(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】地図生成方法および地図生成装置
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20231205BHJP
G09B 29/12 20060101ALI20231205BHJP
G01C 21/22 20060101ALI20231205BHJP
G08G 3/00 20060101ALI20231205BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20231205BHJP
【FI】
G09B29/00 A
G09B29/12
G01C21/22
G08G3/00 A
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2020042889
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】嵩 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 勲
(72)【発明者】
【氏名】原 直裕
(72)【発明者】
【氏名】福川 智哉
(72)【発明者】
【氏名】横上 利之
(72)【発明者】
【氏名】南山 智志
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/100747(WO,A1)
【文献】特開2010-204419(JP,A)
【文献】特開2006-098094(JP,A)
【文献】特表2007-528510(JP,A)
【文献】特開2018-084699(JP,A)
【文献】特開2014-085420(JP,A)
【文献】特開2015-153059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0269191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-29/14
G01C 21/22-21/36
G08G 1/10-1/16、3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の物体および地形の情報を検出する第1センサ、および、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出する第2センサ、を用いて地図を生成する地図生成方法において、
前記第2センサによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第2の地図を生成する第2地図生成ステップと、
前記第1センサによる検出結果に基づいて前記第2の地図の格子幅よりも広い格子幅を有する第1の地図を生成する第1地図生成ステップと、
前記第1の地図の格子幅と前記第2の地図の格子幅を有する合成地図を生成する合成地図生成ステップと、を備え、
前記合成地図生成ステップでは、
周囲の物体および構造物の有無
並びにその位置に応じて、所定の格子幅をもって全体地図上に合成するかを判断する
と共に、
前記第1センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第1の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して移動範囲を含む全体地図上に合成し、前記第2センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第2の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して前記全体地図上に合成することにより、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成することを特徴とする地図生成方法。
【請求項2】
請求項1記載の地図生成方法において、
前記合成地図生成ステップは、
前記第1の地図の前記周囲の物体および地形の情報に応じて前記第1の地図の格子幅を有する領域を前記合成地図上に生成する第1領域生成ステップと、
前記第2の地図の前記周囲の物体および地形の情報に応じて前記第2の地図の格子幅を有する領域を前記合成地図上に生成する第2領域生成ステップと、
を備えることを特徴とする地図生成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の地図生成方法において、
合成地図生成ステップにおける、前記第1領域および前記第2領域の生成は木構造を利用し、前記合成地図上における前記第2領域を設定する木構造の深さは、前記第1領域を設定する木構造の深さよりも深く設定されていることを特徴とする地図生成方法。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の地図生成方法において、
前記第1センサはLDセンサであり、前記第2センサはEOセンサであることを特徴とする地図生成方法。
【請求項5】
請求項1~4記載のうち何れか一つに記載の地図生成方法において、
前記第1の地図の格子幅と前記第2の地図の格子幅は、前記第1センサおよび前記第2センサそれぞれの距離分解能に応じた固定値として設定されていることを特徴とする地図生成方法。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一つに記載の地図生成方法において、
前記第2地図生成ステップにおける前記第2の地図の生成手法は、自己位置推定に基づいた地図生成を行う手法であるSLAMが利用されることを特徴とする地図生成方法。
【請求項7】
請求項1~6のうち何れか一つに記載の地図生成方法において、
前記第2センサはLIDARであり、前記第1センサおよび前記第2センサに加えて、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出可能な第3センサとしてのカメラが備えられ、
前記カメラによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第3の地図を生成する第3地図生成ステップを備え、
前記合成地図生成ステップにあっては、第3の地図の格子幅を有する合成地図を生成することを特徴とする地図生成方法。
【請求項8】
請求項1~7のうち何れか一つに記載の地図生成方法において、
生成された前記合成地図をディスプレイに表示する場合に、当該合成地図に対応する領域として予め記憶されていた航空地図を重ねて表示することを特徴とする地図生成方法。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れか一つに記載の地図生成方法において、
前記第1センサおよび前記第2センサが移動体に搭載されており、生成された前記合成地図をディスプレイに表示する場合に、当該ディスプレイ上の前記合成地図に前記移動体の目標移動軌跡および実際の移動軌跡のうちの少なくとも何れか一つを重ねて表示することを特徴とする地図生成方法。
【請求項10】
請求項1~9のうち何れか一つに記載の地図生成方法において、
前記第1センサおよび前記第2センサが移動体に搭載されており、
生成された前記合成地図と、当該合成地図に対応する領域として予め記憶されていた航空地図とを比較し、前記航空地図上における物体および地形に対し、前記合成地図上において対応する物体および地形にズレが生じている場合、当該ズレを解消する方向への前記合成地図の位置補正を行うことを特徴とする地図生成方法。
【請求項11】
請求項1~10のうち何れか一つに記載の地図生成方法において、
前記合成地図は、船舶の自動航行および自動離着桟を行うに際し、前記船舶を目標移動軌跡に沿って移動させるように前記船舶に搭載された推進・操舵装置を制御するために利用されるものであることを特徴とする地図生成方法。
【請求項12】
周囲の物体および地形の情報を検出する第1センサ、および、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出する第2センサ、を用いて地図を生成する地図生成方法において、
