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特許7396972可搬型放射線撮影装置、回診車撮影システム及び筐体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】可搬型放射線撮影装置、回診車撮影システム及び筐体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20231205BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/00 300W
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020151719
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2021051069
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019168036
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 順一朗
(72)【発明者】
【氏名】角 誠
(72)【発明者】
【氏名】石本 一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 好典
(72)【発明者】
【氏名】田辺 尚幸
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-230000(JP,A)
【文献】特開2015-027416(JP,A)
【文献】特開2018-081040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部を収納する筐体と、を備え、
前記筐体は、
シート状の長繊維及び硬化した樹脂からなる第一繊維強化樹脂層を少なくとも一層有する第一層と、
前記長繊維よりも短い短繊維及び硬化した樹脂からなる第二繊維強化樹脂層を少なくとも一層有するとともに前記第一層に積層された第二層と、
前記放射線が入射する放射線入射面の周縁部から延設された側面部と、を備え、
前記側面部は、前記第一層と前記第二層が積層されており、前記第二層が前記側面部における外側の表層部をなしていることを特徴とする可搬型放射線撮影装置。
【請求項2】
前記第一層は、前記第一繊維強化樹脂層の少なくとも一方の面に積層された発泡層を有している請求項1に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項3】
前記筐体は、外側の表層部の少なくとも一部に、抗菌剤を含んでいる請求項1又は請求項2に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項4】
前記抗菌剤は、薬剤耐性菌の増殖を防止する効果を有している請求項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項5】
前記抗菌剤は、少なくともメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の増殖を防止する効果を有している請求項又は請求項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項6】
前記抗菌剤は、少なくともウイルスの増殖を防止する効果を有している請求項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、板状の基板と、前記基板の表面に二次元的に分布するように形成された複数の半導体素子と、を有するセンサーパネルを備えており、
前記筐体は、
前記センサーパネルにおける前記半導体素子が形成された素子形成面と対向するとともに当該素子形成面と平行に広がる第一部位を有する第一部材と、
前記センサーパネルにおける前記素子形成面と反対側の面と対向するとともに当該反対側の面と平行に広がる第二部位を有する第二部材と、を有している請求項1から請求項のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項8】
前記画像生成部は、板状の基板と、前記基板の表面に二次元的に分布するように形成された複数の半導体素子と、を有するセンサーパネルを有しており、
前記筐体は、
前記センサーパネルにおける前記半導体素子が形成された素子形成面と対向するとともに当該素子形成面と平行に広がる第一部位、前記センサーパネルにおける前記素子形成面と反対側の面と対向するとともに当該反対側の面と平行に広がる第二部位、及び前記第一部位の両端と前記第二部位の両端とをそれぞれつなぐ一対の前記側面部によって筒状に形成された第一部材と、
