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特許7396989予備反応させた球状無機粒子および球状細孔形成剤を含むバッチ組成物ならびにそれからのハニカム体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】予備反応させた球状無機粒子および球状細孔形成剤を含むバッチ組成物ならびにそれからのハニカム体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/06 20060101AFI20231205BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C04B38/06 B
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 241
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020544341
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018058414
(87)【国際公開番号】W WO2019089731
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】62/579,579
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/579,585
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】バックハウス-リクー,モニカ
(72)【発明者】
【氏名】コラール,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ツヴェトコフ,ボリス ニコラエヴィッチ
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519047(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0160104(US,A1)
【文献】国際公開第2013/146499(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046242(WO,A1)
【文献】特開平08-215522(JP,A)
【文献】特開2015-066517(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087758(WO,A1)
【文献】特開2011-195378(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122532(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152727(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチ組成物において、
10μm≦DI50≦50μm、および
DIb≦2.0
である粒子サイズ分布を有する球状無機粒子と、
0.40 DI50≦DP50≦0.90 DI50
DPb≦1.32、および
バッチ組成物の無機物に対する上乗せ添加による22%≦LV≦50%の重量
である細孔形成剤粒子サイズ分布を有する細孔形成剤球状粒子とを含み、
ここで、DI50は、前記球状無機粒子の前記粒子サイズ分布の中央粒径であり、DP50は、前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の中央粒径であり、DIbは、前記球状無機粒子の前記粒子サイズ分布の幅係数であり、DPbは、前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の幅係数であり、LVは液体ビヒクルであり、
前記球状無機粒子が、所望のセラミック結晶相組成物を含むものである、バッチ組成物。
【請求項2】
前記細孔形成剤球状粒子が、ARavg≦1.1を有し、
ここで、ARavgは、前記細孔形成剤球状粒子の最大幅寸法を最小幅寸法で割ったものの平均として定義される平均アスペクト比である、請求項1記載のバッチ組成物。
【請求項3】
15μm≦DP50≦30μmを有する、請求項1記載のバッチ組成物。
【請求項4】
ハニカム体を製造する方法において、
予備反応させた球状無機粒子と、微細無機粒子と、有機バインダと、細孔形成剤球状粒子と、液体ビヒクル(LV)とを含むバッチ組成物を混合して、ペーストを生成するステップであって、
前記予備反応させた球状無機粒子が、
10μm≦DI50≦50μm、および
DIb≦2.0
の予備反応させた粒子サイズ分布を有し、
前記細孔形成剤球状粒子が、
0.40 DI50≦DP50≦0.90 DI50
DPb≦1.32、および
バッチ組成物の無機物に対する上乗せ添加による22%≦LV≦50%の重量
の細孔形成剤粒子サイズ分布を有し、
ここで、DI50は、予備反応させた球状無機粒子の前記予備反応させた粒子サイズ分布の中央粒径であり、DP50は、細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の中央粒径であり、DIbは、予備反応させた球状無機粒子の前記予備反応させた粒子サイズ分布の幅係数であり、DPbは、細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の幅係数であり、
5μm未満の中央粒径を有する前記微細無機粒子が、前記予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して、20質量%未満を構成するステップと、
前記ペーストを、湿ったグリーンハニカム体へと形成するステップと
を含み、
前記予備反応させた球状無機粒子は、噴霧乾燥により形成され、その後か焼または焼成されて該予備反応させた球状無機粒子を形成する、球状無機粒子を含むものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2017年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/579,579号および2017年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/579,585号の米国特許法第119条の下での優先権の恩恵を主張し、その内容を依拠し、その内容全体を本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、予備反応させた無機粒子を含むバッチ組成物混合物およびそれからハニカム体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルおよびガソリンエンジン排気後処理用触媒コンバータおよびパティキュレートフィルタにおいては、コーディエライト、炭化ケイ素、およびチタン酸アルミニウムを含むセラミックハニカム体が使用されてきた。
【0004】
そのようなセラミックハニカム体は、無機材料および有機材料ならびに脱イオン水などの液体ビヒクル(LV)の可塑化バッチ組成物を押出機の押出ダイを通じて押し出すことにより製造できる。
【0005】
いくつかのバッチ組成物において、予備反応させた球状粒子がバッチにおいて使用された。しかし、そのようなバッチ組成物には、特定の性能問題がある場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の例示の実施形態は、バッチ組成物に関する。バッチ組成物は、
10μm≦DI50≦50μm、および
DIb≦2.0
である予備反応させた粒子サイズ分布を有する予備反応させた球状無機粒子と、
0.40 DI 50 DP 50 ≦0.90 DI 50 、および
DPb≦1.32
である細孔形成剤粒子サイズ分布を有する細孔形成剤球状粒子とを含み、
ここで、DI50は、予備反応させた球状無機粒子の予備反応させた粒子サイズ分布の中央粒径であり、DP50は、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布の中央粒径であり、DIbは、予備反応させた球状無機粒子の予備反応させた粒子サイズ分布の幅係数であり、DPbは、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布の幅係数である。
【0007】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して20%未満の微細無機粒子であって、5μm未満の中央径を有する微細無機粒子を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して10%未満の微細無機粒子であって、5μm未満の中央径を有する微細無機粒子を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して5%未満の微細無機粒子であって、5μm未満の中央径を有する微細無機粒子を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子は、ARavg≦1.2を有し、ここで、ARavgは、予備反応させた球状無機粒子の最大幅寸法を最小幅寸法で割ったものの平均として定義される平均アスペクト比である。
【0011】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子は、ARavg≦1.1を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、ARavgは、細孔形成剤球状粒子の最大幅寸法を最小幅寸法で割ったものの平均として定義される平均アスペクト比である。
【0013】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、20μm≦DI50≦50μmを有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、20μm≦DI50≦40μmを有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、DI90≦85μmを有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、DI90≦65μmを有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、45μm≦DI90≦85μmを有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、DI10≧8μmを有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、8μm≦DI10≦35μmを有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は(DI90-DI10)≦55μmを有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、15μm≦(DI90-DI10)≦55μmを有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、15μm≦DP50≦30μmを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、0.4 DI 50 DP 50 ≦0.8 DI 50 を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、0.4 DI 50 DP 50 ≦0.7 DI 50 を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子は、非親水性である。
【0026】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子は、非親水性ポリマーを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、非親水性ポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリウレタン、ならびにそれらの誘導体および組合せを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子は、相変化材料を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子は、MP≧100℃を有するポリマーを含み、ここで、MPは、細孔形成剤球状粒子の融点である。
【0030】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布は、DPb≦1.30を有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布は、DPb≦1.25を有する。
【0032】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布は、(DP90-DP10)≦20μmを有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布は、(DP90-DP10)≦15μmを有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子は、バッチ組成物中の無機物の総質量に対する上乗せ添加による5質量%~35質量%を構成する。
【0035】
いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子は、噴霧乾燥された球状粒子を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、バッチ組成物の無機物に対する上乗せ添加による28質量%≦LV≦50質量%の重量を含み、ここで、LVは液体ビヒクルである。