前記第2センサによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第2の地図を生成する第2地図生成ステップと、
前記第1センサによる検出結果に基づいて前記第2の地図の格子幅よりも広い格子幅を有する第1の地図を生成する第1地図生成ステップと、
前記第1の地図に応じた格子幅と前記第2の地図の格子幅を有する合成地図を生成する合成地図生成ステップと、を備え、
前記合成地図生成ステップでは、周囲の物体および構造物の有無並びにその位置に応じて、所定の格子幅をもって全体地図上に合成するかを判断するようになっており、前記合成地図生成ステップにおける前記第1の地図に応じた格子幅は、前記第1センサにおいて検出された周囲の物体および地形までの距離が長い当該物体および地形が位置する領域ほど広く設定されており、
前記合成地図生成ステップでは、前記第1センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第1の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して移動範囲を含む全体地図上に合成し、前記第2センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第2の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して前記全体地図上に合成することにより、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成することを特徴とする地図生成方法。
【請求項13】
周囲の物体および地形の情報を検出する第1センサ、および、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出する第2センサを備え、前記第1センサによる検出結果、および、前記第2センサによる検出結果を使用して地図を生成する地図生成装置において、
前記第2センサによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第2の地図を生成する第2地図生成部と、
前記第1センサによる検出結果に基づいて前記第2の地図の格子幅よりも広い格子幅を有する第1の地図を生成する第1地図生成部と、
前記第1の地図の格子幅と前記第2の地図の格子幅を有する合成地図を生成する合成地図生成部と、を備え、
前記合成地図生成部は、
周囲の物体および構造物の有無並びにその位置に応じて、所定の格子幅をもって全体地図上に合成するかを判断すると共に、
前記第1センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第1の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して移動範囲を含む全体地図上に合成し、前記第2センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第2の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して前記全体地図上に合成することにより、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成することを特徴とする地図生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば船舶の航行に利用可能な海図等の地図を生成する方法および当該地図を生成する装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の自動航行や自動離着桟を行うために利用可能な海図(以下、地図という場合もある)を生成するに当たり、レーダやカメラ等のセンサを使用して船舶の周囲の物体や構造物を検出して地図を生成することが知られている。
【0003】
特許文献1には、船舶の自動着桟のための地図情報を作成するに際し、目標距離に応じて2つの距離センサを使い分ける技術が開示されている。具体的には、船舶に第1および第2の2種類のセンサを搭載している。また、第2センサの測定可能距離は第1センサの測定可能距離よりも短く、この第2センサの測定精度は第1センサの測定精度よりも高くなっている。そして、第1センサによって検出された第1環境情報および第2センサによって検出された第2環境情報それぞれをコントローラが取得し、着岸場所までの距離が所定距離よりも長い場合には第1環境情報に基づいて認識した着岸場所を反映した地図(以下、広域低解像度地図または広域地図という)を生成する一方、着岸場所までの距離が所定距離よりも短い場合には第2環境情報に基づいて認識した着岸場所を反映した地図(以下、狭域高解像度地図または高解像度地図という)を生成するようにしている。つまり、着岸場所までの距離に応じて、使用する環境情報を第1環境情報と第2環境情報との間で切り替え、選択された環境情報に基づいて地図を個別生成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船舶が外洋(沖合い)の自動航行を行うに当たっての利用に適した地図と、船舶が自動離着桟(港湾内での自動離着桟)を行うに当たっての利用に適した地図とは異なっている。つまり、外洋の自動航行を行うのに適した地図としては、解像度は低くてよいが広域であることが要求される。つまり、広域低解像度地図が要求される。これに対し、自動離着桟を行うのに適した地図としては、狭域でよいが高い解像度が要求される。つまり、狭域高解像度地図が要求される。
【0006】
特許文献1に開示されているように環境情報を切り替えて広域低解像度地図と狭域高解像度地図とを個別生成する場合、複数地図の境界付近占有状態(障害物となる物体等が存在するか否かの状態)が不定となってしまうことがある。このため、高解像度地図と広域地図との合成が必要である。
【0007】
しかしながら、これら高解像度地図と広域地図とを単純に合成した場合、地図の格子幅(解像度を決定する地図上の格子の幅)を何れかの解像度に合わせることになり、不整合が発生してしまう。つまり、高解像度地図に合わせて地図の格子幅を小さく(数百mm程度に)すると、広域地図においては細かい格子を無駄に有することになり、メモリ消費が過大となるといった課題が発生してしまう。逆に、広域地図に合わせて地図の格子幅を大きく(数m程度に)すると、高解像度の特性が失われてしまうといった課題が発生してしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、情報量の削減が可能で且つ必要に応じた解像度の高い領域を得ることができる地図生成方法および地図生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、周囲の物体および地形の情報を検出する第1センサ、および、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出する第2センサ、を用いて地図を生成する地図生成方法を前提とする。そして、この地図生成方法は、前記第2センサによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第2の地図を生成する第2地図生成ステップと、前記第1センサによる検出結果に基づいて前記第2の地図の格子幅よりも広い格子幅を有する第1の地図を生成する第1地図生成ステップと、前記第1の地図の格子幅と前記第2の地図の格子幅を有する合成地図を生成する合成地図生成ステップと、を備え、前記合成地図生成ステップでは、周囲の物体および構造物の有無並びにその位置に応じて、所定の格子幅をもって全体地図上に合成するかを判断すると共に、前記第1センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第1の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して移動範囲を含む全体地図上に合成し、前記第2センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第2の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して前記全体地図上に合成することにより、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成することを特徴とする。