前記第一部材の開口部を閉塞する第二部材と、を有している請求項1から請求項のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項9】
前記筐体は、少なくとも前記第一部位における外側の表層部に、抗菌剤を含んでいる請求項又は請求項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項10】
前記筐体は、前記第一部材と前記第二部材との間に防水部材を有している請求項から請求項のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項11】
前記筐体は、外側表面に凹凸が形成されている請求項1から請求項1のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項12】
前記筐体は、
前記第一部位の平面視形状が矩形のパネル状をしており、
四隅の少なくとも一つに保護部材が設けられている請求項から請求項1のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項13】
前記画像生成部は、前記センサーパネルに接続された電子部品を有しており、
前記筐体は、前記電子部品を操作するための操作部を有している請求項から請求項1のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項14】
前記電子部品は、他の装置と有線接続するための接続部を有しており、
前記筐体は、前記接続部と対向する箇所に開口部を有している請求項1に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項15】
前記第二層は、相対的に厚い部位と、相対的に薄い部位と、を有している請求項1から請求項1のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置。
【請求項16】
移動型の放射線照射装置である回診車と、
前記回診車とともに用いられ、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線撮影装置と、を含む回診車撮影システムであって、
前記放射線撮影装置は、請求項1から請求項1のいずれか一項に記載の可搬型放射線撮影装置である回診車撮影システム。
【請求項17】
シート状の長繊維に液状の熱硬化性樹脂を含侵させた少なくとも一枚のプリプレグと、
前記長繊維よりも短い短繊維及び液状の熱硬化性樹脂の混合物がシート状に形成されてなる少なくとも一枚の繊維樹脂複合物と、を前記繊維樹脂複合物が筐体の外側の表層部となるよう、型の中に重ねて配置する配置工程と、
積層された前記プリプレグ及び前記繊維樹脂複合物を加圧しながら加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる成形工程と、を有し、
前記成形工程は、前記筐体における放射線が入射する放射線入射面と、前記放射線入射面の周縁部から延設される側面部を成形する筐体の製造方法。
【請求項18】
前記配置工程と前記成形工程との間に、加熱する前の前記プリプレグ又は前記繊維樹脂複合物の表面に抗菌剤を散布する付加工程を有する請求項1に記載の筐体の製造方法。
【請求項19】
前記配置工程と前記成形工程との間に、前記プリプレグ又は前記繊維樹脂複合物の表面に、抗菌剤を含有させたシートを重ねる付加工程を有する請求項1に記載の筐体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型放射線撮影装置、回診車撮影システム及び筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パネル状をした可搬型の放射線撮影装置(以下可搬型放射線撮影装置)は、撮影の度に撮影場所へと持ち運ばれることが多い。このため、可搬型放射線撮影装置には、持ち運びをし易くするため、より一層の軽量化が求められている。
また、可搬型放射線撮影装置は、例えば撮影時にベッドに横たわる被検者の下に敷かれたり、準備の最中に誤ってぶつかってしまったり、比較的大きな荷重や衝撃を受けることがある。このため、可搬型放射線撮影装置には、堅牢さも求められる。
可搬型放射線撮影装置の軽さと堅牢さを両立させるため、従来、例えば特許文献1に記載されているように、筐体の少なくとも一部の材料にシート状に織られた長繊維を含む炭素繊維強化樹脂(CFRP)が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-227447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、長繊維の炭素繊維強化樹脂には、加工性が低いという問題があった。具体的には、長繊維の炭素繊維強化樹脂は、筐体の厚さを部位ごと変えるといった加工には不向きであり、従来は、筐体を製造する際に、厚く形成する必要のない部位の厚さも、厚く形成したい部位に合わせなければならなかった。
