(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20231205BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231205BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2020174155
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 心
(72)【発明者】
【氏名】大島 克哉
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-040610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0337402(US,A1)
【文献】特開2013-086641(JP,A)
【文献】特開2011-146340(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017130399(DE,A1)
【文献】米国特許第10611234(US,B1)
【文献】特開2019-031219(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
一対のロッカと、
前記一対のロッカの間に配置されたフロアパネルと、
前記フロアパネルの下部に配置された電池パックと、
前記電池パックを前記一対のロッカに接続するブラケットと、
前記電池パックの下面を覆うアンダーカバーと、
を有し、
前記電池パックが、
トレーと、
前記トレー上に配置されており、前後方向に伸びる仕切り板と、
前記トレー上で前記仕切り板の両側に配置された複数の電池セルと、
を有し、
前記アンダーカバーが、
いずれも前記トレーに対して間隔を開けて前記トレーの下部に配置されている第1部分及び第2部分を有し、
前記第2部分が、前記第1部分よりも上側に変位しており、
前記第2部分が、前記仕切り板の下部に配置されている、
車両。
【請求項2】
前記第2部分と前記トレーの間に、隙間が設けられている請求項1の車両。
【請求項3】
前記第2部分と前記トレーの間に、弾性部材が設けられている請求項1または2の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電池パックを有する車両に関する。
【0002】
特許文献1には、フロアパネルの下部に電池パックを有する車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロアパネルの下部に電池パックを有する車両では、最低地上高(路面から車両底面までの高さ)が低くなり易い。このため、路面上の物体(例えば、石など)が電池パックの下面に衝突し易い。本明細書では、電池パックの下面を覆うアンダーカバーによって、電池パックを好適に保護する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両は、一対のロッカと、前記一対のロッカの間に配置されたフロアパネルと、前記フロアパネルの下部に配置された電池パックと、前記電池パックを前記一対のロッカに接続するブラケットと、前記電池パックの下面を覆うアンダーカバーと、を有する。前記電池パックが、トレーと、前記トレー上に配置されており、前後方向に伸びる仕切り板と、前記トレー上で前記仕切り板の両側に配置された複数の電池セルと、を有する。前記アンダーカバーが、前記トレーに対して間隔を開けて前記トレーの下部に配置されている第1部分及び第2部分を有する。前記第2部分が、前記第1部分よりも上側に変位している。前記第2部分が、前記仕切り板の下部に配置されている。
【0006】
この車両は、電池パックの下面(すなわち、トレーの下面)を覆うアンダーカバーを有している。アンダーカバーによって、路面上の物体が電池パックに直接衝突することが防止される。アンダーカバーは、トレーに対して間隔を開けてトレーの下部に配置されている第1部分及び第2部分を有している。路面上の物体が第1部分または第2部分に衝突すると、アンダーカバーが上向きに撓む。第2部分が第1部分よりも上側に変位しているので、アンダーカバーが上向きに撓むと、第1部分がトレーと接触するよりも前に第2部分がトレーによって支持される。これによって、第1部分がトレーと接触することが防止される。これにより、第1部分からトレーに荷重が伝わることが防止される。また、第2部分からトレーには荷重が伝わるが、第2部分が仕切り板の下部に配置されているので、第2部分からトレーに加わる荷重は仕切り板で受けられる。したがって、トレー上の電池セルに荷重が加わることが抑制される。このように、この車両のアンダーカバーによれば、電池セルに荷重が加わることを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】バッテリパックとその周辺部材の車幅方向に沿う断面図。
