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特許7396965small,dense LDLコレステロールの定量方法およびキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】small,dense LDLコレステロールの定量方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/44 20060101AFI20231205BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20231205BHJP
   C12Q 1/30 20060101ALI20231205BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALI20231205BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C12Q1/44
C12Q1/26
G01N33/92 B
C12Q1/30
C12Q1/28
C12Q1/34
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020118412
(22)【出願日】2020-07-09
(62)【分割の表示】P 2019164403の分割
【原出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021040620
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 謙亨
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/048143(WO,A1)
【文献】特開2005-278626(JP,A)
【文献】特開2005-292110(JP,A)
【文献】特開2003-227798(JP,A)
【文献】特開平07-155196(JP,A)
【文献】特開2006-081471(JP,A)
【文献】Clinical Chemistry,2011年,Vol.57, No.1,p.57-65
【文献】Clinica Chimica Acta,2010年,Vol.411,p.1361-1366
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/44
C12Q 1/26
C12Q 1/28
C12Q 1/30
C12Q 1/34
G01N 33/92
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法において用いる、
(1)コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼを有し、small,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを反応系外に導くための第1試薬組成物と、
(2)small,dense LDL中コレステロールを定量するための第2試薬組成物と、
を含む被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量キットであって、
第1試薬組成物および第2試薬組成物のいずれかに、少なくともカップラー、鉄錯体、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、電子供与体および界面活性剤(両性界面活性剤を除く)が含まれ、カップラーと電子供与体が同一の試薬組成物に含まれることはなく、かつカップラーと鉄錯体が同一の試薬組成物に含まれることはなく、
第1試薬組成物および第2試薬組成物のいずれかの試薬組成物において同一試薬組成物中に電子供与体と鉄錯体を共存させ、同一試薬組成物中にカップラー、鉄錯体、およびペルオキシダーゼを共存させないことを特徴とするsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項2】
第1試薬組成物がカタラーゼおよびカップラーを含み、第2試薬組成物が、電子供与体、鉄錯体およびペルオキシダーゼを含むことを特徴とする請求項1記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項3】
第1試薬組成物がペルオキシダーゼおよびカップラーを含み、第2試薬組成物が、電子供与体および鉄錯体を含むことを特徴とする請求項1記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項4】
第1試薬組成物がカタラーゼ、電子供与体および鉄錯体を含み、第2試薬組成物が、ペルオキシダーゼおよびカップラーを含むことを特徴とする請求項1記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項5】
第1試薬組成物がペルオキシダーゼ、電子供与体および鉄錯体を含み、第2試薬組成物が、カップラーを含むことを特徴とする請求項1記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項6】
第1試薬組成物が、さらにカタラーゼを含むことを特徴とする請求項1、3及び5のいずれか1項に記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項7】
第1試薬組成物が、さらにsmall,dense LDL以外のリポタンパクに作用する界面活性剤(両性界面活性剤を除く)を含み、第2試薬組成物がさらに少なくともsmall,dense LDLに作用する界面活性剤(両性界面活性剤を除く)を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項8】
第1試薬組成物に含まれる界面活性剤がポリオキシエチレン多環フェニルエーテルを含むことを特徴とする請求項7記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項9】
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルがポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体および/またはポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル誘導体を含むことを特徴とする請求項8記載のsmall,dense LDLコレステロール定量キット。
【請求項10】
small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法であって、
(1)コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼの存在下でsmall,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを反応系外に導く第1工程と、
(2)前記第1工程で残存するリポ蛋白中のコレステロールを定量する第2工程、
を含む被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量方法であって、
(1)の工程または(2)の工程のいずれかで、少なくともカップラー、鉄錯体、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、電子供与体および界面活性剤(両性界面活性剤を除く)を用い、カップラーと電子供与体が同一の工程で用いられることはなく、かつカップラーと鉄錯体が同一の工程で用いられることはなく、
(1)および(2)のいずれかの工程において電子供与体と鉄錯体を同時に用い、他方の工程でカップラー、鉄錯体、およびペルオキシダーゼを同時に用いないことを特徴とするsmall,dense LDLコレステロール定量方法。
【請求項11】
第1工程でカタラーゼおよびカップラーを用い、第2工程で、電子供与体、鉄錯体およびペルオキシダーゼを用いることを特徴とする請求項10記載のsmall,dense LDLコレステロール定量方法。
【請求項12】
第1工程でペルオキシダーゼおよびカップラーを用い、第2工程で、電子供与体および鉄錯体を用いることを特徴とする請求項10記載のsmall,dense LDLコレステロール定量方法。
【請求項13】
第1工程でカタラーゼ、電子供与体および鉄錯体を用い、第2工程で、ペルオキシダーゼおよびカップラーを用いることを特徴とする請求項10記載の定量方法。
【請求項14】
第1工程でペルオキシダーゼ、電子供与体および鉄錯体を用い、第2工程で、カップラーを用いることを特徴とする請求項10記載のsmall,dense LDLコレステロール定量方法。
【請求項15】
第1工程でさらにカタラーゼを用いることを特徴とする請求項10、12及び14のいずれか1項に記載のsmall,dense LDLコレステロール定量方法。
【請求項16】
