(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】収納構造
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
(21)【出願番号】P 2020125107
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000244280
【氏名又は名称】盟和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】宮原 一矢
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆治
(72)【発明者】
【氏名】本多 勇治
(72)【発明者】
【氏名】大島 靖隆
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-059762(JP,U)
【文献】特開2008-290647(JP,A)
【文献】特開2003-118656(JP,A)
【文献】特開2011-056983(JP,A)
【文献】パンダン製フタ付収納ボックス,日本,2015年10月11日,<URL:https://web.archive.org/web/20151010150248/https://item.rakuten.co.jp/asia-kobo/b-1174/><URL:https://item.rakuten.co.jp/asia-kobo/b-1174/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室の床面に凹設された荷室収納部と、前記荷室収納部を覆うデッキボードとを有する収納構造であって、
前記デッキボードは、ヒンジ部を軸として回転することで前記荷室収納部を開閉自在に覆う開閉領域を具備し、
一方の端部が、前記開閉領域に設けられた第1の取付部に取り付けられ、他方の端部が、前記荷室の床面側の領域のうち前記開閉領域が閉じている場合に前記開閉領域に対向する領域に設けられた第2の取付部に取り付けられ、前記開閉領域が90度以上180度未満の所定の角度だけ開いた際の前記第1の取付部と前記第2の取付部との間の距離をその長さとする紐部材と、
前記荷室収納部を跨いで前記荷室の床面に取り付けられたブラケット
と、を有し、
前記第2の取付部は、前記ブラケットに設けられている、収納構造。
【請求項2】
荷室の床面に凹設された荷室収納部と、前記荷室収納部を覆うデッキボードとを有する収納構造であって、
前記デッキボードは、ヒンジ部を軸として回転することで前記荷室収納部を開閉自在に覆う開閉領域を具備し、
一方の端部が、前記開閉領域に設けられた第1の取付部に取り付けられ、他方の端部が、前記荷室の床面側の領域のうち前記開閉領域が閉じている場合に前記開閉領域に対向する領域に設けられた第2の取付部に取り付けられ、前記開閉領域が90度以上180度未満の所定の角度だけ開いた際の前記第1の取付部と前記第2の取付部との間の距離をその長さとする紐部材と、
前記紐部材の前記一方の端部に取り付けられるとともに、第1の係合部を具備する第1の端部部材と、
前記紐部材の前記他方の端部に取り付けられるとともに、前記第1の係合部に係合可能な第2の係合部を具備する第2の端部部材と
、を有し、
前記紐部材の前記一方の端部は、前記第1の端部部材を介して前記第1の取付部に取り付けられ、
前記紐部材の前記他方の端部は、前記第2の端部部材を介して前記第2の取付部に取り付けられる、収納構造。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の収納構造において、
前記第1の取付部は、前記開閉領域の回転方向に直交する方向において前記第2の取付部よりも前記デッキボードの内側に設けられている、収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室の床面に凹設された荷室収納部をデッキボードで開閉自在に覆う収納構造に関し、特に、デッキボードを開いた状態に保持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般的な自動車においては、非常時に応急処置を施すための工具や三角表示板等を搭載しているものが多い。そのような工具や三角表示板は、ただ単に荷室等に搭載していると、非常時にすぐに探し出すことができなくなる虞があるとともに、自動車の走行時の振動等によって荷室内をバラバラに移動して見栄えが悪くなってしまう。
【0003】
そこで、荷室の床面に収納部を凹設し、この収納部に工具や三角表示板等を収納しておけば、上述したような問題点を解消することができる。近年では、いわゆるミニバンやワゴンタイプといった荷室が広い自動車が普及しており、また、特にSUV(Sport Utility Vehicle)タイプの自動車においては荷室の床面が高くなっていることから、床面に収納部を設けやすい構造となっている。
