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特許7396984センサを流体材料とインターフェースさせるための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】センサを流体材料とインターフェースさせるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20231205BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20231205BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20231205BHJP
   H03H 9/44 20060101ALI20231205BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01N5/02 E
G01N5/02 A
G01N37/00 101
B81B1/00
B81B7/02
H03H9/44
H03H9/17 H
H03H9/17 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020521494
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018040875
(87)【国際公開番号】W WO2019010275
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】62/529,945
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520004524
【氏名又は名称】アヴィアーナ モレキュラー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リ,モ-フアン
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/02
G01N 37/00
B81B 1/00
B81B 7/02
H03H 9/44
H03H 9/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面弾性波(SAW)センサであって、
基板と、
前記基板上に配設された少なくとも1つのセンサユニットであって、前記少なくとも1つのセンサユニットは、
センサ素子、
前記少なくとも1つのセンサ素子の対向端部に位置する1対の電気部品、及び
前記基板に配設された第1の周壁であって、前記第1の周壁は、前記1対の電気部品の第1の電気部品の3つの側面の周囲を延びており、前記1対の電気部品の前記第1の電気部品に近接して少なくとも前記センサ素子の一部の周囲を延びている、前記第1の周壁、
前記基板に配設された第2の周壁であって、前記第2の周壁は、前記1対の電気部品の第2の電気部品の3つの側面の周囲を延びており、前記1対の電気部品の前記第2の電気部品に近接して少なくとも前記センサ素子の一部の周囲を延びている、前記第2の周壁を含む、前記少なくとも1つのセンサユニットと、
前記センサ素子の一部分上を延びる流体チャネルと、
前記第1の周壁及び前記第2の周壁上に配設されることによって、流体が前記流体チャネルに存在する際に、前記電気部品の各々の上にエアポケットを形成する上部層とを備え、前記エアポケットが、前記上部層、前記第1の周壁、前記第2の周壁、及び前記流体によって制限されている、前記SAWセンサ。
【請求項2】
前記基板が圧電材料を備える、請求項1に記載のSAWセンサ。
【請求項3】
前記センサ素子が、少なくとも1つの分析物を捕獲するように構成された変性基質表面を備える、請求項1に記載のSAWセンサ。
【請求項4】
前記1対の電気部品の1つがリフレクタを備える、請求項1に記載のSAWセンサ。
【請求項5】
前記1対の電気部品の少なくとも1つが、インターデジタルトランスデューサを備える、請求項1に記載のSAWセンサ。
【請求項6】
前記センサ素子及び前記1対の電気部品が軸に沿って配列された、請求項1に記載のSAWセンサ。
【請求項7】
前記SAWセンサは、前記流体チャネルの第1の端部における注入口、及び前記流体チャネルの第2の端部における排出口を備える、請求項1に記載SAWセンサ。
【請求項8】
前記第1の周壁及び前記第2の周壁の少なくとも1つが、プラスチックシート、両面テープ、及び射出成形材料、のうちのいずれか1つから形成される、請求項1に記載のSAWセンサ。
【請求項9】
前記電気部品上の前記エアポケットが、約0.1μm~約1mmの厚さを有する、請求項1に記載のSAWセンサ。
【請求項10】
表面弾性波(SAW)センサ上の流体媒体から前記SAWセンサの複数の電気部品を隔離する方法であって、前記方法は、
前記SAWセンサの基板上に第1の周壁を提供するステップであって、前記基板は前記複数の電気部品を支持し、前記第1の周壁は、前記複数の電気部品の第1の電気部品の3つの側面の周囲を延びており、前記複数の電気部品の前記第1の電気部品に近接して少なくとも前記SAWセンサの一部の周囲を延びている、前記第1の周壁を提供するステップと、 前記基板に配設された第2の周壁を提供するステップであって、前記第2の周壁は、前記複数の電気部品の第2の電気部品の3つの側面の周囲を延びており、前記複数の電気部品の前記第2の電気部品に近接して少なくとも前記SAWセンサの一部の周囲を延びている、前記第2の周壁を提供するステップと、
前記基板上に流体チャネルを提供するステップと、
流体が前記流体チャネルに存在する際に、前記電気部品上にエアポケットを形成するように、前記第1の周壁及び前記第2の周壁の上部に上部層を設けるステップとを備え、前記エアポケットが、前記上部層、前記第1の周壁、前記第2の周壁、及び前記流体によって制限されている、前記方法。
【請求項11】
前記方法は、前記流体媒体と前記エアポケットの界面に形成される仮想壁を形成するステップを備え、前記仮想壁は、前記流体媒体と前記エアポケットの間の圧力差によって画定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記流体媒体の流体圧力を制御するために、前記流体の容積流量を調整するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月7日出願の米国仮特許出願第62/529945号の優先権の利益を主張し、その内容全体が参照によりここに取り込まれる。
【0002】
本開示は、流体システムを開発するための構造体及び方法に関する。より具体的には、本開示は、漏電を制限及び/又は防止する液体媒体における生物化学的/生物医学的又は診断的分析のためのセンサを有する流体システムに関する。
【背景技術】
【0003】
