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特許7396985プローブ、カテーテル、光学イメージングシステム、及び光コヒーレンストモグラフィシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】プローブ、カテーテル、光学イメージングシステム、及び光コヒーレンストモグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20231205BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61B 1/012 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61B1/12 521
A61B1/00 526
A61B1/00 715
A61B1/00 650
A61B1/012 511
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2020523400
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018057584
(87)【国際公開番号】W WO2019084316
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】62/577,042
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】メルニトチョク セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ティアニー ギレルモ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボールドウィン グレイス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ガルデッキ ジョゼフ エイ.
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-129904(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0163664(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0130362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196459(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0313477(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0027438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位部及び遠位部を有するプローブであって、
前記プローブの前記近位部に配置された近位ポートと、前記プローブの前記遠位部に配置された遠位ポートと、内表面と、を有する流路であって、前記内表面は、強磁性流体に対して化学的及び磁気的に不活性の物質から成り、前記流路、前記近位ポート及び前記遠位ポートは、前記強磁性流体が所定の圧力で導入されたときに前記強磁性流体が前記近位ポートから前記流路に流入して当該流路に沿って移動し、前記遠位ポートから前記流路を出ることができるサイズ寸法を有する流路と、
前記強磁性流体を通じてターゲットの医用画像を取得するための光導波体であって、前記プローブの前記近位部に配置された導波体近位部と、前記プローブの前記遠位部に配置された導波体遠位端と、を有する光導波体、若しくは、
前記プローブの遠位部に配置されており前記強磁性流体を通じて前記ターゲットの医用画像を取得するための画像センサ、及び、前記プローブの遠位端において前記ターゲットに照射するように構成された光源
のうち1つ又は複数と、
前記プローブの前記遠位部に結合された強磁性流体引付部であって、磁気特性を有し、前記強磁性流体が前記遠位ポートから出るときに前記遠位部と前記ターゲットとの間の領域内の生理学的流体を押しのけるように前記強磁性流体を磁気的に引き付けるべく前記遠位ポートに対して相対的に位置決めされる強磁性流体引付部と、
を備えていることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記強磁性流体引付部は磁石であり、
前記磁気特性は、前記強磁性流体を磁気的に引き付けるために十分な磁気を含む、
請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
前記磁石は、前記遠位ポートにおける第1の磁束に関連する第1の状態と、前記第1の磁束より低い前記遠位ポートにおける第2の磁束に関連する第2の状態と、の間で調整可能に構成されている、
請求項2記載のプローブ。
【請求項4】
前記磁石は、前記プローブの前記遠位ポート又は前記遠位部の遠位表面に対して前記磁石を相対的に動かすように構成されたアクチュエータに結合されている、
請求項3記載のプローブ。
【請求項5】
前記磁石は、調整可能な磁場強度を有するように構成されている、
請求項3又は4記載のプローブ。
【請求項6】
前記磁石は電磁石である、
請求項5記載のプローブ。
【請求項7】
前記磁石は永久磁石である、
請求項2記載のプローブ。
【請求項8】
前記強磁性流体引付部は強磁性材料であり、
前記磁気特性は、持続的な強磁性を有する強磁性流体を磁気的に引き付けるために十分な磁化率を含む、
請求項1記載のプローブ。
【請求項9】
前記強磁性流体引付部は、前記プローブの前記遠位部の遠位部外表面を基準として周囲に配置されている、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項10】
前記強磁性流体引付部はモノリシックである、
請求項9記載のプローブ。
【請求項11】
前記強磁性流体引付部は複数の引付部部品を含む、
請求項9記載のプローブ。
【請求項12】
近位部及び遠位部を有するプローブであって、
前記プローブの前記近位部に配置された近位ポートと、前記プローブの前記遠位部に配置された遠位ポートと、内表面と、を有する流路であって、前記内表面は、強磁性流体に対して化学的及び磁気的に不活性の物質から成り、前記流路、前記近位ポート及び前記遠位ポートは、前記強磁性流体が所定の圧力で導入されたときに前記強磁性流体が前記近位ポートから前記流路に流入して当該流路に沿って移動し、前記遠位ポートから前記流路を出ることができるサイズ寸法を有する流路と、
ターゲットへ光を出力すると共に当該ターゲットから光を受け取る光導波体であって、前記プローブの前記近位部に配置された導波体近位部と、前記プローブの前記遠位部に配置された導波体遠位端と、を有する光導波体と、
前記プローブの前記遠位部に結合された強磁性流体引付部であって、磁気特性を有し、前記強磁性流体が前記遠位ポートから出るときに前記遠位部と前記ターゲットとの間の領域内の生理学的流体を押しのけて前記導波体遠位部と前記ターゲットとの間に光学的媒質を提供するように前記強磁性流体を磁気的に引き付けるべく前記遠位ポートに対して相対的に位置決めされる強磁性流体引付部と、
を備えており、
前記強磁性流体引付部は、前記プローブの前記遠位部の遠位部外表面を基準として周囲に配置されており、
前記強磁性流体引付部は、第1のリング状磁石と第2のリング状磁石とを備えており、
前記第1のリング状磁石は前記プローブの長手軸に整列された磁極を有し、
前記第2のリング状磁石は前記プローブの長手軸に対して直交方向に整列された磁極を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項13】
近位部及び遠位部を有するプローブであって、
前記プローブの前記近位部に配置された近位ポートと、前記プローブの前記遠位部に配置された遠位ポートと、内表面と、を有する流路であって、前記内表面は、強磁性流体に対して化学的及び磁気的に不活性の物質から成り、前記流路、前記近位ポート及び前記遠位ポートは、前記強磁性流体が所定の圧力で導入されたときに前記強磁性流体が前記近位ポートから前記流路に流入して当該流路に沿って移動し、前記遠位ポートから前記流路を出ることができるサイズ寸法を有する流路と、
ターゲットへ光を出力すると共に当該ターゲットから光を受け取る光導波体であって、前記プローブの前記近位部に配置された導波体近位部と、前記プローブの前記遠位部に配置された導波体遠位端と、を有する光導波体と、
前記プローブの前記遠位部に結合された強磁性流体引付部であって、磁気特性を有し、前記強磁性流体が前記遠位ポートから出るときに前記遠位部と前記ターゲットとの間の領域内の生理学的流体を押しのけて前記導波体遠位部と前記ターゲットとの間に光学的媒質を提供するように前記強磁性流体を磁気的に引き付けるべく前記遠位ポートに対して相対的に位置決めされる強磁性流体引付部と、
を備えており、
前記強磁性流体引付部は、前記プローブの前記遠位部の遠位部外表面を基準として周囲に配置されており、
前記強磁性流体引付部は第1の弧状磁石と第2の弧状磁石とを備えており、
前記第1の弧状磁石は、前記プローブの長手軸に対して直交方向に整列した磁極を有する
ことを特徴とするプローブ。
【請求項14】
前記第2の弧状磁石は、前記プローブの前記長手軸に整列した磁極を有する、
請求項13記載のプローブ。
【請求項15】
前記強磁性流体引付部は、強磁性粒子を含む流体によって膨張するように構成されたバルーンを備えている、
請求項9記載のプローブ。
【請求項16】
前記流路はさらに、前記プローブの前記遠位部に配置された1つ又は複数の追加の遠位ポートを有する、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項17】
前記遠位ポート及び前記1つ又は複数の追加の遠位ポートは、前記プローブの前記遠位部の周囲に配置されている、
請求項16記載のプローブ。
【請求項18】
前記プローブは可撓性である、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項19】
前記プローブはさらに作業通路を備えており、
前記作業通路は、前記プローブの前記近位部に配置された作業通路近位開口と、前記プローブの前記遠位部に配置された作業通路遠位開口と、を有する、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項20】
前記作業通路は、前記プローブの前記近位部から前記プローブの前記遠位部へ供給される医療用具又は医療機器を受けるように構成されている、
請求項19記載のプローブ。
【請求項21】
前記医療用具又は医療機器は、吸引カテーテル、生検鉗子、クリップ、ステント、血液クロット摘出バスケット、組織アブレータ、フック、アブレーションカテーテル、摘出バスケット、ブラシ、例えばねじ等の固定機器、輪状形成術用機器等、小型のリードレスカテーテル、又はこれらの組み合わせである、
請求項20記載のプローブ。
【請求項22】
前記光導波体は光ファイバである、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項23】
前記光ファイバは単一モード光ファイバである、
請求項22記載のプローブ。
【請求項24】
前記光ファイバは二重クラッド光ファイバである、
請求項22記載のプローブ。
【請求項25】
前記プローブはさらに、前記導波体遠位端に結合されたレンズを備えている、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項26】
前記レンズはボールレンズである、
請求項25記載のプローブ。
【請求項27】
前記レンズは、前記光導波体から出射する光をターゲットに送るように構成された反射面を有する、
請求項25記載のプローブ。
【請求項28】
