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特許7396921トナーおよびその製造方法ならびにそれを含む現像剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】トナーおよびその製造方法ならびにそれを含む現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20231205BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20231205BHJP
   G03G 9/10 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 371
G03G9/08 381
G03G9/097 346
G03G9/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020022445
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021128245
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】加納 匡則
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-267734(JP,A)
【文献】特開2017-003659(JP,A)
【文献】特開2007-293043(JP,A)
【文献】特開2010-145467(JP,A)
【文献】特開2005-148405(JP,A)
【文献】特開2021-032967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも負帯電のトナー母粒子と、そのトナー母粒子の表面に外添される外添剤とから構成され、該外添剤が少なくとも水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理され、10~40nmの平均一次粒子径を有する微粉体、該微粉体よりも小さい平均一次粒子径を有する小粒径シリカ、および該微粉体よりも大きい平均一次粒子径を有する大粒径シリカであることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナー母粒子の静電容量値数aが1未満のとき、前記小粒径シリカ、前記微粉体および前記大粒径シリカの前記トナー母粒子の被覆比率1:P:Qが、次式:
P≧0.20、0.27≧Q≧0.04
の関係を満足し、
前記トナー母粒子の静電容量値数aが1以上のとき、前記小粒径シリカ、前記微粉体および前記大粒径シリカの前記トナー母粒子の被覆比率1:X:Yが、次式:
X≧0.46、0.27≧Y≧0.04
の関係を満足する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記微粉体が、前記トナー母粒子上で0.94以上の分散値数fを有する請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1つに記載のトナーの製造方法であり、
前記トナー母粒子に前記小粒径シリカおよび前記大粒径シリカの外添剤を添加・混合して、該トナー母粒子に該外添剤を外添する第一外添工程、および
得られたトナー母粒子に前記微粉体の外添剤をさらに添加・混合して、該トナー母粒子に該外添剤を外添する第二外添工程
を含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項6】
前記第二外添工程の処理時間が、前記第一外添工程の処理時間の1.1倍以上である請求項5に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーおよびその製造方法ならびにそれを含む現像剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、デベライフ(現像剤の製品寿命)を通じて、長期に環境帯電性能が高い、負帯電トナーおよびその製造方法ならびにそれを含む現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA機器の目覚しい発達に伴い、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置が広く普及している。
電子写真方式を利用した画像形成装置では、通常、回転駆動する電子写真感光体(「感光体」ともいう)の表面を帯電装置により均一に帯電する帯電工程;帯電した感光体表面に露光装置によりレーザ光を照射して静電潜像を形成する露光工程;感光体表面の静電潜像を現像装置により電子写真用トナー(「トナー」ともいう)を用いて現像してトナー像を形成する現像工程;感光体表面のトナー像を転写装置により記録紙(「記録媒体」または「転写媒体」ともいう)上に転写する転写工程;および定着装置の加熱によりトナー像を記録紙に定着する定着工程を経て画像が形成される。
そして、画像形成動作後に感光体表面上に残留した転写残留トナーは、クリーニング工程においてクリーニング装置により除去されて所定の回収部(現像槽)に回収され、クリーニング後の感光体表面における残留電荷は、次の画像形成に備えるために、除電工程において除電装置により除電される。
したがって、画像形成装置に用いられるトナーは、現像工程だけではなく、転写工程、定着工程およびクリーニング工程の各工程においても様々な機能が要求される。
【0003】
例えば、湿度差による現像剤の帯電量変化が小さいことを環境帯電性能が高いと定義したとき、環境帯電性能を向上させる手段として、トナー母粒子の外添剤として酸化チタンが汎用されている。酸化チタンを外添したトナーおよびキャリアを含む現像剤は、環境帯電性能が向上して良好な現像状態を得ることができるが、複写機の累計印字(「印刷」ともいう)枚数が増加するにつれて環境帯電性能が低下するという課題がある。これは、現像槽内で現像剤を加圧下で撹拌して摩擦帯電させるプロセスに起因し、外添剤がトナー粒子へ埋り込むこと、またはキャリアの外添剤汚染により環境帯電性能の低下が起こることに因るものと考えられている。特に酸化チタンによるキャリア汚染の影響は大きく、現像剤の製品寿命近くにおいてその環境帯電性能は大きく低下し、場合によっては酸化チタンを外添していない現像剤と同等にまで悪化することがある。
