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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】複層プレキャスト舗装道路
(51)【国際特許分類】
   E01C 5/06 20060101AFI20231205BHJP
   E01C 5/20 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
E01C5/06
E01C5/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020500908
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2020000261
(87)【国際公開番号】W WO2020194987
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2019063082
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】福本 勝司
(72)【発明者】
【氏名】光谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】松下 陽哉
(72)【発明者】
【氏名】中齊 栞
(72)【発明者】
【氏名】三津田 起範
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-007402(JP,A)
【文献】実開平06-053606(JP,U)
【文献】特開平09-316805(JP,A)
【文献】特開平10-325102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 5/06
E01C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路盤の上に敷設されたプレキャスト製の複数の下層舗装盤と、該下層舗装盤の上面に敷設されたプレキャスト製の複数の上層舗装盤と、を備える2層プレキャスト舗装道路であって、
前記下層舗装盤の上に前記上層舗装盤を千鳥状に配置するとともに、
前記下層舗装盤の上面と前記上層舗装盤の下面に、カップ状の受け部材をそれぞれ埋め込んで固定し、継手部材をその上半部と下半部が前記上面と下面の受け部材にそれぞれ嵌合するように配置することによって、前記下層舗装盤と前記上層舗装盤とが水平方向にずれないように連結されることを特徴とする2層プレキャスト舗装道路。
【請求項2】
前記上層舗装盤の一部は、
道路伸延方向に貫通する空洞を有し、前記空洞の開口部を周回するように止水シールを備えた空洞舗装盤で構成されることを特徴とする請求項に記載の2層プレキャスト舗装道路。
【請求項3】
前記空洞舗装盤は、プラスチック、炭素繊維補強コンクリート、FRP鉄筋コンクリートの何れかによって構成され、前記空洞の内部に配置される非接触給電用コイルを備えることを特徴とする請求項に記載の2層プレキャスト舗装道路。
【請求項4】
前記上層舗装盤は、透水性の素材、又はポーラス構造かスリット表面の走行音低減性の素材によって構成されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の2層プレキャスト舗装道路。
【請求項5】
前記下層舗装盤は、隣接する前記下層舗装盤と対向する側面に止水シールを有することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の2層プレキャスト舗装道路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層プレキャスト舗装道路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の舗装道路は、加熱アスファルト混合物やレディミックスコンクリート等の舗装材を、それぞれの専用の舗装機械を用いて敷き均し、必要に応じて転圧し、その後、養生して硬化させて作られている。
【0003】
舗装道路は、供用して経年すると劣化が進むが、劣化が進んだ場合には、交通を規制し、バックホウ、ブレーカ等の専用機械によって劣化部分のみならず広範囲の舗装材を剥ぎ取り、新たな舗装材によって再施工する必要があった。
【0004】
しかし、舗装道路の補修を含む施工には次のような問題がある。まず、雨天時には舗装材の硬化不良が生じるため、工事ができなかった。また、舗装材は調製してから使用可能な時間が限られているため、舗装材の調製時期や搬入時期を含む計画を立案するのが難しかった。さらに、補修等における舗装材の剥ぎ取りには大きな騒音が発生し、近隣住民等に迷惑が掛かるために工事時間帯にも制約があった。
【0005】
一方、公知の舗装材を使用しない道路として、鋼製やFRPの箱体内に発泡スチロールを充填してプレキャスト舗装盤のような外観を呈する敷設部材を形成し、この敷設部材を上層と下層の敷設部材が千鳥状をなす態様で路盤上に配置し、上層と下層の敷設部材をボルト・ナットのような締結具によって上下方向で締結した土木工事現場用の仮設道路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、上記仮設道路は、鋼製やFRPの箱状体の内部に発泡スチロールを充填した構造を有しているため、たとえ内部に補強構造が付与されていても、強度面から一般道路や高速道路での使用は事実上不可能である。