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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】送信装置、中継装置、および、受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/436 20110101AFI20231205BHJP
   H04N 21/442 20110101ALI20231205BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04N21/436
H04N21/442
H04L25/02 303Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020038766
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021141485
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】甲 展明
(72)【発明者】
【氏名】勝木 学
(72)【発明者】
【氏名】秋山 仁
【審査官】大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-258667(JP,A)
【文献】特開2020-018018(JP,A)
【文献】特表2012-507947(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187515(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/059151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 -21/858
H04L 25/00 -25/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から受信装置へ映像信号を中継する中継装置または接続ケーブルであって、
受信した映像信号がAC信号出力かDC信号出力かを検出する制御部と、
前記受信した映像信号から所定の電流を引き抜く電流引抜部を有し、
前記制御部は、前記受信した映像信号がAC信号出力の場合は、前記電流引抜部が所定の電流を引き抜くように制御し、前記受信した映像信号がDC信号出力の場合は、前記電流引抜部が電流引抜を停止するように制御し、映像信号を前記送信装置から前記受信装置へ伝送することを特徴とする中継装置または接続ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の中継装置または接続ケーブルであって、
前記制御部は、前記映像信号の伝送信号線の電圧をフィルタで時間平均化処理を行い、その処理結果が所定の電圧値以上である場合に、前記受信した映像信号がAC信号出力であると検出することを特徴とする中継装置または接続ケーブル。
【請求項3】
請求項1に記載の中継装置または接続ケーブルであって、
前記制御部は、前記映像信号の伝送信号線のシールドまたはGND線を流れる電流を検出してフィルタで時間平均化処理を行い、その処理結果が所定の電流値以上である場合に、前記受信した映像信号がDC信号出力であると検出することを特徴とする中継装置または接続ケーブル。
【請求項4】
送信装置から映像信号を受信する受信装置であって、
受信した映像信号がAC信号出力かDC信号出力かを検出する制御部と、
前記受信した映像信号から電流を引き抜く電流引抜部を有し、
前記制御部は、前記受信した映像信号がAC信号出力の場合は、前記電流引抜部が所定の電流を引き抜くように制御し、前記受信した映像信号がDC信号出力の場合に、前記電流引抜部が電流引抜を停止するように制御し、映像信号を前記送信装置から受信することを特徴とする受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の受信装置であって、
前記制御部は、前記映像信号の伝送信号線の電圧をフィルタで時間平均化処理を行い、その処理結果が受信装置が供給する終端電圧とほぼ同じ場合に、前記受信した映像信号がAC信号出力であると検出することを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項4に記載の受信装置であって、
前記制御部は、前記映像信号の伝送信号線のシールドまたはGND線を流れる電流を検出してフィルタで時間平均化処理を行い、その処理結果が所定の電流値以上である場合に、前記受信した映像信号がDC信号出力であると検出することを特徴とする受信装置。
【請求項7】
請求項1に記載の中継装置または接続ケーブルであって、
前記映像信号は+側と-側の差動信号で構成され、
前記映像信号の伝送信号線は、+側と-側の差動信号線で構成され、