【0004】
荷室の床面に上述したような収納部を設けた場合、その開口部をデッキボードで開閉自在に覆うことで、収納部に工具等の物品を収納可能としながらも、荷室に荷物を収納することができる。そのような構成においては、デッキボードを開いた際、開いた状態を保持するためにデッキボードを支える構成を有することが好ましい。
【0005】
ここで、特許文献1には、車両のトランクルーム等の床面に凹設された物品収納部をトランクボードによって開閉自在に覆う構成において、トランクボードの下部に収納された工具を回転させることで、トランクボードを開いた状態に保持する構造が開示されている。この構造を用いることで、収納部を覆うボードを手で支えることなく、開いた状態に保持することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、トランクボードの下部に収納された工具を回転させることで、トランクボードを開いた状態に保持するものであるため、ボードを開いた後に工具を回転させるという作業が生じる。そのため、収納部を覆うボードを手で支えることなく開いた状態に保持するためには、ボードの下部に工具を収納していく必要があるとともに、ボードを開いた状態にしておくための作業が煩雑になってしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、荷室の床面に凹設された荷室収納部をデッキボードで開閉自在に覆う収納構造において、デッキボードを開く作業をするだけでデッキボードを所定の角度に開いた状態に保持することを簡易な構成で実現できる収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の収納構造は、
荷室の床面に凹設された荷室収納部と、前記荷室収納部を覆うデッキボードとを有する収納構造であって、
前記デッキボードは、ヒンジ部を軸として回転することで前記荷室収納部を開閉自在に覆う開閉領域を具備し、
一方の端部が、前記開閉領域に設けられた第1の取付部に取り付けられ、他方の端部が、前記荷室の床面側の領域のうち前記開閉領域が閉じている場合に前記開閉領域に対向する領域に設けられた第2の取付部に取り付けられ、前記開閉領域が90度以上180度未満の所定の角度だけ開いた際の前記第1の取付部と前記第2の取付部との間の距離をその長さとする紐部材と、
前記荷室収納部を跨いで前記荷室の床面に取り付けられたブラケットと、を有し、
前記第2の取付部は、前記ブラケットに設けられている。
または、本発明の収納構造は、
荷室の床面に凹設された荷室収納部と、前記荷室収納部を覆うデッキボードとを有する収納構造であって、
前記デッキボードは、ヒンジ部を軸として回転することで前記荷室収納部を開閉自在に覆う開閉領域を具備し、
一方の端部が、前記開閉領域に設けられた第1の取付部に取り付けられ、他方の端部が、前記荷室の床面側の領域のうち前記開閉領域が閉じている場合に前記開閉領域に対向する領域に設けられた第2の取付部に取り付けられ、前記開閉領域が90度以上180度未満の所定の角度だけ開いた際の前記第1の取付部と前記第2の取付部との間の距離をその長さとする紐部材と、
前記紐部材の前記一方の端部に取り付けられるとともに、第1の係合部を具備する第1の端部部材と、
前記紐部材の前記他方の端部に取り付けられるとともに、前記第1の係合部に係合可能な第2の係合部を具備する第2の端部部材と、を有し、
前記紐部材の前記一方の端部は、前記第1の端部部材を介して前記第1の取付部に取り付けられ、
前記紐部材の前記他方の端部は、前記第2の端部部材を介して前記第2の取付部に取り付けられる。
【0010】
上記のように構成された本発明においては、荷室の床面に凹設された荷室収納部に物品を収納したり、荷室収納部に収納された物品を取り出したりするためにデッキボードを開く場合、デッキボードの開閉領域をヒンジ部を軸として回転させて開くことになるが、開閉領域に設けられた第1の取付部にその一方の端部が取り付けられ、他方の端部が、荷室の床面側のうち開閉領域が閉じている場合に開閉領域に対向する領域に設けられた第2の取付部に取り付けられた紐部材を有し、この紐部材の長さが、開閉領域が所定の角度だけ開いた際の第1の取付部と第2の取付部との間の距離であることにより、開閉領域が回転して開いた角度が所定の角度になると、紐部材が伸びきって開閉領域がそれ以上開かなくなる。この際の開閉領域の開いた角度は、紐部材の長さによって90度以上180度未満となり、それにより、開閉領域が重力と紐部材の張力とによって自立した状態となる。このように、荷室の床面に凹設された荷室収納部に物品を収納したり、荷室収納部に収納された物品を取り出したりするためにデッキボードを開く場合、デッキボードの開閉領域をヒンジ部を軸として回転させて開く作業をするだけで、デッキボードを所定の角度に開いた状態に保持することができる。