表面弾性波(「SAW」)によるセンサは、液体媒体において種々のタイプの生物化学的分析を測定するのに使用可能である。SAWセンサは、圧電基板と、入力インターデジタルトランスデューサ(「IDT」)と、出力インターデジタルトランスデューサとを含み得る。生物化学的又は生物医学的分析のためにSAWセンサを用いる場合には、液体がセンサ素子に導入される。残念ながら、SAWセンサの電気部品(例えば、IDT)と液体の接触は、センサ及び/又はセンサの読み出しに望まれない影響を有し得る。したがって、例えば、センサ応答のいずれの損失及び/又は歪みを制限しつつ漏電を防止するように、対応するエリア(例えば、電気素子と液体媒体の)間の不要な相互作用を防止する流体システムを開発する必要に迫られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一態様では、本開示は、基板と、センサ素子、少なくとも1つのセンサ素子の対向端部に位置する1対の電気部品、並びに基板に配設され、1対の電気部品及び少なくともセンサ素子の一部を囲むように構成された少なくとも1つの周壁を含む少なくとも1つのセンサユニットと、少なくとも1つの周壁上に配設されることによって電気部品の各々の上にエアポケットを形成する上部層とを含むセンサを提供する。
【0005】
実施形態において、センサは、SAWセンサ又はBAWセンサであり得る。
【0006】
実施形態において、センサは、センサ素子の一部分上に流体チャネルをさらに含んでもよく、流体チャネルが液体媒体を受けるように構成される。
【0007】
実施形態において、基板は、圧電材料であり得る。
【0008】
実施形態において、センサ素子は、少なくとも1つの分析物を捕獲するように構成された変性基質表面を含み得る。
【0009】
実施形態において、1対の電気部品は、インターデジタルトランスデューサを含み得る。
【0010】
実施形態において、1対の電気部品の一方は、リフレクタを含み得る。
【0011】
実施形態において、少なくとも1対の電気部品の一方は、少なくとも1つのインターデジタルトランスデューサを含み得る。
【0012】
実施形態において、センサ素子及び1対の電気部品は、軸に沿って配列され得る。
【0013】
実施形態において、液体媒体は、流体チャネルの第1の端部における注入口を通じて流体チャネルに流入し、流体チャネルの第2の端部における排出口を通じて流体チャネルから流出するように構成され得る。
【0014】
実施形態において、少なくとも1つの周壁は、プラスチックシート、両面テープ、射出成形材料及びガスケットのうちの任意の1つから形成される。
【0015】
実施形態において、電気部品上のエアポケットは、約0.1μm~約1mmの厚さを有し得る。
【0016】
一態様では、本開示は、センサにおける流体媒体から電気部品を隔離する方法であって、少なくとも1つの周壁を基板に設けるステップであって、少なくとも1つの周壁が電気部品を密閉する、ステップと、電気部品上にエアポケットを形成するように周壁の上部に上部層を設けるステップとを含む、方法を提供する。
【0017】
実施形態において、仮想壁が、液体媒体とエアポケットとの界面に形成され、液体媒体とエアポケットの間の圧力差によって画定される。
【0018】
実施形態において、仮想壁は、圧力差がゼロより大きい場合に形成及び維持されるように構成され得る。
【0019】
生物化学的分析のために、センサ素子を、導入される液体媒体とインターフェースさせる液体セルが開示される。液体セルは、エアポケットを用いて弾性波の経路及びセンサ素子を隔離するように構成可能である。ある実施形態では、エアポケットは、物理的な壁を用いることなく形成される。ある実施形態では、非物理的な壁は、空気-液体仮想壁である。
【0020】
ある実施形態では、基板と、少なくとも1つのセンサユニットと、上部層とを備えたセンサが開示される。ある実施形態では、センサユニットの各々が、センサ素子と、1つのセンサ素子の対向端部に位置する1対の電気部品と、基板に配設され、1対の電気部品及び少なくともセンサ素子の一部を囲むように構成された少なくとも1つの周壁とを備える。ある実施形態では、上部層は、少なくとも1つの周壁上に配設されることによって、電気部品の各々の上にエアポケットを形成する。
【0021】
他の実施形態では、センサは表面弾性波(SAW)センサである。他の実施形態では、センサはバルク弾性波(BAW)センサである。他の実施形態では、センサはセンサ素子の一部分上に流体チャネルをさらに備え、流体チャネルが液体媒体を受けるように構成される。他の実施形態では、基板は圧電材料を備える。他の実施形態では、センサ素子は、少なくとも1つの分析物を捕獲するように構成された変性基質表面を備える。他の実施形態では、1対の電気部品の一方はインターデジタルトランスデューサを備える。他の実施形態では、1対の電気部品の一方はリフレクタを備える。他の実施形態では、少なくとも1対の電気部品の一方は、少なくとも1つのインターデジタルトランスデューサを備える。他の実施形態では、センサ素子及び1対の電気部品は、軸に沿って配列される。他の実施形態では、液体媒体は、流体チャネルの第1の端部における注入口を通じて流体チャネルに流入し、流体チャネルの第2の端部における排出口を通じて流体チャネルから流出するように構成される。他の実施形態では、少なくとも1つの周壁は、プラスチックシート、両面テープ、射出成形材料及びガスケットのうちの任意の1つから形成される。他の実施形態では、電気部品上のエアポケットは、約0.1μm~約1mmの厚さを有する。
【0022】
ある実施形態では、センサにおける流体媒体から電気部品を隔離する方法が開示される。ある実施形態では、方法は基板に少なくとも1つの周壁を設けるステップであって、少なくとも1つの周壁が電気部品を密閉する、ステップを備える。ある実施形態では、方法は、電気部品上にエアポケットを形成するように周壁の上部に上部層を設けるステップを備える。
【0023】
他の実施形態では、方法は、液体媒体とエアポケットとの界面に形成され、液体媒体とエアポケットの間の圧力差によって画定される仮想壁を備える。他の実施形態では、仮想壁は、圧力差がゼロより大きい場合に形成及び維持されるように構成される。
【0024】
「上部」、「底部」、「水平の」、「垂直の」、「長手方向の」、「横方向の」及び「端部」などのここで用いられる向きについての用語は、説明する実施形態のコンテキストにおいて用いられる。ただし、本開示は、説明する向きに限定されるべきでない。実際に、他の向きが可能であり本開示の範囲内にある。直径又は半径などのここで用いられる円形状に関する用語は、完全な円形構造体を要件としないように理解されるべきであり、むしろ左右から測定可能な断面領域を有する任意の適切な構造に適用されるべきである。「円形の」、「円筒状の」、「半円の」、「半円筒状の」又は任意の関連若しくは同様の用語などの形状に関する用語は、一般的に、円形、円筒形又は他の構造体の数学的定義に厳密に従う必要はないが、合理的に近い近似体である構造体を含み得る。
【0025】
「can」、「could」、「might」又は「may」などの条件付き文言は、特に断りがなく、あるいは用いられるコンテキスト内でそれ以外に理解されない限り、一般的には、特定の構成、要素及び/又はステップを特定の実施形態が含み、又は含まないことを伝えるものである。したがって、そのような条件付き文言は、一般的に、構成、要素及び/若しくはステップが1以上の実施形態に何らかの形で必要とされることを意味することを意図していない。
