IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 保土谷化学工業株式会社の特許一覧 ▶ エスエフシー カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20231205BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231205BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20231205BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231205BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20231205BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20231205BHJP
   H10K 101/20 20230101ALN20231205BHJP
【FI】
H10K50/844
H05B33/14 B
C09K11/06 690
H05B33/02
H10K50/12
H10K85/60
H10K101:20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020563128
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2019049533
(87)【国際公開番号】W WO2020137724
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2018241387
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊二
(72)【発明者】
【氏名】林 秀一
(72)【発明者】
【氏名】イ セジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンギュ
(72)【発明者】
【氏名】シン ボンギ
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183625(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/027687(WO,A1)
【文献】特開2013-028597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0133844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H10K 50/10
C09K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極およびキャッピング層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記キャッピング層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有し、
前記発光層が、下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)または(2e)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と下記一般式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)または(3b-1)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(式(1)中、Ar Ar のうち一方が無置換のフェニル基であり、他方が構造式(B)を置換基として有するフェニル基であって構造式(B)がベンゼン環のパラ位に結合しており、Ar Ar のうち一方が無置換のフェニル基であり、他方が構造式(B)を置換基として有するフェニル基であって構造式(B)がベンゼン環のパラ位に結合している。nは0~4の整数を表す。
【化2】
(式(B)中、R~R 、Ar は水素原子を表す。Ar結合部位としての連結基を表し、Xは炭素原子または窒素原子を表し、Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれるいずれかを表す。但し、XおよびYが炭素原子である場合、Xが窒素原子かつYが酸素原子である場合、およびXが窒素原子かつYが硫黄原子である場合は除外とする。)
【化3】
(式(2a)、(2b)または(2c)中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表す。式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)または(2e)中、A単結合を表し、Arピリミジン環を有する縮合多環芳香族基を表し、R~Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~R12は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R~R12が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R13とR14は相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【化4】
(式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)または(3b-1)中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表す。A単結合を表し、Arピリミジン環を有する縮合多環芳香族基を表し、R15~R18は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R15~R18が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R19~R22は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R15~R18が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記構造式(B)が下記構造式(B-1)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】
(式(B-1)中、*は式(1)中のAr またはAr との結合部位、または、Ar またはAr との結合部位である。R、R、R、R水素原子を表す。)
【請求項3】
前記構造式(B)が下記構造式(B-3)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化6】
(式(B-3)中、*は式(1)中のAr またはAr との結合部位、または、Ar またはAr との結合部位である。R、R、R、R水素原子を表す。)
【請求項4】
前記構造式(B)が下記構造式(B-5)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化7】
(式(B-5)中、*は式(1)中のAr またはAr との結合部位、または、Ar またはAr との結合部位である。R、R、R、R水素原子を表す。)
【請求項5】
前記一般式(1)において、nが0である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記一般式(1)において、nが1である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記一般式(1)において、nが2である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記キャッピング層の厚さが、30nm~120nmの範囲内である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記キャッピング層の屈折率が、該キャッピング層を透過する光の波長が450nm~750nmの範囲内において、1.85以上である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記発光層が、赤色の発光材料を含有することを特徴とする、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層が、燐光性の発光材料を含有することを特徴とする、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記燐光性の発光材料がイリジウムまたは白金を含む金属錯体である、請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する場合がある。)に関する。
本出願は、2018年12月25日に日本に出願された特願2018-241387に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、自己発光性素子である。また、有機EL素子は、液晶素子に比べて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能である。このことから、有機EL素子は、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは、各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発した。このことにより、彼らは、有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは、電子を輸送できる蛍光体と正孔を輸送できる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させた。このことにより、有機EL素子は、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割は、さらに細分化された。基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設け、底部から発光するボトムエミッション構造の電界発光素子によって、高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)
【0005】
近年、高い仕事関数を持った金属を陽極に用い、上部から発光するトップエミッション構造の発光素子が用いられるようになってきた。画素回路を有する底部から光を取り出すボトムエミッション構造では、発光部の面積が制限されてしまう。これに対して、トップエミッション構造の発光素子では、上部から光を取り出すため、発光部からの光を画素回路が遮ることがない。このため、トップエミッション構造の発光素子は、発光部を広くとれる利点がある。トップエミッション構造の発光素子では、陰極にLiF/Al/Ag(例えば、非特許文献2参照)、Ca/Mg(例えば、非特許文献3参照)、LiF/MgAgなどの半透明電極が用いられる。
【0006】
このような発光素子では、発光層で発光した光が他の膜に入射する場合に、ある角度以上で入射すると、発光層と他の膜との界面で全反射されてしまう。このため、発光した光の一部しか利用できていなかった。近年、光の取り出し効率を向上させるために、屈折率の低い半透明電極の外側に、屈折率の高い「キャッピング層」を設けた発光素子が提案されている(例えば、非特許文献2および3参照)。
【0007】
トップエミッション構造の発光素子におけるキャッピング層の効果は、以下の通り認められた。Ir(ppy)を発光材料に用いた発光素子において、キャッピング層が無い場合は発光効率が38cd/Aであった。これに対し、キャッピング層として膜厚60nmのZnSeを使用した発光素子では、64cd/Aと約1.7倍の効率向上が認められた。また、半透明電極とキャッピング層の透過率の極大点と効率の極大点とは、必ずしも一致しないことが示されている。光の取り出し効率の最大点は、干渉効果によって決められることが示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
従来、キャッピング層の形成には、精細度の高いメタルマスクを用いることが提案されている。しかし、高温条件下での使用では、メタルマスクに熱による歪みが生じるため、位置合わせ精度が低下する問題点があった。ZnSeは、融点が1100℃以上と高い(例えば、非特許文献3参照)。このため、精細度の高いメタルマスクを用いても、ZnSeを蒸着する際にメタルマスクが歪むため、正確な位置に蒸着できず、発光素子そのものにも影響を与える可能性がある。更に、スパッタ法によってZnSeを成膜する場合でも、発光素子に影響を与えてしまう。このことから、無機物は、キャッピング層の構成材料として適していない。
【0009】
その他、屈折率を調整するキャッピング層として、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以下、Alqと省略する)を使用することが提案されている(例えば、非特許文献2参照)。Alqは、緑色発光材料または電子輸送材料として一般的に使用される有機EL材料として知られている。Alqは、青色発光材料に使用される450nm付近に弱い吸収を持つ。このため、Alqをキャッピング層として使用した青色発光素子では、色純度の低下および光の取り出し効率が低下する問題点があった。
【0010】
また、従来のキャッピング層を有する素子では、太陽光の波長400nmから410nmの光が通光し、素子内部の材料に影響を与えるため、色純度および光の取り出し効率が低下する問題点もあった。
【0011】
また、発光効率の更なる向上を目的として、三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献4参照)。
また、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されている。2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって、5.3%の外部量子効率を実現させた(例えば、非特許文献5参照)。
【0012】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物、燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料を、ドープして作製できる。有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率、耐久性などの諸特性に大きな影響を与える(例えば、非特許文献4参照)。
【0013】
また、素子の寿命に関しては、材料の耐熱性およびアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料は、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料は、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため、有機EL素子に使用する材料には、耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質を有することが求められる。
【0014】
有機EL素子の素子特性の改善および素子作製の歩留まり向上のためには、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性および耐久性に優れた材料を組み合わせることが求められる。そして、正孔および電子が高効率で再結合でき、発光効率が高く、駆動電圧が低く、長寿命な有機EL素子が求められている。