【0037】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、バッチ組成物の無機物に対する上乗せ添加による22質量%≦LV≦35質量%の重量を含み、ここで、LVは液体ビヒクルであり、細孔形成剤球状粒子は非親水性である。
【0038】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、ヒドロキシエチルメチルセルロースバインダおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースバインダの組合せである有機バインダを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、予備反応させた無機粒子は、1種類以上の結晶相を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、予備反応させた無機粒子は、1種類以上のガラス相を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、1種類以上の結晶相は、(i)チタン酸アルミニウム、(ii)長石、(iii)ムライト、(iv)チタニア、(v)マグネシア、(vi)アルミナ、(vii)二チタン酸マグネシウム、(viii)炭化ケイ素、(ix)擬ブルッカイト、(x)コーディエライト、(xi)コーディエライト、マグネシア、チタン酸アルミニウム複合材、および(xii)それらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子は、主にチタン酸アルミニウムおよび二チタン酸マグネシウムの固溶体の第1の結晶相、ならびにコーディエライトを含む第2の結晶相を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子は、アルミナ、マグネシア、およびチタニアを主に含む擬ブルッカイト結晶相、コーディエライトを含む第2の結晶相、ならびにムライトを含む第3の結晶相を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、4.0超のタウY/ベータを有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、4.5超のタウY/ベータを有する。
【0046】
本開示の例示の実施形態は、ハニカム体を製造する方法にも関する。この方法は、予備反応させた球状無機粒子と、微細無機粒子と、有機バインダと、細孔形成剤球状粒子と、液体ビヒクルとを含むバッチ組成物を混合して、ペーストを生成するステップであって、予備反応させた球状無機粒子が、
10μm≦DI50≦50μm、および
DIb≦2.0
の予備反応させた粒子サイズ分布を有し、
細孔形成剤球状粒子が、
0.40 DI 50 DP 50 ≦0.90 DI 50 、および
DPb≦1.32
の細孔形成剤粒子サイズ分布を有し、
ここで、DI50は、予備反応させた球状無機粒子の予備反応させた粒子サイズ分布の中央粒径であり、DP50は、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布の中央粒径であり、DIbは、予備反応させた球状無機粒子の予備反応させた粒子サイズ分布の幅係数であり、DPbは、細孔形成剤球状粒子の細孔形成剤粒子サイズ分布の幅係数であり、5μm未満の中央粒径を有する微細無機粒子が、予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して、20質量%未満を構成するステップを含む。この方法は、ペーストを、湿ったグリーンハニカム体へと形成するステップをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、この方法は、4.0超のタウY/ベータを有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、この方法は、4.5超のタウY/ベータを有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、この方法は、湿ったグリーンハニカム体を乾燥させて、乾燥したグリーンハニカム体を形成するステップと、乾燥したグリーンハニカム体を焼成して、多孔質セラミックハニカム体を形成するステップとをさらに含む。
【0050】
本開示の追加の特徴は以下の説明に記載され、一部は説明から明らかであろうし、または本開示を実施することにより分かるであろう。先の一般的な説明および以下の詳細な説明のいずれも例示的および説明的なものであり、本開示のさらに別の説明を提供することが意図されていることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本開示をさらに理解するために含まれ、本明細書に組み込まれかつその一部を構成する添付図面は、本開示の例の実施形態を示しており、その説明と共に本開示の原理の説明に役立つ。
図1】本開示の例示の実施形態によるハニカム体の概略図。
図2】(説明目的のために歪んで示された)その最大幅寸法W1および最小幅寸法W2を示す球状粒子の側面図。
図3】1つ以上の実施形態によるバッチ組成物を使用してグリーンハニカム体を生成するように構成された押出機の部分概略側断面図。
図4A】実施形態による予備反応させた球状無機粒子の様々な例の粒子サイズ分布のプロット。
図4B】実施形態による予備反応させた球状無機粒子の様々な例の粒子サイズ分布のプロット。
図5】本開示の例示の実施形態によるポリマー細孔形成剤球状粒子の粒子サイズ分布のグラフプロット。
図6】本開示の例示の実施形態による予備反応させた球状無機粒子および細孔形成剤球状粒子を使用して多孔質セラミックハニカム体を製造する方法のフローチャート。
図7A】複数の速度Vおよび異なるキャピラリー長Lにおける、反応性粒子を含む比較のバッチ組成物の例の実施形態のサンプル番号に対するPtotal(psi)のプロット。
図7B】複数の速度Vおよび異なるキャピラリー長Lにおける、予備反応させた球状無機粒子を含むバッチ組成物の例の実施形態のサンプル番号に対するPtotal(psi)のプロット。
図8A】異なるキャピラリー長Lのキャピラリーレオメータを通じて押し出された、反応性粒子を含む比較のバッチ組成物の例の実施形態のV(インチ/秒)に対するPtotal(psi)のプロット。
図8B】異なるキャピラリー長Lのキャピラリーレオメータを通じて押し出された、予備反応させた球状無機粒子を含むバッチ組成物の例の実施形態のV(インチ/秒)に対するPtotal(psi)のプロット。
図9】実施形態によるバッチ組成物のレオロジー特性を試験するように構成されたキャピラリーレオメータの側断面図。
図10】予備反応させた球状無機粒子を含むバッチ組成物の例の実施形態の速度(インチ/秒)に対する流入圧力Pe(psi)の例示のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本開示の例示の実施形態が示されている添付図面を参照して、本開示がさらに詳しく記載される。しかし、本開示は、多くの様々な形態で具体化することができ、本明細書において説明および記載された実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。本明細書に開示された実施形態は、本開示が本開示の範囲を十分かつ完全に伝えるように提供される。図面において、全体的なサイズおよび相対的なサイズは、原寸に比例して描かれていない。図面中の同様の参照番号は、同様の要素を表すために本開示全体に亘って使用される。
【0053】
セラミックハニカム物品の製造において、無機材料および有機材料ならびに水などの液体ビヒクル(LV)を含む可塑化バッチ組成物は、押出機の押出ダイを通じて押し出される。供給速度がセラミックハニカムの最終的な製造コストと少なくともある程度関連するため、できるだけ高い供給速度で可塑化バッチを押し出す一方、良好な品質のグリーン体を提供することが目標である。特に、ハニカム製造において、可塑化バッチ組成物は、その中に形成された複数の細い交差ダイスロットを有する押出ダイを通じて押し出される。押出ダイを出るとき、押し出されたグリーンハニカム体は、良好な全体的な寸法制御、その自重による限られた量のたわみまたは変形、様々なセル壁間の良好な結び付き、良好なセル形状(例えば、正方形または他の所望の形状)、良好な壁形成(例えば、最小限の波打ち)を示すべきであり、壁の裂けを示すべきでない。乾燥されるときのハニカム体の最小限の収縮も所望の目標である。
【0054】
セラミックハニカム体を製造するための従来のバッチ組成物は、結果として得られる組み合わせられた無機粒子分布が、かなり広い粒子サイズ分布を有する、無機粉末の混合および/または混練を必要とする。この無機粉末には、チタニアの供給源、アルミナの供給源、シリカの供給源、マグネシアの供給源、および同種のものが含まれ得る。そのような無機粒子は、可塑化バッチ組成物を生成するために、有機バインダ(例えば、セルロースベースのバインダ)、場合によって滑剤、およびLV(例えば、脱イオン水)、および場合によっては細孔形成剤材料と共に混合される。次いで、この可塑化バッチ組成物は、グリーン体(例えば、グリーンハニカム体)を生成するために、押出機の押出ダイを通じて押し出される。続いて、グリーンハニカム体は、多孔質セラミックハニカム体を生成するために、従来のプロセスにより乾燥および焼成される。
【0055】
他の実施形態において、国際公開第2014/189741号に記載されているように、多孔質セラミックハニカム体の製造に適したバッチ組成物における使用のために、焼結結合または反応結合された予備反応させた球状無機粒子が提案されている。
【0056】
予備反応させた球状無機粒子を含むそのようなバッチ組成物中のデンプンおよびグラファイトの従来の細孔形成剤材料の組合せの使用は、裂けなどの特定の欠陥を有することがあり、これらは、バッチ組成物中の水のミクロ偏析に起因すると考えられる。「予備反応させた球状無機粒子」は、バッチ組成物に提供される前に所望のセラミック結晶相組成物を含むために、球状体として(例えば、噴霧乾燥により)形成され、(例えば、か焼または焼成することにより)少なくとも部分的に反応させた無機粒子として本明細書において定義される。
【0057】
しかし、本明細書の発明者らによって発見されたように、特定の球状細孔形成剤粒子との球状無機粒子の組合せが使用されるとき、押出により生成されたグリーン体ハニカムは、表面テクスチャが非常に滑らかであり、裂けなどの壁の欠陥が実質的になかった。さらに、高気孔率のセラミックハニカム体を提供するためには、非常に低いレベルの細孔形成剤材料が必要になることもある。いくつかの実施形態において、より少ないLVがバッチ組成物中で使用されてもよい。そのようなバッチ組成物は、驚くべきことに、優れた押出性ならびに比較的高い押出供給速度を提供する。
【0058】
注目すべきことに、ハニカムグリーン体の押出中、比較的剛性があるバッチ(高いタウYを有する - 後に本明細書において詳しく記載される)を使用することが望ましく、その理由は、これにより、湿ったグリーンハニカム体のより良い形状制御、すなわち、より少ない壁および/またはセルの変形、より少ない裂け、ならびにより少ないスランピング(ハニカム体の自重による変形の結果としての幾何学的たわみ)がもたらされる場合があるからである。剛性係数「タウY」は、特定の可塑化バッチ組成物の剛性の尺度である。タウYは、本明細書において以下に記載されるように測定および決定される。より高剛性のバッチ特性を有する従来のバッチは、より高い押出圧力およびより低い供給速度につながるであろう。LV(例えば、脱イオン水)を従来のバッチ組成物に添加すると、バッチと押出ダイの細いダイスロットの表面との間のより少ない摩擦に起因して、供給速度の改善が可能になり得るが、湿ったおよび乾燥したグリーンハニカム体の形状制御が犠牲になるであろう(すなわち、たわみ変形、壁が結び付かない不良、および他の欠陥)。摩擦係数「ベータ」は、摩擦の尺度であり、壁抵抗にも影響を与え、壁抵抗は、規定されたサイズのスロットをバッチ組成物が通過するときのダイの壁表面に対する可塑化バッチ組成物の摩擦である。ベータは、本明細書において以下に記載されるように測定および決定される。
【0059】
したがって、従来のバッチ組成物では、望ましい高いバッチ剛性(高いタウY)と低い壁摩擦(低いベータ)との当然のトレードオフが存在する。したがって、押出中のバッチ組成物のレオロジー挙動を特徴付けるために、バッチ剛性係数(タウY)を摩擦係数(ベータ)で割った比を使用できる(すなわち、タウY/ベータ)。高いタウY/ベータ比が望ましく(押し出されたハニカム体がその形状を実質的に維持し、それらの自重でたわまないようなバッチ組成物の十分に高いスティップで)、実現可能な場合、これにより、より高い押出速度が可能になり得る。しかし、従来のチタン酸アルミニウムバッチのタウY/ベータ比は非常に低く、すなわち、約1.0~約1.5未満の範囲内である。タウY/ベータの比の増加は、特にチタン酸アルミニウムベースの組成物において、実現が困難であった。
【0060】
したがって、供給速度をより高くすることができる一方、湿ったおよび乾燥したグリーンハニカム体の良好な形状制御ならびに良好な品質も保持するバッチ組成物の改善は、ハニカム体押出技術における主要な進歩と見なされるであろう。
【0061】