【
図4】バッテリパックとその周辺部材の前後方向に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例の車両では、前記第2部分と前記トレーの間に、隙間が設けられていてもよい。
【0009】
この構成によれば、アンダーカバーに上向きに荷重が加わったときに、第2部分がトレーに接触することで第2部分がトレーによって支持される。
【0010】
本明細書が開示する一例の車両では、前記第2部分と前記トレーの間に、弾性部材が設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、アンダーカバーに上向きに荷重が加わったときに、第2部分が弾性部材を介してトレーに支持される。
【0012】
図1に示す実施形態の車両10は、キャビンの床面を構成するフロアパネル14を有している。なお、
図1を含む各図において、矢印FRは車両前側を示し、矢印RHは車両右側を示し、矢印UPは上側を示す。フロアパネル14の左右の両側には、車両10の前後方向に沿って伸びるロッカ12(右ロッカ12aと左ロッカ12b)が配置されている。フロアパネル14は、右ロッカ12aと左ロッカ12bの間に配置されており、右ロッカ12aと左ロッカ12bに接合されている。フロアパネル14の下部に、電池パック30が配置されている。
【0013】
図2に示すように、電池パック30は、トレー32とカバー31を有している。カバー31は、トレー32上に配置されている。電池パック30の内部には、仕切り板33と複数の仕切り板34が設けられている。仕切り板33は、トレー32上に設けられており、前後方向に沿って伸びている。各仕切り板34は、トレー32上に設けられており、車幅方向(左右方向)に沿って伸びている。複数の仕切り板34は、前後方向に間隔を開けて配置されている。仕切り板33、34によって、トレー32上のスペースが、複数の領域35に区画されている。領域35のそれぞれに、電池スタック36が収容されている。なお、
図2では、2つの電池スタック36を図示しており、残りの電池スタック36の図示を省略している。各電池スタック36は、複数の電池セルを積層した積層体であり、電力を蓄えることができる。前後方向に伸びる仕切り板33の両側(左右両側)に、電池スタック36が配置されている。また、左右方向に伸びる仕切り板34の両側(前後両側)に、電池スタック36が配置されている。また、図示していないが、トレー32上には、各電池スタック36の電力を外部に供給する端子台が設けられている。カバー31は、複数の電池スタック36を覆った状態でトレー32に固定されている。
【0014】
図3は、1つの仕切り板34に沿った電池パック30とその周辺部材の断面図を示している。
図3に示すように、電池パック30は、フロアパネル14の下部に配置されている。電池パック30の右側には、右ブラケット16aが設けられている。右ブラケット16aは、ボルト17aによって右ロッカ12aに接続されている。また、右ブラケット16aは、ボルト18aによって電池パック30のトレー32に接続されている。したがって、電池パック30は、右ブラケット16aを介して右ロッカ12aに接続されている。右ブラケット16aは、車両10の衝突時にエネルギーを吸収するエネルギー吸収体として機能する。車両10に対して右側から衝突があった場合には、右ブラケット16aが変形することで衝突エネルギーが吸収され、電池パック30が保護される。電池パック30の左側には、左ブラケット16bが設けられている。左ブラケット16bは、ボルト17bによって左ロッカ12bに接続されている。また、左ブラケット16bは、ボルト18bによって電池パック30のトレー32に接続されている。したがって、電池パック30は、左ブラケット16bを介して左ロッカ12bに接続されている。左ブラケット16bは、車両10の衝突時にエネルギーを吸収するエネルギー吸収体として機能する。車両10に対して左側から衝突があった場合には、左ブラケット16bが変形することで衝突エネルギーが吸収され、電池パック30が保護される。
【0015】
図3に示すように、トレー32は、トレー本体32aとブラケット32bを有している。トレー本体32aの底板の上に、電池スタック36、仕切り板33、34が配置されている。ブラケット32bは、トレー本体32aの下面に接合されている。ブラケット32bは、仕切り板34の下部に配置されている。仕切り板34の下部以外の位置には、ブラケット32bは設けられていない。
【0016】