第1工程で、さらにsmall,dense LDL以外のリポタンパクに作用する界面活性剤(両性界面活性剤を除く)を用い、第2工程で、さらに少なくともsmall,dense LDLに作用する界面活性剤(両性界面活性剤を除く)を用いることを特徴とする請求項10から15のいずれか1項に記載のsmall,dense LDLコレステロール定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、small,dense LDL中のコレステロール測定方法および試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは細胞の主要な構成成分の1つだが、過剰なコレステロールは血管の内皮細胞下でマクロファージに取り込まれることにより泡沫細胞が形成され、動脈硬化の初期病変を呈することから臨床的に重要な成分である。低比重リポ蛋白(LDL)は血液中におけるコレステロール運搬の主役であり、動脈硬化性疾患の危険因子であるが、LDLの中でも特に粒子サイズが小さく平均的なLDLより高比重な、小粒子高比重LDLコレステロール(small,dense LDL中コレステロール)が特に重要であると言われている。血液中のsmall,dense LDL中コレステロール濃度が高い場合、一見すると外見上は健常人と全く変わらなく現状の健康状態を把握することは困難だが、10年後に心筋梗塞や脳卒中といったような重篤な動脈硬化性疾患を引き起こすリスクが高くなる。従って、将来重篤な動脈硬化性疾患を引き起こすリスクを予見するためsmall,dense LDL中コレステロールを分別測定することは極めて重要である。
【0003】
従来のsmall,dense LDL測定法は、超遠心法、電気泳動法、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法などがあるが、この方法は高価な設備を必要とし、測定に非常に時間を要するため簡便ではない。NMRを用いてLDL粒子数やsd LDL-C粒子数を測定する方法があるが、NMR装置を必要とするため一般の病院検査室や検診センターにて測定することは難しい。
【0004】
自動分析装置を用いてsmall,dense LDLを測定する方法としては、イオン強度の差により小粒子LDLを混濁または溶解させ吸光度の差により小粒子LDLを測定する方法(特許文献1を参照)がある。しかし、この方法では濁りによる吸光度差を測定しているため、small,dense LDL中のコレステロールを測定することが出来ず、また特異性や精度が不十分であった。また、small,dense LDL中のコレステロールや中性脂肪を、ポリアニオンと二価陽イオンからなる分離剤と自動分析装置対応の試薬を組み合わせて測定する方法(特許文献2を参照)が知られている。この方法では、超遠心法や電気泳動法に比べ簡便にsmall,dense LDL中の脂質成分が測定でき、特異性や精度に優れているが、検体を前処理しLDLをsmall,dense LDLとそれ以外のLDLに分離する操作が必要であった。
【0005】
さらに自動分析装置を用いてsmall,dense LDLを測定する方法としてsmall,dense LDL中のコレステロールの反応を抑制する反応液中で、small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを除去する工程と反応液に残存するsmall,dense LDL中のコレステロールを測定する方法(特許文献3を参照)、第1工程でスフィンゴミエリナーゼの存在下でsmall,dense LDL以外のLDL中のコレステロールを消去する工程と、第1工程で残存するリポ蛋白中のコレステロールを定量する方法(特許文献4を参照)、コレステロールエステラーゼおよびsmall,dense LDL以外のリポ蛋白に作用する界面活性剤0.05~1.0g/Lの存在下で被検体試料中のsmall,dense LDL以外のリポ蛋白を消去する第1工程と、次いで前記第1工程で残存したsmall,dense LDL中コレステロールを定量する第2工程を含む、被検体試料中のsmall,dense LDL中コレステロール定量方法(特許文献5を参照)がある。
【0006】
small,dense LDL中コレステロールの測定キットとしては、第1工程でスフィンゴミエリナーゼ、第2工程でポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体もしくはその誘導体またはHLBが11以上14未満のポリオキシエチレン誘導体である界面活性剤、4アミノアンチピリンおよびペルオキシダーゼを含む試薬組成物がある(特許文献6を参照)。
【0007】
しかしながら、これらの検体前処理を行わずに自動分析装置を用いてsmall,dense LDL中コレステロールを定量する方法では第二試薬が時間の経過とともに自然に黄色に発色してくるという問題があり、そのため試薬の保存安定性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-28882号公報
【文献】国際公開第WO2004/053500号パンフレット
【文献】特許第5111389号公報
【文献】特許第5450080号公報
【文献】特許第5325093号公報
【文献】特許第5450080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、検体の前処理操作をすることなしに、自動分析装置を用いてsmall,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法において、保管時の試薬の自然発色を抑える方法、およびこの方法に用いられる定量キット、ならびに調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究の結果、第1工程で用いる第一試薬、および第2工程で用いる第二試薬中に含まれる酵素、電子供与体、カップラー、鉄錯体の各成分の組み合わせをコントロールすることにより特に試薬中の自然発色を抑え試薬安定性が改善されることを見いだした。
【0011】
すなわち、small,dense LDL以外のLDL中のコレステロールを消去する第1の試薬組成物、およびsmall,dense LDL中コレステロールを定量する第2の試薬組成物において、カップラー、鉄錯体、ペルオキシダーゼを同一試薬組成物中に共存させることなく、特に、カップラーと鉄錯体を同一試薬組成物中に共存させることなく前記の成分を2つの試薬組成物中に分けて存在させることにより、試薬の自然発色を抑えることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法において用いる、(1)コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性を有し、コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性の存在下でsmall,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを反応系外に導くための第1試薬組成物と、
(2)small,dense LDL中コレステロールを定量するための第2試薬組成物と、
を含む被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量キットであって、第1試薬組成物および第2試薬組成物のいずれかの試薬組成物において同一試薬組成物中にカップラー、鉄錯体、およびペルオキシダーゼを共存させないことを特徴とするキット。
[2]small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法において用いる、(1)コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性を有し、コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性の存在下でsmall,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを反応系外に導くための第1試薬組成物と、
(2)small,dense LDL中コレステロールを定量するための第2試薬組成物と、
を含む被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量キットであって、第1試薬組成物および第2試薬組成物のいずれかの試薬組成物において同一試薬組成物中にカップラーおよび鉄錯体を共存させないことを特徴とするキット。
[3]第1試薬組成物がカタラーゼ活性およびカップラーを含み、第2試薬組成物が、電子供与体、鉄錯体およびペルオキシダーゼ活性を含むことを特徴とする[1]または[2]のキット。
[4]第1試薬組成物がペルオキシダーゼ活性およびカップラーを含み、第2試薬組成物が、電子供与体および鉄錯体を含むことを特徴とする[1] または[2]のキット。
[5]第1試薬組成物がカタラーゼ活性、カップラーおよび鉄錯体を含み、第2試薬組成物が、電子供与体およびペルオキシダーゼ活性を含むことを特徴とする[1]のキット。
[6]第1試薬組成物がペルオキシダーゼ活性および電子供与体を含み、第2試薬組成物が、カップラーおよび鉄錯体を含むことを特徴とする[1]のキット。
[7]第1試薬組成物がカタラーゼ活性、電子供与体および鉄錯体を含み、第2試薬組成物が、ペルオキシダーゼ活性およびカップラーを含むことを特徴とする[1]または[2]のキット。
[8]第1試薬組成物がペルオキシダーゼ活性、電子供与体および鉄錯体を含み、第2試薬組成物が、カップラーを含むことを特徴とする[1]または[2]のキット。
[9]第1試薬組成物が、さらにカタラーゼ活性を含むことを特徴とする[4]、[6]および[8]のいずれかのキット。
[10]第1試薬組成物が、さらにsmall,dense LDL以外のリポタンパクに作用する界面活性剤を含み、第2試薬組成物がさらに少なくともsmall,dense LDLに作用する界面活性剤を含むことを特徴とする[1]から[9]のいずれかのキット。
[11]第1試薬組成物に含まれる界面活性剤がポリオキシエチレン多環フェニルエーテルを含むことを特徴とする[10]のキット。