前記制御部は、前記差動信号線の+側と-側の差分電圧の時間平均値を検出して前記+側の電流制御素子と-側の電流制御素子を制御し、該差分電圧の時間平均値を減らすことを特徴とする中継装置または接続ケーブル。
【請求項8】
差動ディジタル映像信号を出力する送信装置であって、
エンコードされたシリアル信号を出力する出力部と、
受信装置へ差動ディジタル映像信号を出力する出力端子と、
前記出力部と出力端子の間に配置して、信号の直流成分を阻止する直流阻止素子と、
前記出力部から所定の電流を加算または減算する第1の補正回路と、
前記出力端子からそれぞれ所定の電流を加算または減算する第2の補正回路と第3の補正回路を有し、
前記第1の補正回路は、エンコードされた論理1と論理0の個数比率に応じて、所定の電流を加算または減算して直流成分を減少させ、
前記第2の補正回路は、前記第1の補正回路が加算または減算した電流をほぼ逆補正させ、
前記第3の補正回路は、前記受信装置との接続要件である所定の直流電流と、前記第2の補正回路による加減算電流との差分に相当する電流を加算または減算することを特徴とする送信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の送信装置であって、
前記受信装置との接続要件は、前記出力端子を通じて前記差動ディジタル映像信号の+側と-側をエンコード論理に基づいてほぼ10mAを交互に引き抜くTMDS信号であり、
前記第1の補正回路は、エンコードされた論理1と論理0の配分比がほぼ4:6と5:5と6:4の各期間に対して、ほぼ0mA、ほぼ2mA、ほぼ4mAを引抜き、前記第2の補正回路は、前記各期間に対して、ほぼ4mA、ほぼ2mA、ほぼ0mAを引抜き、
前記第3の補正回路は、前記出力端子の差動信号+側と-側の差分値の垂直走査周期以上の平均値を0に近づけるように、ほぼ6mAを+側と-側に配分制御することを特徴とする送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置から受信装置へ映像信号を中継する伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報機器に周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の1つであるUSB(Universal Serial Bus)(登録商標)が知られている。そのUSBの規格「USB 3.1」で制定されたコネクタ規格としてUSB Type-Cがある。
【0003】
本技術分野の背景技術として特許文献1や特許文献2がある。特許文献1にはUSB Type-CからのAC信号出力に所定のDC電流を印加して、テレビなどのHDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)端子に接続することが記載されている。また、特許文献2には、AC信号出力に補正信号を付与して、DC信号出力と同等な映像信号として、テレビなどのHDMI端子に接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/187515号
【文献】特開2013-258667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、AC信号出力とDC信号出力の各映像送信装置が混在する場合において、専用の中継装置または接続ケーブルをそれぞれ用意する課題がある。
【0006】
また、特許文献2には、AC信号出力へ補正信号を付与する際に、+側補正信号印加時間と-側補正信号印加時間の時間差による、差動信号線間におけるDCシフトが生じる課題がある。
【0007】
本発明はこれらの課題に鑑みなされたものであって、送信装置と受信装置の接続の使い勝手と信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、送信装置から受信装置へ映像信号を中継する中継装置または接続ケーブルであって、受信した映像信号がAC信号出力かDC信号出力かを検出する制御部と、受信した映像信号から所定の電流を引き抜く電流引抜部を有し、制御部は、受信した映像信号がAC信号出力の場合は、電流引抜部が所定の電流を引き抜くように制御し、受信した映像信号がDC信号出力の場合は、電流引抜部が電流引抜を停止するように制御し、映像信号を送信装置から受信装置へ伝送するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送信装置と受信装置の接続の使い勝手と信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における送信装置と受信装置を接続ケーブルで接続した伝送システム構成図である。
図2】実施例1におけるDC信号出力の送信装置を接続した場合の接続ケーブルによる機器接続を説明する図である。
図3】実施例1におけるAC信号出力の送信装置を接続した場合の接続ケーブルによる機器接続を説明する図である。
