(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/30 20060101AFI20231205BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20231205BHJP
C07C 41/58 20060101ALI20231205BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20231205BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
C07C41/30
B01J31/02 103Z
C07C41/58
C07C43/23 D
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020047214
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2020-03-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-29
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519380314
【氏名又は名称】中國石油化學工業開發股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】黄 鼎棋
(72)【発明者】
【氏名】陳 郁森
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲チー▼維
(72)【発明者】
【氏名】李 偉英
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】宮崎 大輔
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-256342(JP,A)
【文献】特開2019-131513(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133106(WO,A1)
【文献】特開2002-363119(JP,A)
【文献】特開2017-141182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールを含む反応系に助触媒としてメルカプト基含有化合物を添加すること、および
前記助触媒を含む反応系に触媒としてアルキルスルホン酸を添加して、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールの脱水縮合反応を行って、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得ること
を含み、
前記助触媒を反応系に添加した後、
第1段階で触媒を添加し、脱水縮合反応を行った後、さらに第2段階の触媒の量を添加し、脱水縮合反応を行うことを特徴とする、
9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法。
【請求項2】
前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールと前記9-フルオレノンとのモル比は2~4である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記触媒は、40~80℃の温度で反応系にバッチ添加される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記触媒を反応系に一滴ずつ添加し、前記触媒を添加する際に、反応系の温度変化を10℃未満にする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記触媒と前記9-フルオレノンとのモル比は3~9である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
第1段階で触媒を添加し、4~8時間脱水縮合反応を行った後、さらに第2段階の触媒の量を添加し、4~8時間脱水縮合反応を行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルキルスルホン酸の分子式はR-SO
3Hであり、RはC1-C3アルキル基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記触媒はメタンスルホン酸であり、当該メタンスルホン酸と前記9-フルオレノンとのモル比は3~9である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記メルカプト基含有化合物は、C1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプタン、およびC1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプトカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記C1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプトカルボン酸は、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸またはメルカプト安息香酸である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記助触媒と前記9-フルオレノンとのモル比は0.05~0.2である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記脱水縮合反応の温度は40~80℃であり、反応時間は4~12時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記助触媒を添加する前に、前記9-フルオレノンおよび前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールを反応溶媒に溶解させることをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記反応溶媒は、芳香族炭化水素溶媒またはハロゲン化アルカンである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記芳香族炭化水素溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびトリメチルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ハロゲン化アルカンは、ジクロロメタン、クロロホルム、および四塩化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記反応溶媒の量は、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールの総重量に対して、10~20重量%である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項18】