【0010】
この特定事項により、生成された合成地図にあっては、物体等が比較的遠方にあって当該物体等の位置に高い精度が要求されない領域(第1センサによって検出された周囲の物体および地形の情報(検出結果)に基づいて生成された第1の地図に相当する領域)にあっては格子幅が比較的広くなっている。これに対し、物体等が比較的近距離にあって当該物体等の位置に高い精度が要求される領域(第2センサによって検出された周囲の物体および地形の情報に基づいて生成された第2の地図に相当する領域)にあっては格子幅が比較的狭くなっている。このように、本発明では、解像度は低くてよいが広域であることが要求される領域を対象とした地図(第1の地図)と、狭域でよいが高い解像度が要求される領域を対象とした地図(第2の地図)とを、地図上の格子幅を異ならせて一つの合成地図上に共存させるようにしている。広域低解像度地図と狭域高解像度地図とを個別生成して切り替えるようにした従来技術にあっては複数地図の境界付近占有状態が不定となってしまうことがあったが、本発明によれば、このような不具合を生じることがない。また、合成地図上には低解像度となっている領域が存在しているため合成地図全体としてのメモリ消費を抑制することができる。また、合成地図上には高解像度となっている領域が存在しているため、高解像度が要求される領域に対しては十分な解像度を確保することができる。
【0011】
また、前記合成地図生成ステップは、前記第1の地図の前記周囲の物体および地形の情報に応じて前記第1の地図の格子幅を有する領域を前記合成地図上に生成する第1領域生成ステップと、前記第2の地図の前記周囲の物体および地形の情報に応じて前記第2の地図の格子幅を有する領域を前記合成地図上に生成する第2領域生成ステップと、を備えている。
【0012】
これにより、各領域生成ステップにおいて第1の地図と第2の地図とが合成されて合成地図が生成されることになる。これにより前述した如く、合成地図上に低解像度となっている領域と高解像度となっている領域とを存在させることができる。
【0013】
また、合成地図生成ステップにおける、前記第1領域および前記第2領域の生成は木構造を利用し、前記合成地図上における前記第2領域を設定する木構造の深さは、前記第1領域を設定する木構造の深さよりも深く設定されている。
【0014】
合成地図上における第1の地図の領域および第2の地図の領域それぞれの格子幅を設定するに際し、既存の木構造を利用し、当該木構造の深さを設定することで、各格子幅を決定するようにしているため、各格子幅の設定処理の簡素化を図ることができる。
【0015】
前記第1センサはLD(Long distance)センサであり、前記第2センサはEO(Electro-Optical)センサである。LDセンサの例としてはレーダが挙げられる。また、EOセンサの例としてはLIDAR(Light Detection and Ranging)やカメラが挙げられる。
【0016】
EOセンサは比較的短い波長の電磁波を利用して周囲の物体および地形を検出するものであり、最大検出距離は比較的短いものの、距離分解能が高いものである。一方、LDセンサは例えば電波や音を利用して周囲の物体および地形を検出するものであり、距離分解能は比較的低いものの、最大検出距離は長いものである。これらセンサの特性を利用することで、要求に応じた高解像度の第2の地図の生成および広域の第1の地図の生成を行うことが可能であり、これら地図を合成することによって生成される合成地図は、メモリ消費の抑制と高解像度が要求される領域に対する十分な解像度の確保とを両立できるものとなる。
【0017】
また、前記第1の地図の格子幅と前記第2の地図の格子幅は、前記第1センサおよび前記第2センサそれぞれの距離分解能に応じた固定値として設定されている。
【0018】
解像度が第2センサよりも低い第1センサによって検出された周囲の物体および地形の情報(検出結果)に基づいて生成される第1の地図には高い精度は要求されないため、地図上の格子幅は比較的広くてよい。これに対し、解像度が第1センサよりも高い第2センサによって検出された周囲の物体および地形の情報に基づいて生成される第2の地図には高い精度が要求されるため、地図上の格子幅は広域地図に比べて狭くする必要がある。そして、これら各格子幅を、各センサそれぞれの距離分解能に応じた固定値としていることで、合成地図生成ステップにおける演算処理の簡素化を図ることができ、計算機の処理負担の軽減および計算速度の高速度化を図ることができる。
【0019】
また、前記第2地図生成ステップにおける前記第2の地図の生成手法は、自己位置推定に基づいた地図生成を行う手法であるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)が利用される。
【0020】
地図生成手法として実績のあるSLAMを利用して第2の地図(高解像度地図)を生成するようにしていることにより、信頼性の高い高解像度地図を生成することができる。
【0021】
また、前記第2センサはLIDARであり、前記第1センサおよび前記第2センサに加えて、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出可能な第3センサとしてのカメラが備えられ、前記カメラによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第3の地図を生成する第3地図生成ステップを備え、前記合成地図生成ステップにあっては、第3の地図の格子幅を有する合成地図を生成することを特徴とする地図生成方法。
【0022】
このように、第3センサとしてのカメラによって撮像(検出)された周囲の物体および地形の検出結果に基づいて第3の地図を生成し、この第3の地図も合成するようにしたことにより、第2センサ(LIDAR)で検出できなかった物体等が周囲に存在する場合に、この物体等をカメラによって撮像し、その情報に基づいて第3の地図を生成して合成することができる。このため、より信頼性の高い合成地図を生成することができる。
【0023】
また、生成された前記合成地図をディスプレイに表示する場合に、当該合成地図に対応する領域として予め記憶されていた航空地図を重ねて表示する。
【0024】
これによれば、ディスプレイに表示された合成地図が仮に不鮮明な状況であったとしても航空地図を重ねて表示することで、不動の構造物や建築物等を合成地図上に鮮明に表示することができるため、地図の視認性を高めることができる。
【0025】
また、前記第1センサおよび前記第2センサが移動体に搭載されており、生成された前記合成地図をディスプレイに表示する場合に、当該ディスプレイ上の前記合成地図に前記移動体の目標移動軌跡および実際の移動軌跡のうちの少なくとも何れか一つを重ねて表示する。
【0026】
これによれば、移動体の乗員はディスプレイ上の合成地図を視認することで、移動体の目標移動軌跡や実際の移動軌跡を確認することができる。例えば、移動体を自動で移動させている(例えば船舶の自動航行を行っている)場合に、移動体が適正に移動しているか否かを確認することができ、合成地図の利用形態の拡大を図ることができる。
【0027】
また、前記第1センサおよび前記第2センサが移動体に搭載されており、生成された前記合成地図と、当該合成地図に対応する領域として予め記憶されていた航空地図とを比較し、前記航空地図上における物体および地形に対し、前記合成地図上において対応する物体および地形にズレが生じている場合、当該ズレを解消する方向への前記合成地図の位置補正を行う。
【0028】
これによれば、合成地図を生成する際の演算誤差や移動体の自己位置の推定誤差等が生じていることに起因して合成地図にズレが生じている場合であっても、そのズレを解消するような位置補正が行われるため、より正確な合成地図を生成することができる。
【0029】
前記合成地図は、船舶の自動航行および自動離着桟を行うに際し、前記船舶を目標移動軌跡に沿って移動させるように前記船舶に搭載された推進・操舵装置を制御するために利用されるものである。