図4】実施例1における接続ケーブル内の制御回路の構成を示す図である。
図5】実施例2における接続ケーブル内の制御回路の構成を示す図である。
図6】実施例3における伝送システムの構成を示す図である。
図7】実施例3における直流阻止素子に対して送信装置側の補正回路の補正電流を用いた定電流切換えを説明する図である。
図8】実施例3における直流阻止素子に対して接続ケーブル側の補正回路の補正電流を用いた定電流切換えを説明する図である。
図9】実施例3における接続ケーブル内の制御回路の構成を示す図である。
図10】実施例4における伝送システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例における送信装置と接続ケーブル、受信装置を含む伝送システムの構成図である。図1において、送信装置70と、受信装置10を、接続ケーブル50で接続している。接続ケーブル50は中継装置として機能し、送信装置70から送信される映像信号を受信装置10に伝送する。
【0013】
図2は、送信装置70として、DC信号出力の送信装置30を接続した場合、図3はAC信号出力の送信装置40を接続した場合の接続ケーブル50の動作を説明する部分構成図である。
【0014】
まず、図2について説明する。図2において、DC信号出力の送信装置30は、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)(登録商標)エンコーダ31、ドライバ321、トランジスタ322と323、定電流回路324を構成に含む。接続ケーブル50は、差動信号線の+側501、-側502、GND線(またはシールド線)503を有するとともに、スイッチ511と512、定電流回路513と514、制御回路52からなる補正回路61を含む。受信装置10は、終端素子である終端抵抗121と122、レシーバ123、TMDSデコーダ11を構成に含む。
【0015】
例えば、HDMIやDVI(Digital Visual Interface)規格が採用しているTMDS方式の送信装置は、映像信号をTMDSエンコーダ31でシリアル信号へTMDSエンコードする。定電流回路324が引き抜く一定電流10mAを、TMDSエンコード結果に基づいてドライバ321が駆動するトランジスタ322と323によって、差動信号線の+側501と-側502のいずれかから引き抜く。差動信号線の+側501と-側502は、それぞれ受信装置が50Ωの終端抵抗121と122を介して3.3Vの終端電圧AVccへ接続されているので、3.3V~2.8Vの信号電圧となり、差動振幅1Vppが得られる。もちろん、接続ケーブル50内の減衰等により信号レベルは変動する。
【0016】
制御回路52は、DC信号出力の送信装置30が接続されたことを検知するとスイッチ511と512を開放(OFF)するように制御する。それにより、接続ケーブル50は補正回路61を有さない通常のケーブルと同等に差動信号を伝送することにより、TMDS方式に基づく信号伝送が実現できる。
【0017】
続いて図3について説明する。図3において、AC信号出力の送信装置40は、TMDSエンコーダ31、ドライバ431、抵抗432と433、キャパシタなどの直流阻止素子434、435を構成に含む。接続ケーブル50と受信装置10は図2と同様な構成の為、装置構成の説明は省略する。
【0018】
TMDSエンコーダ31のTMDSエンコード結果をドライバ431が50Ωの抵抗432と433、キャパシタなどの直流阻止素子434と435を介して出力することにより、AC信号出力を得ている。AC信号出力化により、受信装置10の終端電圧AVcc、例えば3.3Vがドライバ431に直接加わらないので、ドライバ431の低電圧化が図られ、半導体の微細化による高周波特性改善や低電力化が期待できる。
【0019】
しかしながら、受信装置10は図2で説明したDC信号の送信装置を想定しているため、信号のDCレベルを合わせる必要がある。このため、制御回路52は、AC信号出力を検出すると、スイッチ511と512をONさせて、定電流回路513と514により、ほぼ5mAを引き抜く。この5mAは、TMDS方式でエンコード出力の論理0と論理1の数がほぼ5:5になることを想定して、図2での定電流回路324の一定電流10mAのほぼ半分としたものである。このように、定電流回路513と514は電流引抜部として機能する。
【0020】
このような補正回路61の接続が接続ケーブルの伝送特性に与える影響を抑制するため、スイッチ511と差動信号線の+側501間と、スイッチ512と差動信号線の-側502間にそれぞれ100~330Ω程度の抵抗を挿入しておいてもよい。この挿入抵抗は、他の実施例でも伝送特性への影響を抑える効果が期待できる。
【0021】
定電流回路513と514は、特許文献1記載の様に、610Ωの抵抗等で代用してもよいし、3.05Vの定電圧回路とインダクタを介して接続して代用してもよい。これらの代用は、他の実施例にも適用できる。