【0011】
また、第1の取付部が、開閉領域の回転方向に直交する方向において第2の取付部よりもデッキボードの内側に設けられていれば、開閉領域を閉じる際に、紐部材がデッキボードの内側に垂れていくことになり、開閉領域を閉じた状態にてデッキボードの外側に紐部材が飛び出てしまうことがない。
【0012】
また、荷室収納部を跨いで荷室の床面に取り付けられたブラケットを有し、第2の取付部がブラケットに設けられていれば、デッキボードが強度的に弱い材質のものであったり、デッキボードの大きさが大きなものであったりしても、ブラケットによってある程度の強度を持たせることができる。
【0013】
また、紐部材の一方の端部に取り付けられるとともに、第1の係合部を具備する第1の端部部材と、紐部材の他方の端部に取り付けられるとともに、第1の係合部に係合可能な第2の係合部を具備する第2の端部部材とを有し、紐部材の一方の端部が第1の端部部材を介して第1の取付部に取り付けられ、紐部材の他方の端部が第2の端部部材を介して第2の取付部に取り付けられるものにおいては、第1の端部部材によって紐部材の一方の端部をデッキボードに取り付けておき、その後、第2の端部部材によって紐部材の他方の端部を荷室の床面側に取り付ける場合に、第1の端部部材によって紐部材の一方の端部をデッキボードに取り付けた後、第2の端部部材の第2の係合部を第1の端部部材の第1の係合部に係合させておけば、紐部材の一方の端部がデッキボードに取り付けられ、紐部材の他方の端部が荷室の床面側に取り付けられていない状態において、紐部材の他方の端部が固定されずに取り扱いにくくなってしまうことが回避される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷室の床面に凹設された荷室収納部に物品を収納したり、荷室収納部に収納された物品を取り出したりするためにデッキボードを開く場合、デッキボードの開閉領域をヒンジ部を軸として回転させて開く作業をすることで、所定の角度に開いた状態を保持することができ、デッキボードを開く作業をするだけでデッキボードを所定の角度に開いた状態に保持することを簡易な構成で実現できる。
【0015】
また、第1の取付部が、開閉領域の回転方向に直交する方向において第2の取付部よりもデッキボードの内側に設けられているものにおいては、開閉領域を閉じる際に、紐部材がデッキボードの内側に垂れていくことになり、開閉領域を閉じた状態にてデッキボードの外側に紐部材が飛び出てしまうことを回避できる。
【0016】
また、荷室収納部を跨いで荷室の床面に取り付けられたブラケットを有し、第2の取付部がブラケットに設けられているものにおいては、デッキボードが強度的に弱い材質のものであったり、デッキボードの大きさが大きなものであったりしても、ブラケットによってある程度の強度を持たせることができる。
【0017】
また、紐部材の一方の端部に取り付けられるとともに、第1の係合部を具備する第1の端部部材と、紐部材の他方の端部に取り付けられるとともに、第1の係合部に係合可能な第2の係合部を具備する第2の端部部材とを有し、紐部材の一方の端部が第1の端部部材を介して第1の取付部に取り付けられ、紐部材の他方の端部が第2の端部部材を介して第2の取付部に取り付けられるものにおいては、第1の端部部材によって紐部材の一方の端部をデッキボードに取り付けておき、その後、第2の端部部材によって紐部材の他方の端部を荷室の床面側に取り付ける場合に、第1の端部部材によって紐部材の一方の端部をデッキボードに取り付けた後、第2の端部部材の第2の係合部を第1の端部部材の第1の係合部に係合させておけば、紐部材の一方の端部がデッキボードに取り付けられ、紐部材の他方の端部が荷室の床面側に取り付けられていない状態において、紐部材の他方の端部が固定されずに取り扱いにくくなってしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の収納構造の実施の一形態を示す外観斜視図であり、(a)はデッキボードを閉じた状態を示す図、(b)はデッキボードを開いた状態を示す図である。
【
図2】
図1に示した収納構造からトレイを取り外した状態を示す外観斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2に示したフックの詳細な形状を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図、(c)は(a)に示した矢印B方向から見た側面図、(d)は固定紐が取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図4】
図1及び
