(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】レール対地電圧抑制システム
(51)【国際特許分類】
H02H 3/20 20060101AFI20231205BHJP
B60M 3/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H02H3/20 D
B60M3/00 E
(21)【出願番号】P 2020043606
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 祥太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基也
(72)【発明者】
【氏名】宮内 努
(72)【発明者】
【氏名】小熊 賢司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘隆
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185284(JP,A)
【文献】特開2015-067241(JP,A)
【文献】特開昭52-116512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08 - 3/253
B60M 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気鉄道におけるレール対地電圧抑制システムであって、
レール対地電圧を取得するレール対地電圧取得装置と、
レールと接地極を接続する電圧制御デバイスと、
1または複数の前記レール対地電圧取得装置
と、を有し、
許容範囲は、許容最大値と許容最小値からなる範囲であり、
前記電圧制御デバイスは、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が
前記許容範囲を逸脱した場合に、該レール対地電圧が
前記許容範囲に収ま
り、かつ、該レール対地電圧が前記許容最大値または前記許容最小値と一致するように、
前記レールと前記接地極を接続することで、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【請求項2】
電気鉄道におけるレール対地電圧抑制システムであって、
レール対地電圧を取得するレール対地電圧取得装置と、
レールと接地極を接続する電圧制御デバイスと、
複数の前記レール対地電圧取得装置
と、を有し、
許容範囲は、許容最大値と許容最小値からなる範囲であり、
前記電圧制御デバイスは、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が前記許容範囲を逸脱した場合に、複数の前記レール対地電圧取得装置によって取得された全てのレール対地電圧が前記許容範囲内に収まり、かつ、該全てのレール対地電圧のうちの最大値と前記許容最大値の差、および、該全てのレール対地電圧のうちの最小値と前記許容最小値の差が同一となるように、
前記レールと前記接地極を接続することで、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載のレール対地電圧抑制システムにおいて、
レール対地電圧を抑制する対象区間である保護対象エリアを前記レールに設定する保護対象エリア設定部を有し、
前記電圧制御デバイスは、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が前記許容範囲を逸脱した場合に、さらに前記保護対象エリアのレール対地電圧を所定値に抑制するように、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【請求項4】
請求項
3に記載のレール対地電圧抑制システムにおいて、
前記保護対象エリア設定部は、複数の前記保護対象エリアを、優先順位を付与して設定し、
前記電圧制御デバイスは、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が前記許容範囲を逸脱した場合に、優先順位に応じて前記保護対象エリアのレール対地電圧を抑制するように、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【請求項5】
請求項
3に記載のレール対地電圧抑制システムにおいて、
前記保護対象エリア設定部は、複数の前記保護対象エリアを設定し、
前記電圧制御デバイスは、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が前記許容範囲を逸脱した場合に、複数の前記保護対象エリアのレール対地電圧を抑制するように、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【請求項6】
請求項
1から
5の何れか1項に記載のレール対地電圧抑制システムにおいて、
複数の前記電圧制御デバイスを有し、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が前記許容範囲を逸脱した場合に、該レール対地電圧取得装置に最も近い設置位置の前記電圧制御デバイスが、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【請求項7】
請求項
1から
5の何れか1項に記載のレール対地電圧抑制システムにおいて、
複数の前記電圧制御デバイスを有し、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が前記許容範囲を逸脱した場合に、該レール対地電圧と同符号かつ絶対値が最大のレール対地電圧の前記電圧制御デバイスが、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【請求項8】
請求項
1から
5の何れか1項に記載のレール対地電圧抑制システムにおいて、
複数の前記電圧制御デバイスを有し、
何れかの前記レール対地電圧取得装置によって取得された該レール対地電圧取得装置の設置位置におけるレール対地電圧が前記許容範囲を逸脱し、かつ、複数の前記レール対地電圧取得装置によって取得されたレール対地電圧の最大値と最小値の差が所定値以上である場合に、正と負の両方向についてレール対地電圧の絶対値がそれぞれ所定値以上の前記電圧制御デバイスが、該最大値および該最小値が前記許容範囲となるように、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御する
ことを特徴とするレール対地電圧抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール対地電圧抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道においては、電源である変電所と負荷である車両が、架線を正極、レールを負極としてそれぞれ接続され電気回路を構成することで車両の走行に必要な電力が供給される。すなわち、車両走行時には、正極である架線には変電所から車両へと電流が流れ、負極であるレールには車両から変電所へと電流が流れる(帰線電流)。
【0003】
帰線電流に伴い、変電所と車両間のレールには電圧降下が発生し、路線全体における電圧降下の分布にしたがってレールと電位基準である地面との間に電位差(レール対地電圧)が発生する。過大なレール対地電圧は、沿線作業員がレールに接触した際の感電リスクとなるため、近年では、国際規格IEC62128に示されるように、レール対地電圧を所定の範囲内に収めることが必要とされている(非特許文献1~3参照)。
【0004】
例えば特許文献1に開示されるように、過大なレール対地電圧への対策として、レールとアース間に短絡スイッチを設け、所定値を上回るレール対地電圧を検知した際にレールとアース間を短絡し、レールと地面を等電位化することでレール対地電圧を抑制する装置(VLD:Voltage Limiting Device)が導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】IEC62128-1:2013. Railway applications - Fixed installations - Electrical safety, earthingand the return circuit - Part 1: Protective provisionsagainst electric shock.