【0004】
このような現像剤の課題を改善するための技術が提案されている。
例えば、正帯電トナーでは、国際公開第WO2016/148012号(特許文献1)において、正帯電トナー母粒子と、それぞれトナー母粒子の表面に付着した複数の外添剤粒子とを有するトナー粒子を複数含み、外添剤粒子がシリカ粒子と、その表面に形成されている金属水酸化物層と、少なくとも一部が金属水酸化物層の表面に形成されているコート層とを有し、コート層が実質的に含窒素樹脂から構成されるトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第WO2016/148012号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、トナー母粒子と、金属水酸化物層と含窒素樹脂から構成されるコート層とにコートされたシリカ粒子の外添剤とを有する正帯電トナーが開示されているが、電気的に全く逆の負帯電トナー、具体的には、負帯電トナー母粒子と外添剤とを含有する負帯電トナーは開示されていない。
そこで、本発明は、デベライフを通じて、長期に環境帯電性能が高い、負帯電トナーおよびその製造方法ならびにそれを含む現像剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、外添剤として、少なくとも水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理されている微粉体および該微粉体よりも小さい平均一次粒子径を有する小粒径シリカを負帯電のトナーに外添することにより、デベライフを通じて、長期に環境帯電性能が高い、負帯電トナーおよびそれを含む現像剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、少なくとも負帯電のトナー母粒子と、そのトナー母粒子の表面に外添される外添剤とから構成され、該外添剤が少なくとも水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理されている微粉体、および該微粉体よりも小さい平均一次粒子径を有する小粒径シリカであることを特徴とするトナーが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記のトナーと、キャリアとを含むことを特徴とする現像剤が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記のトナーの製造方法であり、
前記トナー母粒子に前記小粒径シリカの外添剤、または前記小粒径シリカおよび前記大粒径シリカの外添剤を添加・混合して、該トナー母粒子に該外添剤を外添する第一外添工程、および
得られたトナー母粒子に前記微粉体の外添剤をさらに添加・混合して、該トナー母粒子に該外添剤を外添する第二外添工程
を含むことを特徴とするトナーの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デベライフを通じて、長期に環境帯電性能が高い、負帯電トナーおよびその製造方法ならびにそれを含む現像剤を提供することができる。
環境帯電性能は、次式:
環境帯電性能A値=(低湿度時帯電量L値)/(高湿度時帯電量H値)
により表すことができ、理想値は1であり、理想値により近い場合に、環境帯電性能が高いことを意味する。
【0012】
本発明のトナーは、少なくとも次の条件(1)~(4)のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)トナー母粒子が、微粉体よりも大きい平均一次粒子径を有する大粒径シリカでさらに外添されている。
(2)トナー母粒子の静電容量値数aが1未満のとき、小粒径シリカ、微粉体および大粒径シリカのトナー母粒子の被覆比率1:P:Qが、次式:
P≧0.20、0.27≧Q≧0.04
の関係を満足し、
トナー母粒子の静電容量値数aが1以上のとき、小粒径シリカ、微粉体および大粒径シリカのトナー母粒子の被覆比率1:X:Yが、次式:
X≧0.46、0.27≧Y≧0.04
の関係を満足する。
(3)微粉体が、トナー母粒子上で0.94以上の分散値数fを有する。
(4)微粉体が、10~40nmの平均一次粒子径を有する。
【0013】
本発明のトナーの製造方法は、少なくとも次の条件(5)を満たす場合に、効率よく本発明のトナーを製造することができる。
(5)第二外添工程の処理時間が、第一外添工程の処理時間の1.1倍以上である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トナーの印刷枚数と帯電量の関係を示す図である。
図2】トナー母粒子上でのトナーの微粉体の分散値数fによる、微粉体の分散状態を示すSEM画像である。
図3】現像槽内での現像剤の撹拌時間と帯電量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)トナー
本発明のトナーは、少なくとも負帯電のトナー母粒子と、そのトナー母粒子の表面に外添される外添剤とから構成され、該外添剤が少なくとも水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理されている微粉体および該微粉体よりも小さい平均一次粒子径を有する小粒径シリカであることを特徴とする。
すなわち、本発明のトナーは、負帯電のトナー母粒子が特定の物性を有する外添剤により外添されていることを特徴とする。
以下、本発明のトナーの特徴部分の外添剤について説明し、トナーの基本であるトナー母粒子、トナーの製造方法、およびトナーを含む現像剤について説明する。
【0016】
(1-1)外添剤
外添剤は、一般に、トナーの搬送性および帯電性ならびにトナーを2成分の現像剤にする場合のキャリアとの撹拌性などを向上させる機能を有する。
本発明のトナーは、外添剤として、微粉体および小粒径シリカを含むか、好ましくは微粉体および小粒径シリカにさらに大粒径シリカを含む。
【0017】
(1-1-1)微粉体
本発明において用いられる微粉体は、水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理されている。
