配置され、両端部41が貫通孔31の内周縁に接続した弾性腕部40を備える。弾性腕部40は、両端部41の間に両端部41よりも上方に突出した突出部42を有する。この構成によれば、第1支持部材21に突出部42を接触させることで、弾性腕部40により歯車本体30を下方に付勢することができる。これにより、針座を用いることなく第2歯車12の姿勢を安定化できる。
【0039】
弾性腕部40は、上下方向から見て直線状に延び、両端部41が貫通孔31の内周縁に接続している。この構成によれば、弾性腕部40は、突出部42が下方に変位する際、両端部41が間隔を広げる方向に、貫通孔31の内周縁を押圧する。このため、弾性腕部の一端部のみが貫通孔31の内周縁に接続する構成と比較して、弾性腕部40の端部41に作用するモーメントを小さくできる。よって、弾性腕部40と歯車本体30との接続部に過度の負荷が掛かり、塑性変形等の不具合が生じることを抑制できる。
【0040】
弾性腕部40は、上下方向から見て歯車本体30と同心かつ突出部42を通る円周の接線方向に延びている。この構成によれば、歯車本体30の回転時に突出部42に作用する摺動抵抗の向きを弾性腕部40の延在方向に沿わせることができる。これにより、突出部42の摺動時に、弾性腕部40に捻じれ方向の力が作用することを抑制できる。したがって、摺動抵抗の向きが弾性腕部の延在方向に交差する構成と比較して、突出部42と第1支持部材21との摺動に対する弾性腕部40の強度を向上させることができる。
【0041】
突出部42は、歯車本体30の回転中心回りに等角度間隔で並んでいる。この構成によれば、歯車本体30の回転時の摺動箇所が歯車本体30の回転中心回りに均等に配置されるので、第2歯車12に作用する負荷に偏りが生じることを抑制できる。したがって、第2歯車12の歯車軸35等の偏摩耗を抑制して信頼性を向上させることができる。
【0042】
弾性腕部40は、歯車本体30の上面30aに連なる上面40a、および歯車本体30の下面30bに連なる下面40bを有する。ここで、歯車本体30の上面30aと、弾性腕部の上面と、の間に段差部が形成されると、段差部に応力集中が生じて歯車本体30と弾性腕部との接続部が破損する可能性がある。本実施形態によれば、歯車本体30の上面30aが弾性腕部40の上面40aに連なり、歯車本体30の下面30bが弾性腕部40の下面40bに連なるので、歯車本体30と弾性腕部40との接続部に応力集中が生じることを抑制できる。したがって、第2歯車12の破損を抑制して信頼性を向上させることができる。
【0043】
本実施形態の歯車機構1は、第2歯車12と相対回転可能に配置され、突出部42が接触する第1支持部材21を備える。この構成によれば、針座を用いることなく姿勢が安定化された第2歯車12を有するので、針座により歯車が付勢された構成と比較して、組み立て工数の削減、および自動ラインでの組み込み性の向上を図ることができる。また、歯車および針座を別部材として備える構成のように累積公差が増大することを抑制できる。
【0044】
なお、第1実施形態では、第2歯車12に弾性腕部40が2個設けられているが、弾性腕部40の数はこれに限定されない。図3に示すように、第2歯車12に弾性腕部40が3個設けられていてもよいし、図4に示すように第2歯車12に弾性腕部40が4個設けられていてもよい。さらに、第2歯車12に弾性腕部40が5個以上設けられていてもよい。いずれの場合であっても、歯車本体30には、弾性腕部40が配置される貫通孔31が弾性腕部40と同数形成されている。弾性腕部40が3個以上設けられている場合には、複数の弾性腕部40の突出部42は上下方向から見て歯車本体30の回転中心を囲うように配置されていることが望ましい。つまり、複数の突出部42は、上下方向から見て突出部42を頂点とする多角形が歯車本体30の回転中心に重なるように配置されていることが望ましい。より望ましくは、突出部42は、歯車本体30の回転中心回りに等角度間隔で並んでいることがより望ましい。
【0045】
突出部42を上下方向から見て歯車本体30の回転中心を囲うように配置することで、歯車本体30の回転中心回りのいずれの180°領域においても、少なくとも1つの突出部42が第1支持部材21に接触する。このため、歯車軸35を傾けることなく、歯車本体30を下方に均等に付勢できる。したがって、第2歯車12の姿勢をより安定化できる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、図5を参照して、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態の第2歯車を示す斜視図である。なお、図5では歯車本体30の一部を破断した状態を示している。
第2実施形態は、歯車本体30から下方に突出した下側弾性腕部140Bを備える点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0047】