【文献】IEC62128-2:2013. Railway applications - Fixed installations - Electrical safety,earthing and the return circuit - Part2: Provisions against the effects of stray currents caused by d.c. tractionsystems.
【文献】IEC62128-3:2013. Railway applications - Fixed installations - Electrical safety, earthingand the return circuit - Part 3: Mutual interaction ofa.c. and d.c. traction systems.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようにVLDを設置する従来の構成では、VLD近傍のレール対地電圧は抑制されるものの、VLDの作動位置におけるレール対地電圧の変動が全線に波及することで、VLDの遠方に過大なレール対地電圧が副次的に発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述の点を考慮してなされたものであって、電圧制御デバイスの作動位置におけるレール対地電圧の変動が全線に波及し、電圧制御デバイスの遠方に過大なレール対地電圧が発生することを抑制することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明においては、一態様として、電気鉄道におけるレール対地電圧抑制システムは、レール対地電圧を取得するレール対地電圧取得装置と、レールと接地極を接続する電圧制御デバイスと、を有し、前記電圧制御デバイスは、前記レール対地電圧取得装置によって取得されたレール対地電圧に応じて、前記レールと前記接地極を接続することで、該電圧制御デバイスの設置位置におけるレール対地電圧を制御するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、電圧制御デバイスの作動位置におけるレール対地電圧の変動が全線に波及し、電圧制御デバイスの遠方に過大なレール対地電圧が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の実施形態1に係るレール対地電圧抑制システムの構成図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る電圧制御デバイスの構成図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る電圧決定部の処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態1の効果を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るレール対地電圧抑制システムの構成図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る電圧制御デバイスの構成図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る電圧決定部の処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態2の効果を説明するための図である。
【
図10】本発明の実施形態2の効果を説明するための図である。
【
図11】本発明の実施形態3に係るレール対地電圧抑制システムの構成図である。
【
図12】本発明の実施形態3に係る電圧制御デバイスの構成図である。
【
図13】本発明の実施形態3に係る電圧決定部の処理を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態3の効果を説明するための図である。
【
図15】本発明の実施形態4に係るレール対地電圧抑制システムの構成図である。
【
図16】本発明の実施形態4に係る電圧制御デバイスの構成図である。
【
図17】本発明の実施形態4に係る電圧決定部の処理を示すフローチャートである。
【
図18】本発明の実施形態4の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。以下において、同一又は類似の要素及び処理に同一の符号を付し、差分を説明し、重複説明を省略する。また、後出の実施形態では、既出の実施形態との差分を説明し、重複説明を省略する。
【0013】
また、以下の説明及び各図で示す構成及び処理は、本発明の理解及び実施に必要な程度で実施形態の概要を例示するものであり、本発明に係る実施の態様を限定することを意図する趣旨ではない。また、各実施形態及び各変形例は、本発明の趣旨を逸脱せず、整合する範囲内で、一部又は全部を組合せることができる。
【0014】
<従来技術の問題点>
実施形態の説明に先立ち、従来技術の課題を説明する。
図1は、従来技術の課題を説明するための図である。
