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特許7396999ベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイス
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  • 特許-ベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイス 図1
  • 特許-ベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231205BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20231205BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20231205BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231205BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H05K1/02 A
C08G18/40
C08G18/75 010
H05K1/03 610H
H05K3/46 G
H05K3/46 Q
H05K3/46 S
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020553838
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041835
(87)【国際公開番号】W WO2020090634
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2018204920
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須永 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】岡部 潤
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
(72)【発明者】
【氏名】横澤 晃仁
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】山内 裕史
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237714(JP,A)
【文献】特開2017-022237(JP,A)
【文献】特開2017-168437(JP,A)
【文献】特開2017-118109(JP,A)
【文献】特開2018-160512(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/03
H05K 3/46
C08G 18/40
C08G 18/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、
動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、
25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、
引張強度が20~80MPaであり、かつ
破断伸度が500~900%であるポリウレタンからなる、溶液キャスト法、加熱溶融法、溶融押出成形法、または射出成形法により成型されたフィルムと、
前記フィルムの表面に接して形成された回路配線と、を有するベンダブル配線基板。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートは、トランス体比率が70%~95%の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン由来の構成単位を有することを特徴とする、請求項1に記載のベンダブル配線基板。
【請求項3】
前記長鎖ポリオールは、数平均分子量が500~3500の長鎖ポリオールであることを特徴とする、請求項1または2に記載のベンダブル配線基板。
【請求項4】
前記ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンであり、前記フィルムは、単層フィルムであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のベンダブル配線基板。
【請求項5】
長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、
動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、
25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、
引張強度が20~40MPaであり、かつ
破断伸度が500~900%であるポリウレタンからなる、溶液キャスト法、加熱溶融法、溶融押出成形法、または射出成形法により成型されたフィルムと、
前記フィルムの表面に接して形成された回路配線と、を有し、
伸張させる前の前記回路配線の比抵抗(Ω・cm)ρと、前記回路配線を伸長変化させた時の比抵抗ρと、の比ρ/ρが1.05~10.0の範囲であることを特徴とする、伸縮できる配線基板。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートは、トランス体比率が70%~95%の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン由来の構成単位を有することを特徴とする、請求項5に記載の伸縮できる配線基板。
【請求項7】
前記長鎖ポリオールは、数平均分子量が500~3500の長鎖ポリオールであることを特徴とする、請求項5または6に記載の伸縮できる配線基板。
【請求項8】
前記ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンであり、前記フィルムは、単層フィルムであることを特徴とする、請求項5から7のいずれか1項に記載の伸縮できる配線基板。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項に記載のベンダブル配線基板または請求項5から8のいずれか1項に記載の伸縮できる配線基板と、
所定の物理量を測定するセンサと、
無線通信機器と、
を有するベンダブルまたは伸縮性電子デバイス。
【請求項10】
前記無線通信機器は、近距離無線通信機能を有する、請求項9に記載のベンダブルまたは伸縮性電子デバイス。
【請求項11】
前記センサは、温度センサである、請求項9または10に記載のベンダブルまたは伸縮性電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの分野において、印刷技術を利用したプリンテッドエレクトロニクスが注目されている。その中でも、塗布によって配線を形成することができる金属粒子インクまたはペーストで基板に描画し、加熱焼成することで配線形成する方法は、従来の真空プロセスに比べて、大幅な低コスト化及び環境負荷の低減が図られることから、産業的に非常に重要な技術として位置付けられ、活発な材料開発やデバイスの開発が進められている。さらに、共役系有機導電性インクによって配線を印刷描画し、加熱処理するプリンテッドエレクトロニクスでも研究開発が進められている。
【0003】
これらの技術背景において、その目標市場は、トリリオン(1兆個)センサ(但し、プリンテッドエレクトロニクス、レーザ、画像など多種多様)、有機EL、有機トランジスタ分野であり、2020~2030年を目指した第5世代社会(超スマート社会)Society 5.0である。将来問題として、人口減少・高齢化・エネルギー、環境・災害、テロ・地域格差問題拡大などの課題を第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、AI(人工知能)ロボットなど)によって低減または解消する技術革新が必要となるとされている。
【0004】
これらの課題を解決するためには、各種電子回路製品が大量に、かつ安価に社会に提供される必要がある。例えば、プリンテッドエレクトロニクス以外のセンサは、現時点で10~50万円/センサーモジュールであり、将来的にユーザーが求める価格である500円未満/センサーモジュールに対しての価格格差が解消されていない。
【0005】
また、プリンテッドエレクトロニクスは、フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクスとして、フレキシブルな印刷配線と既存のリソグラフィー技術で製造される集積回路(IC)との組合せ、ハイブリッド化することで、高性能を維持しつつフレキシブルな製品や部品を経済的に実現する為の必須な技術要素である。この概念は、アメリカを中心に提唱された技術であり、製品全体として、低コストと高性能に加えて、軽量化、薄型、強靭さ(耐衝撃性)などの優れた物理特性を提供でき、これまでにない用途の利用を見込んでいる。しかしながら、フレキシブルな印刷配線に用いられる基板材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等の、剛性が高く硬いプラスティックスが用いられている(特許文献1)。これらの材料から作製した配線基板は、折り曲げると形状が元に戻らない、または、金属配線と基板との密着性が低く、基板からの応力で金属配線が基板から剥離し、断裂することがあり、ベンダブル配線基板または伸縮できる配線基板を得ることができない。
【0006】
さらに、上記の将来問題の課題を解決するために、ウェアラブルデバイスやメディカルデバイスの生体センサや生体情報モニタリングに対する関心が高まっており、人体に装着して人の動きを検知することや、心電図、心拍数、血圧や体温といったバイタルサイン(生体情報)を検出することが試みられている。これらの生体センサや生体情報モニタは、一般に衣服や装具や寝具などにつけセンシングやモニタが行われる。
【0007】
しかしながら、衣服や装具に設けられた生体センサや生体情報モニタは、人体が動くことで生体の対象部位からずれて、センシング精度やモニタ精度が著しく低下するという問題があり、生体センサや生体情報モニタを人体に直接に貼り付けることで問題は抑制される。そこで近年、面内方向に伸縮性を有する基材や配線を有する、伸縮性(ストレッチャブル)エレクトロニクスと呼ばれる技術が検討され、人体の関節等の動きに追随して伸縮可能な配線基板が提案されている。特許文献2には、伸縮性基材と導電性微粒子およびエラストマーを含む導電パターンとから構成されて、基板全体が伸縮性を備える回路基板が記載されている。しかし、特許文献2に記載されている伸縮性基材は耐熱性が低く、導電性微粒子とエラストマーを高沸点溶剤で伸縮性基材上にペーストして印刷後、120℃程度の温度で加熱できない。そのため、導電性微粒子同士を十分に焼結させることができず、十分な導電性を発現することができない。