微粉体を構成する組成物の主成分はシリカであり、水酸化アルミニウムの含有量は5~15質量%程度、およそ10質量%程度である。
本発明の要件を満たす微粉体であれば、実施例で用いているようなシリカ微粉体を用いることができる。
【0018】
微粉体は、トナー母粒子上で0.94以上の分散値数fを有するのが好ましい。
分散値数fは、トナー母粒子上での微粉体の分散状態を数値で表し、次式により求めることができる。
分散値数f=(微粉体のみの外添トナーの抵抗成分値)/(未外添トナーの抵抗成分値)
具体的な測定方法については、実施例で説明する。
微粉体の分散値数fが0.94未満では、環境帯電性能A値が増加することがある。一方、その上限は0.99程度である。
【0019】
微粉体は、10~40nmの平均一次粒子径を有するのが好ましい。
微粉体の平均一次粒子径が10nm未満では一次粒子がトナー表面で凝集し、微粉体の分散値数が小さくなることがある。一方、微粉体の平均一次粒子径が40nmを超えると、添加部数に対する被覆率が下がり、環境帯電性能A値が増加することがある。好ましい微粉体の平均一次粒子径は12~25nmであり、より好ましくは13~20nmである。
【0020】
(1-1-2)小粒径シリカ
本発明において用いられる小粒径シリカは、微粉体よりも小さい平均一次粒子径を有する。
小粒径シリカの平均一次粒子径は、上記の条件を満たせばよく、7~40nm程度、好ましくは7~30nm程度、より好ましくは7~12nm程度である。
小粒径シリカとしては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチル―ジクロロシラン(DDS)、オクチルシラン(OTAS)およびポリジメチルシロキサン(PDMS)などによる当該技術分野で常用される表面処理により疎水化処理されたシリカ粒子を、疎水化処理されていない場合には、処理に付して用いることができる。
小粒径シリカの由来は、特に限定されず、例えば、四塩化ケイ素を酸水素火炎中において燃焼させる火炎加水分解法、ゾルゲル法などにより得られたシリカを疎水化処理に付したシリカ粒子を用いることができる。
【0021】
(1-1-3)大粒径シリカ
本発明において用いられる大粒径シリカは、微粉体よりも大きい平均一次粒子径を有する。
大粒径シリカの平均一次粒子径は、上記の条件を満たせばよく、50~300nm程度、好ましくは65~200nm程度、より好ましくは80~120nm程度である。
大粒径シリカとしては、小粒径シリカと同様に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチル―ジクロロシラン(DDS)、オクチルシラン(OTAS)およびポリジメチルシロキサン(PDMS)などによる当該技術分野で常用される表面処理により疎水化処理されたシリカ粒子を、疎水化処理されていない場合には、処理に付して用いることができる。
大粒径シリカの由来は、特に限定されず、例えば、四塩化ケイ素を酸水素火炎中において燃焼させる火炎加水分解法、ゾルゲル法などにより得られたシリカを疎水化処理に付したシリカ粒子を用いることができる。
【0022】
(1-1-4)外添剤の被覆比率
本発明のトナーは、トナー母粒子の静電容量値数aが1未満のとき、小粒径シリカ、微粉体および大粒径シリカのトナー母粒子の被覆比率1:P:Qが、次式:
P≧0.20、0.27≧Q≧0.04
の関係(関係A)を満足し、
トナー母粒子の静電容量値数aが1以上のとき、小粒径シリカ、微粉体および大粒径シリカのトナー母粒子の被覆比率1:X:Yが、次式:
X≧0.46、0.27≧Y≧0.04
の関係(関係B)を満足するのが好ましい。
【0023】
トナー母粒子の静電容量値数aは、トナー母粒子の圧粉体(固形試料)の静電容量成分を測定値であり、その具体的な測定方法については、実施例で説明する。
本発明で用いるトナー母粒子の静電容量値数aは、0.900~1.100程度である。
【0024】
外添剤の被覆比率は、トナー母粒子の平均粒径と比重、各外添剤の平均粒径と比重を用いて投影面積でのモデル計算を行い、各外添剤の被覆率比として得ることができ、その具体的な測定方法については、実施例で説明する。また、被覆比率は、外添トナーの走査型電子顕微鏡(SEM)画像にから確認することができる。
【0025】
(関係A)
トナー母粒子の静電容量値数aが1未満のとき、微粉体の被覆比率Pが0.20未満では、環境帯電性能A値が増加することがある。好ましくはP≧0.29、である。一方、その上限は0.8程度である。
トナー母粒子の静電容量値数aが1未満のとき、大粒径シリカの被覆比率Qが0.04未満または0.27を超えると、環境帯電性能A値が増加することがある。好ましくは0.12≧Q≧0.06である。
【0026】
(関係B)
トナー母粒子の静電容量値数aが1以上のとき、微粉体の被覆比率Xが0.46未満では、環境帯電性能A値が増加することがある。好ましくはX≧0.58、である。一方、その上限は0.8程度である。
トナー母粒子の静電容量値数aが1以上のとき、大粒径シリカの被覆比率Yが0.04未満または0.27を超えると、環境帯電性能A値が増加することがある。好ましくは0.12≧Y≧0.06である。
【0027】
外添剤の配合量は、上記の被覆比率の要件を満たす限り、特に限定されないが、トナー母粒子100質量部に対して、外添剤の合計として、1.0~5.0質量部程度であり、より好ましくは2.0~4.0質量部程度である。
外添剤が小粒径シリカおよび微粉体であるとき、それらの比率は質量比で1:0.1~ 1.0程度である。
また、外添剤が小粒径シリカ、微粉体および大粒径シリカであるとき、それらの比率は質量比で1:0.1~1.0:0.4~2.5程度である。
【0028】
(1-2)負帯電のトナー母粒子
本発明のトナーに含まれる負帯電のトナー母粒子は、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤を含み、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
(1-2-1)結着樹脂
本発明のトナーに含まれる結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂を好適に用いることができる。