特に、本明細書の発明者らは、予備反応させた球状無機粒子と有機細孔形成剤球状粒子との特定の組合せが、改善されたバッチレオロジーおよびダイ押出挙動を提供することを発見した。特に、改善されたタウY/ベータの比が、本開示の1つ以上の実施形態にしたがって実現できる。実施形態において、予備反応させた球状無機粒子および細孔形成剤球状粒子が、定義された関係で提供される中央粒子サイズ(D50)と関連する比較的狭い粒子サイズ分布を有するとき、バッチ組成物は、優れた押出特性を示し、かつタウY/ベータの高い比を示しつつ、押し出されたグリーン体ハニカムの優れた形状制御も提供する。例えば、タウY/ベータ≧4.0、またはさらにタウY/ベータ≧4.5の比が、いくつかの実施形態において実現できる。さらに、得られたグリーンハニカム体の性質には、低レベルの壁およびセルの変形、少ない裂け、滑らかな壁仕上げ、良好な最終的な寸法制御、低レベルのスランプ、および低レベルの収縮が含まれ得る。
【0062】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、予備反応させた球状無機粒子を細孔形成剤球状粒子と組み合わせて含むバッチ組成物に関する。バッチ組成物は、少量(すなわち、規定量未満)の微細無機バインダ粒子(以下、「細粒」)をさらに含んでもよい。予備反応させた球状無機粒子の分布は、特定の制御された中央粒子サイズ(DI50)およびその比較的狭い粒子サイズ分布を有するように選択される。分布の狭さはDIbにより定義でき、ここで、DIbは、予備反応させた球状無機粒子の分布幅係数である。本明細書においてさらに定義されるDI90-DI10など、狭さの他の特徴付けが使用されてもよい。
【0063】
同じく、細孔形成剤球状粒子の分布は、特定の制御された中央粒子サイズ(DP50)および狭い細孔形成剤粒子サイズ分布を有するように選択される。粒子分布の狭さの1つの尺度はDPbであり、ここで、DPbは細孔形成剤分布幅係数である。分布の狭さの他の特徴付けが使用されてもよい。
【0064】
実施形態において、予備反応させた球状無機粒子の中央粒子サイズ(DI50)は、指定の範囲のサイズを有するように選択される。さらに具体的には、細孔形成剤球状粒子の中央径DP50は、予備反応させた球状無機粒子の制御された中央粒子サイズ(DI50)と比べて、特定の範囲内のサイズになるように選択される。特に、サイズは、予備反応させた球状無機粒子および細孔形成剤球状粒子の各々が比較的狭い粒子サイズ分布も有する以下に表されるような特定のサイズの関係を有するように選択される。
【0065】
本開示の例の実施形態は、図1に示したハニカム体100などのグリーン体物品の形成において有用なバッチ組成物を提供する。ハニカム体100は、ハニカム体100の一端103から他端105まで延在している複数の交差壁102を備えている。交差壁102は、平行な関係で同じく端から端まで延在している複数のチャネル104を形成する。正方形のセル形状が示されている。しかし、長方形、三角形、六角形、円形、またはそれらの組合せなど、横断面において他のセル形状が形成されてもよい。ハニカム体100(例えば、グリーンハニカム体)を乾燥および焼成して、多孔質壁を備えている多孔質セラミックハニカム体を形成することができる。生成された多孔質セラミックハニカム体の交差壁102は、焼成後、相互接続された開孔を有する。ハニカム体100の任意の適切な全体的な断面のサイズ、長さ、形状(例えば、円形、三葉形、長円形、レーストラック、および同種のもの)がバッチ組成物から生み出されてもよい。
【0066】
バッチ組成物、バッチ組成物から製造されたグリーンハニカム体などのグリーン体物品、およびバッチ組成物から生成された多孔質セラミックハニカム体などのセラミック物品の例の実施形態の追加の特徴および特性が、本明細書の図1図10を参照して本明細書において開示される。
【0067】
さらに詳細には、本開示の実施形態は、予備反応させた球状無機粒子および細孔形成剤球状粒子の特定の組合せを含むバッチ組成物を提供する。この組合せは、優れた押出速度およびバッチ加工性を提供できる。
【0068】
球状無機粒子
実施形態において、バッチ組成物は、以下の式1:
10μm≦DI50≦50μm 式1
により表される予備反応させた粒子サイズ分布を有する予備反応させた球状無機粒子を含み、これは、以下の式2:
DIb≦2.0 式2
により表される比較的狭い粒子サイズ分布も有してもよく、ここで、DI50は、予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布の中央粒径であり、DIbは、予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布の分布幅係数であり、これは、粒子サイズ分布の相対的な狭さを反映する1つの尺度である。予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布の幅係数DIbは、以下に示される式3により定義できる:
DIb={DI90-DI10}/DI50 式3
DI90は、予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布内の予備反応させた球状無機粒子の特定の粗粒子径と本明細書において定義され、ここで、粒子サイズ分布中の予備反応させた球状無機粒子の90%は、特定の粗粒子径以下の直径を有し、すなわち、残りの粒子(約9.9999%)は、より大きい粒子径を有する。DI10は、予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布内の粒子の特定の微粒子径と本明細書において定義され、ここで、粒子サイズ分布中の予備反応させた球状無機粒子の10%は、微粒子径以下の粒子径を有し、すなわち、残り(約89.9999%)は、より大きい粒子径を有する。
【0069】
DIbは、予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布の相対的な狭さの1つの尺度であるが、DI90-DI10など、予備反応させた無機粒子の粒子サイズ分布の相対的な狭さを特徴付ける他の尺度が使用されてもよい。
【0070】
DI50
バッチ組成物のいくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子は、10μm≦DI50≦50μm(10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、および50μmを含む)であり、全ての部分範囲ならびに10μmおよび50μmを含むこれらの間の部分値も含む粒子サイズ分布を有し、ここで、DI50は、予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布の中央粒径である。
【0071】
いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子は、DI50の範囲がさらにより狭い粒子サイズ分布を有する。例えば、さらに別の実施形態において、予備反応させた球状無機粒子の中央粒径DI50は、20μm≦DI50≦50μm、またはさらに20μm≦DI50≦40μmであってもよい。予備反応させた球状無機粒子は、噴霧乾燥プロセスにより形成されてもよい。いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子の中央粒径DI50は、グリーン球状無機粒子を生成するとき、噴霧乾燥プロセスにおいて、ノズルタイプ、ノズルチップ内径、ノズル回転速度、ノズル圧力、微細無機微粒子のサイズおよびタイプ、温度設定、有機バインダ、分散剤、および界面活性剤のタイプとレベル、ならびに固体添加量(すなわち、液体に対する固体の比)を変更することにより、その形成中に調整できる。グリーン球状粒子の噴霧乾燥は、例えば、米国特許出願公開第2016/0251249号明細書に開示されている。
【0072】
他の実施形態において、比較的粗い、予備反応させた球状無機粒子の狭さは、その中の予備反応させた球状無機粒子の粒分の一部を除去するよう適合させた特定の粒子加工により向上させることができる。例えば、粒子サイズ分布から粗粒分、細粒分、またはその両方を除去するために、篩分け、空気分級、沈降もしくは沈殿による分離、または同種のものなどの加工が使用されてもよい。例えば、約270メッシュの篩(53μmのメッシュ孔を有する)に粉末を通し、したがって、約53μmより小さい粒子を除去することにより、約60μmより大きいサイズを有する粒子サイズ分布中の粗粒分を除去できる。粒子サイズ分布の大端部から他の粒分を除去するために、他の篩サイズを使用できる。同じく、より小さいメッシュの篩を使用し、より大きい粒子を保持することにより、小さい粒分を除去できる。他の分離技法も使用できる。
【0073】
グリーン球状無機粒子は、無機物を含むスラリーを噴霧乾燥することにより形成されてもよく、次いで、これは、予備反応させた球状無機粒子を生成するためにか焼または焼成されてもよい。約1000℃~1650℃、またはさらに約1200℃~1600℃の温度での回転か焼が使用されてもよい。特定のか焼温度は、スラリー中に含まれる無機粒子の特定の組成および予備反応させた球状無機粒子の所望の相組成物に依存することになる。したがって、予備反応させた球状無機粒子は、上述の式1および式2に表されたような上述の粒子サイズ分布パラメータまたは他のさらにいっそう狭い特性を満たすために設計および/または予備加工できる粒子サイズ分布を有してもよいことが認識されるべきである。
【0074】
DI90およびDI10
いくつかの例の実施形態において、バッチ組成物中の予備反応させた球状無機粒子の分布は、いくつかの実施形態において、DI90≦85μm、またはさらにDI90≦75μm、またはさらにDI90≦65μm、またはさらにDI90≦55μmを有してもよい。いくつかの実施形態において、バッチ組成物中の予備反応させた球状無機粒子は、45μm≦DI90≦85μm、またはさらに45μm≦DI90≦65μmの範囲を有してもよい。そのような範囲は、有用な範囲の気孔率を提供でき、高度に触媒化されたフィルタにおいて比較的低い圧力損失、比較的高い濾過効率、および比較的高い触媒活性を生じるのに有用であり得る焼成されたハニカム中の特に狭い細孔サイズ分布を生み出すことができる。
【0075】
いくつかの例の実施形態において、バッチ組成物の予備反応させた球状無機粒子の分布はDI10≧8μmを有してもよく、いくつかの実施形態において、DI10≧10μmを有してもよい。他の実施形態において、バッチ組成物の予備反応させた球状無機粒子の分布は、DI10≧20μm、またはさらにDI10≧30μmを有してもよい。いくつかのバッチ組成物において、予備反応させた球状無機粒子は、以下のような範囲であるDI10を有してもよい:8μm≦DI10≦35μm、またはさらに10μm≦DI10≦35μm。
【0076】
いくつかのバッチ組成物における予備反応させた球状無機粒子の分布の狭さは、例えば、DI10≧3μmおよびDI90≦85μmの組合せを含んでもよい。他のバッチ組成物において、予備反応させた球状無機粒子は、DI10≧3μmおよびDI90≦40μmの組合せを有する。特定の例示の実施形態において、DI10≧8μmおよびDI90≦40μmの組合せが提供されてもよい。
【0077】
あるいは、予備反応させた球状無機粒子の狭さは、関数DI90-DI10により表すことができる。いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子の分布は、DI90-DI10≦55μm、またはさらにDI90-DI10≦40μm、またはさらにDI90-DI10≦30μm、またはさらにDI90-DI10≦20μmを有してもよい。予備反応させた球状無機粒子の分布のいくつかの特に狭い実施形態において、DI90-DI10≦15μmである。
【0078】
DI90-DI10の範囲は、いくつかの実施形態において、15μm≦DI90-DI10≦55μmであってもよく、または、他の実施形態において、25μm≦DI90-DI10≦55μmであってもよい。いくつかの特に狭い実施形態において、予備反応させた球状無機粒子の分布のDI90-DI10の範囲は、30μm≦DI90-DI10≦55μmであってもよい。
【0079】
上述したように、いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子の粒子サイズ分布の上述の分布幅係数DIb、DI10、DI90、および/またはDI90-DI10が満たされるように、細かいテール部分および/または粗いテール部分を除去するために、形成されたグリーン球状無機粒子またはか焼もしくは焼成された予備反応させた球状無機粒子が篩分けされるか、さもなければ分画されてもよい。本明細書において記載された粒子サイズは、Microtrac S3500レーザ回折計により測定される。
【0080】
特定の予備反応させた球状無機粒子の例が以下の表1に示されている。図4Aおよび図4Bは、噴霧乾燥プロセス(SPD)により形成された予備反応させた球状無機粒子のいくつかの代表的な粒子サイズ分布のプロットされた例を示している。予備反応させた球状無機粒子の相組成物は、最終的なハニカム体において求められる任意の所望の相組成物になるよう設計できる。例えば、予備反応させた球状無機粒子の相組成物は、コーディエライト、ムライト、およびチタン酸アルミニウム(以下、「CMAT」)の相を含んでもよい。しかし、本明細書において記載されたように他の組成物も可能である。予備反応させた球状無機粒子の形成に適した他の方法には、スピン乾燥、およびグリーン無機粒子を形成するためのスラリーの霧化が含まれ得る。次いで、グリーン無機粒子は、予備反応させた球状無機粒子を形成するためにか焼されてもよい。
【0081】
【表1】
【0082】
およそDI50=30μm~およそDI50=50μmの噴霧乾燥したグリーン粒子の追加の例示の実施形態が、以下の表2に以下に示されている。
【0083】
【表2】
【0084】
焼成された予備反応させた球状粒子サイズは、グリーン球状粒子サイズからわずかにシフトすることがある。上述から分かるように、DIb≦1.0、DIb≦0.95、DIb≦0.90、DIb≦0.85、DIb≦0.80を有する、いくつかの実施形態において、さらに0.75≦DIb≦1.0を有する球状粒子の非常に狭い粒子サイズ分布を実現できる。同様に、球状粒子サイズの分布の狭さは、D90-D10により表すことができ、ここで、例えば、25μm≦(D90-D10)≦45μmである。