前記脱水縮合反応の完了後、再結晶工程を行うことをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項19】
前記再結晶工程では、メタノールとアセトンの混合溶液を再結晶溶媒として使用される、請求項18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法に関し、特に、アルキルスルホン酸を触媒とする9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールフルオレン誘導体は一般的に、耐熱性、透明性、および高屈折率などの利点を有し、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂材料として利用でき、また、耐熱材料および光学材料なでの分野においても広く使用されている。
【0003】
9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン材料は、良好な透明性、高い熱安定性、高い屈折率などの特性を有するので、光電材料を製造するための重要な中間体であり、最近、市場では大きな注目を集めており、他のビスフェノールフルオレン誘導体と比較して、9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン材料は、エトキシ基で修飾された分子構造であり、溶媒への溶解度を大幅に向上させるため、良好な溶解特性を持ち、広く使用することができる。
【0004】
現在、9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンの既存の製造方法は、主に硫酸による触媒作用を採用しているが、硫酸と有機溶媒および2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール反応物とはスルホン化しやすかったり、副生物であるスルホネートを生成したりすることにより、生成物の収率と純度に影響してしまう。また、前記副生物の溶解度が低いため、精製プロセスの難しさが増し、製造するための生産コストも増加してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮して、従来技術の問題を解決するために、反応副生物の形成を有効的に低減することができる、9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンの製造方法を提案する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するために、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールを含む反応系に助触媒としてメルカプト基含有化合物を添加すること、および前記助触媒を含む反応系に触媒としてアルキルスルホン酸を添加して、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールの脱水縮合反応を行って、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得ることを含む、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法を提供する。
【0007】
本発明の一つの具体的な実施態様では、前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールと前記9-フルオレノンとのモル比は2~4である。
【0008】
本発明のもう一つの具体的な実施態様では、前記触媒は、40~80℃の温度で反応系にバッチ添加され、例えば、前記触媒は、反応系に一滴ずつ添加され、前記触媒を添加する際に、反応系の温度変化を10℃未満にする。本発明のもう一つの具体的な実施態様では、前記触媒の総添加量と前記9-フルオレノンとのモル比は3~9である。
【0009】
本発明のもう一つの具体的な実施態様では、複数の段階で前記触媒を添加する。例えば、前記助触媒を反応系に添加した後、前記触媒は2段階で添加され、そのうち、第1段階で触媒を添加し、4~8時間脱水縮合反応を行った後、さらに第2段階の触媒の量を添加し、4~8時間脱水縮合反応を行う。なお、この実施態様では、前記触媒の総添加量と前記9-フルオレノンとのモル比は3~9である。
【0010】
本発明のさらに一つの具体的な実施態様では、第1段階で添加される触媒の量は、第2段階で添加される触媒の量よりも多く、もちろん、第2段階で添加される触媒の量は、第1段階で添加される触媒の量よりも多くてもよい。
【0011】
本発明の一つの具体的な実施態様では、前記アルキルスルホン酸の分子式はR-SO3Hであり、RはC1-C3アルキル基である。本発明のもう一つの具体的な実施態様では、前記触媒はメタンスルホン酸であり、当該メタンスルホン酸と前記9-フルオレノンとのモル比は3~9である。
【0012】
本発明の一つの具体的な実施態様では、前記メルカプト基含有化合物は、C1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプタン、およびC1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプトカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。例えば、前記C1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプトカルボン酸は、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸またはメルカプト安息香酸である。本発明のもう一つの具体的な実施態様では、前記助触媒と前記9-フルオレノンとのモル比は0.05~0.2であり、3-メルカプトプロピオン酸を例にとると、当該3-メルカプトプロピオン酸と前記9-フルオレノンのモル比は0.05~0.2である。
【0013】
本発明の一つの具体的な実施態様では、前記脱水縮合反応の温度は40~80℃であり、反応時間は4~12時間である。
【0014】
本発明の一つの具体的な実施態様では、本発明の製造方法は、前記助触媒を添加する前に、前記9-フルオレノンおよび前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールを反応溶媒に溶解させることをさらに含む。
【0015】
本発明の一つの具体的な実施態様では、前記反応溶媒は、芳香族炭化水素溶媒またはハロゲン化アルカンである。そのうち、前記芳香族炭化水素溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびトリメチルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含み、前記ハロゲン化アルカンは、ジクロロメタン、クロロホルム、および四塩化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む。