図1は、従来技術に係るレール対地電圧抑制システムSの概要を示す。従来技術に係るレール対地電圧抑制システムSは、VLD105を含んで構成される。
【0015】
電車103と変電所101はそれぞれ、架線102とレール104に接続されており、架線102を正極側、レール104を負極として電流が流れることにより、変電所101から電車103に対して電力を供給する。レール104は、VLD105を介して接地極106と接続されている。VLD105は、レール104と接地極106の間に所定値を上回る電圧が発生した際に、レール104と接地極106を短絡する。
【0016】
図1の下方図の点線121に示すように、VLD105の作動位置において、レール対地電圧が許容範囲を逸脱している。そこでVLD105を作動させ、実線122に示すように、作動位置におけるレール対地電圧を0Vに近付けると、作動位置以外の位置でも同様にレール対地電圧が抑制される。このため、
図1の下方図に示すように、作動位置に対して所定位置以遠の位置におけるレール対地電圧が許容範囲を逸脱し過大となるという問題がある。
【0017】
[実施形態1]
<実施形態1に係るレール対地電圧抑制システム1Sの構成>
図2は、本発明の実施形態1に係るレール対地電圧抑制システム1Sの構成図である。電気鉄道におけるレール対地電圧抑制システム1Sは、電圧制御デバイス201とレール対地電圧取得装置202とを含んで構成される。
【0018】
電圧制御デバイス201は、レール104と接地極106を接続し、レール104と接地極106間の電圧を制御する。電圧制御デバイス201の詳細については後述する。レール対地電圧取得装置202は、レール104と接地極106間の電圧を取得し、レール対地電圧211として電圧制御デバイス201へ出力する。
【0019】
<実施形態1に係る電圧制御デバイス201の構成>
図3は、本発明の実施形態1に係る電圧制御デバイス201の構成図である。電圧制御デバイス201は、電圧決定部301と電圧制御回路302とを含んで構成される。電圧決定部301は、レール対地電圧211を入力し、電圧制御指令値311を出力する。電圧決定部301の処理の詳細は後述する。
【0020】
電圧制御回路302は、電圧制御指令値311を入力とし、レール104と接地極106間の電圧を制御する。電圧制御回路302としては、例えば、レール104と接地極106間の電圧をフィードバックする機能が付いた可変抵抗で構成され、レール104と接地極106間の電圧が、電圧制御指令値311になるよう可変抵抗の抵抗値を制御する方式を用いる。
【0021】
なお、電圧制御回路302は、レール104と接地極106間の電圧を制御することが可能であるシステム構成であれば何れでもよく、例えば、電圧をフィードバックする機能が付いた双方向チョッパで構成され、レール104と接地極106間の電圧が電圧制御指令値311になるようチョッパの通流率を調整することで見かけ上の抵抗値を制御する方式であってもよい。双方向チョッパは一例であり、双方向に降圧可能なデバイスであれば何れでもよい。
【0022】
<実施形態1に係る電圧決定部301の処理>
図4は、本発明の実施形態1に係る電圧決定部301の処理を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、電圧決定部301がレール対地電圧211の許容範囲逸脱を検知したことを契機として実行される。
【0023】
先ずステップS401では、電圧決定部301は、レール対地電圧211の正負を判定し、正の場合(ステップS401Yes)はステップS402へ、負の場合(ステップS401No)はステップS403へ進む。ステップS402では、電圧決定部301は、電圧制御指令値311を、レール対地電圧211の許容範囲の許容最大値(
図5参照)に設定して出力する。一方、ステップS403では、電圧決定部301は、電圧制御指令値311を、レール対地電圧211の許容範囲の許容最小値(
図5参照)に設定して出力する。
【0024】
<実施形態1の効果>
図5は、本発明の実施形態1の効果を説明するための図である。
図5において、点線501はレール対地電圧抑制システム1Sが作動する前のレール対地電圧を示したものである。実線502はレール対地電圧抑制システム1Sが作動した状態のレール対地電圧を示したものである。2点鎖線503は、電圧制御デバイス201の位置で従来技術のVLDが作動したことを想定した場合のレール対地電圧を示したものである。
【0025】
2点鎖線503では、レール対地電圧抑制システム1Sから離れた位置でレール対地電圧が許容最小値を下回っているのに対し、実線502では、レール対地電圧抑制システム1Sの位置でのレール対地電圧の低下量が最小限に抑えられ、レール対地電圧抑制システム1Sから離れた位置においてもレール対地電圧が許容範囲内に維持されている。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、レール対地電圧抑制システム1Sから離れた位置においてレール対地電圧が許容範囲から逸脱することを防止することができる。
【0027】
<実施形態1の変形例>