【0008】
さらに、特許文献3には、導電性配線をめっきまたは印刷で描画するために、側鎖にビニル重合体を有し、架橋構造を形成させて耐久性をあげたウレタン樹脂を使用する受容層形成用樹脂組成物、ならびにそれを用いて得られる受容基材、印刷物、導電性パターン及び電気回路が開示されている。その解決しようとする課題は、顔料インクや導電性インクの流動体を担持しうる受容層(架橋ウレタン樹脂)のうち、各種支持体との密着性に優れたインク受容層を形成する、印刷性に優れた受容層形成用樹脂組成物を提供することにある。特許文献3では、流動体を用いて印刷を施した後に、ウレタン樹脂に架橋構造を形成させることで、ウレタン樹脂からなる受容層にめっき薬剤や各種有機溶剤に対する耐性を持たせ、顔料インクや導電性インクの流動体のにじみや剥離を防止し、または顔料インクや導電性インクの流動体への耐久性を発現させている。特許文献3のウレタン樹脂は、主鎖としてのウレタン樹脂の構造の側鎖に、ビニル重合体由来の構造がグラフトしたものであり、そのビニル重合体/ウレタン樹脂の熱架橋ハイブリット樹脂組成物を使用することで耐久性を発現している。具体的には、ウレタン樹脂に片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体を含有するポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて鎖伸長剤を反応させて得られるものが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-115728号公報
【文献】特開2014-236103号公報
【文献】特許第5594451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述の特許文献3における受容層形成用組成物は、それのみでは使用できず、受容層形成用組成物と水性媒体を、インクの受容基材として支持体の片面または両面の一部または全部に塗布または含浸させ、その塗布面に含まれる水性媒体を揮発させるような複雑な工程を経てインク受容層を形成しなければインクの塗工ができない。また、特許文献3では、一般な回路基板等の導電性パターンを形成する際に、支持体として使用されることの多い、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ガラス、セルロースナノファイバーなどからなる支持体を使用することが好ましいとされている。しかし、これらは、一般に難付着性であるため、樹脂等が密着しにくい場合が多い。
【0011】
なお、特許文献3では、柔軟性が必要な用途等に使用される場合は、比較的柔軟で折り曲げ等が可能なものを支持体に使用することが、導電性パターンに柔軟性を付与し、折り曲げ可能な最終製品を得るうえで好ましいとされている。具体的には、一軸延伸等することによって形成されたフィルムまたはシート状の支持体を使用することが好ましいとされている。しかし、特許文献3に例示されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等の延伸フィルムが使用できたとしても、これらの延伸が非常に難しい支持体を使用して、かつ顔料または導電性インクの水性媒体を含む受容層形成用組成物の残留水分による経時的なマイグレーションを抑制しながら、導電性パターン及び最終製品としての電気回路を大量に、かつ、安価に社会に提供するためには、更なる高度な技術、設備を要し、品質管理に大きな課題を有していることは明らかである。
【0012】
前記の通り、プリンテッドエレクトロニクスは、産業的に非常に重要な技術として位置付けられ、活発な研究開発が進められており、塗布印刷技術によって回路配線を描画し、焼成することによって形成した安価なベンダブル配線基板や、伸縮できる配線基板、およびこれら配線基板にセンサ機能、近距離無線通信機能を持たせたベンダブルまたは伸縮性電子デバイスは、ウェルフェア・メディカル用途やウェアラブルデバイス用途やRFID用途やスマートホーン、タブレット端末、コンピューター、ディスプレイ等向けのトランジスタ用途やメディカル、介護ベッド、防犯、育児、自動車自動運転、愛玩ロボット、ドローン等向けのセンサまたは制御部品用途や有機EL、液晶ディスプレイ、照明、自動車、ロボット、電子メガネ、音楽プレイヤー等の電子部品用途に用いることができる。また、屈曲性、柔軟性を有し、肌触りが良好で人体の動きに追従できる柔らかな接触感をもつセンサ機能、無線通信機能を有する電子デバイスを提供することが、将来問題の課題解決の一つの解決策として必要になってくる。
【0013】
本発明は、人体接触感が非常に良好で、曲げ、折りに極めて強く、伸縮性も有するベンダブル配線基板または伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイスを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、引張強度が20~80MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であるポリウレタンからなるフィルムと、前記フィルムの表面に接して形成された回路配線と、を有するベンダブル配線基板に関する。
【0015】
また、本発明は、長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、引張強度が20~40MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であるポリウレタンからなるフィルムと、前記フィルムの表面に接して形成された回路配線と、を有し、伸張させる前の前記回路配線の比抵抗(Ω・cm)ρと、前記回路配線を伸長変化させた時の比抵抗ρと、の比ρ/ρが1.05~10.0の範囲であることを特徴とする、伸縮できる配線基板に関する。
【0016】
また、本発明は、上記ベンダブル配線基板または上記伸縮できる配線基板と、所定の物理量を測定するセンサと、近距離無線通信機器と、を有するベンダブルまたは伸縮性電子デバイスに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、人体接触感が非常に良好で、曲げ、折りに極めて強く、伸縮性も有するベンダブル配線基板または伸縮できる配線基板を提供することができる。さらに、これらの配線基板にセンサ機能、近距離無線通信機能を持たせたベンダブルまたは伸縮性電子デバイスを提供することができ、高い柔軟性と伸縮性を有し、経時で黄変が無く、高い透明性のある電子部品等を得ることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の伸縮できる配線基板の延伸倍率とρ/ρ0との実施例8と実施例9の関係図を示すものである。
図2】本発明の実施例10のステンレス板上のベンダブル配線基板の概略構成を示すものである。
図3】本発明の実施例11のステンレス板上のセンサ機能、近距離無線通信機能を持たせたベンダブル電子デバイスの概略構成を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0020】
本実施形態に係るベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイスは、長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、引張強度が20~80MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であるポリウレタンの単層フィルム上に配線が形成されるものである。ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤からなるハードセグメントを含んでいることが好ましく、例えば、上記ポリイソシアネート、長鎖ポリオール(すなわち、マクロポリオール)および鎖伸長剤の反応により得られるポリウレタンが挙げられる。特に、イソシアネート化合物の重合体であるポリイソシアネートがトランス体比率70%~95%の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン由来の構成単位を有することが好適であるが、これに限定されるものではない。
【0021】
また、本実施形態に係る伸縮できる配線基板は、比抵抗(Ω・cm)ρ0の配線を伸長変化させた時の比抵抗ρとの比ρ/ρ0が1.05~10.0の範囲であり、この伸長変化による比ρ/ρ0の範囲を満たしていれば、電気配線と使用しても良いし、そのものをセンサ部品として使用してもよく、使用上の制限を受けるものではない。前述のベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイスは、一般的なハードボードの配線基板または電子デバイスと組み合わせて多機能な電子デバイスを作製することを制限されるものでもない。
【0022】
このポリウレタンでは、上記ポリイソシアネートおよび長鎖ポリオールの反応により、ソフトセグメントが形成され、上記ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤の反応により、ハードセグメントが形成される。さらに、フィルム成形や加工のしやすさから該ポリウレタンは熱可塑性ポリウレタンであることが好ましい。
【0023】
本実施形態に係るポリウレタンを製造するポリイソシアネートは、イソシアネート基の総モル数に対して、イソシアネート化合物のイソシアネート基が、50モル%を超過し、好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%の割合で含有している。最も好ましくは、100モル%含有している。
【0024】
さらに、該イソシアネート化合物が、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである場合には、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,4体とする。)、および、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,4体とする。)の立体異性体があり、本発明では、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体を、好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、70質量%、とりわけ好ましくは、80質量%以上含有する。最も好ましくは、95質量%含有している。
【0025】