【0016】
本発明の一つの具体的な実施態様では、前記反応溶媒の使用量は、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールの総重量に対して、10~20重量%である。
【0017】
本発明の一つの具体的な実施態様では、本発明の製造方法は、前記脱水縮合反応の完了後、再結晶工程を行うことをさらに含む。前記再結晶工程では、メタノールとアセトンの混合溶液を再結晶溶媒として使用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法において、触媒としてアルキルスルホン酸を、助触媒としてメルカプト基含有化合物を用いることにより、副生物の生成を有効的に抑制し、生成物の収率および純度を高めることができる。また、本発明の製造方法は高い変換率を有するので、比較的少量の2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール反応物の場合には、プロセス原料のコストを有効的に削減することができ、反応物を回収する必要があるという問題を解消する。得られた生成物は、低色度、高純度、高収率、低コストという特徴を持ち、産業上の利用価値がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態は特定の具体的な実施態様により説明され、当業者は、本発明の利点および効果を本明細書に記載の内容により容易に理解することができる。本発明は、他の異なる実施態様によって行うまたは適用することができ、本明細書における各詳細は、さまざまな観点やアプリケーションに基づいて、本発明の精神から逸脱することなく、異なる修飾および変更を行うことができる。なお、本明細書のすべての範囲と値は、包括的で組み合わせ可能である。本明細書に列挙された範囲内に入る任意の値または点、例えば、任意の整数は、サブ範囲などを導き出すための最小値または最大値として使用できる。
【0020】
本発明の9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法は、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールを含む反応系に助触媒としてメルカプト基含有化合物を添加すること、および前記助触媒を含む反応系に触媒としてアルキルスルホン酸を添加して、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールの脱水縮合反応を行って、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得ることを含む。
【0021】
本発明の製造方法は、従来のプロセスと比較して、比較的少量の2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール反応物を使用する場合に、9-フルオレノン反応物を完全に変換することにより、高い変換率を有し、プロセス原料のコストを有効的に削減し、反応物を回収する必要があるという問題を解消する。一つの具体的な実施態様では、前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールと前記9-フルオレノンとのモル比は2~4である。
【0022】
いくつかの実施態様では、前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールと前記9-フルオレノンとのモル比は、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0023】
一つの好ましい具体的な実施態様では、前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールと前記9-フルオレノンとのモル比は、2~2.1である。
【0024】
好ましくは、前記2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールは、98%以上の純度を有する2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールを使用する。
【0025】
好ましくは、前記9-フルオレノンは、95%以上の純度を有する9-フルオレノンを使用する。
【0026】
前記アルキルスルホン酸は、脱水縮合反応を促進するための脱水特性を有し、当該アルキルスルホン酸の分子式は、R-SO3Hであり、RはC1-C3アルキル基である。また、前記アルキルスルホン酸は、好ましくはメタンスルホン酸である。一つの具体的な実施態様では、前記メタンスルホン酸と前記9-フルオレノンとのモル比は、好ましくは3~9である。
【0027】
他の実施態様では、前記メタンスルホン酸と前記9-フルオレノンとのモル比は、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8または8.5であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明で使用されるアルキルスルホン酸は、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール反応物または有機反応溶媒とさらに反応するのは困難であるため、スルホン化またはスルホネート副生物の生成を有効的に抑制し、反応後の精製プロセスを簡略化し、生成物の収率と純度を高めることができる。
【0029】
前記メルカプト基含有化合物は、反応中間体の形成を促進できる助触媒であるため、全体的な選択率と収率を向上させることができる。前記メルカプト基含有化合物は、C1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプタン、およびC1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプトカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。一つの具体的な実施態様では、前記C1-C10アルキレン基またはC6-C12アリーレン基を含有するメルカプトカルボン酸は、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸またはメルカプト安息香酸であり、そのうち、特に3-メルカプトプロピオン酸が好ましい。一つの具体的な実施態様では、前記3-メルカプトプロピオン酸と前記9-フルオレノンとのモル比は0.05~0.2である。
【0030】
他の実施態様では、前記3-メルカプトプロピオン酸と前記9-フルオレノンとのモル比は、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10または0.15であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記脱水縮合反応の場合に、一つの具体的な実施態様では、助触媒と触媒が同時に反応に添加される。