本実施形態では、電圧制御デバイス201とレール対地電圧取得装置202が路線内に1組設置されている例を示したが、複数組設置することで、各設置位置において個別にレール対地電圧211を制御できる。例えば、レール対地電圧が、同時に、ある設置位置で許容最大値を超過し、他の設置位置で許容最小値を下回った場合も、同様の効果を得ることが可能となる。
【0028】
[実施形態2]
<実施形態2に係るレール対地電圧抑制システム2Sの構成>
図6は、本発明の実施形態2に係るレール対地電圧抑制システム2Sの構成図である。レール対地電圧抑制システム2Sは、電圧制御デバイス601と、複数のレール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dとを含んで構成される。
【0029】
電圧制御デバイス601は、複数のレール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dのそれぞれからレール対地電圧211a、211b、211c、211dを入力し、レール104と接地極106間の電圧を制御する。電圧制御デバイス601の詳細については後述する。
【0030】
レール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dは、実施形態1で説明したレール対地電圧取得装置202と同じであるため、説明を省略する。
【0031】
<実施形態2に係る電圧制御デバイス601の構成>
図7は、本発明の実施形態2に係る電圧制御デバイス601の構成図である。電圧制御デバイス601は、電圧決定部701と電圧制御回路702とを含んで構成される。
【0032】
電圧決定部701は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dを入力とし、電圧制御指令値311を出力する。電圧決定部701の処理の詳細は後述する。電圧制御回路702は、電圧制御指令値311を入力し、レール104と接地極106の電位差を制御する。電圧制御回路702は、双方向に昇降圧が可能なコンバータで構成する。双方向に昇降圧が可能なコンバータは一例であり、双方向に昇降圧が可能なデバイスであれば何れでもよい。
【0033】
<実施形態2に係る電圧決定部701の処理>
図8は、本発明の実施形態2に係る電圧決定部701の処理を示すフローチャートである。
図8に示す処理は、定期的に実行される。先ずステップS801では、電圧決定部701は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最大値を上回ったかを判定する。電圧決定部701は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最大値を上回った場合(ステップS801Yes)にステップS803へ進み、それ以外の場合はステップS802へ進む。
【0034】
ステップS802では、電圧決定部701は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最小値を下回ったかを判定する。電圧決定部701は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最小値を下回った場合(ステップS802Yes)にステップS804へ進み、それ以外の場合は実施形態2に係る電圧決定部701の処理を終了する。
【0035】
ステップS803では、電圧決定部701は、電圧制御指令値311(電圧制御指令値Vs)を、下記式(1)に基づいて算出し出力する。
VS=VD-(VMax-VAlMax)・・・(1)
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VMax:取得したレール対地電圧最大値
VAlMax:レール対地電圧の許容最大値
【0036】
また、ステップS804では、電圧決定部701は、電圧制御指令値311(電圧制御指令値Vs)を、下記式(2)に基づいて算出し出力する。
VS=VD+(VAlMin-VMin)・・・(2)
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VMin:取得したレール対地電圧最小値
VAlMin:レール対地電圧の許容最小値
【0037】
なお、
図8では、ステップS801およびS803の処理群を、ステップS802およびS804の処理群に対して優先させて実行しているが、これに限らない。すなわち、ステップS802およびS804の処理群を、ステップS801およびS803の処理群に対して優先させて実行してもよい。
【0038】
<実施形態2の効果>
図9および
図10は、本発明の実施形態2の効果を説明するための図である。実施形態2では、電圧制御デバイス601における電圧制御は、以下の4パターンが存在する。
パターン1:何れかのレール対地電圧が許容最大値を上回り、電圧制御デバイス位置におけるレール対地電圧の符号が正の場合。
パターン2:何れかのレール対地電圧が許容最大値を上回り、電圧制御デバイス位置におけるレール対地電圧の符号が負の場合。
パターン3:何れかのレール対地電圧が許容最小値を下回り、電圧制御デバイス位置におけるレール対地電圧の符号が正の場合。
パターン4:何れかのレール対地電圧が許容最小値を下回り、電圧制御デバイス位置におけるレール対地電圧の符号が負の場合。