また、上記ポリイソシアネートにおいて、イソシアネート化合物として、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートの重合物(カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アシル尿素変性物など)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメトキシビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートなどのベンゼン環含有ポリイソシアネート(具体的には、ベンゼン環含有ジイソシアネート)などが挙げられ、さらには、例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンおよびその混合物などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。また、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0026】
イソシアネート化合物を、50モル%を超過する割合で含有し、かつ、ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメントを含有しており、動的粘弾性測定によって得られる貯蔵粘弾性率が、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であるポリウレタンを製造できるイソシアネート化合物は、好ましくは、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。特に好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである。
【0027】
長鎖ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0028】
長鎖ポリオールの数平均分子量(標準ポリエチレングリコールを検量線とするGPC測定による数平均分子量)は、例えば、400~5000、好ましくは、500~3500、さらに好ましくは、1500~2500であり、その水酸基価は、例えば、10~125mgKOH/gである。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0030】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11~13)、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、メチルヘキサン二酸、シトラコン酸、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライド、リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0031】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、2価アルコールを開始剤として、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに2価アルコールを共重合したラクトン系ポリオールなどが挙げられる。
【0032】
さらには、ひまし油ポリオール、あるいは、ひまし油ポリオールとポリプロピレングリコールとを反応させて得られる変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
【0033】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、2価アルコールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールや1,6-ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性(常温液状)ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0034】
これら長鎖ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、非晶性(常温液状)ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性(常温液状)ポリカーボネートジオール、非晶性(常温液状)ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0035】
さらに、ポリウレタンの合成は、長鎖ポリオールとともに、上記した低分子量ポリオールを併用してもよい。
【0036】
本実施形態に係る鎖伸長剤としては、例えば、2価アルコール、3価アルコールなどの低分子量ポリオール、例えば、モノアミン、例えば、脂環族ジアミン、脂肪族ジアミンなどのジアミンなどが挙げられる。
【0037】
モノアミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシプロピルアミン)、3-(ドデシルオキシ)プロピルアミン、モルホリンなどが挙げられる。
【0038】
脂環族ジアミンとしては、例えば、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物、1,3-および1,4-シクロヘキサンジアミンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0039】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。これらの鎖伸長剤を使用して鎖伸長すれば、ポリウレタンに含有されるハードセグメントにウレア基(-NH-CO-NH-)を含ませることができる。そのため、屈曲性、伸縮性および伸長性に優れる熱可塑性ポリウレタンを得ることができる。
【0040】
ポリウレタンは、その重量平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による重量平均分子量)が、例えば、60,000~300,000、好ましくは、90,000~250,000である。
【0041】
また、ポリウレタンにおいて、上記ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメント濃度は、好ましくは、2~30質量%、さらに好ましくは、3~20質量%、とりわけ好ましくは3~10質量%である。
【0042】
また、ポリウレタンは、側鎖にビニル重合体に由来する構造を実質的に有さない。
【0043】
また、本実施形態に係るポリウレタンは、黄変が無く高い透明性が要求される場合、必要に応じて、酸化防止剤、界面活性剤、可塑剤等の改質剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等の安定剤、ガラス繊維、無機充填剤等の補強剤を加えてもよい。
【0044】
本実施形態に係るポリウレタンの黄変が無く高い透明性が要求されるとは、ポリウレタンを、例えば、溶液キャスト法、加熱溶融法、溶融押出成形法、射出成形法などの成形法で得られたフィルム、シート等の成形物の全光線透過率が80%以上の透明性を有することであり、好ましくは、83%以上、さらに好ましくは、85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0045】
本実施形態に係るポリウレタンのフィルムの膜厚は、1~500μmであることが好ましく、さらに1~350μmであることがより好ましい。特に、人体に貼り付けることができるベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板やセンサ機能を搭載するベンダブルまたは伸縮性電子デバイスの場合、これら配線基板や電子デバイスの肌触り感は、フィルムの厚みにも依存し、そのフィルムの厚みは、3~250μmであることが好ましく、さらに好ましくは3~150μmである。この厚みが500μmを超えるとフィルムの剛性が増すことによって、肌触り感が悪化する場合もある。また、剛性と伸縮性は相反する作用であり、剛性が高い伸縮性を有する配線基板には当然ながら不向きであり、この厚みを超えた剛性の増したフィルムの使用は、配線を破断することなく伸縮性を維持することが難しい場合がある。
本実施形態に係るポリウレタンからなるフィルムは単層であっても、多層積層であっても良い。
【0046】
また、PETフィルム、PIフィルム、PENフィルム等の剛性が高いフィルムを該ポリウレタンの単層フィルムと併用すると、本発明におけるベンダブルまたは伸縮できる配線基板を得ることができない。さらに、これらを併用すると肌触り感を悪化させるので、本実施形態では使用しない方がよい。
【0047】
また、本実施形態に係るポリウレタンの単層フィルム状の成形物を得る場合には、例えば、溶剤キャスト法で支持体上にフィルムを形成し、100℃以上の温度で加熱処理などを施し、冷却後、支持体からフィルムを剥離させることによりフィルムを製造することができる。支持体からのフィルムの剥離は、フィルムの端部に市販のテープを貼り付け、これに応力を加えて剥離することにより行ってもよく、溶剤などの液体をフィルムと支持体の接触界面に接触させて支持体表面とフィルムの接触面の表面張力の差を利用してフィルムを剥離することにより行っても良い。または、レーザリフトオフを使用しても良い。
【0048】
また、溶融成形法により作製する方法が挙げられる。溶融成形法でフィルム製造する方法としては、上記に例示した本実施形態に係るポリウレタンを溶融混練機からTダイを経てフィルム化する方法や、加熱板を用いてプレスしてフィルム化する方法や、インフレーション法等が挙げられる。Tダイによる溶融押出しフィルム製造においては、例えば、必要に応じて添加剤を配合したポリウレタンを押出機に投入し、ガラス転移温度よりも好ましくは50℃~300℃高い温度、より好ましくは100℃~250℃高い温度で溶融混練し、Tダイから押出し、冷却ロールなどで溶融ポリマーを冷却することでフィルムに加工することができる。また、加熱板を用いてプレスしてフィルム化する際の加熱の温度は、上記の溶融混練する際の温度と等しく行われる。
【0049】
軟質性のフィルムを得る場合、PET等の離形可能なフィルム上に溶融成形したフィルムが100℃以下まで冷却されたのちに、PET等の離形可能なフィルム上を両面または片面に乗せた形態でハンドリングするとフィルム間の荷重による付着を防止することができる。
【0050】
本発明に係るポリウレタンのフィルム状の成形物には、実質的に水分を含まない。このことは、回路配線が経時的なマイグレーションを引起さず、安定的な電気特性を維持するために、重要な因子である。
【0051】
本実施形態に係るポリウレタンの単層フィルムの常温25℃におけるヤング率または貯蔵弾性率は、20~200MPaであり、好ましくは、20~150MPaである。本実施形態において、ポリウレタンからなるフィルム上に金属粒子インクまたはペーストを塗布印刷技術によって直接回路配線を描画し、焼成する温度は、好ましくは80℃~170℃である。
【0052】