しかも、上層と下層の敷設部材の結合は、ボルトとナットによる締結であるため、組み立て、取り外しの何れにおいても多くの工数が掛かり、また、ボルトとナットの締結は振動によって緩み易いため、何れにしても頻繁に車両が走行する一般道路には不向きであり、ましてや高速道路には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-326007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上層舗装盤と下層舗装盤とを継手部材を用いて簡易に連結することができ、組み立てと取り外しを多くの工数を要することなく簡単かつ迅速に行うことができるとともに、段差が生じることのない複層プレキャスト舗装道路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、路盤の上に敷設されたプレキャスト製の複数の下層舗装盤と、該下層舗装盤の上面に敷設されたプレキャスト製の複数の上層舗装盤と、を備える複層プレキャスト舗装道路であって、前記下層舗装盤と前記上層舗装盤とを千鳥状に配置するとともに、前記下層舗装盤と前記上層舗装盤の上下接合面に跨って介在する継手部材を設け、該継手部材の前記下層舗装盤と前記上層舗装盤との係合または嵌合によってこれらの下層舗装盤と上層舗装盤とを連結して構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上層舗装盤と下層舗装盤とを継手部材を用いて簡易に連結することができ、組み立てと取り外しを多くの工数を要することなく簡単かつ迅速に行うことができるとともに、複層プレキャスト舗装道路に段差が生じることがないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る複層プレキャスト舗装道路の構成を説明するための分解部分斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る複層プレキャスト舗装道路の排水構造を示す部分断面図である。
図3】本発明の実施の形態2に係る複層プレキャスト舗装道路の構成を説明するための分解部分斜視図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る複層プレキャスト舗装道路の上層舗装盤の一部を構成する空洞舗装盤の斜視図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る複層プレキャスト舗装道路の空洞舗装盤に設けられた複数の継手孔の配置例を示す平面図である。
図6図4のA1-A1線断面図である。
図7】空洞舗装盤の他の形態を示す平面図である。
図8】(A)は図4の矢視X1方向の図、(B)は図4のA2-A2線断面図である。
図9】実施の形態2に係る継手部材の一例を示す斜視図である。
図10】実施の形態1に係る連結構造における空洞舗装盤及び上層舗装盤と下層舗装盤及び端部下層舗装盤の上下連結前の継手部材との関係を示す断面図である。
図11】実施の形態2に係る連結構造における空洞舗装盤及び上層舗装盤と下層舗装盤及び端部下層舗装盤とを継手部材で連結した状態の関係を示す断面図である。
図12】継手部材の取外し具の一例を示す斜視図である。
図13図12のA4-A4線断面図である。
図14】実施の形態2に係る連結構造において上層舗装盤と下層舗装盤に設けられた複数の継手孔の配置例を示す平面図である。
図15】実施の形態2に係る連結構造を示す分解斜視図である。
図16】(A)は上層舗装盤の部分平面図、(B)は同上層舗装盤の部分底面図、(C)は(A)のA5-A5線断面図である。
図17】(A)は下層舗装盤の部分平面図、(B)は(A)のA6-A6線断面図である。
図18】(A)~(F)は実施の形態2に係る連結構造において上層舗装盤と下層舗装盤との連結手順をその工程順に示す部分断面図である。
図19】実施の形態3に係る上層舗装盤と下層舗装盤との連結構造に用いられる受け部材の平面図、(B)は(A)のA7-A7線断面図、(C)は(B)のY1部の拡大詳細図である。
図20】実施の形態3に係る上層舗装盤と下層舗装盤との連結構造に用いられる継手部材の平面図、(B)は同継手部材の正面図、(C)は(B)のY2部の拡大詳細図である。
図21】(A)~(D)は実施の形態3に係る連結構造において上層舗装盤と下層舗装盤との連結手順をその工程順に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[複層プレキャスト舗装道路]
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係るプレキャスト舗装道路の構成を説明するための分解部分斜視図であり、図示の複層プレキャスト舗装道路は、路床7の上に設けられた路盤6の上に敷き詰められるプレキャスト製の舗装盤である矩形プレート状の複数の下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4と、このように敷き詰められた下層舗装盤3と端部下層舗装盤4の上に重ねられるプレキャスト製の舗装盤である矩形プレート状の複数の上層舗装盤2を備えている。ここで、複数の上層舗装盤2は、複数の下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4に対して千鳥状に配置されており、これらの上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4とは、複数の継手部材5によって上下方向に連結(締結)されている。
【0013】
本発明で使用する上層舗装盤2、下層舗装盤3、端部下層舗装盤4は、本発明の複層プレキャスト舗装道路の施工前に、予め公知プレキャスト工法によって成形されるものである。なお曲線部の施工では、前記の矩形プレート状の舗装盤のほかに、図示しないが、走行方向(前後方向)の前後端面がテーパー状の舗装盤や前後端面で略楔状に形成された補助舗装盤を用いることがある。矩形プレート状の舗装盤とテーパー面を有する舗装盤の接合部分はボルトやダウエルピンで繋ぐ。また前記路盤6に不陸がある場合には、その不陸整正のために緩い砂を撒くが、本発明では例えばアスファルトシートをロール状に巻き取った不陸整正材を搬入し、前記路盤6の不陸部分に展開して敷設することができる。
【0014】