【0039】
先ず、本実施形態において、パターン1の状況で得られる効果について
図9を用いて説明する。
図9は、レール対地電圧が許容範囲を逸脱した位置におけるレール対地電圧の符号と、電圧制御デバイスの位置のレール対地電圧の符号が一致する例である。
【0040】
点線901は、電圧制御デバイス601の電圧制御が実施されない場合のレール対地電圧であり、レール対地電圧取得装置202bの位置におけるレール対地電圧が許容最大値を上回っている。実線902は、本実施形態で説明した制御に従い降圧制御を実施した場合のレール対地電圧で、レール対地電圧取得装置202bの設置位置におけるレール対地電圧が許容範囲内に維持されている。
【0041】
このように、電圧制御デバイス601から離れた位置にレール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dを設置し、何れかのレール対地電圧取得装置で取得したレール対地電圧が許容範囲を逸脱した場合に、許容範囲を逸脱した位置のレール対地電圧が許容範囲に収まるよう電圧制御デバイス601の電圧を降圧制御する。これにより、1つの電圧制御デバイスで広範囲のレール対地電圧を許容範囲内に維持することが可能となる。
【0042】
なお、パターン3はパターン1の符号を逆転させたものであるので、図示および説明を省略する。
【0043】
次に、本実施形態において、パターン2の状況で得られる効果について
図10を用いて説明する。
図10は、レール対地電圧が許容範囲を逸脱した位置におけるレール対地電圧の符号と、電圧制御デバイス位置のレール対地電圧の符号が一致していない例である。
【0044】
点線1001は、電圧制御デバイス601の電圧制御が実施されない場合のレール対地電圧で、レール対地電圧取得装置202bの位置におけるレール対地電圧が許容最大値を上回っている。実線1002は、本実施形態で説明した制御に従い負の方向に昇圧制御を実施した場合のレール対地電圧で、レール対地電圧取得装置202bのレール対地電圧が許容範囲に収まっている。
【0045】
このように、電圧制御デバイス位置から離れた位置にレール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dを設置し、さらに電圧制御回路702を双方向に昇降圧が可能なコンバータで構成する。これにより、レール対地電圧が許容範囲から逸脱した位置におけるレール対地電圧の符号と、電圧制御デバイスの位置のレール対地電圧の符号が一致していない場合でも、レール対地電圧を抑制することが可能となる。また、1つの電圧制御デバイスでより広範囲のレール対地電圧を許容範囲内に維持することが可能となる。
【0046】
なお、パターン4はパターン2の符号を逆転させたものであるので、図示および説明を省略する。
【0047】
<実施形態2の変形例>
本実施形態では、4つのレール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dが設置される例を示したが、この数に限らない。また、レール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dは、必ずしも実際にレール対地電圧を計測するものでなくてもよく、例えば電車位置と変電所出力電力、電車電力からレール対地電圧を計算するシミュレーションモデルによってレール対地電圧を計算し取得する形態であってもよい。この場合、レール対地電圧を連続的に計算可能となるため、計測によるレール対地電圧の取得の場合よりも低コストで、精細に把握したレール対地電圧を用いて、レール対地電圧の許容範囲逸脱を漏れなく抑制することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、電圧制御指令値311を
図8に示した処理で求めたが、レール対地電圧が許容範囲を逸脱した位置におけるレール対地電圧の値をフィードバックし、レール対地電圧の値が許容範囲に収まるようPID制御を実施して電圧制御指令値311を決定してもよい。
【0049】
[実施形態3]
<実施形態3に係るレール対地電圧抑制システム3Sの構成>
図11は、本発明の実施形態3に係るレール対地電圧抑制システム3Sの構成図である。電圧制御デバイス1101以外の構成は、実施形態2の
図6で示した構成と同じであるため説明を省略する。
【0050】
電圧制御デバイス1101は、複数のレール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dからそれぞれレール対地電圧211a、211b、211c、211dを入力し、レール104と接地極106間の電圧を制御する。電圧制御デバイス1101の詳細については後述する。
【0051】
<実施形態3に係る電圧制御デバイス1101の構成>
図12は、本発明の実施形態3に係る電圧制御デバイス1101の構成図である。電圧制御デバイス1101は、電圧決定部1201と電圧制御回路
702とを含んで構成される。電圧決定部1201以外の構成は実施形態2の電圧制御デバイス601と同じであるため、説明を省略する。電圧決定部1201は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dを入力し、電圧制御指令値311を出力する。