【0015】
有機EL素子の素子特性を改善するために、キャッピング層には、特に、太陽光の波長400nmから410nmの光を吸収し、素子内部の材料に影響を与えないことが求められている。また、有機EL素子における光の取り出し効率を大幅に改善するために、キャッピング層の材料として、吸光係数が高く、屈折率が高く、薄膜の安定性および耐久性に優れる材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開平8-048656号公報
【文献】特許第3194657号公報
【文献】国際公開第2014/009310号
【文献】国際公開第2013/038627号
【非特許文献】
【0017】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,78,544(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,82,466(2003)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高輝度で発光効率および電力効率が良好で長寿命の有機EL素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは上記の目的を達成するために、以下に示すように、鋭意研究を行った。
すなわち、アリールアミン系材料を含む薄膜が、安定性および耐久性に優れていることに着目した。そして、屈折率が高く、濃度10-5mol/lの吸収スペクトルにおいて波長400nmから410nmにおける吸光度が高い薄膜を形成できる特定のアリールアミン化合物を、キャッピング層の材料として選択した。また、本発明者らは、縮合環構造を有する複素環化合物を含む発光層を有する有機EL素子の発光効率が優れていることに着目した。そして、発光層の材料として、縮合環構造を有する特定の複素環化合物を選択した。さらに、キャッピング層の材料と発光層の材料とを組み合わせて種々の有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、下記一般式(1)で表されるアリールアミンを含有するキャッピング層と、下記一般式(2)および/または(3)で表される複素環化合物を含有する発光層とを組み合わせることにより、特性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下の有機EL素子が提供される。
【0020】
1)少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極およびキャッピング層をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記キャッピング層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有し、
前記発光層が、下記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と下記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
【化1】
(式(1)中、Ar、Ar、Ar、Arは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基から選ばれるいずれかを表す。nは0~4の整数を表す。ここで、Ar、Ar、Ar、Arの少なくとも1つは、下記構造式(B)または下記構造式(B´)で示される1価基であるか、もしくは、該1価基を置換基として有する。)
【0022】
【化2】
(式(B)中、R~Rは相互に同一でも異なっていてもよく、結合部位としての連結基、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。Ar、Arは相互に同一でも異なっていてもよく、結合部位としての連結基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、もしくは置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、Xは炭素原子または窒素原子を表し、Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれるいずれかを表す。但し、Yが酸素原子、硫黄原子である場合、YはArを有さないものとし、XおよびYが窒素原子である場合、XまたはYはArまたはArを有さないものとし、XおよびYが炭素原子である場合、Xが窒素原子かつYが酸素原子である場合、およびXが窒素原子かつYが硫黄原子である場合は除外とし、R~Rは置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0023】
【化3】
(式(B’)中、R、RおよびR23~R26は相互に同一でも異なっていてもよく、結合部位としての連結基、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。Ar、Arは相互に同一でも異なっていてもよく、結合部位としての連結基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、もしくは置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、Xは炭素原子または窒素原子を表し、Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれるいずれかを表す。但し、Yが酸素原子、硫黄原子である場合、YはArを有さないものとし、XおよびYが窒素原子である場合、XまたはYはArまたはArを有さないものとし、XおよびYが炭素原子である場合、Xが窒素原子かつYが酸素原子である場合、およびXが窒素原子かつYが硫黄原子である場合は除外とし、R、RおよびR23~R26は置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0024】
【化4】
(式(2)中、Aは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、もしくは単結合を表し、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、R~Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~R12は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R~R12が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R13とR14は相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0025】
【化5】
(式(3)中、Aは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、もしくは単結合を表し、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、R15~R18は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R15~R18が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R19~R22は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基であって、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R15~R18が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0026】
2)前記構造式(B)が下記構造式(B-1)で示される1価基である、上記1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
【化6】
(式(B-1)中、*は式(1)中の窒素原子、Ar、Ar、Ar、Arから選ばれるいずれか1つとの結合部位である。R、R、R、Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0028】
3)前記構造式(B)が下記構造式(B-2)で示される1価基である、上記1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
【化7】
(式(B-2)中、*は式(1)中の窒素原子、Ar、Ar、Ar、Arから選ばれるいずれか1つとの結合部位である。R、R、Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、もしくは置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。RとRは置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0030】
4)前記構造式(B)が下記構造式(B-3)で示される1価基である、上記1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
【化8】
(式(B-3)中、*は式(1)中の窒素原子、Ar、Ar、Ar、Arから選ばれるいずれか1つとの結合部位である。R、R、R、Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0032】
5)前記構造式(B)が下記構造式(B-4)で示される1価基である、上記1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0033】
【化9】
(式(B-4)中、*は式(1)中の窒素原子、Ar、Ar、Ar、Arから選ばれるいずれか1つとの結合部位である。R、R、Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、もしくは置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。RとRは置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0034】
6)前記構造式(B)が下記構造式(B-5)で示される1価基である、上記1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0035】
【化10】
(式(B-5)中、*は式(1)中の窒素原子、Ar、Ar、Ar、Arから選ばれるいずれか1つとの結合部位である。R、R、R、Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0036】
7)前記一般式(1)において、Ar、Ar、Ar、Arの少なくとも1つは、前記構造式(B)で示される1価基であるか、もしくは、前記構造式(B)で示される1価基を置換基として有する、上記1)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0037】
8)前記一般式(1)において、nが0である、上記1)~7)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0038】
9)前記一般式(1)において、nが1である、上記1)~7)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0039】
10)前記一般式(1)において、nが2である、上記1)~7)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0040】
11)前記一般式(1)において、Ar、Ar、Ar、Arのいずれか2つが、前記構造式(B)で示される1価基であるか、もしくは、該1価基を置換基として有するものである、上記1)~10)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0041】
12)前記一般式(1)において、ArおよびArが、前記構造式(B)で示される1価基であるか、もしくは、該1価基を置換基として有するものである、上記1)~10)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0042】
13)前記キャッピング層の厚さが、30nm~120nmの範囲内である、上記1)~12)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0043】
14)前記キャッピング層の屈折率が、該キャッピング層を透過する光の波長が450nm~750nmの範囲内において、1.85以上である、上記1)~13)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0044】
15)前記発光層が、赤色の発光材料を含有することを特徴とする、上記1)~14)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0045】
16)前記発光層が、燐光性の発光材料を含有することを特徴とする、上記1)~14)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0046】
17)前記燐光性の発光材料がイリジウムまたは白金を含む金属錯体である、上記16)記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0047】
本発明の有機EL素子は、高輝度で発光効率および電力効率が良好であり、しかも長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本実施形態の有機EL素子の一例を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本実施形態の目的は、高輝度で発光効率および電力効率が高く、長寿命の有機EL素子を提供することである。また、本実施形態の目的は、発光開始電圧が低く、実用駆動電圧が低い有機EL素子を提供することである。
本実施形態の有機EL素子では、上記目的を達成するために、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜状態での安定性、耐久性等に優れた有機EL素子用の各種材料を用いる。特に、太陽光の波長400nmから410nmの光を吸光し、素子内部の材料に影響を与えないように、また光の取出し効率を大幅に改善させるために、キャッピング層として、以下に示す特性を有する材料を用いる。すなわち、吸光係数が高く、青、緑および赤それぞれの波長領域において吸収を持たない材料であって、屈折率が高く、安定性、耐久性および耐光性に優れる薄膜が得られる材料を用いる。さらに、このような特性を有する材料から構成されるキャッピング層を、有機EL素子の発光層を含む各層それぞれの材料の特性が効果的に発現できるように組み合わせた。
【0050】
本実施形態の有機EL素子に適したキャッピング層の材料における物理的な特性としては、(1)吸光係数が高いこと、(2)屈折率が高い薄膜が得られること、(3)蒸着が可能で熱分解しないこと、(4)薄膜状態が安定であること、(5)ガラス転移温度が高いことをあげることができる。
また、本実施形態の有機EL素子に適した物理的な特性としては、(1)400nmから410nmの光を吸収すること、(2)光の取出し効率が高いこと、(3)色純度の低下がないこと、(4)経時変化することなく光を透過すること、(5)発光効率および電力効率が高いこと、(6)発光開始電圧が低いこと、(7)実用駆動電圧が低いこと、特に(8)長寿命であることをあげることができる。