【0030】
これによれば、外洋(沖合い)の自動航行を行うに当たっての利用に適した広域の第1の地図と、自動離着桟(港湾内での自動離着桟)を行うに当たっての利用に適した高解像度の第2の地図とが一つの合成地図上に共存されることになるため、この合成地図を、適正な自動航行および自動離着桟を行うための推進・操舵装置の制御に有効に利用することができる。
【0031】
また、他の解決手段として、周囲の物体および地形の情報を検出する第1センサ、および、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出する第2センサ、を用いて地図を生成する地図生成方法を前提とする。そして、この地図生成方法は、前記第2センサによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第2の地図を生成する第2地図生成ステップと、前記第1センサによる検出結果に基づいて前記第2の地図の格子幅よりも広い格子幅を有する第1の地図を生成する第1地図生成ステップと、前記第1の地図に応じた格子幅と前記第2の地図の格子幅を有する合成地図を生成する合成地図生成ステップと、を備え、前記合成地図生成ステップでは、周囲の物体および構造物の有無並びにその位置に応じて、所定の格子幅をもって全体地図上に合成するかを判断するようになっており、前記合成地図生成ステップにおける前記第1の地図に応じた格子幅を、前記第1センサにおいて検出された周囲の物体および地形までの距離が長い当該物体および地形が位置する領域ほど広く設定するようになっており、前記合成地図生成ステップでは、前記第1センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第1の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して移動範囲を含む全体地図上に合成し、前記第2センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第2の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して前記全体地図上に合成することにより、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成するようにしてもよい。
【0032】
この特定事項によれば、前述した効果(合成地図全体としてのメモリ消費を抑制すること、および、高解像度が要求される領域に対して十分な解像度が確保できること)に加えて、以下の効果を奏することができる。つまり、高解像度が要求されない第1の地図にあっては、遠距離にある物体および地形については、近距離にある物体および地形よりも更に解像度は低くてよい。このため、第1センサにおいて検出された周囲の物体および地形までの距離が長いほどその領域における格子幅を広くすることで、必要最小限の解像度を得ながらもメモリ消費を抑制することができる。
【0033】
また、前述した地図生成方法を実施する地図生成装置も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、周囲の物体および地形の情報を検出する第1センサ、および、前記第1センサに比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および地形を検出する第2センサを備え、前記第1センサによる検出結果、および、前記第2センサによる検出結果を使用して地図を生成する地図生成装置を前提とする。そして、この地図生成装置は、前記第2センサによる検出結果に基づいて所定の格子幅を有する第2の地図を生成する第2地図生成部と、前記第1センサによる検出結果に基づいて前記第2の地図の格子幅よりも広い格子幅を有する第1の地図を生成する第1地図生成部と、前記第1の地図の格子幅と前記第2の地図の格子幅を有する合成地図を生成する合成地図生成部と、を備え、前記合成地図生成部は、周囲の物体および構造物の有無並びにその位置に応じて、所定の格子幅をもって全体地図上に合成するかを判断すると共に、前記第1センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第1の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して移動範囲を含む全体地図上に合成し、前記第2センサで周囲に物体または構造物を検知した場合、前記第2の地図の格子幅をその格子が前記物体または構造物を占有するように地図上の領域毎に細分化して前記全体地図上に合成することにより、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成することを特徴とする。
【0034】
このような構成とされた地図生成装置によって生成される合成地図にあっても、第1の地図と第2の地図とを、地図上の格子幅を異ならせて一つの合成地図上に共存させることができる。このため、合成地図上には低解像度となっている領域が存在しているため合成地図全体としてのメモリ消費を抑制することができる。また、合成地図上には高解像度となっている領域が存在しているため、高解像度が要求される領域に対しては十分な解像度を確保することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明では、高解像度の第2の地図と広域の第1の地図とを合成することで、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成するようにしている。このため、解像度は低くてよいが広域であることが要求される領域を対象とした地図(第1の地図)と、狭域でよいが高い解像度が要求される領域を対象とした地図(第2の地図)とを同一の地図上に共存させることができる。その結果、情報量の削減が可能で且つ必要に応じた解像度の高い領域が得られる地図を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施形態に係る船舶の概略を示す平面図である。
【
図2】地図生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】地図生成の手順を説明するためのフローチャート図である。
【
図4】解像度に応じた地図上の四分木を説明するための図である。
【
図5】解像度に応じた四分木の深さを説明するための図である。
【
図7】
図6の合成地図に対応する航空写真を示す図である。
【
図11】変形例2において航空地図を重畳させた合成地図の一例を示す図である。
【
図12】変形例3において目標航行軌跡および実航行軌跡を重畳させた合成地図の一例を示す図である。
【
図13】変形例4において合成地図上に航空地図を重畳させた場合における地図位置補正を説明するための合成地図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、船舶の自動航行や自動離着桟を行うために利用される地図(海図)を生成する地図生成方法および地図生成装置として本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0038】
-船舶の構成-
図1は、本実施形態に係る船舶(本発明でいう移動体)1の概略を示す平面図である。この
図1に示すように船舶1は、船体11の後部に推進・操舵装置12,12を備えている。推進・操舵装置12,12の作動により、船舶1の前進および後進、進行方向の変更が可能となっている。このため、船舶1の自動航行や自動離着桟が行われる際にあっては、後述する地図生成方法によって生成された地図に基づいて設定される目標航行軌跡に沿って船舶1が自動航行や自動離着桟を行うように推進・操舵装置12,12が自動制御されることになる。
【0039】
-地図生成装置の構成-
図2は、本実施形態に係る地図生成装置2の構成を示す機能ブロック図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る船舶1には、地図生成装置2を構成する機器として、レーダ(Radar;Radio Detecting and Ranging)3、LIDAR(より具体的には3D-LIDAR;3D-Light Detection and Ranging)4、位置推定ユニット5としてのGNSS(Global Navigation Satellite System)装置51およびIMU(Inertial Measurement Unit)52、コントローラ6、ディスプレイ7を備えている。