筐体の寸法は、日本工業規格(JIS)等で規定されているため、厚く形成する必要のない部位まで厚く形成しなければならないということは、その分だけ筐体内のスペースが狭められてしまうことを意味する。このことは、筐体内に様々な電子部品を収納する上で大きな制約となってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、繊維強化樹脂で形成された筐体を備える可搬型放射線撮影装置において、筐体の軽さ及び堅牢さを損なうことなく、筐体の加工性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る可搬型放射線撮影装置は、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部を収納する筐体と、を備え、
前記筐体は、
シート状の長繊維及び硬化した樹脂からなる第一繊維強化樹脂層を少なくとも一層有する第一層と、
前記長繊維よりも短い短繊維及び硬化した樹脂からなる第二繊維強化樹脂層を少なくとも一層有するとともに前記第一層に積層された第二層と、
前記放射線が入射する放射線入射面の周縁部から延設された側面部と、を備え、
前記側面部は、前記第一層と前記第二層が積層されており、前記第二層が前記側面部における外側の表層部をなしていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る回診車撮影システムは、
移動型の放射線照射装置である回診車と、
前記回診車とともに用いられ、受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線撮影装置と、を含む回診車撮影システムであって、
前記放射線撮影装置は、上記可搬型放射線撮影装置である。
【0008】
また、本発明に係る筐体の製造方法は、
シート状の長繊維に液状の熱硬化性樹脂を含侵させた少なくとも一枚のプリプレグと、
前記長繊維よりも短い短繊維及び液状の熱硬化性樹脂の混合物がシート状に形成されてなる少なくとも一枚の繊維樹脂複合物と、を前記繊維樹脂複合物が筐体の外側の表層部となるよう、型の中に重ねて配置する配置工程と、
積層された前記プリプレグ及び前記繊維樹脂複合物を加圧しながら加熱することにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる成形工程と、を有し、
前記成形工程は、前記筐体における放射線が入射する放射線入射面と、前記放射線入射面の周縁部から延設される側面部を成形する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体の軽さ及び堅牢さを損なうことなく、筐体の加工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る可搬型放射線撮影装置の分解斜視図である。
図2図1の可搬型放射線撮影装置の隅部を示す斜視図である。
図3図1の可搬型放射線撮影装置の断面図である。
図4】(a)は図3の部分拡大図であり、(b)はその変形例である。
図5図1の可搬型放射線撮影装置が備える筐体の一部を示す斜視図である。
図6】抗菌加工を施した場合における図3の部分拡大図である。
図7】本発明の実施形態に係る回診車撮影システムの側面図である。
図8図1の可搬型放射線撮影装置が備える筐体の製造工程を表す図である。
図9】抗菌加工を施す場合の製造工程の一部を表す図である。
図10】抗菌加工を施す場合の製造工程の一部を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0012】
<可搬型放射線撮影装置の概略構成>
まず、本実施形態に係る可搬型放射線撮影装置(以下、撮影装置100A)の概略構成について説明する。図1は撮影装置100Aの分解斜視図、図2は撮影装置100Aの隅部を示す斜視図である。
【0013】
撮影装置100Aは、図1に示すように、画像生成部1と、筐体2と、を備えている。
【0014】
(画像生成部)
画像生成部1は、センサーパネル11と、電子部品12と、を備えている。
【0015】
センサーパネル11は、基板111と、複数の半導体素子112と、を有している。
また、センサーパネル11は、各半導体素子112に近接して設けられる図示しない複数のスイッチ素子や、各スイッチ素子に接続される図示しない走査線及び信号線、各半導体素子に接続されるバイアス線、等を備えている。