【0022】
こうして、AC信号出力の送信装置40が接続された場合でも、DC信号出力の送信装置30が接続された場合と同様の差動信号を、接続ケーブル50によって受信装置10へ伝送して、受信装置10は安定に信号受信ができる。
【0023】
次に、制御回路52の構成例を図4に示す。図4において、521はフィルタ、522は電圧検出部である。以下、その動作を説明する。
【0024】
図4において、差動信号線の+側501の信号電圧をフィルタ521で時間平均値を算出してDC電圧値を推定する。電圧検出部522がこのDC電圧値と終端電圧AVccとほぼ等しい場合にAC信号出力と判断し、それより低い場合はDC信号出力と判断して、スイッチ511をON/OFFさせる。スイッチ511をOFFさせる代わりに定電流回路513の電流を停止させてもよい。
【0025】
終端電圧AVccは、送信装置30または40と接続遮断時、または、送信新装置30または40が動作していない時に測定できるが、測定に代えてTMDS仕様で決められている終端電圧AVcc=3.3V±5%から、下限値3.3V-5%である3.135V以上であればAC信号出力と判断することができる。但し、終端電圧AVccが上限値3.3V+5%である3.465Vで、DC信号出力のDC電圧値はそれより0.2V低い3.265Vになる場合がある。これを考慮すると、DC電圧推定値が3.265Vより上の場合はAC信号出力、3.135Vより下ではDC信号出力と判定し、それらの間であれば、スイッチ511をONさせた状態で、定電流回路513の電流を5mA(DC電圧推定値3.265V)~0mA(DC電圧推定値3.135V)に可変するとよい。
【0026】
なお、図4は差動信号線の+側501の信号電圧を判定に用いているが、差動信号線の-側502の信号電圧を判定に用いてもよいし、+側501と-側502の合計や平均を判定に用いてもよい。
【0027】
以上、接続ケーブル50として説明してきたが、この機能を中継装置として構成し、通常のケーブルと組合せて接続ケーブルを構成してもよいことは明らかであり、以降の他の実施例でも同様に適用できる。
【0028】
以上のように、本実施例は、送信装置がAC信号出力であるかDC信号出力であるかを検出して、DC信号出力であれば電流を付与せず、AC信号出力であれば所定の電流を付与して、DC信号入力の受信装置へ伝送する中継装置または接続ケーブルを介する。これにより、DC信号出力の送信装置とAC信号出力の送信装置のいずれでも同じ接続ケーブルまたは中継装置を介して受信装置へ接続することができるので、DC信号出力用とAC信号出力用の接続ケーブルまたは中継装置を区別する必要がなく、同じ接続ケーブルまたは中継装置が利用でき、複数の接続ケーブルまたは中継装置を用意する必要がなく、使い勝手が向上する。
【0029】
また、中継装置を受信装置内に組み込めば、DC信号出力の送信装置とAC信号出力の送信装置が混在しても、既存ケーブルを用いて信頼性のある映像信号の伝送が実現でき、通常ケーブルを使ってもDC信号出力の出力装置とAC信号出力の送信装置と接続できる受信装置を構成できる。
【実施例2】
【0030】
図5は、本実施例における接続ケーブル内の制御回路の他の構成である。図5において、図4と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。図5において、図4と異なる点は、制御回路52が電流検出素子523と電流判定部525を有する点である。以下、その動作を説明する。
【0031】
図5において、TMDS差動信号線のGND線503には、受信装置10の終端電圧AVccからのリターン電流が流れる。DC信号出力の送信装置30が接続されると、このリターン電流は定電流回路324の電流値10mAにほぼ等しい。この電流を電流検出素子523で検出後、フィルタ521で時間平均化処理を施して雑音成分を抑圧して電流判定部525に与える。電流判定部525がリターン電流とほぼ等しいと判定した場合は、接続された送信装置をDC信号出力と判定し、スイッチ511を開放(OFF)させる。
【0032】
AC信号出力の送信装置40が接続されると、リターン電流が生じないので、他の回路による影響のみとなり、小さな電流値になる。この電流を電流検出素子523で検出後、フィルタ521で時間平均化処理を施して雑音成分を抑圧して電流判定部525に与える。電流判定部525がTMDS規定のリターン電流より小さいと判定した場合は、接続された送信装置をAC信号出力と判定し、スイッチ511を短絡(ON)させて定電流回路513が5mA程度を引き抜く。本実施例によれば、実施例1の電圧検出方式に比べて判定のあいまいさを減らすことができる。
【0033】
以上のように、本実施例の制御回路を含む接続ケーブルによっても、実施例1と同様に、送信装置がAC信号出力であってもDC信号出力であっても、同じDC信号出力相当の信号を受信装置へ入力することができるので、ケーブルまたは中継装置を複数用意する必要が無い効果がある。