【0040】
レーダ(本発明でいうLDセンサ)3は、本発明でいう第1センサに相当するものであり、電波を利用して周囲の物体および構造物(地形を含む)を検出し、周囲の物体や構造物までの距離を計測する。具体的には、可視光線よりも波長が長い電波を使用することにより、遠方の物体や構造物に電波を照射してその反射波を受けることで、照射後反射波を受けるまでの時間に基づいて当該物体や構造物までの距離を計測する。このレーダ3は、例えば、距離分解能が1m程度であって、最大検出距離が1km程度となっている。ここでいう周囲の物体の例としては海上の他の船舶、杭、ブイ、流木、岩等が挙げられる。また、周囲の構造物の例としては桟橋、岸壁、橋梁等が挙げられる。
【0041】
LIDAR(本発明でいうEOセンサ)4は、本発明でいう第2センサに相当するものであり、レーザ光を走査しながら周囲の物体および構造物を検出する。つまり、周囲の物体や構造物にレーザ光を照射してその散乱光や反射光を観測することで、物体や構造物までの距離を計測する。具体的には、パルス状に発光するレーザ照射に対する散乱光を測定し、発光後反射光を受光するまでの時間に基づいて物体や構造物までの距離を計測する。尚、このLIDAR4では、レーダ3よりも遥かに短い波長の電磁波が用いられる。例えば紫外線、可視光線、近赤外線等が使用される。このLIDAR4は、例えば、距離分解能が10mm程度であって、最大検出距離が100m程度となっている。このようにLIDAR4は、レーダ3に比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および構造物を検出可能となっている。尚、EOセンサとしては、LIDAR4に代えてカメラを採用するようにしてもよい。
【0042】
GNSS装置51は、周知の如く、人工衛星を使用して船舶1の現在位置を計測するものである。つまり、複数の人工衛星がそれぞれ送信する時刻情報付きの信号を比較し、電波を受信した時間差を計算することで現在位置の座標(直交座標上における自己位置の座標)を算出する。
【0043】
IMU52は、3軸のジャイロと3方向の加速度計とによって、船舶1の3次元の角速度と加速度と角度とを求める。これらGNSS装置51およびIMU52によって構成される位置推定ユニット5により、所定タイミング毎に船舶1の現在位置の座標を正確に算出できるようになっている。
【0044】
コントローラ6は、図示しないCPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、このコントローラ6は、レーダ3、LIDAR4、位置推定ユニット5からの各信号を受けることで、ROM内に記憶された地図生成プログラムに基づいて後述する地図の生成を行う。尚、このコントローラ6にはデータベースDBが接続されている。このデータベースDBには、船舶1の目標航行の情報や、船舶1が離着桟する可能性のある複数の港の周辺の地図情報等が予め記憶されている。
【0045】
ディスプレイ7は、船舶1の運転席の前方に配置されており、コントローラ6で生成された地図の情報を当該コントローラ6から受信して地図の表示を行う。このディスプレイ7における地図の表示形態については後述する。
【0046】
(コントローラの構成)
本実施形態の特徴として、コントローラ6は、地図生成のための複数の機能部分を備えている。これら機能部分は、前記地図生成プログラム上の機能部分である。具体的には、第2地図生成部61、第1地図生成部62、全体地図生成部63、第1領域生成部64、第2領域生成部65を備えている。これら第1領域生成部64および第2領域生成部65によって合成地図生成部66が構成されている。
【0047】
第2地図生成部61は、LIDAR4からの出力を受け、当該LIDAR4によって検出された周囲の物体および構造物の情報(検出結果)に基づいて所定の格子幅(地図上の格子の幅)を有する第2の地図(高解像度地図)を生成する。LIDAR4が検出可能な物体や構造物の検出範囲は比較的狭いため、ここで生成される地図としても比較的狭い範囲(100m程度の範囲)内にある物体や構造物を対象とした地図(狭域高解像度地図)となる。また、LIDAR4から得られる位置情報の精度は比較的高く、距離分解能が10mm程度であった場合には、検出された物体や構造物の実際の位置は、当該物体や構造物の計測点に対して10mm程度の範囲内にあることになる。
【0048】
第1地図生成部62は、レーダ3からの出力を受け、当該レーダ3によって検出された周囲の物体および構造物の情報に基づいて所定の格子幅を有する第1の地図(広域地図)を生成する。レーダ3が検出可能な物体や構造物の検出範囲は比較的広いため、ここで生成される地図としても比較的広い範囲(1km程度の範囲)内にある物体や構造物を対象とした地図(広域低解像度地図)となる。また、レーダ3から得られる位置情報の精度は比較的低く、距離分解能が1m程度であった場合には、検出された物体や構造物の実際の位置は、当該物体や構造物の計測点に対して1m程度の範囲内にあることになる。
【0049】
全体地図生成部63は、船舶1の移動範囲を含む全体地図を生成する。具体的には、例えば船舶1が自動離着桟する場合にあっては、この自動離着桟を行う桟橋を含む港およびその周辺の地図情報をデータベースDBから読み出し、船舶1の移動範囲を含む地図の範囲を全体地図として生成する。
【0050】
第1領域生成部64および第2領域生成部65は、第2地図生成部61および第1地図生成部62それぞれにおいて生成された各地図を、周囲の物体および構造物の有無およびその位置に応じて、格子幅を地図上の領域毎に細分化して全体地図上に合成し、各領域毎に異なる格子幅を有する合成地図を生成する。
【0051】
具体的に、第1領域生成部64は、全体地図に対し、レーダ3によって検出された周囲の物体および構造物が存在する領域を所定の格子幅とされた第1の地図(広域低解像度地図)として合成(領域生成)する。一方、第2領域生成部65は、全体地図に対し、LIDAR4によって検出された周囲の物体および構造物が存在する領域を前記第1の地図の格子幅よりも狭い格子幅とされた第2の地図(狭域高解像度地図)として合成(領域生成)する。このように格子幅を地図上の領域毎に細分化する手法としては四分木(Quad Trees)である木構造が利用される。この四分木を利用して格子幅を細分化する具体的な手法については後述する。
【0052】
-地図生成-
次に、前述の如く構成された地図生成装置2によって実施される地図生成の手順について説明する。
図3は、本実施形態における地図生成の手順を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、例えば船舶1の自動航行や自動離着桟の実施が指示された際に実行される。
【0053】
先ず、ステップST1において、船舶1の自己位置が推定される。この自己位置推定動作としては、GNSS装置51が、複数の人工衛星がそれぞれ送信する時刻情報付きの信号を比較し、電波を受信した時間差を計算することで現在位置の座標を算出する。また、IMU52によって、船舶1の3次元の角速度と加速度と角度が求められ、これによって、船舶1の航行中であっても自己位置が正確に推定される。
【0054】
その後、ステップST2において、周囲情報の取得が行われる。具体的には、レーダ3からの周囲情報およびLIDAR4からの周囲情報がそれぞれ取得される。レーダ3からの周囲情報は、距離が1km程度の範囲内にある物体や構造物までの距離の情報であり、その距離分解能が1m程度の情報となっている。LIDAR4からの周囲情報は、距離が100m程度の範囲内にある物体や構造物までの距離の情報であり、その距離分解能が10mm程度の情報となっている。
【0055】