本実施形態に係る基板111の正面視形状は矩形の板状となっている。
複数の半導体素子112は、基板111の表面に二次元的に分布するように形成されている。
本実施形態に係る半導体素子112は、マトリクス(行列状)に配列されている。
以下、センサーパネル11における半導体素子が形成された面を素子形成面11aと称する。
【0016】
電子部品12は、センサーパネル11に接続されている。
電子部品12は、半導体素子に電圧を印加するための電源回路121と、各スイッチ素子を制御するための走査回路122と、電荷を画像データとして読み出す読み出し回路123と、画像データを他の装置へ出力するための通信回路124と、各回路121~124を制御する制御回路125、図示しない配線と、を備えている。
各回路121~125は、センサーパネル11の素子形成面11aと反対側の面に配置されている。
以下、センサーパネル11における素子形成面11aと反対側の面を部品搭載面11bと称する。
図示しない配線は、例えばフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuits
)で構成され、素子形成面11aにある走査線、信号線、バイアス線の各端子と、部品搭載面11bにある各回路121~125と、を接続している。
【0017】
通信回路124は、接続部124aを有している。
接続部124aは、他の装置と有線接続するためのもので、例えばコネクターで構成されている。
本実施形態に係る接続部124aは、部品搭載面11bの周縁部に、後述する筐体2の第三部位22と対向するように設けられている。
【0018】
このように構成された画像生成部1は、受けた放射線に応じた放射線画像を生成することが可能となっている。
【0019】
(筐体)
筐体2は、図1に示したように、筐体本体2Aと、蓋体2Bと、を有し、画像生成部1を収納している。
また、本実施形態に係る筐体2は、開口部2aと、操作部2bと、凹部2cと、保護部材3(図2参照)と、を有している。
【0020】
筐体本体2Aは、第一部材をなすもので、第一部位21と、第三部位22と、を有している。
第一部位21は、画像生成部1の素子形成面11aと対向するとともに当該素子形成面11aと平行に広がっている。すなわち、第一部位21の表面が放射線入射面となる。
第三部位22は、第一部位21の周縁部から、蓋体2Bの方向へ向かって延設されている。すなわち、第三部位22の表面が筐体2の側面となる。
【0021】
開口部2aは、画像生成部1の接続部124aと対向する箇所に設けられている。
本実施形態においては、画像生成部1の接続部124aが、部品搭載面11bの周縁部に、第三部位22と対向するように設けられているため、本実施形態に係る開口部2aは、第三部位22に形成されている。
【0022】
操作部2bは、電子部品12を操作するためのもので、画像生成部1の状態を報知する表示部や各種操作スイッチを有するとともに、画像生成部1の制御回路125と接続されている。
本実施形態に係る操作部2bは、第三部位22における開口部2aが形成されている面に設けられている。
なお、操作部2bを、開口部2aが形成されている面とは異なる面又は蓋体2Bに設けるようにしてもよい。
また、筐体2に操作部2bを持たせず、代わりに画像生成部1に操作部を持たせるとともに、筐体2における操作部と対向する箇所に開口部を形成するようにしてもよい。
【0023】
蓋体2Bは、第二部材をなすものである。
また、蓋体2Bは、部品搭載面11bと対向するとともに当該部品搭載面11bと平行に広がる第二部位23を有している。
本実施形態においては、蓋体2B全体が第二部位23に該当する。
なお、筐体本体2Aに第三部位22を持たせず、代わりに蓋体2Bに持たせる(蓋体2Bを第二部位23と第三部位22とで構成する)ようにしてもよい。
【0024】
このように構成された本実施形態に係る筐体2は、第一部位21及び蓋体2Bの平面視形状が矩形のパネル状をしている。
【0025】
なお、筐体2は、素子形成面11aと対向するとともに当該素子形成面11aと平行に広がる第一部位21、部品搭載面11bの面と対向するとともに当該部品搭載面11bと平行に広がる第三部位、及び第一部位の両端と第三部位の両端とをそれぞれつなぐ一対の第二部位によって筒状に形成された第一部材と、第一部材の開口部を閉塞する第二部材と、を有しているものとしてもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る筐体2は、外側表面に凹部2cが形成されている。
本実施形態においては、蓋体2Bにおける、ユーザーが持ち運ぶ際にユーザーの指先が当接することになり得る箇所全体、すなわち、蓋体2Bの輪郭よりも一回り小さい矩形枠状に形成されている。