ところで、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路は、敷き詰められた下層舗装盤3において隣接する下層舗装盤3,3同士を上層舗装盤2が跨いで連結(締結)されることを基本形態としている。このため、図1に示す例では、各4枚の下層舗装盤3と端部下層舗装盤4の上に、同じ枚数の上層舗装盤2を上下に千鳥状に重ねて連結(締結)することによって一定幅の複層プレキャスト舗装道路が施工される。なお、道路幅は線形に応じて変わり、軌跡となる車両通行位置も道路の線形とは必ずしも一致しない。このため、上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4の千鳥状配置や端部では、下層舗装盤3と端部下層舗装盤4の2枚を上層舗装版2の1枚が跨ぐ形で敷設することができたとしても、道路幅の変化や線形と一致しない車両通行位置等によって上下層舗装盤2~4の寸法違いに起因して上層舗装盤2の側に半端が生じた場合には、半端用の上層舗装盤2を調整し、この上層舗装盤2を用いて下層舗装盤3と端部下層舗装盤4の上で前記の半端を調整することができる。
【0015】
なお、本実施の形態において「千鳥状に配置する」とは、下層に敷かれた下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4の合わせ目(目地)に、これらの下層舗装盤3と端部下層舗装盤4の上に敷かれる上層舗装盤2の合わせ目(目地)が重ならないように、上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4との互いの合わせ目(目地)をずらして配置することを言う。
【0016】
ところで、図1に例示した複層プレキャスト舗装道路においては、上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4として、平面形状と大きさが同じ矩形状のものを用いたが、上層と下層で大きさの異なる舗装盤を用いることもできる。また、図1に示す例では、道路幅方向において敷設した下層舗装盤3と端部下層舗装盤4の4枚の上に4枚の上層舗装盤2を敷設しているが、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路において、2枚の下層舗装盤3の上に上層舗装盤2が跨る形で上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4を配置する形態には様々のものがある。
【0017】
なお、本実施の形態に係る複層プレキャスト舗装道路に用いられる上層舗装版2と下層舗装盤3及び端部下層塗装盤4は、平面視矩形又は四角形が基本形状であるが、下層舗装盤3には平面形状が矩形や四角形以外の多角形のプレキャスト舗装盤を用いることができる。
【0018】
(複層プレキャスト舗装道路の排水構造)
ここで、複層プレキャスト舗装道路の排水構造の一例を図2に基づいて以下に説明する。
【0019】
図2は本発明に係る複層プレキャスト舗装道路の排水構造を示す部分断面図であり、同図に示すように、上層にポーラスコンクリート等の透水性コンクリートによって構成された上層舗装盤2を用いた場合、雨水は矢印X3に示すように上層舗装盤2の内部を路側の側溝9に向かって流れ、下層舗装盤3と端部下層舗装盤4から路盤6に水が浸透することなく、効率よく側溝9へと排水することが可能となる。
【0020】
<実施の形態2>
次に、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路の実施の形態2を図3に基づいて以下に説明する。
【0021】
図3は本発明の実施の形態2に係る複層プレキャスト舗装道路の構成を説明するための分解部分斜視図である。なお、図3においては、図1において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0022】
本発明の実施の形態2に係るプレキャスト舗装道路は、路床7の上に設けられた路盤6の上に敷き詰められる矩形プレート状の複数の下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4と、このように敷き詰められた下層舗装盤3と端部下層舗装盤4の上に重ねられる矩形プレート状の複数の上層塗装盤2及び空洞舗装盤1を備えている。ここで、空洞舗装盤1は、図1に示す複層プレキャスト舗装道路において幅方向略中央に位置する上層舗装盤2に代えて設けられるものであって、その内部には道路延伸方向に貫通する空洞12が貫設されている。なお、本実施の形態に係る複層プレキャスト舗装道路の他の構成は、前記実施の形態1に係る複層プレキャスト舗装道路の構成と同じであるため、これについての再度の説明は省略する。
【0023】
ところで、空洞舗装盤1の敷設位置は、道路の幅方向略中央部に限らず、例えば、路肩やその他の部位に配置してもよい。また、本実施の形態では、空洞舗装盤1及び上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4として、平面形状と大きさが同じ矩形状のものを用いたが、上層と下層で大きさの異なる舗装盤を用いることもできる。また、空洞舗装盤1としては、図3に例示したものより幅が狭いものを用いてもよい。さらに、本実施の形態に係る複層プレキャスト舗装道路においては、空洞舗装盤1が下層舗装盤3を跨ぐことなく、上層舗装盤2の間を空洞舗装盤1が埋める形に配置されるなど、空洞舗装盤1を含む上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4の上下層の配置には様々な配置態様が考えられる。
【0024】
なお、本実施の形態に係る複層プレキャスト舗装道路においては、空洞舗装盤1及び上層舗装盤2と下層舗装版3及び端部下層舗装盤4として、平面視矩形または四角形を基本形状とするものを用いたが、下層舗装版3には平面形状が矩形や四角形以外の多角形のプレキャスト舗装盤を用いることができる。
【0025】