ポリエステル系樹脂は、通常、2価のアルコール成分および3価以上の多価アルコール成分から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸および3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上とを、公知の方法により縮重合反応もしくはエステル化、エステル交換反応させることにより得られる。
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170~250℃程度、反応圧力は5mmHg~常圧程度である。
【0030】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0031】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の2価のアルコール成分および3価以上の多価アルコール成分の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0033】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の2価のカルボン酸および3価以上の多価カルボン酸の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂は、9,000~90,000の範囲の質量平均分子量を有しかつその分子量分布における分子量100,000以上の割合が10~30%であるのが好ましい。結着樹脂の質量平均分子量および分子量100,000以上の割合が上記の範囲であれば、ベルト定着装置における低温定着性および耐ホットオフセット性の両立効果がさらに発揮される。
結着樹脂の質量平均分子量が9,000未満では、定着高温側での剥離性が悪くなるおそれがあり、一方、結着樹脂の質量平均分子量が90,000を超えると、低温定着性が悪くなるおそれがある。
結着樹脂の質量平均分子量を20,000以上とすることで、定着高温側での剥離性をより一層確実に良好なものにでき、一方、結着樹脂の質量平均分子量を70,000以下とすることで、低温定着性をより一層確実に良好なものにできる。
したがって、より好ましい結着樹脂の質量平均分子量の範囲は、20,000~70,000である。
【0035】
また、結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合が10%未満では、定着高温側での剥離性が悪くなるおそれがある。一方、結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合が30%を超えると、低温定着性が悪くなるおそれがある。この割合を20%以下とすることで、低温定着性をより一層確実に良好なものにできる。
したがって、より好ましい結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合の範囲は、10~20%である。
【0036】
トナー母粒子中の結着樹脂の配合量は、60~90質量%であるのが好ましく、70~
85質量%であるのが特に好ましい。
【0037】
(1-2-2)着色剤
本発明のトナーに含まれる着色剤としては、当該技術分野で常用される有機系および無機系の様々な種類および色の顔料および染料を用いることができ、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色および緑色の着色剤が挙げられる。
【0038】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0039】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0040】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0041】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0042】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0043】
本発明のトナーにおいては、上記の着色剤の1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができ、それらの組み合わせは異色であっても同色であってもよい。
また、2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。さらに、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。複合粒子およびマスターバッチは、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0044】
本発明のトナーにおける着色剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.2~10質量部である。
着色剤の含有量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
換算すれば、トナー中の着色剤の含有量は、好ましくは2.5~7.5質量%であり、より好ましくは3.0~6.5質量%である。
【0045】
(1-2-3)離型剤
本発明のトナーに含まれる離型剤としては、当該技術分野で常用される離型剤を用いることができる。
例えば、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスならびにそれらの誘導体などの石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)、低分子量ポリプロピリンワックスおよびポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)ならびにそれらの誘導体などの炭化水素系合成ワックス;カルナバワックス、ライスワックスおよびキャンデリラワックスならびにそれらの誘導体、木蝋などの植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス;脂肪酸アミドおよびフェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス;長鎖カルボン酸およびその誘導体;長鎖アルコールおよびその誘導体;シリコーン系重合体;高級脂肪酸などが挙げられ、これらの中でも、炭化水素系のワックスが好ましい。