【0026】
文言「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ」などの接続語は、特に断りがない限り、項目、用語などが、X、Y又はZのいずれかであり得ることを一般的に伝えるのに用いられるようなコンテキストで理解される。したがって、そのような接続語は、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ及びZの少なくとも1つの存在を必要とすることを示すことを一般的には意図していない。
【0027】
ここで用いられる「近似的に」、「約」及び「実質的に」の用語は、依然として所望の機能を実行し又は所望の結果に到達する記載の量に近い量を表す。例えば、ある実施形態では、「近似的に」、「約」及び「実質的に」の用語は、コンテキストが指示し得るように、記載の量の10%以下の量のことに言及し得る。ここで用いられる「一般的に」の用語は、特定の値、量又は特徴を主に含み又はその傾向にある値、量又は特徴を表す。例として特定の実施形態では、コンテキストが指示し得るように、「略平行の」の用語は、厳密な平行から20°以下まで逸脱するものに言及し得る。
【0028】
明示されない限り、「a」又は「an」などの冠詞は、説明する1以上の項目を含むように一般的には解釈されるべきである。したがって、「~ように構成されたデバイス」などの文言は、記載される1以上のデバイスを含むことが意図される。そのように記載される1以上のデバイスはまた、記載の詳細を実行するようにまとめて構成され得る。例えば、「詳細A、B及びCを実行するように構成されたプロセッサ」は、詳細B及びCを実行するように構成された第2のプロセッサとともに動作して詳細Aを実行するように構成された第1のプロセッサを含み得る。
【0029】
用語「備える」、「含む」、「有する」などは、同義であり、制約がない形態で包括的に用いられ、追加的要素、構成、挙動、動作その他を除外しない。同様に、用語「ある」、「特定の」などは、同義であり、制約がない形態で用いられる。また用語「又は」は、例えば、要素の列挙を結合するのに用いられた場合に、用語「又は」が列挙における要素の1つ、一部又は全部を意味するようにその包括的趣旨で(及びその除外的趣旨でなく)用いられる。
【0030】
ここで与えられる範囲は、その範囲内の値のすべての省略表現であるものとして理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50と、さらに例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9などの前述の整数の間のすべての介在する小数とからなるグループによる任意の数、数の組合せ又は部分範囲を含むように理解される。部分範囲に関して、範囲のいずれかの端点から拡張する「ネスト化された部分範囲」が、具体的には考えられる。例えば、1~50の例示的な範囲のネスト化された部分範囲は、一方の方向に1から10、1から20、1から30及び1から40、又は他方の方向に50から40、50から30、50から20及び50から10を備え得る。
【0031】
全体として、請求項の文言は、請求項に採用される文言に基づいて広く解釈されるものである。請求項の文言は、本開示において説明及び記載され又は本出願の審査中に記載される非排他的な実施形態及び例に限定されるものではない。
【0032】
種々の実施形態は、説明を目的として添付の図面で示され、実施形態の範囲を限定するように解釈されるべきでない。さらに、開示される異なる実施形態の種々の構成は追加的実施形態を形成するように組み合わせ可能であり、それは本開示の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A図1Aは、従来技術のセンサの上面図を示し、センサ素子及び電気部品が流体と電気部品の間の不要な相互作用を防止するように絶縁体(例えば、非腐食性シリコーンゴム、シリコーン二酸化物層、空気腔)で被覆される。
図1B図1Bは、他の従来技術のセンサの上面図を示し、センサ素子及び電気部品が、流体と電気部品の間の不要な相互作用を防止するようにセンサ素子周辺で液体セルを封止することによって分離される。
図2A図2Aは、本開示の例示的な実施形態による入力及び出力インターデジタルトランスデューサの対を含む液体セルの上面図を示す。
図2B図2Bは、本開示の例示的な実施形態による入力インターデジタルトランスデューサの対及びリフレクタを含む図2Aの液体セルの上面図を示す。
図3A図3Aは、例えば、図2A及び2Bに示す液体セルの例示的な実施形態における、仮想壁及び仮想壁に印加される圧力の概略図を示す。
図3B図3Bは、例えば、図2A及び2Bに示す液体セルの例示的な実施形態における、仮想壁及び仮想壁に印加される圧力の概略図を示す。
図4図4は、本開示の例示的な実施形態によるインターデジタルトランスデューサ及び/又はリフレクタ並びにエアポケットの位置を示す液体セルの断面図を示す。
図5A図5Aは、図4の液体セルの例示的な実施形態の断面図を示し、エアポケットが例えば両面テープ(例えば、図5A)を用いて形成され得る。
図5B図5Bは、図4の液体セルの例示的な実施形態の断面図を示し、エアポケットが例えばガスケット(例えば、図5B)を用いて形成され得る。
図6A図6Aは、本開示による液体セルの例示的な実施形態の上面図を示し、液体セルに形成された流体チャネルが様々な形状及び/又は経路を有するように上部層によって画定され得る。
図6B図6Bは、本開示による液体セルの例示的な実施形態の上面図を示し、液体セルに形成された流体チャネルが様々な形状及び/又は経路を有するように上部層によって画定され得る。
図7図7は、両面テープによって形成されるエアポケットを有する表面弾性波デバイスを形成する本開示による液体セルの例示的な実施形態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、表面弾性波(SAW)センサの応答を著しく変更/分断することなく、1以上の仮想壁(例えば、空気-液体仮想壁)が、液体セルに組み込まれ、液体(例えば、化学的試料、生物学的試料など)をSAWセンサの電気素子又はインターデジタルトランスデューサ(「IDT」)又はリフレクタとインターフェースさせるように構成され得るという発見に少なくともある程度基づく。例えば、液体セルは、弾性波の経路においてエアポケットで電気素子(例えば、IDT及び/又はリフレクタ)から液体を隔離し得る。従来技術のセンサとは対照的に、弾性波の経路には物理的な壁がない。
【0035】