(空洞舗装盤の構成)
ここで、空洞舗装盤1の構成を図4に基づいて以下に説明する。
【0026】
図4は本発明の実施の形態2に係る複層プレキャスト舗装道路の上層舗装盤の一部を構成する空洞舗装盤の斜視図である。
【0027】
図4に例示した空洞舗装盤1は、横断方向の断面が略矩形で平面視ほぼ長方形状をなし、これには厚み方向に貫通する丸孔状の継手孔11と、道路伸延方向に貫通する空洞12が形成されている。ここで、空洞12は、この例では平行に2つ設けられており、これら2つの空洞12の間には、道路伸延方向に仕切る仕切壁13が設けられている。なお、空洞舗装盤1の平面大きさや空洞12の断面形状と大きさは、本実施の形態において例示したものに限るものではない。
【0028】
図5は空洞舗装盤1に設けられた複数(図示例では、4つ)の継手孔11の配置例を示す平面図である。本実施の形態においては、他の舗装盤(上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4)にも同じ配置パターンで継手孔11(110:図10及び図11参照)がそれぞれ形成されている。なお、下層舗装盤3と端部下層舗装4にそれぞれ形成される後述の継手孔110(図10及び図11参照)は、当該下層舗装盤3と端部下層舗装盤4を上下方向に貫通しない仕様であることが好ましい。空洞舗装盤1を含む上層舗装盤2側からの雨水等が継手孔110を通って路盤6に流入するのを防ぐためである。
【0029】
図4及び図5に示すように、空洞舗装盤1には、一例として4つの継手孔11が設けられているが、各継手孔11は、空洞舗装盤1の平面視が矩形である場合、この矩形を左右に2等分する直線L1と、上下に2等分する直線L2によって区画される4つの長方形の第1の対角線L3と第2の対角線L4との交点にそれぞれ形成されている。
【0030】
上述のように各舗装盤(空洞舗装盤1、上層舗装盤2、下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4)にそれぞれ同じ配置パターンで4つの継手孔11(110)を配置すると、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路の下層に配置される下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4と上層に配置される空洞舗装盤1及び上層舗装盤2とを千鳥状に配置する場合、下層に配置される下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4の継手孔110と、上層に配置される空洞舗装盤1及び上層舗装盤2の継手孔11とが対応する同軸上の位置に配置されるため、空洞舗装盤1及び上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4とを継手部材5によって上下方向に連結(締結)することができる。
【0031】
本実施の形態における継手孔11(110)の位置は、以上において説明した位置の他、上載荷重等を考慮して舗装盤の内側又は外側に寄せて配置してもよい。また、継手孔11(110)の数も4つに限られるものではなく、舗装盤(空洞舗装盤1及び上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4)の大きさによって4つより多い場合、或いは4つより少ない場合もある。
【0032】
図6図4のA1-A1線断面図であり、同図に示すように、図4に示した空洞舗装盤1は、空洞12の開口部の端面を周回するように設けられた溝部15に止水シール14が設けられている。ここで、止水シール14は、膨脹部14Aと、該膨脹部14Aを覆う親水部14Bとを備えている。なお、本実施の形態では、膨脹部14Aには、例えば発泡ウレタンを道路伸延方向に圧縮したものが用いられるが、膨脹部14Aには発泡ウレタン以外の素材を用いることができる。また、親水部14Bには、例えば親水性ウレタンなど、水に接触したときに膨脹する素材が用いられるが、水に接触して膨脹する素材であれば親水性ウレタンに限らず他の材料を用いてもよい。
【0033】
従って、空洞舗装盤1同士を道路伸延方向に接続した場合、接続部分に雨水が浸み込んでも止水シール14が道路伸延方向に膨脹するため、雨水の空洞12の内部への浸み込みが防がれる。
【0034】
(空洞舗装盤の他の形態)
ここで、空洞舗装盤の他の形態を図7に基づいて以下に説明する。
【0035】
図7は空洞舗装盤の他の形態を示す平面図であり、図示例では、空洞舗装盤1には非接触給電用コイル91が配置されている。
【0036】
図7に示すように、空洞舗装盤1は、空洞12の内部に非接触給電用コイル91を配置してモジュール化することができる。この場合、隣接する非接触給電用コイル91同士は適宜の方法によって接続される。ここで、空洞舗装盤1は、止水シール14を有しているため、非接触給電用コイル91は雨水等によって濡れることがない。
【0037】
なお、空洞舗装盤1は、非接触給電用コイル91以外にも電源線、通信線等のケーブルを空洞12に配置し、ケーブル付舗装盤としてモジュール化することも可能である。
【0038】
(上層舗装盤と下層舗装盤との連結構造)
<連結構造の実施の形態1>
図8(A)は図4の矢視X1方向の図、図8(B)は図4のA2-A2線断面図であり、図8(B)に示すように、空洞舗装盤1は、継手孔11を形成する筒状の周壁16と、継手孔11の上下方向における周壁16の内面の中間付近に設けられた円弧状の突起部17を備えている。
【0039】
上記周壁16は、空洞12の内部に配置され、平面視が略円形をなし、上下方向に延びている。また、突起部17は、周壁16に沿って該周壁16の内部を周回し、周回方向の一部に一対の切欠き17Aを有している。
【0040】