特に、最高温度170℃に対して、前記フィルムのヤング率または貯蔵弾性率は、1MPa以上の強度を保つことが配線形成には好ましく、さらに、155℃以上に対してこのフィルムのヤング率または貯蔵弾性率は、1MPa以上の強度を保つことが好ましい。
本実施形態において、該ポリウレタンフィルムは、引張強度が20~80MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であり、充分な強度、伸度を有する。
【0053】
一般的に配線形成のフィルムまたはシートとして用いられているPETやPENのようなポリエステルやポリイミドの常温におけるヤング率または貯蔵弾性率は、ポリエステルが2~4GPa、ポリイミドが3~7GPaである。これらを用いて作製した配線基板や電子デバイスは、ある程度のフレキシビリティを有するが、これらの高いヤング率または貯蔵弾性率が一因で、非常に硬く、ゴワゴワ感がある配線基板や電子デバイスしか提供できない。その感触は、人体の皮膚表層のヤング率が25~220kPa(S,MacNeil,Nature,445,874(2007))であることから、それ以上のヤング率または貯蔵弾性率で皮膚は、感触を認識し、そのヤング率または貯蔵弾性率が、1GPa以上の構造物は、感触的に非常に硬いと認識される。
【0054】
一方、本実施形態に係るポリウレタンの単層フィルムは、常温25℃において200MPa以下のヤング率または貯蔵弾性率を有し、引張強度が20~80MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であり、さらにその硬度(アスカー)が、83~100Aであることで、べた付きが無く、柔軟性、伸縮性をもたらす。この物性値を有するフィルムを用いることによって、ベンダブルまたは伸縮できる配線基板、さらに、これらによる配線基板上にセンサ機能、近距離無線通信機能を持たせたベンダブルまたは伸縮性電子デバイスとして、人体に接触する基板裏面が人体に対しても良好な接触感が得られる。
【0055】
また、この硬度は、該ポリウレタンの単層フィルムのヤング率または貯蔵弾性率と相関関係があり、例えば、硬度が80Aでは、動的粘弾性測定によって得られる貯蔵粘弾性率が、1MPa以上となる温度が150℃前後以下であり、引張強度が20MPa以下であることから、耐熱性が急激に悪化する。塗布印刷技術によって、金属粒子インクまたはペーストで該ポリウレタンフィルム上に直接回路配線を描画し、その後焼成する時の温度に耐えられず、配線変形や断線を引起す。さらには、後述する接続配線や電子部品類を実装する際のフロー温度またはリフロー温度に耐えられないことで引き起こされる、フィルム自身の変形による回路不良や、支持体上へフィルムが融着してプロセス不良を引き起こす為に、ベンダブルまたは伸縮できる配線基板、またはベンダブルまたは伸縮性の電子デバイスを製造することができない。
【0056】
一方、本実施形態において用いられる金属粒子インクまたはペーストは、塗布印刷技術によって直接回路配線を描画し、焼成することによって配線を形成できるものであり、導電性の高い金属ナノ粒子、ナノフレーク、またはナノチューブを使用することができる。この金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、白金、パラジウム、スズ、クロム、鉛、等の金属粒子や、銀/パラジウム等のこれら金属の合金;酸化銀、有機銀、有機金等の比較的低温で熱分解して導電性金属を与える熱分解性金属化合物;酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジュウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物粒子等を用いることができるが、金、銀、銅の金属が好適に用いられ、特に、大気中で安定な、経時変化が少なく、経済性も遜色ない銀が好ましく用いられる。
【0057】
金属粒子インクまたはペーストとして、公知のものを使用することができる。また、金属粒子の平均粒径は、例えば、5~500nmの範囲にある。
金属粒子インクまたはペーストの室温(25℃)における粘度は、例えば、1~500mPa・sの範囲にある。粘度は、溶剤で調整することができ、溶剤としては、特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンまたはジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンまたはデカリン等の脂肪族環状炭化水素、メチレンジクロライド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンまたはトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、これらに加えてレベリング剤を併用してもよく、高分子化合物を含有させて、上記の金属粒子インクまたはペーストの機能を補完してもよい。特に限定されるものではないが、例えば、接着性を付与する、あるいは、弾性を調節するためにアクリル樹脂やエポキシ樹脂、多種エラストマーなどを混合してもよい。金属粒子インクまたはペーストの粘度が上記の範囲にあれば、塗布印刷方法を適宜選択することができ、電気特性を考慮したうえで、配線幅や配線高さを設計した上で金属粒子インクまたはペーストを印刷描画することができる。
【0058】
本実施形態に係る印刷後に焼成形成した配線幅や配線高さには、特に制限はないが、通常は、配線幅は、0.5μm~10cmの範囲で形成され、好ましくは1μm~10mmで形成され、配線高さは、100nm~1000μmの範囲であり、好ましくは、500nm~100μmである。
【0059】
上記の金属粒子インクまたはペーストを上記のポリウレタンのフィルム上に塗布する印刷方法としては、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、ソフトブランケットグラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、凸版反転印刷、インクジェット印刷、スピンコート塗布法等が挙げられる。
【0060】
これらの印刷方法によって、金属粒子インクまたはペーストを上記のポリウレタンの単層フィルム上に直接塗布することができ、回路配線を描画する。その後、焼成することによって配線を形成したベンダブル配線基板または伸縮できる配線基板を作製することができる。大気中で焼結させてもよいし、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス中で焼結させてもよい。その際、該フィルムは、予め、ガラス、ステンレス、PET等のプラスチック等の硬質かつ表面が平滑な台または板の上に、耐熱テープで固定、真空吸引または加熱密着させて、印刷および焼成することできる。
【0061】
この焼成する温度は、前述したように80℃~170℃であり、焼成溶融金属膜と該ポリウレタンの単層フィルム表面との界面で、均一でかつ強固な融着界面を形成させることができる。この金属溶融膜とポリウレタンフィルム表面との密着性は、焼成加熱時のフィルムの高いヤング率または貯蔵弾性率、硬度とウレタン結合によって担保され、発現することができる。印刷塗布した金属粒子の焼成には、キセノンフラッシュランプを用いた光焼成法、赤外線ヒーターを用いたオーブンやプレート上での加熱焼成法等を用いることができる。さらに、該ポリウレタンを使用することによって、焼成時に伸縮防止ガイドを設ける必要がなく加熱することができる。
【0062】
金属粒子インクまたはペーストをフィルム上に直接塗布する前において、該ポリウレタンの単層フィルムの表面エネルギー(表面自由エネルギー)は、15mN/m以上であることが好ましい。ポリマーの構造上の特徴として、上記範囲の表面エネルギーを有していると言える。表面エネルギーの上限値は特に限定されないが、例えば、80mN/mである。
【0063】
上述のような理由によって、溶融金属配線とポリウレタンフィルム表層との密着性が発現し、配線基板や電子デバイスのベンダブル性または伸縮性機能を発現できる。
【0064】
また、本実施形態で金属粒子インクまたはペーストを上記のポリウレタンの単層フィルム上に直接印刷塗布することで、配線回路が、描画される。その後、焼成することによって回路配線を形成する。これらのベンダブルまたは伸縮できる配線基板の配線は、多層配線とすることができる。その際、上下配線間に絶縁膜を形成し、同時にスルーホールを設けることができる。
【0065】
絶縁膜材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリベンゾキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機絶縁材料を用いることができ、ベンダブルまたは伸縮特性の耐久性を向上させるために、架橋剤(例えば、メラミン)を併用しても良い。
【0066】
この絶縁膜を形成する方法は特に制限されないが、例えば、有機絶縁材料を含む絶縁膜形成用組成物を塗布して、膜形成する方法が利用でき、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等や、パターン形成をしながら塗布するクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、ソフトブランケットグラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、凸版反転印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0067】
上記の絶縁膜形成用組成物には、必要に応じて、溶媒が含まれていてもよい。さらに、絶縁膜形成用組成物には架橋成分が含まれてもよい。例えば、ヒドロキシ基を含有する有機絶縁材料に対し、メラミン等の架橋成分を添加することで、絶縁膜に架橋構造を導入することができる。アルキルケイ素基やアルコキシケイ素基などの官能基を有する有機絶縁材料に対しては、硬化剤または反応開始剤を混合させて絶縁膜に架橋構造を導入することができる。その際、塗膜を加熱し焼成しても良く、加熱プロセスが溶剤除去や揮発成分除去を兼ねることは、絶縁特性やその上下に形成される金属配線の電気抵抗を低く維持する上で好ましい。その加熱温度は、200℃以下が好ましく、特に、80~200℃であり、好ましくは、100~170℃である。
【0068】
絶縁膜形成用組成物に含まれてもよい有機溶媒の種類や組み合わせについては特に制限されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、デカヒドロナフタレン、N-メチル-2-ピロリドン、アニソール、γ-ブチロラクトン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラリン、1-メチルナフタレン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート、酢酸ブチル、エタノール、ブタノール等が挙げられる。
【0069】
