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特許7396961蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造
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  • 特許-蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造 図1
  • 特許-蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20231205BHJP
   F24D 11/00 20220101ALI20231205BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F28D20/02 D
F24D11/00 A
E04F15/18 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020088285
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181870
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105521(JP,A)
【文献】特開2001-327379(JP,A)
【文献】特開2009-115366(JP,A)
【文献】特開2004-036964(JP,A)
【文献】特開2013-160396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0179807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F24D 11/00
E04F 15/18
A47G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱剤を注入する注入口を有した袋状のパウチと、
前記袋状のパウチ内に、断面が菱形であるパンタグラフ状に折り曲げられて収容された熱伝導シートと、
を備え
前記熱伝導シートの上端部が前記パウチ内の上面に接着され、前記熱伝導シートの下端部が前記パウチ内の下面に接着され、
前記熱伝導シートは、前記潜熱蓄熱剤の充填により、前記袋状のパウチを膨らましつつ前記上端部と前記下端部との間の距離が拡が蓄熱パック。
【請求項2】
前記袋状のパウチの裏面の少なくとも一部を接着して保持するシート材を更に備える、請求項1に記載の蓄熱パック。
【請求項3】
前記シート材の上には、少なくとも2つの前記袋状のパウチが間隔を有してそれぞれ設けられている、請求項2に記載の蓄熱パック。
【請求項4】
前記シート材の上には、前記少なくとも2つの袋状のパウチが間隔を有して両面テープによりそれぞれ接着されている、請求項3に記載の蓄熱パック。
【請求項5】
床材の下方に施工される蓄熱性床構造であって、
前記床材と、
前記床材の裏面に配置された請求項1から4のいずれか1項に記載の蓄熱パックと、
前記蓄熱パックのパウチ内に封入された潜熱蓄熱剤に熱を入力する熱入力部と、
を備える蓄熱性床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房用の蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蓄熱パックとして、特許文献1に開示された蓄熱シートがある。この蓄熱シートは、潜熱蓄熱剤がそれぞれ封入された複数の袋状の蓄熱体パックと、各蓄熱体パックにおける一の側部同士を対向させ、各蓄熱体パックの裏面の一部を接着して保持するシート材と、を備えている。
【0003】
シート材は、複数の蓄熱体パックの裏面を覆うと共に、各蓄熱体パック同士の間の領域を境にして、複数の蓄熱体パックを内側にした折り畳みとその伸展とが可能である。さらに、蓄熱シートを構成するシート材は可撓性を有しており、各蓄熱体パックの表面を内側にして折り畳むことができる。これにより、搬送時又は保管時には、蓄熱体パックは、その両面がシート材に覆われて露出しないため、蓄熱体パックが被る予期しない損傷を防ぐことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-105521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の蓄熱シートでは、蓄熱体パック内に直接潜熱蓄熱剤が封入されているため、潜熱蓄熱剤の熱伝導が悪く、熱入力部により入力された熱が該熱入力部から離れた潜熱蓄熱剤へ伝わり難い。また、蓄熱体パック内に熱伝導の良いアルミや銅等の材料で熱伝導構造を設けようとすると、潜熱蓄熱剤を封入する前の蓄熱体パックの構造が複雑になり、製造が困難である。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、簡単な構造でパウチ内に封入された潜熱蓄熱剤の熱伝導を向上させることができる蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る蓄熱パックは、潜熱蓄熱剤を注入する注入口を有した袋状のパウチと、前記袋状のパウチ内にパンタグラフ状に折り曲げられて収容され、前記潜熱蓄熱剤の充填により前記袋状のパウチを膨らましつつ拡幅される熱伝導シートと、を備える。
【0008】
前記袋状のパウチの裏面の少なくとも一部を接着して保持するシート材を更に備えることが好ましい。
【0009】
前記シート材の上には、少なくとも2つの前記袋状のパウチが間隔を有してそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0010】
前記シート材の上には、前記少なくとも2つの袋状のパウチが間隔を有して両面テープによりそれぞれ接着されていることが好ましい。
【0011】
本発明の他の態様に係る蓄熱パックを用いた蓄熱性床構造は、床材の下方に施工される蓄熱性床構造であって、前記床材と、前記床材の裏面に配置された請求項1から4のいずれか1項に記載の蓄熱パックと、前記蓄熱パックのパウチ内に封入された潜熱蓄熱剤に熱を入力する熱入力部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構造でパウチ内に封入された潜熱蓄熱剤の熱伝導を向上させることができる蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱パックの一例を示す平面図である。