【0085】
細孔形成剤球状粒子
バッチ組成物は、予備反応させた球状無機粒子の分布の中央粒径DI50に対して選択された範囲内になるように選択された細孔形成剤粒子サイズ分布の中央粒子サイズDP50を有する細孔形成剤球状粒子の分布をさらに有する。細孔形成剤球状粒子の中央粒子サイズDP50の選択された範囲は、以下に示される式4に示される関係により表される。
【0086】
0.4 DI 50 DP 50 ≦0.9 DI 50 式4
予備反応させた球状無機粒子のサイズと比べたこの範囲の細孔形成剤球状粒子のサイズにより、予備反応させた球状無機粒子による良好な粒子充填を確保できる。細孔形成剤球状粒子のサイズが小さすぎると、細孔形成剤球状粒子は、予備反応させた球状無機粒子の充填の孔を単に満たすだけで、細孔形成剤として働かない。細孔形成剤粒子サイズがDI50より大きいと、粒子充填が妨げられることがあり、焼成中に緩和するリスクがあり、焼成中に不規則なかつ/もしくは場合によって大きい収縮を引き起こすか、または最悪の場合、場合によってハニカムのクラックもしくは粉末化につながる。したがって、DI50未満のサイズを有する球状ポリマー細孔形成剤を使用することにより、予備反応させた球状無機粒子の密な充填が維持され、これは、焼成中、顕著な収縮を伴わずに空孔/細孔に変わる。
【0087】
いくつかの実施形態において、DP50の範囲は、15μm≦DP50≦30μmであってもよい。他の実施形態において、式4中の予備反応させた球状無機粒子のサイズと比べたより狭い範囲の細孔形成剤球状粒子のサイズは、以下の式5および式6に示される関係により表すことができる。
【0088】
0.4 DI 50 DP 50 ≦0.8 DI 50 式5
0.4 DI 50 DP 50 ≦0.7 DI 50 式6
0.4 DI 50 DP 50 ≦0.6 DI 50 、または0.4 DI 50 DP 50 ≦0.5 DI 50 などのさらにより狭い範囲が使用されてもよい。上述は、最終的な焼成されたハニカム体における狭い細孔サイズ分布の利点をもたらすことができ、特定の気孔率において、狭い細孔サイズ分布(d50-d10/d50)の場合に、パティキュレートフィルタの圧力損失を低くすることができる。さらに、狭い細孔サイズ分布は、触媒コーティング中のより良い触媒使用およびより高い最終的な触媒効率を提供する。
【0089】
バッチ組成物は、細孔形成剤球状粒子の比較的狭い粒子サイズ分布をさらに有してもよい。実施形態において、細孔形成剤球状粒子の粒子サイズ分布の相対的な狭さは、1つの態様において、以下の式7に示される関係により表すことができる:
DPb≦1.32 式7
(式中、DPbは、細孔形成剤球状粒子の粒子サイズ分布の分布幅係数である。)細孔形成剤球状粒子の分布の分布幅係数DPbは、以下に示される式8により定義される:
DPb={DP90-DP10}/DP50 式8
DP90は、細孔形成剤粒子サイズ分布内の細孔形成剤球状粒子の特定の粗粒子径と本明細書において定義され、ここで、細孔形成剤粒子サイズ分布中の細孔形成剤球状粒子の90%は、特定の粗粒子径以下の直径を有し、すなわち、残りの粒子(約9.9999%)は、より大きい径を有する。DP10は、細孔形成剤粒子サイズ分布内の細孔形成剤球状粒子の特定の微粒子径と本明細書において定義され、ここで、細孔形成剤粒子サイズ分布中の細孔形成剤球状粒子の10%は、微粒子径以下の粒子径を有し、すなわち、残り(約89.9999%)は、より大きい径を有する。
【0090】
他の実施形態において、細孔形成剤球状粒子の粒子サイズ分布の狭さは、以下に示される式9または式10により表すことができる。
【0091】
DPb≦1.30 式9
DPb≦1.25 式10
他の実施形態において、細孔形成剤球状粒子の粒子サイズ分布の狭さは、DP90-DP10により表すことができ、ここで、いくつかの実施形態において、(DP90-DP10)≦20μm、またはさらに(DP90-DP10)≦15μmである。
【0092】
細孔形成剤球状粒子は、多孔質セラミックハニカム体100において実現されるべき気孔率に応じて、任意の適切な量でバッチ組成物中に提供されてもよい。例えば、細孔形成剤球状粒子は、いくつかの実施形態において、バッチ組成物中に約5質量% SAT~40質量% SATの、またはさらに約10質量% SAT~25質量% SATの量で提供されてもよく、ここで、SATは、バッチ組成物中に存在する全無機物の質量%に対するものである。本明細書において用いられる「SAT」は、バッチ組成物中に含まれる無機材料の総質量に対する上乗せ添加によることを意味する。
【0093】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物内の細孔形成剤球状粒子は、1種類以上の非親水性材料を含んでもよい。例えば、細孔形成剤球状粒子は、非親水性のポリマー材料を含んでもよい。非親水性材料は、中性または疎水性のいずれかである。
【0094】
非親水性ポリマーの例には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリウレタン、ならびにそれらの誘導体および組合せが含まれ得る。バッチ組成物内の非親水性細孔形成剤球状粒子は、いくつかの実施形態において、中空気泡を含むことができ、または多孔質であってもよい。本発明者らは、天然のジャガイモ、エンドウ、またはトウモロコシの細孔形成剤と比べて低い親水性(疎水性ではない中性)を有する細孔形成剤球状粒子を使用すると、デンプンなどの親水性が高い細孔形成剤を含むバッチと比べて、同等のバッチ剛性(ベータ)に対してより低いバッチLV%を有するバッチ組成物になることを発見した。これは、デンプンなどの親水性が高い細孔形成剤を含むバッチ組成物と比べて、同等のバッチ剛性(ベータ)に対してより低いバッチLV%を有するバッチ組成物につながる。これは、乾燥する時間が短くなり、押し出されたハニカム体の乾燥時の収縮が少なくなり、したがって、最終的な形状制御および寸法制御が改善されるという付随的な利点を有する。押出中の壁の裂けがより少なくなる場合もある。
【0095】
さらに詳細には、細孔形成剤球状粒子の例示の実施形態は、例えば、MP≧100℃、またはさらにMP≧120℃の融点MPを有し得る非親水性ポリマー粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、細孔形成剤球状粒子は、相変化材料を含んでもよい。「相変化材料」は、高い融解熱を有する物質であり、特定の温度で融解および凝固しながら、大量のエネルギーを貯蔵および放出できる。
【0096】
非親水性細孔形成剤球状粒子の粒子サイズ分布の例が、以下の表3に示されている。しかし、所望の中央粒子サイズおよび狭さを有する親水性ポリマーなどの他の適切な細孔形成剤球状粒子が使用されてもよい。
【0097】
【表3】
【0098】
これらのタイプの細孔形成剤ポリマー球状粒子の代表例の粒子サイズ分布(分画体積%対粒子径(μm))を、図5に示す。認識されるように、任意の適切な直径の細孔形成剤ポリマー球状体粒子が、例えば、本明細書の式4に記載された関係にしたがって、予備反応させた球状無機粒子のサイズの関係を満たすように生成されてもよい。
【0099】
細粒
その上、バッチ組成物は、小さい質量パーセントの微細無機粒子(「細粒」)を含んでもよい。特に、バッチ組成物は、20質量% SAP未満の微細無機粒子を含んでもよい。微細無機粒子(「細粒」)は、バッチ組成物に添加された「細粒」の粒子サイズ分布が5μm未満の「細粒」の分布の中央粒径を有してもよい、比較的小さい粒子である。本明細書において用いられる「SAP」は、以下に示される式11により定義されているように、バッチ組成物中に含まれる予備反応させた球状無機粒子(PI)の総質量に対する上乗せ添加によることを意味する:
質量% SAPでの細粒=(「細粒」の質量/PIの質量)×100 式11
他の実施形態において、バッチ組成物は、「細粒」の粒子サイズ分布が5μm未満の中央粒径を有する、15質量% SAP未満の微細無機粒子を含む。さらに別の実施形態において、バッチ組成物は、「細粒」の分布が5μm未満の中央径を有する、10質量% SAP未満の微細無機粒子、またはさらに「細粒」の粒子サイズ分布が5μm未満の中央径を有する、7.5質量% SAP未満の微細無機粒子を含む。バッチ組成物中の「細粒」は、焼成時、予備反応させた球状無機粒子間のセラミック相互接続を形成するバッチ中の無機バインダとして機能する。そのような微細酸化物粉末(「細粒」)は、質量当たりの表面積が大きく、その大きい表面積のために、バッチ組成物中のLVと強く相互作用する。大部分の「細粒」は親水性であり、したがって、多くのLVを「結合」する傾向があり、したがって、LVおよび粒子の移動度を低下させ、これは、バッチ組成物を増粘させ、バッチ組成物の摩擦を増加させるよう機能する。内部のバッチ組成物の摩擦が大きいほど、押出ダイを通るバッチ組成物の摩擦が大きいことを意味する。これにより、押出ダイにバッチ組成物を押し通す押出圧力がより高くなり、したがって、低いTonsetおよび低い押出速度の両方につながる。したがって、バッチ組成物中の細粒を最小限にすることが望ましい。
【0100】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物中の「細粒」は、微細タルク、微細アルミナ、および微細シリカ(例えば、コロイド状シリカ)の組合せを含んで差し支えない。さらに別の実施形態において、バッチ組成物に添加された微細アルミナ粒子および微細シリカ粒子は各々、2μm未満の中央粒径を有する粒子サイズ分布を有する。しかし、「細粒」は、シリカ、アルミナ、および/またはマグネシアの供給源を含む5μm未満の中央粒径を有する無機粒子の任意の適切な組合せを含んで差し支えない。
【0101】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物中の微細無機粒子(「細粒」)は、5μm未満の中央粒径を有する粒子分布を各々有するアルミナ粒子、タルク粒子、およびシリカ粒子の組合せを含んでもよい。
【0102】
さらに別の実施形態において、バッチ組成物は、3質量%超でかつ15質量%未満の微細無機粒子を含み、ここで、微細無機粒子の分布は、5μm未満の中央粒径を有する。他の実施形態において、バッチ組成物は、3質量%超でかつ10質量%未満の微細無機粒子を含み、ここで、微細無機粒子の分布は、5μm未満の中央粒径を有する。いくつかの実施形態において、バッチ組成物は、3質量%超でかつ7.5質量%未満の微細無機粒子を含み、ここで、微細無機粒子の分布は、5μm未満の中央粒径を有する。
【0103】
いくつかの実施形態において、バッチ組成物中の細粒は、約1質量% SAP~5質量% SAPのアルミナ粒子、1質量% SAP~7質量%のタルク粒子、および0.5質量% SAP~3質量% SAPのシリカ粒子を含み、ここで、SAPは、バッチ組成物中に含まれる予備反応させた球状無機粒子の総質量に対する上乗せ添加による。いくつかの実施形態において、微細無機粒子は、いくつかの実施形態において、約1μm未満、またはさらに0.7μm未満の中央粒径を有する粒子分布を有する非常に微細なアルミナ粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、微細無機粒子は、約5μm未満の中央粒子サイズを有する粒子分布を有する微細タルク粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、微細無機粒子は、約0.5μm未満、またはさらに0.1μm未満の平均径を有する粒子分布を有する微細シリカ粒子を含んでもよい。微細シリカ粒子は、例えば、コロイド状シリカであってもよく、水中の懸濁液(例えば、水中で40%の懸濁液)として提供されてもよい。
【0104】
アルミナ、タルク、およびシリカを含む「細粒」が無機バインダとして組み合わせて使用されるとき、焼成時にコーディエライトおよび予備反応させた球状無機粒子間の領域内のいくらかのガラス相を生成するための組成物が目標とされる。最終的な多孔質セラミックハニカムにおけるガラス形成を促進するために、セリア、イットリア、カルシア、他のアルカリ土類、希土類またはアルカリなどの低レベルのガラス形成剤がバッチ組成物に添加されてもよい。そのようなガラス形成剤は、SAPに基づいて1.0質量%、0.5質量%、0.3質量%またはそれ未満のレベルでバッチ組成物中に提供されてもよい。
【0105】
アルミナおよびタルクだけが微細無機バインダ(「細粒」)および場合によってガラス形成剤として組み合わせて使用されるとき、焼成時にムライト、コーディエライト、および予備反応させた球状無機粒子間の領域内のガラス相を生成するための組成物が目標とされる。
【0106】
アルミナ、タルク、シリカ、およびチタニアが無機バインダとして組み合わせて使用されるとき、焼成時にコーディエライト、擬ブルッカイト、および予備反応させた球状無機粒子間の領域内のいくらかの副ガラス相を生成するための組成物が目標とされる。
【0107】
本発明者らによって発見されたように、バッチ組成物中の「細粒」としてd50<1μmを有する少量の非常に微細なチタニア粉末でさえ、非常に粘性のあるスリップ層を生成し、タウY/ベータ比を従来の予備反応させていないバッチのタウY/ベータ比付近まで劇的に低下させることができる。したがって、高い押出速度のための設計として、バッチ組成物中の無機バインダはチタニアを実質的に含まなくてもよい。チタニアを実質的に含まないとは、0.3% SAP未満のチタニアを意味する。しかし、いくつかの実施形態において、バッチ組成物の押出特性を調整するためのプロセスレバーとして、「細粒」中のチタニアが使用されてもよい。
【0108】
ARavg