また、形成される絶縁膜の膜厚は特に限定されず、50nm~10μmが好ましく、200nm~5μmがより好ましい。この範囲であれば、ベンダブルまたは伸縮性能には、影響を及ぼすことはない。
【0070】
多層配線を形成する際、配線基板表面が、絶縁膜形成組成物の塗布液の濡れ性が悪いことがあり、その場合は、配線基板に対して、酸素、窒素、アルゴン等を反応性ガスとして用いたプラズマ処理、紫外線照射処理、紫外線オゾン処理等の表面処理を行うことで濡れ性を高めても良い。
【0071】
また、本実施形態において金属粒子インクまたはペーストと併用して導電性有機化合物を併用しても良く、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)/[6,6]フェニルC61ブチル酸メチルエステル(P3HT/PCBM)、ポリアニリン等を用いることができる。さらに、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素系の導電材料を用いることができる。これらの導電性有機化合物または炭素系の導電材料を金属粒子インクまたはペーストに混合して、本実施形態の機能を補完してもよい。
【0072】
本発明におけるベンダブル配線またはベンダブル電子デバイスのベンダブルとは、参考規格JIS C5016やASTM D2176のような繰返し折りたたみ曲げ動作を与えた時の疲労強度を指すのではなく、極小屈曲半径に対して電気抵抗の変化が、任意の閾値を超えずに、回路配線としての機能を維持できることを指す。屈曲半径と電気抵抗変化の関係は、配線幅、配線高さに依存し、焼成形成した配線幅は、0.5μm~10cmの範囲で形成され、好ましくは1μm~10mmで形成され、その配線高さは、100nm~1000μmの範囲であり、好ましくは、500nm~100μmである。本発明においては、屈曲半径が、3~0.25mmの状態において、その電気抵抗の変化の閾値が、180°に屈曲した時の電気抵抗値から屈曲前の抵抗値との差の値を屈曲前の抵抗値で割った値の絶対値が0~30%である配線基板をベンダブルとする。この範囲は、好ましくは、0~20%であり、さらに好ましくは0~15%である。
【0073】
また、このベンダブル配線基板に使用するポリウレタンのガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)は、好ましくは-48℃~10℃であり、より好ましくは、-45℃~5℃であり、さらに好ましくは、-45℃~0℃である。
【0074】
さらに、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、破断伸度が500~900%であり、かつポリウレタンの引張強度が20~40MPaであるポリウレタンフィルム上に、焼成後伸縮できる配線を形成する金属粒子インクまたはペーストを用いて、塗布印刷技術によって直接回路配線を描画し、焼成することによって配線が形成され、比抵抗(Ω・cm)ρ0の配線を伸長変化させた時の比抵抗ρとの比ρ/ρ0が1.05~10.0の範囲で変化する特徴を有する伸縮できる配線基板は、高い柔軟性、伸縮性と良好な肌触りと人体の動きに対して追従できる電子デバイスを提供することができる。
【0075】
ここで、この伸縮できる配線基板に使用するポリウレタンのガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)は、好ましくは-48℃~-20℃であり、より好ましくは、-45℃~-25℃である。ガラス転移温度は、実用温度を表しているのではなく、実用温度は、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が支配している。
【0076】
本実施形態において焼成後伸縮できる配線を形成する金属粒子インクまたはペーストからなる伸縮できる配線は、前述した塗布印刷技術によって直接回路配線を描画し、焼成することによって配線を形成するものであり、導電性の高い金属ナノ粒子、ナノフレーク、またはナノチューブと、伸縮性を付与するためにゴム弾性を有する樹脂、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、多種エラストマーなどを混合したものを好ましく使用することができる。
【0077】
これらの伸縮できる配線の形成には金属粒子インク組成物またはペースト組成物を使用することができ、その粘度は、適宜、溶剤で調整することができる。溶剤としては、特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンまたはジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンまたはデカリン等の脂肪族環状炭化水素、メチレンジクロライド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンまたはトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
また、本実施形態での伸縮できる配線を形成できる導電性金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、白金、パラジウム、スズ、クロム、鉛、等の金属粒子や、銀/パラジウム等のこれら金属の合金;酸化銀、有機銀、有機金等の比較的低温で熱分化して導電性金属を与える熱分解性金属化合物;酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジュウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物粒子等を用いることができるが、金、銀、銅の金属が好適に用いられ、特に、大気中で安定な、経時変化が少なく、経済性も遜色ない銀が好ましく用いられる。
【0079】
本実施形態において、伸縮できる配線を形成した後に、伸縮できる配線基板を引き伸ばしたり、元に戻したりすることができる。任意の長さに引き伸ばすこと(伸長)によって比抵抗比を延伸倍率の関数として表せる伸縮できる配線基板を作製できる。その変化は、顕微鏡観察などによって配線の部分断裂や形状変化が起こっているのではなく、伸長変化によって、配線と基板界面や配線内部の応力を受けて、伸縮できる配線自身が電気的な特性変化を起こし、抵抗値を増加させていることが本発明で明らかとなった。
【0080】
伸長前のその比抵抗(Ω・cm)ρ0とし、該配線を伸長変化させた時の比抵抗ρとの比ρ/ρ0が1.05~10.0の範囲でポリウレタンフィルムの引張強度やポリイソシアネート骨格に依存しながら、その比が延伸倍率の関数であることが本発明で明らかになり、その相関係数が0.90以上の関係で近似関係にあることが分かった。この比抵抗の比の範囲では、延伸倍率は、1.1~2.9の倍率でポリウレタンの引張強度やポリイソシアネート骨格におよび伸長率に依存し、伸縮できる配線を施した伸縮できる配線基板の提供を可能にした。
【0081】
これもベンダブル配線であることは言うまでもなく、前述と同様に、実施形態においては、屈曲半径が、3~0.25mmの状態において、その電気抵抗の変化の閾値が、180°に屈曲した時の電気抵抗値から屈曲前の抵抗値との差の値を屈曲前の抵抗値で割った値の絶対値が0~30%である配線基板をベンダブルとし、この範囲は、好ましくは、0~20%であり、さらに好ましくは0~15%である。
【0082】
本実施形態に係る比抵抗値ρ0は、10-6~10-4Ω・cmの範囲に適用できる。ρ/ρ0が1.05~10.0の範囲では、増幅器のような制御部品で電圧または電流を一定に制御することができ、例えば、ρ0が、最大値10-4Ω・cmの場合であり、かつρ/ρ0が最大値10.0の場合、最大増幅値100倍に制御することで、その比抵抗値は10-6Ω・cmまで低下させ、電子回路を正常に駆動することができる。
【0083】
また、本実施形態における該伸縮できる配線の配線幅は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5μm~10cmの範囲で形成され、好ましくは1μm~10mmで形成され、配線高さは、100nm~1000μmの範囲であり、好ましくは、500nm~100μmである。
【0084】
さらに、本実施形態におけるベンダブルまたは伸縮性電子デバイスは、所定の物理量を測定できるセンサなどを備えて、センサ機能を付与されてもよい。上記のセンサ機能としては、センサからの情報の物理量を、電子回路が処理できるように、一旦電気信号に置き換え、人間が判読可能なように更に変換し直す機能であればよい。センサから電気回路が取得した信号は、アナログ信号からデジタル信号に置き換えるAD変換器を使用し、ソフトウェアで測定結果を人間が読み取れるように変換する必要がある。具体的な物理量として例示すると、加速度、圧力を含む力、振動、熱、光、電気、化学、生化学などが挙げられる。
【0085】
また、ソフトウェアでの計測結果を読み取るために、近年、広く普及した通信機能を有するスマートホーン、スマートウォッチ、タブレット端末等のデジタル端末に情報を送信する無線通信機器、特には近距離無線通信機能を有する無線通信機器を備えることが好ましいが、USBケーブルやジャックケーブル伝送であっても無論差しさわりがあるわけではなく、併用を制限するものではない。
【0086】
ベンダブルまたは伸縮性電子デバイスとは、電気抵抗の変化の閾値が、180°に屈曲した時の電気抵抗値から屈曲前の抵抗値との差の値を屈曲前の抵抗値で割った値の絶対値が0~30%である配線基板上に形成された電子回路を指し、また伸縮性電子デバイスとは、上述のρ/ρ0が1.05~10.0の範囲で伸縮できる配線基板上に形成された電子デバイスのことを指す。
【0087】
上述の物理量のうち、本実施形態では、特に、熱に関する温度センサが好適に適用できることが分かった。温度の測定は、接触式であっても、非接触式であっても良く、電子デバイス上の部分は、温度によって電気抵抗が変化する温度測定係数を有する導電性有機化合物を用いることができる。例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)/[6,6]フェニルC61ブチル酸メチルエステル(P3HT/PCBM)、ポリアニリン等も用いることができる。さらにカーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素系の導電材料を用いることができる。また、導電性を有する無機物、金属または金属酸化物であっても良い。
【0088】
この温度センサを搭載することによって、近距離無線通信機能でデジタル端末に情報を送信することで人体温度情報や物流環境情報、または商品品質環境情報など様々な情報を得ることができる。
【0089】