【0032】
本発明によれば、まず、助触媒を加え、次に触媒を加えることで、助触媒で最初に中間体を形成することにより、反応の選択性を制御し、副生物の形成を低減し、反応速度を有効的に向上させ、反応収率を増加させる。
【0033】
もう一つの具体的な実施態様では、前記助触媒と前記触媒は連続的に添加され、両者は時間間隔なしで添加され、つまり、前記触媒は前記助触媒の添加直後に添加される。
【0034】
一つの具体的な実施態様では、前記触媒は、40~80℃の温度でバッチ添加され、例えば、総添加量が10等分、20等分、30等分、40等分、さらには100等分以上に分割されることで、触媒の添加を完了する。一つの具体的な実施態様では、業界ではよく知られている一滴ずつ反応系に添加され、滴下により反応物との完全に均一に接触し、反応速度を制御し、また、温度変化を厳密に制御することにより、急激な温度上昇で副生物の形成をもたらしてしまうことを回避する。もう一つの具体的な実施態様では、前記触媒の添加速度は、0.06~0.3ml/分である。また、前記触媒を一滴ずつ添加すると、反応系の温度変化が10℃未満に制御される。
【0035】
少なくとも4時間反応させるように間隔を持つようなことのない前記実施態様とは異なり、別の具体的な実施態様では、触媒は多段階で添加される。例えば、助触媒を反応系に添加した後、触媒を2段階で添加することにより、副反応の進行を抑制し、生成物の純度を向上させる。例えば、第1段階で触媒を添加し、4~8時間の脱水縮合反応を行った後、さらに第2段階の触媒の量を添加して、4~8時間の脱水縮合反応を行う。なお、この実施態様では、前記触媒の総添加量と前記9-フルオレノンとのモル比は3~9である。
【0036】
本発明の製造方法において、反応溶媒の存在下で縮合反応を行うことをさらに含むことができる。一つの具体的な実施態様では、前記反応溶媒は、芳香族炭化水素溶媒またはハロゲン化アルカンである。そのうち、前記芳香族炭化水素溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびトリメチルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含み、前記ハロゲン化アルカンは、ジクロロメタン、クロロホルム、および四塩化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む。
【0037】
もう一つの具体的な実施態様では、本発明の製造方法は、助触媒を添加する前に、9-フルオレノンおよび2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールを反応溶媒に溶解することをさらに含むことができる。前記反応溶媒の使用量は、9-フルオレノンと2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールの総重量に対して、10~20重量%である。本発明の製造方法で使用される反応溶媒は、従来の製造方法と比較して使用量が少ないため、反応コストを削減でき、環境汚染が発生しにくい。
【0038】
前記脱水縮合反応の反応条件は、反応温度が40~80℃、反応圧力が1気圧、4~12時間で反応する。反応温度が低すぎると、反応が遅くなり、反応温度が高すぎると、副反応が発生し、収率が低下してしまう。
【0039】
他の実施態様では、前記脱水縮合反応の反応温度は、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58または59であってもよいが、これらに限定されるものではない。なお、前記脱水縮合反応温度は、40~60℃が特に好ましい。
【0040】
本発明の製造方法は、脱水縮合反応の後、触媒および助触媒を除去して、反応を停止するためにアルカリ性水溶液を添加することをさらに含むことができる。一つの具体的な実施態様では、前記アルカリ性水溶液の塩基としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩などの無機塩基または有機塩基が使用され、必要に応じて他の水溶性有機溶媒が添加され、場合によって高温で処理されてもよい。
【0041】
もう一つの具体的な実施態様では、脱水縮合反応温度でアルカリ性水溶液である水酸化ナトリウム水溶液が添加されて、反応系が80℃に加熱した後攪拌して、アニーリングした後、室温で濾過して、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗生成物を得る。
【0042】
精製プロセスとして、本発明の製造方法は、前記9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗生成物を再結晶溶媒に溶解することをさらに含み、再結晶工程で不純物を分離して目的生成物の結晶を獲得し、また、前記精製プロセスは複数回繰り返されてもよいが、これに限定されない。
【0043】
前記再結晶溶媒は、アルコール溶媒、脂肪族ケトン溶媒、エステル溶媒、および脂肪族炭化水素溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む。一つの具体的な実施態様では、前記再結晶溶媒はメタノールとアセトンの混合溶液を選ぶ。
【0044】
上記の本発明の製造方法により得られた9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンは、低色度および高純度などの特徴を有し、高次光学材料などの製品の原材料としては有利である。
【0045】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0046】
実施例1
【0047】
9-フルオレノン(15g、83.24ミリモル)、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール(37.45g、174.79ミリモル)およびトルエン(13g)を反応フラスコに入れ、約50~55℃に加熱して上記の反応物を完全に溶解した後、まず、3-メルカプトプロピオン酸(0.88g、8.29ミリモル)を添加し、次にメタンスルホン酸(40g、416.23ミリモル)を0.3mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら脱水縮合反応を5時間行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)で検測して9-フルオレノンが存在しない場合、反応が完了しており、メタノールを加え、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性になるまでゆっくりと滴下して、温度を80°Cに上げ、反応混合物を約30分間連続して攪拌し、アニーリングした後、吸引ろ過した。最後に、ろ過した粗生成物をさらにアセトン/メタノールからなる混合溶液に再結晶処理を行い、44.38gの白色固体の9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物を獲得し、収率約90%であった。