前記プローブはさらに駆動軸を備えており、
前記駆動軸には、前記光導波体、前記レンズ、又はこれらの組み合わせが結合されている、
請求項25記載のプローブ。
【請求項29】
前記プローブはさらに、前記光導波体から出射する光をターゲットへ送るように位置決めされたリフレクタを備えている、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項30】
前記プローブはさらに駆動軸を備えており、
前記駆動軸には、前記光導波体、前記リフレクタ、又はこれらの組み合わせが結合されている、
請求項29記載のプローブ。
【請求項31】
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブと、
前記プローブを受けるように構成されたシースと、
を備えていることを特徴とするカテーテル。
【請求項32】
前記カテーテルはカルジオスコープカテーテルである、
請求項31記載のカテーテル。
【請求項33】
光学イメージング用光源と、
光学イメージング用検出器と、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブと、
前記光学イメージング用光源と、前記光学イメージング用検出器と、前記光導波体と、に結合された光サーキュレータであって、前記光学イメージング用光源から前記光導波体へ光を送り、前記光導波体から前記光学イメージング用検出器へ光を送るように構成されている光サーキュレータと、
前記光学イメージング用検出器に結合された光学イメージングコントローラであって、光学イメージング用検出器において測定された光学信号を表す光学イメージング信号出力を供給するように構成されている光学イメージングコントローラと、
を備えていることを特徴とする光学イメージングシステム。
【請求項34】
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムであって、
OCT光源と、
OCT検出器と、
請求項1から4まで、7又は8のいずれか1項記載のプローブと、
前記OCT光源と、前記OCT検出器と、前記光導波体と、に結合されている光サーキュレータであって、前記OCT光源から前記光導波体へ光を送り、前記光導波体から前記OCT検出器へ光を送るように構成されている光サーキュレータと、
前記OCT検出器に結合されたOCTコントローラであって、前記OCT検出器において測定されたOCT信号を表すOCT信号出力を供給するように構成されたOCTコントローラと、
を備えていることを特徴とする光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システム。
【請求項35】
前記OCT光源は広帯域光源である、
請求項34記載のOCTシステム。
【請求項36】
前記OCT検出器は、コリメータと、グレーティングと、分光計レンズと、リニアアレイカメラと、を備えたOCT分光計である、
請求項34記載のOCTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2017年10月25日に出願された米国仮出願第62/577,042号に基づくと共にその利益を主張し、これに係る優先権を主張するものであり、当該仮出願の内容は全て、あらゆる目的のために参照により本願明細書に組み込まれているものとする。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
なし。
【背景技術】
【0003】
本願開示はイメージング及び治療方法、装置及び機器に関し、具体的には、診断を下し、組織を取得し、病変部分の除去(removal of pathology)によって処置し、又は他の機器の留置を支援するため、心臓、弁又は血管を可視化して治療を行うために使用するのに適し得るイメージング及び/又は治療方法及びシステムの態様例に関するものである。
【0004】
構造の直接的な可視化は、医薬及び手術における診断及び治療的介入のために非常に有用であることが多い。しかし、臨床医には現在のところ、脈打つ心臓内部及びその内腔内の構造、又は主要な血管内部の構造を直接可視化する信頼性の高い手立てが無い。これは、光が血液によって減衰することに起因する。
【0005】
循環器系構造をリアルタイムでイメージングするために現在使用可能なモダリティは、X線透視法及び心エコー法である。これらの技術は、侵襲性が最小限である特定の心臓内処置を誘導するために使用することができるが、両方とも間接的で低精度である。このことは、かかる処置の所要時間及び所要リソースを多くする傾向にある。処置時間が大きく長引く他、X線透視法はリスクに結びつく。例えば、X線透視法は患者及び臨床チームを相当量の電離放射線に暴露する。他の一例として、経食道心エコー法(TEE)は食道負傷のリスクに結びつく。さらに他の一例として、間接的な視覚的ナビゲーションを行いながらX線透視法又はTEEによって心腔内又は大血管内に誘導される機器又はカテーテルによって過失による組織損傷又は穿孔が生じるリスクがあり、これは、可視化の品質が比較的低いことにより悪化する。
【0006】
数少ない手法のみが、心臓内部の構造を直接可視化することを試みてきたが、これらの手法の中で、臨床現場において幅広く受け入れられるものは無かった。例えば、内視鏡と心臓組織とを直接接触させることによって可視化を行うことができるが、かかる可視化は極めて小さい視野しか表示することができない。他の一例として、透明なトロイダル状のバルーンチャンバを用いて、これがレンズと対象との間の血液を押しのけることにより可視化を容易にすることができるが、このバルーン自体ではいかなる用具投入も行うことができない。さらに他の一例として、加圧された透明液体の大量投入によって血液を押しのけることは、長時間にわたってイメージングを継続することができず、血流力学的な不安定性を引き起こし得る。最後に、心臓内の血液を透明な栄養灌流液と完全に置き換えることによってイメージングを容易にすることができるが、周辺心肺バイパスを用いる必要も生じることとなり、X線透視法よりも非常に高い侵襲性の処置となる上、コストも大きく嵩むことになる。
【0007】
よって、現在充足されていないニーズは、カルジオスコープ観察としても知られている、心内膜表面及び血管を直接的にイメージングするための方法及び装置が無いことにある。診断用の直接的な可視化の他、臨床医は、拍動する心臓及び血管についての組織取得、生検、及び/又はあらゆる病変部分の組織摘出を行うための手段を必要としている。切除処置時のエネルギー供給を行う際、又は心臓若しくは大血管内部に種々の医療機器を投入若しくは留置する際に、心臓内部又は血管内部の構造を直接可視化することにより奏される唯一無二の利点から、更なる治療用途が生じる。心臓及び大血管に対する全ての現在の診断的及び治療的介入は、画期的な新規の直接的なイメージングモダリティによる利点を享受し得る可能性を有する。
【0008】
臨床現場における現在のイメージングモダリティには、数多くの例の制限が存在する。マッシブ(massive)又はサブマッシブ(sub-massive)肺血栓症(PE)の場合、現在採ることができる選択肢(例えば全身性血栓崩壊、カテーテルに基づく直接的な血栓崩壊、及び血管真空吸引(angiovac aspiration))は、様々な様相を呈する。例えば、全身性血栓崩壊は非常に非特異的であり、しばしば非有効的であることが多い。他の一例として、カテーテルに基づく直接的な血栓崩壊は、大きな負荷の残留クロットを物理的に除去することができない。さらに他の一例として、血管真空吸引システムは一般的に血栓の直接的な可視化が無く、かかるシステムを用いた処置はその代わりにX線透視法に基づくことが多く、このことはクロットの吸引が非常に不正確になる原因となり、その上、侵襲性の静脈静脈バイパス回路が必要にもなる。最終的には、胸骨切開を用いて心肺機器で行われる現在使用されている塞栓摘出手術は極めて侵襲性であり、相当の術後回復を必要とする。PEは非常に一般的な疾患であり、マッシブ又はサブマッシブPEは罹患率が非常に高く、死に至る頻度が高い。よって、PEをターゲットとする全ての現在使用可能な治療的介入は、有効性が有意に低いこと又は根本的に非常に侵襲性であることのいずれかに起因して、相当高い術中罹患率及び致死率と実際に関連することは、驚くべきことではない。
【0009】
他の制限には、例えば心房細動、上室頻拍又は心室頻拍等の種々の不整脈に対して切除処置中に心内膜表面の直接的な可視化が無いことが含まれる。現在使用可能な選択肢には、組織瘢痕を形成するためにエネルギーを供給することによりミクロリエントリ回路又はマクロリエントリ回路を遮断するカテーテルシステムを使用するものが含まれる。かかる処置は、心内膜の表面及び解剖学的構造に対するカテーテルの直接的可視化がないことに起因して、長時間に及び、不満が残る傾向にある。この作業を完了するためには、X線透視法、経食道心エコー及び/又は心臓内心エコーを用いることが多い。しかし、現在使用可能である間接的なイメージングモダリティのどれを用いても、大抵の切除処置は非有効的となることが多く、介入を繰り返す必要がある。心臓内腔におけるカテーテルの直接的な可視化があれば、作業は格段に容易に行えるであろう。
【0010】
他の一例は、心臓移植患者が現在、その臓器拒絶反応のサーベイランスプログラムの一環として複数の心筋生検をどのように受けるか、である。現在、バイオトームはX線透視誘導下で三尖弁に盲目的に通される。複数回の生検実施と、三尖弁に盲目的に複数回通す結果、三尖弁のリーフレットが負傷して破損する頻度が高くなり、これはその後の重度の三尖弁逆流の原因となることは、驚くべきことではない。かかる重症の患者は、回避できる可能性のあった三尖弁の負傷により、開胸心臓手術によって心臓再移植又は非常に高リスクの三尖弁置換を受けなければならないことがある。三尖弁を通過するバイオトームを直接的に可視化すれば、三尖弁の負傷が少なくなり、生検作業がより効果的になり、かつ所要時間が短縮することを保証することができる。他の心臓内又は血管内病変部分の生検を行うためのバイオトームの誘導についても、同様のことが言える。
【0011】
しかし、おそらく臨床的に最も重要で喫緊のことは、現在使用可能な種々の心臓内又は血管内機器の留置及び関連の処置において現在の可視化モダリティがあまり最適でないことである。この関連の手術には、経カテーテル的大動脈弁置換術、左心耳閉鎖術、慢性完全閉塞、経カテーテル的僧帽弁修復術、開存性卵円孔閉鎖術、経カテーテル的肺動脈弁置換術、弁傍漏洩閉鎖術(paravalvular leak closure)及び経皮的冠動脈形成術が含まれるが、これらは限定列挙ではない。経皮的三尖弁又は僧帽弁輪状形成術用機器の一例である現在使用可能な方策は、これらの機器を弁周囲に望むらくは良好にその輪状組織に留置及び固定するために、X線透視誘導及び心エコー誘導の両方を使用する。しかしながらそのプラットフォームは、隣接する冠動脈、伝導系及び他の解剖学的構造があるため、極めて高リスクである。X線透視法及び心エコー法によって提供されるイメージングは間接的であるため、留置は低精度で時間を要するものとなり、冠動脈、伝導系、弁自体又は他の解剖学的構造等の隣接する解剖学的構造を負傷するリスクが高い。さらに、弁の輪は三尖弁でも僧帽弁でも非常に薄い構造であり、動脈壁と本来の弁リーフレット組織との間の白っぽい色の線によって最良に識別できる。輪状形成術用機器を弁の輪状組織に入れるために必要な精度を達成するための最良の手段は解剖学的構造の直接的な可視化のみであり、間接的で低精度のX線透視法及び心エコー法に基づく現在の当てずっぽうな手法ではそれほど良好に達成することができない。X線透視法又は心エコー法による間接的な誘導の現在のプラットフォームは、施術者が必要な機器を留置するための画像品質の観点で要望するものからは程遠い。
【0012】
循環器系の疾患の分野の種々の医療機器を投入及び留置する際に直接的な可視化及び誘導を行うことにより、より成功しやすく、より高い耐久性であり、より高精度で所要時間が短くなり、複雑になりにくいプラットフォームとなり得る。数多くの機器を心臓内部及び/又は大血管内部に配置する手法を、文字通り革新することができる。