上記の誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
本発明においては、上記の離型剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
離型剤は、ベルト定着装置におけるトナーの低温定着性および耐ホットオフセット性の両立効果、特に低温定着性の観点で、70℃以下の融点を有するのが好ましい。融点の下限は60℃程度である。
【0047】
本発明のトナーにおける離型剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.2~20質量部であり、より好ましくは0.5~10質量部であり、特に好ましくは1.0~8.0質量部である。
離型剤の含有量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
換算すれば、トナー中の離型剤の含有量は、好ましくは2.0~7.0質量%であり、より好ましくは3.0~5.0質量%である。
【0048】
(1-2-4)帯電制御剤
本発明のトナーに含まれる帯電制御剤としては、当該技術分野で常用される負電荷制御用の電荷制御剤を用いることができる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。
本発明のトナーにおいては、上記の電荷制御剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明のトナーにおける帯電制御剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5~3質量部であり、より好ましくは1~2質量部である。
帯電制御剤の含有量が、上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
換算すれば、トナー中の帯電制御剤の含有量は、好ましくは0.5~2.0質量%であり、より好ましくは0.7~1.5質量%である。
【0050】
(1-2-5)トナーの物性
[トナーの平均一次粒子径]
本発明のトナーは、4~10μmの平均一次粒子径を有するのが好ましい。
平均一次粒子径が4μm未満では、トナー母体粒子の粒子径が小さくなり過ぎ、高帯電化および流動性悪化が起こるおそれがある。この高帯電化および流動性悪化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。一方、平均一次粒子径が10μmを超えると、トナー母体粒子の粒子径が大きく、形成画像の層厚が高くなり著しく粒状性を感じる画像となり、高精細な画像を得ることができないので望ましくない。またトナー母体粒子の粒子径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。好ましい平均一次粒子径は、5~8μmである。
平均一次粒子径の測定方法については、実施例において詳述する。
【0051】
(2)トナーの製造方法
本発明のトナーの製造方法は、
トナー母粒子に小粒径シリカの外添剤、または小粒径シリカおよび大粒径シリカの外添剤を添加・混合して、トナー母粒子に外添剤を外添する第一外添工程、および
得られたトナー母粒子に微粉体の外添剤をさらに添加・混合して、トナー母粒子に外添剤を外添する第二外添工程
を含むことを特徴とする。
【0052】
(2-1)第一外添工程
第一外添工程では、トナー母粒子に小粒径シリカの外添剤を添加し、混合するか、またはトナー母粒子に小粒径シリカおよび大粒径シリカの外添剤を添加し、混合する。
添加・混合の操作は、当該技術分野で常用される公知の装置を用いて実施することができ、工程における条件は、対象とする材料および所望の物性により適宜設定すればよい。
【0053】
(2-2)第二外添工程
第二外添工程では、得られたトナー母粒子に微粉体の外添剤をさらに添加し、混合する。
第一外添工程と同様に、添加・混合の操作は、当該技術分野で常用される公知の装置を用いて実施することができ、工程における条件は、対象とする材料および所望の物性により適宜設定すればよい。
【0054】
(2-3)第一および第二外添工程の条件
第二外添工程の処理時間は、第一外添工程の処理時間の1.1倍以上であるのが好ましい。ここで、処理時間とは、撹拌時間を意味する。
第二外添工程の処理時間が第一外添工程の1.1倍未満では、環境帯電性能A値が増加することがある。またその上限は5倍程度である。
例えば、第一外添工程の処理時間が0.5~1分間であるとき、第二外添工程は、0.6~1.1分間程度である。
【0055】
(2-4)トナー母粒子の製造方法
本発明で用いられるトナー母粒子は、当該技術分野で常用される公知の装置を用いて公知の方法、例えば、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を含む粗粉砕された溶融混練物とフィラーとを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合物を微粉砕する微粉砕工程と、該微粉砕工程で得られた微粉砕物を分級する分級工程と、該分級工程で得られた分級物を熱風により球形化する球形化処理工程により製造することができる。
湿式法と比較して工程数が少なく、設備コストが掛からないなどの点で乾式法が好ましく、中でも粉砕法が特に好ましい。
下記の各工程における条件は、対象とする材料および所望の物性により適宜設定すればよい。
【0056】
(3)現像剤(2成分現像剤)
本発明の現像剤は、本発明のトナーと、キャリアとを含む。
(キャリア)
本発明のトナーは、一成分現像剤、2成分現像剤のいずれの形態でも使用することができ、2成分現像剤として使用する場合には、外添剤以外にさらにキャリアを配合する。
キャリアとしては、当該技術分野で常用されるキャリアを用いることができ、例えば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリア芯粒子を公知の被覆物質で表面被覆したものなどが挙げられる。
キャリアの平均粒径は、10~100μmが好ましく、20~50μmがより好ましい。