図2に示したフックの詳細な形状を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図、(c)は(a)に示した矢印B方向から見た側面図、(d)は固定紐が取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図5】
図1及び
図2に示した収納構造において2つのフックを用いて固定紐の両端を固定する方法を説明するための図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図である。
【
図6】
図1及び
図2に示した収納構造の使用方法及びその際の作用を説明するための図である。
【
図7】
図1及び
図2に示した収納構造においてデッキボードを閉じる際の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の収納構造の実施の一形態を示す外観斜視図であり、(a)はデッキボードを閉じた状態を示す図、(b)はデッキボードを開いた状態を示す図である。
図2は、
図1に示した収納構造からトレイ40を取り外した状態を示す外観斜視図である。
【0021】
本形態による収納構造は
図1及び
図2に示すように、荷室収納部20上にデッキボード10が搭載されて構成されている。
【0022】
荷室収納部20は、車両の後部に設けられた荷室の床面30に凹設されており、上面が開口した形状となっている。
【0023】
デッキボード10は、床面30上に荷室収納部20を覆って設置されている。デッキボード10は、開閉領域11aと閉鎖領域11bとがヒンジ部12を介して連接して構成されており、それにより、開閉領域11aと閉鎖領域11bとは、荷室収納部20の互いの異なる領域を覆っている。ヒンジ部12は、蝶番等によって開閉領域11aを閉鎖領域11bに対して回転可能としており、それにより、開閉領域11aは、ヒンジ部12を軸として回転することで荷室収納部20を開閉自在に覆っている。開閉領域11aには、その上面に、開閉領域11aを開く際に摘まむ引っ張り紐15が取り付けられているとともに、その下面に2つの凹部14が設けられている。また、開閉領域11aには、その下面に、開閉領域11aを所定の角度だけ開いた状態に保持するための紐部材となる固定紐50の一方の端部が取り付けられる第1の取付部13が設けられている。
【0024】
荷室収納部20は、開閉領域11aが閉じている場合に対向する領域にトレイ40が載置されている。トレイ40は、物品を収納するための収納穴41a,41bが設けられ、収納穴41aには、収納した物品を固定するための、バックル43を有するベルト42が取り付けられている。開閉領域11aに設けられた凹部14は、開閉領域11aが閉じている場合にバックル43に対向する領域に設けられており、それにより、開閉領域11aが閉じられた場合にバックル43が凹部14に入り込み、バックル43が開閉領域11aの下面に接触してしまうことが回避される構成となっている。また、トレイ40には、トレイ40が荷室収納部20上に載置された場合に、後述するブラケット80aの取付部82に対向する領域に表出孔44が設けられている。
【0025】
床面30の荷室収納部20が設けられた領域には、荷室収納部20を跨ぐように2本のブラケット80a,80bが橋渡しされており、固定ビス81a,81bによって床面30に固定されている。トレイ40は、ブラケット80a,80b上に搭載され、ビス等によってブラケット80a,80bに固定されている。ブラケット80aには、固定紐50の他方の端部が取り付けられる第2の取付部82が設けられている。そして、上述したようにトレイ40の取付部82に対向する領域に表出孔44が設けられていることで、取付部82が表出孔44を介して表出している。
【0026】
固定紐50は、上述したように、開閉領域11aを所定の角度だけ開いた状態に保持するためのものであって、例えばナイロン等の伸縮性を有する材料から構成されている。固定紐50の一方の端部には、第1の端部部材となるフック60が取り付けられており、固定紐50の一方の端部はフック60を介して開閉領域11aの取付部13に取り付けられている。固定紐50の他方の端部には、第2の端部部材となるフック70が取り付けられており、固定紐50の他方の端部はフック70を介してブラケット80aの取付部82に取り付けられている。
【0027】
上記のように構成された収納構造においては、デッキボード10のうち開閉領域11aをヒンジ部12を軸として回転させることで、トレイ40の収納穴41a,41bに物品を収納したり、トレイ40を取り外して荷室収納部20に物品を直接収納したりすることができ、さらに、収納した物品を取り出したりすることができる。その際、固定紐50の長さを、開閉領域11aが90度以上180度未満の所定の角度だけ開いた際の取付部13と取付部82との間の距離とすることで、開閉領域11aを開いた状態に保持することができる。その詳細は後述する。