【発明の概要】
【0013】
一側面では、本願開示はプローブを提供する。プローブは近位部及び遠位部を有する。プローブは流路と、光導波体と、強磁性流体引付部と、を備えている。流路は近位ポートと遠位ポートと内表面とを有する。近位ポートは、プローブの近位端に配置される。遠位ポートはプローブの遠位部に配置される。内表面は、強磁性流体に対して化学的及び磁気的に不活性の材料から成る。流路、近位ポート及び遠位ポートは、強磁性流体が所定の圧力で導入されたときに強磁性流体が近位ポートから流路に流入して当該流路に沿って移動し、遠位ポートから流路を出ることができるサイズ寸法を有する。光導波体は導波体近位端と導波体遠位端とを有する。導波体近位端はプローブの近位部に配置される。導波体遠位端はプローブの遠位部に配置される。強磁性流体引付部はプローブの遠位端に結合されている。強磁性流体引付部は磁気特性を有し、強磁性流体が遠位ポートから出るときに強磁性流体を磁気的に引き付けるように遠位ポートに対して相対的に位置決めする。
【0014】
他の一側面では、本願開示はカテーテルを提供する。カテーテルは上述のプローブと、当該プローブを受容するように構成されたシースと、を備えている。
【0015】
他の一側面では、本願開示は光学イメージングシステムを提供する。光学イメージングシステムは、光学イメージング用光源と、光学イメージング用検出器と、上述のプローブと、サーキュレータと、光学イメージングコントローラと、を備えている。サーキュレータは光学イメージング用光源と、光学イメージング用検出器と、光導波体と、に結合されている。サーキュレータは光学イメージング用光源から光導波体へ光を送り、光導波体から光学イメージング用検出器へ光を送るように構成されている。光学イメージングコントローラは光学イメージング用検出器に結合され、光学イメージング用検出器において測定された光学信号を表す光学イメージング信号出力を供給するように構成されている。
【0016】
さらに他の一側面では、本願開示は光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムを提供する。OCTシステムはOCT光源と、OCT検出器と、上述のプローブと、サーキュレータと、OCTコントローラと、を備えている。サーキュレータはOCT光源と、OCT検出器と、光導波体と、に結合されている。サーキュレータはOCT光源から光導波体へ光を送り、光導波体からOCT分光計へ光を送る。OCTコントローラはOCT分光計に結合され、OCT分光計において測定されたOCT信号を表すOCT信号出力を供給するように構成されている。
【0017】
さらに他の一側面では、本件開示は、内部構造の直接可視化医用イメージングにて使用される強磁性流体を提供する。強磁性流体は強磁性粒子と、生理的に不活性の溶媒と、を含む。強磁性粒子は、1mlあたり0.1mg~100mgの重量の鉄で存在する。
【0018】
他の一側面では本願開示は、内部構造の直接可視化医用画像を取得する方法を提供する。本方法は、a)内部構造付近の領域に強磁性流体を導入することによって当該領域内の生理学的流体を押しのけ、磁気的作用を利用して当該領域内に強磁性流体を保持するステップと、b)強磁性流体を通じて内部構造の直接可視化医用画像を取得するステップと、を含む。
【0019】
本発明の上記及び他の側面は及び利点、以下の説明から明らかである。以下の説明では、当該説明の一部を構成する添付図面を参照しており、添付図面では本発明の好適な実施形態を例示している。しかし、かかる実施形態は必ずしも本発明の全範囲を示すものではないため、本発明の範囲を解釈するにあたっては特許請求の範囲を参酌すべきである。
【0020】
以下の本発明の詳細な説明を考慮すれば、本発明をより良好に理解することができ、また、上記にて記載されている構成、側面及び利点以外の構成、側面及び利点が明らかとなる。かかる詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願開示の一側面のプローブの概略図である。
図2】本願開示の一側面のプローブの他の概略図である。
図3】本願開示の一側面のプローブの使用の概略図である。
図4】本願開示の一側面のプローブの使用の他の概略図である。
図5】例1で作製された強磁性流体の吸収スペクトルである。
図6】例2にて記載されている緩衝液中にて形成された強磁性流体クラウドの画像である。
図7】例3にて記載されている全血中に形成された強磁性流体クラウドの画像である。
図8図8A~8Cは、例4にて記載されている、強磁性流体クラウドと共に撮像された画像と、強磁性流体クラウドを除いて撮像された異なる画像である。
図9A】本願開示の一側面のプローブのさらに他の概略図である。
図9B】本願開示の一側面のプローブのさらに他の概略図である。
図10図10A1~10B3は、本願開示の複数側面のプローブの複数の概略図である。
図11図11A及び11Bは、本願開示の複数側面のプローブの他の概略図である。
図12】本願開示の一側面のプローブの概略的な横断面図である。
図13】本願開示の一側面のプローブの写真である。
図14図14A~14Iは、本願開示の複数側面の種々の磁石構成の横断面図である。
図15図15A~15D2は、本願開示の複数側面の他の磁石構成である。
図16A】本願開示の複数側面の種々の磁石構成と、その磁束モデルである。
図16B】本願開示の複数側面の図16Aの磁石構成の磁束密度の図である。
図17】本願開示の一側面の図16Aの特定の磁石構成に対応する磁束モデルである。
図18】種々の濃度でのフェラヘム(Feraheme(登録商標))の吸収スペクトルである。
図19】種々の濃度での2つの異なる強磁性流体の吸収スペクトルである。
図20】複数の異なるフィルタと、対応する強磁性流体誘導画像の波長スペクトルのグラフである。
図21図21A~21Dは、例9にて記載されている、拍動ポンプシステムにおいて強磁性流体誘導イメージングを用いて撮像された画像と強磁性流体誘導イメージングを用いずに撮像された画像のシリーズである。
図22A】例10にて記載されている、強磁性流体誘導によるイメージングを用いて羊の心臓において撮像された画像のシリーズである。
図22B】例10にて記載されている、強磁性流体誘導によるイメージングを用いて羊の心臓において撮像された画像のシリーズである。
図23】例11にて記載されている強磁性流体誘導によるイメージングでのバイオトームの使用を示す画像列である。
図24】例12にて記載されている試験用の拍動ポンプシステムの写真である。
図25】例13にて記載されている本願開示の一側面で実施されるプローブの写真である。
図26】例14にて記載されている本願開示の一側面で実施されるプローブの写真である。
図27図27A~27Eは、例15にて記載されている本願開示の一側面の冠動脈をシミュレートした狭い管内で強磁性流体誘導によるイメージングを用いて撮像された画像列である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は記載されている特定の実施形態に限定されないと解すべきである。また、本願にて使用されている用語用法は特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、本発明を限定する意図は無いとも解すべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。本願にて使用されている単数形「1つの(a、an)」及び「前記1つの(the)」は、文脈から別段の意味が明らかでない限り、複数形の実施形態も含む。
【0023】
当業者であれば、既に記載されている実施形態の他、多くの他の改良形態も、本発明の着想から逸脱しない範囲において可能であることが明らかである。本願開示の解釈に当たっては、どの用語も文脈に即した最も可能な広い解釈をすべきである。用語「備える」、「含む」又は「有する」の変形は、要素、成分又はステップについて非排他的に言及する用語であると解釈すべきであるから、言及対象の要素、成分又はステップは、明示的に言及されていない他の要素、成分又はステップと組み合わせることができる。特定の要素を「備える」、「含む」又は「有する」と言及されている実施形態は、文脈から別段の意味が明らかでない限り、当該要素「から実質的に成る」とも、また当該要素「から成る」とも解釈される。文脈から別段の意味が明らかでない限り、システムについて記載されている本願開示の側面は方法にも適用可能であり、またその逆も成り立つことが明らかである。
【0024】
本願にて開示されている数値範囲は、その両端値を含む。例えば、1~10の数値範囲は値1及び10を含む。特定の値について複数の数値範囲が列挙されている場合、本願開示は明確に、当該複数の各数値範囲の上限及び下限のあらゆる組み合わせを含む範囲を想定している。例えば、1~10又は2~9の数値範囲は、1~9の数値範囲と2~10の数値範囲とを含むことを意図したものである。
【0025】
本願にて記載されている長さ及び距離は、文脈から別段の意味が明らかでない限り、光路長の長さ及び距離についていうものである。よって、コイル状の光ファイバに沿って進む光が進む距離は、光ファイバを伸ばしたときの長さに等しいのであって、光ファイバの入光部と出光部との間の物理的な距離ではない。
【0026】
本願にて使用されている「実質的に透明」との文言は、媒質中に光を透過させることに成功できる能力をいう。「実質的」とは、媒質が光学的に透明ではなく、完全には吸光性でもないことをいう。例えば実質的に透明な媒質とは、光学式イメージング装置を用いて、所望の構造を識別できる分解能でターゲット画像を可視化できるものである。実質的に透明な媒質は、血液より低い最小吸光率を有することになるので、特定の用途に必要な深度と分解能とで光透過を可能にすると考えられる。本願開示は、当該分野において達成可能な利点との比較において種々の利点を奏するシステム及び方法を提供する。これらの利点の以下の説明は、本発明を限定することを意図したものではなく、また、システム及び方法が当該利点を達成するためにしか使用できないとの含意を意図したものでもない。
【0027】
例えば本願開示は、本願にて記載されているプローブ、カテーテル、光学システム、OCTシステム、強磁性流体、及び処理の複数例を提供する。これら複数例の1つ又は複数の側面に関して記載されている構成は、一般的に他の側面にも適用可能である。例えばプローブに関して記載されている構成は、一般的にOCTシステムにも適用可能であり、強磁性流体に関して記載されている構成は、一般的に処理にも適用可能である。
【0028】
一部の側面では、本願にて記載されているメカニズムは、流れる血液の存在下で循環器系構造を直接的にイメージングして最小侵襲性治療を行うために(例えば臨床医によって)使用することができる。例えば、循環器系構造を直接的にイメージングするための装置は、磁性の先端を有する可撓性のカルジオスコープ(例えば、循環器系で使用される内視鏡等)を含むことができる。かかる例では、磁場の存在下に置かれたときに磁化される液体(本願では「強磁性流体」と称されることもある)が作業通路を経てカルジオスコープの先端に注入される。かかる例において磁性のカルジオスコープ先端によって生成された磁場により、強磁性流体をカルジオスコープの先端付近に局在化させることができ、これによって、血液を押しのける強磁性流体クラウドを形成することができる。かかる例では、血液よりも強磁性流体クラウドの方が光が通過しやすくなり、これによってターゲットの直接的可視化を容易にすることができる。さらに、強磁性流体クラウドを通じて、ターゲットを連続的に可視化しながら最小侵襲外科手術を行うこともできる。かかる手術の終了後には、作業通路を介した吸引を利用して、カルジオスコープ先端から強磁性流体を除去することができる。
【0029】