実施形態において、予備反応させた球状無機粒子203および細孔形成剤球状粒子206は球状である。本明細書において用いる場合、球状は、球形の外形を有することを意味する。球形の外形は、図2に示されるように、以下の式12に示されるように球状粒子の最大幅寸法W1を最短幅寸法W2で割ったものの平均として定義される平均アスペクト比ARavgを有するとして定義される:
ARavg=W1/W2 式12
特に、1つまたは複数の実施形態において、細孔形成剤球状粒子206は平均アスペクト比ARavgを有してもよく、ここで、ARavg≦1.1である。ARavg≦1.1を有するいくつかのポリマー球状粒子が市販されている。同様に、予備反応させた球状無機粒子203は平均アスペクト比ARavgを有してもよく、ここで、ARavg≦1.2である。
【0109】
予備反応させた球状無機粒子203においてこのARavg≦1.2を実現するために、予備反応させた球状無機粒子203は、例えば、国際公開第2016/138192号に詳しく記載されているように、噴霧乾燥プロセスにより形成されてもよい。いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子203は、球状形状を維持するために、予備反応させた球状無機粒子203の組成に応じて、約1,000℃~1,650℃、またはさらに約1200℃~1,600℃の温度でなど、適切な温度で、噴霧乾燥したグリーン粒子を回転か焼することにより形成されてもよい。
【0110】
有機バインダ
バッチ組成物は有機バインダを含んでもよい。有機バインダは、例えば、疎水性改質セルロースエーテルバインダであってもよい。いくつかの実施形態において、疎水性改質セルロースエーテルバインダは、以下に限られないが、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、それらの混合物などであってもよい。メチルセルロース誘導体および/またはメチルセルロース誘導体は、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが使用されているバッチ組成物に有機バインダとして使用するのに特に適している。セルロースエーテルの供給源は、DOW(登録商標) Chemical Co.から入手できるMETHOCEL(商標)セルロース製品である。
【0111】
以下の表7に開示されるものなど、バッチ組成物のいくつかの実施形態は、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの組合せを含んでもよい。セルロースエーテルバインダの他の組合せは、異なる分子量を有するセルロースエーテルを含んでもよい。あるいは、セルロースエーテルの組合せは、異なる疎水基、異なる濃度の同じ疎水基、または他のセルロースエーテル組合せを有するセルロースエーテルを含んでもよい。異なる疎水基は、非限定的な例として、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルであってもよい。
【0112】
有機バインダは、約4.0質量% SAT~8.0質量% SATの量でバッチ組成物中に提供されてもよく、SATは、バッチ組成物中に存在する全無機物(例えば、予備反応させた無機物球状粒子に無機「細粒」を加えたもの)の質量%に対するものである。有機バインダは、いくつかの実施形態において、ヒドロキシエチルメチルセルロースバインダが、約2.0質量% SAT~6.0質量% SATであり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースバインダが、約1.0質量% SAT~3.0質量% SATである、ヒドロキシエチルメチルセルロースバインダおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースバインダの組合せであってもよい。有機バインダの他の適切な組合せが使用されてもよい。
【0113】
LV%
1つまたは複数の実施形態において、バッチ組成物は、液体ビヒクルパーセントLV%で提供される、脱イオン水などのLVを含む。バッチ組成物中のLV%は、従来のバッチにおいて使用される量を大幅に上回るが、非常に高いバッチ剛性(高いタウY-例えば、タウY≧8.0)を保持できる。
【0114】
バッチ組成物中に存在する無機物の総量(SAT)(例えば、予備反応させた球状無機粒子と「細粒」との合計)に対する上乗せ添加による22%≦LV%≦50%の質量でLVがバッチ組成物に添加されてもよい。細孔形成剤球状粒子が非親水性ポリマーなどの非親水性材料を含む例示の実施形態において、バッチ組成物の無機物に対する上乗せ添加による(SAT)22%≦LV≦35%の重量を含むようなより少量のLV。したがって、当然ながら、親水性の細孔形成剤球状粒子と比べて、より少ない裂けおよびより高いバッチ剛性(例えば、より高いベータ)を提供できる。したがって、非親水性、または少なくともデンプンより非親水性の細孔形成剤球状粒子は、バッチ組成物に使用するのに有利である。
【0115】
使用中、LVは、有機バインダが溶解する媒体を提供し、したがって、バッチ組成物に可塑性を与え、その中で微細無機粒子(「細粒」)および予備反応させた球状無機粒子の濡れを実現する。LVは、水性ベースの液体であっても差し支えなく、これは、通常、水または水混和性溶剤である。1つの実施において、LVは脱イオン水であるが、アルコールなどの他の溶剤も使用できる。
【0116】
バッチ組成物中のLV%は、バッチ組成物中に存在する無機粒子(予備反応させた球状無機粒子に「細粒」を加えたもの)の総質量に対して、質量で、いくつかの実施形態においてLV%≧22%(SAT)であり、さらにLV%≧25%、またはさらにLV%≧30%、またはさらにLV%≧35%、またはさらにLV%≧40%、またはさらにLV%≧45%上乗せ添加(SAT)であってもよい。
【0117】
注目すべきことに、本明細書の発明者らによって発見されたように、そのような高い液体分(LV%≧22%(SAT)、(LV%≧25%(SAT)、またはさらに(LV%≧30%(SAT))さえも有する、本明細書において開示されたバッチ組成物から形成された湿ったグリーンハニカム体100(図1)は、低いベータから分かるように、非常に低い壁抵抗を有するが、注目すべきことに、比較的高いタウYから分かるように、優れた形状制御が保持されるような非常に高いバッチ剛性も有する。
【0118】
特に、以下の表8に示されるように、タウY/ベータの高い比も、本明細書において記載されたバッチ組成物を使用することにより実現される。本明細書において記載されたバッチ組成物を使用して、タウY/ベータ≧3.0、タウY/ベータ≧3.5、タウY/ベータ≧4.0、またはさらにタウY/ベータ≧4.5の比を実現できる。いくつかの実施形態において、タウY≧10.0、タウY≧14.0、またはさらにタウY≧18.0を実現できる。いくつかの実施形態において、ベータ≦5.0、ベータ≦4.0、またはさらにベータ≦3.5を実現できる。
【0119】
細孔形成剤球状粒子206が非親水性である例示の実施形態において、優れた形状制御が保持されるような比較的低いベータ(例えば、ベータ≦5.0)および比較的高いタウY(タウY≧8.0)を実現できるが、より低いLV%(例えば、LV≦35%(SAT)、LV≦30%(SAT)、またはさらにLV≦25%(SAT))が使用されてもよく、それによって、同等レベルの親水性細孔形成剤に、より小さい乾燥減量および本質的により高いバッチ剛性を実現してもよい。
【0120】
タウYおよびベータの決定
Brabenderミキサー(ミキサータイプ359を備えた市販のBrabender Plastograph EC 3.8kW、200NM/150min)内で様々な成分を高剪断混合することにより、バッチ無機物(予備反応させた球状無機粒子、および「細粒」)、細孔形成剤粒子、有機バインダ、LV(例えば、脱イオン水)、および任意選択の滑剤の混合物から、ペーストを含む均質なセラミックバッチ組成物を調製した。いくつかの実施形態において、ペーストの粘稠度が適切となるように、ペーストの剛性を針入度計で測定した。デジタルフォースゲージを備えた市販の針入度計ESM-301Eモータ駆動試験台を使用した。
【0121】
バッチ組成物のペーストの流動特性は、ピストンを装備し、複数のキャピラリー長を有する市販のデュアルボアキャピラリーレオメータ(以下、「キャピラリーレオメータ」)を使用して測定される。バッチ剛性および壁抵抗の両方をキャピラリーレオメータで同時に測定できる。キャピラリーレオメータ900の一例が図9に示されている。
【0122】
使用されるキャピラリーレオメータ900は、16mmの直径Dと、1mmのキャピラリー径dを有する小さい円形のボア孔を備えた、異なる長さLの数本のキャピラリー908とを有する複数の円筒形のバレル902を備えている。キャピラリー長Lは、0mm~16mmに及び、特に0mm(実際には実用性のために0.25mm)、4mm、10mm、および16mmであった。ピストン904の各々に相互接続されたクロスメンバ906に力Fを加えることによるなど、ピストン904に力Fが加わるとバレル902内で並進運動するようにディスク形ピストン904を取り付けた。上述したように混合された後、ペーストを含むバッチ組成物910は、キャピラリーレオメータ900のバレル902に挿入され、そこから、様々なレベルの力Fでキャピラリー908内にかつそれを通じて押し出され、したがって、異なる速度Vが生じる。バッチ組成物910に接触し、それをキャピラリー908を通じて押し出すピストン904に与えられる圧力Ptotalおよび速度Vpを測定することにより、キャピラリーレオメータ900全体の代表的な圧力損失Ptotalが決定される。各ダイ(例えば、長いダイおよびゼロ長さのダイが示されている)の全圧Ptotalは、バレル902内に収められたバッチ組成物910に加わる圧力Ptotalを測定する圧力センサ912から決定される。
【0123】
キャピラリー908内のバッチ組成物910の速度Vは、以下の式13による、面積の代表的な比によるピストン速度Vpに関係する:
V=Vp(D/d) 式13
ピストン速度Vpは、(i)ピストン904またはクロスメンバ906と、(ii)地面またはバレル902を備えている押出機本体のいずれかとの間に連結された適切な変位センサ914により測定できる。バッチ組成物のタウYおよびベータの値を出力として与えることができる計算を実行するように十分に構成された適切なプロセッサおよびメモリを備えている適切なコントローラ916に全圧Ptotalおよびピストン速度Vpを提供することができる。
【0124】
異なる押出速度に対する異なる長さL(16mm、10mm、4mm、および0.25mmのL)および1mmのキャピラリー径dの4種類のキャピラリー908を示す例示のキャピラリー速度掃引試験からの代表的な生データが以下の表4に示されている。ピストン904の押す速度(「プランジャー」)およびキャピラリーから出てくる押出速度(「ヌードル」)ならびに全圧Ptotalが各長さLに対して提供される。
【0125】
【表4】
【0126】
0.25mm長(または約0mm長)の長さLを有する最短のキャピラリー908が押出に使用されるときは、バッチ組成物910は、その形状をバレル902の比較的大きい直径D(16mm)からキャピラリー908の比較的小さい直径d(1mm)まで適合させなければならない。このキャピラリー908(「ほぼゼロのキャピラリー」)全体の圧力損失Ptotalは、バッチ組成物が16mmのバレルから1mmのキャピラリー908に幾何学的に収縮するのに必要な圧力によるバッチ剛性に対応する。「ほぼゼロのキャピラリー」の使用は、その長さが短い(ほぼL=0)ため壁抵抗成分が最小になり、したがって実際上無視できるので、流入損失成分を示すことができ、流入損失成分の決定に使用できる。より長いキャピラリー(例えば、16mm長のキャピラリー)の使用は、キャピラリー908の壁の長さLに沿った摩擦/抵抗に起因する壁抵抗成分およびその形状の変化に起因するバッチ組成物の硬化、すなわち、流入損失成分の両方を生じる。したがって、速度Vの関数として測定された圧力損失Ptotalは流入損失成分Peおよび壁抵抗成分Pwの両方を含むであろうし、明らかであるようにこれらは分離できる。
【0127】
バッチ組成物を、キャピラリー長L(0mm~16mm)の異なる長さのキャピラリーについて、10種類の異なる速度V(実際上0mm/秒~4インチ/秒(101.6mm/秒)の速度(V))および約25℃の一定温度で、キャピラリー速度掃引試験により試験した。キャピラリー908を通じた押出速度V(ヌードル)を連続的により高い速度Vへ増加させ、各ステップについて、定常状態の速度Vに達したとき、センサ912により代表的な全圧力損失(Ptotal)を記録した。キャピラリー908の各長さLにおけるこの生のPtotalおよび速度Vデータをコントローラ916に提供し、メモリに保存した。各々測定されたバッチ組成物のタウYおよびベータを計算するために、本明細書において記載されたさらに別の計算を行う。例の値が、1つのバッチ組成物について以下の表5に示されている。
【0128】
【表5】
【0129】
図10に示されるように、速度V(インチ/秒)に対する流入圧力Pe(psi)のプロットが示されており、ゼロ長さ(0.25インチ(約6.35mm))のキャピラリー908により与えられた速度Vの関数としての流入圧力損失の非直線性を示している。
【0130】
4種類の異なるキャピラリーおよび10種類の速度によるキャピラリー速度掃引試験からの生データ出力の代表例が図7Bに示されており、1つのキャピラリー長(より大きいL値は、より高い圧力を示す)に各々対応する複数のステップおよび複数の曲線において、予備反応させた球状無機粒子を含むバッチ組成物の試験値を示している。図7Aは、代表的な従来の反応性バッチ組成物を示し、図7Aおよび図7Bはいずれも、従来のバッチ組成物と、同じ試験手順を使用して予備反応させた球状無機粒子の例示の実施形態を含むバッチ組成物との間の全圧(psi)の比較的大きい差を示すために同じスケールに設定されている。生データは、任意の適切なソフトウェアプログラムを使用することにより、速度に対する圧力のプロットに変換できる。いくつかの実施形態による噴霧乾燥された予備反応させたCMATバッチ組成物(図8B)に対する従来の(反応性の)コーディエライトムライトチタン酸アルミニウム(CMAT)反応性バッチ組成物(図8A)について、速度に対する圧力のプロットが図8Aおよび図8Bに示されている。