キャリアの配合量は特に限定されないが、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは4~15質量部であり、より好ましくは5~10質量部である。
【実施例
【0057】
以下に、製造例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
製造例、実施例および比較例において、各物性値を以下に示す方法により測定した。
【0058】
[各外添剤の平均一次粒子径(nm)]
各外添剤の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:S-4800)を用いて粒子を撮影し、得られた画像から任意に外添剤の粒子100個の粒径(長径)を測定し、それらの平均値を算出し、これを平均一次粒子径とする。
【0059】
[トナー母粒子の平均一次粒子径(μm)]
電解液(ベックマン・コールター株式会社製、商品名:ISOTON-II)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(アズワン株式会社製、卓上型2周波超音波洗浄器、型式:VS-D100)を用いて周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を得る。得られた測定用試料を、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、型式:Multisizer3)を用いて、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下で測定し、試料粒子の体積粒度分布から平均一次粒子径(μm)を求める。
【0060】
[外添剤の被覆率]
トナー母粒子の平均粒径と比重、各外添剤の平均粒径と比重を用いて投影面積でのモデル計算を行い、各外添剤の被覆率比を求める。
外添トナーを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影して被覆率比率を確認する。
【0061】
[静電容値数a値]
トナー母粒子を1g計量し、これをステンレス製の内径25mmの容器に封入し、圧力20MPaで20秒間圧縮して内径25mm、厚さ2mmの固形試料を得る。
高精度キャパシタンスブリッジ(Andeen Hagerling社製、型式:2550A)を使用して固形試料の静電容量成分を測定し、静電容値数aとする。
【0062】
[微粉体の分散値数f値]
トナー母粒子を1g計量し、これをステンレス製の内径25mmの容器に封入し、圧力20MPaで20秒間圧縮して内径25mm、厚さ2mmの固形試料を得る。
高精度キャパシタンスブリッジ(Andeen Hagerling社製、型式:2550)を使用して固形試料の抵抗成分を測定してR1とする。
同様にして、微粉体のみをトナー母粒子に外添したトナーの固形試料を得、その抵抗成分を測定し、R2とする。
次式:f値=R2/R1からf値を求める。
【0063】
[現像剤の帯電量]
現像槽のマグローラー上の現像剤を0.2gサンプリングし、吸引式小型帯電量測定装置(Trek社製、型式:MODEL 210HS-2A)を用いて帯電量を測定する。
【0064】
[環境帯電性能A値]
評価機としてカラー複合機(シャープ株式会社製、型式:MX―3631)を用いた。環境試験室にて25℃50%RH、25℃5%RH(低湿)、25℃80%RH(高湿)3種の環境下で評価機を稼働、10万(100K)枚(各環境34000枚)印字することで初期から経時変化した現像剤を得た。
これらの現像剤をサンプリングし、低湿度時帯電量L値および高湿度時帯電量H値を測定し、次式:
環境帯電性能A値=(低湿度時帯電量L値)/(高湿度時帯電量H値)
により、環境帯電性能A値を求める。
但し、初期現像剤のL値(またはH値)と経時変化後の現像剤のL値(またはH値)に差がある場合には絶対値の大きい方を使用する。
【0065】
小粒径シリカとして下記を使用した。
SS-1:EVONIK社製、名称:R976S、平均一次粒子径:7nm
SS-2:EVONIK社製、名称:R974、平均一次粒子径:12nm
SS-3:WACKER社製、名称:H2000T、平均一次粒子径:12nm
大粒径シリカとして下記を使用した。
BS-1:信越化学工業株式会社製、名称:X-24-9600A-80、均一次粒子径:80nm
BS-2:EVONIK社製、名称:SX-110、平均一次粒子径:110nm
BS-3:Cabot社製、名称:TG-C110、平均一次粒子径:110nm
微粉体として下記を使用した。
FPS:シャープ社製、名称:FPS-D15(表1中「FPS」と標記)、平均一次粒子径:15nm(製造例3参照)
酸化チタンとして下記を使用した。
TI-1:EVONIK社製、名称:T805、平均一次粒子径:21nm
TI-2:テイカ株式会社製、名称:JMT-150FI、平均一次粒子径:15nm
酸化アルミニウムとして下記を使用した。
Al-1:EVONIK製、名称:C805、平均一次粒子径:13nm
【0066】
(製造例1)
次にようにして、実施例および比較例で用いるトナー母粒子Aを調製した。
結着樹脂:非晶性ポリエステル樹脂A(製造例1) 68質量%
:結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂C1、製造例2) 20質量%
着色剤:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、MA-100) 7質量%
離型剤:モノエステル系ワックス(日油株式会社製、製品名:WEP-3) 5質量%
帯電制御剤:サリチル酸系化合物(オリエント化学工業株式会社、製品名:ボントロンE-84) 1質量%
【0067】
気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)を用いて、上記の材料を5分間、前混合した後、オープンロール型連続混練機(三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:MOS320-1800)を用いて溶融混練して溶融混錬物を得た。