上記のように、直接的なカルジオスコープ観察(cardioscopy)を行うための1つの解決手段は、可撓性のプローブ又はカルジオスコープの磁化された先端の周囲に留まりながら血液を押しのける実質的に透明な強磁性流体を要する(例えば図1等を参照)。強磁性流体は通常、キャリア流体に強磁性粒子を含ませたものから成るコロイド状の液体であり、磁場の存在下で磁化する。本願開示の一側面は、血液を押しのけることができる実質的に透明な強磁性流体であって、当該強磁性流体を通じて光学的な分光測定値又は分光画像を取得できる強磁性流体である。本願開示の一例の側面では、肺血栓症の場合、任意の適切な1つの技術又は複数の技術の組合せ(例えば経大動脈、経心尖、経大腿、経中隔、経橈骨、経大腿、経鎖骨下動脈、経頸静脈等)を用いて、心臓内又は肺動脈内にカルジオスコープを入れることができる。その後、実質的に透明な強磁性流体はプローブ内の別個の内腔を通って内視鏡の先端から流出し、少なくともその一部はプローブの先端の周囲に球状の「クラウド」となってプローブの隣に留まると共に、循環器系の解剖学的構造とカルジオスコープ内部のイメージング構成との間の血液を押しのける。直接生検が必要な場合には、カルジオスコーププローブの内腔を介してバイオトーム鉗子を入れ、強磁性流体クラウドを通じて直接可視化しながら関心対象の構造から生検検体を採取することができる。(例えばクロット又は疣贅(ゆうぜい)等を)吸引する必要がある場合には、カルジオスコープの先端をクロット又は疣贅に押し付けて強磁性流体を吸引し戻すと、クロット又は疣贅はカルジオスコープの内腔を介して吸引される。クロット摘出を支援するために、クロットの背後に強磁性流体を介してバスケットを配置することができる。
【0030】
本願にて記載されているシステム及び方法は、心臓学の複数の臨床用途に使用することができ、最小侵襲循環器系手術の適用範囲を広げるのを助長することができる。例えば、本願にて記載されているメカニズムを心房細動、肺血栓症、心臓弁疾患、心不全、冠動脈疾患、伝導障害、血管系疾患等の診療において使用することができる。他の一例として、本願にて記載されているメカニズムは、医療関係者(例えば臨床医等)が様々な処置中に利用できる心臓及び血管内構造の直接的なイメージングを容易にすることができる。例えば、臨床医は本願にて記載されているメカニズムを利用して、直接可視化される生検及び組織摘出処置を行うことができる。他の一例として、臨床医は本願にて記載されているメカニズムを利用して、クロットをより効果的に摘出及び/又は吸引することができる。さらに他の一例として、臨床医は本願にて記載されているメカニズムを利用して、切除処置をより効率的に行うことができる。さらに他の一例として、臨床医は本願にて記載されているメカニズムを利用して、種々の心臓内及び血管内機器を留置する時に視覚的誘導を行うことができる。さらに他の一例として、臨床医は本願にて記載されているメカニズムを利用して、弁周囲の漏れを直接識別することができる。さらなる他の一例として、臨床医は本願にて記載されているメカニズムを利用して、直接可視化された例えば心房中隔開口術や縫合糸留置等の多数の心臓内処置を行うことができる。本願にて記載されているメカニズムは、種々の種類の医療関係者によって種々の設定において使用することができる。例えば、本願にて記載されているメカニズムは、ハイブリッド手術室又は心臓カテーテル処置研究室において処置を行う心臓病介入専門医や心臓外科医によって使用することができる。
【0031】
より具体的な一例では、本願開示の用途は、肺血栓症の場合に肺動脈から血液クロットを吸引することを含むことができる。本願開示の直接的なカルジオスコープ観察によって、肺動脈内にてクロットが同定されて主内腔を介して直接吸引される。これによって、より洗練された、より低コストでより低侵襲であり、より迅速かつより完璧な肺血栓症の処置が可能になる。カルジオスコープ観察の他の用途は、心房細動又は心室頻拍のいずれかのカテーテル切除の際に心内膜表面を直接可視化することを含む。直接可視化によって、現行のX線透視誘導及び心エコー誘導中でも生じる潜在的に非常に危険な自然穿孔のリスクが低減する。また、心内膜表面におけるカテーテルの位置をより良好かつ正確に特定するので、切除処置の実際の有効性を改善できる可能性もある。他の1つの用途は、現行ではX線透視誘導下で留置される小型のリードレスペースメーカを留置する時に、カルジオスコープ強磁性流体誘導を行うことを含む。強磁性流体誘導カルジオスコープ観察は、ペースメーカ機器のより正確かつより低外傷の留置を支援することができ、また、ペースメーカ機器の将来の位置ずれ、又は例えば弁若しくは索組織等の心臓内構造との相互作用を低減できる可能性もある。
【0032】
他の可能性のある用途は、心臓移植患者の右心室の直接可視化される心内膜心筋生検である。本願開示によって直接可視化される生検を行えることにより、三尖弁の負傷を無くすことができる。
【0033】
他の用途は、右側及び左側の心臓病変(心内膜炎の疣贅か心臓腫瘍であるかにかかわらず)の全体のスペクトラムの直接可視化される生検を行う能力を含む。また、強磁性流体カルジオスコープ観察により、ASD閉鎖術用のアンプラッツァー(Amplatzer、登録商標)機器、左心耳閉鎖術用のウォッチマン(Watchman、登録商標)機器、三尖弁の輪状形成術用機器、僧帽弁リーフレットにおけるマイトラクリップ(MitraClip、登録商標)留置又は動揺僧帽弁リーフレットにおけるネオコード(Neochord)留置、及び大動脈内におけるステントグラフト留置等の数多くの心臓内機器の留置において介入専門医をアシストすることができる。ロバストな強磁性流体カルジオスコープ機器により、拍動する心臓及び血管への心臓内介入の数多くのさらなる発展が可能になる。強磁性流体カルジオスコープ観察の領域そのものはそれ自体で、実用上無制限のスペクトラムに及ぶ臨床用途を有する完全に独占フリーの分野である。
【0034】
マイトラクリップ留置の場合、格段に容易かつ迅速に経中隔穿刺を行ってクリップを僧帽弁リーフレットに配置することが可能になる。直接可視化を提供するカテーテルの先端周囲の球状の流体の助けにより、卵円孔の解剖学的構造を格段に正確かつ迅速に特定することができる。前部及び後部のリーフレットの解剖学的構造を直接評価し、断裂した索又は他の病変部分を特定し、マイトラクリップの留置を最も成功させることができる最善の位置を格段に良好に特定することができる。これによって、TEE及びX線透視法による長時間の不満足な誘導を行う必要がなくなり、処置時間を大きく短縮しつつ、リーフレットにおける機器の留置を格段に容易化して満足いくものとすることができ、これにより格段に持続的で有効な処置が可能になる。
【0035】
本願にて記載されているプラットフォーム等の直接的なカルジオスコープ観察プラットフォームにより、輪状形成術用のリングを格段に正確に留置することができ、成功率が向上し、処置時間が短縮し、隣接する構造の負傷が少なくなることを保証することができる。全体的に、心臓内機器又は血管内機器の留置中に直接可視化を行う利点は多方面に及び、数値評価するのは難しい。
【0036】
本願開示による患者側の利点は、低侵襲のアプローチになることである。その理由は、開胸心臓手術は非常に侵襲性であり、開胸心臓手術関連の罹患率及び致死率が相当高いからである。胸骨を切開して人工心肺を取り付けることなく肺動脈からクロットを摘出できる手段があれば、全ての患者がこれに同意するであろう。臨床医側の利点は、クロットをより迅速に低侵襲で吸引できることである。この確立された技術により、強磁性流体カルジオスコープ観察作業をベッド脇で、気管支鏡検査や一部の他の内視鏡法と全く同じように行うことができる可能性がある。本願開示の支払者側の利点は、処置費用が安くなり(手術方式及びカテーテル方式両方の血栓崩壊、又は、手術室若しくはアンギオ室内で行う必要があるボルテックス法)、入院期間が短くなることである。クロットの直接強磁性流体カルジオスコープ観察吸引により、当該処置をベッド脇で行える可能性が生じ、大腿静脈からの経皮的アプローチを行うだけでよくなる。全体的に、強磁性流体カルジオスコープ観察を用いた経皮的塞栓摘出は、現時点で既存の代替的手法より格段に洗練された手段となり得る。
【0037】
図1を参照すると、プローブ100の一例の概略が示されている。図1のプローブ100は、プローブの端面からのイメージングで使用されるために最適化された構成で図示されている。プローブ100は流路110を備えている。プローブ100は可撓性とすることができる。流路110を介して導入及び除去される強磁性流体を容器105が収容している。プローブ100は、当該プローブ100の遠位部に強磁性流体引付部120を備えている。強磁性流体はプローブ100の遠位部に配置された遠位ポート130又は遠位開口130から流出する。強磁性流体は流路110及び遠位ポート130から導入されると、強磁性流体引付部120によって引き付けられることにより強磁性流体クラウド140を形成する。プローブ100は、イメージング対象のターゲット150と係合するのが示されている。プローブ100はオプションの作業通路170を備えており、作業通路170に医療機器及び/又は医療装置を通してターゲット150へ導入することができる。プローブ100は、ターゲット150に光を入射させターゲット150から光を出射させるための光導波体160を備えている。使用時には、強磁性流体クラウド140は周囲の生理学的流体180を押しのけ、これによって光導波体160とターゲット150との間を一般に既知の光学的特性の媒質(すなわち強磁性流体)とする。光導波体160には分光イメージング装置190が光学的に結合されており、この分光イメージング装置190は、強磁性流体クラウド140を通じてターゲット150の分光画像を取得するように構成されている。
【0038】
流路110は、プローブの近位部に配置された近位ポート(不図示)を有することができる。流路110、近位ポート及び遠位ポート130のサイズ寸法は、強磁性流体が所定の圧力で導入されたときに近位ポートから流路に流入して流路110に沿って移動し、遠位ポート130を介して流路110から出ることができるサイズ寸法とすることができる。かかるサイズ寸法により、所定の負の圧力で近位ポートに吸引が導入された場合に逆方向の移動を行うこともできる。流路110は内表面を有し、この内表面は、強磁性流体に対して化学的及び磁気的に不活性の材料とすることができる。
【0039】
強磁性流体引付部120は当該強磁性流体引付部120及び強磁性流体の磁気特性に基づいて強磁性流体を引き付けることができ、それぞれ異なる磁気特性を有する種々の異なる材料を用いて具現化することができる。例えば、強磁性流体引付部120は永久磁石部品を備えることができる。より具体的な例では強磁性流体引付部120は、ネオジウム鉄ホウ素永久磁石、サマリウムコバルト永久磁石、アルニコ永久磁石、セラミック永久磁石及び/又はフェライト永久磁石とすることができる。強磁性流体引付部120は、両極の位置をより正確に制御するために磁石3Dプリンタによってプリントされた3Dプリント磁石とすることができる。他の一例として、強磁性流体引付部120は電磁石部品を備えることができる。さらに他の一例として、強磁性流体引付部120は、持続的な強磁性を有する強磁性流体を磁気的に引き付けるために十分な磁化率を有する強磁性体(一般的に無磁化とすることができる)を備えることができる。強磁性流体引付部120と生理学的流体180(又はプローブ100の他の構成要素)との間の不所望の化学的相互作用を防止するため、強磁性流体引付部120については種々異なる被覆を用いることができ、例えばニッケル、金、クロム、銅、エポキシ樹脂、亜鉛、テフロン(登録商標)、銀等を使用することができる。強磁性流体引付部120は単独部品(例えば単独の永久磁石部品、単独の電磁石部品、単独の強磁性体(しかし無磁化状態)部品等)とすることができる。かかる例では、強磁性流体引付部120はモノリシックとすることができる。これに代えて、強磁性流体引付部120は複数の引付部部品を備えることができる。例えば、強磁性流体引付部120は永久磁石と電磁石とを備えることができる。他の一例として、強磁性流体引付部120は、特定の磁場の強度及び/又は形状を提供するように配置された複数の永久磁石を備えることができる。
