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特許7396958分散電源最適配置システム、及び配置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】分散電源最適配置システム、及び配置方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20231205BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20231205BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231205BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20231205BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20231205BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/12
H02J3/14 160
H02J13/00 301A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075327
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021175218
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
(72)【発明者】
【氏名】弓部 良樹
(72)【発明者】
【氏名】日野 稔亮
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063720(JP,A)
【文献】特開2016-046956(JP,A)
【文献】特開2013-143839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家における地理的な情報を保有する需要家情報データベースと、検討対象とする配電系統の情報を入力し、前記需要家情報データベースを参照して前記検討対象とする配電系統における蓄電池の配置候補を抽出する蓄電池配置候補抽出部と、前記検討対象とする配電系統における系統解析により蓄電池設置前後の配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守することを確認する系統解析部とを備え、配電系統上の電圧分布が前記系統的制約条件を順守する前記蓄電池の配置候補を提示するとともに
前記系統的制約条件を順守する前記蓄電池の配置候補について、さらに需要家側経済的制約条件を満たすことを確認する蓄電池導入便益評価部を備え、前記系統的制約条件と前記需要家側経済的制約条件をともに順守する前記蓄電池の配置候補を提示することを特徴とする分散電源最適配置システム。
【請求項2】
需要家における地理的な情報を保有する需要家情報データベースと、検討対象とする配電系統の情報を入力し、前記需要家情報データベースを参照して前記検討対象とする配電系統における蓄電池の配置候補を抽出する蓄電池配置候補抽出部と、前記検討対象とする配電系統における系統解析により蓄電池設置前後の配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守することを確認する系統解析部とを備え、配電系統上の電圧分布が前記系統的制約条件を順守する前記蓄電池の配置候補を提示するとともに
前記蓄電池配置候補抽出部は、前記需要家情報データベースにおける地理的な情報の変更に応じて、配置候補更新アラームを出力することを特徴とする分散電源最適配置システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分散電源最適配置システムであって、
前記需要家情報データベースは、需要家における地理的制約条件とスペース活用予測情報を含んでいることを特徴とする分散電源最適配置システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の分散電源最適配置システムであって、
前記蓄電池配置候補抽出部は、移動体の蓄電池を含めて配置候補を抽出することを特徴とする分散電源最適配置システム。
【請求項5】
需要家における地理的な情報を保有し、検討対象とする配電系統の情報を入力し、前記需要家における地理的な情報を参照して前記検討対象とする配電系統における蓄電池の配置候補を抽出し、前記検討対象とする配電系統における系統解析により蓄電池設置前後の配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守することを確認し、配電系統上の電圧分布が前記系統的制約条件を順守する前記蓄電池の配置候補を提示するとともに
前記系統的制約条件を順守する前記蓄電池の配置候補について、さらに需要家側経済的制約条件を満たすことを確認し、前記系統的制約条件と前記需要家側経済的制約条件をともに順守する前記蓄電池の配置候補を提示することを特徴とする分散電源最適配置方法。
【請求項6】
需要家の土地を活用して蓄電池を備え、配電系統に接続して運用するための分散電源最適配置方法であって、