【実施例3】
【0034】
図6は、特許文献2に概念が記述された送信装置を使用する場合の、本実施例における伝送システムの構成を示す図である。
【0035】
図6において、AC信号出力の送信装置60はTMDSエンコーダ31、ドライバ613、トランジスタ621~625、631~635、定電流回路641~645、終端抵抗611と612、直流阻止素子614と615を構成に含む。接続ケーブル50と受信装置10の構成は実施例1と同様であり、詳細説明を省略する。
【0036】
TMDSエンコーダ出力を受けてドライバ613がトランジスタ621と631を制御して、定電流回路641が引き抜く一定電流を終端抵抗611と直流阻止素子614、または終端抵抗612と直流阻止素子615に振り分ける。直流阻止素子614と615は、それぞれ受信装置10の終端抵抗121と122に接続されているので、差動信号線の+側501と-側502それぞれは高周波的には各50Ωの終端抵抗2個が並列接続された形である。このため、送信装置30と同等の信号出力を得るためには、定電流回路641は、TMDS規定の電流10mAの約2倍にあたる、ほぼ20mAを引き抜く必要がある。
【0037】
直流阻止素子614と615の前後に補正回路62と補正回路63を配する。特許文献2に記載されているように、補正回路62は信号のDCレベル変動を抑制し、補正回路63は補正回路62と逆動作させて、信号波形を補正回路62で補正される前の信号に戻す働きをさせる。逆動作とは、補正回路62が+側信号線から所定の電流を引くと、補正回路63が-側信号線からほぼ同じ所定の電流を引く動作である。同様に、補正回路62が-側信号線から所定の電流を引くと、補正回路63が+側信号線からほぼ同じ所定の電流を引く動作である。
【0038】
図6においては、補正回路62と補正回路63の実現例を示している。2mAの定電流回路642~645、トランジスタ622~625、632~635は、論理0と1の数のアンバランスに起因するDCレベル変動を補正し、直流阻止素子にはDCレベル変動を抑える補正動作を図7及び図8に示した表に基づき電流を加算する。図7は補正回路62、図8は補正回路63の補正電流を示している。
【0039】
論理0と1の数の比率である論理比は、ほぼ6:4の期間と5:5の期間、4:6の期間に分類される。直流阻止素子に流れる電流は、TMDS仕様に基づき10mAの振幅になり、そのアンバランス量を補正するのはその20%すなわち2mAと計算されるので補正用の定電流回路642~645は2mAとしている。
【0040】
補正回路62を例にとれば、論理比5:5の場合は補正不要であり、論理比が6:4の場合は2mAを減算(すなわち2mAを余分にGND線へ引き抜く)してDCレベルを調整する。論理比4:6の場合は2mAを加算(すなわち2mAを送信装置内の電源AVccから供給)する。
【0041】
また、補正回路63はその逆動作であり、論理比5:5の場合は補正不要、論理比が6:4の場合は2mAを加算(すなわち2mAを送信装置内の電源AVccから供給)する。論理比4:6の場合は2mAを減算(すなわち2mAを余分にGND線へ引き抜く)してDCレベルを調整する。
【0042】
なお、補正電流を0±2mAとできればよいが、回路構成が難しくなるので、図7及び図8では、論理比5:5の補正電流を2mAとして、2mA±2mAとして構成した例を示している。また、各トランジスタ622~625、632~635のドライバとその制御信号は図示していないが、TMDSエンコーダ31から各論理比の期間情報を入手し、ドライバ613と同様なドライバでスイッチ動作を行う。
【0043】
また、補正回路62と63は、それぞれ定電流回路2個、トランジスタ4個を使用しているが、それらを半減して構成してもよい。例えば補正回路62において、トランジスタ622と直流阻止素子614間と、トランジスタ632と直流阻止素子615間それぞれに50~330Ω程度の抵抗を入れ、定電流回路642が4mA程度を引き抜くように設定しておく。トランジスタ622と632が同時ONになれば、挿入した50~330Ω程度の抵抗で電流がほぼ均等に2mAづつ配分できる。このようにして、2mA±2mAを実現してもよい。同様に補正回路63も定電流回路やトランジスタ数を半減させてもよい。
【0044】
直流阻止素子614と615の後の補正動作では、論理比6:4と4:6の期間が同じ長さでない場合に、差動信号線の+側501と-側502に印加される補正電流に差異が生じ、差動信号線の+側と-側の間にDC電位差が生じ、差動信号伝送の信頼性を損なう場合がある。その対策として、そのDC電位差を抑圧する制御回路52を図9に示す。
【0045】