オープンロールの設定条件を、加熱ロールの供給側温度130℃、排出側温度100℃、冷却ロールの供給側温度40℃、排出側温度25℃とした。加熱ロールおよび冷却ロールとして、直径320mm、有効長1550mmのロールを用い、供給側および排出側におけるロール間ギャップをいずれも0.3mmとした。また、加熱ロールの回転数を75rpm、冷却ロールの回転数を65rpmとし、トナー原料の供給量を5.0kg/hとした。
【0068】
得られた溶融混練物を、冷却ベルトで冷却させた後、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルを用いて粗粉砕して粗粉砕品を得た。
得られた粗粉砕品を、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型式:IDS-2)を用いて微粉砕して微粉砕物を得た[微粉砕工程]。
次いで、得られた微粉砕物を、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ-LABO)を用いて分級しトナー母粒子A得た[分級工程]。
得られたトナー母粒子Aの静電容値数aは、0.995であった。
【0069】
(製造例2)
次にようにして、実施例および比較例で用いるトナー母粒子Bを調製した。
結着樹脂:非晶性ポリエステル樹脂A(製造例1) 68質量%
:結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂C1、製造例2) 20質量%
着色剤:C.I.Pigment Blue 15:3(DIC製) 7質量%
離型剤:モノエステル系ワックス(日油株式会社製、製品名:WEP-3) 5質量%
帯電制御剤:サリチル酸系化合物(オリエント化学工業株式会社、製品名:ボントロンE-84) 1質量%
【0070】
気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)を用いて、上記の材料を5分間、前混合した後、オープンロール型連続混練機(三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:MOS320-1800)を用いて溶融混練して溶融混錬物を得た。
オープンロールの設定条件を、加熱ロールの供給側温度130℃、排出側温度100℃、冷却ロールの供給側温度40℃、排出側温度25℃とした。加熱ロールおよび冷却ロールとして、直径320mm、有効長1550mmのロールを用い、供給側および排出側におけるロール間ギャップをいずれも0.3mmとした。また、加熱ロールの回転数を75rpm、冷却ロールの回転数を65rpmとし、トナー原料の供給量を5.0kg/hとした。
【0071】
得られた溶融混練物を、冷却ベルトで冷却させた後、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルを用いて粗粉砕して粗粉砕品を得た。
得られた粗粉砕品を、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型式:IDS-2)を用いて微粉砕して微粉砕物を得た[微粉砕工程]。
次いで、得られた微粉砕物を、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ-LABO)を用いて分級しトナー母粒子Bを得た[分級工程]。
得られたトナー母粒子Bの静電容値数aは、1.031であった。
【0072】
(製造例3)
次にようにして、実施例で用いる微粉体FPS-D15を調製した。
イオン交換水500mLと、親水性ヒュームドシリカ(アエロジル社製、製品名:アエロジル130)50gとを混合してシリカの分散液を得た。得られた分散液を45℃に加熱、pHが6.0になるように、Al(OH)3濃度50g/Lのアルミン酸ナトリウム溶液100mLと5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。分散液のpHが3~4になるよう0.5N希塩酸を添加した。次いで分散液にγ-アミノプロピルトリエトキシシラン25gを添加した。分散液のpHが6.5になるように2N水酸化ナトリウム水溶液を添加した。得られた分散液をろ過してウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水で洗浄後、乾燥して乾燥物1を得た。
得られた乾燥物1を衝突板式ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型式:IJT-2)を用いて、粉砕圧0.6MPaの条件で粉砕して、粉砕物を得た。
n-ヘキサン500mLとアミノ変性シリコーンオイル0.2gとを投入・混合して得られた表面処理溶液に粉砕物50gを加え、撹拌して混合液を得た。得られた混合液を70℃まで昇温し撹拌し減圧乾燥機で内容物の質量が減少しなくなるまで乾燥して乾燥物2を得た。
得られた乾燥物2を電気炉にて200℃3時間加熱し冷却して、シリカと水酸化アルミニウムの組成物の凝集体を得た。
上記の衝突板式ジェット粉砕機を用いて、粉砕圧0.6MPaの条件で凝集体を粉砕して微粉体FPS-D15を得た。
【0073】
(実施例1)
<外添処理>
得られたトナー母粒子Aを100質量部、小粒径シリカを(EVONIK社製、名称:R974、平均一次粒子径:12nm)1.2質量部および大粒径シリカ(EVONIK社製、名称:SX-110、平均一次粒子径:110nm)1.0質量部をFMミキサー(日本コークス社製、型式:FM-20)に投入し、攪拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定し、1分間混合した(第一外添工程)。
次いで微粉体(シャープ社製、名称:FPS-D15、平均一次粒子径:15nm)0.7質量部をFMミキサーに投入し攪拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定し、1.5分間混合した(第二外添工程)。
得られた混合物を270メッシュの篩を用いて篩別し外添トナーを得た。
【0074】
<現像剤の調整>
得られた外添トナーとコートキャリア(シャープ社製、名称:MX-5111FN用純正キャリア)をトナー濃度が7質量%となるように、V型混合機(株式会社徳寿工作所製、商品名:V-5)に投入し、20分間混合して2成分現像剤を得た。
【0075】
(実施例2~15)