【0048】
この実施例では、逆相高速液体クロマトグラフィー(Dionex UltiMate 3000)を採用して検出および純度分析をした。液体クロマトグラフの条件:Agilent Polaris 5 C18-A 250 x 4.6mm、移動相が95%アセトニトリル-5%水溶液であり、UV検出波長が254nmであり、流速が1.0mL/分であり、カラム温度が30℃であり、サンプルの注入量が20μLである。純度の計算方法は、[実際の化合物の重量(機器値)/粗生成物の重量(計量値)]*100%として計算された。純度は97.6%である。
【0049】
ASTM-D1209の標準試験方法に従って、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物をアセトン溶媒に溶解して、濃度が10重量%のサンプル液を調製し、色差計(hunterLac Color Quest XE)を使用して、白金-コバルト標準溶液(Apha色度がそれぞれ5、10、15、30、50、100、500)と比色分析を行って、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物のApha色度が17であることを得た。
【0050】
実施例2
【0051】
9-フルオレノン(10g、55.49ミリモル)、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール(24.96g、214.26ミリモル)およびトルエン(8.67g)を反応フラスコに入れ、約50~55℃に加熱して上記の反応物を完全に溶解した後、まず、3-メルカプトプロピオン酸(0.58g、5.46ミリモル)を添加し、次にメタンスルホン酸(21.32g、221.83ミリモル)を0.16~0.24mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら第1脱水縮合反応を4時間行った。次に、メタンスルホン酸(5.33g、55.46ミリモル)を0.12mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、さらに窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら第2脱水縮合反応を4時間行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)で検測して9-フルオレノンが存在しない場合、反応が完了しており、メタノールを加え、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性になるまでゆっくりと滴下して、温度を80°Cに上げ、反応混合物を約30分間連続して攪拌し、アニーリングした後、吸引ろ過した。最後に、ろ過した粗生成物をさらにアセトン/メタノールからなる混合溶液に二回の再結晶処理を行い、そして、実施例1の試験方法により純度および色度を測定した。
【0052】
本実施例では、28.61gの9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物が白色固体として得られ、収率は約87%、純度は99.6%、Apha色度は9であった。
【0053】
上記から、実施例2では、触媒が2回に分けて導入され、再結晶プロセスが繰り返されたことにより、実施例1と比較して、不純物は完全に除去され、生成物の純度が99.6%になり、色度品質が改善されたことがわかる。
【0054】
実施例3
【0055】
9-フルオレノン(5g、27.75ミリモル)、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール(12.48g、58.25ミリモル)およびトルエン(4.34g)を反応フラスコに入れ、約50~55℃に加熱して上記の反応物を完全に溶解した後、まず、3-メルカプトプロピオン酸(0.29g、2.73ミリモル)を添加し、次にメタンスルホン酸(10.66g、110.91ミリモル)を0.08~0.12mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら第1脱水縮合反応を8時間行った。次に、メタンスルホン酸(2.67g、27.78ミリモル)を0.06mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、さらに窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら第2脱水縮合反応を4時間行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)で検測して9-フルオレノンが存在しない場合、反応が完了しており、メタノールを加え、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性になるまでゆっくりと滴下して、温度を80°Cに上げ、反応混合物を約30分間連続して攪拌し、アニーリングした後、吸引ろ過した。最後に、ろ過した粗生成物をさらにアセトン/メタノールからなる混合溶液に再結晶処理を行い、そして、実施例1の試験方法により純度および色度を測定した。
【0056】
本実施例では、14.51gの9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物が白色固体として得られ、収率は約89%、純度は98.5%、Apha色度は20であった。
【0057】
実施例4
【0058】
製造方法は、第1脱水縮合反応のメタンスルホン酸の含量(12g、124.87ミリモル)および第2脱水縮合反応のメタンスルホン酸の含量(1.33g、13.84ミリモル)を変えたことを除き、実施例3と同じであった。
【0059】
本実施例では、14.50gの9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物が白色固体として得られ、収率は約89%、純度は98.8%、Apha色度は18であった。
【0060】
実施例5
【0061】