図2】上記蓄熱パックの潜熱蓄熱剤を封入する前の状態を示す断面図である。
図3】上記蓄熱パックを用いた蓄熱性床構造の断面図である。
図4】上記蓄熱性床構造を施工する際の蓄熱パックの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る蓄熱パック及びそれを用いた蓄熱性床構造について詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る蓄熱パックの一例を示す平面図である。図2は蓄熱パックの潜熱蓄熱剤を封入する前の状態を示す断面図である。図3は蓄熱パックを用いた蓄熱性床構造の断面図である。図4は蓄熱性床構造を施工する際の蓄熱パックの製造工程を示すフローチャートである。
【0016】
図1図2に示すように、蓄熱パック10は、2つの袋状のパウチ11,11と、各袋状のパウチ11内にパンタグラフ状に折り曲げられて収容され、潜熱蓄熱剤13の充填により袋状のパウチ11を膨らましつつ拡げられる熱伝導シート14と、を備える。さらに、蓄熱パック10は、2つの袋状のパウチ11,11を接着して保持するシート材15を備える。
【0017】
パウチ11は、ポリプロピレンやポリエステル等の合成樹脂をアルミニウム箔等の金属箔と共に積層加工(ラミネート加工)したラミネートフィルムからなり、そのフィルム同士の周縁11cを熱融着で接合した平面矩形の袋状に形成されている。また、パウチ11の一つの角部には、潜熱蓄熱剤(PCM)13を注入する注入口12を有している。なお、注入口12には、図示しない逆止弁が設けられていて、袋状のパウチ11内に充填された潜熱蓄熱剤13が注入口12から外へ洩れないようになっている。
【0018】
図2に示すように、熱伝導シート14は、熱伝導性の矩形シートをパンタグラフ状に折り曲げられてなり、そのパンタグラフ状(断面菱形)の上下端部14a,14bがパウチ11内の上下面11a,11bに接着されている。そして、図3に示すように、パウチ11の内部への潜熱蓄熱剤13の封入(充填・密封)に伴い、袋状のパウチ11を膨らましつつパンタグラフ状の熱伝導シート14が拡幅される(上下端部14a,14b間の距離が拡がる)ようになっている。
【0019】
図1図2に示すように、シート材15は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂により矩形板状に形成されていて、その上面15aに2つの袋状のパウチ11,11が間隔Hを有してそれぞれ設けられている。すなわち、シート材15の上面15aには、各袋状のパウチ11の下面(裏面)11bの両側が一対の両面テープ16,16を介して接着されている。
【0020】
図3に示すように、蓄熱性床構造20は、蓄熱パック10を用いて、床材21の下方に施工される。すなわち、蓄熱性床構造20は、床材21と、この床材21の下面(裏面)21bに配置された蓄熱パック10と、この蓄熱パック10の袋状のパウチ11内に封入された潜熱蓄熱剤13に熱を入力する発熱体(熱入力部)22と、を備えている。
【0021】
発熱体22は、格子状に施工された複数の小根太(縦桟及び横桟)23上に設けられた断熱材24上に設置されている。そして、発熱体22上に蓄熱パック10がシート材15を介して敷設されている。この発熱体22からの熱により蓄熱パック10の袋状のパウチ11内に封入された潜熱蓄熱剤13及び拡幅されたパンタグラフ状の熱伝導シート14が暖められるようになっている。
【0022】
次に、蓄熱性床構造20を施工する際の蓄熱パック10の製造工程を図4に示すフローチャートに沿って説明する。
【0023】
まず、複数セットの蓄熱パック10を蓄熱性床構造20の施工場所へ輸送する(ステップS1)。この輸送の際、パンタグラフ状の熱伝導シート14が内蔵された袋状のパウチ11を潜熱蓄熱剤13の充填前には平らに潰した状態にすることができるため、シート材15に貼り付けた状態でそのままロール状に蓄熱パック10を巻き付けることができる。このことから、潜熱蓄熱剤13を封入前の蓄熱パック10の輸送は簡単になる。次に、蓄熱パック10を発熱体22上に複数セットそれぞれ並べて設置する(ステップS2)。
【0024】
次に、各蓄熱パック10の袋状のパウチ11に潜熱蓄熱剤13を充填する(ステップS3)。この際、潜熱蓄熱剤13が規定の容量に達しているのかを確認し(ステップS4)、潜熱蓄熱剤13が規定の容量に達していれば、蓄熱パック10の設置が完了する(ステップS5)。なお、潜熱蓄熱剤13が規定の容量に達していなければ、再度、規定の容量に達するまで潜熱蓄熱剤13の充填を行う。
【0025】
以上実施形態の蓄熱パック10によれば、蓄熱パック10を蓄熱性床構造20に用いると、蓄熱パック10のパウチ11内の潜熱蓄熱剤13は、下部からの発熱体22の熱により暖められる。この際、発熱体22からの熱と拡幅されたパンタグラフ状の熱伝導シート14からの伝導熱との相互作用によりパウチ11内の潜熱蓄熱剤13を均等に素早く暖めることができる。
【0026】
このように、パウチ11内にパンタグラフ状の熱伝導シート14を収容するだけの簡単な構造により、パウチ11内に封入された潜熱蓄熱剤13を発熱体22からの熱と熱伝導シート14からの伝導熱により短時間で均等に素早く暖めることができる。これにより、簡単な構造でパウチ11内に封入された潜熱蓄熱剤13の熱伝導を向上させることができる。
【0027】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0028】
すなわち、前記実施形態によれば、シート材と袋状のパウチとを両面テープで接着したが、シート材と袋状のパウチとを接着剤等で接着しても良い。
【0029】
また、前記実施形態によれば、シート材上に2つの袋状のパウチを設けたが、シート材上に3つ以上の袋状のパウチを設けても良い。
【符号の説明】
【0030】
10 蓄熱パック
11 袋状のパウチ
11b 下面(裏面)
12 注入口
13 潜熱蓄熱剤
14 パンタグラフ状の熱伝導シート
15 シート材
16 両面テープ
20 蓄熱性床構造
21 床材
21b 下面(裏面)
22 発熱体(熱入力部)
H 間隔
図1
図2
図3
図4