【0028】
図3は、
図1及び
図2に示したフック60の詳細な形状を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図、(c)は(a)に示した矢印B方向から見た側面図、(d)は固定紐50が取り付けられた状態を示す正面図である。
【0029】
図1及び
図2に示したフック60は、例えばPOM(polyacetal:ポリアセタール)等の樹脂からなり、
図3に示すように、ベース61に2つの固定孔62及び1つの係合孔63が形成されるとともに、紐取出部64が設けられて構成されている。固定孔62は、ベース61の中央部分を対称軸として左右対称の位置にそれぞれベース61を表裏貫通して形成されている。係合孔63は、本願発明にて第1の係合部となるものであって、ベース61を表裏貫通して形成されている。紐取出部64は、固定紐50が挿入可能な穴部を有しており、ワッシャーを通して玉結びされた固定紐50の一方の端部がこの穴部に挿入され、インサート成型されることで、
図3(d)に示すように、固定紐50の一方の端部がフック60に取り付けられる。
【0030】
上記のように構成されたフック60は、上述したようにして紐取出部64に固定紐50の一方の端部が取り付けられた状態で、デッキボード10の開閉領域11aの取付部13に、固定孔62に挿入されたリベットによって取り付けられる。
【0031】
図4は、
図1及び
図2に示したフック70の詳細な形状を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図、(c)は(a)に示した矢印B方向から見た側面図、(d)は固定紐50が取り付けられた状態を示す正面図である。
【0032】
図1及び
図2に示したフック70は、例えばPOM等の樹脂からなり、
図4に示すように、ベース71に固定孔72が形成されるとともに、係合ピン73と紐取出部75と2つの固定爪74とが設けられて構成されている。固定孔72は、ベース71を表裏貫通して形成されている。係合ピン73は、本願発明にて第2の係合部となるものであって、ベース71の表面から煙突状に突出して設けられている。固定爪74は、かえし部を有し、ベース71の表面から突出して設けられている。紐取出部75は、固定紐50が挿入可能な穴部を有しており、ワッシャーを通して玉結びされた固定紐50の他方の端部がこの穴部に挿入され、インサート成型されることで、
図4(d)に示すように、固定紐50の他方の端部がフック70に取り付けられる。
【0033】
上記のように構成されたフック70は、上述したようにして紐取出部75に固定紐50の他方の端部が取り付けられた状態で、ブラケット80aの取付部82に、固定孔72に挿入されたボルトによって取り付けられる。その際、固定爪74もブラケット80aに係合することで、フック70がブラケット80aに固定される。
【0034】
以下に、上記のように構成された収納構造の車両への取付方法について説明する。
【0035】
上述した収納構造を車両に取り付ける場合は、取付対象となる車両の後部に設けられた荷室の床面30に、この床面30に凹設された荷室収納部20を覆うようにしてデッキボード10を取り付けることになる。
【0036】
まず、固定紐50の一方の端部にワッシャーを通して玉結びし、フック60の紐取出部64に挿入してインサート成型するとともに、固定紐50の他方の端部にワッシャーを通して玉結びし、フック70の紐取出部75に挿入してインサート成型する。
【0037】
次に、固定紐50の一方の端部が取り付けられたフック60を、デッキボード10の開閉領域11aの取付部13に、固定孔62に挿入されたリベットによって取り付ける。
【0038】
その後、固定紐50の一方の端部が取り付けられたデッキボード10を、車両を組み立てる工場等に納入し、固定紐50の他方の端部をブラケット80aの取付部82に取り付けることになる。しかしながらその際、固定紐50は一方の端部はフック60によってデッキボード10に取り付けられることで固定されているものの、フック70が取り付けられた他方の端部が固定されておらず、取り扱いにくくなってしまう虞がある。
【0039】
図5は、
図1及び
図2に示した収納構造において2つのフック60,70を用いて固定紐50の両端を固定する方法を説明するための図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示した矢印A方向から見た側面図である。なお、
図5(b)においては、固定紐50の図示を省略している。
【0040】