種々の液体セル組立体及び製造方法が、1以上の所望の改良を達成するのに採用され得る種々の例を示すように開示される。表示の目的のために、具体的には液体媒体を用いて生物化学的分析物に関して特定の実施形態を開示する。ただし、ここでの技術は、他のコンテキストにおいて同様に用いられ得る。実際に、説明する実施形態は、単なる例であり、示される開示全体並びに本開示の種々の態様及び構成を限定することを意図しない。ここで説明する一般的な原理は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、ここで検討されるもの以外の実施形態及び用途に適用され得る。本開示は、ここで開示又は提示される原理及び構成と一致する最も広義な範囲となるべきである。
【0036】
概要
表面弾性波(「SAW」)によるセンサは、液体媒体における種々のタイプの生物化学的検知及び分析を実行するのに用いられ得る。例えば、水平せん断SAWセンサ(「SH-SAW」)と、誘導SH-SAW(ラブ波デバイスとも呼ばれる)と、導波路のないSAWセンサとを含む種々のSAWデバイスが開発されている。
【0037】
図1A及び1Bは、従来技術のセンサ1及び従来技術のセンサ5をそれぞれ示す。従来技術のセンサは、圧電基板(不図示)と、基板表面の一方の側における入力インターデジタルトランスデューサ(「IDT」)40aと、基板表面の他方の側における出力IDT40bと、IDTに電気信号を供給する電気コンタクト60とを含み得る。入力及び出力IDTの40aと40bの間の空間は遅延線として知られ、それにわたって表面弾性波が伝搬することになる。センサ素子30は、遅延線に沿って圧電基板表面に位置する。
【0038】
入力IDT40aは、電気信号を弾性機械的波動に変換する。この弾性機械的波動は、圧電基板表面にわたって伝搬するように構成される。弾性波が出力IDT40bに到達した場合には、弾性波は電気信号に変換し戻される。遅延線に物理的(例えば、温度)又は化学的(例えば、質量又は粘度)変化が生じた場合には、これが弾性波の伝搬に影響を及ぼし得る。弾性波の伝搬の変化は、例えば、位相、周波数及び/又は時間遅延の観点で入力及び出力電気信号のバラつきを検出することによって測定可能である。
【0039】
液体媒体において生物化学的分析のためにSAWセンサを用いる場合に生じる課題は、信頼性のある流体システムの開発である。IDTは、漏電を防止するために、適切に封止され、又は液体媒体から隔離されなくてはならない。IDT及び電気コンタクトを流体から隔離するいくつかのアプローチが開発されている。図1Aは、従来技術のセンサ1がフローセル20と、センサ素子30と、電気コンタクト60とを含むアプローチを示す。従来技術のセンサ1の電気コンタクト60と、入力IDT40aと、出力IDT40bとは、絶縁体50で被覆される。絶縁体50は、非腐食性シリコーンゴム、シリコーン二酸化物層又は空気腔などの様々な材料から作製され得る。従来技術のセンサ1は、液体がセンサ1を通じて流動可能となるように、注入口10及び排出口12を有する上部層70を含み得る。流体がセンサ素子30に導入された場合に、絶縁体50は流体と、電気コンタクト60/IDT40a及び40bとの間で物理的バリアとして作用する。
【0040】
図1Bは、液体媒体と電気素子の間の相互作用を制限する他のアプローチを示す。図1Bの従来技術のセンサ5において、フローセル20は、センサ素子30上に流体チャネルを形成するように圧電基板の上部に置かれる。フローセル20は、IDTとセンサ素子を分離する壁を有し、通常、ゴムシールを用いて基板に封止される。流体は、フローセル20の上部層70における注入口10に導入され、入力IDT40aと出力IDT40bの間の領域に閉じ込められる。フローセル20によって、液体は、IDT40a及び40b並びに電気コンタクト60へ露出されることなくセンサ素子30に接触できる。そして、流体は、フローセル20の上部層70に位置する排出口12から除去され得る。
【0041】
上記の例(例えば、従来技術のセンサ1及び従来技術のセンサ5)では、双方のセンサが、IDTとセンサ素子の間に物理的な壁を有する。不都合なことに、壁がデバイス表面に押圧された場合には、弾性波は乱され又は分断され、結果としてセンサ応答の全体的な損失及び歪みが非常に大きくなる。したがって、これらSAWによるデバイスの性能を最大化するために、センサ素子にわたって伝搬した音響信号が音響信号によって摂動を受けないことを保証しつつ、センサは電気素子を液体媒体から保護する構造で設計されるべきである。
【0042】
センサ応答を著しく分断することなく、液体がSAWセンサとインターフェース可能となる液体セルの実施形態をここに開示する。液体セルは、弾性波の経路と電気素子(例えば、IDT及び/又はリフレクタ)とをエアポケットで隔離する。ある実施形態では、これらのエアポケットは、空気-液体仮想壁を用いることによって形成される。従来技術のセンサとは対照的に、弾性波の経路に沿って物理的な壁はない。
【0043】
図2A及び2Bは、液体セル100のインターフェースを有するSAWセンサの2つの例示的な実施形態を示す。以下でより詳細に検討するように、液体セル100は、センサ基板182に配設された周壁180を有する封止部材210a及び210bを含み得る。ある例では、センサ基板は、圧電性又は金属の導波路である。液体セル100の周壁180は、弾性波の経路及び電気素子(例えば、140a及び140bなどのIDT並びにリフレクタ190)の双方を囲み得る。上部プレートは、注入口110及び排出口112と、周壁210a及び210bとを有する六角形状パターンエリアに位置するように構成可能であり、液体材料を液体セル100に導入又はそれから除去可能とするように少なくとも1つの開口部を設ける。開口部110及び112は、いずれの形状であってもよく、センサ素子130上に直接又はセンサ素子130の側に位置し得る。ある実施形態では、電気素子(例えば、IDT及びリフレクタ)の間のエリア全体は、液体材料が導入された場合に空気でキャップされる。以下でより詳細に検討するように、開示される液体セル100の構成によって、圧力は、液体試料が開口部から液体セル100に導入されて、検知エリアに導入された液体から電気素子(例えば、IDT及びリフレクタ)を隔離可能な空気-液体仮想壁を形成した場合に生成可能となる。
【0044】
液体セルの概要
図2A及び2Bは、液体セル100の2つの実施形態の上面図を示す。図2A及び2Bにおいて液体セル100及び105の双方の実施形態にそれぞれ示すように、液体セル100及び液体セル105は、センサのベースとして作用するデバイス基板(不図示)を含み、複数の素子(例えば、センサ素子、電気素子など)を支持することができる。ある実施形態では、デバイス基板は、圧電材料を備える。
【0045】
複数の素子は、デバイス基板の表面に設けられ得る。例えば、図2A及び2Bにそれぞれ示すように、液体セル100及び液体セル105は、基板111の表面に設けられた複数のセンサ素子120及び130を含み得る(図2Aにおける斜線領域参照)。図2Aに示すセンサは、各センサ素子130の対向する側における入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bと、入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bに結合された電気コンタクト160とを備える。