その後、ステップST3において、第2の地図の生成が行われる。この動作は前記第2地図生成部61において行われる。具体的には、LIDAR4によって検出された周囲の物体および構造物の情報に基づいて第2の地図を生成する。この際における第2の地図の具体的な生成手法としては、公知のSLAMが利用される。このSLAMは、自己位置推定に基づいた環境地図生成を行う手法として知られたものであって、未知の環境下であっても環境地図を生成することができるものとなっている。これにより、第2の地図(狭域高解像度地図)が生成されることになる。この時点では未だディスプレイ7には地図表示は行われず、第2の地図を生成するためのデータが作成された状態にある。このステップST3の動作が本発明でいう第2地図生成ステップに相当する。
【0056】
その後、ステップST4において、第1の地図の生成が行われる。この動作は前記第1地図生成部62において行われる。具体的には、レーダ3によって検出された周囲の物体および構造物の情報に基づいて前記第2の地図の格子幅よりも広い格子幅を有する第1の地図を生成する。この第1の地図の具体的な生成手法も前述した第2の地図の生成手法と同様である。これにより、第1の地図(広域低解像度地図)が生成されることになる。この時点でも未だディスプレイ7には地図表示は行われず、第1の地図を生成するためのデータが作成された状態にある。このステップST4の動作が本発明でいう第1地図生成ステップに相当する。
【0057】
ステップST5では、全体地図が生成される。この動作は前記全体地図生成部63において行われる。具体的には、例えば船舶1が自動離着桟する場合にあっては、この自動離着桟を行う桟橋を含む港およびその周辺の地図情報がデータベースDBから読み出され、船舶1の移動範囲を含む地図の範囲が全体地図として生成される。この全体地図は、その全体が1つの格子で構成されたものとして扱われる。
【0058】
ステップST6では、全体地図に対する第1の地図の合成(第1領域生成)が行われる。この動作は前記第1領域生成部64において行われる。具体的には、第1地図生成部62において生成された第1の地図を、周囲の物体および構造物の有無およびその位置に応じて、所定の格子幅をもって全体地図上に合成する。この第1の地図の合成に際しては、以下の四分木が利用される。
【0059】
図4は解像度に応じた地図上の四分木を説明するための図である。また、
図5は解像度に応じた四分木の深さを説明するための図である。
【0060】
ここでは、格子分割について、第1の地図の格子幅を、四分木における深さ2に対応する格子幅とする場合(高解像度が要求されないため、深さ2に対応する格子幅で十分であるとされた場合)を例に挙げて説明する。レーダ3からの情報による計測点(
図4にあっては計測点A)は、第1の地図を生成するのに用いたレーダ3の画素距離に応じた半径(例えば1m程度)の円Bを有する。ここでは、計測点Aを中心とする円Bとして扱うこととし、この円Bを計測判定円と呼ぶこととする。
【0061】
第1の地図にあっては、格子幅として四分木における深さ2に対応する格子幅とすれば十分であるため、全体地図の格子を2回分割する。つまり、全体地図を、
図4および
図5における格子1~格子4の4つの格子に分割し(この時点で計測点Aは第4象限(格子4)に存在している)、更に、格子4のノードを格子17~格子20の4つの格子に分割する(この時点で計測点Aは第4象限(格子20)に存在している)。この分割後、計測判定円Bと格子17~格子20とを比較し、計測判定円Bが格子を内包している、格子が計測判定円Bを内包している、もしくは、格子が計測判定円Bの一部を含んでいる状態となっている当該格子を占有する。
図4および
図5にあっては格子20が占有された状態を示している。レーダ3からの情報により得られた全ての計測点に対してこのような処理を行い、全ての計測点それぞれに対して格子を占有させる処理を行っていくことにより、全体地図に対して格子幅が
図4における距離L1となっている第1の地図(広域低解像度地図)の合成が行われる。
【0062】
ステップST7では、全体地図に対する第2の地図の合成(第2領域生成)が行われる。この動作は前記第2領域生成部65において行われる。具体的には、第2地図生成部61において生成された第2の地図を、周囲の物体および構造物の有無およびその位置に応じて、所定の格子幅(第1の地図の格子幅よりも狭い格子幅)をもって全体地図上に合成する。この第2の地図の合成に際しても、以下の四分木が利用される。
【0063】
ここでは、格子分割について、第2の地図の格子幅を、四分木における深さ4に対応する格子幅とする場合(高解像度が要求されているため、深さ4に対応する格子幅とした場合)を例に挙げて説明する。LIDAR4からの情報による計測点(
図4にあっては計測点C)は、第2の地図を生成するのに用いたSLAM(Little SLAM)の格子幅に応じた半径(例えば数十mm程度)の円Dを有する。ここでは、計測点Cを中心とする円Dとして扱うこととし、この円Dを計測判定円と呼ぶこととする。
【0064】
第2の地図にあっては、格子幅として四分木における深さ4に対応する格子幅が要求される。前述したステップST6において既に格子1~格子4の分割処理は実施済みであるため、ここで実際に分割する回数は3回である。つまり、格子2のノードを格子9~格子12の4つの格子に分割し、格子12のノードを格子49~格子52の4つの格子に分割し、更に、格子51のノードを格子205~格子208の4つの格子に分割する。この分割後、計測判定円Dと格子205~格子208とを比較し、計測判定円Dが格子を内包している、格子が計測判定円Dを内包している、もしくは、格子が計測判定円Dの一部を含んでいる状態となっている当該格子を占有する。
図4および
図5にあっては格子206および格子207が占有された状態を示している。LIDAR4からの情報により得られた全ての計測点に対してこのような処理を行い、全ての計測点それぞれに対して格子を占有させる処理を行っていくことにより、全体地図に対して格子幅が
図4における距離L2となっている第2の地図(狭域高解像度地図)の合成が行われる。この場合、物体等が存在していない領域(レイキャスト領域)にあっては、必ずしも四分木における深さ4に対応する格子幅でなくてもよいため、複数のレイキャスト領域を纏めて上の階層とすることで、メモリ消費を抑えることが可能となる。
【0065】
尚、このステップST7における第2の地図の合成(第2領域生成)に際し、当該第2の地図にあっては物体や構造物がないと判断されていたとしても、前記第1の地図において物体や構造物があると判断されている領域が存在する場合(同じ領域に対し、レーダ3では検出できたがLIDAR4では検出できなかった物体や構造物が存在する場合)には、この領域には物体や構造物が存在するものとして、前記第1の地図の情報を統合する。
【0066】
前述したステップST6およびステップST7の動作が本発明でいう合成地図生成ステップに相当する。
【0067】
尚、水面付近に存在する物体に対する対応として、レーダ3からの情報によって生成された第1の地図内で、画像の物体認識により水面付近の物体が存在すると判定された場合には、SLAMで生成した港湾内の第2の地図によって消去されてしまうことがないように、その物体の情報をバッファとして保管しておき、SLAMで生成した港湾内の第2の地図が重ねられた上から、水面付近に存在する物体を重ねるようにする。
【0068】
ステップST8では、このようにして生成された合成地図がディスプレイ7に表示される。
図6は、ディスプレイ7に表示された合成地図の一例を示している。図中における符号E,F,Gは他の船舶、符号H,Iは桟橋、符号Jは杭、符号Kは岸壁、符号Lは橋梁が合成地図上に表示されたものである。この
図6における各格子として、格子幅がL0,L1となっているものは第1の地図(広域低解像度地図)の合成が行われた部分であり、格子幅がL2,L3となっているものは第2の地図(狭域高解像度地図)の合成が行われた部分である。尚、実際にディスプレイ7に表示される合成地図にあっては、これら格子は描かれない。また、このディスプレイ7に表示される合成地図に格子を描くようにしてもよい。
【0069】
図7は、合成地図の信頼性を確認することを目的として、
図6の合成地図が生成されたタイミングでの実際の航空写真(合成地図との比較を行うための航空写真)を示している。これら
図6および