これらの通信機能は、無線給電が利用できる13.56MHzの周波数を利用するNFC (Near FieldCommunication) と呼ばれる無線通信を利用しても良く、ISO/IEC 14443、同 18092、同15693、同21481などの国際規格の無線通信を利用でき、所謂、パッシブ型の電子デバイスを作製することができる。また、これらの通信機能を持ったICタグとして、情報機能を搭載してRFIDとしての機能を持たせてもよい。これに電池を搭載したアクティブ型の電子デバイスとしても良い。さらに、1次電池や2次電池の搭載や配線電源が必要となるが、2.4GHzの周波数で利用できるBluetooth basic rate/enhanced data rateやBluetooth Low Energy(~5m)や2.4GHz周波数帯域、900MHz帯域(例えば、920MHz(~100m))及び800MHz帯域のUHFやZigBeeなども利用できる。
【0090】
上述の情報の通信機能を持たせるためには、本実施形態のベンダブルまたは伸縮できる配線基板に塗布印刷技術によって情報通信用の送受信アンテナを形成させることができ、これを利用したベンダブルまたは伸縮性電子デバイスを提供することができる。
【0091】
ベンダブルまたは伸縮性電子デバイスを経済的に安価に提供するためには、上記配線基板に、様々な既存の安価な集積回路(IC)や電圧を制御するための抵抗器を利用して、前記のようにセンサからの情報の物理量を、電子回路が処理できるように、一旦電気信号に置き換え、人間が判読可能なように更に変換し直すデバイスであり、電気回路が取得した信号は、アナログ信号からデジタル信号に置き換えるAD変換器を使用し、ソフトウェアで測定結果を人間が読み取れるように変換することができる。
【0092】
本実施形態において上記配線基板上に、整流や信号変換に利用するCMOS、AD変換回路やフリップフロップ回路等の集積回路(IC)、抵抗器、増幅器、レーザ、有機ELやLED光等の発光器、NFC、Bluetooth、UHFまたはZigBeeなどの通信機などの様々な電子部品や接続配線を、経済的に安価な方法で、かつ、耐久性がある方法で取付ける必要がある。その取り付け方法としては、半田が一般的に安価に利用される材料であり、その他に低温硬化形のフレキシブル導電接着剤も利用できるが、現時点ではコストが上げることも事実としてあるが、将来的には、経済性を持つ可能性のある材料である。
【0093】
ここでの半田付けの方法は、半田ごてを用いた、糸半田の手作業で行っても良いが、フロー方式またはリフロー方式が工業的にはよく使われる方法である。本実施形態では、何れの方法を選択してもよいが、プリント基板上に半田ペーストを、電子部品類をマウントする部分に穴の空いたステンレス製のメタルマスクのようなスクリーンでペーストをスキージ印刷し、その上に部品を載せてから熱を加えて半田を溶かす方法で上述の電子部品類や接続配線を実装することが工業的には好ましく用いることができる。電子部品類や接続配線をマウントした後に本実施形態で形成されたベンダブル配線基板とマウントした電子部品類をリフロー炉の中で、プリヒートし部品への急激な熱ショック回避やフラックス活性化、溶剤気化などを行っても良く、本実施形態では、プリヒートの温度は100~150℃範囲であり、本加熱は、140~180℃で加熱時間を短時間で行うことができる。さらに、冷却は、自然冷却であっても良いが、電子部品の熱ストレスを回避するため、または半田の引け、クラック防止のために急冷することもできる。さらに、印刷ではなく、ICにボール半田を付けて、実装部分に乗せて、リフローしてもよい。
【実施例
【0094】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。
【0095】
実施例、比較例において、貯蔵弾性率は次の条件で測定した。
測定温度(measuring temperature):-100℃~200℃
昇温速度(heating rate):5℃/min
測定周波数(measuring frequency):10Hz
【0096】
[実施例1]
トランス体95%含有の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのポリイソシアネートと、長鎖ポリオールとの反応により形成されるポリウレタンである硬度(アスカー)が95A、ガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)が-20℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が80MPa、貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が190℃、引張強度が66MPa、破断伸び680%である、フィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルム(三井化学(株)製)上に、配線幅500μm、配線長さ6.8cmを7本並列(配線間スペース500μm)に配置し、それらの両端にメッシュ電極を接続した配線をソフトブランケットグラビアオフセット印刷機(国立大学法人山形大学有機エレクトロニクス研究センター時任研究室製)によるグラビアオフセット印刷法で印刷した。具体的には、銀ペーストドータイトXA3609(藤倉化成(株)製)をドクターブレードで深さ30μmの凹版上に塗布して、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製のソフトブランケットにステンレス台に真空ポンプで吸引固定されている凹版上の銀ペーストを回転圧着受理し、受理した銀ペーストを30mm/秒の移動速度で別のステンレス台に吸引固定されている上記ポリウレタンの単層フィルム上に回転圧着転写して配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、30分焼成して、配線基板を作製した。配線の高さは、4μmであり、抵抗値は、13.5Ω(比抵抗値 4.0×10-6 Ω・cm)であった。この配線に電極に半田ペーストLT142(千住金属工業(株)製)を両端のメッシュ電極に塗工し、無視できる抵抗値のクリップ付きリード線をマウント後に、130℃でプリヒート10分後、170℃で2分間リフローさせて、徐冷後、配線基板を作製した。
【0097】
その後、リード線を2針抵抗測定計に接続し、半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、それぞれの抵抗値を測定した。それぞれ13.8Ω、13.6Ωであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0098】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0099】
[実施例2]
実施例1で使用した硬度95Aのポリウレタンの単層フィルムに代えてトランス体95%含有の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのポリイソシアネートと、長鎖ポリオールとの反応により形成されるポリウレタンで硬度(アスカー)が86A、ガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)が-45℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が20MPa、貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が156℃、引張強度が33MPa、破断伸び820%である、フィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルム(三井化学(株)製)に実施例1と同様のソフトブランケットグラビアオフセット印刷法で配線幅500μm、配線長さ6.8cmを7本並列(配線間スペース500μm)に配置し、それらの両端にメッシュ電極を接続した配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、30分焼成して、実施例1と同様の方法でクリップ付きリード線を接続した配線基板を作製した。
【0100】
配線の高さは、4μmであり、抵抗値は、17.2Ω(比抵抗 5.1×10-6 Ω・cm)であった。実施例1と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ17.6Ω、16.8Ωであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0101】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0102】
[実施例3]
実施例2で使用したポリウレタンの単層フィルムに代えて、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリイソシアネートと、長鎖ポリオールとの反応により形成されるポリウレタンで硬度(アスカー)が95A、ガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)が5℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が131MPa、貯蔵弾性率が1MPaと温度が170℃、引張強度が68MPa、破断伸び500%である、フィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルム上に、実施例1と同様のソフトブランケットグラビアオフセット印刷法で配線幅500μm、配線長さ6.8cmを7本並列(配線間スペース500μm)に配置し、それらの両端にメッシュ電極を接続した配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、30分焼成して、実施例1と同様の方法でクリップ付きリード線を接続した配線基板を作製した。
【0103】
配線の高さは、4μmであり、抵抗値は、14.5Ω(比抵抗 4.3×10-6 Ω・cm)であった。実施例1と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ14.0Ω、14.3Ωであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0104】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りに多少の違和感があるものの、実用性問題ないとの認識を得た。
【0105】
[実施例4]
実施例3で使用した硬度95Aのポリウレタンの単層フィルムに代えて、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリイソシアネートと、長鎖ポリオールとの反応により形成されるポリウレタンで硬度(アスカー)が87A、ガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)が-25℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が27MPa、貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が166℃、引張強度が36MPa、破断伸び520%である、フィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルム上に、実施例1と同様のソフトブランケットグラビアオフセット印刷法で配線幅500μm、配線長さ6.8cmを7本並列(配線間スペース500μm)に配置し、それらの両端にメッシュ電極を接続した配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、30分焼成して、実施例1と同様の方法でクリップ付きリード線を接続した配線基板を作製した。