【0046】
図2Bに示すセンサは、各センサ素子130の一方の側における入力トランスデューサ140a、及びセンサ素子130の他方の側におけるリフレクタ190を備える。トランスデューサは、電気コンタクト160に結合される。電気コンタクト160は電気信号を入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bに伝送するように構成され、それらは電気信号を音波に変換するように構成される。液体セル100及び液体セル105は2つのセンサ素子130を有して示されるが、開示される液体セルは任意数(例えば、1、2、3、4、5つなど)のセンサ素子130を含み得る。ある実施形態では、センサ素子130は、デバイスの基板表面の中心にあり得る。ある実施形態では、センサ素子130は、中心から外れた構成を有し得る。センサ素子130は、音波の伝搬経路に沿って設けられる。
【0047】
上記のように、センサ素子130は、信号を入力トランスデューサ140aから出力トランスデューサ140bに伝搬させるように構成可能である。ある実施形態では、センサ素子130は、表面弾性波によるセンサである。センサ素子130は、1mm~20mmの長さを有し得る。ある実施形態では、センサ素子130は、1mm未満、1mm~2mm、2mm~3mm、3mm~4mm、4mm~5mm、5mm~6mm、6mm~7mm、7mm~8mm、8mm~9mm、9mm~10mm、10mm~11mm、11mm~12mm、12mm~13mm、13mm~14mm、14mm~15mm、15mm~16mm、16mm~17mm、17mm~18mm、18mm~19mm、19mm~20mm又は20mmより長い長さを有し得る。ある例では、センサ素子130は、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm又は20mmの長さを有し得る。ある実施形態では、センサ素子130は、生物学的又は化学的な層を含み得る。ある例では、生物学的又は化学的な層は、生体材料及び/又は化学的な検出をもたらすように構成され得る。
【0048】
ある実施形態では、センサ素子130は、バルク弾性波(「BAW」)センサである。BAWセンサは、2つの電極間に挟まれた少なくとも1つの圧電材料で構成されるデバイスである。電極は、BAW波動を生成可能なある応力を生成する圧電材料に交流電場を印加する。ある実施形態では、BAWセンサは高い及び低い音響インピーダンスを有する層(例えば、ブラッグ反射器)を含み、これらの層は浮遊する。液体又は気体のためのBAWセンサは、BAWセンサの表面と相互作用するものがその共振周波数を変化させることに基づいて動作する。共振周波数を(例えば、周波数又は位相を測定することにより)追跡及び復号することによって、センサの表面に付着した粒子の質量負荷及び粘度が測定され得る。ある例では、BAWセンサは、例えば、ALN、PZT、石英、LiNbO3、ランガサイトなどのような材料を備える圧電基板を含み得る。ある実施形態では、BAWセンサは、金、アルミニウム、銅などのような材料を備える電極を含み得る。ある例では、BAWセンサは、高い又は低い音響インピーダンス材料を備えるブラッグ反射器を含み得る。ある例では、BAWセンサは、分析物と相互作用する層を含み得る。この層は、生物活性層であってもよく、抗体又は抗原を含んでもよく、気体感応性であってもよく、パラジウムを備えるなどであってもよい。ある実施形態では、BAWセンサは、弾性波を伝搬するように構成された任意の材料を含み得る。
【0049】
複数の入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bの次に、ある例では、入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bの対が、センサ素子130と同じ軸に沿って配列される。ある実施形態では、入力トランスデューサ140aはセンサ素子130の一方の側に設けられる一方、リフレクタ190はセンサ素子130の反対側に設けられる(例えば、図2B参照)。音波は、入力トランスデューサ140aからセンサ素子130をわたってリフレクタ190に向かって進み、トランスデューサ140aに反射し戻され、分析用に電気信号に変換し戻される。
【0050】
ある実施形態では、図2A及び2Bに示すように、電気素子の対(例えば、入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140b)の少なくとも一方は、電気コンタクト160に隣接して載置され得る。図2Aに示す例示的な実施形態で示すように、電気素子の対は、入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bの対であり得る。図2Aにおける双方の電気素子が入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bであるように、双方の入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bは電気コンタクト160に隣接して載置される。図2Bに示す例示的な実施形態では、電気素子の対の一方が入力トランスデューサ140aであり、電気素子の対の他方がリフレクタ190である。図2Bに示す例では、電気コンタクト160は、入力トランスデューサ140aに電力を供給するように入力トランスデューサ140aに隣接して載置される。
【0051】
図2A及び2Bに示すように、上部層170(例えば、LiTaO結晶エリア/領域)は、液体媒体がセンサ素子上に直接挿入可能なようにセンサ素子130の中心に位置する割れ目を含む。ある実施形態では、上部層170は、注入口も排出口も含まない。ある実施形態では、上部層170は、液体媒体が流体チャネル120を通じて流動可能となるように構成された注入口110及び排出口120を含む。以下でより詳細に検討するように、空気-液体仮想壁は、液体媒体が電気素子と接触するのを防止する流体チャネル120に液体媒体が導入された場合に形成され得る。ある例では、形成された空気-液体仮想物は、非常に薄くてもよく、約200μm以上であり得る。ある実施形態では、フローセル100及びフローセル105は、デバイスの基板(不図示)、電気素子(例えば、(例えば、フローセル100に示すような)入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bの対、又は(例えば、フローセル105に示すような)入力トランスデューサ140a及びリフレクタ190)及びセンサ素子130の少なくとも一部分上に配設された上部層170を含み得る。
【0052】