[12]ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルがポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体および/またはポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル誘導体を含むことを特徴とする[11]のキット。
[13]small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法であって、
(1)コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性の存在下でsmall,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを反応系外に導く第1工程と、
(2)前記第1工程で残存するリポ蛋白中のコレステロールを定量する第2工程、
を含む被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量方法であって、(1)または(2)いずれかの工程においてカップラー、鉄錯体、およびペルオキシダーゼを同時に用いないことを特徴とする定量方法。
[14]small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法であって、
(1)コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性の存在下でsmall,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを反応系外に導く第1工程と、
(2)前記第1工程で残存するリポ蛋白中のコレステロールを定量する第2工程、
を含む被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量方法であって、(1)または(2)いずれかの工程においてカップラーおよび鉄錯体を同時に用いないことを特徴とする定量方法。
[15]第1工程でカタラーゼ活性およびカップラーを用い、第2工程で、電子供与体、鉄錯体およびペルオキシダーゼ活性を用いることを特徴とする[13]または[14]の定量方法。
[16]第1工程でペルオキシダーゼ活性およびカップラーを用い、第2工程で、電子供与体および鉄錯体を用いることを特徴とする[13] または[14]の定量方法。
[17]第1工程でカタラーゼ活性、カップラーおよび鉄錯体を用い、第2工程で、電子供与体およびペルオキシダーゼ活性を用いることを特徴とする[13]の定量方法。
[18]第1工程でペルオキシダーゼ活性および電子供与体を用い、第2工程で、カップラーおよび鉄錯体を用いることを特徴とする[13]の定量方法。
[19]第1工程でカタラーゼ活性、電子供与体および鉄錯体を用い、第2工程で、ペルオキシダーゼ活性およびカップラーを用いることを特徴とする[13]または[14]の定量方法。
[20]第1工程でペルオキシダーゼ活性、電子供与体および鉄錯体を用い、第2工程で、カップラーを用いることを特徴とする[13]または[14]の定量方法。
[21]第1工程でさらにカタラーゼ活性を用いることを特徴とする[14]、[18]および[20]のいずれかの定量方法。
[22]第1工程で、さらにsmall,dense LDL以外のリポタンパクに作用する界面活性剤を用い、第2工程で、さらに少なくともsmall,dense LDLに作用する界面活性剤を用いることを特徴とする[13]から[21]のいずれかの定量方法。
[23]small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法において用いる、
(1)コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性を含む第1試薬組成物と、
(2)small,dense LDL中コレステロールを定量するための第2試薬組成物と、の
被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量キットの製造における使用であって、第1試薬組成物または第2試薬組成物のいずれかの試薬組成物において同一試薬組成物中にカップラー、鉄錯体、およびペルオキシダーゼを共存させないことを特徴とする、使用。
[24]small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法において用いる、
(1)コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性を含む第1試薬組成物と、
(2)small,dense LDL中コレステロールを定量するための第2試薬組成物と、の
被検体試料中のsmall,dense LDLコレステロール定量キットの製造における使用であって、第1試薬組成物または第2試薬組成物のいずれかの試薬組成物において同一試薬組成物中にカップラーおよび鉄錯体を共存させないことを特徴とする、使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、small,dense LDL中コレステロールを他のコレステロールと分けて分別測定する場合において、2つの試薬の保存中の自然発色を抑え、安定性が改善され安定してsmall,dense LDL中コレステロールを定量する方法、およびこの方法に用いられる定量キットおよびこの方法を実施するための製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】比較例1における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図2】比較例2における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図3a】実施例1における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図3b】実施例1における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図4a】実施例2における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図4b】実施例2における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図5a】実施例3における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図5b】実施例3における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図6a】実施例4における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図6b】実施例4における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図7a】実施例5における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図7b】実施例5における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図8a】実施例6における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図8b】実施例6における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図9a】実施例7における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図9b】実施例7における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図10a】実施例8における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図10b】実施例8における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図11a】実施例9における第1試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
図11b】実施例9における第2試薬組成物の調製直後および保存後の吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
リポ蛋白は大きくVLDL、LDLおよびHDLの分画に分けられ、LDLはさらにsmall,dense LDLとそれ以外の亜分画に分けられる。small,dense LDLを小粒子LDL 、SLDL(small LDL)、dense LDL、sd LDLと呼ぶこともあり、またそれ以外のLDLをL LDL(large LDL)、Light LDLと呼ぶこともある。これらの分画および亜分画は、粒子サイズまたは比重により区別できる。その粒子サイズの直径は、報告者により異なるがVLDLが30nm~80nm(30nm~75nm)で、LDLが22nm~28nm(19nm~30nm)、HDLが直径7~10nmである。比重は、VLDLが1.006以下、LDLが1.019~1.063、HDLが1.063~1.21である。LDL粒子直径はグラジエントゲル電気泳動(GGE)(JAMA, 260, p.1917-21, 1988)、NMR(HANDBOOK OF LIPOPROTEIN TESTING 2ndEdition、 Nader Rifai他編、p.609-623、AACC PRESS:The Fats of Life Summer 2002、LVDD 15 YEAR ANNIVERSARY ISSUE、Volume AVI No.3、p.15-16)により測定でき、比重は超遠心分離による分析(Atherosclerosis, 106, p.241-253, 1994: Atherosclerosis, 83, p.59, 1990)に基づいて決定できる。