【0040】
強磁性流体をどの程度強力に強磁性流体引付部120に磁気的に引き付けるかを制御するため、強磁性流体引付部120の1つ又は複数の磁気特性を調整することができる。例えば磁気は、例えば血管による血液のポンピング等の周囲の流体の運動があるにもかかわらず強磁性流体クラウド140を安定した向きに保持するために十分な強度に調整することができる。より具体的な一例では強磁性流体引付部120は、比較的高磁気の状態と、比較的低磁気(又は無磁気)の状態との間で遷移するように構成することができる。例えば、強磁性流体引付部120の磁石をアクチュエータに結合することができ、このアクチュエータは、プローブ100外部の磁場強度を変化させて(1つ若しくは複数の)遠位ポート130及び/又はプローブ100の表面に対して当該磁石を接離するように構成されている。他の一例として、強磁性流体引付部120の磁気的部品が、調整可能な磁場強度を有するように構成することができる。より具体的な一例では、強磁性流体引付部120の部品が電磁石である場合、追加的又は代替的に、当該電磁石を流れる電流の量、当該電磁石のコイル内のコア材料(例えば強磁性コア等)の位置等に基づいて、磁場強度を制御することができる。
【0041】
強磁性流体引付部120は、磁場の形状を変化するように変化されることができる。例えばトロイダル形磁石の場合、当該磁石の頂部の角(すなわち、磁石のうち遠位ポート130に最も近い部分)を、当該領域における磁気的引付けを低減する材料によって覆い、磁力線の密度が比較的低い領域において強磁性流体クラウドをプローブ100の中心軸に向かって押すことができる。これは単なる一例であり、強磁性流体引付部120の磁場の形状を変化して磁性流体クラウド140の形状を変えるために別の形状及や別のサイズの磁石を用いて、同様の技術を使用することができる。追加的に、周囲の生理学的流体180に対する強磁性流体クラウド140の結合力を利用して、強磁性流体クラウド140をプローブ100の中心軸に、より高密度に集めることもできる。強磁性流体引付部120はプローブ100から周囲にはみ出すことができ、これによって強磁性流体クラウド140を安定化及び集中させながら開口を開けておくことができ、この開口が、光を前方及び/又は側方へ送る能力を引き続き維持することができ、又はツール若しくは吸引を使用することができる。強磁性流体引付部120は、振動する磁場方向を有することができ、かかる磁場方向は、生理学的流体180(例えば強磁性流体クラウド140の周囲の血液及び/又は他の溶液等)の流れの中に散逸しないように強磁性流体の正味運動を制御することができる。例えば、強磁性流体クラウド140の正味運動を引き起こすように永久磁石を物理的に回転させることができ、この正味運動は、永久磁石の回転に基づいて制御することができる。他の一例として、電磁石を流れる電流の振動によって強磁性流体クラウド140の正味運動を引き起こすことができ、この正味運動は、電流信号の周波数、振幅及び/又は大きさに基づいて制御することができる。
【0042】
ターゲット150は心臓内構造、血管壁、循環器系組織、皮膚、消化器組織、肺組織、脳組織、泌尿器系組織、婦人科系組織、血栓、心臓疣贅、関心対象の特定の病変部分、異物又は医療機器等とすることができる。
【0043】
作業通路170は、プローブ100の遠位部に供給される他の医療用具又は他の機器を受けるように構成することができる。医療用具又は他の機器は、吸引カテーテル、生検鉗子、クリップ、ステント、血液クロット摘出バスケット、組織アブレータ、フック、アブレーションカテーテル、摘出バスケット、ブラシ、固定機器(例えばねじ等)、輪状形成術用機器等、小型のリードレスカテーテル、又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0044】
本願はカテーテルも提供する。カテーテルは上記のプローブ(例えばプローブ100)と、当該プローブを受けるように構成されたシースと、を備えることができる。カテーテルは、種々の用途に応じて異なる径とすることができる。カテーテルはアンギオスコープ、カルジオスコープ、内視鏡、カルジオスコープカテーテル、経鼻胃管、任意の腹腔鏡イメージング装置等とすることができる。
【0045】
本願開示は、光学イメージングシステムも提供する。光学イメージングシステムは、光学イメージング用光源と、光学イメージング用検出器と、上記のプローブ(例えばプローブ100等)と、光サーキュレータと、光学イメージングコントローラと、を備えることができる。光サーキュレータは、光学イメージング用光源と、光学イメージング用検出器と、光導波体(例えば光導波体160等)とに結合されている。光サーキュレータは、光学イメージング用光源から光導波体へ光を送り、光導波体から光学イメージング用検出器へ光を送るように構成することができる。光学イメージングコントローラは光学イメージング用検出器に結合することができ、光学イメージング用検出器において測定された光学信号を表す光学イメージング信号出力を供給するように構成することができる。光学イメージングシステムは、蛍光分光イメージングシステム、自家蛍光分光イメージングシステム、ラマン分光イメージングシステム、OCTイメージングシステム、SECMイメージングシステム、又は他の分光イメージングシステムとすることができる。光学光源及び光学検出器は、分光イメージングの適した種類に合わせて選定することができる。
【0046】
本願開示は、OCTシステムも提供する。OCTシステムは、OCT光源と、OCT検出器と、上記のプローブ(例えばプローブ100等)と、光サーキュレータと、OCTコントローラと、を備えている。サーキュレータはOCT光源と、OCT検出器と、光導波体(例えば光導波体160等)とに結合されている。光サーキュレータは、OCT光源から光導波体へ光を送り、光導波体からOCT検出器へ光を送るように構成することができる。OCTコントローラはOCT検出器に結合することができ、OCT検出器において測定された光学信号を表すOCT信号出力を供給するように構成することができる。OCT光源は広帯域光源とすることができる。
【0047】
本願開示はさらに、上述のプローブ及びシステムにおいて用いられる強磁性流体も提供する。強磁性流体は、内部構造の直接可視化医用イメージングのために用いることができる。強磁性流体は強磁性粒子(例えば鉄粒子)と、生理的に不活性のキャリア流体と、を含むことができる。強磁性粒子は、0.1mg/ml以下から100mg/ml程度までの量のFeを含有することが可能である。また、0.2mg/kg未満から1回投与量の1000mgまでの範囲のFeの投与量も可能である。具体的な投与量及び濃度は、所望の用途とイメージング装置とに基づいて変わり得る。また、人体内における具体的な強磁性流体の毒性によって決まる限度内において、強磁性粒子の含有量(例えば鉄含有量等)を増加できる場合もある。
【0048】
強磁性粒子は被膜を備えることができる。幅広い使用可能な被膜が存在し、具体的な被膜は具体的な用途及びイメージング装置に基づいて変わり得る。可能な炭水化物被膜には、デキストラン、ガラクトース、マンノース、グルコース、エチレングリコール、クエン酸塩、フコース、カルボキシマルトース、カルボキシデキストラン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルデキストラン、アラビノガラクタン、及びポリスチレン等が含まれる。他の被膜には、ヒドロキシホスホネート、フォレート(folate、葉酸塩又はエステル)、グルコン酸ナトリウム第二鉄(sodium ferric gluconate)、シリカ、カルボン酸塩、ポリアミドアミン、脂質二重層、クルクミン、親水性ポリマー、疎水性ポリマー、非親水性かつ非疎水性のポリマー、両親媒性リガンド、及び付加結合蛋白質(additional bound protein)等が含まれる。付加結合蛋白質は、単一アミノ酸又はアミノ酸鎖とすることができる。被膜の重量は1kD(キロダルトン)~2000kDとすることが可能である。強磁性ナノ粒子被膜として用いられることが多いデキストランは、3~2000kDの範囲である。
【0049】
強磁性粒子は、当該強磁性粒子により散乱される光の量を大幅に低減する粒径とすることができる。理想的な強磁性粒子径は、用途と光学式イメージング装置とによって異なる。例えば、光学式イメージング装置において使用される分解能又は波長に依存して、粒径が異なると散乱する光が増減する。粒子被膜は6~100,000nmとすることができる。例えば、100~200nmの範囲の超常磁性酸化鉄粒子(SPIO)、50nm未満の極小超常磁性酸化鉄粒子(USPIO)、及び1000nm超のミクロンサイズ酸化鉄粒子(MPIO)は全て使用可能である。
【0050】
強磁性流体は増粘剤を含むことができる。増粘剤は、溶液の1%以下程度の低量又は溶液の飽和点程度の多量で含有されることができる。例えばデキストランの場合、だいたいデキストランと水との比が2:1である場合に飽和点になる。デキストランの他、他の増粘剤は、水溶性かつ無毒の任意の物質を含むことができる。その例には、例えばデンプン、グリコーゲン、カロース、クリソラミナリン(chyrsolaminarin)、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、フコイダン、ヒドロキシメチルセルロース、及びガラクトマンナン等の他の多糖類又はオリゴ糖類を含むことができる。さらに、一部の臨床用途では生体適合性油を増粘剤として使用することもできる。
【0051】
粘性率が0.089cP(センチポアズ)~10,000cPの強磁性流体を用いることができる。特定の用途では、粘性率は血液の粘性率に近い3~10cPとすることができる。
【0052】
強磁性流体は実質的に透明とすることができる。強磁性流体は、400~1400nmの少なくとも1つの波長では、水より高く血液より低い平均吸光率を有することができる。具体的な波長及び透明度は、臨床用途とイメージング装置とに基づいて変わることができ、使用される強磁性流体の濃度及び種類と特定の関係にあることができる。
【0053】
生理的に不活性なキャリア流体は水とすることができ、この水は、強磁性粒子及び/又は増粘剤に対する溶媒として作用することができる。代替的に、生理的に不活性なキャリア流体は、強磁性粒子及び/又は増粘剤に対する溶媒として作用できる緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等とすることができる。
【0054】
本願開示は、内部構造の直接可視化医用画像を取得する方法も提供する。本方法は、a)内部構造付近の領域に強磁性流体を導入することによって当該領域内の生理学的流体を押しのけるステップと、b)強磁性流体を通じて内部構造の直接可視化医用画像を取得するステップと、を含む。本方法はさらに、ステップb)の取得の前に、内部構造を強磁性流体に接触させることを含むことができる。内部構造は、上記のターゲット150のうちいずれかとすることができる。ステップa)の導入は、プローブ100の流路110を介して行うことができる。ステップb)の取得は、プローブ100の光導波体160を介して、及び/又は、上記の光学イメージングシステム若しくはOCTイメージングシステムを用いて行うことができる。内部構造と強磁性流体との接触は、強磁性流体引付部120を動かすことによって、又はプローブ100の遠位側先端又は遠位部を動かすことによって達成することができる。
【0055】
上述のシステム、プローブ100及び方法は、可撓性のカテーテルを含めたカテーテルを用いるいかなるプロセスにも使用することができる。かかるプロセスには、例えば生体内(in vivo)心臓又は消化器管イメージング等の生体内イメージングが含まれる。
【0056】