【0051】
「有機EL素子」
本実施形態の有機EL素子の構造としては、例えば、トップエミッション構造の発光素子である場合、ガラス基板上に順次、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極およびキャッピング層が設けられた多層構造が挙げられる。さらに、陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有するもの、正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するもの、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を有するものが挙げられる。
【0052】
図1は、本実施形態の有機EL素子の一例を示した概略断面図である。図1に示す有機EL素子は、ガラス基板1上に、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極8、キャッピング層9が、この順に積層されたトップエミッション構造のものである。図1に示す有機EL素子では、有機層が、正孔輸送層4と発光層5と電子輸送層6とを含む。
【0053】
これらの多層構造においては、有機層を何層か省略あるいは兼ねることが可能である。例えば、正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成、正孔輸送層と電子阻止層を兼ねた構成、正孔阻止層と電子輸送層を兼ねた構成、電子輸送層と電子注入層を兼ねた構成とすることもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることも可能である。例えば、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、キャッピング層を2層積層した構成であってもよい。
【0054】
有機EL素子の各層の膜厚の合計は、200nm~750nm程度が好ましく、350nm~600nm程度がより好ましい。
【0055】
図1に示す有機EL素子におけるキャッピング層9は、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有し、発光層5が、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方を含有する。
図1に示す有機EL素子において、キャッピング層9と発光層5の他の層に使用する材料には特に制限はない。以下、本実施形態の有機EL素子の各層の材料について、具体的に例を挙げて説明するが、各層の材料は、これらに限定されない。
【0056】
「キャッピング層」
本実施形態の有機EL素子において、キャッピング層の膜厚は、例えば、30nm~120nmが好ましく、40nm~80nmであることがより好ましい。キャッピング層の厚さが30nm以上であると、キャッピング層を有することによる効果が顕著となるため好ましい。キャッピング層の厚さが120nm以下であると、キャッピング層の厚みが、有機EL素子の薄膜化に支障を来すことを抑制できるため好ましい。キャッピング層の膜厚が30nm~120nmである場合、良好な光の取り出し効率が得られる。
なお、キャッピング層の膜厚は、発光層に使用する発光材料の種類、キャッピング層以外の有機EL素子の各層の厚さなどに応じて、適宜変更できる。
【0057】
本実施形態の有機EL素子においては、キャッピング層の屈折率が、該キャッピング層を透過する光の波長が450nm~750nmの範囲内において、1.85以上であることが好ましく、1.90以上であることがより好ましい。
キャッピング層の屈折率は、有機EL素子の光の取り出し効率の向上に関する指標となる。
【0058】
キャッピング層の屈折率は、隣接する電極の屈折率よりも大きいことが好ましい。すなわち、キャッピング層によって、有機EL素子における光の取り出し効率は向上する。その効果は、キャッピング層とキャッピング層に接している材料との界面での反射率が大きい方が、光干渉の効果が大きいために有効である。そのため、キャッピング層の屈折率は、隣接する電極の屈折率よりも大きい方が好ましく、波長400nmおよび410nmの光の屈折率が1.70以上あることが好ましく、1.80以上がより好ましく、1.85以上であることが特に好ましい。
【0059】
また、本実施形態の有機EL素子に備えられているキャッピング層は、1層の薄膜のみで形成されたものであってもよいし、材料の異なる2種類以上の薄膜が積層されたものであってもよい。
また、キャッピング層は、1種類の材料のみで形成されたものであってもよいし、2種類以上の材料を混合して含むものであっても良い。
【0060】
本実施形態の有機EL素子のキャッピング層は、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する。
上記アリールアミン化合物は、蒸着法により成膜できる。また、上記アリールアミン化合物は、蒸着法の他に、スピンコート法および/またはインクジェット法などの公知の方法によっても薄膜を形成できる。
【0061】
キャッピング層としては、上記アリールアミン化合物を単独で成膜したものを用いてもよいし、他の材料と共に混合して成膜した単層を使用してもよい。キャッピング層は、上記アリールアミン化合物を単独で成膜した層同士を複数積層した構造、他の材料と共に混合して成膜した層同士を複数積層した構造、または上記アリールアミン化合物を単独で成膜した層と混合して成膜した層とを積層した構造としてもよい。
【0062】
「一般式(1)で表される化合物」
本実施形態の有機EL素子に備えられているキャッピング層は、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有する。
【0063】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、芳香環に-NArArが結合したアリールアミン骨格と、芳香環に-NArArが結合したアリールアミン骨格の二つのアリールアミン骨格を有する化合物である。しかも、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、Ar、Ar、Ar、Arのうち少なくとも1つは、上記構造式(B)または上記構造式(B´)で示される1価基であるか、もしくは、該1価基を置換基として有する。このため、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、波長400nmから410nmの光の吸光度が高いものであり、波長400nmおよび410nmの光を透過させたときの屈折率および消衰係数の高い薄膜を形成できる。したがって、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有するキャッピング層を備える本実施形態の有機EL素子は、高輝度で発光効率および電力効率が良好で長寿命である。
【0064】
一般式(1)において、nは0~4の整数を表し、nは0、1または2であることが好ましく、波長400nmから410nmの光の吸光度がより高く、波長400nmおよび410nmの光を透過させたときの屈折率および消衰係数のより高い薄膜を形成できるため、0または1であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。
【0065】
一般式(1)において、Ar、Ar、Ar、Arの少なくとも1つは、前記構造式(B)または前記構造式(B´)である。もしくは、Ar、Ar、Ar、Arの少なくとも1つは、前記構造式(B)または前記構造式(B´)をその置換基として有する。
【0066】
一般式(1)において、Ar、Ar、Ar、Arの少なくとも1つが前記構造式(B)または前記構造式(B´)であり、かつAr、Ar、Ar、Arの少なくとも1つが前記構造式(B)または前記構造式(B´)をその置換基として有する態様であってもよい。
この場合、Ar、Ar、Ar、Arのいずれか1つが前記構造式(B)または前記構造式(B´)であり、かつ前記構造式(B)または前記構造式(B´)ではないAr、Ar、Ar、Arのいずれか1つが前記構造式(B)または前記構造式(B´)をその置換基として有する態様であることが好ましい。
【0067】
また、Ar、Ar、Ar、Arのいずれか2つが前記構造式(B)または前記構造式(B´)である態様か、Ar、Ar、Ar、Arのいずれか2つが前記構造式(B)または前記構造式(B´)をその置換基として有する態様であってもよい。
また、少なくともArおよびArが前記構造式(B)である態様か、少なくともArおよびArが前記構造式(B)をその置換基として有する態様であってもよい。この場合、Ar、Ar、Ar、ArのうちArおよびArのみが前記構造式(B)または前記構造式(B´)で示される1価基であるか、該1価基を置換基として有することが好ましく、ArおよびArのみが前記構造式(B)をその置換基として有する態様であると、安定性の良好な化合物となるため、より一層好ましい。
【0068】
一般式(1)としては、ArおよびArが前記構造式(B-1)、(B-3)または(B-5)を置換基として有する態様、もしくは、前記構造式(B-2)または(B-4)である態様がより好ましく、Ar、Ar、Ar、ArのうちArおよびArのみが前記構造式(B-1)、(B-3)または(B-5)を置換基として有する態様であることが、特に好ましい。
また、Arが前記構造式(B)であり、Arが前記構造式(B)をその置換基として有する態様であってもよい。
【0069】
一般式(1)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、スピロフルオレニル基およびカルボリニル基などをあげることができる。また、ArとAr、もしくはArとArは置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0070】
一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;アリル基などのアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロフルオレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;ジアリルアミノ基などのジアルケニルアミノ基;アルキル基、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、アラルキル基、芳香族複素環基またはアルケニル基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基のような基をあげることができ、これらの置換基は、さらに前記例示した置換基が置換していてもよい。また、これらの置換基同士は置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0071】
一般式(1)中のAr、Ar、Ar、Arとしては、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、前記構造式(B)、前記構造式(B´)、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、前記構造式(B)、前記構造式(B´)、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基がより好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、前記構造式(B)、前記構造式(B´)、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基が特に好ましい。
【0072】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基および2-ブテニル基などをあげることができ、これらの基同士は置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0073】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0074】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基および2-アダマンチルオキシ基などをあげることができ、これらの基同士は置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0075】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0076】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0077】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0078】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができ、これらの基同士が置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、置換もしくは無置換のアミノ基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0079】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B’)中のR1~RおよびR23~R26で表される、「置換アリールオキシ基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0080】
構造式(B)、(B-2)、(B-4)、(B’)中のAr、Arで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0081】
構造式(B)、(B-2)、(B-4)、(B’)中のAr、Arで表される、「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0082】
構造式(B)、(B-2)、(B-4)、(B’)中のAr、Arとしては、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基がより好ましい。
【0083】
構造式(B)において、R、R、R、R、Ar、Arのうち、いずれか1つのみが連結基であることが好ましく、特に、Arが連結基であるものとすることが好ましい。
構造式(B´)において、R、R、R23~R26、Ar、Arのうち、いずれか1つのみが連結基であることが好ましく、特に、Arが連結基であるものとすることが好ましい。
【0084】
構造式(B)、(B’)において、Xは炭素原子または窒素原子を表し、Yは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を表す。
ここで、Yが酸素原子、もしくは硫黄原子である場合、YはArの連結基、もしくは置換基を有さない(Arが存在しない)ものとする。また、XおよびYが窒素原子である場合、Ar、Arのいずれかひとつが連結基、もしくは置換基である(Ar、Arのいずれかが存在しない)ものとする。また、Xが窒素原子かつYが炭素原子である場合、Ar、Arのいずれかが連結基、もしくは置換基である(Ar、Arのいずれかが存在しない)ものとする。
【0085】
構造式(B)、(B’)において、Xが窒素原子である場合、Yは窒素原子であることが好ましい。この場合において、ArもしくはArの連結基は、Ar、Ar、Ar、Arの炭素原子と結合する(構造式(B)もしくは(B’)が、Ar、Ar、ArもしくはArの置換基となる)のが、化合物の安定性の観点から好ましい。