固定紐50の一方の端部が取り付けられたデッキボード10を、車両を組み立てる工場等に納入し、固定紐50の他方の端部をブラケット80aの取付部82に取り付けるというように、フック60によって固定紐50の一方の端部をデッキボード10に取り付けておき、その後、フック70によって固定紐50の他方の端部を荷室の床面30側に取り付ける場合、フック60によって固定紐50の一方の端部をデッキボード10に取り付けた後、
図5に示すように、固定紐50の他方の端部に取り付けられたフック70の係合ピン73をフック60の係合孔63に挿入することで係合ピン73を係合孔63に係合させておく。それにより、固定紐50の一方の端部がフック60によってデッキボード10に取り付けられ、固定紐50の他方の端部が荷室の床面30側に取り付けられていない状態において、固定紐50の他方の端部が固定されずに取り扱いにくくなってしまうことを回避できる。
【0041】
その後、固定紐50の他方の端部が取り付けられたフック70を、ブラケット80aの取付部82に、固定孔72に挿入されたボルトによって取り付ける。その際、固定爪74もブラケット80aに係合させることで、フック70をブラケット80aに固定する。なお、トレイ40が荷室収納部20上に載置された状態においても、トレイ40に設けられた表出孔44を介して取付部82が表出しているため、フック70を取付部82に取り付けることができる。その際、フック70を取付部82に取り付けた後、表出孔44を専用のキャップ等で覆ってもよい。
【0042】
このようにして
図1及び
図2に示した収納構造を車両に取り付けることになる。
【0043】
以下に、上記のようにして車両に取り付けられた収納構造の使用方法及びその際の作用について説明する。
【0044】
図6は、
図1及び
図2に示した収納構造の使用方法及びその際の作用を説明するための図であり、側方から見た図である。
【0045】
図1及び
図2に示した収納構造において、デッキボード10の開閉領域11aが開かれていない状態においては、
図6(a)に示すように荷室収納部20がデッキボード10によって覆われている。その際、上述したように、荷室収納部20に載置されたトレイ40に、収納された物品を固定するためのベルト42に取り付けられているが、開閉領域11aには、開閉領域11aが閉じている場合にベルト42のバックル43に対向する領域に凹部14が設けられているため、ベルト42によって固定した物品によってバックル43が開閉領域11a側に多少盛り上がったとしても、バックル43が凹部14に入り込み、バックル43が開閉領域11aの下面に接触して開閉領域11aが閉まらなくなってしまうことが回避される。
【0046】
デッキボード10を開いて、トレイ40の収納穴41a,41bに物品を収納したり、トレイ40を取り外して荷室収納部20に物品を直接収納したり、あるいは、収納した物品を取り出したりする場合は、デッキボード10の開閉領域11aに取り付けられた引っ張り紐15を摘まんで開閉領域11aを上方に持ち上げるようにすると、
図6(b)に示すように、開閉領域11aがヒンジ部12を軸として回転することで開いていく。なお、トレイ40を取り外す場合は、上述したようにしてブラケット80aの取付部82にボルトと固定爪74によって取り付けられたフック70を一旦取り外し、固定紐50の一端がブラケット80aから取り外された状態として行うことになる。
【0047】
開閉領域11aがヒンジ部12を軸として回転して開いていき、開閉領域11aが回転して開いた角度が所定の角度になると、
図6(c)に示すように、固定紐50が伸びきって開閉領域11aがそれ以上開かなくなる。この際の開閉領域11aの開いた角度は、固定紐50の一方の端部がフック60を介して開閉領域11aの取付部13に取り付けられ、固定紐50の他方の端部がフック70を介してブラケット80aの取付部82に取り付けられていることにより、固定紐50の長さに応じたものとなる。そのため、固定紐50の長さが、開閉領域11aが90度以上180度未満の所定の角度だけ開いた際の取付部13と取付部82との間の距離であることで、開閉領域11aが90度以上180度未満の所定の角度だけ開いた状態で開閉領域11aがそれ以上開かなくなる。この状態は、開閉領域11aが90度以上180度未満の所定の角度だけ開いたものであるため、開閉領域11aが、
図6(c)中矢印A方向で示す重力と、
図6(c)中矢印B方向で示す固定紐50の張力とによって自立した状態となる。なお、開閉領域11aが開く所定の角度は、90度以上180度未満であれば、車両の荷室の空間に応じて適宜設定することができる。例えば、座席シートの配置やタイヤハウスによる出っ張りの位置等を考慮し、これらに開閉領域11aが当接しないような角度に設定すればよい。それにより、開閉領域11aを開いた状態とした際にデッキボード10に傷がついてしまうことを回避できる。
【0048】