【0131】
上述したように、測定された全圧力損失Ptotalは、流入圧力Peに壁抵抗の寄与Pwを加えたものに等しく、以下の関係により表すことができる:
Ptotal=Pe+Pw
Dからdへの幾何学的収縮に亘る、キャピラリー908を通じたキャピラリーレオメータ900内のバッチ組成物910の圧力損失をバッチレオロジーと関連付ける多数のモデルが開発されてきた。キャピラリー特徴には、キャピラリー径d、キャピラリー長L、ならびにキャピラリー材料およびキャピラリー表面粗さと関連する側面を有するが、所与の長さLおよび直径dの所与のキャピラリー908に対して変化しない定数が含まれる。本明細書において記載された試験方法を使用して、本明細書において記載された様々なバッチ組成物のレオロジー特性を定義する特有のパラメータであるタウY(降伏応力)およびベータ(壁抵抗係数)を含むバッチレオロジー特徴を決定する。
【0132】
Benbow-Bridgwaterモデルを使用して、キャピラリー長L、キャピラリー径d、速度V、壁抵抗係数β(ベータ)、および壁速度指数mの関数として壁抵抗Pwを表す[以下の参考文献を参照:J.Benbow,J.Bridgwater,Paste flow and extrusion,Oxford University Press,1993およびJ.J.Benbow,E.W.Oxley,J.Bridgwater “The extrusion mechanics of pastes - the influence of paste formulation on extrusion parameters”;Chemical Eng.Science 53,2151(1987)]。このモデルは、以下の式14のように壁抵抗Pwを特徴付ける:
Pw={4L/d}[βV] 式14
式中:
Lはキャピラリー長であり
dはキャピラリー径であり
β(ベータ)は壁抵抗係数であり
mは壁速度指数であり
Vは、壁におけるペーストの速度である
しかし、壁における剪断応力Twは以下の式15で示される:
Tw=βV 式15
したがって、壁抵抗圧力成分は、以下の式16のように表すことができる:
Pw=(4L/d)Tw 式16
剪断応力の自然対数(Ln(Tw))を速度の自然対数(Ln(V))に対してプロットする。このプロットされたデータから、Ln(Tw)とLn(V)のプロットのy切片としてβ項を導出することができ、mはその線の傾きである。0インチ/秒~4インチ/秒(0mm/秒~約101.6mm/秒)の長さデータに亘って傾きmを決定する。外れ値は無視し、試験を複数回実施して、各バッチ組成物の結果を平均すべきである。
【0133】
流入圧力Peは以下の式17により近似できる:
Pe=2{タウY+kV}{Ln(D/d)} 式17
Ptotal=Pe+Pwであることを考えると、このモデルにより、全圧Pは以下の式18に示されるように定義される:
Ptotal=2{タウY+kV}{Ln(D/d)}+{4L/d}[βV] 式18
式中:
タウYは、バッチ組成物の降伏応力であり
kは粘稠度指数であり
nはバルク速度指数であり
Dは押出機バレル径であり
dはキャピラリー径であり
Lはキャピラリー長であり
β(ベータ)は壁抵抗係数であり
mは壁速度指数であり
Vは、壁におけるペーストの速度である
測定されたパラメータと計算されたパラメータとの間の差を最小にするために、Excelに備えられたソルバーまたは他の任意の反復ソルバーなどのソルバーを使用することにより、3パラメータカーブフィットにより、測定されたデータからタウY、k、およびnの値を導出できる。タウYおよびβ(ベータ)の値は、本明細書において記載されたバッチ組成物の押出レオロジー特性を特徴付けるために本明細書において用いられるパラメータであり、上述したように計算される。この測定された生データから、コントローラ916は、タウYおよびベータの両方を計算する。
【0134】
滑剤/界面活性剤
バッチ組成物は、油滑剤などの滑剤をさらに含んでもよい。油滑剤の非限定的な例には、トール油、軽質鉱油、トウモロコシ油、高分子量ポリブテン、ポリオールエステル、軽質鉱油およびワックスエマルションのブレンド、トウモロコシ油中のパラフィンワックスのブレンド、前述の組合せなどが含まれる。滑剤の量は、約0.5質量% SAT~約5質量% SATであってもよい。例示の実施形態において、油滑剤は、バッチ組成物中に約0.5質量% SAT~約2.5質量% SAT存在するトール油であってもよい。
【0135】
さらに、バッチ組成物は、界面活性剤、特にコーディエライト生成バッチ組成物を含んでもよい。バッチ組成物中で使用できる界面活性剤の非限定的な例は、C~C22の脂肪酸および/またはその誘導体である。これらの脂肪酸と共に使用できる追加の界面活性剤成分は、C~C22の脂肪エステル、C~C22の脂肪アルコール、およびこれらの組合せである。例示の界面活性剤は、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、およびそれらの誘導体、ラウリル硫酸アンモニウムと組み合わせたステアリン酸、前述のいずれかの組合せなどである。界面活性剤の量は典型的には、バッチ組成物中、約0.25質量% SAT~約2質量% SATであってもよい。
【0136】
相組成物
さらに詳細には、予備反応させた球状無機粒子は、バッチ組成物に添加される前に所望の結晶相組成物を含むように予備焼成される粒子を含む。予備反応させた粒子により生成された多孔質セラミックハニカムは、設計された粒子サイズ分布ならびに無機相組成物を有してもよい。得られた焼成された多孔質セラミックハニカム体は、固形物内に結晶相を含むことによって特徴付けることができ、モルフォロジーは、物体の形状およびセラミック物品内の細孔の形状によって特徴付けることができる。一例として、制限されることなく、予備反応させた球状無機粒子は、1種類以上の相組成物を含んでもよい。多くの実施形態において、一次相および二次相または副相など、少なくとも二相組成物が提供される。任意選択で、予備反応させた粒子は、1種類を超える二次相または副相を含んでもよい。
【0137】
例のバッチ組成物
特定の予備反応させた球状無機粒子、細孔形成剤球状粒子、および「細粒」を含むバッチ組成物の例が、以下に示される表6および表7に示されている。レオロジー性能が表8に示されている。バッチ組成物中に存在してもよい「細粒」の量およびタイプは上述した。示された実施形態において、予備反応させた球状無機粒子の相組成物はCMATを含み、二チタン酸マグネシウムを含むチタン酸アルミニウムの固溶体の主相、コーディエライトの第2の相、いくらかのムライトを含み、ガラス相も含んでもよい。しかし、明らかになるように、予備反応させた球状無機粒子の他の結晶相組成物が製造されてもよい。
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
【0140】
【表8】
【0141】
上述の実施形態は、いくつかの異なるサイズの細孔形成剤球状粒子を含む。細孔形成剤1は、25.8μmのDP50を有する非親水性ポリマー細孔形成剤球状粒子を含み、細孔形成剤2は、17.1μmのDP50を有する非親水性ポリマー細孔形成剤球状粒子を含む。しかし、上述の式4、式5、および式6により記載されたサイズの範囲内の他の球状細孔形成剤粒子が使用されてもよい。さらに、多孔質セラミック物品(例えば、多孔質セラミックハニカム体)における所望の気孔率に応じて、他の質量パーセントSATが使用されてもよい。
【0142】
製造されたセラミック物品
バッチ組成物を使用して製造されたグリーン体物品(例えば、グリーンハニカム体)の乾燥および焼成により生成される多孔質セラミック物品(例えば、多孔質ハニカム体)は、任意の所望の最終的なセラミック組成物を含んでもよい。例えば、セラミック物品の最終的な相組成物は、主相(50体積%超)としてチタン酸アルミニウム固溶体(擬ブルッカイト)などのチタン酸アルミニウムベースの組成物、ならびに二次相および/または追加の相としてコーディエライト、長石、ムライト、スピネル、アルミナ、ルチル、または同様の酸化物などの他の相を含んでもよい。他の実施形態において、多孔質セラミック物品の最終的なセラミック組成物は、コーディエライト、または金属、金属間化合物、ムライト、アルミナ(Al)、ジルコン、アルカリおよびアルカリ土類アルミノシリケート、スピネル、ペロブスカイト、ジルコニア、セリア、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、サイアロン(SiAlON)、ならびにゼオライトを含む他の酸化物セラミックもしくは非酸化物セラミックを含んでもよい。
【0143】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)、部分フィルタ、触媒担体、触媒基材、ならびに組み合わせられた基材およびパティキュレートフィルタ装置を製造するために、本開示の例示の実施形態による予備反応させた球状粒子および細孔形成剤球状粒子の組合せを含むバッチ組成物から形成された多孔質セラミック物品が使用されてもよい。予備反応させた球状無機粒子を含むバッチ組成物から製造された多孔質セラミック物品は、高いウォッシュコート添加量および触媒添加量で低いクリーンな圧力損失ならびに低い圧力損失を可能にする比較的大きい細孔サイズおよび高い気孔率、良好な強度および低い熱膨張係数(CTE)を示すことができる。したがって、本開示の例示の実施形態は、低い圧力損失、高い濾過効率、および良好な耐熱衝撃性を提供しながら、高い選択的接触還元(SCR)触媒添加量および/または高い脱NO触媒効率の組込みを可能にする。
【0144】
ハニカム体の製造
本開示の例示の実施形態は、本明細書において記載された定義された相対的なサイズで提供された予備反応させた球状無機粒子、細孔形成剤球状粒子の組合せを「細粒」と共に含むバッチ組成物を使用することによりハニカム体100(図1)を製造するためのプロセスも提供する。そのようなハニカム体100の製造において、非理想混合物と見なしてもよい(本明細書において記載された)バッチ組成物は、図3に示した押出機300を通じて押し出すことができる。押出機300は、所望のセル形状に形成された細い交差スロットの配列を有する押出ダイ308を備えている。正方形、長方形、三角形、六角形、および同種のものなどの任意の適切なセル形状が使用されてもよい。予備反応させた球状無機粒子203、「細粒」、および細孔形成剤球状粒子206の乾いたバッチ組成物は、有機バインダ、液体ビヒクル(LV)、場合によって油滑剤、および場合によって界面活性剤と結合され、成分を混合および/または混練することにより可塑化されて、少なくとも部分的に可塑化されたバッチが生成される。次いで、少なくとも部分的に可塑化されたバッチは、二軸スクリュー押出機などの押出機300に供給される。本明細書において用いられる「可塑化」は、LV(例えば、脱イオン水)および場合によって滑剤および界面活性剤を含み、ペースト粘稠度を有するために混合および/または混練されたバッチ混合物の性質を意味する。
【0145】
可塑化を開始するために、マラー、オーガーミキサー、ダブルアームミキサー、またはプローブレードミキサーまたは同種のものによるような任意の適切な混合装置または混合装置の組合せにより、バッチ組成物が初めに混合/混練されてもよい。有機バインダおよび予備反応させた球状無機粒子および細孔形成剤球状粒子をウェットアウトし、部分的に可塑化されたバッチ組成物を生成するための滑剤および/または界面活性剤と共に、予備反応させた球状無機粒子、「細粒」、細孔形成剤球状粒子、有機バインダを水和するためにLVが添加されてもよい。
【0146】
押出機300に断続的に供給できる材料のパッグ310として、あるいは部分的に可塑化されたバッチ組成物の小さいパッグまたはさらに顆粒もしくは流れなど、より少量の材料の連続的または半連続的な供給流として可塑化バッチ組成物が構成されてもよい。混合および/または混練された、適切な形態および粘稠度の可塑化バッチ組成物312を押出機300に供給できる。さらに、押出プロセスが本明細書において記載されているが、選択肢として、一軸もしくは静水圧プレス、射出成形、または同種のものによるなど、他の適切な成形プロセスにより、バッチ組成物が、可塑化バッチ組成物からグリーンハニカム体100に適切に成形されてもよい。
【0147】
再び図3を参照すると、部分的に可塑化されたバッチ組成物312を押出機300に提供し、それから押し出すことにより、グリーンハニカム体100Gに成形することができる。押出は、適切な量の剪断をバッチ組成物312に与える任意の適切なタイプの押出機300により実施できる。例えば、液圧ラム押出機、二段脱気シングルオーガー、一軸スクリュー押出機、または二軸スクリュー押出機などが使用されてもよい。他のタイプの押出機が使用されてもよい。
【0148】
さらに詳細には、押出機300は、押出機バレル316内で回転可能な1本または複数本の押出機スクリュー314(2本示されている)を備えているスクリュー部を備えていてもよい。1本または複数本の押出機スクリュー314は、押出機バレル316の入口端部にあるモータ320により駆動できる。二軸スクリューの実施形態において、押出機300は、横に並んだ2本の押出機スクリュー314を備えていてもよい。押出機バレル316には、さらに可塑化されるバッチ組成物312を導入できるように構成された入口ポート324が備えられていてもよい。任意選択のミキサープレート326がスクリュー部の下流かつ押出ダイ308の上流に配置されていてもよく、押出機バレル316の出口端部に取り付けられたカートリッジ328内に収められていてもよい。スクリュー部の後、ミキサープレート326は、バッチ組成物312をさらに混合し、均質化し、可塑化するように機能できる。