【0086】
構造式(B)、(B’)において、Xが炭素原子である場合、Yは炭素原子、酸素原子、または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子、または硫黄原子であることがより好ましい。また、Xが炭素原子である場合、ArもしくはArの連結基は、Ar、Ar、Ar、Arの炭素原子と結合する(構造式(B)もしくは(B’)が、Ar、Ar、ArもしくはArの置換基となる)のが、化合物の安定性の観点から好ましい。
構造式(B)、(B’)において、XおよびYが炭素原子である場合、およびXが窒素原子、かつYが酸素原子もしくは硫黄原子である場合は本発明から除かれる。
【0087】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物においては、芳香環に-NArArが結合したアリールアミン骨格と、芳香環に-NArArが結合したアリールアミン骨格とは、異なるものであってもよいし、同じであってもよい。一般式(1)で表されるアリールアミン化合物において、芳香環に-NArArが結合したアリールアミン骨格と、芳香環に-NArArが結合したアリールアミン骨格とが同じである場合、合成が容易であり、しかも安定性の良好な化合物となるため、好ましい。
【0088】
また、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物としては、ArArのうち一方と、ArArのうち一方とが、無置換のフェニル基であることが好ましい。
さらに、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物としては、ArArのうち一方と、ArArのうち一方とが、構造式(B)を置換基として有するフェニル基であることが好ましい。この場合、構造式(B)の有するR、R、R、R、Arは水素原子であることが好ましい。特に、構造式(B)がベンゼン環のパラ位に結合していることが好ましい。このようなアリールアミン化合物は、波長400nmから410nmの光の吸光度が高く、波長400nmおよび410nmの光を透過させたときの屈折率および消衰係数のより高い薄膜を形成できるため、好ましい。
【0089】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記式(1)で表されるアリールアミン化合物の中で、好ましい化合物の具体例として、式(1-1)~(1-56)で表される化合物を以下に示す。なお、一般式(1)で表される化合物は、式(1-1)~(1-56)で表される化合物に限定されるものではない。
【0090】
【化11】
【0091】
【化12】
(式(1-16)中、Dは重水素である。)
【0092】
【化13】
【0093】
【化14】
【0094】
【化15】
【0095】
【化16】
【0096】
【化17】
【0097】
キャッピング層の材料としては、式(1-1)~(1-56)で示される化合物の中でも、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物から選ばれるいずれか1種または2種以上を用いることが好ましい。
これらの化合物は、波長400nmから410nmの光の吸光度が高く、波長400nmおよび410nmの光を透過させたときの屈折率および消衰係数が高い薄膜を形成できる。しかも、これらの化合物は、縮合環構造を有する特定の複素環化合物を含む発光層を備える有機EL素子のキャッピング層の材料として好ましく使用できる。具体的には、このような有機EL素子は、高輝度で発光効率および電力効率が良好で長寿命のものとなる。
【0098】
一般式(1)で表される化合物としては、ガラス転移点(Tg)が、100℃以上であるものが好ましく、120℃以上であるものがより好ましい。化合物のガラス転移点(Tg)は、薄膜状態の安定性の指標となる。化合物のガラス転移点(Tg)が100℃以上であると、安定性の良好な薄膜を形成できるため、キャッピング層の材料として好ましい。安定性の良好なキャッピング層を備える有機EL素子は、寿命が長く、好ましい。
【0099】
本実施形態における一般式(1)で表される化合物のガラス転移点(Tg)は、化合物の粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定して得たものである。
【0100】
一般式(1)で表される化合物としては、濃度10-5mol/Lでの波長400nm~410nmにおける吸光度が0.2~1.0であるものが好ましく、波長400nmにおける吸光度が0.5~0.9であるものがより好ましい。波長400nm~410nmにおける吸光度が0.2以上である化合物を含むキャッピング層は、波長400nmおよび410nmの光を吸収する機能が良好である。したがって、上記吸光度が0.2以上である化合物を含むキャッピング層を備える有機EL素子は、耐光性が良好で寿命の長いものとなる。
【0101】
一般式(1)で表される化合物の吸光度は、トルエン溶媒で濃度10-5mol/Lに調節し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製、V -650)を用いて測定したものである。
【0102】
一般式(1)で表される化合物としては、吸光係数が60000~100000の範囲であるものが好ましい。化合物の吸光係数が上記範囲であると、光を吸収する機能の良好な薄膜を形成できるため、キャッピング層の材料として好ましい。
【0103】
一般式(1)で表される化合物の吸光係数は、以下に示す方法により求めた。まず、トルエン溶液で、5.0×10-6mol/L、1.0×10-5mol/L、1.5×10-5mol/L、2.0×10-5mol/Lの4種類の濃度に調節した化合物のサンプルを作成する。次に、各サンプルのピーク波長における吸光度を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製、V-650)を用いて測定する。その結果を用いて検量線を作成し、化合物の吸光係数を算出する。
【0104】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、例えば、それ自体公知の手法により合成できる(例えば、非特許文献5参照)。
合成した一般式(1)で表される化合物の同定は、核磁気共鳴(NMR)分析にて行なうことができる。
【0105】
一般式(1)で表される化合物は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶または晶析法、昇華精製法などによって精製してから用いることが好ましい。
【0106】
「陽極」
本実施形態の有機EL素子では、ガラス基板上に陽極が設けられている。陽極の材料としては、ITO(酸化インジウムスズ)、金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。
陽極の製造方法としては、蒸着法など、公知の方法を用いることができる。
【0107】
「有機層」
本実施形態では、有機層として、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層が、この順で積層されたものを有する場合を例に挙げて説明する。
【0108】
(正孔注入層)
本実施形態の有機EL素子の正孔注入層の材料としては、分子中にトリフェニルアミン構造を3個以上、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、例えば、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料や銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料を用いることができる。
【0109】
正孔注入層としては、これらの材料を単独で成膜したものを用いてもよいし、2種以上の材料を混合して成膜した単層を使用してもよい。正孔注入層は、上記の材料を単独で成膜した層同士を複数積層した構造、他の材料と共に混合して成膜した層同士を複数積層した構造、または単独で成膜した層と混合して成膜した層とを積層した構造としてもよい。
これらの材料は、蒸着法によって薄膜形成を行ってもよいし、蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行ってもよい。
【0110】
(正孔輸送層)
本実施形態の有機EL素子の正孔輸送層の材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(以後、TPDと略称する)やN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(以後、NPDと略称する)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(以後、TAPCと略称する)などを用いることが好ましい。正孔輸送層の材料としては、特に分子中にトリフェニルアミン構造を2個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、例えば、N、N、N’、N’-テトラビフェニリルベンジジンなどを用いるのが好ましい。また、正孔輸送層の材料としては、分子中にトリフェニルアミン構造を3個以上、単結合、またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、例えば、種々のトリフェニルアミン3量体および4量体などを用いるのが好ましい。
【0111】
正孔輸送層としては、これらの材料を単独で成膜したものを用いても良いし、2種以上の材料を混合して成膜した単層を使用しても良い。正孔輸送層は、上記の材料を単独で成膜した層同士を複数積層した構造、他の材料と共に混合して成膜した層同士を複数積層した構造、または単独で成膜した層と混合して成膜した層とを積層した構造としてもよい。
これらの材料は蒸着法によって薄膜形成を行ってもよいし、蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行ってもよい。
【0112】
また、正孔注入層および正孔輸送層の材料としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(以後、PEDOTと略称する)/ポリ(スチレンスルフォネート)(以後、PSSと略称する)などの塗布型の高分子材料を用いてもよい。
【0113】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献3参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いてもよい。
【0114】
(電子阻止層)
本実施形態の有機EL素子の電子阻止層の材料としては、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルーフェニル)アダマンタン(以後、Ad-Czと略称する)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。
【0115】
電子阻止層としては、これらの材料を単独で成膜したものを用いても良いし、2種類以上の材料を混合して成膜した単層を使用しても良い。電子阻止層は、上記の材料を単独で成膜した層同士を複数積層した構造、他の材料と共に混合して成膜した層同士を複数積層した構造、または単独で成膜した層と混合して成膜した層とを積層した構造としてもよい。
これらの材料は蒸着法によって薄膜形成を行ってもよいし、蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行ってもよい。
【0116】
(発光層)
本実施形態の有機EL素子において、発光層は、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方含有する。
【0117】
本実施形態における前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物および前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物は、有機EL素子の発光層の構成材料として使用できる。式(2)および式(3)で表される化合物は、発光層のホスト材料、特に燐光性の発光材料を含有する発光層のホスト材料として、好ましい化合物である。具体的には、発光層の構成材料として、式(2)および式(3)で表される化合物を用いた有機EL素子は、従来の材料を用いた場合と比べて発光効率に優れる。
式(2)および式(3)で表される化合物は、高い発光効率が得られるように、式(2)におけるA(式(3)におけるA)が単結合であって、式(2)におけるAr(式(3)におけるAr)がピリジン環またはピリミジン環を有することが好ましく、式(2)におけるA(式(3)におけるA)が単結合であって、式(2)におけるAr(式(3)におけるAr)がピリミジン環を有することがより好ましい。
【0118】
本実施形態の有機EL素子の発光層は、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方と共に、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体などの各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを含有してもよい。
【0119】
また、発光層は、ホスト材料とドーパント材料とで構成しても良い。
本実施形態の有機EL素子の発光層としては、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方をホスト材料として用いることが好ましい。ホスト材料としては、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方と共に、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。
またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン、ピレン、およびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、インデノフェナントレン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。
【0120】
また、発光材料として燐光発光材料を含有することが好ましい。燐光発光材料としては、イリジウムまたは白金を含む金属錯体などを使用できる。例えば、Ir(ppy)などの緑色の燐光発光材料、ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジルフェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)(FIrpic)、ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナート)-テトラキス(1-ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)(FIr6)などの青色の燐光発光材料、ビス(2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル-ピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム(III)(BtpIr(acac))、後述する式(EMD-1)で示される化合物などの赤色の燐光発光材料などを用いることができる。
【0121】
燐光発光材料の含有量は、濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲とすることが好ましい。
【0122】
このときのホスト材料としては、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方と共に、正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)、TCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体を用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)、2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(以後、TPBIと略称する)などを用いることができ、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0123】
また、発光材料として、2-ビフェニル-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(PIC-TRZ)、2,4-ビス(f3-(9H-カルバゾール-9-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(CC2TA)、2,4,6-トリ(4-(10H-フェノキサジン-10H-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(PXZ-TRZ)、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)、カルバゾリルジシアノベンゼン(CDCB)誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である(例えば、非特許文献5参照)。
【0124】
発光層としては、これらの材料を単独で成膜したものを用いてもよいし、2種類以上の材料を混合して成膜した単層を使用してもよい。発光層は、上記の材料を単独で成膜した層同士を複数積層した構造、他の材料と共に混合して成膜した層同士を複数積層した構造、または単独で成膜した層と混合して成膜した層とを積層した構造としてもよい。
【0125】
これらの発光材料は、蒸着法によって薄膜形成を行ってもよいし、蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行ってもよい。燐光発光材料のホスト材料へのドープは、共蒸着によって行うことが好ましい。
【0126】
「一般式(2)で表される化合物」
一般式(2)表される縮合環構造を有する複素環化合物は、インドール骨格の5員環にインダン骨格が結合した化合物である。また、インドール骨格の有する窒素原子に結合したAは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、もしくは単結合を表し、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。このため、一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物を含有する発光層を備える本実施形態の有機EL素子は、発光効率が優れている。
【0127】
一般式(2)中のAで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」における「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族」の「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」としては、具体的に、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラキスフェニル、スチレン、ナフタレン、アントラセン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、インダン、ピレン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドリン、カルバゾール、カルボリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフチリジン、フェナントロリン、アクリジンなどをあげることができる。
【0128】
そして、一般式(2)中のAで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」は、上記「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」から水素原子を2個取り除いてできる2価基を表す。
【0129】
また、これらの2価基は置換基を有していてよく、置換基としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基のような基をあげることができ、これらの置換基は、さらに前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0130】
一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
【0131】
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のAで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0132】
一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R12)とこれらの基(R~R12)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、モノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0133】
一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基または芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0134】
一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R12)とこれらの基(R~R12)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、モノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0135】
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0136】
一般式(2)中のR~R12で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R12)とこれらの基(R~R12)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、モノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0137】
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のAで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0138】
一般式(2)中のR~R12で表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R12)とこれらの基(R~R12)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、モノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0139】
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のAで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0140】
一般式(2)中のR~R12で表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のAで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0141】
一般式(2)中のR~R12で表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」は、これらの基(R~R12)同士が、これらの基(R~R12)が有する「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」を介しつつ、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R12)とこれらの基(R~R12)が直接結合しているベンゼン環とで、これらの基(R~R12)が有する「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」を介しつつ、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、モノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0142】
一般式(2)中のR13、R14で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」おける「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0143】
一般式(2)中のR13、R14で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のAで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0144】
一般式(2)中の連結基としては、「モノアリールアミノ基」などが用いられる。「モノアリールアミノ基」における「アリール基」としては、一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のAで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0145】
一般式(2)中のAとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」、もしくは単結合が好ましく、ベンゼン、ビフェニル、またはナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、もしくは単結合がより好ましく、ベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、もしく単結合が特に好ましい。
【0146】
一般式(2)中のArとしては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、もしくは「芳香族複素環基」が好ましく、「芳香族複素環基」の中では、トリアジニル基、キナゾリニル基、ナフトピリミジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、ナフチリジニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基が特に好ましい。
【0147】
一般式(2)において、R~Rの隣り合うふたつが「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、隣り合うふたつの基(R~R)が単結合を介して互いに結合して、R~Rが結合しているベンゼン環と共に縮合環を形成する態様が好ましい。
この場合の「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、ビニル基、フェニル基が好ましく、R~Rが結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、フェナントレン環もしくはトリフェニレン環を形成する態様が好ましい。
【0148】
一般式(2)において、R~Rのいずれかひとつが「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成する態様が好ましい。
この場合の「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、フェニル基、インデニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基が好ましく、R~Rが結合しているベンゼン環と共にフルオレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インデノインドール環、インデノベンゾフラン環、インデノベンゾチオフェン環、ベンゾフロインドール環、ベンゾチエノインドール環、インドロインドール環を形成する態様が好ましい。
【0149】
以上のように、一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物の中で、R~Rがこれらの基同士で互いに結合して環を形成する態様、または、R~RとR~Rが結合しているベンゼン環とが、互いに結合して環を形成する態様として、下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)もしくは(2e)で表される態様が好ましく用いられる。
【0150】
【化18】
(式(2a)、(2b)、(2c)中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表す。式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)もしくは(2e)中、A、Ar、R~R12、R13、R14は、それぞれ前記一般式(2)で示した通りの意味を表す。)
【0151】
一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)もしくは(2e)で示される複素環化合物の中でも、一般式(2a)で示される複素環化合物が好ましい。一般式(2a)で示される複素環化合物におけるXは、硫黄原子であることがより好ましい。
【0152】
一般式(2)において、R~R12の隣り合うふたつ、もしくはすべてがビニル基であって、隣り合うふたつのビニル基が単結合を介して互いに結合して縮合環を形成する態様が好ましい。すなわち、R~R12が結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、もしくはフェナントレン環を形成する態様も好ましい。
一般式(2)中のR13、R14としては、「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0153】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物の中で、好ましい化合物の具体例として、式(2-1)~(2-15)で表される化合物を以下に示す。式(2-1)~(2-7)(2-8)~(2-15)で表される化合物はいずれも、一般式(2)におけるAが単結合であり、Arがピリミジン環を有する縮合多環芳香族である。
なお、一般式(2)で表される化合物は、式(2-1)~(2-15)で表される化合物に限定されるものではない。
【0154】
【化19】
【0155】
【化20】
【0156】
一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物は、例えば、それ自体公知の方法に準じて合成できる(例えば、特許文献3参照)。