【0052】
<実施形態3に係る電圧決定部1201の処理>
図13は、本発明の実施形態3に係る電圧決定部1201の処理を示すフローチャートである。
図13に示す処理は、定期的に実行される。
【0053】
先ずステップS1301では、電圧決定部1201は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最大値を上回ったかを判定する。電圧決定部1201は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最大値を上回った場合(ステップS1301Yes)にステップS1303へ進み、それ以外の場合はステップS1302へ進む。
【0054】
ステップS1302では、電圧決定部1201は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最小値を下回ったかを判定する。電圧決定部1201は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容範囲の許容最小値を下回った場合(ステップS1302Yes)にステップS1204へ進み、それ以外の場合は実施形態3に係る電圧決定部1201の処理を終了する。
【0055】
ステップS1303では、電圧決定部1201は、レール対地電圧の最大値と許容最大値の差と、レール対地電圧の最小値と許容最小値の差が同じになるよう、電圧制御指令値311(電圧制御指令値Vs)を、下記式(3)に基づいて算出し出力する。
VS=VD-(VMax-VTMax)・・・(3)
VTMax=VAlMax-{(VAlMax-VAlMin)-(VMax-VMin)}/2
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VAlMax:レール対地電圧の許容最大値
VTMax:レール対地電圧最大値の目標値
VMax:取得したレール対地電圧の最大値
VAlMin:レール対地電圧の許容最小値
VMin:取得したレール対地電圧の最小値
【0056】
また、ステップS1304では、電圧決定部1201は、レール対地電圧の最大値と許容最大値の差と、レール対地電圧の最小値と許容最小値の差が同じになるよう、電圧制御指令値311(電圧制御指令値Vs)を、下記式(4)に基づいて算出し出力する。
VS=VD+(VTMin-VAlMin)・・・(4)
VTMin=VAlMin+{(VAlMax-VAlMin)-(VMax-VMin)}/2
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VAlMax:レール対地電圧の許容最大値
VTMin:レール対地電圧最小値の目標値
VMax:取得したレール対地電圧の最大値
VAlMin:レール対地電圧の許容最小値
VMin:取得したレール対地電圧の最小値
【0057】
<実施形態3の効果>
図14は、本発明の実施形態3の効果を説明するための図である。点線1401は、電圧制御デバイス1101の電圧制御が実施されない場合のレール対地電圧で、レール対地電圧取得装置202bの位置におけるレール対地電圧が許容最大値を上回っている。実線1402は、本実施形態で説明した制御に従い降圧制御を実施した場合のレール対地電圧で、レール対地電圧取得装置202bのレール対地電圧が許容範囲に収まっており、さらに許容最大値よりも小さい値となっている。
【0058】
図14に示すように、許容最大値とレール対地電圧取得装置202bのレール対地電圧211bの差d1は、レール対地電圧取得装置202dのレール対地電圧211dと許容最小値の差d2と等しい。このように電圧制御デバイス1101を制御することで、路線全体のレール対地電圧の絶対値の合計を小さくすることができ、レール対地電圧により発生しうるリスクをより低減することが可能となる。
【0059】
[実施形態4]
<実施形態4に係るレール対地電圧抑制システム4Sの構成>
図15は、本発明の実施形態4に係るレール対地電圧抑制システム4Sの構成図である。レール対地電圧抑制システム4Sは、電圧制御デバイス1501と、レール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dと、保護対象エリア設定部1503とを含んで構成される。レール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dは、実施形態2の
図6で示したものと同じであるため説明を省略する。
【0060】
電圧制御デバイス1501は、複数のレール対地電圧取得装置202a、202b、202c、202dからレール対地電圧211a、211b、211c、211dを入力する。また、電圧制御デバイス1501は、保護対象エリア設定部1503から保護対象エリア設定情報1511を入力する。電圧制御デバイス1501は、これらの入力に基づいて、レール104と接地極106間の電圧を制御する。電圧制御デバイス1501の詳細については後述する。
【0061】