このように、デッキボード10を開いて、トレイ40の収納穴41a,41bに物品を収納したり、トレイ40を取り外して荷室収納部20に物品を直接収納したり、あるいは、収納した物品を取り出したりするためにデッキボード10を開く場合、デッキボード10の開閉領域11aをヒンジ部12を軸として回転させて開く作業をするだけで、その後、デッキボード10を手等で支えることなく所定の角度に開いた状態に保持することができるとともに、デッキボード10の過開きを防止することができる。また、固定紐50が、伸縮性を有する材料から構成されていることで、デッキボード10の開閉領域11aが所定の角度に開いた状態に保持された状態において、開閉領域11aに、開閉領域11aが開く方向に外力がかかったとしても、デッキボード10が破損してしまうことが回避される。
【0049】
上記のようにしてデッキボード10を開いて、トレイ40の収納穴41a,41bに物品を収納したり、トレイ40を取り外して荷室収納部20に物品を直接収納したり、あるいは、収納した物品を取り出したりした後、開閉領域11aをヒンジ部12を軸として回転させて閉じることで、荷室収納部20をデッキボード10で再び覆うことができる。
【0050】
図7は、
図1及び
図2に示した収納構造においてデッキボード10を閉じる際の作用を説明するための図である。
【0051】
上述したように、固定紐50の一方の端部はフック60を介してデッキボード10の開閉領域11aの取付部13に取り付けられており、固定紐50の他方の端部はフック70を介してブラケット80aの取付部82に取り付けられている。ここで、
図7(a)に示すように、開閉領域11aの取付部13と開閉領域11aの回転方向に直交する方向における開閉領域11aの一方の端辺との間の距離をX1とし、ブラケット80aの取付部82と開閉領域11aの回転方向に直交する方向における荷室収納部20の一方の端辺との間の距離をX2とした場合、距離X1が距離X2よりも長くなっている。開閉領域11aの回転方向に直交する方向における開閉領域11aの一方の端辺と、開閉領域11aの回転方向に直交する方向における荷室収納部20の一方の端辺とは、開閉領域11aが閉じている場合にほぼ重なるものであることから、開閉領域11aの取付部13は、開閉領域11aの回転方向に直交する方向において、ブラケット80aの取付部82よりもデッキボード10の内側に設けられていることになる。
【0052】
それにより、
図7(b)に示すように、開閉領域11aを閉じる際に、固定紐50がデッキボード10の内側に垂れていくことになり、開閉領域11aを閉じた状態にてデッキボード10の外側に固定紐50が飛び出てしまうことを回避できる。
【0053】
なお、本形態においては、荷室収納部20に載置されてブラケット80a,80bに取り付けられるトレイ40に表出孔44を設けることで、トレイ40が取り付けられた場合でも、ブラケット80aに固定紐50の一端をフック70によって固定可能としているが、トレイ40に、トレイ40が荷室収納部20上に載置された場合に取付部82に対向する領域に取付部82が表出するような切り欠きを設けた構成としてもよい。その場合、トレイ40を取り外す場合に、トレイ40に表出孔44を設けた構成のようにブラケット80aの取付部82に取り付けられたフック70を一旦取り外す必要がなくなる。
【0054】
また、本形態においては、荷室収納部20を跨ぐように2本のブラケット80a,80bが橋渡しされ、このブラケット80a,80b上にトレイ40が搭載され、トレイ40の収納穴41a,41bに物品を収納したり、トレイ40を取り外して荷室収納部20に物品を直接収納したりすることができるものを例に挙げて説明したが、トレイ40を有さない構成であってもよいし、ブラケット80a,80bを有さない構成であってもよい。ただし、荷室収納部20を跨ぐように2本のブラケット80a,80bが橋渡しされていれば、デッキボード10が強度的に弱い材質のものであったり、デッキボード10の大きさが大きなものであったりしても、ブラケット80a,80bによってある程度の強度を持たせることができる。特に、ブラケット80a,80bが、金属等の強度が高い材料からなるものであれば、強度を向上させる面で有効なものとなる。なお、ブラケット80a,80bを有さない構成である場合でも、荷室の床面30側の領域のうち開閉領域11aが閉じている場合に開閉領域11aに対向する領域に、固定紐50の他方の端部を取り付ける取付部を設けることになる。
【符号の説明】
【0055】
10 デッキボード
11a 開閉領域
11b 閉鎖領域
12 ヒンジ部
13,82 取付部
14 凹部
15 引っ張り紐
20 荷室収納部
30 床面
40 トレイ
41a,41b 収納穴
42 ベルト
43 バックル
44 表出孔
50 固定紐
60,70 フック
61,71 ベース
62,72 固定孔
63 係合孔
64,75 紐取出部
73 係合ピン
74 固定爪
80a,80b ブラケット
81a,81b 固定ビス