【0157】
「一般式(3)で表される化合物」
一般式(3)表される縮合環構造を有する複素環化合物は、カルバゾール骨格を有し、カルバゾール骨格の窒素原子に結合したAは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、もしくは単結合を表し、Arは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。このため、一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物を含有する発光層を備える本実施形態の有機EL素子は、発光効率が優れている。
【0158】
一般式(3)中のAで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」としては、一般式(2)中のAで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0159】
一般式(3)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」としては、一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0160】
一般式(3)中のR15~R22で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0161】
一般式(3)中のR15~R22で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、一般式(2)中のR~R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0162】
一般式(3)中のR15~R22で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」としては、一般式(2)中のR~R12で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0163】
一般式(3)中のR15~R22で表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」としては、一般式(2)中のR~R12で表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0164】
一般式(3)中のR15~R22で表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」としては、一般式(2)中のR~R12で表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0165】
一般式(3)中の連結基としては、「モノアリールアミノ基」などが用いられる。「モノアリールアミノ基」における「アリール基」としては、一般式(2)中の連結基「モノアリールアミノ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0166】
一般式(3)中のAとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」、もしくは単結合が好ましく、ベンゼン、ビフェニル、またはナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、もしくは単結合がより好ましく、ベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、もしくは単結合が特に好ましい。
【0167】
一般式(3)中のArとしては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、もしくは「芳香族複素環基」が好ましく、「芳香族複素環基」の中では、トリアジニル基、キナゾリニル基、ナフトピリミジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、ナフチリジニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基が特に好ましい。
【0168】
一般式(3)において、R15~R18の隣り合うふたつが「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、隣り合うふたつの基(R15~R18)が単結合を介して互いに結合して、R15~R18が結合しているベンゼン環と共に縮合環を形成する態様が好ましい。
この場合の「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、ビニル基、フェニル基が好ましく、R15~R18が結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、フェナントレン環もしくはトリフェニレン環を形成する態様が好ましい。
【0169】
一般式(3)において、R15~R18のいずれかひとつが「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、R15~R18が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成する態様が好ましい。
この場合の「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、フェニル基、インデニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基が好ましく、R15~R18が結合しているベンゼン環と共にフルオレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インデノインドール環、インデノベンゾフラン環、インデノベンゾチオフェン環、ベンゾフロインドール環、ベンゾチエノインドール環、インドロインドール環を形成する態様が好ましい。
【0170】
以上のように、R15~R18とR15~R18が結合しているベンゼン環とが、互いに結合して環を形成する態様として、下記一般式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)もしくは(3b-1)で表される態様が好ましい。
【0171】
【化21】
(式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)もしくは(3b-1)中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、A、Ar、R15~R22は、それぞれ前記一般式(3)で示した通りの意味を表す。)
【0172】
一般式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)もしくは(3b-1)で示される複素環化合物の中でも一般式(3a-2)で示される複素環化合物が好ましい。一般式(3a-2)で示される複素環化合物におけるXは、硫黄原子であることがより好ましい。
【0173】
一般式(3)において、R19~R22の隣り合うふたつ、もしくはすべてがビニル基であって、隣り合うふたつのビニル基が単結合を介して互いに結合して縮合環を形成する態様が好ましい。すなわち、R19~R22が結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、もしくはフェナントレン環を形成する態様も好ましい。
【0174】
一般式(3)において、R19~R22のいずれかひとつが「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」である態様も好ましい。この場合、R19~R22のいずれかひとつが、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、もしくはジベンゾチエニル基から選ばれる基であることが好ましく、R20がフルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、もしくはジベンゾチエニル基であって、R19、R21およびR22が水素原子であることがより好ましい。
【0175】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物の中で、好ましい化合物の具体例として、式(3-1)~(3-23)で表される化合物を以下に示す。式(3-1)~(3-3)(3-6)~(3-14)(3-16)~(3-20)で表される化合物はいずれも、一般式(3)におけるAが単結合であり、Arがピリミジン環を有する縮合多環芳香族である。
なお、一般式(3)で表される化合物は、式(3-1)~(3-23)で表される化合物に限定されるものではない。
【0176】
【化22】
(式(3-3)中、Dは重水素である。)
【0177】
【化23】
【0178】
【化24】
【0179】
一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物は、例えば、それ自体公知の方法に準じて合成できる(例えば、特許文献3参照)。
【0180】
(正孔阻止層)
本実施形態の有機EL素子の正孔阻止層の材料としては、バソクプロイン(以後、BCPと省略する)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(以後、BAlqと省略する)などのキノリノール誘導体の金属錯体、各種の希土類錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。
【0181】
正孔阻止層としては、これらの材料を単独で成膜したものを用いても良いし、2種類以上の材料を混合して成膜した単層を使用しても良い。正孔阻止層は、上記の材料を単独で成膜した層同士を複数積層した構造、他の材料と共に混合して成膜した層同士を複数積層した構造、または単独で成膜した層と混合して成膜した層とを積層した構造としてもよい。
これらの材料は蒸着法によって薄膜形成を行ってもよいし、蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行ってもよい。
【0182】
(電子輸送層)
本実施形態の有機EL素子の電子輸送層の材料としては、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。
【0183】
電子輸送層としては、これらの材料を単独で成膜したものを用いても良いし、2種類以上の材料を混合して成膜した単層を使用しても良い。電子輸送層は、上記の材料を単独で成膜した層同士を複数積層した構造、他の材料と共に混合して成膜した層同士を複数積層した構造、または単独で成膜した層と混合して成膜した層とを積層した構造としてもよい。
これらの材料は蒸着法によって薄膜形成を行ってもよいし、蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行ってもよい。
【0184】
(電子注入層)
本実施形態の有機EL素子の電子注入層の材料としては、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、リチウムキノリノールなどのキノリノール誘導体の金属錯体、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、あるいはイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)などの金属などを用いることができる。
電子注入層は、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略できる。
【0185】
さらに、電子注入層あるいは電子輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
電子注入層の製造方法としては、蒸着法など、公知の方法を用いることができる。
【0186】
「陰極」
本実施形態の有機EL素子の陰極の材料としては、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムカルシウム合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金やITO、酸化インジウムと酸化亜鉛からなる透明電極材料(IZO)などが用いられる。
【0187】
本実施形態の有機EL素子では、キャッピング層に接して陰極が配置される。したがって、陰極は、光の取り出し効率が高い有機EL素子とするために、透明または半透明であることが好ましい。
陰極の製造方法としては、蒸着法など、公知の方法を用いることができる。
【0188】
本実施形態の有機EL素子は、トップエミッション構造であって、透明または半透明電極の外側に、半透明電極よりも屈折率の高いキャッピング層を有する。このことにより、本実施形態の有機EL素子では、光の取り出し効率を大幅に向上できる。また、キャッピング層に、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を使用することによって、400℃以下の温度で成膜できる。よって、発光素子にダメージを与えることなく、また、高精細マスクを用いて各色の光の取り出し効率を最適化したキャッピング層を形成できる。したがって、本実施形態の有機EL素子は、フルカラーディスプレイに好適に適用でき、色純度が良く鮮明で明るい画像を表示できる。
【0189】
本実施形態の有機EL素子は、キャッピング層の材料として、吸光係数が高く、屈折率が高く、薄膜の安定性および耐久性、耐光性に優れた有機EL素子用の材料を用いている。このため、本実施形態の有機EL素子は、従来の有機EL素子に比べて、太陽光の影響を受けず、色純度を保持し、光の取り出し効率を大幅に向上できる。
更に、本実施形態の有機EL素子は、キャッピング層が式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有し、発光層が式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物のいずれか一方または両方を含有するため、高効率、長寿命の有機EL素子を実現することが可能となった。
【0190】
なお、上記では、トップエミッション構造の有機EL素子について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、ボトムエミッション構造の有機EL素子、および、上部および底部の両方から発光するデュアルエミッション構造の有機EL素子についても、同様に適用できる。これらの構造の有機EL素子の場合、光が発光素子から外部に取り出される方向にある電極は、透明または半透明であることが好ましい。
【0191】
「有機EL素子の製造方法」
図1に示す本実施形態の有機EL素子の製造方法は、陰極8と陽極2との間に発光層5を含む有機層を形成する工程と、陰極8の有機層と反対側の面にキャッピング層9を積層する工程とを有する。
本実施形態では、有機層を形成する工程において、式(2)と式(3)で表される化合物のいずれか一方または両方を含有する材料を用いて発光層5を形成する。発光層5を積層する方法としては、蒸着法を用いることが好ましい。
また、本実施形態では、キャッピング層9を、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を用いて形成する。キャッピング層9を積層する方法としては、厚みがナノ単位の薄膜を量産するのに適した方法であるため、蒸着法を用いることが好ましい。
【0192】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明する。本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0193】