上部層170は、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンなどのようなプラスチック材料で構成可能である。ある実施形態では、上部層170は、ガラス、石英などのような材料で構成可能である。ある実施形態では、上部層170は、0.1mm~2cmの厚さを有し得る。ある実施形態では、上部層170は、0.1mm未満、0.1mm~0.2mm、0.2mm~0.4mm、0.4mm~0.6mm、0.6mm~0.8mm、0.8mm~1.0mm、1.0mm~1.2mm、1.2mm~1.4mm、1.4mm~1.6mm、1.6mm~1.8mm、1.8mm~2.0mm又は2.0mmより厚い厚さを有し得る。ある実施形態では、上部層は、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm又は2.0mmのうちの任意の1つであり得る。ある実施形態では、上部層170は、射出成形され得る。
【0053】
ある例では、図2A及び2Bに示すように、フローセル100は、分析用に流体媒体を受けるように構成された流体チャネル120を含み得る。ある実施形態では、流体チャネル120は、複数の電気素子及びセンサ素子130に対して非平行である。他の実施形態(不図示)では、流体チャネル120は、流体チャネル120(例えば、上部層170における割れ目)がフローセル100の複数のセンサ素子130の一部を露出するように上部層170における開口部から形成される。ある実施形態では、流体チャネル120は、2mmの幅又は10mmの長さを有し得る。ある実施形態では、流体チャネル120は、フローセル100の検知エリアを画定するように構成される。
【0054】
液体媒体をフローセル100及び/又は105に導入するために、フローセル100及び/又は105は注入口110及び排出口112を含み得る。ある実施形態では、注入口110及び排出口112は、上部層170に形成され得る。注入口110及び排出口112は、複数のセンサ素子130の一部分上に延在する流体チャネル120の対向端部に位置し得る。
【0055】
液体セル100及び液体セル105は、周壁180を含んで、液体媒体が電気素子(例えば、フローセル100に配置されるような入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bの対、又はフローセル105に配置されるような入力トランスデューサ140a及びリフレクタ190の対)と接触しないように、複数の電気素子(例えば、フローセル100に配置されるような入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140bの対、又はフローセル105されるような入力トランスデューサ140a及びリフレクタ190)と液体媒体の間に空気-液体仮想壁が形成されるようにエアポケット182を形成し得る。空気-液体仮想壁に関する検討を、以下でより詳細に提供する。
【0056】
周壁180は、様々な構成を有し得る。例えば、図2A及び2Bに示すように、液体セル100及び/又は105は、電気素子160の各々の外部に沿ってそれらの間にある複数の平行な周壁180を含み得る。液体セル105はまた、垂直な周壁180が複数の平行な周壁180の各々に接続されるように、電気素子160の一部にわたって延在する垂直な周壁180も含み得る。ある実施形態では、周壁180は、1μm~1mmの厚さを有する。ある実施形態では、周壁180の厚さは、1μm未満、1μm~50μm、50μm~100μm、100μm~150μm、150μm~200μm、200μm~250μm、250μm~300μm、300μm~350μm、350μm~400μm、400μm~450μm、450μm~500μm、500μm~550μm、550μm~600μm、600μm~650μm、650μm~700μm、700μm~750μm、750μm~800μm、800μm~850μm、850μm~900μm、900μm~950μm、950μm~1mm又は1mmより厚い。ある例では、周壁180の厚さは、1μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm又は1mmである。ある実施形態では、周壁180の厚さは、フォトパターナブル材料(例えば、フォトレジスト)、両面テープ、3D印刷材料などを用いて製造可能である。
【0057】
仮想壁の概要
上記のように、開示される液体セルは、液体媒体が電気素子と接触するのを防止する空気-液体仮想壁を含み得る。図3A及び3Bは、空気-液体仮想壁184を形成するように印加される種々の圧力を示す。図3Aは2つの仮想壁184の間の流体チャネル120を示し、一方、図3Bは物理的な壁142と170の間に形成された仮想壁184及び種々の印加される圧力の断面図を示す。
【0058】
図3A及び3Bに示すように、多くの圧力が、液体セル内に印加されて空気-液体仮想壁184を形成する。種々の圧力は、例えば、
atm=流体注入口から印加される大気圧、
=チャネルエリアにおける液体のマス重量(mass weight)であり、これは非常に小さく、一般的に、マイクロ流体チャネルにおける液体については無視可能であり、
=流体チャネルと排出口の間の圧力差、
=空気チャンバ内の空気圧、及び
=液体-空気界面にわたって生じる表面圧力
である。
【0059】
前述の圧力の観点で、仮想壁184は、臨界圧力(ΔP)を用いて決定される。臨界圧力(ΔP)は、仮想壁の空気側(P+P)と液体側(Patm+P+P)の圧力差の式[1]:
式[1] t.P=(P+P)-(Patm+P+P
として規定される。
【0060】
空気圧(P)は、理想気体の法則を用いて計算可能である。(空気-液体仮想壁によって元の容積Vで形成された)封止空気チャンバが圧縮された場合には、チャンバの容積は減少して平衡(V)に到達することになる。封止チャンバ内の平衡空気圧(P)は、以下の式[2]:
式[2] P=Patm(V/V-1)
を用いて計算可能であり、ここで、
=封止チャンバ内の空気の元の容積、及び
=封止チャンバ内にトラップされた空気の圧縮容積
である。
【0061】
ある実施形態では、まず、大気圧(Patm)での空気は、仮想壁によって閉じ込められた既知の容積(V)の封止チャンバ内に含まれる。液体圧力が仮想壁に印加された場合には、一部の液体が封止チャンバに追い込まれるので、内部の空気を圧縮し、Pの平衡圧力に到達する。ある例では、チャンバが周囲の周壁に任意の開口部を有する場合には、平衡圧力はゼロである。
【0062】
液体が仮想壁を通じてポンピングされる場合には、液体圧力(P)は、w>>Hの浅いチャネルに対してハーゲン・ポアズイユフロー(Hagen-Poiseuille flow)の式[3]:
式[3] P=72・μ・Q・L/(AH
を用いて近似可能な仮想壁に印加され、ここで、
Q=容積流量、
H=液体チャネルの深度、
w=液体チャネルの幅、
L=仮想壁と排出口の間の距離、
μ=液体粘度、及び
A=チャネルの断面積
である。
【0063】
液体圧力は、容積流量(Q)及び接続チャネルの寸法を調整することによって制御可能である。
【0064】
表面圧力(P)は、式[4]:
式[4] P=2・σ・sin(θ-0.5π)/H
として取得可能な液体-空気界面にわたって生じ、ここで、
σ=液体-空気表面張力係数、及び