図3、4に示すように、トレー32の下部に、アンダーカバー40が配置されている。アンダーカバー40は、金属によって構成されている。アンダーカバー40は、電池パック30を路面上の物体から保護するために設けられている。
図3に示すように、アンダーカバー40は、仕切り板34の下部において、ボルト46によってブラケット32bに締結されている。これによって、アンダーカバー40は、トレー32に固定されている。
図3に示すように、アンダーカバー40は、ボルト44によって、右ブラケット16a及び左ブラケット16bに締結されている。
図3、4に示すように、ボルト46で締結されている位置を除いて、アンダーカバー40とトレー32の間には間隔が設けられている。
【0017】
図4に示すように、アンダーカバー40は、第1部分41と第2部分42を有している。第1部分41は略水平に伸びている。第2部分42は、第1部分41よりも上側(すなわち、トレー32側)に変位している。このように、第2部分42が第1部分41よりも上側に変位しているので、第2部分42とトレー32の間の間隔C2は、第1部分41とトレー32の間の間隔C1よりも狭い。第2部分42が第1部分41よりも上側に変位しているので、アンダーカバー40の下面には第2部分42の位置で凹部が形成されている。
図5に示すように、アンダーカバー40の大部分は第1部分41によって構成されている。各第2部分42は、車幅方向におけるアンダーカバー40の中央に配置されている。複数の第2部分42が、アンダーカバー40の中心線に沿って、車両10の前後方向に間隔を開けて配列されている。
図4に示すように、各第2部分42は、仕切り板33の下部に配置されている。第2部分42とトレー32の間の間隔C2は、アンダーカバー40が弾性変形可能な範囲内で上側に撓んだときに、第2部分42がトレー32に接触する程度に狭い間隔に設定されている。
図5に示すように、第2部分42は、ボルト46から離れた位置に設けられている。
【0018】
車両10の走行中に、路面上の物体(例えば、石など)が車体に衝突する場合がある。車両10では、電池パック30の下面がアンダーカバー40によって覆われているので、路面上の物体はアンダーカバー40に衝突する。これによって、電池パック30に物体が衝突することが防止される。上述したように、アンダーカバー40とトレー32の間には、ボルト46が設けられている箇所を除いて、間隔が設けられている。このため、物体の衝突によってアンダーカバー40に上向きに荷重が加わると、アンダーカバー40が上向きに撓む。上述したように、第2部分42とトレー32の間の間隔C2は、第1部分41とトレー32の間の間隔C1よりも狭い。また、
図5に示すように、第2部分42はボルト46から離れた位置に配置されており、アンダーカバー40が上向きに撓んだときに第2部分42は上向きに移動し易い。このため、荷重によってアンダーカバー40が上向きに撓むと、第2部分42がトレー32の下面に接触する。その結果、第2部分42がトレー32によって支持され、アンダーカバー40の変形が抑制される。このため、アンダーカバー40が上向きに撓んでも、第1部分41がトレー32に接触することが防止される。また、第2部分42は、トレー32上の仕切り板33の下部に配置されている。したがって、アンダーカバー40が上向きに撓んだときに、第2部分42は仕切り板33の下部の位置でトレー32に接触する。このため、第2部分42からトレー32に加わる荷重が、耐久性が高い仕切り板33によって受けられる。これによって、アンダーカバー40から電池スタック36(すなわち、電池セル)に荷重が加わることが抑制される。このように、車両10では、アンダーカバー40が上向きに撓んだ場合に、電池スタック36の下部の位置でアンダーカバー40(すなわち、第1部分41)がトレー32に接触することが防止される。これによって、電池スタック36に加わる荷重が軽減され、電池パック30を好適に保護することができる。
【0019】
なお、上述した実施形態では、第2部分42とトレー32の間に隙間(空間)が設けられていた。しかしながら、
図6に示すように、第2部分42とトレー32の間に弾性部材39が挟まれていてもよい。この構成でも、第2部分42が弾性部材39を介してトレー32に支持されるので、アンダーカバー40の撓みを抑制することができる。また、他の例では、第2部分42とトレー32のいずれか一方にのみ接するように間隔C2に弾性部材39が設けられていてもよい。
【0020】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0021】
10:車両
12:ロッカ
14:フロアパネル
16:ブラケット
30:電池パック
31:カバー
32:トレー
33:仕切り板
34:仕切り板
36:電池スタック
40:アンダーカバー
41:第1部分
42:第2部分