図2を参照すると、プローブ100の一例の概要が示されている。図2のプローブ100は、プローブ100の周囲でイメージングを行う際に使用されるために最適化された構成で図示されている。プローブ100は流路110を備えている。プローブ100は、当該プローブ100の遠位部に強磁性流体引付部120を備えている。強磁性流体引付部120は、強磁性流体を周囲イメージングに適した場所に強磁性流体を保持するようにプローブ100の遠位部の周面に配置されている。強磁性流体引付部120のこの構成は単なる一例であり、強磁性流体引付部120は種々の他の形態(例えば、下記にて図14A~14I,15A~15D2及び図16Aを参照して説明する形態等)を有するように構成できることに留意すべきである。プローブ100は、流路110と流体連通する2つ以上の遠位ポート130を有する。強磁性流体は流路110及び2つ以上の遠位ポート130から導入されると、強磁性流体引付部120によって引き付けられることにより1つの強磁性流体クラウド140又は複数の強磁性流体クラウド140を形成する。プローブ100は、例えば血管等の管状の形状のターゲット150内にあるのが示されている。プローブ100は光導波体160と、光185をターゲット150に入射するためのオプションの結像光学系175と、を備えている。光185は強磁性流体クラウド140を透過してターゲット150に照射される。ターゲット150から戻った光は強磁性流体クラウド140を横断し、光導波体160又はオプションの結像光学系175によって集光される。プローブ100は駆動軸195を備えることができ、駆動軸195は、実質的に管状のターゲット150に周囲方向に照射を行って、同様に戻る光を取得すべく、光185を回転させるように光導波体160及び/又はオプションの結像光学系175を回転させるために使用される。一部の事例では駆動軸195は除外され、オプションの結像光学系175は、当該オプションの結像光学系175に隣接して配置されたモータによって回転する。
【0057】
光導波体160は光ファイバとすることができ、これは例えばレーザ発光ダイオード又は他の光源に結合される。光ファイバは単一モードファイバとすることができる。光ファイバは二重クラッド光ファイバとすることができる。光導波体160はOCTシステム用のサンプルアームとして供することができる。
【0058】
結像光学系175はレンズ、リフレクタ、イメージング目的で光を結合するために有用であると当業者に知られている他の光学系、又はこれらの組み合わせとすることができる。一部の事例では、レンズはボールレンズ、球面レンズ、非球面レンズ、グレーデッドインデックス(GRIN)ファイバレンズ、アキシコン、回折レンズ、メタレンズ、又は位相操作付きレンズ(lensing with phase manipulation)等とすることができる。
【0059】
駆動軸195は、光導波体160、レンズ並びに/若しくはリフレクタを含めた結像光学系175、又はこれらの組み合わせに結合することができる。
【0060】
プローブ100は、強磁性流体をターゲットに導入するときに強磁性流体に正圧を供給するため及び/又は強磁性流体をターゲットから除去するために負圧を供給するためのポンプ(不図示)を備えることができる。
【0061】
図3を参照すると、上記のプローブ100の1つの具体的な使用が示されている。具体的には、プローブ100が肺動脈から血液クロットを摘出するために使用されるのが示されている。図3に示されているように、可撓性のプローブカルジオスコープ210が心臓200を通って肺動脈220に挿入される。強磁性流体230(その広がりは破線で示されている)はカルジオスコープ210の先端から送られて、カルジオスコープ210の先端にある磁石によって、血液がカルジオスコープ210のイメージング装置の視野から押しのけられる位置に保持されて固定される。図示の事例では、カルジオスコープ210は肺動脈220内の血液クロット240に向けられる。例えば摘出バスケット又は吸引カテーテル等の用具を上述のオプションの作業通路170から挿入して、血液クロット240を摘出するために使用することができる。
【0062】
図4を参照すると、上述のプローブ100の他の1つの具体的な使用が示されている。具体的には、プローブ100が心内膜表面を可視化して生検するために使用されるのが示されている。図4を参照すると、可撓性のプローブカルジオスコープ310が心臓400の三尖弁320に挿通される。生検のために心内膜表面340を可視化するため、カルジオスコープ310の先端は右心室330に挿入される。強磁性流体350はカルジオスコープ310の先端から導入されてカテーテルと循環器系構造との間にクラウドを形成し、これによってカルジオスコープ310と心内膜表面340との間の血液が押しのけられる。視覚的画像が確立された後は、生検鉗子360がカテーテル310の作業通路170を介して導入され、直接可視化下で右心室壁340の組織を収集するために使用される。
【0063】
図9Aを参照すると、プローブのさらに他の1つの概要が示されている。図9Aのプローブは、周囲イメージング用に構成されている。光ファイバ901が駆動軸904に収容されており、ビーム903を放出し、ビーム903は周囲画像を取得するために回転する。ビーム903は2つの磁石906間にある送光ギャップ907を通って放出される。強磁性流体は流路905から注入することができる。注入されると、強磁性流体は磁石906の周囲に集まって周囲の流体(例えば血液)を押しのける。図9Aのプローブでは、ハウジング902が磁石906と、駆動軸904の少なくとも一部とを包囲することができる。例えば、ハウジング902はカテーテル又はカプセルとすることができる。
【0064】
図9Bを参照すると、プローブのさらに他の1つの概要が示されている。図9Bのプローブは周囲イメージング用に構成されており、光ファイバ901が駆動軸904に収容されてビーム903を放出し、周囲画像を取得するためにビーム903が回転し、ビーム903が2つの磁石906間にある送光ギャップ907を通って放出される図9Aのプローブと、幾つかの観点で類似する。しかし、図9Bのプローブでは、強磁性流体はハウジング902を包囲するシース908から注入することができ、1つ又は複数の開口909を介してシース908から流出することができる。注入されると、強磁性流体は磁石906の周囲に集まって周囲の流体(例えば血液)を押しのけることができる。
【0065】
図10A1~10B3を参照すると、プローブの種々の概略が示されている。図10A1はカテーテル1000を示しており、カテーテル1000は遠位端に未膨張のバルーン1010を有し、前方側にイメージング先端1020を有する。図10A2は、カテーテルの先端に磁場を形成するために鉄粒子1030によって膨張されたバルーン110を示している。例えば鉄粒子1030は、強磁性流体クラウドを生成するために使用されるものと同一の強磁性流体中に、又は別の特性(例えば粒子の別の濃度、別の溶媒等)を有する強磁性流体中に含まれることができる。図10A3は、磁化されたバルーン1010の周囲に粒子が集まるようにカテーテル1000の外部に注入された強磁性流体クラウド1040を示す。強磁性流体クラウド1040は周囲の生理学的流体(例えば血液)を押しのけて、光1050がサンプルに向かってより透過しやすくなるようにする。図10B1は別のカテーテル1001を示しており、カテーテル1001は、側方視野型イメージング先端1070の両側に2つの未膨張のバルーン1060を備えている。図10B2は、カテーテルの先端に磁場を生成及び/又は拡大するために鉄粒子1080によって膨張したバルーン1060を示している。図10B3は、磁化されたバルーン1060を包囲する強磁性流体クラウド1090を示している。強磁性流体クラウド1090は周囲の生理学的流体(例えば血液)を押しのけて、光1091がサンプルに向かってより透過しやすくなるようにする。図10B1~10B3のプローブは例えば、心臓内の所望の領域に到達するために比較的小さい血管にカテーテルを通して誘導することを含む経カテーテル処置において使用することができる。
【0066】
図11A及び図11Bを参照すると、プローブの他の概要が示されている。図11Aはカテーテル1100を示しており、カテーテル1100は透明な外部シース1110を備えており、外部シース1110は、生理学的流体(例えば血液)を押しのけて可視化できるようにするため、イメージング先端1120よりはみ出ている。図11Bは、シース1110が先端から後退するのを示している。強磁性流体クラウド1150がカテーテル1100の磁性先端1170の周囲に集まるのが示されている。強磁性流体クラウド1150は、既に透明なシース1110によって押しのけられた生理学的流体(例えば血液)を押しのけることができる。バイオトーム1160が強磁性流体クラウド1150内に延在するのが示されている。図11A及び図11Bのプローブは例えば、心臓の高流量の領域を通る誘導を含む用途において使用することができる。というのも、図11A及び図11Bのプローブは直接可視化を容易にし、かかる環境において強磁性流体クラウドを通じて働くことができるからである。シース1110は、被検者の循環器系に挿入される前に脱気及び/又は(例えば食塩水による)洗浄処理を行うことができる。
【0067】
図12を参照すると、プローブの横断面が示されている。図12は、リング状磁石1260を備えたプローブ1200を示しており、リング状磁石1260は径方向若しくは厚さ方向に磁化することができ、又は複数の弧セグメント(例えば下記にて図14A~14Gを参照して記載されている弧セグメント等)若しくは複数の同心リング(例えば下記にて図14H~14Iを参照して記載されている同心リング等)を含むことができる。磁石の中心には3つの流路1210,1220及び1230がある。小さい流路1210は強磁性流体の注入を行うためのものとすることができ、それに対して流路1220は、用具を挿入するための作業通路とすることができる。流路1230はイメージング用部品を備えることができ、このイメージング用部品には例えば、ターゲット及び光センサ1250に照射するために使用できる4つのマルチモードファイバ束1240を含むことができる。これは単なる一例であり、例えば上記にて図1及び図2を参照して説明した光学系等、光学系の他の組み合わせを使用することができることに留意すべきである。
【0068】
図14A~14Iを参照すると、複数の異なる構成の磁石の横断面が示されている。図14Aはラジアルリング状磁石を示しており、このラジアルリング状磁石は4つの弧状磁石を含み、N極は各弧状磁石の外側にあり、S極は各弧状磁石の内側にある。図14Bは4つの弧状磁石を示しており、そのうち2つの弧状磁石は径方向に磁化され、2つは厚さ方向に磁化される(すなわち、図中ではS極が露出している2つの弧状磁石が、磁極が軸方向に整列するように厚さ方向に磁化されている)。図14Cは、径方向に磁化された2つの弧状磁石を示しており、2つの弧状磁石間には2つのロッド状磁石があり、先端がS極であるのが示されている(すなわち、磁極は軸方向に整列している)。図14D,14E及び14Fの各図は、径方向に磁化された4つの弧状磁石を示しており、弧状磁石の端部間にはロッド状磁石(図14D)、方形状磁石(図14E)、及び角錐状磁石(図14F)が配置されている。図14Gは8つの弧状磁石を示しており、そのうち4つの弧状磁石は径方向に磁化され、4つの弧状磁石は厚さ方向に磁化されている。図14Hは、リング状磁石の内側にラジアルリングを設けた構成を示しており、ラジアルリングは厚さ方向に磁化されている(すなわち、外側のリングは、磁極が軸方向に整列するように磁化されている)。図14Iは、厚さ方向に磁化されたリング状磁石を示しており、リング状磁石の外側にはラジアルリング磁石が設けられている。
【0069】