θ=材料の表面特性に依存して、前進(θ>90°)又は後退(θ<90°)し得る静止接触角である。表面圧力は、材料の表面特性に依存して、プラス又はマイナスのいずれかである。後退接触角(θ)の親水性材料に対して表面圧力はマイナスであり、一方、疎水性材料(θ>90°)に対して表面圧力はプラスである。
【0065】
仮想壁は、臨界圧力t.Pをゼロより大きく維持することによって形成及び維持可能である。図4は、電気素子(例えば、入力トランスデューサ140a及び出力トランスデューサ140b、並びに/又は入力トランスデューサ140a及びリフレクタ190についてのフローセル105の配置)及びエアポケット182の位置を示す液体セル100の断面図を示す。図示するように、液体セル100は、センサ素子130の両側にセンサ素子130が1対の電気素子160を有する底部デバイス基板102を有する。ある例では、センサ素子130の第1の側は、入力トランスデューサ140aを有してもよく、第2の側に出力トランスデューサ140b又はセンサ素子130のリフレクタ190を有していてもよい。上記のように、周壁180は、電気素子160の対の一部に係合し、少なくとも電気素子160の一部、及び電気素子160の対に隣接するセンサ素子130のいずれかの端部の一部分上に配設され得る。エアポケット及び空気-液体仮想壁を形成するために、上部層170は、デバイス基板102、複数のセンサ素子130及び複数の電気素子160上に載置される。ある実施形態では、エアポケット182の各々は、電気素子160の対の各々の表面の少なくとも一部を被覆するように構成される。エアポケット182は、流体チャネル120において液体媒体の接触から電気素子160の対を隔離するように構成可能である。ある実施形態では、周壁180は、上部層170の表面に取り付けられる。
【0066】
仮想壁の実施形態
空気-液体仮想壁は、様々な方法で形成可能である。例えば、ある実施形態では、空気-液体仮想壁は、閉じ込められたチャンバを形成することによって形成される。ある実施形態では、上部層は、疎水性又は親水性表面のいずれかであり得る。ある例では、仮想壁は、未封止のチャンバを形成することによって形成される。ある例では、上部層は、疎水性表面を有し得る。
【0067】
上記のように、仮想壁を形成するために:t.P=(P+P)-(Patm+P+P)について、t.P>0であれば仮想壁が形成される。親水性表面が形成される実施形態では、Pはマイナスである。疎水性表面が形成される例では、Pはプラスである。
【0068】
図2Bと同様の実施形態(例えば、未封止チャンバ)では、Pはゼロであり得る。図2Bの液体セル100の表面は、疎水性であっても親水性であってもよい。ある実施形態では、図2Bの液体セル100は疎水性であることが好ましい。
【0069】
図2Aと同様の実施形態(例えば、封止チャンバ)では、Pはゼロより大きくなり得る。図2Aの液体セル100の表面は、疎水性であっても親水性であってもよい。ある実施形態では、図2Aの液体セル100は疎水性であることが好ましい。
【0070】
仮想壁を形成するためのエアポケットは、様々な方法を用いて形成可能である。ある実施形態では、エアポケットは、両面テープ、ガスケット(例えば、ポリジメチルシロキサン、シリコーン)、フォトリソグラフィ(例えば、SU-8又はフォトレジスト若しくはフォトパターナブル材料)、射出成形(例えば、ポリカーボネート、PMMA)などを用いて形成可能である。
【0071】
ある実施形態では、仮想壁は、液体セルの基板と上部層の間に形成される。ある例では、上部層と底部層の間に形成されるギャップは、1μm~1mmである。ある実施形態では、形成されるギャップは、1μm未満、1μm~50μm、50μm~100μm、100μm~150μm、150μm~200μm、200μm~250μm、250μm~300μm、300μm~350μm、350μm~400μm、400μm~450μm、450μm~500μm、500μm~550μm、550μm~600μm、600μm~650μm、650μm~700μm、700μm~750μm、750μm~800μm、800μm~850μm、850μm~900μm、900μm~950μm、950μm~1mm又は1mmより大きい。ある例では、形成されるギャップは、1μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm又は1mmである。
【0072】
以下で説明する液体セル200、300、400、500、600は、多くの点で液体セル100に類似し又は一致する。したがって、液体セル100の構成要素を識別するのに用いられる数字は、液体セル100の同様の構成を識別するように100ずつ増加する。この番号付けの慣例は、全般的に、残りの図面に適用される。この明細書における任意の実施形態に開示される任意の構成要素又はステップは、他の任意の実施形態で用いられ得る。
【0073】
図5A及び5Bは、異なる方法を用いて形成されたエアポケットを有する液体セルの断面図を示す。まず図5Aのフローセル200では、上記のフローセル100、105と同様に、フローセル200は、センサ素子230を有するデバイス基板202と、複数の電気コンタクト260に隣接する複数の電気素子(例えば、入力トランスデューサ240a及び出力トランスデューサ240b又は不図示のリフレクタ)とを有する。エアポケット282は、テープ286(例えば、両面テープ)及びプラスチックシート280を用いて形成可能である。上述のように、テープ286は、第1の側では複数の電気素子260に、及び第2の側ではプラスチックシート280に取り付けられる。上記のように、プラスチックシート280は、入力トランスデューサ240a及び出力トランスデューサ240bの対の一部分、並びにセンサ素子230の一部分上に配設される。ある実施形態では、プラスチックシート280は、上部層270の下面に取り付けられ得る。
【0074】
図5Bの液体セル300は、液体セル100、105と同様に、センサ素子330を有するデバイス基板302と、複数の電気コンタクト360に隣接する複数の電気素子(例えば、入力トランスデューサ340a及び出力トランスデューサ340b、又は不図示のリフレクタ)とを有する。エアポケット382は、ガスケット380を用いて形成可能である。ある実施形態では、ガスケット380は、電気コンタクト360の複数の表面及び上部層370の下面に取り付けられる。上記のように、ガスケット380は、入力トランスデューサ340a及び出力トランスデューサ340bの一部分、並びにセンサ素子330の一部分上に配設される。
【0075】
ある実施形態では、エアポケットがより疎水性となるように、表面処理が液体セルに付与され得る。ある例では、表面処理は、基板材料表面において疎水性材料の薄層をコーティング又は化学接合することによって付与される。エアポケットは、任意の形状、サイズ又は寸法を有し得る。ある実施形態では、エアポケットは、0.1μm~1mmの範囲の厚さを有し得る。
【0076】