需要家の土地の情報を保有し、検討対象とする配電系統の情報を入力し、前記需要家の土地の情報を参照して前記検討対象とする配電系統における蓄電池の配置候補を抽出し、前記検討対象とする配電系統における系統解析により蓄電池設置前後の配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守することを確認し、前記蓄電池の配置候補の土地を所有する需要家側における経済的制約条件を含めて順守可能な前記蓄電池の配置候補を提示するとともに
前記系統的制約条件を順守する前記蓄電池の配置候補について、さらに需要家側経済的制約条件を満たすことを確認し、前記系統的制約条件と前記需要家側経済的制約条件をともに順守する前記蓄電池の配置候補を提示することを特徴とする分散電源最適配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統における分散電源を管理・運用する分散電源最適配置システム及び配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電や風力発電などに代表される自然エネルギーの利用が世界各地において増えてきているが、自然エネルギーの出力を一定に制御することは容易ではないため、電力系統が不安定化している。例えば、需要家側に近い配電系統においては太陽光発電装置の普及によって、天候の急変による太陽光発電出力の変化や、太陽光発電装置からの逆潮流によって配電系統の電圧などが不安定化し、対策が必要になっている。
【0003】
しかし、配電系統を安定化するための対策として、自動電圧調整器SVR(Step Voltage Regulator)や静止型無効電力補償装置SVC(Static Var Compensator)を設置するには送配電事業者の設備投資負担が大きいことが課題である。近年では電力システム改革による発送電分離が進められており、一般送配電事業者は経営に公平性、透明性を求められるため、過剰な設備投資を行うことは困難になってきている。
【0004】
他方、配電系統電圧の不安定化対策として、需要家側に蓄電池を設置することが有効であるが、そのためには蓄電池の配置場所を適切に定める必要がある。電力系統を安定化させるために効果的な蓄電池の配置場所を求めるための手法として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、「電力系統の構成を表す系統情報を用いて電力系統に事故が発生していない状況を想定した第1潮流計算を行う第1潮流計算実行部と、電力系統に設置する蓄電池に関する情報を取得する蓄電池情報取得部と、蓄電池に関する情報と系統情報とを用いて、蓄電池を電力系統内の候補となる各位置に設置した場合について、電力系統に事故が発生した状況を想定した第2潮流計算を行う第2潮流計算実行部と、第1潮流計算の結果及び第2潮流計算の結果から、事故の前後における電力系統内の各隣接ノード間の電圧位相差の変化の度合いを示す評価値を求め、評価値に基づいて蓄電池の設置位置及び事故ごとの充放電電力を定める設置計画選出部と、を備える。」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-52209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、需要家側の地理的制約や時間的変化、および経済的制約条件を考慮していないため、蓄電池の配置場所として需要家を選定することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明では、需要家側に設置する蓄電池を活用して配電系統の安定化に活用するため、需要家側で利用可能な場所の地理的制約や、蓄電池利用を提供することによる需要家の経済的得失を考慮しつつ、系統安定化に適した蓄電池の配置を決定する分散電源最適配置システム、及び配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る分散電源最適配置システムは、需要家における地理的な情報を保有する需要家情報データベースと、検討対象とする配電系統の情報を入力し、需要家情報データベースを参照して検討対象とする配電系統における蓄電池の配置候補を抽出する蓄電池配置候補抽出部と、検討対象とする配電系統における系統解析により蓄電池設置前後の配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守することを確認する系統解析部とを備え、配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守する蓄電池の配置候補を提示することを特徴とする。
【0009】
また本発明に係る分散電源最適配置方法は、需要家における地理的な情報を保有し、検討対象とする配電系統の情報を入力し、需要家における地理的な情報を参照して検討対象とする配電系統における蓄電池の配置候補を抽出し、検討対象とする配電系統における系統解析により蓄電池設置前後の配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守することを確認し、配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守する蓄電池の配置候補を提示することを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る分散電源最適配置方法は、需要家の土地を借用して蓄電池を備え、配電系統に接続して運用するための分散電源最適配置方法であって、需要家の土地の情報を保有し、検討対象とする配電系統の情報を入力し、需要家の土地の情報を参照して検討対象とする配電系統における蓄電池の配置候補を抽出し、検討対象とする配電系統における系統解析により蓄電池設置前後の配電系統上の電圧分布が系統的制約条件を順守することを確認し、蓄電池の配置候補の土地を所有する需要家側における経済的制約条件を含めて順守可能な蓄電池の配置候補を提示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、送配電事業者および需要家の経済的負担を抑制しつつ、配電系統を安定化することができ、電力系統運用の信頼性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る分散電源最適配置システム1の構成例を示す図。