【0016】
本発明の方法で測定しようとするsmall,dense LDLは、一般的にはLDL画分のうち直径が約22.0~約25.5nmの亜分画、比重1.040~1.063の亜分画を指す。LDLを大きさにより亜分画に分けているのは、LDLのうち粒子径が小さいものが動脈硬化惹起性が高く、LDLの中でもより悪性度が高いので、LDLの中でも小さいものを分別測定する必要があったからである。LDL内で直径分布や比重分布は連続しており、比重がどの程度以上のものが特に悪性度が高いというように明確に区別できるものではない。従って、上記の比重1.040~1.063という値もsmall,dense LDLの特性として確立したものではなく、広く用いられており確立した値といえるLDLの比重範囲1.019~1.063を中央点で分けたものである。例えば、別の報告では1.044~1.060に分画される(Atherosclerosis:106 241-253 1994)。small,dense LDLの比重をどの範囲にするかは、報告者により若干の違いがあるが、いずれもその範囲で分別した場合のsmall,dense LDLの存在が臨床的な悪性度と関連している。
【0017】
本発明において、small,dense LDLという場合、LDLのうち比重が小さいものであって、臨床的に動脈硬化惹起性がそれ以外のLDLよりも大きいもの、好ましくはLDLの比重範囲のうち中央点より上の比重範囲に属するもの、さらに好ましくは比重1.044~1.063の範囲に属するLDLをいう。また、LDL以外のリポ蛋白という場合、VLDL、HDLを指し、さらにカイロミクロン、IDL(intermediate density lipoprotein)、VHDL(very high density lipoprotein)を含めることもある。
【0018】
本発明の定量キットは、small,dense LDL中コレステロールを2つの工程で定量する方法において用いられる。本発明の定量キットにおいて、第1試薬組成物は第1工程に用いられ、第2試薬組成物は第2工程に用いられる。
【0019】
本発明のsmall,dense LDL中コレステロール定量キットにおける第1試薬組成物は、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼを含み、コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性の存在下で、small,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを反応系外に導く。
【0020】
第1試薬組成物の成分としては、例えばアルブミン、緩衝液、界面活性剤、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、ポリオキシエチレン誘導体からなる界面活性剤、電子供与体、等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明のsmall,dense LDL中コレステロール定量キットにおける第2試薬組成物は、small,dense LDL中コレステロールを定量するための成分を含む。第2試薬組成物の成分は、第1試薬組成物によって異なるが、small,dense LDL中コレステロールを定量できる成分であれば特に限定されず、公知の物質を用いることができる。
【0022】
第2試薬組成物の成分としては、例えばペルオキシダーゼ、ポリオキシエチレン誘導体、カップラーを用いることができるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の方法は2工程からなり、第1工程において、small,dense LDL以外のLDL(以下Large LDL又はL LDLという場合がある)やその他のVLDL、HDLなどのリポ蛋白に作用する界面活性剤を、スフィンゴミエリナーゼおよびコレステロールエステラーゼの存在下で被検体試料に作用させ、リポ蛋白からの遊離により生じたコレステロールをコレステロールオキシダーゼと反応させ反応系外へ導く。さらに、第2工程において、第1工程で反応せずに残存したsmall,dense LDL中のコレステロールを定量する。
【0024】
本発明の方法は通常、自動分析装置内で行われる。
本発明の方法では、small, dense LDLコレステロールの濃度を定量する際に、電子供与体とカップラーをペルオキシダーゼ活性の存在下でカップリング反応させ、生成した色素により特定波長の吸光度を測定する。その際反応促進剤として鉄錯体が使用される。しかしながら、カップラーとペルオキシダーゼ活性、鉄錯体が同一試薬中に存在すると、試薬が徐々に自然発色し、small,dense LDLコレステロールの定量に影響を及ぼすという問題があった。そこで、本発明ではカップラーとペルオキシダーゼ活性、鉄錯体のうち、いずれかを別の試薬に存在させることにより試薬の自然発色を抑え安定化させる事が可能となった。ここで、「ペルオキシダーゼ活性が存在する」とは、ペルオキシダーゼが存在し、ペルオキシダーゼが触媒する反応が起こり得ることをいう。「ペルオキシダーゼ活性が存在する」という語を「ペルオキシダーゼが存在する」ということもできる。コレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、カタラーゼ活性やスフィンゴミエリナーゼ活性についても同様である。
【0025】
本発明の方法においては、カップラー、ペルオキシダーゼ活性、および鉄錯体を第1工程で用いる第1試薬組成物中と第2工程で用いる第2試薬組成物中に以下のように分離して存在させる。
(1)第1工程で用いる第1試薬組成物中にカップラーを存在させ、ペルオキシダーゼ活性および鉄錯体を第2工程で用いる第2試薬組成物中に存在させる。
(2)第1試薬組成物中にカップラーおよびペルオキシダーゼ活性を存在させ、鉄錯体を第2試薬組成物中に存在させる。
(3)第1試薬組成物中にペルオキシダーゼ活性を存在させ、カップラーおよび鉄錯体を第2試薬組成物中に存在させる。
(4)第1試薬組成物中にカップラーおよび鉄錯体を存在させ、ペルオキシダーゼ活性を第2試薬組成物中に存在させる。
(5)第1試薬組成物中にペルオキシダーゼ活性および鉄錯体を存在させ、カップラーを第2試薬組成物中に存在させる。
(6)第1試薬組成物中に鉄錯体を存在させ、ペルオキシダーゼ活性およびカップラーを第2試薬組成物中に存在させる。
さらに、好ましくは、カップラーと電子供与体は別々の試薬組成物中に分離して存在させる。
【0026】
以下各工程について詳述する。
本発明のキットは、small, dense LDL以外のリポ蛋白中のコレステロールを反応系外に導く工程で用いる第1の試薬生成物、およびsmall,dense LDL中コレステロールを測定する工程で用いる第2試薬生成物を含む。
small, dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを反応系外に導く工程では、small, dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導く、small, dense LDL以外のリポ蛋白中を凝集させたり、後の工程で反応しないよう阻害したりする等の公知の技術を用いることができる。
【0027】
第1工程である、small, dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導く工程は以下のいずれかの方法で行われる。
(1)これらのリポ蛋白中コレステロールよりコレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性により過酸化水素を生成させ、カタラーゼ活性の存在下で過酸化水素を水と酸素に分解させる方法、
(2)コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性により生じた過酸化水素、ならびにカップラーもしくは電子供与体の存在下で無色キノンを形成させる方法、ならびに
(3)カタラーゼ活性の存在下で過酸化水素を分解させ、かつ同時にカップラーまたは電子供与体の存在下で無色キノンを形成させる方法。
【0028】
(1)のカタラーゼ活性の存在下で過酸化水素を分解させる方法では第1工程を実施する第1試薬組成物中にカタラーゼ活性が存在する必要がある。また、(2)の無色キノンを形成させる方法では少なくともカップラー、電子供与体の一方が第1試薬組成物中に存在している必要があり、さらにペルオキシダーゼ活性が第1試薬組成物中に存在している必要がある。(3)のカタラーゼ活性により過酸化水素を分解させ、かつそれと同時にカップラーまたは電子供与体の存在下で無色キノンを形成させる方法では、カタラーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性ならびにカップラーもしくは電子供与体が第1試薬組成物中に存在している必要がある。
【0029】