表1に示されるトナー母粒子および外添剤を用いること以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび2成分現像剤を得た。
【0076】
(比較例1)
トナー母粒子Aを用い、微粉体の代わりに酸化チタン(TI-1)を用いること以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび2成分現像剤を得た。
【0077】
(比較例2)
トナー母粒子Aを用い、微粉体を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび2成分現像剤を得た。
【0078】
(比較例3)
トナー母粒子Bを用い、微粉体の代わりに酸化チタン(TI-2)を用いること以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび2成分現像剤を得た。
【0079】
(比較例4)
トナー母粒子Bを用い、微粉体を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび2成分現像剤を得た。
【0080】
(比較例5)
トナー母粒子Bを用い、微粉体の代わりに酸化アルミニウム(Al-1)を用いること以外は、実施例1と同様にして、外添トナーおよび2成分現像剤を得た。
【0081】
静電容値数aが0.995と1.031の2種類のトナー母粒子に対して、小粒径シリカの被覆比率を1としたとき、微粉体の被覆比率XまたはP、大粒径シリカの被覆比率YまたはQで外添したものが実施例1~15である。
比較例として、微粉体の代わりに酸化チタンを用いたものが比較例1と3、酸化チタンと微粉体を含まないものが比較例2と4、微粉体の代わりに酸化アルミニウムを用いたものが比較例5である。
【0082】
現像剤の環境帯電性能の測定結果を、下記の基準で総合評価(判定)した。
◎:非常に良好(環境帯電性能A値<1.5)
○:良好(環境帯電性能A値<2.0)
△:実用レベル(環境帯電性能A値<2.4)
×:不良(環境帯電性能A値≧2.4)
表1に、トナーの含有成分とそれらの物性、2成分現像剤の物性および評価結果をまとめて示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表2に表1から抜粋した比較例1、比較例2および実施例9の現像剤の詳細データを記載する。
【表2】
【0085】
酸化チタンを外添したトナー(比較例1)および酸化チタンおよび微粉体を何れも外添しないトナー(比較例2)の初期の環境帯電性能A値(初期デベ)は、それぞれ1.2および2.5であり、理想値が1であることから、前者のトナーの環境帯電性能の高いことがわかる。
また、100K枚印字後の環境帯電性能A値(100K枚印字後のデベ)は、それぞれ1.3および5.0であり、酸化チタンを外添したトナーが高い環境帯電性能を維持しているようであるが、初期から100K枚印字後までライフを通じた環境帯電性能は、それぞれ2.4および2.5である。
一方、微粉体を外添したトナー(実施例9)は、初期デベが1.4、100K枚印字後のデベが2.1であるが、初期から100K枚印字後までライフを通じた環境帯電性能が1.2であり、高性能である。このようなデベライフ全体を通した環境帯電性能の向上は、長期間にわたり最適な現像条件を創出し、画像品質を向上させることができる。
【0086】
図1は、トナーの印字枚数と帯電量の関係を示す図である。
負帯電トナーであるため、図1では、グラフの縦軸の単位を「-uQ/g」として、帯電量の大小表現を絶対値での表現にしている。
通常、トナーは、印刷枚数が増加するにつれて現像剤が経時変化し、その帯電性能が変化する。
(a)は、微粉体を外添したトナー(実施例9)の帯電量の変化を示す図であり、(b)の酸化チタンを外添したトナー(比較例1)の酸化チタンの働きよりはやや弱いものの、印刷枚数の増加に伴う変化の小さいことがわかる。
(b)は、酸化チタンを外添したトナー(比較例1)の帯電量の変化を示す図であり、酸化チタンの働きで高湿と低湿の帯電量差である環境帯電性能A値が小さくなる一方で、印刷枚数の増加と共に全体の帯電量が低減することがわかる。
(c)は、酸化チタンおよび微粉体を何れも外添しないトナー(比較例2)の帯電量の変化を示す図であり、高湿の帯電量が低減し、低湿の帯電量が増加するため、それらの差である環境帯電性能A値が大きくなることがわかる。
【0087】
図2は、トナー母粒子上でのトナーの微粉体の分散値数fによる、微粉体の分散状態を示すSEM画像(10,000倍および40,000倍)である。
未外添のトナー粒子に微粉体のみ外添した場合には、外添時の撹拌力や時間によって分散度が図2のSEM画像のように変化する。
分散度合いは外添トナーの抵抗値に依存し、微粉体を外添する前後の抵抗値の比から算出されるf値がその指針になる。f値を測定する際の微粉体量は、本願発明の規定量であり、その測定方法は上記のとおりである。
f値が0.94未満では、図2の左列のように、外添剤(微粉体)の分散が不十分であり、微粉体の凝集が観察される。
シリカと微粉体を合わせて外添する場合にも、f値を測定した時と同条件の撹拌力と時間を使用することができる。
【0088】
図3は、現像槽内での現像剤の撹拌時間と帯電量の関係を示す図、すなわち現像剤の帯電量と現像槽内での撹拌時間の依存性を示すグラフである。
(a)は、酸化チタンおよび微粉体を何れも外添しないトナー(比較例2)の帯電量の変化を示す図である。環境帯電性能A値が小さくなる特性を有する材料を使用すると(実施例1~15および比較例1、比較例3)、(c)のように、高湿では(a)より帯電量が増加し、低湿では(a)より帯電量が減少する。
酸化アルミニウムを疎水化処理したものを微粉体の代わりに外添したトナー(比較例5)では、(b)のように、高湿、低湿共に帯電量が減少する。下げ幅によっては、環境帯電性能A値が(a)より小さくなるが、(a)より高湿の帯電量が低下してしまうと現像性能の低下が著しく、現像剤として使用できなくなる。
【0089】
以上の結果から、微粉体の分散値数f値の低下が環境帯電性能A値の増加に強く影響を与えると考えられることから、微粉体を用いる上で、被覆率比の範囲で微粉体の分散性を向上させることが現像剤のライフを通した環境帯電性能の向上につながるものと考えられる。
図1
図2
図3