図2】分散電源最適配置システム1の処理手順の一例を示すフローチャートを示す図。
図3】本発明を実施するための配電系統2の構成の一例を示す図。
図4】蓄電池を配置する前の配電系統の電圧分布の一例を示す図。
図5】蓄電池を配置した後の配電系統の電圧分布の一例を示す図。
図6】各配置候補の時の配電線における電圧分布解析結果例を示す図。
図7】蓄電池導入便益評価部14における判定結果の一例を示す図。
図8】需要家側経済的制約条件141の判定方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施に好適な実施例について説明する。尚、下記はあくまでも実施の例に過ぎず、下記具体的内容に発明自体が限定されることを意図する趣旨ではない。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1に係る分散電源最適配置システム1の構成例を示す図である。計算機装置を用いて実現される図1の分散電源最適配置システム1は、電力系統の系統構成を格納する系統構成データベースDB1と、類似の系統構成を抽出する類似構成抽出部11と、蓄電池配置候補を抽出する蓄電池配置候補抽出部12と、系統解析を行う系統解析部13と、蓄電池配置を決定する蓄電池配置決定部15によって構成される。
【0015】
類似構成抽出部11は、対象とする配電系統の系統構成111を入力とし、系統構成データベースDB1に格納された系統構成の中に対象とする配電系統の系統構成111と類似の系統構成があるかを比較し、類似の系統構成がある場合は、その構成を系統構成データベースDB1から取り出し、参考として出力する。類似の系統構成がない場合には、外部から入力された系統構成111を蓄電池配置候補抽出部12へそのまま出力する。
【0016】
なお、対象とする配電系統の系統構成111は、例えば配電用変電所における配電線を単位とする系統構成とその情報を含んでおり、配電用変電所の容量、各需要家までの距離または地図上の位置、需要家容量、一般には樹枝状となる配電線の接続関係、配電設備などの情報により構成されているものとする。系統構成を格納する系統構成データベースDB1内に収納されている配電系統の情報も、同一観点での定義がなされており、またこの情報の中には、図1のシステムにより過去に検討をされた場合にその結果を含むことができ、相互に比較することで類似性が判断可能とされていることを前提としていることは言うまでもない。
【0017】
蓄電池配置候補抽出部12では、需要家情報データベースDB2に格納された需要家情報に基づき、需要家側地理的制約条件161と、需要家側スペース活用予測情報162を入力すると共に、蓄電池の配置候補の更新が必要であることを示す配置候補更新アラーム121を出力する。また蓄電池配置候補抽出結果を系統解析部13へ出力する。なお、需要家情報データベースDB2は、例えば、毎週や毎月など、定期的に情報を更新することが可能とする。
【0018】
ここで送配電事業者は、自己所有敷地内に蓄電池を配置できれば問題はないが、多くの場合に需要家側の敷地を利用させてもらう関係にある。このことから、需要家データベースDB2には需要家が保有する敷地についての地理的制約条件161やスペース活用予測情報162などを予め入手し、保持しておくものである。
【0019】
ここで需要家側地理的制約条件161とは、需要家が存在する場所(緯度、経度、高度、あるいは配電系統に対する相対的な距離など)と、需要家が所有する敷地や建屋において使用可能なスペース(面積や体積など)に関する情報を含むこととする。
【0020】
また需要家側スペース活用予測情報162とは、蓄電池を配置することが可能なスペースをいつからいつまで使用可能かについての時間的な計画情報(見込み情報も含む)を含むものとする。このように需要家側において実際に使用可能なスペースに関する地理的な情報と時間的な情報を考慮することによって、配電系統の安定化に蓄電池を活用することが可能な期間の見通しを得ることができ、信頼性を向上させることが可能になるという効果を得ることができる。
【0021】
系統解析部13では、系統構成111と系統的制約条件131を入力とし、蓄電池配置候補抽出部12から入力された蓄電池配置候補を系統構成111に加えて、系統的制約条件131に適合するか否かを判定する。判定した結果、系統的制約条件131を満たす蓄電池配置候補を蓄電池導入便益評価部14へ出力する。ここで系統的制約条件131の典型的な例は、配電線電圧を所定の電圧範囲内とするための上下限値である。
【0022】