ある実施形態では、エアポケット及び/又は流体チャネルの構造は自己画定され得る。ある実施形態では、流体チャネルの形状は変動し得る。ある例では、流体チャネル420の形状は、上部層470の構造によって画定され得る。例えば、上部層は、空気-液体接合の表面張力をもたらす。様々な流体チャネルの例を、図6A及び6Bに示す。まず図6Aでは、液体セル400は、センサ素子430の両側に1対の電気素子を有するセンサ素子430を有する。例えば、液体セル400は、第1の端部に入力トランスデューサ440a、及び第2の端部にリフレクタ490を含み得る。電気コンタクト460は、入力トランスデューサ440aに電力を供給するように入力トランスデューサ440aに隣接して位置し得る。周壁480は、エアポケット482を形成するように構成される。上記のように、上部層470は、電気素子460及びセンサ素子430上に配設される。図示するように、流体チャネル420は、注入口410と排出口412の間に形成される。図6Aに見られるように、流体チャネル420は、傾斜側及び湾曲側を有する。
【0077】
図6Bの液体セル500は、自己画定された流体チャネルの他の例を示す。液体セル500は、センサ素子530の両側に1対の電気素子を有するセンサ素子530を有する。例えば、液体セル530は、第1の端部に入力トランスデューサ540a、及び第2の端部にリフレクタ590を含み得る。電気コンタクト560は、トランスデューサ540aに電力を供給するように入力トランスデューサ540aに隣接して位置し得る。周壁580は、エアポケット582を形成するように構成される。上記のように、上部層570は、電気素子560及びセンサ素子530上に配設される。図示するように、流体チャネル520は、注入口510と排出口512の間に形成される。図6Bに示すように、流体チャネル520は、2つの段階的傾斜側を有する。
【0078】
実施例
図7は、本開示による両面テープによって形成されるエアポケットを有する表面弾性波(「SAW」)デバイス(例えば、液体セル600)の例を示す。図7の液体セル600は、流体チャネル620、複数の電気素子(例えば、入力トランスデューサ640a及びリフレクタ690)及び複数のエアポケット682と、さらに読取り部がセンサと接触するセンサのコンタクトパッド660とを含む。
【0079】
SAWデバイスは、厚さ500μm及び直径100mmの36°YカットX伝搬リチウムタンタライト(LiTaO3)ウエハに標準的なフォトリソグラフィ技術を用いて製造された。ウエハは、まず、バレル型アッシャーにおいて洗浄され、続いて1容量パーセントのフッ化水素酸(HF)に浸漬され得る。そして、フォトレジストが、ウエハに付加され、フォトリソグラフィ処理と、続いてチタン(10nm)/アルミニウム(70nm)のメタライゼーション及びリフトオフ処理とでパターニングされて、インターデジタルトランスデューサ、アルミニウム導波管及びリフレクタを形成した。そして、ウエハは、個々のダイにダイス化された。
【0080】
図7に示すSAWデバイスでは、空間としてエアポケットが、圧力感応性両面テープ(厚さ125μm、Adhesive Research社、Cat.#90445)を用いて形成された。エアポケットエリアは、レーザによって切断された。そして、テープは、厚さ250μmのプラスチックシートに結合される。さらに、コンタクトパッド及び流体チャネルの開口エリアは、レーザ切断された。最終的に、プラスチックシートは、SAWデバイスに結合された。
【0081】
まとめ
特定の実施形態及び例(例えば、生物化学的分析)のコンテキストで液体セルは開示されたが、本開示は、具体的に開示された実施形態を超えて他の代替的実施形態及び/又は実施形態の使用、特定の変形例並びにそれらの均等物に拡張する。例えば、開示され網羅する範囲のいずれかは、人間の涙液内の塩分濃度を測定するドライアイ検出に、血液、尿、鼻腔スワブ、膣スワブなどの生物学的試料内のウイルス、細菌、タンパク質、抗体、抗原、DNA、RNAの量を測定する人間及び動物の疾病診断に、又はその他の方法に用いられ得る。開示される実施形態の種々の構成及び態様は、譲渡人の変更モードを形成するために、相互に組み合わせ又は置換され得る。本開示の範囲は、ここで説明する特定の開示される実施形態によって限定されるべきでない。
【0082】
別々の実施例のコンテキストにおいて本開示で説明する特定の構成はまた、単一の実施例と組み合わせても実施され得る。逆に、単一の実施例のコンテキストにおいて説明する種々の構成はまた、複数の実施例で独立して又は任意の適切な部分的組合せで実施されてもよい。構成は特定の組合せにおいて作用するように上述され得るが、場合によっては、特許で請求される組合せによる1以上の構成が組合せから削除されてもよく、組合せは任意の部分的組合せ又は任意の部分的組合せの変形として主張され得る。
【0083】
さらに、動作が特定の順序で本明細書では図面に示され又は説明され得るが、そのような動作は示された特定の順序又は逐次的順序で実行される必要はなく、望まれる結果を実現するのに、すべての動作が実行される必要はない。図示も説明もしていない他の動作が、方法及び処理の例に組み込まれ得る。例えば、1以上の追加的動作は、説明する動作のいずれかの前、後、それと同時又はそれらの間に実行されてもよい。さらに、動作は、他の実施例において再配置又は再順序付けされてもよい。また、上記の実施例における種々のシステム構成要素の分離は、すべての実施例においてそのような分離を要件とするように理解されるべきでなく、説明する構成要素及びシステムは、一般的に、単一の製品に共に統合され又は複数の製品にパッケージングされ得ると理解されるべきである。その上、他の実施例も本開示の範囲内にある。
【0084】
ある実施形態は、添付図面と関連して説明された。図面は拡縮するように描写及び/又は図示されるが、そのような拡縮は、図示されるもの以外の寸法及び比率も考慮され本開示の範囲内にあるので限定されるべきでない。距離、角度などは、説明的なものに過ぎず、説明されるデバイスの実際の寸法及びレイアウトに対する厳密な関係性を必ずしも有するものではない。構成要素は、追加、除去及び/又は再配置可能である。さらに、種々の実施形態と関連して任意の特定の構成、態様、方法、特性、特徴、品質、特質、要素などについてのここでの開示は、ここで記載される他のすべての実施形態において用いられ得る。その上、ここで説明される任意の方法は、列挙されたステップを実行するのに適した任意のデバイスを用いて実践されてもよい。
【0085】
要約すると、最先端の組立体の種々の実施形態及び例が開示される。組立体はそれらの実施形態及び例のコンテキストにおいて開示したが、本開示は、具体的に開示された実施形態を超えて他の代替的実施形態及び/又は実施形態の他の使用と、さらに特定の変形例及びそれらの均等物とに拡張する。本開示は、開示される実施形態の種々の構成及び態様が相互に組み合わせ又は置換され得ることを明らかに考慮している。したがって、本開示の範囲は、上記の開示された特定の実施形態によって限定されるべきでなく、以下に続く特許請求の範囲を公正に読み取ることによってのみ決定されるべきである。





図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7