「実施例1」
<N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-1))の合成>
【0194】
窒素置換した反応容器に、2-(4-ブロモフェニル)-2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール4.2g、N,N’-ジフェニルベンジジン2.3g、tert-ブトキシナトリウム2.0g、トルエン50mlを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。酢酸パラジウム62.0mg、トリ-tert-ブチルホスフィン0.2mlを加えて加熱し、91℃で5時間攪拌した。室温まで冷却した後、トルエン50mlを加え、抽出操作を行うことによって有機層を採取した。有機層を濃縮した後、カラムクロマトグラフ(担体:NHシリカゲル)、溶離液:トルエン/n-ヘキサン)によって精製した。精製後、さらにn-ヘキサン100mlを用いた分散洗浄を行うことによって、N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-1))の黄色粉体3.3g(収率66%)を得た。
【0195】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(THF-d)で以下の34個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.26(4H)、7.89(4H)、7.60(4H)、7.39(4H)、7.33(4H)、7.24(4H)、7.21(8H)、7.10(2H)。
【0196】
【化25】
【0197】
「実施例2」
<N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-2))の合成>
【0198】
窒素置換した反応容器に、4,4’’-ジヨード-1,1’:4’,1’’-ターフェニル14.0g、{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミン18.3g、炭酸カリウム13.2g、銅粉0.3g、亜硫酸水素ナトリウム0.9g、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸0.7g、ドデシルベンゼン30mlを加えて加熱し、210℃で44時間撹拌した。室温まで放冷した後、トルエン50mlを加え、析出物をろ過によって採取した。析出物に1,2-ジクロロベンゼン230mlを加え、加熱することによって溶解し、熱時ろ過によって不溶物を除去した。ろ液を濃縮し、1,2-ジクロロベンゼンを用いた晶析精製を行った後、メタノールを用いた分散洗浄を行うことによって、N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-2))の黄色粉体22.2g(収率96%)を得た。
【0199】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の38個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.24(4H)、7.99-7.92(4H)、7.72-7.58(7H)、7.50-7.12(23H)。
【0200】
【化26】
【0201】
「実施例3」
<N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-22))の合成>
【0202】
実施例2において、{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミンに代えて、{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミンを用い、同様の条件で反応を行うことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-22))の黄色粉体12.4g(収率47%)を得た。
【0203】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の38個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.13(4H)、7.80-7.55(11H)、7.50-7.16(23H)。
【0204】
【化27】
【0205】
「実施例4」
<N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-23))の合成>
【0206】
実施例1において、2-(4-ブロモフェニル)-2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾールに代えて、2-(4-ブロモフェニル)-ベンゾオキサゾールを用い、同様の条件で反応を行うことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-23))の淡黄色粉体8.8g(収率54%)を得た。
【0207】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の34個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.12(4H)、7.80-7.72(2H)、7.60-7.53(5H)、7.41-7.14(23H)。
【0208】
【化28】
【0209】
「実施例5」
<N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-25))の合成>
【0210】
実施例1において、2-(4-ブロモフェニル)-2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾールに代えて、2-(4-ブロモフェニル)-ベンゾチアゾールを用い、同様の条件で反応を行うことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-25))の淡黄色粉体9.3g(収率62%)を得た。
【0211】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の34個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.10-7.88(8H)、7.60-7.13(26H)。
【0212】
【化29】
【0213】
「実施例6」
<N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-27))の合成>
【0214】
窒素置換した反応容器に、N-{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミン9.3g、4,4’’-ジヨード-1,1’:4’,1’’-ターフェニル7.1g、tert-ブトキシナトリウム4.6g、トルエン140mlを加え、30分間超音波を照射しながら窒素を通気した。酢酸パラジウム0.20g、tert-ブチルホスフィンの50%(v/v)トルエン溶液0.5gを加えて加熱し、攪拌しながら3時間加熱還流した。室温まで冷却し、ろ過によって析出物を採取した後、1,2-ジクロロベンゼン/メタノールの混合溶媒を用いた晶析精製を繰り返すことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-27))の緑色粉体7.0g(収率58%)を得た。
【0215】
得られた緑色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の38個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.05(2H)、7.98(4H)、7.90(2H)、7.70(4H)、7.61(4H)、7.50(2H)、7.42-7.31(6H)、7.30-7.11(14H)。
【0216】
【化30】
【0217】
(化合物の融点およびガラス転移点(Tg)の測定)
実施例1~実施例6において合成した式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物について、それぞれ高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)を用いて、ガラス転移点(Tg)を測定した。その結果を以下に示す。
【0218】
実施例1(式(1-1)の化合物) Tg;125℃
実施例2(式(1-2)の化合物) Tg;135℃
実施例3(式(1-22)の化合物) Tg;137℃
実施例4(式(1-23)の化合物) Tg;128℃
実施例5(式(1-25)の化合物) Tg;127℃
実施例6(式(1-27)の化合物) Tg;137℃
【0219】
実施例1~実施例6において合成した式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物は、いずれもガラス転移点(Tg)が120℃以上であり、安定性の良好な薄膜を形成できる材料であることが分かった。
【0220】
(薄膜の屈折率および消衰係数の測定)
実施例1~実施例6において合成した式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物をそれぞれ用いて、シリコン基板上に膜厚80nmの蒸着膜を作製した。
得られた蒸着膜について、それぞれ、分光測定装置(フィルメトリクス社製、F10-RT-UV)を用いて、波長400nm、410nm、450nm、750nmの光を、それぞれキャッピング層に透過させて、シリコン基板に反射させて得た反射光を測定した。その結果を用いて、キャッピング層の波長400nm、410nm、450nm、750nmにおける屈折率nと、波長400nm、410nmにおける消衰係数kとを求めた。その結果を表1に示す。
【0221】
比較のために、下記式(4-1)で示される化合物および下記式(4-2)で示される化合物をそれぞれ用いて、シリコン基板上に膜厚80nmの蒸着膜を作製し、式(1-1)で示される化合物の蒸着膜と同様にして、キャッピング層の波長400nm、410nm、450nm、750nmにおける屈折率nと、波長400nm、410nmにおけるの消衰係数kとを求めた(例えば、特許文献4参照)。その結果を表1にまとめて示した。
【0222】
【化31】
【0223】
【表1】
【0224】
表1に示すように、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物からなる薄膜は、屈折率nが、式(4-1)(4-2)で示される化合物からなる薄膜と同等以上であった。
このことから、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物からなる薄膜をキャッピング層として用いることにより、有機EL素子における光の取出し効率の向上が期待できる。
【0225】
また、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物からなる薄膜は、消衰係数kが0.3以上であり、式(4-1)(4-2)で示される化合物からなる薄膜と比較して、消衰係数kが高いものであった。
このことは、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物からなる薄膜を用いたキャッピング層が、太陽光の波長400nmから410nmの光をよく吸光し、素子内部の材料に影響を与えないことを示すものである。
【0226】
(化合物のピーク波長、吸光度および吸光係数の測定)
実施例1~実施例6において合成した式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物について、それぞれトルエン溶媒で濃度10-5mol/Lに調節し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製、V-650)を用いて、波長200~600nmの範囲における吸光度を測定し、ピーク波長を求めた。その結果を表2に示す。
【0227】
また、実施例1~実施例6において合成した式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物について、それぞれトルエン溶媒で濃度10-5mol/Lに調節し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製、V-650)を用いて、波長400nmおよび410nmにおける吸光度を測定した。その結果を表2に示す。
【0228】
また、実施例1~実施例6において合成した式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物について、それぞれトルエン溶液で5.0×10-6mol/L、1.0×10-5mol/L、1.5×10-5mol/L、2.0×10-5mol/Lの4種類の濃度に調節したサンプルを作成した。各サンプルのピーク波長における吸光度を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製、V-650)を用いて測定し、化合物毎に検量線を作成し、吸光係数を算出した。その結果を表2に示す。
【0229】
比較のために、上記式(4-2)で示される化合物を用いて、式(1-1)で示される化合物と同様にして、ピーク波長、吸光度および吸光係数を測定した。
その結果を表2にまとめて示した。
【0230】
【表2】
【0231】
表2に示すように、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物のピーク波長は、式(4-2)で示される化合物と同様に、400nm以下であった。このことから、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物は、青、緑および赤それぞれの波長領域における光を吸収しにくく、かつ波長400nmおよび410nmの光を吸収する薄膜の材料として使用できることが分かった。
【0232】
表2に示すように、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物は、式(4-2)で示される化合物と比較して、吸光度の高いものであった。具体的には、波長400nmおよび410nmでの吸光度が、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物は、0.2以上の大きな値であるのに対し、比較化合物(4-2)は0.1以下であった。このことから、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物は、同じ濃度であれば式(4-2)で示される化合物と比較して、波長400nmおよび410nmの光を吸収する機能が良好な薄膜を形成できる材料であることが分かった。
【0233】
また、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物は、式(4-2)で示される化合物と比較して、吸光係数が大きいものであった。したがって、式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物を用いることで、膜厚を厚膜化するほど、光を吸光する機能が顕著に高くなる耐光性に優れた膜を形成できる。
【0234】
「実施例7」
<7,7-ジメチル-12-(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン-2-イル)-7,12-ジヒドロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-g]インデノ[1,2-b]インドール(化合物2-2)の合成>