空洞舗装盤1は、道路としての十分な成形強度を発揮する合成樹脂によって形成されている。この合成樹脂としては、例えばFRPや各種高強度プラスチック(PAI,PEEK等)があり、合成樹脂製の他に炭素繊維補強コンクリート製やFRP鉄筋コンクリ―ト製のものも用いることができる。このように、空洞舗装盤1の素材として合成樹脂を使用することによって、高い水密性と非導電性及び非磁性を得ることができ、空洞12の内部に非接触給電用コイルを配置することが可能となる。
【0041】
本発明における上層舗装盤2と下層舗装盤3は、前記空洞舗装盤1の空洞12が無い断面を充実形態にし、継手孔11と同様の継手孔110を設けたプレキャストコンクリート製である他は、空洞舗装盤1の外形と同様の形態である。従って、継手孔110も、円弧状の突起部170と一対の切欠き170Aを備えている。
【0042】
端部下層舗装盤4は、一例として前記下層舗装盤3を平面視において上下に略2等分した形態を有するが、端部下層舗装盤4の平面形状はこの例に限るものではない。なお、下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4は、これらが敷き詰められた場合に互いに接触する側面に、互いに対向するように、親水性ポリウレタン等の水膨脹性樹脂によって構成されたシールを備えていることが望ましい。
【0043】
上層舗装盤2は、例えば水を透すポーラスコンクリート製や走行騒音を低減することができるポーラス構造、或いは表面にスリットを配した構造とすることができる。下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4は、鉄筋コンクリート、鋼繊維強化コンクリート、または繊維補強コンクリートを用いて形成することができる。なお、上層舗装盤2にも鉄筋コンクリート、鋼繊維強化コンクリートまたは繊維補強コンクリートを用いることができる。下層舗装盤3と端部下層舗装盤4にコンクリート素材を用いることによって、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路は、舗装道路としての強さと耐久性とを具備することができる。なお、本発明を橋梁に適用する場合には、桁に施工された床盤を敷き詰めた下層舗装盤3に見立て、床盤の上に空洞舗装盤1を含む上層舗装盤2を直接接続することができ、端部下層舗装盤4を含む下層舗装盤3を省くことができる。
【0044】
図9は継手部材5の一例を示す斜視図であり、図示の継手部材5は、略円柱状をなす本体部51と、該本体部51の上端に配置された円柱状の基部52と、略傘状の可変ロック部53と、下方へと延びる脚部55と、該脚部55の周方向に相対向して一体に突設された略凸状の一対のフランジ部56を備えている。
【0045】
上記基部52は、その直径が本体部51の直径よりも小さく設定されており、前記可変ロック部53は、下端の直径が基部52の直径よりも大きく本体部51の直径よりも小さく設定されており、その直径は、上方に向かって次第に小さくなっている。そして、この可変ロック部53には、その上端部から基部52の途中まで切り欠かれたスリット状の4つの切欠き溝部54が周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)で形成されている。つまり、上下方向に長く形成されたスリット状の切欠き溝部54は、略傘状の可変ロック部53及び基部52を周方向に4分割するように形成されている。
【0046】
また、前記脚部55は、本体部51の直径よりも小さい直径を有して下方へと延びている。そして、脚部55の周方向に相対向して一体に形成された一対のフランジ部56は、本体部51の直径と同じ直径(外接円直径)を有しており、継手孔110(11)における突起部170(17)の切欠き170A(17A)を通過することができる平面形状を有している。なお、本体部51の下端面とフランジ部56の上端面との間の距離(脚部55の見た目の長さ)は、突起部170(17)の厚さより僅かに大きく設定されている。
【0047】
継手部材5は、下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4に形成された4つの継手孔110に対して着脱可能に設置され、空洞舗装盤1及び上層舗装盤2に形成された4つの継手孔11において略傘状の可変ロック部53が空洞舗装盤1又は上層舗装盤2の装着許容と脱却規制を制御する。なお、可変ロック部53は、略傘状の形態に限られない。例えば、突起部17の内周の断面形状が逆テーパ状であれば、可変ロック部53は略傘状ではなく、切欠き溝部54を有する略円柱状で足りるからである。なお、継手部材5は、プラスチック、金属またはこれらの複合材によって構成することができる。
【0048】
図10は空洞舗装盤1及び上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4の上下連結前の継手部材5との関係を示す断面図、図11は空洞舗装盤1及び上層舗装盤2と下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4とを継手部材5で連結(締結)した状態の関係を示す断面図である。
【0049】
図10に示すように、継手部材5は、その下部の一対のフランジ部56が、下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4の継手孔110の突起部170に形成された切欠き170Aを通過して当該突起部170の奥に挿入され、その後、軸回りに例えば角度90°回転されることによって、フランジ部56が下層舗装盤3及び端部下層舗装盤4の突起部170に係合して上方向にも下方向にも抜けなくなる。
【0050】
上記状態において、空洞舗装盤1または上層舗装盤2を、これに形成された継手孔11に継手部材5が嵌まるように上方から載置する。すると、継手部材5は、切欠き溝部54を有する略傘状の可変ロック部53を備えているため、この可変ロック部53の切欠き溝部54が突起部17によって押し縮められると、略傘状の可変ロック部53は、突起部17の間に入り込み、可変ロック部53の下端部53Aが突起部17を通過した時点で開く。