なお、撮影装置100Aの厚さがJISに規定された厚さを超えないのであれば、凸部を形成するようにしてもよい。
また、こうした凹凸は、筐体本体2Aに形成してもよい。
【0027】
筐体の表面全体が平らであると、ユーザーが持ち運ぶ際に手を滑らせて、撮影装置100Aを落下させてしまうことがあった。しかし、このように筐体2に凹部2c又は凸部を形成することにより、ユーザーが撮影装置100Aを落下させてしまうリスクを低減することができる。
また、蓋体2Bは筐体の側面(第三部位22)面積が広く、強度が不足しがちとなる。しかし、蓋体2Bに凹部2c又は凸部を形成することにより、蓋体2Bの強度を高めることもできる。
【0028】
また、本実施形態に係る撮影装置100Aは、図2に示すように、筐体2の四隅に保護部材3が設けられている。
本実施形態に係る保護部材3は、例えば金属等で構成されており、筐体本体2Aの各隅部の表面に貼り付けられている。
なお、筐体2に保護部材3を貼り付けるのではなく、筐体2の隅部全体又は隅部の表層部を保護部材3と置き換えてもよい。
また、保護部材3は、四隅全てに設けられている必要はなく、四隅の少なくとも一つに設けられていてもよい。
【0029】
<筐体の詳細構成>
次に、上記撮影装置100Aが備える筐体2の詳細構成(材料、厚さ、抗菌性及び防水性)について説明する。図3は撮影装置100Aの断面図、図4図3の部分拡大図である。
【0030】
(材料)
筐体本体2A及び蓋体2Bは、繊維強化樹脂で形成されている。
本実施形態に係る筐体本体2A及び蓋体2Bは、全体が繊維強化樹脂で形成されたものとなっている。なお、全体を繊維強化樹脂で形成するのではなく、一部を他の材料(例えば金属)で形成するようにしてもよい。
また、筐体本体2A及び蓋体2Bは、図3に示すように、それぞれ第一層L1と、第二
層L2と、を備えている。
【0031】
第一層L1は、シート状の長繊維及び硬化した樹脂からなる第一繊維強化樹脂層L11
少なくとも一層有している。
「シート状」の形態には、例えば織物、編み物、不織布等が含まれる。
また、「織物」には、例えば平織、綾織、朱子織、三軸織等が含まれるが、剛性向上の
観点から、織物とするのが好ましい。
本実施形態に係る長繊維は、炭素繊維となっている。
樹脂は、液状の熱硬化性樹脂が硬化したものである。
また、本実施形態に係る第一層L1は、全体の厚さが概ね均一になっている。
【0032】
また、本実施形態に係る第一層L1は、図4(a)に示すように、第一繊維強化樹脂層
L11の少なくとも一方の面に積層された発泡層L12を有している。
なお、図4(a)には、発泡層L12が第一繊維強化樹脂層L11と一層ずつ交互に積層されたものを例示したが、複数積層された第一繊維強化樹脂層L11に対して一層の発泡層L12を積層するようにしてもよいし、第一層L1を第一繊維強化樹脂層L11のみで構成する
ようにしてもよい。
また、第二層L2と接する層が第一繊維強化樹脂層L11となっていてもよいし、発泡層
L12となっていてもよい。
【0033】
第二層L2は、長繊維よりも短い短繊維及び硬化した樹脂からなる第二繊維強化樹脂層
L21を少なくとも一層有するとともに第一層L1に積層されている。
本実施形態に係る短繊維は、上記長繊維と同様に炭素繊維となっている。すなわち、第一繊維強化樹脂層L11の形成に用いられる長繊維が所定長さで切断(チョップ)されたものとなっている。
この「所定長さ」は、特に限定されるものではないが、成形性の観点から30mm以下とするのが好ましく、剛性向上の観点からは5mm以上とするのが好ましい。
本実施形態における第二層L2は、筐体2における外側の表層部をなしている。すなわ
ち、本実施形態に係る第二層L2は、第一層L1の外側に積層されている。
【0034】
従来の長繊維のみで構成された筐体は、衝撃を受けた場合に繊維が切断されて外側に飛び出し(ささくれとなり)、触れたユーザーや被検者にけがをさせてしまう危険性があった。しかし、本実施形態に係る筐体2は、外側の表層部を、ささくれが生じにくい短繊維からなる第二層L2で構成しているため、筐体が破損した場合であっても、それに触れる
ユーザーや被検者がけがをするリスクを低減することができる。
【0035】
なお、第一層と第二層を、図4(b)に示すように、逆に積層するようにしてもよい。すなわち、第一層を外側の表層部となるようにしてもよい。
その場合には、第一層L1に発泡層L12を備えるようにすることが好ましい。このよう
にすれば、発泡層L12がクッションになるため、ささくれの発生をある程度緩和することができる。
【0036】
また、筐体本体2Aと蓋体2Bとで、外側の表層部となる層を異ならせるようにしてもよい。
すなわち、筐体本体2Aと蓋体2Bのうちの一方の部材は、外側の表層部を第一層L1