図5に示すように、第2歯車12は、上方に突出した突出部42を有する上側弾性腕部40A(第1弾性腕部)と、下方に突出した突出部142を有する下側弾性腕部140B(第2弾性腕部)と、を備える。上側弾性腕部40Aは、第1実施形態の弾性腕部40と同様に形成されている。下側弾性腕部140Bは、歯車本体30の貫通孔31の内側に配置されている。下側弾性腕部140Bは、上側弾性腕部40Aを上下反転した形状に形成されている。下側弾性腕部140Bの両端部141は、貫通孔31の内周縁に接続している。なお、本実施形態において、第2歯車12の歯車本体30には、上側弾性腕部40Aが配置される貫通孔31に加え、下側弾性腕部140Bが配置される貫通孔31が形成されている。
【0048】
下側弾性腕部140Bは、両端部141の間に両端部141よりも下方に突出した突出部142を有する。突出部142は、歯車本体30の全体よりも下方に突出している。なお突出部142は、歯車本体30のうち上下方向から見て下側弾性腕部140Bの回転軌跡と重なる部分よりも下方に突出していればよい。突出部142は、下側弾性腕部140Bの両端部141間の中央に位置している。
【0049】
上側弾性腕部40Aの突出部42、および下側弾性腕部140Bの突出部142は、歯車本体30の回転中心回りに等角度間隔(90°間隔)で交互に並んでいる。これにより、下側弾性腕部140Bの突出部142は、歯車本体30の回転中心回りに等角度間隔(180°間隔)で並んでいる。上側弾性腕部40Aの突出部42、および下側弾性腕部140Bの突出部142は、歯車本体30の径方向で互いに同じ位置に位置している。
【0050】
下側弾性腕部140Bは、各端部141から突出に向けて、上下方向に直交する面方向に対して一定の傾斜角で延びている。下側弾性腕部140Bは、歯車本体30と同じ一定の厚さで両端部141間を延びている。下側弾性腕部140Bの下面140aは、下側弾性腕部140Bの端部141において歯車本体30の下面30bに連なっている。下側弾性腕部140Bの上面140bは、下側弾性腕部140Bの端部141において歯車本体30の上面30aに連なっている。下側弾性腕部140Bの下面140aは、突出部142において湾曲している。これにより、突出部142の下端部は、曲面上に位置している。複数の突出部142の下端部は、上下方向で互いに同じ位置に位置している。突出部142の下端部は、第2支持部材22(図1参照)の上面に摺接している。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態の歯車機構1は、上側弾性腕部40Aに加え、突出部142が下方に突出した下側弾性腕部140Bをさらに備える。この構成によれば、上側弾性腕部40Aおよび下側弾性腕部140Bにより歯車本体30を上下両側に付勢することができる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、図6を参照して、第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態の第2歯車を示す斜視図である。
第1実施形態の弾性腕部40は、上下方向から見て直線状に延びている。これに対して第3実施形態の弾性腕部240は、上下方向から見て非直線状に延びている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0053】
図6に示すように、第2歯車12は、複数の弾性腕部240を備える。弾性腕部240は、上下方向から見て貫通孔31の内側に配置されている。弾性腕部240は、上下方向から見て円弧状に延びている。弾性腕部240の両端部241は、上下方向から見て同一方向に向いている。弾性腕部240の両端部241は、それぞれ貫通孔31の内周縁のうち互いに同一方向を向く部分に接続している。なお、本実施形態において、第2歯車12の歯車本体30には、弾性腕部240が1個ずつ配置される貫通孔31が弾性腕部240と同数形成されている。貫通孔31の形状は特に限定されないが、図示の例では、貫通孔は上下方向から見て弾性腕部240の延在方向に沿って円弧状に延びている。
【0054】
弾性腕部240は、両端部241の間に両端部241よりも上方に突出した突出部242を有する。弾性腕部240は上下方向から見て円弧状に延びているので、突出部242は、上下方向から見て弾性腕部240の両端部241を通る直線Lから離れた位置に配置されている。突出部242は、歯車本体30の全体よりも上方に突出している。なお突出部242は、歯車本体30のうち上下方向から見て弾性腕部240の回転軌跡と重なる部分よりも上方に突出していればよい。突出部242は、歯車本体30の回転中心回りに等角度間隔(180°間隔)で並んでいる。突出部242は、歯車本体30の径方向で互いに同じ位置に位置している。