【0149】
カートリッジ328内に同じく配置されてもよいのはフィルタスクリーン330およびフィルタスクリーンサポート332であり、いずれも、押出機スクリュー314により送られるバッチ組成物312の(方向を示す矢印として示された)流れ方向に対して押出ダイ308の上流に配置される。フィルタスクリーン330は、フィルタスクリーンサポート332に対して取り付けられ、さもなければ押出ダイ308を通る流れを塞ぐまたは妨げるかもしれない大きい粒子、集塊、または破片を除去するように構成されたフィルタアセンブリを形成する。いくつかの実施形態において、その中に複数の開口および/またはスロットを有するフィルタスクリーンサポート332が形成される。押出ダイ308は、複数の上流の供給孔および複数の下流の細い交差スロットを備えている。押出ダイ308の複数の細い交差スロットを通る可塑化バッチ組成物312の流れは、グリーンハニカム体100G内に交差壁102およびチャネル104のマトリックスを形成する。押出ダイおよび製造方法の例が、例えば、米国特許出願公開第2017/0120498号明細書、米国特許出願公開第2008/0124423号明細書、および米国特許第8,591,287号明細書に記載されている。他の適切な押出ダイが使用されてもよい。
【0150】
したがって、押出機300の運転中、可塑化バッチ組成物312は、1本または複数本の押出機スクリュー314により押出機バレル316から送られ、次いで、フィルタスクリーン330、フィルタスクリーンサポート332、および任意選択のミキサープレート326を通過し、最後に押出機300の押出ダイ308からグリーンハニカム体100Gとして排出される。グリーンハニカム体100Gは、ワイヤなどの切断具を備えている切断装置334により長さに横方向に切断されてもよい。切断されたら、例えば、米国特許出願公開第2015/0273727号明細書に開示されているトレイなどのトレイ336上にグリーンハニカム体100Gを受け、支えてもよい。他の適切なトレイ構成が使用されてもよい。
【0151】
次いで、湿ったグリーンハニカム体100Gは、コンベヤ(図示せず)によりトレイ336で乾燥機(図示せず)まで運ばれることにより乾燥されて、例えば、オーブン乾燥、マイクロ波乾燥、RF乾燥、それらの組合せなどの任意の適切な乾燥プロセスにより乾燥されて、乾燥したグリーン体ハニカムを形成してもよい。適切な乾燥プロセスおよび装置が、例えば、米国特許第9,429,361号明細書、米国特許第9,335,093号明細書、米国特許第8,729,436号明細書、米国特許第8,481,900号明細書、米国特許第7,596,885号明細書、米国特許第5,406,058号明細書、および米国特許出願公開第2014/0327186号明細書に記載されている。
【0152】
焼成
次いで、乾燥したグリーン体ハニカムを既知の焼成技法にしたがって焼成し、図1に示されているような多孔質セラミックハニカム体100を形成することができる。例えば、乾燥したグリーン体ハニカムは、ガス窯内または電気窯内で、乾燥したグリーンハニカム体をセラミック物品(例えば、多孔質セラミックハニカム体100)に変換するのに効果的な条件下で焼成されてもよい。温度および時間の焼成条件は、例えば、特定のバッチ組成物およびサイズならびに乾燥したグリーン体ハニカムの幾何形状に依存する。
【0153】
いくつかの実施形態において、乾燥したグリーン体ハニカムを多孔質セラミックハニカム体100に変換するのに効果的な焼成条件には、使用されるバッチ組成物に応じて、例えば、炉内の空気雰囲気中、サイズ、形状、および組成物に応じて50℃/時間~300℃/時間の加熱速度で1000℃~1600℃の範囲内の最高浸漬温度まで、乾燥したグリーン体ハニカムを加熱することを含むことができる。乾燥したグリーン体ハニカムを多孔質セラミックハニカム体100に変換するのに十分な約1時間~約30時間の保持時間の間、最高浸漬温度が保たれてもよい。この後、多孔質セラミックハニカム体100に熱衝撃を与えてクラックが入らないように十分に低い速度(例えば、約10℃/時間~約160℃/時間の冷却速度)で冷却することが続いてもよい。焼成時間は、バッチ組成物中の予備反応させた球状無機粒子、無機「細粒」、有機バインダ、および細孔形成剤球状粒子の種類および量などの因子、ならびに焼成設備の性質にさらに依存するが、総焼成時間は、例えば、約20時間~約80時間であろう。
【0154】
主としてチタン酸アルミニウムを生成するためのバッチ組成物については、最高焼成温度は約1,320℃~約1,550℃であり、この温度での保持時間は約1時間~約6時間である。
【0155】
主としてチタン酸アルミニウム-ムライトを生成するためのバッチ組成物については、最高焼成温度は約1,350℃~約1,450℃であり、この温度での保持時間は約1時間~約6時間である。
【0156】
主としてコーディエライト-ムライト、チタン酸アルミニウム(CMAT)を生成するためのバッチ組成物については、最高焼成温度は約1,300℃~約1,380℃であり、この温度での保持時間は約1時間~約6時間である。
【0157】
主としてムライトを生成するためのバッチ組成物については、最高焼成温度は約1400℃~約1600℃であり、この温度での保持時間は約1時間~約6時間である。
【0158】
コーディエライト-ムライトを与えるコーディエライト-ムライト生成混合物については、最高焼成温度は約1375℃~約1425℃であり、この温度での保持時間は約1時間~約6時間である。
【0159】
例えば、主としてコーディエライトを生成するための組成物において、最高焼成温度は約1300℃~約1450℃であり、この温度での保持時間は約1時間~約6時間である。
【0160】
焼成プロセスおよび装置の適切な例が、例えば、米国特許第9,452,578号明細書、米国特許第9,221,192号明細書、米国特許第8,454,887号明細書、米国特許第8,187,525号明細書、米国特許第6,551,628号明細書、米国特許第6,325,963号明細書、米国特許第6,287,509号明細書、米国特許第6,207,101号明細書、米国特許第6,089,860号明細書、米国特許第6,048,199号明細書、および米国特許第6,027,684号明細書に記載されている。他の適切な焼成プロセスおよび装置が使用されてもよい。
【0161】
したがって、本開示の1つ以上の実施形態は、ハニカム体を製造する方法を提供する。図6に示されるように、方法600の例示の実施形態は、602において、予備反応させた球状無機粒子と、微細無機粒子(「細粒」)と、有機バインダと、細孔形成剤球状粒子と、液体ビヒクル(LV)とを含むバッチ組成物を混合して、ペーストを生成するステップを含む。バッチ組成物において、予備反応させた球状無機粒子は、
10μm≦DI50≦50μm、およびDIb≦2.0
の予備反応させた粒子サイズ分布を有し、
細孔形成剤球状粒子は、
0.40 DI 50 DP 50 ≦0.90 DI 50 、およびDPb≦1.32
の細孔形成剤粒子サイズ分布を有し、
5μm未満の中央粒径を有する微細無機粒子(「細粒」)は、予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して、20質量%未満を構成する。
【0162】
方法600は、604において、例えば押出ダイを通じた押出または他の適切な形成プロセスにより、ペーストを、湿ったグリーンハニカム体(例えば、グリーンハニカム体100G)へと形成するステップ、および次いで、606において、湿ったグリーンハニカム体を乾燥させて、乾燥したグリーンハニカム体を形成するステップ、および608において、乾燥したグリーンハニカム体を焼成して、多孔質セラミックハニカム体(例えば、多孔質セラミックハニカム体100)を形成するステップをさらに含む。
【0163】
噴霧乾燥プロセス
本開示の例示の実施形態によれば、微細原料粉末および可溶な構成成分が、水、ならびに任意の有機バインダ、分散剤、界面活性剤、および/または消泡剤を含むスラリー中で混合されてもよい。次いで、スラリーをキャリアガスに懸濁させ、噴霧乾燥機の上部で霧化させてもよい。上述したパラメータは、粒子サイズおよび粒子サイズ分布を調整するために変更してもよい。微細原料粉末、例えば、1μm未満の粒子、または可溶な構成成分が使用されてもよい。
【0164】
本開示の例示の実施形態による噴霧乾燥機の異なる設定および異なる出発原材料を使用することにより、異なる中央粒子サイズ、粒子サイズ分布、および組成の固体の噴霧乾燥したグリーン球状無機粒子を調製できる。グリーン粒子は密になることがあり、またはほぼ完全に密なものから多孔質までの範囲の異なるレベルの気孔率を有することがある。
【0165】
例示の実施形態によれば、原材料用にアルファアルミナまたはベーマイトがアルミナ供給源として使用されてもよく、コロイド状シリカ懸濁液がシリカ供給源として使用されてもよく、微細酸化マグネシウムがマグネシア供給源として使用されてもよい。炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸ランタンなどの他の無機材料が1μm未満の粒子サイズまでジェットミル粉砕されてもよく、スラリーに任意選択で添加されてもよい。例えば、酢酸ランタン、酸化ホウ素、および他の焼結助剤が水性溶液の形態でスラリーに添加されてもよい。他の焼結助剤には、酸化ランタン、セリア、イットリア、ジルコニア、酸化ホウ素、アルカリ酸化物、および同種のものが含まれ得る。
【0166】
グリーン球状粒子を形成するために噴霧乾燥される無機原材料粉末の組合せの例示の実施形態には、1.5%~15%の微細シリカを含むアルミナ(微細アルファアルミナまたはベーマイト)、B、Mg、Y、Fe、および同種のものなどの様々な焼結添加剤を含むアルミナ、B、Mg、La、Y、Fe、および同種のものなどの様々な焼結添加剤を含むアルミナ-シリカ混合物、チタン酸アルミニウム(AT)組成物、長石組成物、チタン酸アルミニウムと長石の組成物、CMAT組成物、およびコーディエライト組成物、ならびに同種のものが含まれる。
【0167】
噴霧乾燥したグリーン粒子は、いくつかの例示の実施形態にしたがって、るつぼ、焼結ボックス内の箱形炉内もしくは管状炉内、またはセッター上、または回転か焼炉内で、様々な温度でかつ/または様々な焼成時間、予備焼成されてもよい。アルミナおよびシリカベースの乾燥したグリーン粒子の静置焼成条件には、1,200℃~1,600℃の焼成最高温度および1時間~15時間の保持時間が含まれ得る。ATベースの組成物グリーン粒子の静置焼成条件には、1300℃~1600℃の温度が含まれ得る。
【0168】
静置設定では、グリーン粒子が高温かつ長い保持時間で互いに焼結する場合があり、それによって、例えば、バッチ組成物の構成成分としてさらに使用する前に崩壊する恐れがある。いくつかの実施形態において、予備反応させた球状無機粒子を形成する目的で、緩く焼結された集塊を破壊するために、篩分けまたは低エネルギーのミル粉砕が使用されてもよい。
【0169】
予備焼成中のグリーン粒子の回転によって互いに焼結するのを回避し、球状形状をより良く維持できる。粒子を焼成するために、工業用回転か焼炉が使用されてもよい。例えば、アルミナおよびシリカベースのグリーン粒子の回転か焼条件には、例えば、1,000℃~1,650℃が含まれ得る。別の例として、噴霧乾燥されたAT粒子の回転か焼条件には、例えば、1,000℃~1,400℃が含まれ得る。他の適切なか焼温度が使用されてもよい。
【0170】
多孔質セラミックハニカム体
予備反応させた球状無機粒子、細孔形成剤球状粒子、および「細粒」のバッチ組成物から生成された最終的なセラミックハニカム体100の様々な形状およびセル幾何形状が提供されてもよい。例えば、多孔質セラミックハニカム体100のセル幾何形状は、例えば、約100cpsi(15.5セル/平方cm)~1,200cpsi(186セル/平方cm)を有してもよい。さらに、多孔質セラミックハニカム体100は、例えば、約0.008インチ(0.20mm)~0.03インチ(0.76mm)の横方向の壁厚を有してもよい。バッチ組成物を使用して、慣習的に300/14セル構造と記載される300セル/平方インチ(cpsi)(約46.5セル/平方cm)および壁厚0.014インチ(約0.36mm)の壁厚を含むセル密度および壁厚の様々な組合せを生み出すことができる。ハニカムフィルタまたは触媒基材として適した300/10、400/14、600/9などの他の焼成後のセル構造が使用されてもよい。
【0171】
本開示の例示の実施形態によれば、多孔質セラミック物品は、バッチ組成物中で使用される細孔形成剤球状粒子の量に応じて、30%超、40%超、50%超、またはさらに60%超の気孔率を有してもよい。多孔質セラミックハニカム体100は、いくつかの実施形態において、例えば、d50≧10μm、またはさらにd50≧12μm、またはさらに10μm≧d50≧30μmの中央細孔サイズ(d50)を有してもよい。多孔質セラミック物品は、20×10”7”1未満、例えば、15×10”7_1未満、またはさらに10×10”7K未満の室温(25℃)~800℃の熱膨張係数を有してもよい。Autopore(商標)IV 9500ポロシメータによる水銀圧入ポロシメトリーおよびMicromeritics製ソフトウェアにより、気孔率、中央細孔径および細孔サイズ分布を決定した。
【0172】
本明細書に亘る、例示の実施形態および同様の文言への言及は、必ずしもそうではないが、同じ実施形態を指す場合がある。さらに、任意の1つの実施形態を参照して本明細書において記載された主題の記載された特徴、構造、または特性が、追加の記載された実施形態において任意の適切な方法で使用されても、または組み合わせられてもよい。主題の実施形態を十分に理解できるように、説明において、構造、プロセス、バッチ組成物、物品などの例など、多数の特定の詳細が提供される。しかし、当業者には、特定の詳細のうちの1つ以上がなくても、または他の方法、成分、材料などを用いて、主題を実施できることが認識されよう。他の例では、本開示の態様が分かりにくくなるのを避けるため、周知の構造、材料、もしくは操作は詳細に示されておらず、または記載されていない。