図7から明らかなように、合成地図にあっては、周囲の物体および構造物E~Lが適正に再現されており、信頼性の高い合成地図が生成されている。
【0070】
-実施形態の効果-
以上説明したように本実施形態では、解像度は低くてよいが広域であることが要求される領域を対象とした地図(第1の地図;広域低解像度地図)と、狭域でよいが高い解像度が要求される領域を対象とした地図(第2の地図;狭域高解像度地図)とを、地図上の格子幅を異ならせて一つの合成地図上に共存させるようにしている。広域低解像度地図と狭域高解像度地図とを個別生成して切り替えるようにした従来技術にあっては複数地図の境界付近占有状態が不定となってしまうことがあったが、本実施形態によれば、このような不具合を生じることがない。また、合成地図上には低解像度となっている領域が存在しているため合成地図全体としてのメモリ消費を抑制することができる。また、合成地図上には高解像度となっている領域が存在しているため、高解像度が要求される領域に対しては十分な解像度を確保することができる。以上のことから、船舶が外洋(沖合い)の自動航行を行うに当たっての利用に適した地図と、船舶が自動離着桟(港湾内での自動離着桟)を行うに当たっての利用に適した地図とを共存させた実用性の高い地図を生成することができる。
【0071】
また、本実施形態では、第1の地図を生成するための情報を取得する手段としてレーダ3を、第2の地図を生成するための情報を取得する手段としてLIDAR4をそれぞれ使用し、これらセンサの特性を利用することで、要求に応じた第1の地図の生成および第2の地図の生成を行うようにしている。このため、これら地図を合成することによって生成される合成地図としては、メモリ消費の抑制と高解像度が要求される領域に対する十分な解像度の確保とを両立できるものとなる。
【0072】
また、本実施形態では、地図上の領域毎に細分化される各領域毎に異なる各格子幅は、レーダ3およびLIDAR4それぞれの距離分解能に応じた固定値として設定している。このため、合成地図を生成する際の演算処理の簡素化を図ることができ、計算機の処理負担の軽減および計算速度の高速度化を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態では、地図上の領域毎における格子幅の細分化は四分木を利用し、当該四分木の深さを設定することで、各格子幅を決定するようにしているため、各格子幅の設定処理の簡素化を図ることができる。
【0074】
更に、本実施形態では、第2の地図の生成手法としてSLAMを利用している。このように地図生成手法として実績のあるSLAMを利用して第2の地図を生成するようにしていることにより、信頼性の高い第2の地図を生成することができる。
【0075】
-変形例1-
次に変形例1について説明する。本変形例は、船舶1に第3センサとしてカメラを搭載したものである。このカメラに係る構成および地図生成手法以外の構成および手法は前述した実施形態の場合と同様である。従って、ここではカメラに係る構成および地図生成手法についてのみ説明する。
【0076】
図8は、本変形例における
図1相当図(船舶1の概略を示す平面図)である。また、
図9は、本変形例における
図2相当図(機能ブロック図)である。
図8に示すように船舶1の船体11上には複数台のカメラ8,8,…が配置されている。本変形例では、9台のカメラ8,8,…が同一水平面上において円弧形状に配置されており、船舶1の前方から側方に亘る180°の角度範囲に存在する物体および構造物の検出が可能となっている。これらカメラ8,8,…はコントローラ6に接続されており、当該カメラ8,8,…が撮像した画像(船舶1の前方の画像や側方の画像)の情報がコントローラ6に送信されるようになっている。カメラ8はLIDAR4と同様に、レーダ3に比べて検出範囲が狭く且つ高解像度で周囲の物体および構造物が検出可能である。
【0077】
本変形例にあっては、コントローラ6が、LIDAR4からの出力およびカメラ8,8,…からの出力(画像の情報)を受け、LIDAR4によって検出された周囲の物体および構造物の情報に基づいて所定の格子幅(地図上の格子の幅)を有する前記第2の地図(高解像度地図)を生成するだけでなく、カメラ8,8,…によって撮像された周囲の物体および構造物の情報に基づいて同じく所定の格子幅を有する高解像度地図(以下、第3の地図と呼ぶ)を生成するようになっている。つまり、本変形例では、2種類の高解像度地図が生成されるものとなっている。
【0078】
また、本変形例にあっては、全体地図に対し、LIDAR4によって検出された周囲の物体および構造物が存在する領域を前記第1の地図の格子幅よりも狭い格子幅とされた第2の地図として合成するだけでなく、カメラ8,8,…によって撮像された周囲の物体および構造物が存在する領域を前記第1の地図の格子幅よりも狭い格子幅とされた第3の地図として合成する。つまり、本変形例では、2種類の高解像度地図それぞれが合成されるものとなっている。
【0079】
図10は、本変形例における
図3相当図(地図生成の手順を説明するためのフローチャート図)である。ステップST1,ST2,ST4~ST6,ST8の動作は前述した実施形態の場合と同様である。
【0080】
ステップST31では、前述した実施形態におけるステップST3の動作と同様に、LIDAR4によって検出された周囲の物体および構造物の情報に基づいて所定の格子幅を有する第2の地図が生成される。ステップST32では、カメラ8,8,…によって撮像された周囲の物体および構造物の情報に基づいて所定の格子幅を有する第3の地図が生成される。この第3の地図の具体的な生成手法としてもSLAMが利用される。このステップST32の動作が本発明でいう第3地図生成ステップに相当する。
【0081】
そして、ステップST6において全体地図に対する第1の地図の合成(第1領域生成)が行われた後、ステップST71では、全体地図に対する第2の地図の合成(第2領域生成)が行われる。このステップST71での動作は前述した実施形態におけるステップST7の動作(四分木を利用して格子幅を設定することによる第2の地図の合成動作)と同様に行われる。
【0082】
ステップST72では、全体地図に対する第3の地図の合成(第3領域生成)が行われる。この動作は前記合成地図生成部66において行われる。具体的には、生成された第3の地図を、周囲の物体および構造物の有無およびその位置に応じて、所定の格子幅(第1の地図の格子幅よりも狭い格子幅)をもって全体地図上に合成する。この第3の地図の合成に際しても四分木が利用される。四分木を利用して格子幅を設定することによる地図の合成動作については前述したので、ここでの説明は省略する。
【0083】
尚、格子幅を決定するための四分木における深さとしては、第2の地図の合成に際しては前述した実施形態の場合と同様に深さ4とする。また、第3の地図の合成に際しては四分木における深さを同じく4としてもよいし、深さ5以上としてもよい。
【0084】
以上のように全体地図に対する第1の地図の合成、第2の地図の合成および第3の地図の合成が順に行われることで合成地図が生成され、ステップST8において、この合成地図がディスプレイ7に表示されることになる。
【0085】
本変形例では、前述した実施形態の構成および地図生成手法に加えて、第3センサとしてのカメラ8,8,…によって撮像された周囲の物体および地形の情報に基づいて第3の地図を生成し、この第3の地図も合成するようにしたことにより、LIDAR4で検出できなかった物体等が周囲に存在する場合に、この物体等をカメラ8,8,…によって撮像し、その情報に基づいて第3の地図を生成して合成することができる。このため、より信頼性の高い高解像度地図を生成することができる。
【0086】
-変形例2-
次に変形例2について説明する。本変形例は、ディスプレイ7における地図の表示形態の変形例である。具体的には、前述した実施形態または変形例1において生成された合成地図に対して、当該合成地図に対応する航空地図を重ねて表示するようにしたものである。例えばデータベースDBに記憶されている複数の港の周辺の地図情報のうち、今回の地図生成動作によって生成した合成地図に対応する港の周辺の航空地図を重ねて表示する。
【0087】