【0055】
弾性腕部240は、突出部242と端部241との間の部分を撓ませることで、突出部242を上下方向に弾性的に変位させる。弾性腕部240は、両端部241から離れた屈曲部243のみで上下方向に屈曲している。弾性腕部240は、各端部241から突出部242に向けて上下方向に直交する面方向と平行に延びた後、前記面方向に対して一定の傾斜角で延びている。弾性腕部240は、歯車本体30と同じ一定の厚さで両端部241間を延びている。弾性腕部240の上面240aは、弾性腕部240の端部241において歯車本体30の上面30aに連なっている。弾性腕部240の下面240bは、弾性腕部240の端部241において歯車本体30の下面30bに連なっている。弾性腕部240の上面240aは、屈曲部243を除いて平面状に形成されている。複数の突出部242の上端部は、上下方向で互いに同じ位置に位置している。突出部242の上端部は、第1支持部材21(図1参照)の下面に摺接している。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態の弾性腕部240の突出部242は、上下方向から見て両端部241を通る直線Lから離れた位置に配置されている。この構成によれば、突出部242が自由端とされ、かつ両端部241が固定端とされた片持ち梁のように弾性腕部240を形成できる。このため、突出部が上下方向から見て両端部を通る直線上に配置された構成と比較して、突出部242の上下方向の変位におけるばね定数を小さく設定しやすい。したがって、弾性腕部240による歯車本体30の付勢力を微小に設定しやすい第2歯車12とすることができる。
【0057】
弾性腕部240は、両端部241から離れた屈曲部243のみで上下方向に屈曲している。この構成によれば、第2歯車12をプレス加工で形成する際、曲げ加工が弾性腕部240のみで行われるので、歪みが歯車本体30に及ぶことを抑制できる。したがって、加工精度の高い第2歯車12を提供できる。
【0058】
[第4実施形態]
次に、図7を参照して、第4実施形態について説明する。
図7は、第4実施形態の第2歯車を示す側面図である。
第1実施形態の弾性腕部40は、歯車本体30と同じ一定の厚さで両端部41間を延びている。これに対して第4実施形態の弾性腕部340は、厚さを変化させながら両端部41間を延びている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0059】
図7に示すように、弾性腕部340は、突出部42から両端部41に向かうに従い、上下方向に漸次薄くなっている。弾性腕部340の上面340aは、突出部42から両端部41に向けて、上下方向に直交する面方向に対して弾性腕部340の下面340bよりも緩やかな傾斜で延びている。弾性腕部340の上面340aは、弾性腕部340の端部41において歯車本体30の上面30aに連なっている。弾性腕部340の下面340bは、弾性腕部340の端部41において歯車本体30の下面30bに連なっている。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態の弾性腕部340は、突出部42から両端部41に向かうに従い、上下方向に漸次薄くなっている。この構成によれば、弾性腕部が一定の厚さで延びた構成と比較して、弾性腕部340を撓みやすく形成することができる。さらに、弾性腕部340は突出部42に対する基端側で薄くなるので、両端部から突出部に向かうに従い漸次薄くなる構成と比較して、突出部42の上下方向の変位におけるばね定数を小さく設定しやすい。したがって、弾性腕部340による歯車本体30の付勢力を微小に設定しやすい第2歯車12とすることができる。
【0061】
[第5実施形態]
次に、図8を参照して、第5実施形態について説明する。
図8は、第5実施形態の第2歯車を示す側面図である。
第1実施形態の弾性腕部40は、歯車本体30と同じ一定の厚さで両端部41間を延びている。これに対して第5実施形態の弾性腕部440は、厚さを変化させながら両端部41間を延びている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0062】
図8に示すように、弾性腕部440は、両端部41から突出部42に向かうに従い、上下方向に漸次薄くなっている。弾性腕部440の上面440aは、両端部41から突出部42に向けて、上下方向に直交する面方向に対して弾性腕部440の下面440bよりも緩やかな傾斜で延びている。弾性腕部440の上面440aは、弾性腕部440の端部41において歯車本体30の上面30aに連なっている。弾性腕部440の下面440bは、弾性腕部440の端部41において歯車本体30の下面30bに連なっている。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態の弾性腕部440は、両端部41から突出部42に向かうに従い、上下方向に漸次薄くなっている。この構成によれば、弾性腕部が一定の厚さで延びた構成と比較して、弾性腕部440を撓みやすく形成することができる。したがって、弾性腕部440による歯車本体30の付勢力を微小に設定しやすい第2歯車12とすることができる。