保護対象エリア設定部1503は、レール対地電圧の上昇を抑制したい位置または区間を保護対象エリアとして設定し、保護対象エリア設定情報1511を電圧制御デバイス1501へ出力する。保護対象エリアとは、レール対地電圧の平均値を所定値(例えば0Vや所定値以下の値など)に抑制して、人などを感電から保護するように、レール104に設定される位置または区間である。
【0062】
<実施形態4に係る電圧制御デバイス1501の構成>
図16は、本発明の実施形態4に係る電圧制御デバイス1501の構成図である。電圧制御デバイス1501は、電圧決定部1601と電圧制御回路702とを含んで構成される。電圧決定部1601以外の構成は実施形態2の電圧制御デバイス601と同じであるため、説明を省略する。電圧決定部1601は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dと、保護対象エリア設定情報1511を入力し、電圧制御指令値311を出力する。
【0063】
<実施形態4に係る電圧決定部1601の処理>
図16は、本発明の実施形態4に係る電圧決定部1601の処理を示すフローチャートである。
図16に示す処理は、定期的に実行される。
【0064】
先ずステップS1701では、電圧決定部1601は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容最大値を上回ったかを判定する。電圧決定部1601は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容最大値を上回った場合(ステップS1701Yes)にステップS1703へ進み、それ以外の場合はステップS1702へ進む。
【0065】
ステップS1702では、電圧決定部1601は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容最小値を下回ったかを判定する。電圧決定部1601は、レール対地電圧211a、211b、211c、211dの何れかが許容最小値を下回った場合(ステップS1702Yes)にステップS1706へ進み、それ以外の場合は実施形態4に係る電圧決定部1601の処理を終了する。
【0066】
ステップS1703では、電圧決定部1601は、下記式(5)が成立するか否かを判定する。電圧決定部1601は、下記式(5)が成立する場合(ステップS1703Yes)にステップS1704へ処理を移し、下記式(5)が成立しない場合(ステップS1703No)にステップS1705へ処理を移す。
VH-(VMax-VAlMax)<0・・・(5)
VH:保護対象エリアのレール対地電圧の平均値
VAlMax:レール対地電圧の許容最大値
VMax:レール対地電圧最大値
【0067】
ステップS1704は、ステップS1703がYes、すなわち保護対象エリア設定部1503から設定された保護対象エリアのレール対地電圧の平均値から、レール対地電圧の最大値と許容最大値の差を引いた値が負の場合に実行される。このとき、レール対地電圧を必要以上に下げると、保護対象エリアのレール対地電圧が0Vから離れ小さくなってしまう。すなわち、レール対地電圧の絶対値が増加してしまう。そのため、ステップS1704では、電圧決定部1601は、レール対地電圧低下量を最低限に抑えるよう、下記式(6)に基づき電圧制御指令値311(電圧制御指令値Vs)を計算し出力する。
VS=VD-(VMax-VAlMax)・・・(6)
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VAlMax:レール対地電圧の許容最大値
VMax:レール対地電圧最大値
【0068】
一方ステップS1705は、ステップS1703がNo、すなわち保護対象エリア設定部1503から設定された保護対象エリアのレール対地電圧の平均値から、レール対地電圧の最大値と許容最大値の差を引いた値が正の場合に実行される。このとき、レール対地電圧を低下させるほど、保護対象エリアのレール対地電圧の平均値を0Vに近づけることが可能となる。そこで、ステップS1705では、電圧決定部1601は、保護対象エリアのレール対地電圧の平均値が0Vになるよう、下記式(7)を用いて電圧制御指令値Vsを計算し出力する。
VS=VD-VH・・・(7)
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VH:保護対象エリアのレール対地電圧の平均値
【0069】
他方で、ステップS1706では、電圧決定部1601は、下記式(8)が成立するか否かを判定する。電圧決定部1601は、下記式(8)が成立する場合(ステップS1706Yes)にステップS1707へ処理を移し、下記式(8)が成立しない場合(ステップS1706No)にステップS1708へ処理を移す。
VH+(VAlMin-VMin)≧0・・・(8)
VH:保護対象エリアのレール対地電圧の平均値
VMin:レール対地電圧最小値
VAlMin:レール対地電圧の許容最小値
【0070】