【0173】
上述のフローチャートおよび方法の概略図は、論理フローチャート図として一般に記載されている。したがって、示された順序およびラベルが付されたステップは、代表的な実施形態を示している。概略図に示された方法の1つ以上のステップ、もしくはそれらの一部に対して、機能、論理、または効果が同等な他のステップおよび方法が想起されるであろう。その上、使用されたフォーマットおよび記号は、概略図の論理ステップを説明するために提供されており、図により示された方法の範囲を限定しないと理解される。様々な矢印のタイプおよび線のタイプが概略図に使用される場合があるが、それらは対応する方法の範囲を限定しないと理解される。実際、方法の論理フローを示すためだけに、いくつかの矢印または他のコネクタが使用される場合がある。その上、特定の方法が行われる順序は、示された対応するステップの順序を厳守していても、厳守していなくてもよい。
【0174】
当業者には、本開示の範囲から逸脱せずに様々な変更および改変を本開示において行えることが明らかになるであろう。したがって、本開示の変更および改変が特許請求の範囲およびその同等物の範囲内であるならば、本開示はこの変更および改変を含むことが意図される。
【0175】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0176】
実施形態1
バッチ組成物において、
10μm≦DI50≦50μm、および
DIb≦2.0
である予備反応させた粒子サイズ分布を有する予備反応させた球状無機粒子と、
0.40 DI 50 DP 50 ≦0.90 DI 50 、および
DPb≦1.32
である細孔形成剤粒子サイズ分布を有する細孔形成剤球状粒子とを含み、
ここで、DI50は、前記予備反応させた球状無機粒子の前記予備反応させた粒子サイズ分布の中央粒径であり、DP50は、前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の中央粒径であり、DIbは、前記予備反応させた球状無機粒子の前記予備反応させた粒子サイズ分布の幅係数であり、DPbは、前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の幅係数である、バッチ組成物。
【0177】
実施形態2
前記予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して20%未満の微細無機粒子であって、5μm未満の中央径を有する微細無機粒子を含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0178】
実施形態3
前記予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して10%未満の微細無機粒子であって、5μm未満の中央径を有する微細無機粒子を含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0179】
実施形態4
前記予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して5%未満の微細無機粒子であって、5μm未満の中央径を有する微細無機粒子を含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0180】
実施形態5
前記予備反応させた球状無機粒子がARavg≦1.2を有し、
ここで、ARavgは、前記予備反応させた球状無機粒子の最大幅寸法を最小幅寸法で割ったものの平均として定義される平均アスペクト比である、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0181】
実施形態6
前記細孔形成剤球状粒子が、ARavg≦1.1を有し、
ここで、ARavgは、前記細孔形成剤球状粒子の最大幅寸法を最小幅寸法で割ったものの平均として定義される平均アスペクト比である、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0182】
実施形態7
20μm≦DI50≦50μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0183】
実施形態8
20μm≦DI50≦40μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0184】
実施形態9
DI90≦85μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0185】
実施形態10
DI90≦65μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0186】
実施形態11
45μm≦DI90≦85μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0187】
実施形態12
DI10≧8μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0188】
実施形態13
8μm≦DI10≦35μmを有する、実施形態12記載のバッチ組成物。
【0189】
実施形態14
(DI90-DI10)≦55μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0190】
実施形態15
15μm≦(DI90-DI10)≦55μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0191】
実施形態16
15μm≦DP50≦30μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0192】
実施形態17
0.4 DI 50 DP 50 ≦0.8 DI 50 を有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0193】
実施形態18
0.4 DI 50 DP 50 ≦0.7 DI 50 を有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0194】
実施形態19
前記細孔形成剤球状粒子が非親水性である、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0195】
実施形態20
前記細孔形成剤球状粒子が非親水性ポリマーを含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0196】
実施形態21
前記非親水性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリウレタン、ならびにそれらの誘導体および組合せを含む、実施形態20記載のバッチ組成物。
【0197】
実施形態22
前記細孔形成剤球状粒子が、相変化材料を含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0198】
実施形態23
前記細孔形成剤球状粒子が、MP≧100℃を有するポリマーを含み、ここで、MPは、前記細孔形成剤球状粒子の融点である、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0199】
実施形態24
前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布が、DPb≦1.30を有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0200】
実施形態25
前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布が、DPb≦1.25を有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0201】
実施形態26
前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布が、(DP90-DP10)≦20μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0202】
実施形態27
前記細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布が、(DP90-DP10)≦15μmを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0203】
実施形態28
前記細孔形成剤球状粒子が、前記バッチ組成物中の無機物の総質量に対する上乗せ添加による5質量%~35質量%を構成する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0204】
実施形態29
前記予備反応させた球状無機粒子が、噴霧乾燥された球状粒子を含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0205】
実施形態30
前記バッチ組成物の無機物に対する上乗せ添加による28質量%≦LV≦50質量%の重量を含み、ここで、LVは液体ビヒクルである、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0206】
実施形態31
前記バッチ組成物の無機物に対する上乗せ添加による22質量%≦LV≦35質量%の重量を含み、ここで、LVは液体ビヒクルであり、前記細孔形成剤球状粒子が非親水性である、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0207】
実施形態32
ヒドロキシエチルメチルセルロースバインダおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースバインダの組合せである有機バインダを含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0208】
実施形態33
前記予備反応させた無機粒子が、1種類以上の結晶相を含む、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0209】
実施形態34
前記予備反応させた無機粒子が、1種類以上のガラス相を含む、実施形態33記載のバッチ組成物。
【0210】
実施形態35
前記1種類以上の結晶相が、(i)チタン酸アルミニウム、(ii)長石、(iii)ムライト、(iv)チタニア、(v)マグネシア、(vi)アルミナ、(vii)二チタン酸マグネシウム、(viii)炭化ケイ素、(ix)擬ブルッカイト、(x)コーディエライト、(xi)コーディエライト、マグネシア、チタン酸アルミニウム複合材、および(xii)それらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、実施形態33記載のバッチ組成物。
【0211】
実施形態36
前記予備反応させた球状無機粒子が、主にチタン酸アルミニウムおよび二チタン酸マグネシウムの固溶体の第1の結晶相、ならびにコーディエライトを含む第2の結晶相を含む、実施形態33記載のバッチ組成物。
【0212】
実施形態37
前記予備反応させた球状無機粒子が、アルミナ、マグネシア、およびチタニアを主に含む擬ブルッカイト結晶相、コーディエライトを含む第2の結晶相、ならびにムライトを含む第3の結晶相を含む、実施形態33記載のバッチ組成物。
【0213】
実施形態38
4.0超のタウY/ベータを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0214】
実施形態39
4.5超のタウY/ベータを有する、実施形態1記載のバッチ組成物。
【0215】
実施形態40
ハニカム体を製造する方法において、
予備反応させた球状無機粒子と、微細無機粒子と、有機バインダと、細孔形成剤球状粒子と、液体ビヒクルとを含むバッチ組成物を混合して、ペーストを生成するステップであって、
前記予備反応させた球状無機粒子が、
10μm≦DI50≦50μm、および
DIb≦2.0
の予備反応させた粒子サイズ分布を有し、
前記細孔形成剤球状粒子が、
0.40 DI 50 DP 50 ≦0.90 DI 50 、および
DPb≦1.32
の細孔形成剤粒子サイズ分布を有し、
ここで、DI50は、予備反応させた球状無機粒子の前記予備反応させた粒子サイズ分布の中央粒径であり、DP50は、細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の中央粒径であり、DIbは、予備反応させた球状無機粒子の前記予備反応させた粒子サイズ分布の幅係数であり、DPbは、細孔形成剤球状粒子の前記細孔形成剤粒子サイズ分布の幅係数であり、
5μm未満の中央粒径を有する前記微細無機粒子が、前記予備反応させた球状無機粒子の総質量に対して、20質量%未満を構成するステップと、
前記ペーストを、湿ったグリーンハニカム体へと形成するステップと
を含む、方法。
【0216】
実施形態41
4.0超のタウY/ベータを有する、実施形態40記載の製造方法。
【0217】
実施形態42
4.5超のタウY/ベータを有する、実施形態40記載の製造方法。
【0218】
実施形態43
前記湿ったグリーンハニカム体を乾燥させて、乾燥したグリーンハニカム体を形成するステップと、
前記乾燥したグリーンハニカム体を焼成して、多孔質セラミックハニカム体を形成するステップと
を含む、実施形態40記載の製造方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10