本発明で用いるカップリング反応に用いるカップラーとしては例えば4-アミノアンチピリン、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明で用いる電子供与体としてはアニリン誘導体が好ましく、アニリン誘導体としてはN-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOPS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-(3-スルホプロピル)アニリン(HALPS)、N-(3-スルホプロピル)-3-メトキシ-5-アニリン(HMMPS)等があげられる。電子供与体の使用濃度は反応液中の最終濃度で0.1~8mmol/Lが好ましい。
【0031】
本発明に用いる鉄錯体としてフェロシアン化カリウム、フェロシアン化ナトリウム、ポルフィリン鉄錯体、EDTA-鉄錯体等があげられる。鉄錯体の濃度としては0.001~0.05mmol/Lが望ましい。
【0032】
本発明の方法のsmall,dense LDL以外のリポタンパク中コレステロールを消去し、反応系外に導くための工程においてはスフィンゴミエリナーゼおよびポリオキシエチレン誘導体からなる界面活性剤を用いる。さらに本発明では、上記スフィンゴミエリナーゼ活性の試薬中濃度は0.1~100U/mLが好ましく、0.2~20U/mLがより好ましい。反応時の反応液中の濃度は、0.05~100U/mLが好ましく、0.1~20U/mLがより好ましい。スフィンゴミエリナーゼの好ましい具体例としては、SPC(旭化成社製)、Sphingomyelinase from bacillus cereus、Sphingomyelinase from staphylococcus aureus (SIGMA社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
small,dense LDL以外のL LDL、VLDL、HDLなどのリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程ではsmall,dense LDL以外のリポ蛋白に作用するがsmall,dense LDLとは反応しない界面活性剤の存在下でsmall,dense LDL以外のリポ蛋白コレステロールを消去する。small,dense LDL以外のリポタンパクに作用反応する界面活性剤として、ポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。誘導体の例としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、から選択される非イオン界面活性剤を挙げることができる。ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルの好ましい例として、ポリオキシエチレンベンジルフェニル誘導体やポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル誘導体、特殊フェノールエトキシレートが挙げられる。ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルの具体例として、エマルゲンA-60、エマルゲンA-500、エマルゲンB-66、エマルゲンA-90(以上花王社製)、ニューコール703、ニューコール704、ニューコール706、ニューコール707、ニューコール708、ニューコール709、ニューコール710、ニューコール711、ニューコール712、ニューコール714、ニューコール719、ニューコール723、ニューコール729、ニューコール733、ニューコール740、ニューコール747、ニューコール780、ニューコール610、ニューコール2604、ニューコール2607、ニューコール2609、ニューコール2614(以上日本乳化剤社製)、ノイゲンEA-87、ノイゲンEA-137、ノイゲンEA-157、ノイゲンEA-167、ノイゲンEA-177、ノイゲンEA-197D、ノイゲンEA-207D(以上第1工業製薬社製)、ブラウノンDSP-9、ブラウノンDSP-12.5、ブラウノンTSP-7.5、ブラウノンTSP-16、ブラウノンTSP-50(以上青木油脂社製)等があげられる。界面活性剤の試薬中濃度は0.3~5%(w/v)が好ましく、0.5~3%(w/v)がより好ましい。反応時の反応液中の濃度は、0.15~5%が好ましく、0.25~3%(w/v)がより好ましい。なお、試薬中の界面活性剤は、IR、NMR、LC-MS等を組み合わせて解析する方法によって同定できる。界面活性剤のイオン性(非イオン性、陰イオン性、陽イオン性)を確認する方法としては、酸性またはアルカリ性条件での有機溶媒による抽出法、固相抽出法があげられる。界面活性剤の構造を決定する方法としてはLC-MSMS、NMRを用いて解析する方法があげられる。
【0034】
上記small,dense LDL以外のリポタンパク中のコレステロールを消去する工程においては、スフィンゴミエリナーゼおよび前記small,dense LDL以外のリポタンパクに作用反応する界面活性剤の存在下で、コレステロールエステラーゼがL LDL等に作用し、生じたコレステロールを、コレステロールオキシダーゼ等のコレステロールと反応する酵素の存在下で反応させ消去することにより、これらリポタンパク中のコレステロールを反応系外へ導く。ここで、「界面活性剤が作用(反応)する」とは、界面活性剤がリポ蛋白を分解し、リポ蛋白中のコレステロールが遊離することをいう。例えば「small,dense LDL以外のリポ蛋白に作用(反応)する界面活性剤」という場合、界面活性剤がsmall,dense LDLに全く作用しないことは要求されず、主にsmall,dense LDL以外のリポ蛋白に作用すればよい。「消去」とは、被検体試料中の物質を分解し、その分解物が次の工程において検出されないようにすることを意味する。すなわち、「small,dense LDL以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する」とは、被検体試料中のsmall,dense LDL以外のリポ蛋白を分解し、その分解産物であるこれらリポ蛋白中のコレステロールがその後の工程で検出されないようにすることをいう。
【0035】
本発明において、「反応系外に導く」とは、HDLやVLDL、L LDLなどに含まれるコレステロールがsmall,dense LDL中コレステロールの定量に影響を及ぼさないように、HDL、VLDL、L LDLなどに含まれるコレステロールを消去、凝集させたり、後の工程で反応しないよう阻害したりする等のことを言う。
【0036】
上記界面活性剤の存在下でコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼを作用させコレステロールから過酸化水素を発生させ、発生した過酸化水素は消去される。反応液中のコレステロールエステラーゼ濃度は0.010~10U/mL程度が好ましい。また、コレステロールオキシダーゼは細菌や酵母由来のものを用いることができ、反応液中のコレステロールオキシダーゼの濃度は0.1~0.7U/mL程度が好ましい。さらに、カタラーゼの反応液中の濃度は40~2500U/mL程度が好ましい。また、過酸化水素を無色キノンへ転化する場合の反応液中のペルオキシダーゼの濃度は0.4~2.0U/mLが好ましい。
【0037】
small,dense LDL以外のリポタンパク中コレステロールを消去する工程において、上記界面活性剤およびコレステロールエステラーゼと作用・反応したリポ蛋白中のコレステロールはコレステロールオキシダーゼ等のコレステロール反応酵素と反応させ反応系外へ導くことができる。このような反応により、L LDLやLDL以外のVLDL、HDLなどのリポ蛋白中のコレステロールを反応系外へ導くことにより、その後の工程においては、反応液中にリポ蛋白としてはsmall,dense LDLのみが残存することになる。本発明においては、このようにsmall,dense LDL以外のリポ蛋白を消去し、反応系外へ導き、その後の工程でsmall,dense LDL以外のリポ蛋白のコレステロールを検出できないようにすることを、「small,dense LDLとそれ以外のリポ蛋白を差別化する」ということがある。
【0038】
またsmall,dense LDL以外のリポタンパク中コレステロールを消去する工程ではsmall,dense LDL以外のリポタンパク中コレステロールが完全に消去されていなくても良いが、その場合はsmall,dense LDL中コレステロールを定量する工程において、small,dense LDL中コレステロールが選択的に測定されるような界面活性剤を用いれば良い。
【0039】
コレステロールエステラーゼのsmall,dense LDL以外のリポタンパク中コレステロールを消去し反応系外に導く工程の反応液中の濃度として0.01 U/mL~10.0 U/mLが好ましく、0.3 U/mL~2.5U/mLがさらに好ましく、0.6 U/mL~2.0 U/mLが特に好ましい。本発明におけるコレステロールエステラーゼとしてはコレステロールエステルを加水分解する酵素であれば特に限定されず、動物または微生物由来のコレステロールエステラーゼを用いることができる。
【0040】
small,dense LDL以外のリポタンパク中コレステロールを消去する工程の反応液中には、各種リポ蛋白に対する作用を調整するために、任意的にリポ蛋白分解酵素を加えることもできる。リポ蛋白分解酵素としては、リポプロテインリパーゼを用いることができる。リポプロテインリパーゼはリポタンパク質を分解する能力を有する酵素であれば特に限定されず動物または微生物由来のリポプロテインリパーゼを用いることができる。リポプロテインリパーゼの反応液中の濃度は0.01~10U/mLが好ましく、0.01~5U/mLがさらに好ましく、0.01~1U/mLが特に好ましい。
【0041】