なお系統解析部13では、例えば蓄電池配置候補を敷設した場合の配電系統における潮流計算を実施して配電系統上の電圧分布を推定するが、類似構成抽出部11の処理において類似の系統構成が得られている場合には、類似の系統構成での運用実績などによっては、潮流計算を行わなくても系統的制約条件131を満たすと推定できることがある。あるいは、類似の系統構成が得られている場合には、これを参考として各種の処理や計算を簡便化することに反映が可能である。
【0023】
蓄電池導入便益評価部14では、先に抽出した蓄電池配置候補に対して、需要家側経済的制約条件141に適合するか否かを判定する。判定した結果、需要家側経済的制約条件141を満たす蓄電池配置候補を蓄電池配置決定部15へ出力する。ここで需要家側経済的制約条件141は、需要家が蓄電池設置場所を貸し出すに際しての金銭的対価などの条件を意味している。
【0024】
分散電源最適配置システム1の処理手順の一例を示すフローチャートを図2に示す。
処理ステップS901からフローチャートは開始する。処理ステップS902において、系統構成を抽出する。次に処理ステップS903において、蓄電池配置候補を抽出する。
【0025】
処理ステップS904では、配置候補の更新があるかどうかを判定し、YESの場合は、処理ステップS909に進む。処理ステップS909では、配置候補更新アラームを発生し、蓄電池配置事業者へ蓄電池の再配置の検討を促す。その後、処理ステップS906に進み、終了する。処理ステップS904においてNOの場合は、処理ステップS905に進む。
【0026】
処理ステップS905では、複数の蓄電池配置候補に基づき系統解析を行う。次に処理ステップS906において、蓄電池導入の便益評価を行う。続いて処理ステップS907では、便益評価の結果、最適と判定された蓄電池配置を決定し、処理ステップS908に進み、終了する。
【0027】
なお、本フローチャートで示した処理手順は一例を示したのみであり、本処理手順によって本発明の実施形態、効果が限定されるものではない。本処理手順とは異なる手順によって、本発明を実施することは可能である。
【0028】
図3は本発明を実施するための配電系統2の構成の一例を示す図である。この構成例では、配電用変電所20からのフィーダ線(配電線)200が適宜の個所で分岐され、需要家24、25、26にそれぞれフィーダ線204、205、206を介して接続されている。また需要家25は太陽光発電設備を備える需要家である。この図では、実線で示す部分が対象とする配電系統の系統構成111に対応している。
【0029】
これに対し点線で示す21、22、23は蓄電池の配置候補であり、これらの候補は現時点ではフィーダ線200に接続されていないが、配置するとした場合にはそれぞれの候補は、それぞれフィーダ線201、202、203を介して図示の位置に接続されることになる。このように図3において、フィーダ線201、202、203並びに蓄電池の配置候補21、22、23は計画段階においては仮想上の設備である。
【0030】
なお、配電用変電所20から出力される電圧は6.6kVなどの電圧であるのに対し、需要家では100Vや200Vなどの電圧を使用することが多いため、フィーダ線200に接続される柱上変圧器にて電圧を変更することになるが、記載を簡略化するために図3では柱上変圧器の記載を省略している。
【0031】
図4図5は、図3に例示した配電系統2のフィーダ線200における電圧分布の一例を示した図である。横軸側には配電用変電所20からのフィーダ線200長を、縦軸側にはフィーダ線200の各位置における電圧分布30を示している。良く知られているように、電圧分布30は、電圧上限値31と電圧下限値32の間に維持される必要がある。
【0032】
この点に関して、蓄電池を配置する前の配電系統を示す図4の電圧分布30は一部区間において電圧上限値31を逸脱しており、電圧規定値以内には収まっていない。これは、需要家B25に併設された太陽光発電設備からの逆潮流によって、フィーダ線200の中間付近における電圧値が上昇したことが想定される。
【0033】
これに対して、図5は蓄電池を配置した後の配電系統2のフィーダ線200における電圧分布の一例を示した図であり、この図によれば、電圧分布33は、電圧上限値31および電圧下限値32の範囲内に分布しており、電圧規定値以内に収まっている。この電圧分布は、結果的には例えば蓄電池の配置候補21、または22に蓄電池を配置した場合のものである。
【0034】
蓄電池配置候補抽出部12では、フィーダ線200に接続可能な多数の配置候補21、22、23の内から、配置候補21、配置候補22、配置候補23を順次抽出し、系統解析部13において各配置候補の時の配電線における電圧分布を解析する。この時の解析結果例を図6に示す。図6の事例では、配置候補21と配置候補22は、電圧上限値31および電圧下限値32の制約条件(系統的制約条件131)を満たすため適合(〇)と判定できるのに対し、配置候補23は、電圧下限値32の制約条件を満たすのに対し、電圧上限値31を満たさないため、判定結果は不適合(×)となっている。従ってこのケースでは、系統解析部13の出力として、配置候補21と配置候補22を出力する。
【0035】
このように蓄電池を配置した後の電圧分布が電圧上限値および電圧下限値を逸脱しないことを判定することにより、蓄電池の配置によって配電系統の電圧安定性を維持することが可能になるという効果を得られる。なお、蓄電池は種類によって蓄電容量や出力、コストなどが異なるため、蓄電池の種類によって、配置に必要なスペースや、配電系統の安定化に寄与する効果が異なる場合がある。そのため蓄電池配置候補を抽出する際には、蓄電池の種類も含めて解析し、評価することで、より適切な配置候補を抽出することが可能になるという効果を得ることができる。