【0106】
配線の高さは、5μmであり、抵抗値は、16.8Ω(比抵抗 6.2×10-6 Ω・cm)であった。実施例1と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ16.0Ω、16.3Ωであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0107】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0108】
[実施例5]
実施例1において銀ペーストドータイトXA3609を粘度200mPa・sの銀ペーストNPS-L-MC1(ハリマ化成(株)製)に代えて、実施例1の同様のフィルムをガラス支持基板に置いて固定し、その上にディスペンサー印刷法(武蔵エンジニアリング(株)製)で配線幅100μmかつ直線配線長さ8.0cmの両端に電極を接続した配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、60分焼成して、実施例1と同様の方法でクリップ付きリード線を接続した配線基板を作製した。
【0109】
配線の高さは、10μmであり、抵抗値は、44Ω(比抵抗値 5.5×10-6 Ω・cm)であった。実施例1と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ44Ω、44Ωであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0110】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0111】
[実施例6]
実施例1において銀ペーストドータイトXA3609を粘度70Pa・sの銅ペーストCP-1P(日油(株)製)に代えて、実施例1の硬度95Aのフィルムをガラス支持基板上に置いて耐熱性テープで貼り付け固定し、その上にマイクロテック(株)スクリーン印刷機でのスクリーン印刷法で配線幅250μmかつ400μmスペース間隔で5回並列平行に折り曲げた1本の配線長さ14.2cmの両端に電極を接続した配線を印刷した。このフィルムをそのまま90℃、2分間プレ焼成し、次いで150℃で15分間、本焼成し、実施例1と同様の方法でクリップ付きリード線を接続した配線基板を作製した。
【0112】
配線の高さは、6μmであり、抵抗値は、26.7Ω(比抵抗値 1.1×10-6 Ω・cm)であった。実施例1と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ28Ω、29.4Ωであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。さらに、10日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかったが、その後、徐々に抵抗値は増大する傾向がみられ、30日後は、800kΩまで変化した。しかしながら、配線形成直後の比抵抗値は、最も低い値を示した。
【0113】
[比較例1]
トランス体95%含有の1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのポリイソシアネートと、長鎖ポリオールとの反応により形成されるポリウレタンである硬度(アスカー)が80A、ガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)が-58℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が19MPa、貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃、引張強度が15MPa、破断伸び1000%である、フィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルム上に、実施例1と同様の配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、30分間加熱すると配線基板が大きく変形し、配線基板が作製できなかった。
【0114】
また、変形し配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、べた付き感が強く、違和感を有するとの認識を得た。
【0115】
[比較例2]
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリイソシアネートと、長鎖ポリオールとの反応により形成されるポリウレタンで硬度(アスカー)が80A、ガラス転移温度(tanδピーク温度)が-49℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が25MPa、貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が157℃、引張強度が16MPa、破断伸び600%である、フィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルム上に、実施例3と同様の配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、30分加熱すると比較例1と同様に配線基板が大きく変形し、配線基板が作製できなかった。
【0116】
また、変形し配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、べた付き感が強く、違和感を有するとの認識を得た。
【0117】
[比較例3]
帝人デュポンフィルム(株)製のポリエチレンテレフタレート(PEN)でフィルム厚み50μmのカタログ代表値としての引張強度が270MPa、破断伸び90%であるフィルム上に、実施例1と同様の配線を印刷した。このフィルムをそのまま130℃、30分間焼成して、配線基板を作製した。配線の高さは、4μmであり、抵抗値は、16.2Ω(比抵抗値 4.8×10-6 Ω・cm)であった。この配線に電極に半田ペーストLT142(千住金属工業(株)製)を両端のメッシュ電極に塗工し、無視できる抵抗値のクリップ付きリード線をマウント後に、130℃でプリヒート10分後、170℃で2分間リフローさせて、徐冷後、配線基板を作製した。
【0118】
実施例1と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、抵抗値を測定するとそれぞれ120.8Ω、無限大であり、折り曲げると断線することが分かった。
【0119】
また、変形し配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、感触的に硬い肌触りやゴワゴワ感など違和感を有するとの認識を得た。
【0120】
[比較例4]
比較例3で使用したPENフィルム上に、実施例6の銅ペーストCP-1P(日油(株)製)を使用して実施例6と同様の配線を印刷し、同様に焼成し配線幅250μmの配線形成を3回試みた。しかしながら、いずれもそれらの抵抗値は、無限大であり、配線を形成することができなかった。これらを顕微鏡観察で配線の状態を確認すると、各所に配線断裂を確認することができた。
【0121】
[実施例7]
実施例1における硬度95Aのフィルムを直径5cmの円形に切り出し、スピンコーター上のガラス基板上に、貼り、銀インクNPS-LS(ハリマ化成(株)製)を用いて、スピンコーター回転数1000rpmでフィルム上にインクを3回ドロップ塗工し、縦2.5cm、横2.5cm角に切り出し、平滑な導電性フィルムを作製した。面配線の高さは、1μmであり、対角両端に無視できる抵抗値のクリップ付きリード線を実施例1と同様の方法で接続し、抵抗を測定すると抵抗値は、0.9Ω(比抵抗値 8.5×10-6 Ω・cm)であった。
【0122】
さらに、実施例1と同様に半径0.5mmの円柱棒で、対角に90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ0.9Ω、0.9Ωであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0123】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0124】
[実施例8]
実施例4で使用した硬度(アスカー)が87A、ガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)が-25℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が27MPa、貯蔵弾性率が1MPaである温度が166℃、引張強度が36MPa、破断伸び520%である、フィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルム上に、銀ペーストECA05(セメダイン(株)製)を凸版反転印刷法で次の4つの配線を形成し、各々の配線両端に電極部を設けた配線を印刷した。
(1)配線幅1.8mm、直線配線長さ10.3cmかつ配線高さ13μm、
(2)配線幅1.8mm、直線配線長さ9.6cmかつ配線高さ9μm、
(3)配線幅1.8mm、直線配線長さ9.6cmかつ配線高さ9μm、
(4)配線幅1.8mmかつ直線配線長さ10.0cm
これらのフィルムをPETフィルム上に乗せ100℃、30分焼成して、無視できる抵抗値のクリップ付きリード線を配線の両端に実施例4と同様の方法で接続した配線基板を作製した。
【0125】