図9において、差動信号線の+側501と-側502の電位をフィルタ531と532でそれぞれ時間平均化処理を行ない、それぞれのDCレベルを抽出し、差動アンプ533で、そのDCレベルの差異が小さくなるように定電流回路513と514の定電流量を制御する。すなわち、差動信号線の+側501と-側502の差分電圧の時間平均値を検出して+側電流制御素子(定電流回路513)と-側電流制御素子(定電流回路514)を制御し、その差分電圧の時間平均値を減らし、+側と-側の時間平均電圧がほぼ等しくなるように動作する。言い換えれば、AC信号出力時は、差動信号線の差動電圧の時間平均値が小さくなるように、すなわち差動信号線の+側と-側のDCレベルがほぼ一致するように電流引き抜き量を調整する。
【0046】
図6の構成において、定電流回路644と645によって、合計4mAを引き抜いているので、定電流回路513と514の合計電流値は10mA-4mA=6mAとなるように制御するとよい。送信装置60が既に4mAを引き抜いているかどうかは、図5で述べたリターン電流検出回路を利用してその引抜量を検出し、定電流回路513と514の合計電流値を設定することができる。
【0047】
なお、図9では定電流回路513と514を個別に記述しているが、それらの合計電流を引き抜く電流回路を用意し、その引抜電流を差動アンプ533制御の下で、差動信号線の+側501と-側502に振り分ける動作としてフィードバック制御としてもよい。また、この動作は、DC信号出力の送信装置30に対しては不要の為、実施例1や実施例2で述べたように、DC信号出力の送信装置を検出したらスイッチ511と512は開放(OFF)させておくとよい。
【0048】
このように、本実施例によれば、差動信号線間にDCレベル差の少ない信号を受信装置に提供できるので、信頼性の高い映像伝送が実現できる。
【実施例4】
【0049】
差動信号線の+側501と-側502のDC電位差を抑圧する補正回路を、実施例3では接続ケーブル50に設けていたが、送信装置内に設けることで、AC信号出力型ながら、DC信号出力同等の信号を得ることができる。本実施例では、この構成について説明する。
【0050】
図10は、本実施例における伝送システムの構成を示す図である。図10において、図6と同じ機能は同じ符号を付し、その説明は省略する。図6では接続ケーブル50内で差動信号線の+側と-側のDC電位差を抑圧していたが、図10では、送信装置60内に、定電流回路646とトランジスタ626、636からなる補正回路64を設けて同様な動作を実現している。
【0051】
図10において、定電流回路646は、図6の定電流回路513と514の合計値と同じ定電流を引き抜き、トランジスタ626と636で差動信号線の+側501と-側502で電流分配を決めている。なお、実施例3で説明したように、図10に図示していないフィルタと差動アンプでDC電位差をフィードバックして抑圧制御するとよい。
【0052】
一方、映像出力フォーマットが決まると、論理比6:4と4:6の時間比率が計算できるので、その計算値に基づいて定電流回路646の電流を振り分けてもよい。また、差動信号線の+側の専用定電流回路と-側の定電流回路を設けてそれぞれ定電流値を設定してもよい。また、この論理比6:4と4:6の時間に応じて補正電流を割り振る制御方法は、補正回路64だけではなく、補正回路62や63にも適用できる。
【0053】
以上のように、これらの電流を加減算する補正回路62と63、64を用いることにより、AC信号出力をDC信号出力同等に補正することができるので、既存ケーブルや受信装置との整合性が高く、信頼性のある映像信号を出力できる送信装置を実現できる。
【0054】
なお、以上の実施例において、DCレベルやリターン電流検出等に時間平均化処理を施す例を説明した。ここで、直流阻止素子を経由したTMDS信号は、水平走査周期や垂直走査周期で顕著に観察されるので、時間平均化は少なくとも水平走査周期の複数倍以上、望ましくは垂直走査周期以上にわたり平均化処理を行うとよい。また、時間平均化処理は、水平走査周期の複数倍以上、望ましくは垂直走査周期以上の時定数を持つ低周波フィルタで構成してもよいし、ディジタル的に平均計算してもよい。
【0055】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10:受信装置、11:TMDSデコーダ、30,40,60,70:送信装置、31:TMDSエンコーダ、50:接続ケーブル、52:制御回路、61、62、63、64:補正回路、121,122,611,612:終端抵抗、123:レシーバ、321,431,613:ドライバ、322,323,621~626,631~636:トランジスタ、501:差動信号線の+側、502:差動信号線の-側、503:GND線、324,513,514,641~646:定電流回路、432,433:抵抗、434,435,614,615:直流阻止素子、511,512:スイッチ、521,531,532:フィルタ、522:電圧検出部、523:電流検出素子、525:電流判定部、533:差動アンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10