図11は、本変形例において航空地図を重畳させた合成地図の一例を示している。このように航空地図を重畳させてディスプレイ7に表示することで、ディスプレイ7に表示された合成地図が仮に不鮮明な状況であったとしても不動の構造物や建築物等(航空地図上に存在する構造物や建築物等)を合成地図上に鮮明に表示することができるため、地図の視認性を高めることができる。
【0088】
-変形例3-
次に変形例3について説明する。本変形例も、ディスプレイ7における地図の表示形態の変形例である。具体的には、前述した実施形態または変形例1において生成された合成地図に対して、船舶1の目標航行軌跡(目標移動軌跡)および実際の航行軌跡(実際の移動軌跡)を重ねて表示するようにしたものである。
【0089】
例えば目標航行軌跡の情報は、データベースDBに記憶されている複数の港それぞれに対する目標航行軌跡のうち、今回の地図生成動作によって生成した合成地図に対応する港に対する目標航行軌跡を読み出して合成地図に重ねて表示する。
【0090】
また、実際の航行軌跡は、位置推定ユニット5によって、航行中の船舶1の自己位置を推定しながらその情報を格納していき、この推定された自己位置の単位時間当たりの変化を直線で繋いで実際の航行軌跡とし、これを合成地図に重ねて表示する。
【0091】
図12は、本変形例において目標航行軌跡(図中に実線で示す矢印を参照)および実航行軌跡(図中に破線で示す矢印を参照)を重畳させた合成地図の一例を示している。このように目標航行軌跡および実航行軌跡を重畳させてディスプレイ7に表示することで、船舶1が適正に航行しているか否かを確認することができ、合成地図の利用形態の拡大を図ることができる。
【0092】
-変形例4-
次に変形例4について説明する。本変形例は、合成地図の生成に当たって、当該合成地図の位置ズレを認識し、この位置ズレを補正するようにしたものである。
【0093】
合成地図を生成する際の演算誤差や船舶1の自己位置の推定誤差等が生じていた場合、合成地図と適正な地図との間で位置ズレが生じることがある。本変形例では、前述した変形例2に示すように合成地図に対して航空地図を重ねた際、合成地図に位置ズレが生じている場合に、そのズレ量だけ合成地図の位置補正を行うようにしている。
【0094】
図13は、合成地図上に航空地図を重畳させた場合に位置ズレが生じている状態を示している。この
図13にあっては、生成された合成地図上における橋梁Lに位置ズレが生じている状態を示している。この位置ズレを解消するための動作について以下に説明する。
【0095】
図14は、本変形例における
図3相当図(地図生成の手順を説明するためのフローチャート図)である。ステップST1~ST7,ST8の動作は前述した実施形態の場合と同様である。ステップST7において合成地図が生成された後、ステップST10では、合成地図に対して航空地図が重畳される。この航空地図の重畳に当たっては、高い位置精度が得られている第2の地図の領域に存在している物体や構造物を基準として重畳される。例えば桟橋H,Iが位置合わせされるように合成地図に対して航空地図が重畳される。
【0096】
そして、ステップST11において、これら合成地図と航空地図とを比較し、周囲の物体や構造物の位置にズレが生じているか否かを既存の画像処理によって判定する。
【0097】
周囲の物体や構造物の位置にズレが生じておらず、ステップST11でNo判定された場合には、合成地図は適正に生成されているとしてステップST8に移り、この合成地図がディスプレイ7に表示される。
【0098】
一方、周囲の物体や構造物の位置にズレが生じており、ステップST11でYes判定された場合には、ステップST12に移り、位置ズレの補正動作が行われる。具体的には、前記位置ズレのズレ量を演算し、そのズレ量分だけ合成地図上の物体や構造物の位置を修正する。
図13に示したものにあっては、橋梁Lのみの位置が修正されることになる。
【0099】
その後、ステップST8に移り、この修正後の合成地図がディスプレイ7に表示されることになる。
【0100】
本変形例によれば、この位置補正によって、より正確な合成地図を生成することができる。
【0101】
-変形例5-
次に変形例5について説明する。前述した実施形態では、広域地図の格子幅を、レーダ3の距離分解能に応じた固定値として設定していた。つまり、レーダ3からの情報によって生成される第1の地図は、四分木における深さを2として格子幅を設定していた。本変形例では、第1の地図の格子幅を、レーダ3の距離分解能だけでなく、周囲の物体や構造物までの距離に応じて変更するものである。
【0102】
具体的には、レーダ3からの情報によって生成される第1の地図における四分木における深さを1または2として選択的に設定するものであり、対象とする物体や構造物までの距離が所定距離(例えば500m)未満である場合には、その物体や構造物の領域における第1の地図の格子幅を四分木における深さを2に設定する。これに対し、対象とする物体や構造物までの距離が所定距離以上である場合には、その物体や構造物の領域における第1の地図の格子幅を比較的広くするように四分木における深さを1に設定する。
【0103】
高解像度が要求されない第1の地図にあっては、遠距離にある物体や構造物については、近距離にある物体や構造物よりも更に解像度は低くてよい。このため、レーダ3において検出された周囲の物体や構造物までの距離が長い場合には、その領域における格子幅を広くすることで、必要最小限の解像度を得ながらもメモリ消費を抑制することができる。
【0104】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態および前記各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0105】
例えば、前記実施形態および前記各変形例では、船舶1の自動航行や自動離着桟を行うために利用される地図を生成する場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、その他の用途に利用される地図を生成する場合にも適用が可能である。例えば、建設機械や農業機械が作業場に向けて自動走行したり、作業場内の所定位置に移動したりする際に利用される地図を生成する場合に適用可能である。
【0106】
また、前記実施形態および前記各変形例では、EOセンサとして3D-LIDAR4やカメラ8を使用していた。本発明はこれらに代えてまたはこれらに加えて2D-LIDARを使用するようにしてもよい。
【0107】
また、前記実施形態および前記各変形例では、前記計測点を囲む範囲の形状を円形(計測判定円)としていた。これに限らず、楕円、三角形、四角形等の種々の形状が適用可能である。
【0108】
また、本発明にあっては、第1の地図および第2の地図を生成する際の四分木における深さとしては前述したものには限定されず、全体地図の大きさや要求される解像度に応じてより深く設定してもよい。例えば、第1の地図を生成する際の四分木における深さを10に設定し、第2の地図を生成する際の四分木における深さを14に設定することが挙げられる。
【0109】
また、前記実施形態および前記各変形例では、合成地図を生成するに際し、全体地図に対して第1の地図を合成した後、第2の地図を合成するようにしていた。本発明はこれに限らず、全体地図に対して第2の地図を合成した後、第1の地図を合成するようにしてもよい。この場合、第2の地図が第1の地図によって上書きされないような処理を行う必要がある。
【0110】
また、前記実施形態および前記各変形例では、格子幅を地図上の領域毎に細分化する手法として四分木を利用していたが、八分木を利用して、周囲の物体や構造物を立体的に捉えて合成地図を生成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、船舶の自動航行や自動離着桟を行うために利用可能な地図の生成方法および地図の生成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 船舶(移動体)
2 地図生成装置
3 レーダ(第1センサ、LDセンサ)
4 LIDAR(第2センサ、EOセンサ)
6 コントローラ
61 第2地図生成部
62 第1地図生成部
63 全体地図生成部
64 第1領域生成部
65 第2領域生成部
66 合成地図生成部
8 カメラ