【0051】
略傘状の可変ロック部53の下端部53Aの直径は、一対の突起部17の外接円の直径よりも大きいため、継手部材5に嵌まった空洞舗装盤1または上層舗装盤2が上方向に抜けなくなる。これによって空洞舗装盤1を含む上層舗装盤2は、継手部材5を介して端部下層舗装盤4を含む下層舗装盤3に緊締結合されて上下2層をなす上層舗装盤(空洞舗装盤1を含む)2と下層舗装盤(端部下層舗装盤4を含む)3とが結合一体化される。
【0052】
なお、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路において使用される継手部材5は、本実施の形態において使用したものに限らない。例えば、図示しないが、継手部材5に設けられた略傘状の可変ロック部53に代えて、当該継手部材5の下部に形成された脚部55とその周上に設けられた略凸状のフランジ部56とを、上下対称な向きで本体部51の上部に設けた形態の継手部材を用いることができる。また、継手部材では、その中心軸上に貫通孔等の治具用孔を設け、この治具用孔に継手部材を回転させるための治具を保持させる形態を採ることもできる。可変ロック部には、それ自体が変形してロック機能を果たすものと、それ自体が変位してロック機能を果たすものが考えられる。
【0053】
図12は継手部材5の取外し具8の一例を示す斜視図、図13図12のA4-A4線断面図である。
【0054】
取外し具8は、図12に示すように、下方に向かって直径が次第に大きくなる空洞部84(図13参照)を下端面に開口させた押圧部81と、該押圧部81の下端部に対向して設けられた一対の引掛け突起部83と、押圧部81の上端部に設けられたフック82とを備えている。
【0055】
ここで、取外し治具8の空洞部84の最大直径は、略傘状の可変ロック部53の最大直径と同じかやや小さい。また、空洞部84の上下方向の長さは、略傘状の可変ロック部53の上下方向の長さと同じかやや長く、図13に示すように、空洞部84は、縦断面において内側に凸となる曲面を有している。
【0056】
そして、引掛け突起部83の一端から他端までの長さは、継手孔11の直径とほぼ等しい。また、押圧部81の外径は、突起部17の外接円の直径よりも若干小さい。
【0057】
空洞舗装盤1又は上層舗装盤2を継手部材5から外すためには、取外し具8を空洞部84に略傘状の可変ロック部53が嵌まるように上から押圧する。
【0058】
略傘状の可変ロック部53は切欠き溝部54を有するため、この可変ロック部53が空洞部84に押されて切欠き溝部54が径方向に縮まり、略傘状の可変ロック部53の下端部53Aと突起部17との係合が解除される。
【0059】
上記状態において、引掛け突起部83を突起部17と干渉しない向きにして下方へとさらに押し込み、引掛け突起部83が突起部17を越えた時点で取外し具8を回転させると、引掛け突起部83が突起部17に係合する。そして、この状態から、フック82に掛けたワイヤー等によって取外し具8を上方に引っ張り上げると、空洞舗装盤1又は上層舗装盤2を継手部材5から外すことができる。この作業を空洞舗装盤1又は上層舗装盤2の4箇所の継手孔11において行い、空洞舗装盤1又は上層舗装盤2を、端部下層舗装盤4を含む下層舗装盤3から分離させることができる。
【0060】
<連結構造の実施の形態2>
次に、上層舗装盤2と下層舗装盤3との連結構造の実施の形態2を図14図18に基づいて以下に説明する。
【0061】
図14は実施の形態2に係る連結構造において上層舗装盤と下層舗装盤に設けられた複数の継手孔の配置例を示す平面図、図15は実施の形態2に係る連結構造を示す分解部分斜視図、図14(A)は上層舗装盤の部分平面図、図14(B)は同上層舗装盤の部分底面図、図14(C)は図14(A)のA5-A5線断面図、図15(A)は下層舗装盤の部分平面図、図15(B)は図15(A)のA6-A6線断面図、図16(A)~(F)は実施の形態2に係る連結構造において上層舗装盤と下層舗装盤との連結手順をその工程順に示す部分断面図である。
【0062】
本実施の形態に係る連結構造においては、図14に示すように、上層舗装盤2と下層舗装盤3の4箇所(実施の形態1と同じ箇所(図5参照))に平面視長方形の継手孔11,110(図14には一方のみ図示)が上下方向に貫設されている(下層舗装盤3に形成された継手孔110については図15及び図17参照)。なお、以下においては1箇所の継手孔11,110の周辺の構造について図示及び説明するが、他の箇所の継手孔11,110の周辺の構造も同じであるため、これについての図示と説明は省略する。
【0063】
図16に示すように、上層舗装盤2に形成された平面視長方形の継手孔11においては、短辺側の面(図16の右端面)の下半部には矩形ブロック状の係合凸部61が一体に形成されている。また、上層舗装盤2の下面には、継手孔11の係合凸部61に対向する短辺側の面から継手孔11の長手方向(図16の左方)に延びる平面視矩形の係合凹部62が形成されている。
【0064】
他方、図17に示すように、下層舗装盤3に形成された平面視長方形の継手孔110においては、短辺側の面(図17の右端面)の上半部には矩形ブロック状の係合凸部63が一体に形成されている。
【0065】
ところで、上層舗装盤2と下層舗装盤3との連結には、図15に示す樹脂製の継手部材64と楔部材65が用いられる。ここで、継手部材64は、四角柱状の本体部64Aと、該本体部64の同一面の上下端から同方向に水平かつ一体に突出する矩形ブロック状の係合突起64B,64Cを備えており、本体部64Aの係合凸部64Aが形成された側とは反対側の面には、2本のスリット状の嵌合溝64aが幅方向に適当な間隔で上下方向に貫設されている。
【0066】
また、楔部材65は、上下方向に長い矩形平板状の本体部65Aを備えており、該本体部64Aの長辺側の一端面からは上下方向に長い矩形リブ状の2枚の嵌合突起65aが一体に突設されている。ここで、2本の嵌合突起65aは、後述のように継手部材64に形成された2本の嵌合溝64aに嵌合するものであって、幅方向7嵌合溝64aと同一ピッチで配置されている。