【0036】
また蓄電池としては、固定的に配置するものには限らない。例えば、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の移動体に搭載される蓄電池を活用して同様のシステムを構成することも可能である。蓄電池からの充放電の必要時に応じて配電系統にEVやPHEVを接続すればよく、それ以外の時間帯には配電系統から切り離されていても構わない。そのため、ある一つの配置候補に対して、複数のEVやPHEV等が互いに交代しながら接続される構成とすることも可能である。このように複数の移動体の蓄電池を活用することで、蓄電池を設置するのに必要なスペースを必要最小限としつつ、見かけ上の蓄電池容量を増加させることで、配電系統をより安定化することができるという効果を得ることができる。
【0037】
次に図1の蓄電池導入便益評価部14における判定結果の一例を図7に示す。配置候補21と配置候補22は共に、系統的制約条件131を満たす(〇)。しかし、配置候補22は需要家側経済的制約条件141を満たす(〇)のに対し、配置候補21は需要家側経済的制約条件141を満たさない(×)。従って、蓄電池導入便益評価部14における判定結果として、配置候補21が選定される。最終的にこのケースでは蓄電池配置決定部15において、配置候補21を蓄電池の最適配置として決定する。
【0038】
ここで需要家側経済的制約条件141の判定方法を図8に示す。図8は、横軸側に粘土を取り、需要家側における各年度における売り上げとコストと純利益の関係を示している。ここではまずコストに関して、需要家に蓄電池を配置するために初期コストとして1年目に100万円が必要であると想定する。その後2年目以降のメンテナンスコスト等として毎年10万円が必要であるとする。
【0039】
一方、売上としては、需要家側に設置して蓄電池を配電系統の安定化に使用することによる送配電事業者からの使用料を得ることを想定する。仮に1年目の売上が0円であるとし、2年目以降の売上が毎年30万円であると想定する。
【0040】
コストと、純利益が、毎年上記のように推移するという仮定の下で、毎年の売上からコストを引いた総利益は、1年目は-100万円であるが、毎年20万円ずつの利益が積み上がり、7年目には20万円の利益を計上して黒字になることがわかる。
【0041】
このように蓄電池の耐用年数の範囲内において、採取的に利益が黒字になることを需要家側経済的制約条件を満たすと判定する。
【0042】
なお、ここでは蓄電池の設置のみを想定して説明したが、蓄電池以外に例えば太陽光発電装置を併設して、太陽光発電による余剰電力を売電することで利益として計上してもよい。
【0043】
このように需要家側経済的制約条件141を設定し、予め条件を満たすかどうかを判定することで、蓄電池を長期にわたって安定的に運用することができるという効果を得ることができる。
【0044】
最後に、蓄電池配置候補抽出部12における配置候補更新アラーム121を出力することについて詳細に説明する。蓄電池配置を決定する際には、蓄電池導入便益評価部14に基づき、需要家側経済的制約条件141を満足することを踏まえて決定するが、実際には様々な事情により、当初の計画が変わることが想定される。
【0045】
例えば、需要家としてコンビニエンスストアを想定した場合には、営業的な行き詰まりなどによってコンビニエンスストアが廃業する可能性がある。あるいは、コンビニエンスストアのレイアウト変更によって蓄電池を配置していたスペースが使用できなくなる可能性がある。
【0046】
そうした場合には、蓄電池の設置費用を回収できなくなることや、配電系統の安定化に蓄電池を活用することが困難になる可能性がある。そのため、例えば1ヶ月おきなど、定期もしくは不定期に需要家情報データベースDB2を更新し、需要家側地理的制約条件161および需要家側スペース活用予測情報162に変更があった場合には、蓄電池配置候補抽出部12において配置候補を再度抽出し、配置候補に変化があった場合には、配置候補更新アラーム121を出力することを可能とする。このように配置候補更新アラーム121を出力することによって、蓄電池の設置費用を回収する可能性を向上し、配電系統の安定化に蓄電池を活用することの信頼性を向上することが可能になるという効果を得ることができる。
【0047】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0048】
1:分散電源最適配置システム
2:配電系統
11:類似構成抽出部
12:蓄電池配置候補抽出部
13:系統解析部
14:蓄電池導入便益評価部
15:蓄電池配置決定部
20:配電用変電所
21:配置候補A
22:配置候補B
23:配置候補C
24:需要家A
25:需要家B(PV併設)
26:需要家C
30:電圧分布
31:電圧上限値
32:電圧下限値
33:電圧分布
111:系統構成
121:配置候補アラーム
131:系統的制約条件
141:需要家側経済的制約条件
161:需要家側地理的制約条件
162:需要家側スペース活用予測情報
200:フィーダ線
201:フィーダ線
202:フィーダ線
203:フィーダ線
204:フィーダ線
205:フィーダ線
206:フィーダ線
DB1:系統構成データベース
DB2:需要家情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8