として、その内側に第二層L2を積層し、他方の部材は、外側の表層部を第二層L2として、その内側に第一層L1を積層するようにしてもよい。
【0037】
(厚さ)
また、第二層L2は、相対的に厚い部位と、相対的に薄い部位と、を有している。
本実施形態においては、筐体本体2Aにおける第三部位22の厚さが、図3に示したように、第一部位21の厚さよりも厚くなっている。
また、本実施形態に係る筐体本体2Aは、図5に示すように、同じ第三部位22の中に、相対的に厚い部位22aと、相対的に薄い部位22bと、更に有している。
相対的に厚い部位22aは、電子部品の中のより重要性の高い回路を近傍に配置することで、重要性の高い回路を保護する壁体とすることもできるし、蓋体2Bをねじ4で固定
するためのねじ穴2d(図3参照)を形成するための場所とすることもできる。
一方、相対的に薄い部位22bの近傍は、相対的に厚い部位22aの近傍に比べて内側の空間を筐体2の外側表面の方向にむけて広げることができるため、画像生成部1又は他の部品を格納するためのスペースを広くとることができる。
【0038】
短繊維からなる繊維強化樹脂は、複雑な形状の部材を形成する際の加工性が長繊維からなる繊維強化樹脂よりも圧倒的に高い。このため、短繊維からなる第二層を有する本実施形態に係る筐体2は、同一部材の場所ごとの厚さを異ならせる加工を容易に行うことができる。
例えば放射線入射面である第一部位21の表面において、画像生成部1の画像領域の端部に対応した位置に僅かな凹部を設け、目視あるいは触覚で画像領域が認識できるようにしてもよい。
さらに前記凹部にシールや塗装を用いて画像領域を示すマーキングを施してもよい。凹部深さをマーキングの厚みと同じかより大きく加工すれば、マーキングが第一部位21の表面から突出することなく、使用時の摩擦によって剥がれることを防止できる。
【0039】
(抗菌性)
また、筐体2は、図6に示すように、外側の表層部(本実施形態においては第二層L2
)の少なくとも一部に、抗菌剤5を含んでいる。
本実施形態に係る筐体2は、少なくとも第一部位21における外側の表層部(放射線入射面)に、抗菌剤5を含んでいる。
抗菌剤5は、筐体2を形成する樹脂に混錬されて一部が筐体2の表面に露出していてもよいし、筐体2の表面に塗工されていてもよい。また、図6(a)に示すように、筐体2の表層部に直接付着した(めり込んだ)状態となっていてもよいし、図6(b)に示すように、抗菌剤5を含む抗菌層L3が繊維強化樹脂層L11,L21又は発泡層L12の表面に積層された状態となっていてもよい。
【0040】
抗菌剤5は、特に限定されるものではないが、薬剤耐性菌、少なくともメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の増殖を防止する効果を有しているものが好ましい。
また、抗菌剤5は、ウイルスに対しても、増殖を防止する効果を有しているものが好ましい。
具体的には、ゼオライトの表面に銀を担持させた銀系抗菌剤等が挙げられる。
なお、銀を他の無機物質(リン酸塩や、ケイ酸塩、シリカゲル等)に担持させたもの、銀以外の金属(例えば亜鉛、銅等)を無機物質に担持させたもの、酸化チタン等の光触媒作用を利用したもの、有機系抗菌剤等を用いてもよい。
なお、金属を担持させる場合は、複数種類の金属を担持させてもよい。
【0041】
撮影装置100Aは、被検者に直接接触する形で用いられることが多いため、撮影した被検者が病原菌に感染していた場合、病原菌が撮影装置100Aに付着し、撮影装置100Aの表面で増殖してしまう可能性がある。そして、次の撮影で、撮影装置100Aを介して他の被検者に感染させてしまうおそれがある。
特に病棟において、撮影装置100Aが、例えば図7に示したような回診車100Bとともに(移動型の放射線照射装置である回診車撮影システム100の一部として)入院患者の撮影に用いられる場合、感染のおそれが顕著となる。
しかし、このように筐体2を抗菌加工することにより、こうした病原菌の拡散を防止することができる。
【0042】
(防水性)
また、本実施形態に係る筐体2は、図3に示したように、筐体本体2Aと蓋体2Bとの間に防水部材6を有している。
防水部材6は、筐体本体2Aの第三部位22の縁と略等しい矩形枠状に形成されている。
そして、防水部材6は、第三部位22と蓋体2Bの周縁部との間全体を閉塞している。
【0043】
<可搬型放射線撮影装置筐体の製造方法>
次に、上記筐体2の製造方法について説明する。図8は、筐体2を製造する工程を表す図である。
【0044】
本実施形態に係る筐体2の製造方法は、準備工程と、配置工程と、成形工程と、第二配置工程と、第二成形工程と、を有している。
【0045】
初めの準備工程では、シート状の長繊維に液状の熱硬化性樹脂を含侵させたプリプレグPを作製する。