図15A~15D2には他の複数例の磁石構成を示している。図15Aは2つのリング状磁石を重ねたものを示しており、イメージング装置はリング状磁石の中心に挿通されることができる。図15Aに関しては、1つの磁石は径方向に磁化されており、1つの磁石は厚さ方向に磁化されている。例えば、径方向に磁化されたリング状磁石はプローブ(例えばプローブ100等)の遠位端寄りに設けると共に、軸方向に磁化されたリング状磁石はプローブの遠位端から離れた位置に設けることができる。図15Bは、磁石の順序を逆にした点を除いて図15Aと同様の構成を示している。図15Cは、2つの磁石を備えた漏斗状の形態を示しており、内側の磁石は径方向に磁化され、外側の磁石は厚さ方向に軸方向に磁化されている。図15Cに示されている構成では、イメージング装置は、漏斗状の磁石の長径の端部又は短径の端部のいずれかがプローブの遠位端寄りに来るように挿入することができる。図15D1は他の磁石変形態様を示しており、この態様では、イメージング装置の先端(例えばプローブ100の先端)において磁場の強度を上昇させるため、径方向に磁化された磁石と厚さ方向に磁化された磁石とがイメージング装置の長さに沿って重ねられている。図15D1の構成の他、磁石は種々の磁化で構成できることに留意すべきである。例えば、図15D1の全ての磁石を径方向に磁化し、又は、全ての磁石を厚さ方向に磁化することができる。図15D2は、図15D1の構成の磁石を、重なり合った磁石の長さに沿ってイメージング装置(例えばカテーテル)が曲がりやすくなるように配置したものを示しており、このことによって、プローブの先端を包囲する磁石の数を増加することができ、かかる磁石数の増加によって、装置を曲げられるようにしつつ磁場強度を増大することができる。図15A~15D2に示されている構成により、強磁性流体クラウドの形状を広げて、クラウドが、強磁性流体引付部を中心とする球体を形成するのではなく、プローブの先端を越えて延在するようにすることができる。
【0070】
図16Aを参照すると、磁石の種々の可能な向きを示す種々の磁石構成及び磁束モデルが示されており、図16Bは、プローブの先端からターゲットに向かって延在する距離に依存する、図16Aの各構成の磁束密度のグラフである。構成1610は、N極が内径側である磁極の向きが経方向のリング状磁石を備えており、プローブからの距離が増大するにつれて低下していくように中程度の磁束(具体的には、先端では約0.3T(テスラ))を生成する。構成1620は4つの弧を備えており、その磁極の向きは径方向であり、ステンレス鋼のリング(これは、図13に示されているものと同様の構成であることに留意されたい)に入れられており、構成1620によって先端で生成される磁束密度は低くなっている(具体的には、先端では約0.2T)。構成1630は、磁極の向きが軸方向である円錐状磁石を示しており、これによって先端で生成される磁束密度はさらに低くなっている(具体的には、先端では0.1T未満)。構成1640は、磁極の向きが軸方向である4つのリング状磁石と、磁極の向きが径方向である6つの弧状磁石とを備えており、6つの弧状磁石は真鍮リングに入れられており(例えば、これは図24に示されているものと同様の構成であることに留意されたい)、構成1640はプローブ近傍において高い磁束(具体的には約0.36T)を生成し、この磁束は比較的急速に低下していく。構成1650は、磁極の向きが軸方向のリングと、磁極の向きが径方向である遠位端寄りの同様のサイズのリングと、を備えており、構成1650は、径方向寸法が同様であり軸方向が短いにもかかわらず、構成1650が生成する磁束は断面全体に沿って、構成1610より若干高密度である。構成1670は、磁極の向きが軸方向であるリング状磁石と、磁極の向きが径方向である遠位端寄りのリング状磁石と、を備えており、両リング状磁石の内径は、構成1610及び1650に示されている磁石より小さい。構成1660は、プローブの遠位側先端において比較的高密度の磁束を断面全体に沿って生成する(具体的には約0.59T)。構成1670は構成1660と同様の構成であるが、磁極の向きが軸方向であるリング状磁石の軸方向の長さは構成1660より長く、先端近傍の断面全体に沿った磁束密度が高い(具体的には約0.61T)。図16A及び16Bに示されているように、軸方向に磁化された磁石と径方向に磁化された磁石との組み合わせにより、プローブの近傍及びプローブから離れた場所の双方において、磁化方向が1つだけの磁石より高い磁束を生成することができる。
【0071】
図17を参照すると、構成1670の構成に対応する磁束モデルが示されている。上記のように、構成1670では2つのリング状磁石が重ねられており、イメージング用、用具投入用、及び/又は強磁性流体の投与用の流路を備えたプローブは、磁石の中央に挿入することができる。遠位側磁石(図17の上部の磁石)は径方向に磁化されており、N極は内径側を向いているのに対し、下部の磁石は当該磁石の厚さ方向に軸方向に磁化されており、N極は遠位側先端と径方向に磁化されたリング状磁石とを向いている。図17に示されている磁束モデルは、両磁石が内径4mm及び外径8mmである構成1670に基づいており、上部の磁石の軸方向長さは4mmであり、下部の磁石の軸方向長さは8mmである。この磁束密度モデルは中心を通る横断面を示しており、これによって強磁性流体クラウドの形状及び大きさが分かる。これは単なる一具体例であり、他の寸法を有する磁石も使用できることに留意すべきである。例えば磁石寸法は、例えばサイズ及び材料等、プローブに課される制約に基づいて設定することができる。
【0072】

以下の例は、光学システム及び/又はプローブ(例えばプローブ100、図9A,9B,10A1~10B1,11A,11B,12,13等に示されているプローブ等)及び/又は強磁性流体を使用又は具現化する態様を詳細に記載したものであり、当業者が以下の例を参酌すれば、光学システム及び/又はプローブ及び/又は強磁性流体の原理をより容易に理解することができる。以下の例は例示であり、いかなる限定も意図していない。とりわけ、例1は、光が強磁性流体を透過できることを示しており、例2は、磁場を用いて強磁性流体を集め、強磁性流体クラウドを形成できることを示しており、例3は、強磁性流体が血液を押しのけることができることを示しており、例4は、強磁性流体クラウドが血液を押しのけることができ、血液によって少なくとも部分的に塞がれていたターゲットのイメージング(例えばOCTイメージング等)を容易にすることができることを示しており、例5は、強磁性流体イメージングにおいて使用できるスコープの一態様を示しており、例6は、約775nmにピークを有する光が、フェラヘムを含む強磁性流体を透過できることを示しており、例7は、強磁性流体の特性の変化が、強磁性流体を透過する光に強磁性流体が及ぼす影響を変化できることを示しており、例8は、血液が充填された空洞内において400~1000nmの光とフェラヘム系強磁性流体クラウドとを使用して取得された画像を示しており、例9は、拍動ポンプを用いて心臓の右側における条件をシミュレートした環境下でフェラヘム系強磁性流体クラウドを用いて取得された画像と、フェラヘム系強磁性流体クラウドを用いずに取得された画像とを示しており、例10は、血液が充填された(無拍動の)羊の心臓の右側内部の構造を直接的に可視化するために使用される強磁性流体誘導によるイメージングを示しており、例11は、強磁性流体クラウドを通ってイメージング対象の生検組織に挿入される用具を示しており、例12は、心臓の右側における条件をシミュレートするために使用される環境内に挿入されるプローブを示しており、例13は、前方側強磁性流体イメージングのために使用できるカルジオスコープの一例を示しており、例14は、周囲強磁性流体イメージングのために使用できるOCTプローブの一例を示しており、例15は、血液の流れが一定であるシミュレートされた冠動脈においてOCTイメージング技術を用いてフェラヘム系強磁性流体を通じて取得された画像を示している。
【0073】
<例1>
【0074】
カルジオスコープ観察用の一例の強磁性流体は、9nmの平均粒径を有するデキストラン被膜強磁性粒子をPBSに混合することにより懸濁物を生成することによって作成したものである。強磁性粒子のデキストラン被膜の平均分子量は40kDであった。図5は、水参照に対して1cmの光路長のキュベットを用いて取得された上記の強磁性流体の吸光スペクトルを示す。溶液中の強磁性ナノ粒子の濃度は0.8mg/mLであった。このスペクトルから、600nm未満では強磁性ナノ粒子の吸光係数が高いことにより吸光が強くなることが分かる。またこのスペクトルから、650nm~1400nmの光透過率が高いことが分かり、これを、本願の他の箇所に記載されているように内部構造を可視化するための光学窓として利用することができる。
【0075】
<例2>
【0076】
本願の他の箇所に記載されている構成を備えた光学プローブを介して、例1の強磁性流体をPBS溶液に導入した。図6を参照すると、PBS溶液520中に配置された光学プローブ510の底部付近に形成された安定的な強磁性流体クラウド500(その広がりは破線で示されている)の写真が示されている。強磁性ナノ粒子を閉じ込めて光学プローブ下方に近似的な観察深度が3mmの概ね球状のクラウド500を生成する磁場を生成するため、プローブの底部にトロイダル形のネオジウム磁石530(「NdFeB磁石」ともいう)を配置した。この磁石は外径4.67mm及び長さ4.63mmであったため、観察深度は3mmとなった。
【0077】
<例3>
【0078】
40kDのデキストラン被膜強磁性ナノ粒子を0.4%の量(w/w(重量比))で5%デキストラン水溶液中に懸濁したものを有する強磁性流体を作成し、本願の他の箇所に記載されている構成を有する光学プローブを介して血液サンプル中に導入した。図7の写真では、全血620サンプル中に光学プローブ610の周囲に、安定的な強磁性流体クラウド600が形成されている。光学プローブ610の遠位側先端には、磁場を生成するためにトロイダルNdFeB磁石630が配置されている。強磁性流体溶液は磁石630の底部に供給されたので、強磁性粒子は上述の強い磁場によって捕捉されて周囲の全血620を押しのけ、これによりプローブ610の周囲に光学窓600を形成した。強磁性流体窓600は、プローブ610及びNdFeB磁石630の隣に暗い色のリングとして現れた。デキストランの添加は、全血620を押しのけて数分間持続する強磁性流体クラウド600の能力を支援した。
【0079】
<例4>
【0080】
図8A~8Cを参照すると、例えば上述のプローブ100等のプローブからOCT画像列を収集した。OCTは、中心周波数1310nmかつ帯域幅100nmの光を用いて行われた。OCTプローブは空間的に固定され、スキャンを行わなかった。縦軸はプローブからの光学的深度を表し、横軸は、OCT信号の連続取得を記録して処理することにより深度ごとに分けた反射率分布を得た時間を表している。画像中の短い横線は、OCTビーム内外へ拡散された粒子を示しており、長い横線は定常構造からの反射を示している。図8Aを参照すると、食塩水710を通じてイメージングされた定常的なナイロンターゲット700の画像が示されている。ナイロンターゲット700内には、食塩水710とナイロンターゲット700との間のターゲット境界720の下方に閉じ込めが存在するのが示されている。図8Bを参照すると、ヘパリン投与された全血730を通じて強磁性流体クラウドを用いずにイメージングされた同一の定常状態のナイロンターゲットの画像が示されている。全血中の赤血球及び血球成分(hematocrit)からの強い散乱がターゲット境界を不明瞭にし、視認性を大きく制限している。図8Cを参照すると、全血に導入された強磁性流体クラウド750を通じてイメージングされた全血中の同一の定常状態のナイロンターゲットの画像が示されている。強磁性流体クラウド750を用いると、ターゲット境界720は格段に明確に視認できるようになる。強磁性流体クラウド750は数分間にわたって安定状態に留まった。図8Cで使用された強磁性流体は、例3の強磁性流体である。
【0081】
<例5>
【0082】