ステップS1707では、ステップS1706がYes、すなわち保護対象エリア設定部1503から設定された保護対象エリアのレール対地電圧の平均値に、レール対地電圧の許容最小値と最小値の差を足した値が0以上の場合に実行される。このとき、レール対地電圧を必要以上に上げると、保護対象エリアのレール対地電圧が0Vから離れ大きくなってしまう。すなわち、レール対地電圧の絶対値が大きくなってしまう。そのため、ステップS1707では、電圧決定部1601は、レール対地電圧増加量を最低限に抑えるよう、下記式(9)に基づき電圧制御指令値Vsを計算し出力する。
VS=VD+(VAlMin-VMin)・・・(9)
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VMin:レール対地電圧最小値
VAlMin:レール対地電圧の許容最小値
【0071】
一方ステップS1708は、ステップS1706がNo、すなわち保護対象エリア設定部1503から設定された保護対象エリアのレール対地電圧の平均値に、レール対地電圧の許容最小値と最小値の差を足した値が負の場合に実行される。このとき、レール対地電圧を上昇させるほど、保護対象エリアのレール対地電圧の平均値を0Vに近づけることが可能となる。そこで、ステップS1708では、電圧決定部1601は、保護対象エリアのレール対地電圧の平均値が0Vになるよう、下記式(10)に基づき電圧制御指令値VSを計算し出力する。
VS=VD+VH・・・(10)
VS:電圧制御指令値
VD:電圧制御デバイス位置のレール対地電圧
VH:保護対象エリアのレール対地電圧の平均値
【0072】
<実施形態4の効果>
図18は、本発明の実施形態4の効果を説明するための図である。点線1801は、電圧制御デバイス1501の電圧制御が実施されない場合のレール対地電圧で、レール対地電圧取得装置202bの位置におけるレール対地電圧が許容最大値を上回っている。実線1802は、本実施形態で説明した制御に従い降圧制御を実施した場合のレール対地電圧で、レール対地電圧取得装置202bのレール対地電圧が許容範囲に収まっており、さらに保護対象エリアのレール対地電圧の平均値が0Vになっている。このように、電圧制御デバイス1501を制御することで、レール対地電圧を許容範囲内に維持しつつ、保護対象エリアのレール対地電圧を小さくすることができ、レール対地電圧による感電リスクをより低減することが可能となる。
【0073】
<実施形態4の変形例>
本実施形態では、保護対象エリアが1カ所のみ設定されている場合を説明したが、複数の保護対象エリアが設定されていてもよい。その場合、保護対象エリアに優先順位を付与し、優先順位が高い保護対象エリアのレール対地電圧の平均値を所定値に抑制するよう制御してもよい。あるいは、複数の保護対象エリアのレール対地電圧の平均値の合計を所定値に抑制するように制御してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、保護対象エリアのレール対地電圧の平均値を小さくする例を説明したが、平均値に限らず最大値や最小値などを小さくすることで、保護対象エリアのレール対地電圧を抑制するよう制御してもよい。
【0075】
<実施形態1~4の変形例>
上述の実施形態1~4では説明を省略したが、路線内に電圧制御デバイスが複数設置されてもよい。この場合には、レール対地電圧が許容範囲を逸脱したレール対地電圧取得装置から最も近い位置の電圧制御デバイスが、自装置の設置位置におけるレール対地電圧を制御することで、制御時の競合が防止できる。
【0076】
また、許容範囲を逸脱したレール対地電圧と同符号かつ絶対値が最大のレール対地電圧の電圧制御デバイスが、自装置の設置位置におけるレール対地電圧を制御することで、レール対地電圧の絶対値の下げ幅を最大限確保できる。
【0077】
また、複数のレール対地電圧取得装置によって検知されたレール対地電圧の最大値と最小値の差が所定値以上と著しく大きく、最大値を許容最大値に抑制しても最小値が許容範囲内に収まらない場合が考えられる。同様に、最小値を許容最小値に抑制しても最大値が許容範囲内に収まらない場合が考えられる。この場合は、正と負の両方向についてレール対地電圧の絶対値がそれぞれ所定値以上(例えば最大値)の電圧制御デバイスが、自装置の設置位置におけるレール対地電圧を制御することで、レール対地電圧の最大値と最小値を許容範囲内に収めることができる。
【0078】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、矛盾しない限りにおいて、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成で置き換え、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、構成の追加、削除、置換、統合、又は分散をすることが可能である。また実施形態で示した構成及び処理は、処理効率又は実装効率に基づいて適宜分散、統合、又は入れ替えることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
101・・・変電所、102・・・架線、103・・・電車、104・・・レール、105・・・VLD、106・・・接地極、201・・・電圧制御デバイス、202・・・レール対地電圧取得装置、211・・・レール対地電圧、301・・・電圧決定部、302・・・電圧制御回路