それぞれの配線の抵抗値は、(1)10.9Ω(比抵抗ρ0=2.4×10-5 Ω・cm)、(2)13.3Ω(比抵抗ρ0=2.3×10-5 Ω・cm)、(3)13.2Ω(比抵抗ρ0=2.3×10-5 Ω・cm)、(4)11.2Ω(比抵抗ρ0=1.8×10-5 Ω・cm)であった。実施例4と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げても、抵抗値の変化は見られなかった。これら(1)の配線を11.3cm伸長し、(2)の配線を14.4cm伸長し、(3)の配線を16.8cm伸長し、(4)の配線を23.0cm伸長すると、それぞれの抵抗値および比抵抗は(1)は15.3Ω(比抵抗ρ=2.6×10-5 Ω・cm、ρ/ρ0=1.1)、(2)は120Ω(比抵抗ρ=6.1×10-5 Ω・cm、ρ/ρ0=2.7)、(3)は170Ω(比抵抗ρ=5.4×10-5 Ω・cm、ρ/ρ0=2.4)、(4)は855Ω(比抵抗ρ=1.8×10-4 Ω・cm、ρ/ρ0=6.2)であり、ρ/ρ0の関数は0.2484e1.3983×(延伸倍率)であり、その相関係数は0.965であった。図1にこの関係を示す。図1において、本実施例の結果を黒丸でプロットした。延伸後(応力解放後)のこれらの配線の抵抗値は、(1)は11.4Ω、(2)は13.9Ω、(3)は12.2Ω、(4)は10.8Ωであり、伸縮できる配線基板であることが分かった。さらに、延伸後の配線も120日経過後、大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0126】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0127】
[比較例5]
実施例1で使用したポリウレタンの単層フィルムを使用し、実施例8と同様に配線基板を作製し、伸長を試みたが、人の手では伸長できず、機械的に伸長したが配線が伸縮せずに目的の伸縮できる配線基板とならなかった。
【0128】
[実施例9]
実施例8で使用したポリウレタン物性値を有するフィルム厚み100μmかつ3×15cm角のポリウレタンの単層フィルムに代えて、実施例2で使用した硬度(アスカー)が86A、ガラス転移温度(動的粘弾性測定によるtanδピーク温度)が-45℃、動的粘弾性測定で25℃貯蔵弾性率が20MPa、貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が156℃、引張強度が33MPa、破断伸び820%である、ポリウレタンの単層フィルムを使用したこと以外は、実施例8と同様の方法で次の3つの配線を形成し、各々の配線両端に電極部を設けた配線を印刷した。
(1)配線幅1.3mm、直線配線長さ9.5cmかつ配線高さ13μm、
(2)配線幅1.3mm、直線配線長さ9.6cmかつ配線高さ13μm、
(3)配線幅1.3mm、直線配線長さ9.7cmかつ配線高さ13μm
これらを実施例8と同様に焼成して、無視できる抵抗値のクリップ付きリード線を配線の両端に実施例8と同様の方法で接続した配線基板を作製した。
【0129】
それぞれの配線の抵抗値は、(1)は6.9Ω(比抵抗ρ0=1.2×10-5 Ω・cm)、(2)は15.8Ω(比抵抗ρ0=2.8×10-5 Ω・cm)、(3)は14.9Ω(比抵抗ρ0=2.7×10-5 Ω・cm)であった。実施例8と同様に半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げても、抵抗値の変化は見られなかった。これら(1)の配線を10.5cm伸長し、(2)の配線を14.4cm伸長し、(3)の配線を17.5cm伸長するとそれぞれの抵抗値および比抵抗は(1)は11.2Ω(比抵抗ρ=1.5×10-5 Ω・cm、ρ/ρ0=1.2)、(2)は220Ω(比抵抗ρ=1.2×10-4 Ω・cm、ρ/ρ0=4.1)、(3)は835Ω(比抵抗ρ=2.5×10-4 Ω・cm、ρ/ρ0=9.6)であり、ρ/ρ0の関数は0.0573e2.8451×(延伸倍率)であり、その相関係数は0.999であった。図1にこの関係を示す。図1において、本実施例の結果を黒三角でプロットした。延伸後(応力解放後)のこれらの配線の抵抗値は、(1)は7.4Ω、(2)は14.8Ω、(3)は15.2Ωであり、伸縮できる配線基板であることが分かった。さらに、延伸後の配線も120日経過後、大気下、室温でのマイグレーションはなく、抵抗値の変化は見られなかった。
【0130】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0131】
[比較例6]
実施例3で使用したポリウレタンの単層フィルムを使用し、実施例9と同様に配線基板を作製し、伸長を試みたが、人の手では伸長できず、機械的に伸長したが配線が伸縮せずに目的の伸縮できる配線基板とならなかった。
【0132】
[実施例10]
実施例1で使用した硬度(アスカー)が95Aのフィルム厚み100μmかつ10cm角のポリウレタンの単層フィルム(三井化学(株)製)をSUS板上に密着させ、マイクロテック(株)スクリーン印刷機に装着し、ステンレスメッシュ#250のパターンスクリーンを3種類使用しスキージ速度50mm/sec、同圧力0.25MPaで、銀ペーストドータイトXA9521、絶縁膜XB3212、銀ペーストドータイトXA9481(3種類とも藤倉化成(株)製)の順番でカメラ映像によってアライメントを取りながら印刷し、各層を各順番で、150℃、30分、150℃、30分、150℃、60分で焼成することで銀の2層配線を形成し、PEDOT/PSSを温度センサ部に塗布し、130℃で乾燥してNFCアンテナ、AD変換モジュール取付け部、NFC受信器取付け部、コンデンサーまたは増幅器取付け部、抵抗器取付け部、温度センサ部、LED取付け部からなる配線幅0.1mm~2mmの配線構成からなる基板を作製した。
【0133】
図2に、本実施例で作製した基板を示す。バックグラウンドであるSUS板0の上に、ポリウレタン単層フィルム1を密着させ、その上に銀の2層配線を形成した。また、ポリウレタン単層フィルム1上に、NFCアンテナ2、AD変換モジュール取付け部3、NFC受信器取付け部4、コンデンサーまたは増幅器取付け部5、抵抗器取付け部41~57、温度センサ部(PEDOT/PSS)6、LED取付け部7、抵抗測定電極8を形成した。各層の配線の間には、絶縁膜9を配置した。
【0134】
この抵抗測定電極から4針抵抗測定計で測定した抵抗値は43kΩであった。この配線基板を半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ43kΩ、42kΩであり、屈曲前の電気抵抗に対して30%以下であった。したがって、ベンダブルであることが分かった。
【0135】
[実施例11]
実施例10のベンダブル配線に17個の抵抗器、AD変換モジュール、NFC受信器、コンデンサーまたは増幅器、LED発光素子を取付けるために、各取付け部にアライメントされたホールを有するステンレス製のスクリーンをマイクロテック(株)スクリーン印刷機に装着し、上記のベンダブル配線基板に半田ペーストLT142(千住金属工業(株)製)を各部位に塗工し、それぞれの電気部品をマウント後に、130℃でプリヒート10分後、170℃で2分間リフローさせて、徐冷後、温度センサ機能を有するNFC通信機能を有する図3の電子デバイスを作製した。
【0136】
図3に、本実施例で作製した電子デバイスを示す。図2に示した基板に、AD変換モジュール103、NFC受信器104、増幅器105、コンデンサーまたは抵抗器141~157、およびLED発光素子107が取付けられている。
【0137】
このデバイスをGalaxyS7にインストールしたNFC温度測定アプリケーション(国立大学法人山形大学有機エレクトロニクス研究センター時任研究室製)を使用して、室温23℃で電子デバイスを手甲側の指に折り曲げるように、挟んで人体の表皮温度をNFC通信で測定したところ、30.7℃であった。同時に、赤外線レーザ温度計ガン(日置電機(株)製)で同じ部位を測定したところ30.7℃であった。したがって、通信機能を有する温度センサ機能を有するベンダブル電子デバイスであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、正常に作動することが分かった。
【0138】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0139】
[実施例12]
実施例10で使用したポリウレタンの単層フィルムに代えて、実施例2で使用した硬度(アスカー)が86Aの単層フィルムを使用し、銀ペーストドータイトXA9521、絶縁膜XB3212、銀ペーストドータイトXA9481のうちXA9521を実施例8で使用した銀ペーストECA05を使用し、第一層の配線を120℃で焼成したこと以外は、実施例10と同様に配線を形成した基板を作製した。
【0140】
この抵抗測定電極から4針抵抗測定計で測定した抵抗値は45kΩであった。この配線基板を半径0.5mmの円柱棒で90°、180°折り曲げて、同様に抵抗値を測定するとそれぞれ45kΩ、45kΩであった。さらに、この配線基板を対角に引っ張って伸長させた後の抵抗値を測定すると46kΩであり変化することはなかった。したがって、伸縮できる配線基板であることが分かった。
【0141】
[実施例13]
実施例12で作製した伸縮できる配線基板上に、実施例11と同様に温度センサ機能を有するNFC通信機能を有する電子デバイスを作製した。このデバイスを実施例11と同様にNFC温度測定アプリケーションを使用して、室温23℃で電子デバイスを手甲側の指に折り曲げるように、挟んで人体の表皮温度をNFC通信で測定したところ、31.3℃であった。同時に、赤外線レーザ温度計ガンで同じ部位を測定したところ30.7℃であった。したがって、通信機能を有する温度センサ機能を有する伸縮性電子デバイスであることが分かった。さらに、120日経過後も大気下、室温でのマイグレーションはなく、正常に作動することが分かった。
【0142】
また、作製した配線基板を手の甲、腕や首などに装着してもらった5名の被検者にこれら装着感を確認したところ、柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好であるとの認識を得た。
【0143】
本出願は、2018年10月31日出願の日本国出願第2018-204920号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の明細書、特許請求の範囲および図面に記載された内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板、およびそれらによるセンサ機能、近距離無線通信機能を持たせたベンダブルまたは伸縮性電子デバイスは、高い屈曲性と伸縮性を有し、経時で黄変が無く、透明性が高く、ウェルフェア・メディカル用途やウェアラブルデバイス用途やRFID用途やスマートホーン、タブレット端末、コンピューター、ディスプレイ等向けのトランジスタ用途やメディカル、介護ベッド、防犯、育児、自動車自動運転、愛玩ロボット、ドローン等向けのセンサまたは制御部品用途や有機EL、液晶ディスプレイ、照明、自動車、ロボット、電子メガネ、音楽プレイヤー等の電子部品用途に用いることができる。また、人体に対して柔軟でべた付きも無く、肌触りが良好な接触感をもつセンサ機能を有する電子デバイスとして用いることができる。
【符号の説明】
【0145】
0 SUS板
1 ポリウレタン単層フィルム
2 NFCアンテナ
3 AD変換モジュール取付け部
41~57 コンデンサーまたは抵抗器取付け部
6 温度センサ部(PEDOT/PSS)
7 LED取付け部
8 測定電極
9 絶縁膜
103 AD変換モジュール
104 NFC受信器
105 増幅器
141~157 コンデンサーまたは抵抗器
107 LED発光素子
図1
図2
図3