9-フルオレノン(15g、83.24ミリモル)、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール(37.45g、174.79ミリモル)およびトルエン(13g)を反応フラスコに入れ、約50~55℃に加熱して上記の反応物を完全に溶解した後、まず、3-メルカプトプロピオン酸(0.88g、8.29ミリモル)を添加し、次にメタンスルホン酸(8.0g、83.2ミリモル)を0.18mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら第1脱水縮合反応を4時間行った。次に、メタンスルホン酸(32g、332.95ミリモル)を0.3mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、さらに窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら第2脱水縮合反応を4時間行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)で検測して9-フルオレノンが存在しない場合、反応が完了しており、メタノールを加え、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性になるまでゆっくりと滴下して、温度を80°Cに上げ、反応混合物を約30分間連続して攪拌し、アニーリングした後、吸引ろ過した。最後に、ろ過した粗生成物をさらにアセトン/メタノールからなる混合溶液に再結晶処理を行い、そして、実施例1の試験方法により純度および色度を測定した。
【0062】
本実施例では、42.74gの9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物が白色固体として得られ、収率は約87%、純度は99.3%、Apha色度は16であった。
【0063】
上記から、実施例3、4および5では、触媒が2回に分けて導入されたことにより、実施例1と比較して、副反応を抑制でき、生成物の純度を大幅に向上させる効果を有することがわかる。
【0064】
実施例6
【0065】
9-フルオレノン(10g、55.49ミリモル)、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール(24.97g、116.54ミリモル)およびトルエン(8.67g)を反応フラスコに入れ、約50~55℃に加熱して上記の反応物を完全に溶解した後、3-メルカプトプロピオン酸(0.59g、5.55ミリモル)とメタンスルホン酸(26.66g、277.42ミリモル)の混合溶液を0.16~0.24mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を50~55℃に維持しながら8時間の反応を行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)で検測して9-フルオレノンが存在しない場合、反応が完了しており、メタノールを加え、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性になるまでゆっくりと滴下して、温度を80°Cに上げ、反応混合物を約30分間連続して攪拌し、アニーリングした後、吸引ろ過した。最後に、ろ過した粗生成物をさらにアセトン/メタノールからなる混合溶液に再結晶処理を行い、そして、実施例1の試験方法により純度および色度を測定した。
【0066】
本実施例では、27.2gの9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物が白色固体として得られ、収率は約83%、純度は98.9%、Apha色度は19であった。
【0067】
実施例7
【0068】
9-フルオレノン(10g、55.49ミリモル)、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール(24.97g、116.54ミリモル)およびトルエン(8.67g)を反応フラスコに入れ、約40~45℃に加熱して上記の反応物を完全に溶解した後、まず、3-メルカプトプロピオン酸(0.58g、5.55ミリモル)を添加し、次にメタンスルホン酸(21.32g、221.83ミリモル)を0.16~0.24mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、滴下終了後、窒素雰囲気下で温度を40~45℃に維持しながら第1脱水縮合反応を4時間行った。次に、メタンスルホン酸(5.33g、55.46ミリモル)を0.12mL/分の一定速度で一滴ずつ滴下し、窒素雰囲気下で温度40~45℃で第2脱水縮合反応を7時間行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)で検測して9-フルオレノンが存在しない場合、反応が完了しており、メタノールを加え、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性になるまでゆっくりと滴下して、温度を80°Cに上げ、反応混合物を約30分間連続して攪拌し、アニーリングした後、吸引ろ過した。最後に、ろ過した粗生成物をさらにアセトン/メタノールからなる混合溶液に再結晶処理を行い、そして、実施例1の試験方法により純度および色度を測定した。
【0069】
本実施例では、28.8gの9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物が白色固体として得られ、収率は約88%、純度は99.4%、Apha色度は14であった。
【0070】
比較例1
【0071】
製造方法は、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノールの使用量(44.58g、208.07ミリモル)を異動し、触媒として硫酸(36.74g、374.59ミリモル)を使用し、脱水縮合反応の時間は3時間であること以外、実施例1と同じであった。
【0072】
本比較例では、49gの9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン生成物が白色固体として得られ、収率は約99%、純度は45.12%、溶解度が低いため色度を測定できなかった。
【0073】
上記実施例の結果から、本発明の製造方法は、比較例1と比較して、アルキルスルホン酸を触媒として使用することにより、スルホン化またはスルホネート副生物の形成を有効的に抑制することができるので、比較的少量の2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール反応物の場合には、生成物の収率と純度を高める効果を実現できる。
【0074】
要約すると、本発明のビスフェノールフルオレン系化合物の製造方法は、触媒としてアルキルスルホン酸を、助触媒としてメルカプト基含有化合物を用いることにより、副生物の生成を有効的に抑制し、生成物の収率および純度を高めることができる。また、本発明の製造方法は高い変換率を有するので、比較的少量の2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール反応物の場合には、プロセス原料のコストを有効的に削減することができ、過剰な反応物を回収する必要があるという問題を解消する。得られた生成物は、低色度、高純度、高収率、低コストという特徴を持ち、産業上の利用価値がある。
【0075】
上記の実施例は単なる例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記の実施例を修飾および変更することができる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、本発明の効果および実施目的が影響を受けない限り、それらは開示に含まれるべきである。