【0067】
次に、上記継手部材64と楔部材65を用いて上層舗装盤2と下層舗装盤3とを連結する手順を図18(A)~(F)に従って説明する。
【0068】
先ず、図18(A)に示すように、先端部がL字状に屈曲した吊下げ具100を上層舗装盤2の継手孔11に上方から挿入し、その先端部を上層舗装盤2の係合凹部62に係合させる。そして、その状態で吊下げ具100を引き上げて上層舗装盤2を水平に吊下げる。そして、この上層舗装盤2を予め敷設されている下層舗装盤3の上に移動させ、これに形成された継手孔11と下層舗装盤3に形成された継手孔110が合致するように位置決めした状態で当該上層舗装盤2を降ろし、図18(B)に示すように、当該上層舗装盤2を下層舗装盤3の上に重ねる。なお、図18(B)に示す各部の高さ寸法h1,h2,h3は、図15に示す継手部材64の各部寸法h1,h2,h3に略一致し、上層舗装盤2と下層舗装盤3の高さの合計値Hは、継手部材64と楔部材65の高さHに略一致する。
【0069】
図18(B)に示すように、下層舗装盤3の上に上層舗装盤2が重ねられ、両者にそれぞれ形成された継手孔11,110同士が合致した状態から、図18(C)に示すように、継手部材64を上層舗装盤2と下層舗装盤3にそれぞれ形成された継手孔11,110に上方から挿入して通す。このとき、継手部材64は、これの上下に突設された係合突起64B,64Cが上層舗装盤2と下層舗装盤3にそれぞれ突設された係合凸部61,62と干渉することなく継手孔11,110を通過することができる。
【0070】
上述のようにして継手部材64が上層舗装盤2と下層舗装盤3にそれぞれ形成された継手孔11,110に通されると、図18(D)に示すように、継手部材64を矢印方向に水平移動させ、該連結部材64の上下に突設された係合突起64B,64Cを上層舗装盤2と下層舗装盤3にそれぞれ突設された係合凸部61,62にそれぞれ係合させる。
【0071】
継手部材64の上下の係合突起64B,64Cが上層舗装盤2と下層舗装盤3の各係合凸部61,62に完全に係合すると、図18(E)に示すように、該継手部材64の継手孔11,110との間に隙間が形成されるため、この隙間に楔部材65を上方から差し込む。このとき、楔部材65に突設された2本の嵌合突起65aを継手部材64に形成された2本の嵌合溝64aに嵌合させ、この状態を維持しつつ楔部材65を下方へと打ち込む。
【0072】
上述のようにして楔部材65が継手部材64と継手孔11,110との間の隙間に完全に打ち込まれると、図18(F)に示すように、継手部材64の継手孔11,110内での移動が阻止されて固定されるため、該継手部材64の上下の係合突起64B,64Cが上層舗装盤2と下層舗装盤3の各係合凸部61,62に確実に係合するため、上層舗装盤2と下層舗装盤3とが継手部材64によって確実に連結される。
【0073】
<連結構造の実施の形態3>
次に、空洞舗装盤1を含む上層舗装盤2と端部下層舗装盤4を含む下層舗装盤3との連結構造の実施の形態3を図19図21に基づいて以下に説明する。
【0074】
図19(A)は実施の形態3に係る上層舗装盤と下層舗装盤との連結構造に用いられる受け部材の平面図、19(B)は図19(A)のA7-A7線断面図、図19(C)は同受け部材の斜視図、図17(D)は図17(B)のY1部の拡大詳細図、図20(A)は実施の形態3に係る上層舗装盤と下層舗装盤との連結構造に用いられる継手部材の平面図、図20(B)は同継手部材の正面図、図20(C)は同駒部材の斜視図、図20(D)は図20(B)のY2部の拡大詳細図、図21(A)~(F)は実施の形態3に係る連結構造において上層舗装盤と下層舗装盤との連結手順をその工程順に示す部分断面図である。
【0075】
本実施の形態に係る連結構造においても、上層舗装盤2と下層舗装盤3とは図5及び図14に示したと同様の4箇所において連結されるが、以下、1箇所のみの連結構造について説明する。
【0076】
本実施の形態に係る連結構造においては、図19に示す受け部材71と図20に示す継手部材72とが使用される。ここで、受け部材71と継手部材72は、共に樹脂によって一体成形されている。
【0077】
受け部材71は、図19に示すように、カップ状に成形されており、これには円形の底面部71Aと、該底面部71Aから図19(B)の上方に向かって拡径しながら延びるテーパ円筒状の側面部71Bと、該側面部71Bから平行に立ち上がって当該受け部材71の開口部周縁を形成する高さの低い円筒部71Cとを備えている。ここで、図19(D)に詳細に示すように、受け部材71の円筒部71Cの内周には、断面山形の複数の突起71aが全周に亘って形成されている。
【0078】
継手部材72は、図20に示すように、円板部72Aと、該円板部72Aの上下面の中心から垂直に延びる円筒部72Bとを備えており、円板部72Aと上下の円筒部72Bとは、三角状の複数枚(図示例では、10枚)の補強リブ72Cによってそれぞれ連結されている。ここで、複数枚(10枚)の補強リブ72Cは、周方向に等角度ピッチ(36°ピッチ)で放射状に配置されている。また、継手部材72の円板部72Aの外径φDは、前記受け部材71の円筒部71Cの内径φdよりも僅かに小さく設定されている(φD<φd)。さらに、円板部72Aの外周には、図20(D)に詳細に示すように、断面山形の複数の突起72aが全周に亘って形成されている。
【0079】
次に、以上のように構成された受け部材71と継手部材72を用いて上層舗装盤2と下層舗装盤3とを連結する手順を図21(A)~(D)に従って以下に説明する。
【0080】
図21(A)に示すように、受け部材71は、下層舗装盤3の上面に予め埋め込まれて固定されており、この受け部材71に継手部材72の下半部を上方から嵌め込んで図21(B)に示すように両者を結合する。このとき、受け部材71の円筒部71Cの内周面には複数の突起71aが全周に亘って形成され、継手部材72の円板部72Aの外周にも同様の複数の突起72aが全周に亘って形成されているため、これらの突起71a,72a同士が嵌合することによって継手部材72の受け部材71からの抜けが防がれる。この状態では、継手部材72は、その上半部が下層舗装盤3の上面から上方に突出した状態で受け部材71に連結されて固定されている。