【0235】
窒素置換した反応容器に、7,7-ジメチル-7,12-ジヒドロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-g]インデノ[1,2-b]インドール4.9g、2-クロロ-4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン5.7g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.3g、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート0.4g、tert-ブトキシナトリウム4.0g、キシレン74mlを加えて加熱し、12時間還流撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル、水を加え、分液操作によって有機層を採取した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフによる精製を行うことによって、7,7-ジメチル-12-(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン-2-イル)-7,12-ジヒドロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-g]インデノ[1,2-b]インドール(化合物2-2)の粉体3.2g(収率38%)を得た。
【0236】
【化32】
【0237】
「実施例8」
<12,12-ジメチル-1-(4-フェニルキナゾリン-2-イル)-1,12-ジヒドロインデノ[1’,2’:4,5]チエノ[2,3-a]カルバゾール(化合物3-14)の合成>
【0238】
窒素置換した反応容器に、12,12-ジメチル-1,12-ジヒドロインデノ[1’,2’:4,5]チエノ[2,3-a]カルバゾール4.9g、2-クロロ-4-フェニルキナゾリン5.7g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.3g、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート0.4g、tert-ブトキシナトリウム4.0g、キシレン74mlを加えて加熱し、12時間還流撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル、水を加え、分液操作によって有機層を採取した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフによる精製を行うことによって、12,12-ジメチル-1-(4-フェニルキナゾリン-2-イル)-1,12-ジヒドロインデノ[1’,2’:4,5]チエノ[2,3-a]カルバゾール(化合物3-14)の粉体6.3g(収率44%)を得た。
【0239】
【化33】
【0240】
「実施例9」
以下に示す方法により、図1に示す有機EL素子を製造した。
金属からなる陽極2として反射電極をあらかじめ形成したガラス基板1上に、蒸着法により、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極8、キャッピング層9を、この順に形成し、図1に示す有機EL素子を得た。
【0241】
具体的には、膜厚50nmのITO、膜厚100nmの銀合金の反射膜、膜厚5nmのITOを、陽極2として順に成膜したガラス基板1を用意した。ガラス基板1に、イソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、250℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を2分間行った後、このITO付きガラス基板1を真空蒸着機内に取り付け、真空蒸着機内を0.001Pa以下まで減圧した。
【0242】
続いて、陽極2を覆うように正孔注入層3として、電子アクセプター(Acceptor-1)と下記式(4-3)で示される化合物を、蒸着速度(Å/sec)の比がAcceptor-1:化合物(4-3)=3:97となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚10nmとなるように形成した。
この正孔注入層3の上に、正孔輸送層4として式(4-3)で示される化合物からなる膜厚140nmの薄膜を形成した。
【0243】
この正孔輸送層4の上に、発光層5として下記式(EMD-1)で示される化合物と実施例7において合成した式(2-2)で示される化合物を、蒸着速度(Å/sec)の比が化合物(EMD-1):化合物(2-2)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着することにより、膜厚20nmの薄膜を形成した。
【0244】
この発光層5の上に、電子輸送層6として下記式(4-4)で示される化合物と下記式(ETM-1)で示される化合物を、蒸着速度(Å/sec)の比が化合物(ETM-1):化合物(4-4)=50:50となる蒸着速度で二元蒸着することにより、膜厚30nmの薄膜を形成した。
【0245】
【化34】
【0246】
この電子輸送層6の上に、電子注入層7としてフッ化リチウムを膜厚1nmとなるように形成した。
この電子注入層7の上に、半透明の陰極8としてマグネシウム銀合金を膜厚12nmとなるように形成した。
【0247】
最後に、陰極8の上に、実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物を蒸着することにより、膜厚60nmのキャッピング層9を形成し、実施例9の有機EL素子を得た。
【0248】
「実施例10」
実施例9において、キャッピング層9として実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物に代えて、実施例2において合成した式(1-2)で示される化合物を膜厚60nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例10の有機EL素子を作製した。
【0249】
「実施例11」
実施例9において、キャッピング層9として実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物に代えて、実施例3において合成した式(1-22)で示される化合物を膜厚60nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例11の有機EL素子を作製した。
【0250】
「実施例12」
実施例9において、キャッピング層9として実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物に代えて、実施例4において合成した式(1-23)で示される化合物を膜厚60nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例12の有機EL素子を作製した。
【0251】
「実施例13」
実施例9において、キャッピング層9として実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物に代えて、実施例5において合成した式(1-25)で示される化合物を膜厚60nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例13の有機EL素子を作製した。
【0252】
「実施例14」
実施例9において、キャッピング層9として実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物に代えて、実施例6において合成した式(1-27)で示される化合物を膜厚60nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例14の有機EL素子を作製した。
【0253】
「実施例15」
実施例9において、発光層5として実施例7において合成した式(2-2)で示される化合物に代えて、実施例8において合成した式(3-14)で示される化合物を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例15の有機EL素子を作製した。
【0254】
「実施例16」
実施例10において、発光層5として実施例7において合成した式(2-2)で示される化合物に代えて、実施例8において合成した式(3-14)で示される化合物を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例16の有機EL素子を作製した。
【0255】
「実施例17」
実施例11において、発光層5として実施例7において合成した式(2-2)で示される化合物に代えて、実施例8において合成した式(3-14)で示される化合物を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例17の有機EL素子を作製した。
【0256】
「実施例18」
実施例12において、発光層5として実施例7において合成した式(2-2)で示される化合物に代えて、実施例8において合成した式(3-14)で示される化合物を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例18の有機EL素子を作製した。
【0257】
「実施例19」
実施例13において、発光層5として実施例7において合成した式(2-2)で示される化合物に代えて、実施例8において合成した式(3-14)で示される化合物を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例19の有機EL素子を作製した。
【0258】
「実施例20」
実施例14において、発光層5として実施例7において合成した式(2-2)で示される化合物に代えて、実施例8において合成した式(3-14)で示される化合物を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で実施例20の有機EL素子を作製した。
【0259】
「比較例1」
比較のために、実施例9において、キャッピング層9として実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物に代えて、上記式(4-2)で示される化合物を膜厚60nmとなるように形成した以外は、同様の条件で比較例1の有機EL素子を作製した。
【0260】
「比較例2」
比較のために、実施例15において、キャッピング層9として実施例1において合成した式(1-1)で示される化合物に代えて、上記式(4-2)で示される化合物を膜厚60nmとなるように形成した以外は、同様の条件で比較例2の有機EL素子を作製した。
【0261】
実施例9~実施例20、比較例1、比較例2の有機EL素子について、それぞれ大気中、常温で特性測定を行った。
具体的には、各有機EL素子に直流電圧を印加し、印加する電圧を変えながら電流密度、輝度、発光効率、電力効率を測定した。電流密度10mA/cmでの駆動電圧、輝度、発光効率、電力効率の測定結果を表3に示す。
【0262】
また、実施例9~実施例20、比較例1、比較例2の有機EL素子について、それぞれ大気中、常温で電流密度10mA/cmの定電流駆動を行ない、初期輝度を100%とした時の輝度が95%に減衰するまでの時間を測定し、寿命(素子寿命)として評価した。その結果を表3に示す。
【0263】
【表3】
【0264】
表3に示す実施例9~実施例14と発光層の材料が同じである比較例1とを比較する。
表3に示すように、10mA/cmでの駆動電圧ついては、実施例9~実施例14と比較例1とは同等であった。
また、10mA/cmでの輝度は、比較例1と比較して、実施例9~実施例14が高かった。
【0265】
電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光効率は、比較例1の有機EL素子が39.80cd/Aであるのに対し、実施例9~実施例14の有機EL素子は41.95~46.28cd/Aであり、いずれも高効率であった。
また、電力効率においても、比較例1の有機EL素子が28.86km/Wであるのに対し、実施例9~実施例14の有機EL素子は30.37~33.52km/Wであり、いずれも高効率であった。
【0266】
また、素子寿命(95%減衰)においては、比較例1の有機EL素子が269時間であるのに対し、実施例9~実施例14の有機EL素子は320~362時間であり、大きく長寿命化していることが分かった。
【0267】
次に、表3に示す実施例15~実施例20と発光層の材料が同じである比較例2とを比較する。
表3に示すように、10mA/cmでの駆動電圧ついては、実施例15~実施例20と比較例2と同等であった。
また、10mA/cmでの輝度は、比較例2と比較して、実施例15~実施例20が高かった。
【0268】
電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光効率は、比較例2の有機EL素子が40.81cd/Aであるのに対し、実施例15~実施例20の有機EL素子では42.41~44.37cd/Aであり、いずれも高効率であった。
また、電力効率においても、比較例2の有機EL素子が30.64km/Wであるのに対し、実施例15~実施例20の有機EL素子は31.35~32.87km/Wといずれも高効率であった。
【0269】
また、素子寿命(95%減衰)においては、比較例2の有機EL素子の283時間に対し、実施例15~実施例20の有機EL素子は359~384時間であり、大きく長寿命化していることが分かった。
【0270】
これらのことは、式(2-2)または(3-14)で示される化合物を含む発光層と、屈折率の高い式(1-1)(1-2)(1-22)(1-23)(1-25)(1-27)で示される化合物を含むキャッピング層とを備える有機EL素子とすることで、光の取出し効率を大幅に改善できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0271】
以上のように、本発明の有機EL素子に好適に用いられる、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、吸光係数が高く、屈折率が高く、光の取出し効率を大幅に改善でき、薄膜状態が安定である。このため、有機EL素子用の化合物として優れている。
また、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含むキャッピング層と、一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物と一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のいずれか一方または両方を含む発光層とを組み合わせた有機EL素子を作製することにより、高い効率を得ることができる。また、この有機EL素子は、太陽光の光を吸光し、素子内部の材料に影響を与えないように、耐久性や耐光性を改善させることができる。また、般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、青、緑および赤それぞれの波長領域において吸収を持たない。このため、該化合物を含むキャッピング層を有する有機EL素子は、色純度がよく鮮明で明るい画像を表示したい場合に、特に好適である。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【符号の説明】
【0272】
1 ガラス基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
9 キャッピング層
図1