本発明では上記small,dense LDL以外のリポ蛋白中のコレステロールを反応系外に導く工程において反応せずに残存したsmall,dense LDL中のコレステロールをその後の第2工程で定量する。この定量工程では従来から用いられているLDLの定量方法を用いることができる。例えば、LDL凝集剤を添加して形成されたLDL特異的凝集物の含有量を比濁測定によって定量する方法、LDL特異的な抗体による抗原抗体反応を用いる方法、酵素を用い分解生成物を定量する方法等がある。これらのうち、酵素を用い分解生成物を定量する方法が好ましい。
【0042】
該方法においては、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ等のコレステロール測定用酵素を加えてsmall,dense LDLのコレステロールを遊離・分解し、その反応生成物を定量する。この定量工程の際、small,dense LDL中のコレステロールを定量するために、少なくともsmall,dense LDLに作用する界面活性剤を用いればよい。少なくともsmall,dense LDLに作用する界面活性剤とはsmall,dense LDLのみに作用する界面活性剤でもよいし、small,dense LDL以外に他のリポ蛋白にも作用する界面活性剤、全てのリポ蛋白に作用する界面活性剤であってもよい。
【0043】
small,dense LDLのみに作用する界面活性剤としてはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体またはその誘導体を好適に用いることができる。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体またはその誘導体として、例えばプルロニック17R-4、プルロニックL-64、プルロニックPE3100、プルロニックP-85、プルロニックF-88、プルロニックP-103、プルロニックF-127等のプルロニック(登録商標)系界面活性剤(BASF社、ADEKA社)などが挙げられる。
【0044】
全てのリポ蛋白に作用する界面活性剤としては、ポリオキシエチレン誘導体をあげることができ、市販の総コレステロール測定用試薬等に用いられている界面活性剤であればどれでも使用することができる。具体的には、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(エマルゲン909(花王社製)、TritonX100)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン707(花王社製)、エマルゲン709(花王社製))、等が挙げられる。
【0045】
small,dense LDLを定量する工程で用いられる界面活性剤の反応液中の濃度は、好ましくは0.01~10%(w/v)程度であり、さらに好ましくは0.1~5%(w/v)程度である。
【0046】
本発明で用いるコレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性、ペルオキシダーゼ活性、カタラーゼ活性は以下の方法にて測定できる。コレステロールオキシダーゼ活性の測定では、基質液として6mMコレステロール溶液(イソプロパノールに溶解)を用いる。測定対象を2-4U/mLとなるように希釈液(0.1M リン酸緩衝液、TritonX100、pH7.0)を加え、希釈後の溶液3mLを37℃5分加温後に基質液0.05mLを加える。その後、混合液を37℃で反応させ波長240nm吸光度変化量を測定する。本発明では37℃反応後、2分から7分までの吸光度変化量を測定し、コレステロールオキシダーゼ活性を算出した。上記のとおり測定した吸光度変化量から換算した単位量あたりの酵素活性が3U/L以上あれば、測定対象はコレステロールオキシダーゼ活性が存在すると言え、言い換えれば、「コレステロールオキシダーゼ」が含まれているといえる。
【0047】
コレステロールエステラーゼ活性測定では、基質(0.04%リノレン酸コレステロール、1%TritonX100、0.6%コール酸ナトリウム溶液)、300U/mLコレステロールオキシダーゼ溶液、酵素希釈液(20mMリン酸緩衝液、0.5mM EDTA・2Na、2mM MgCl2、0.2% BSA、pH7.5)、反応液(0.06% 4アミノアンチピリン、0.4% フェノール、7.5KU/L ペルオキシダーゼ)を用いる。反応液1.75mLと基質液1.0mLを混合後、37℃で5分加温し、0.1mLコレステロールオキシダーゼ溶液を加える。37℃、2分加温後に希釈液で希釈した測定対象0.1mLを加え、混合液を37℃で反応させ波長500nmの吸光度変化量を測定する。本発明では37℃反応後、0分から3.5分までの吸光度変化量を測定し、コレステロールエステラーゼ活性を算出した。上記のとおり測定した吸光度変化量から換算した単位量あたりの酵素活性が8U/L以上あれば、測定対象はコレステロールエステラーゼ活性が存在すると言え、言い換えれば、「コレステロールエステラーゼ」が含まれているといえる。
【0048】
スフィンゴミエリナーゼ活性測定では、反応液(0.008% スフィンゴミエリン、0.05% TritonX100溶液、10U/mL アルカリ性フォスファターゼ、10U/mL コレステロールオキシダーゼ、2U/mL ペルオキシダーゼ、0.02% 4アミノアンチピリン、0.02% TODB混合液)、反応停止液(1% ドデシル硫酸ナトリウム溶液)、希釈液(10mM トリス緩衝液、0.1% TritonX100、pH8.0)を用いる。反応液0.08mLと希釈液で希釈した測定対象0.003mL を混合し37℃で5分加温後に反応停止液0.16mLを加える。反応停止後に主波長546nm、副波長700nmの吸光度変化量を測定し、スフィンゴミエリナーゼ活性を算出した。上記のとおり測定した吸光度変化量から換算した単位量あたりの酵素活性が2U/L以上あれば、測定対象はスフィンゴミエリナーゼ活性が存在すると言え、言い換えれば、「スフィンゴミエリナーゼ」が含まれているといえる。
【0049】
ペルオキシダーゼ活性測定では反応液1(1.5mM HDAOS、0.05% TritonX100、50mM リン酸緩衝液、pH7.0)、反応液2(5mM 4アミノアンチピリン、0.05% TritonX100、1% 過酸化水素、50mMリン酸緩衝液、pH7.0)、希釈液(50mM リン酸緩衝液、pH7.0)を用いる。0.3mLの反応液1と希釈液で希釈した測定対象0.08mLを混合し37℃で5分加温する。その後0.1mLの反応液2を加え、37℃で反応させ主波長600nm、副波長700nmの吸光度変化量を測定する。本発明では37℃反応後、2分から5分までの吸光度変化量を測定しペルオキシダーゼ活性を算出した。上記のとおり測定した吸光度変化量から換算した単位量あたりの酵素活性が10U/L以上あれば、測定対象はペルオキシダーゼ活性が存在すると言え、言い換えれば、「ペルオキシダーゼ」が含まれているといえる。
【0050】
カタラーゼ活性測定では基質(0.06% 過酸化水素、50mM リン酸緩衝液、pH7.0)を用いる。基質溶液2.9mLを25℃で予備加温後、測定対象0.1mLと混合し、240nmにおける吸光度変化量を測定した。本発明では25℃反応後、0分から3分までの吸光度変化量を測定しカタラーゼ活性を算出した。上記のとおり測定した吸光度変化量から換算した単位量あたりの酵素活性が100U/L以上あれば、測定対象はカタラーゼ活性が存在すると言え、言い換えれば、「カタラーゼ」が含まれているといえる。
【0051】
本発明の方法のsmall,dense LDL以外のリポタンパク中コレステロールを消去し反応系外に導く工程において、イオン強度調整剤として1価の陽イオンおよび/または2価の陽イオンまたはそれらの塩をさらに用いることができる。イオン強度調整剤を添加することにより、small,dense LDLとL LDLを差別化しやすくなる。具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、酢酸マグネシウム等を用いることができる。イオン強度調整剤の反応時の濃度は0~100mmol/Lが好ましい。
【0052】
さらに本発明ではsmall,dense LDLとL LDLに対するスフィンゴミエリナーゼの触媒活性を調整するためにL LDL中のコレステロールを消去し反応系外に導く工程およびLDL以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去し反応系外に導く工程においてポリアニオンを添加することもできる。添加するポリアニオンとしてはヘパリン、リンタングステン酸、デキストラン硫酸などを好適に用いることができる。試薬中のポリアニオンの濃度はヘパリンの場合10~250U/mL、リンタングステン酸の場合0.02~1.25%(w/v)、デキストラン硫酸の場合0.02~1.25%(w/v)が好ましい。反応液中の濃度は、それぞれ5~250U/mL、0.01~1.25%(w/v)、0.01~1.25%(w/v)が好ましい。
【0053】
なお、試薬中の酵素は以下の方法でも同定できる。すなわち、標的酵素を含む試料をトリプシンで分解することにより得られた断片ペプチドをハイブリッド型質量分析計で検出する。質量分析計により得られたペプチドの質量、および質量分析計内でアルゴンガスと衝突させることにより得られたフラグメントイオンのスペクトル(MS/MSデータ)をデータベース検索(例えばMascot サーチ)することによりタンパク質を同定することができる。試料中のアミノ酸配列由来の断片ペプチドの配列がデータベースに登録されているアミノ酸配列とユニークな配列として一致する場合、対象酵素を含んでいると見なせる。
【0054】