【0081】
次に、図21(C)に示すように、もう1つの受け部材71が開口部を下にして予め埋め込まれて固定された上層舗装盤2が位置決めされて下層舗装盤3に向かって降ろされる。すると、図21(D)に示すように、上層舗装盤2が下層舗装盤3の上に重ねられるとともに、該上層舗装盤2に受け込まれて固定されている一方の受け部材71が継手部材72の上半部に嵌め込まれるため、上層舗装盤2と下層舗装盤3とが継手部材72によって互いに連結される。このとき、受け部材71の円筒部71Cの内周面には複数の突起71a(図19(C)参照)が全周に亘って形成され、継手部材72の円板部71Aの外周にも同様の複数の突起72a(図20(D)参照)が全周に亘って形成されているため、これらの突起71a,72a同士が嵌合することによって上層舗装盤2と下層舗装盤3とが継手部材72によって一層確実に連結される。
【0082】
[発明の効果]
以上の説明で明らかなように、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路は、路盤6の上に敷設されたプレキャスト製の複数の下層舗装盤2(空洞舗装盤1を含む)と、該下層舗装盤2の上面に敷設されたプレキャスト製の複数の上層舗装盤3(端部下層舗装盤4を含む)と、を備えるものであって、前記下層舗装盤3と前記上層舗装盤2とを千鳥状に配置するとともに、前記下層舗装盤3と前記上層舗装盤2の上下接合面に跨って介在する継手部材5(64,72)を設け、該継手部材5(64,72)の前記下層舗装盤3と前記上層舗装盤2との係合または嵌合によってこれらの下層舗装盤3と上層舗装盤2とを連結して構成されるため、以下の効果を奏する。
【0083】
すなわち、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路は、プレキャスト製の複層の上層舗装盤2(空洞舗装盤1を含む)と同じくプレキャスト製の下層舗装盤3(端部下層舗装盤4を含む)を、二次元的に隣り合うもの同士は直接結合せず、上下層を構成する複数の上層舗装盤2(空洞舗装盤1)と複数の下層舗装盤3(端部下層舗装盤4)とを三次元的に接し、かつ、三次元的に接するもの同士を継手部材5(64,72)によって複数箇所で連結する構造としたため、仮に舗装を支える路盤6や路床7に変形が生じても、下層舗装盤3(端部下層舗装盤4)同士の接合部分の折曲を当該接合部分を跨ぐ上層舗装版2(空洞舗装盤1)が緩和し、当該複層プレキャスト舗装道路に段差が生じない。
【0084】
また、上層舗装万2(空洞舗装盤1)と下層舗装盤3(端部下層舗装盤4)が共にプレキャスト製で上下2層構造のプレキャスト舗装道路であるため、新規施工も修復等の再施工も天候に左右されたり、騒音問題を起こすことなく簡便に行うことができ、耐久性に優れた複層プレキャスト舗装道路を提供することができる。
【0085】
さらに、上層舗装盤2(空洞舗装盤1)と下層舗装盤3(端部下層舗装盤4)が共にプレキャスト製であるため、施工に使用する舗装盤1~4を事前に計画的に工場で製造してストックしておくことができ、緊急な修復施工等が入っても容易且つ迅速な対応が可能となる。
【0086】
また、施工は、各層の舗装盤1~4を1枚ごとクレーンによって吊り上げて路盤6に敷設していく工事形態であるため、従来使用していた舗装専用の重機や、舗装技術を習得している技術者がいなくても施工が可能となる。
【0087】
そして、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路の一部が破損した場合には、その破損した部分の舗装盤を外して取り換えれば修復が済むため、修復工事でも低騒音で短期間に施工が可能である。
【0088】
さらに、本発明に係る複層プレキャスト舗装道路においては、路盤6に敷き詰める下層舗装盤3(端部下層舗装盤4)に対して上層舗装盤2(空洞舗装盤1)を千鳥状に配置してこれらを継手部材5(64,72)によって連結するために段差が生じない。
【0089】
また、上層舗装盤2(空洞舗装盤1)として種々の機能を有する舗装盤を用いることによよって、例えば雨水を効率よく排水したり、非接触給電用のコイルを設けたり、帯電性、帯磁性を改善したりすることが可能となり、従来の舗装道路にはない機能を備えた舗装道路を容易に施工することが可能となる。
【0090】
その他、継手部材5(64,72)をプラスチックやプラスチック複合材等によって構成すれば、これらが錆びることがなく、その耐久性が高められる。そして、上層舗装盤2(空洞舗装盤1)と下層舗装盤3(端部下層舗装盤4)との連結に継手部材5(64,72)を用いることによって、これらの継手部材5(64,72)がボルトとナットのように使用中に緩むことがなく、下層舗装盤3(端部下層舗装盤4)への上層舗装盤(空洞舗装盤1)の着脱が容易となる。
【0091】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
1 空洞舗装盤
2 上層舗装盤
3 下層舗装盤
4 端部下層舗装盤
5 継手部材
6 路盤
7 路床
8 取外し具
9 側溝
11,110 継手孔
12 空洞
13 仕切壁
14 止水シール
14A 膨脹部
14B 親水部
15 溝部
16 側壁
17,170 突起部
51 本体部
52 基部
53 略傘状の可変ロック部
54 溝部
55 脚部
56 フランジ部
61,63 係合凸部
64 継手部材
65 楔部材
71 受け部材
72 継手部材
81 押圧部
82 フック
83 引掛け突起部
84 空洞部
91 非接触給電用コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21