図13を参照すると、磁石をオリンパス社のGIF型式XP160 Evis Exera消化器ビデオスコープ1300に取り付けた写真が示されている。磁石の周囲には薄いステンレス鋼のケーシング1310が設けられている。ここでは4つの弧状磁石1320が設けられており、これらの弧状磁石1320は径方向に磁化されてS極が内径側にあることにより、磁力線を中心に集めることができる。エポキシ1360の薄い層が、ステンレス鋼ケーシング1310と磁石1320との間の縁部を覆う。このスコープは、作業通路1330と、センサ1340と、光源1350と、を備えている。
【0083】
<例6>
【0084】
図18を参照すると、臨床承認を受けた強磁性流体であるフェラヘムの、水参照に対して1cm光路長のキュベットを用いて取得された吸光スペクトルが示されている。700~1350nmの光の場合における鉄の臨床濃度30mg/mLのフェラヘムと、鉄濃度15mg/mL、7.5mg/mL及び3.75mg/mLに希釈したフェラヘムの吸光率が示されている。この結果から、図示の波長の範囲内では775nm付近で吸光率が最小になることが分かる。これにより、可視スペクトル(400~750nm)を越え近赤外スペクトルに及ぶ光源を用いると、フェラヘムによる可視化を改善できるとの示唆が得られた。
【0085】
<例7>
【0086】
図19を参照すると、800nmにおけるフェラヘムの吸光率がフェローテック社(Ferrotec)の異なる非臨床用強磁性流体の吸光率と共に示されている。複数の鉄濃度における上述の2つの強磁性流体の吸光率が示されている。その結果から、800nmでは非臨床用の強磁性流体の方がフェラヘムより高い吸光率を有することが分かる。これら2つの強磁性流体を比較すると、非臨床用強磁性流体のナノ粒子の粒径はフェラヘムの強磁性流体ナノ粒子の粒径より小さかった。また、ナノ粒子に施された炭水化物被膜も異なっていた。両強磁性流体を拍動ポンプにて試験すると、非臨床用強磁性流体は同一の鉄濃度で、フェラヘムより高い流量及び高い圧力で強磁性流体クラウドの形状を維持した。この結果により、強磁性流体の種々の特性が、光を透過して流れ(例えば血液の流れ等)に抗する強磁性流体の能力に影響が及ぼされることが示された。またこのことによって、特定の特性が所望される場合、臨床用途が異なるごとに異なる強磁性流体を使用できるとの示唆も得られた。
【0087】
<例8>
【0088】
図20Aを参照すると、光スペクトルが示されている。破線は従来の白色光イメージング(例えば400~750nmの光)に相当し、実線は、可視光の他に近赤外光を含むイメージング(例えば400~1000nm)を達成する光源におけるフィルタを使用した場合に相当する。画像2010は、血液が充填された空洞内の羊の心臓の組織をイメージングするために400~750nmの光を用いて取得されたものであり、それに対して画像2020は、同一位置にある羊の心臓の組織をイメージングするために400~1000nmの光を用いて取得されたものである。画像2020では、近赤外光を含むことにより、羊の心臓の組織の識別可能な細部が増大することが示された。画像2020では、特定の強磁性流体による臨床用途が異なるごとに、異なる波長の光を使用できることが示された。
【0089】
<例9>
【0090】
図21A~21Dを参照すると、オリンパス社のGIF型式XP160Evis Exera消化器ビデオスコープを用いて記録された画像列が示されている(これは、上記にて図13を参照して説明したプローブに相当することに留意されたい)。これらの画像は、心臓の右側の流量、圧力及び温度をシミュレートする拍動ポンプ(例えば、下記にて図12及び図24を参照して記載されている拍動ポンプ等)で、ターゲットから約4mmの距離で記録されたものである。図21Aを参照すると、水を通じたUSAFフィールドターゲットの画像が示されている。図21Bを参照すると、強磁性流体クラウドの不在下で血液により覆われた同一のUSAFフィールドターゲットの画像が示されており、これによって、ビデオスコープによる可視化ができなくなっている。図21Cを参照すると、本願に記載のフェラヘムクラウドの存在下の血液中の同一のUSAFフィールドターゲットの画像が示されており、このフェラヘムクラウドによって周囲の血液が押しのけられて、ターゲットの可視化が可能になっている。図21Cの画像は、従来の白色光イメージングを用いて記録されたものである。図21Dを参照すると、フェラヘムにより押しのけられた血液中の同一のターゲットが示されており、これは、白色光及び近赤外イメージング(400~1000nm)を用いてイメージングされたものである。強磁性流体引付部は、ラジアルリング状磁石(例えば図13に示されたラジアルリング状磁石等)であった。これらの画像により、臨床承認を受けた強磁性流体が拍動ポンプ内で血液を押しのけることができると共に、強磁性流体クラウドを通じてイメージングを行えることが示された。
【0091】
<例10>
【0092】
図22A及び図22Bを参照すると、羊の血液が充填された心臓内部のフェラヘムイメージングの種々の静止写真が示されている。このイメージングでは、強磁性流体誘導によるイメージングによって、心臓の主な内腔内部の重要な構造を直接的に可視化できることが示されている。これらの画像は、例9にて記載されているものと同一のイメージングシステムを用いて取得された。
【0093】
<例11>
【0094】
図23を参照すると、羊の血液が充填された心臓内部のフェラヘムイメージングの静止写真列が示されている。バイオトーム2300が強磁性流体クラウドを通って突出しているのが示されており、バイオトーム2300は、直接可視化による誘導下で心臓内部から組織サンプルを収集することに成功している。これらの画像により、強磁性流体誘導によるイメージングが直接可視化中にクラウドを通って用具投入を可能にできることが示されている。例9にて記載されているものと同一のイメージングシステムを使用した。
【0095】
<例12>
【0096】
図24を参照すると、図21A~21Dの画像を生成するために使用された拍動ポンプを示す写真が示されている。この拍動ポンプは、心臓の流量、圧力及び温度をシミュレートするものである。写真には、内視鏡2440にラジアルリング状磁石2400を取り付けたものが示されている。強磁性流体クラウド2410が内視鏡から突出しているのが分かり、この強磁性流体クラウド2410を透過する光を識別することができる。内視鏡の下方にUSAFターゲット2420が位置する。この写真には、食塩水が充填されたフラスコ2450が示されている。種々の流量及び圧力に抗することができると共に血液を通じた可視化を可能にする強磁性流体の能力を試験するため、ポンプに血液が充填された。ポンプに血液と食塩水とが充填されたときに取得された画像については、上記にて図21A~21Dを参照して説明している。
【0097】
<例13>
【0098】
図25を参照すると、イネーブル社(Enable)の Imaging minnieScope-XS小型ビデオスコープ2500を用いたより小型のプローブの写真が示されている。このスコープは、2つの流路を有するポリマーチューブに挿入できるものである。一方の流路はスコープを収容し、他方の流路2540は強磁性流体の注入又は用具投入を行うためのものである。複数の磁石の複合体がポリマーチューブを包囲し、この複合体には、遠位端にN極を配して厚さ方向に磁化された4つのリング状磁石2510と、内径側にN極を配して径方向に磁化された6つの弧状磁石2520と、が含まれる。弧状磁石は、薄い真鍮のケーシング2530によって包囲されている。この構成により、磁力線をプローブの中心付近に集めることができ、磁力線を前方に突出させることができる。スコープ2500自体は、ターゲットの照射を行うための光ファイバ束導波体2550と、センサ2560とを備えている。スコープの外径は1.7mmであり、プローブの全径は7mmであり、これによって、心臓内部のより小さい領域内へ誘導することができる。
【0099】
<例14>
【0100】
図26を参照すると、周囲イメージング用に構成されたプローブの写真が示されている。駆動軸2620が光ファイバを収容しており、この光ファイバはボールレンズから2つのリング状磁石2610を介してビームを放出する。この駆動軸は、接続部2640を用いて回転連結部に接続することができる。周囲画像を取得するため、駆動軸2620と光ファイバとボールレンズとは、共に360°回転することができる。注入側2630から強磁性流体を注入してリング状磁石2610の周囲に集め、強磁性流体により血液を押しのけることができる。
【0101】
<例15>
【0102】
図27A~27Eを参照すると、周囲イメージング用のOCTプローブ(具体的には、上記で図26を参照して説明したシステム)を用いて記録された画像列が示されている。周囲OCTイメージングは、中心周波数1310nm及び帯域幅100nmの光を用いて行われた。これらの画像は、冠動脈をシミュレートして種々の液体を流すことができるナイロン管にプローブを挿入して記録された。ナイロン管は1.5mmでターゲットとしてイメージングされ、厚さは0.7mmであった。図27Aを参照すると、水を通じたナイロン管の断面の明瞭なOCT画像が示されている。図27Bを参照すると、ナイロン管には静止状態の血液が充填されており、これによってOCTプローブによる可視化が不可能になっていた。図27Cを参照すると、静止状態の血液を含むナイロン管の画像が示されており、同画像では、フェラヘムクラウドが周囲の血液を押しのけてターゲットの厚さ全体の明瞭な可視化を可能にしている。図27Dを参照すると、フェラヘムの連続注入が行われるナイロン管の画像が示されており、ナイロン管内の血流は冠動脈内の流れをシミュレートしている。これらの画像により、臨床承認を受けた強磁性流体が、一定の流れのシミュレートされた冠動脈中で血液を押しのけることができ、これにより強磁性流体クラウドを通じて周囲イメージングを行えることが示されている。
【0103】
よって、上記にて特定の実施形態及び例を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されず、他の数多くの実施形態、例、使用、改良、及びそれらの実施形態、例及び使用からの派生形態も、本願に添付されている特許請求の範囲に含まれることを意図したものである。実際、本願開示の実施形態例の構成、システム及び方法は、生体内組織又は新鮮組織をイメージングする能力を有するあらゆるOCTシステム、OFDIシステム、SD-OCTシステム又は他のイメージングシステムと共に使用及び/又は具現化することができ、例えば、国際特許出願PCT/US2004/029148(出願日:2004年9月8日、国際公開WO2005/047813、国際公開日:2005年5月26日)、米国特許出願第11/266,779号(出願日:2005年11月2日、米国特許出願公開第2006/0093276号、公開日:2006年5月4日)、米国特許出願第10/501,276号(出願日:2004年7月9日、米国特許出願公開第2005/0018201号、公開日:2005年1月27日)、米国特許出願公開第2002/0122246号(公開日:2002年5月9日)、米国特許出願第61/649,546号、米国特許出願第11/625,135号、及び米国特許出願61/589,083号に記載されているシステムと共に使用及び/又は具現化することができる。これらの文献の開示内容は全て、参照により本願の開示内容に含まれるものとする。ここで引用した各特許及び公開公報の開示内容は全て、参照により含まれ、各特許又は公開公報が個別に参照によって本願の開示内容に含まれている場合と同様に扱う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A1
図10A2
図10A3
図10B1
図10B2
図10B3
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図14I
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図24
図25
図26
図27A
図27B
図27C
図27D
図27E