また、試薬中の酵素は以下の定量で同定できる。すなわち、標的酵素をトリプシンで分解することにより得られる断片ペプチドのうち標的酵素に特異的で、かつ質量分析において強いシグナルが得られるペプチドを定量対象ペプチドとして選択する。定量対象ペプチドについて、非標識のペプチドおよび内部標準としての安定同位体で標識したペプチドを化学合成によって作製する。標的酵素を含む試料をトリプシンによって完全に消化し、既知量の安定同位体標識ペプチドを添加して、HPLC に接続した三連四重極型質量分析計(LC-MS/MS)によりMRMモード(多重反応モニタリングモード)で測定する。定量対象ペプチドの非標識ペプチドと既知量の安定同位体標識ペプチドの混合液を同様に測定して内部標準の濃度比とピーク面積比の検量線を作成し、試料中の定量対象ペプチドの絶対量を計算することにより標的酵素を定量することができる。
【0055】
本発明の各工程における、反応温度は2℃~45℃で行うことが好ましく、25℃~40℃で行うことがさらに好ましい。
【0056】
反応時間は各工程とも1~10分間で行うことが好ましく、3~7分で行うことがさらに好ましい。
【0057】
本発明の被検体試料としては、血清、血漿を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明で用いる自動分析装置として、例えば、TBA-120FR・200FR(東芝)、JCA-BM1250・1650・2250(日本電子)、HITACHI7180・7170(日立)、AU2700・5800・680(OLYMPUS)、cobas c501・701(Roche)等が挙げられる。
【0059】
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導く工程、small,dense LDLを測定する工程の2つの工程がある場合、small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導く工程に用いる試薬には、small,dense LDL以外のリポ蛋白に反応するスフィンゴミエリナーゼが含まれる。small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する試薬組成物には、さらに、コレステロールエステラーゼやコレステロールオキシダーゼ等のコレステロールを分解する酵素、電子供与体またはカップラーのいずれか一方、過酸化水素を消去するカタラーゼ等を含ませればよい。small,dense LDLを測定する工程に用いる試薬には、small,dense LDLのみに反応する界面活性剤もしくは全てのリポ蛋白に作用する界面活性剤、電子供与体またはカップラーでsmall,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導く工程で用いられていない一方を含ませることができる。この際、第1試薬または第2試薬には、必要に応じて、1価の陽イオン、2価の陽イオンもしくはそれらの塩、またはポリアニオンを添加してもよい。また、第1試薬または第2試薬には、血清アルブミンが含まれていてもよい。各試薬組成物のpHは、中性付近、例えばpH6~pH8、好ましくはpH6.5~7.5であり、緩衝液を添加してpHを調整すればよい。
【0060】
本発明の方法をsmall,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去し反応系外に導く工程、small,dense LDLを測定する工程の順で行う場合、被検体試料にsmall,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去させる試薬組成物を添加し反応させ、次いでsmall,dense LDLを測定させる試薬組成物を添加し反応させ、吸光度を測定することにより行えばよい。
【0061】
被検体試料の量、各試薬組成物の量は限定されず、各試薬組成物中の試薬の濃度等を考慮して適宜決定できるが、自動分析装置に適用可能な範囲で行う。例えば、被検体試料1~10μL、第1試薬50~300μL、第2試薬25~200μLを用いればよい。
【実施例
【0062】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
下記実施例および比較例で用いる成分は以下のとおりである。
下記実施例および比較例において、吸収スペクトルの測定には、HITACHI 社製のU-3900を用いた。
【0063】
比較例1
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬において、第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0064】
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
カップラー(4アミノアンチピリン) 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
フェロシアン化カリウム 0.11mmol/L
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0065】
第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について波長320nm~480nmの吸収スペクトルを測定した。
【0066】
図1に調製直後、ならびにおよび37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の吸収スペクトルを示す。図1に示すように37℃にて1、2週間加速保存後の試薬は、360nm付近に極大吸収を示すピークが発生(試薬が淡黄色)した。37℃加速では1週間の保存が冷蔵1.5年間の保存と同等であった。
【0067】
比較例2
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬において、第1工程を行う第1試薬組成物を以下のように調製した。
【0068】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
カップラー(4アミノアンチピリン) 1.3mmol/L
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
フェロシアン化カリウム 0.04mmol/L
ポリオキシエチレン誘導体[花王製] 0.3%(w/v)
【0069】
第1試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について波長320nm~480nmの吸収スペクトルを測定した。
【0070】
図2に調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の吸収スペクトルを示す。図2に示すように、37℃保存後の試薬は、360nm付近に極大吸収を示すピークが発生(試薬が淡黄色)した。
【0071】
実施例1
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0072】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
4-アミノアンチピリン 1.3mmol/L
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 03%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
TOOS 6.0mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.11mM
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0073】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0074】
図3aに調製直後、ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図3bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図3a、図3bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0075】
実施例2
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0076】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
4-アミノアンチピリン 1.3mmol/L
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
TOOS 6.0mmol/L
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
フェロシアン化カリウム 0.11mmol/L
【0077】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0078】
図4aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図4bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図4a、図4bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0079】
実施例3