【0064】
[第6実施形態]
次に、図9を参照して、第6実施形態について説明する。
図9は、第6実施形態の第2歯車を示す側面図である。
第1実施形態では、弾性腕部40の突出部42が両端部41間の中央に位置している。これに対して第6実施形態では、弾性腕部540の突出部42が両端部41間の中央よりも一方の端部41側に位置している点で、第1実施形態とは異なる。なお、上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。この構成によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
[第7実施形態]
次に、図10を参照して、第7実施形態について説明する。
図10は、第7実施形態の歯車機構を示す断面図である。
第7実施形態では、第2歯車12に加えて第1歯車11も弾性腕部50を備える点で、第1実施形態と異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0066】
図10に示すように、第1歯車11は、複数の弾性腕部50を備える。弾性腕部50は、第2歯車12の弾性腕部40と同様に形成されている。弾性腕部50の突出部52は、歯車本体30から上方に突出している。第1歯車11の弾性腕部50の突出部52、および第2歯車12の弾性腕部40の突出部42は、同一方向に突出している。弾性腕部50の突出部52の上端部は、第1支持部材21の下面に摺接している。なお、本実施形態において、第1歯車11の歯車本体30には、弾性腕部50が1個ずつ配置される貫通孔(不図示)が弾性腕部50と同数形成されている。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態の歯車機構1Aは、第1支持部材21に接触する突出部52を有する第1歯車11を備える。この構成によれば、第1歯車11および第2歯車12の上下方向における相対位置がずれることを抑制できる。これにより、第1歯車11および第2歯車12によるトルクの伝達効率を安定化することができる。
【0068】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、第2歯車12の突出部42が第2歯車12を回転可能に支持する第1支持部材21に接触しているが、突出部42が接触する部材は第1支持部材21に限定されない。すなわち、歯車機構は、第2歯車12を支持しない部材に突出部42が接触するように構成されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、弾性腕部40が各端部41から突出部42に向けて、上下方向に直交する面方向に対して一定の傾斜角で延びているが、これに限定されない。例えば弾性腕部は、各端部から突出部に向けて、上下方向に直交する面方向に対して傾斜角が漸次大きくなるように延びていてもよい。例えば、弾性腕部は、各端部から突出部に向けて、上下方向に直交する面方向に対して傾斜角が漸次小さくなるように延びていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態の歯車機構の使用用途は特に限定されないが、例えば実施形態の歯車機構を時計のムーブメントに適用してもよい。この場合、指針が取り付けられる歯車(例えば筒車)に上記実施形態の第2歯車12を適用してもよい。これにより、針座を用いることなく、指針のふらつきを抑制できる。
【0071】
また、上記第1実施形態では、弾性腕部40は、上下方向から見て両端部41が歯車本体30の回転中心から同じ距離に位置するように直線状に延びている。しかしながら、弾性腕部は、上下方向から見て歯車本体30の径方向に沿うように延びていてもよい。
【0072】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1A…歯車機構 11…第1歯車 12…第2歯車 21…第1支持部材(第1対向部材) 22…第2支持部材(第2対向部材) 30…歯車本体 30a…上面(主面) 30b…下面(主面) 31…貫通孔 40,240,340,440,540…弾性腕部 40A…上側弾性腕部(第1弾性腕部) 140B…下側弾性腕部(第2弾性腕部) 41,141,241…端部 42,52,142,242…突出部
図1
図2
図3
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図5
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