また、この準備工程では、短繊維及び液状の熱硬化性樹脂の混合物がシート状に形成されてなる繊維樹脂複合物C(Sheet Molding Compound:SMC)を製造する。
プリプレグP及び繊維樹脂複合物Cは、筐体本体2A及び蓋体2Bを製造するのに必要な枚数を作製する。
なお、後述する成形工程で熱硬化性樹脂を下型MLの間に圧入するようにしてもよい。
その場合、この準備工程において長繊維に熱硬化性樹脂を含侵させる作業は不要である。
【0046】
プリプレグP及び繊維樹脂複合物Cを製造した後は、配置工程に移る。この配置工程では、少なくとも一枚のプリプレグPと、少なくとも一枚の繊維樹脂複合物Cを、筐体本体2Aと蓋体2Bのうちの一方の部材を成形するための下型MLに重ねて配置する。
なお、図8には、下型MLの上に配置されたプリプレグPの上に、繊維樹脂複合物Cを
重ねた場合を例示したが、下型MLの上に配置された繊維樹脂複合物Cの上に、プリプレ
グPを配置するようにしてもよい。
【0047】
プリプレグP及び繊維樹脂複合物Cを下型MLに配置した後は、成形工程に移る。この
成形工程では、積層されたプリプレグP及び繊維樹脂複合物Cに上型MUを被せ、上型MUと下型MLとでプリプレグP及び繊維樹脂複合物Cを加圧しながら加熱することにより、
熱硬化性樹脂を硬化させる。
こうすることで、プリプレグPが第一層となり、繊維樹脂複合物Cが第二層となる。そして、第一層及び第二層が一体成形されて筐体本体2Aと蓋体2Bのうちの一方の部材が製造される。
【0048】
筐体本体2Aの成形を終えた後、又は筐体本体2Aの成形と並行して、第二配置工程と、第二成形工程と、を行う。
第二配置工程及び第二成形工程は、使用する型MU,MLが、筐体本体2Aと蓋体2Bのうちの他方の部材を成形するための型MU,MLとなっている点以外は上記配置工程及び成形工程と同じである。
この第二配置工程及び第二成形工程を経ることで、筐体本体2Aと蓋体2Bのうちの他方の部材が製造される。
【0049】
なお、筐体2の外側の表層部に抗菌剤5を含ませる場合には、配置工程と成形工程との間に、付加工程を加える。
この付加工程では、例えば図9に示すように、加熱する前のプリプレグP又は繊維樹脂複合物Cの表面に抗菌剤5を散布する。又は、図10に示すように、プリプレグP又は繊維樹脂複合物Cの表面に、抗菌剤5と樹脂を混錬したものを含有させたシートSを重ねる。こうすれば成形時にシートSから繊維樹脂複合物Cの表面に抗菌剤5の一部が移動し、シートSの厚みより抗菌機能を持った抗菌層が厚くなるため、例えば使用時の摩耗でシートSが剥がれても露出した繊維樹脂複合物Cの表面にある抗菌剤5によって抗菌機能が維持され、耐久性が増すこととなる。
【0050】
<効果>
短繊維及び硬化した樹脂からなる第二繊維強化樹脂層L21の重さは、長繊維及び硬化した樹脂からなる第一繊維強化樹脂層L11とほぼ変わらないため、第一繊維強化樹脂層L11を有する第一層L1と、第二繊維強化樹脂層L21を有する第二層L2が積層されてなる本実施形態に係る筐体2は、従来のものと同程度の軽さとすることができる。
また、第一繊維強化樹脂層L11は、加工性が低い反面、高い強度を有する。一方、第二繊維強化樹脂層L21は、第一繊維強化樹脂層L11よりも強度がわずかに落ちる反面、第一繊維強化樹脂層L11よりもはるかに高い加工性の高さを有している。このため、第一層L1を全体の厚さが均一となるように形成し、第二層L2の厚さを部位ごとに変えることにより、本実施形態に係る筐体2を、厚く形成したい部位は厚く、厚く形成する必要のない部位は薄いものとすることができる。
すなわち、筐体2の軽さ及び堅牢さを損なうことなく、筐体2の加工性を向上させることができる。
【0051】
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
100 回診車撮影システム
100A 可搬型放射線撮影装置
1 画像生成部
11 センサーパネル
11a 素子形成面
11b 部品搭載面
111 基板
112 半導体素子
12 電子部品
121 電源回路
122 走査回路
123 読み出し回路
124 通信回路
124a 接続部
125 制御回路
2 筐体
1 第一層
11 第一繊維強化樹脂層
12 発泡層
2 第二層
21 第二繊維強化樹脂層
3 抗菌層
2A 筐体本体
2a 開口部
2b 操作部
2d ねじ穴
21 第一部位
22 第三部位
22a 相対的に厚い部位
22b 相対的に薄い部位
2B 蓋体
2c 凹部
23 第二部位
3 保護部材
4 ねじ
5 抗菌剤
6 防水部材
100B 回診車
C 繊維樹脂複合物
ML 下型
MU 上型
P プリプレグ
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10