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
4-アミノアンチピリン 1.3mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.04mM
カタラーゼ 1200U/mL
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
TOOS 6.0mmol/L
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0080】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0081】
図5aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図5bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図5a、図5bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0082】
実施例4
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0083】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.11mM
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0084】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0085】
図6aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図6bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図6a、図6bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0086】
実施例5
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0087】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
TOOS 2.0mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.04mM
カタラーゼ 1200U/mL
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0088】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0089】
図7aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図7bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図7a、図7bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0090】
実施例6
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬組成物において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0091】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
TOOS 2.0mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.04mM
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0092】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0093】
図8aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図8bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図8a、図8bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0094】
実施例7
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬組成物において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0095】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
4-アミノアンチピリン 1.3mmol/L
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
TOOS 6.0mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.11mM
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0096】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0097】
図9aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図9bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図9a、図9bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0098】
実施例8
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬組成物において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0099】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.11mM
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0100】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0101】
図10aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図10bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図10a、図10bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0102】
実施例9
small,dense LDL以外のリポ蛋白中コレステロールを消去する第1工程、およびsmall,dense LDLコレステロールを測定する第2工程によりsmall,dense LDLを測定する試薬組成物において、第1工程を行う第1試薬組成物、および第2工程を行う第2試薬組成物を以下のように調製した。
【0103】
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
スフィンゴミエリナーゼ 2.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
TOOS 2.0mmol/L
フェロシアン化カリウム 0.04mM
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル[花王製] 0.3%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル[花王製] 1.0%(w/v)
【0104】
第1試薬組成物および第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について320nm~480nmの吸収スペクトルを測定し、比較例1、2と比較した。
【0105】
図11aに調製直後ならびに37℃にて1週間もしくは2週間加速保存した後の第1試薬の吸収スペクトルを、図11bに第2試薬の吸収スペクトルを示す。図11a、図11bに示すように、比較例1、2に比べ360nm付近の極大吸収を示すピークが減少、消失した。
【0106】
検証1
実施例1から実施例9までの定量キットを用いてsmall,dense LDLコレステロールを測定した。比較対象法として、デンカ生研社製のsmall,dense LDLコレステロール測定用試薬sd LDL-EX「生研」を用いた。small,dense LDLコレステロール濃度を比較した。結果として、同じサンプルに対する、各実施例のsmall,dense LDL中コレステロールの測定結果とsd LDL-EX「生研」の測定結果の相関係数を表1に示す。
【0107】
表1に示すように、本実施例の方法はsmall,dense LDLコレステロール測定用試薬sd LDL-C「生研」を用いた方法と良好な相関関係を示した。
【0108】
【表1】
【0109】
この検証結果から、本発明の定量キットにより、sd LDL中コレステロールが良好に検出できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のキットおよび方法により、試薬の安定性を損なうことなくsmall,dense LDL中コレステロールを定量することができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b