(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】物品搬送装置、物品選別装置および物品検査装置
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B65G43/00 A
(21)【出願番号】P 2021024484
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高柳 光男
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176896(JP,A)
【文献】特開2010-268551(JP,A)
【文献】特開2007-112565(JP,A)
【文献】特開2012-120409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動によるコンベアの搬送路上で物品を搬送する物品搬送装置であって、
PWM制御方式のインバータで前記
コンベアを駆動するモータを駆動制御するモータ駆動制御部と、
前記モータ駆動制御部が前記モータに対して行う制御をベクトル制御方式とV/F制御方式とに切替え可能な搬送制御部と、
前記物品の搬送特性に応じて前記搬送制御部における制御方式を前記ベクトル制御方式および前記V/F制御方式のうちいずれか一方から他方に切り替え指示する制御方式設定部と、を備
え、
前記制御方式設定部は、前記制御方式の選択または切換え指示用の操作表示画面を有することを特徴とする物品搬送装置。
【請求項2】
前記制御方式設定部は、
前記物品の品種設定時に、前記制御方式
を設定することを特徴とする請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記搬送路上の所定位置に達した物品を検知する物品検知手段と、
前記物品検知手段の検知情報に基づいて前記物品の搬送状態を監視する搬送状態監視手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記モータ駆動によるコンベアが、搬送ベルトにより前記物品を搬送するベルトコンベアであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の物品搬送装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の物品搬送装置を搬送部として備え、前記搬送路上の前記物品を選別する選別部をさらに備えた物品選別装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の物品搬送装置を搬送部として備え、前記搬送路上の前記物品を検査する検査部をさらに備えた物品検査装置。
【請求項7】
前記検査部が、前記物品をX線画像により検査するX線検査部で構成されるとともに、
前記X線画像に基づいて前記物品の搬送状態を監視する搬送状態監視手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の物品検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品搬送装置、物品選別装置および物品検査装置に関し、特にコンベア搬送の制御方式を切り替え可能な物品搬送装置と同装置を搬送部とする物品選別装置および物品検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品搬送装置においては、従来、コンベアをモータ駆動するものが多用されているが、そのモータの駆動効率は物品搬送装置の搬送性能に大きく影響するので、モータの駆動効率を向上させることが要求される。
【0003】
このような場合に、規定された電圧と周波数では一定回転速度となるモータに対し、駆動電圧と周波数を可変とするインバータ制御を行うことで、モータ回転速度を変化させ、コンベア搬送速度を調整できることが広く知られている。
【0004】
さらに、誘導モータや同期モータ、ブラシレスDCモータ等について、インバータ制御によるモータの可変速運転が可能なことが知られている。
【0005】
この種のモータの駆動システムとしては、例えば速度制御のために周波数を変化させるとき、同時にその周波数に応じた一定比の電圧を出力するV/F制御と、モータ速度制御に必要なトルクに応じた電圧を出力するベクトル制御、例えばセンサレスベクトル制御と、を両制御の特徴を活かすよう切り替えつつ、ブラシレスDCモータを駆動制御するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、圧縮機モータの出力トルクおよび直流電圧のうち少なくとも1つを用いて切替回転数を設定し、この切替回転数を既定の最小切替回転数と比較することで、切替回転数が最小切替回転数以上か否かによってベクトル制御とV/F制御との切替えを行うようにして、切替回転数が最小切替回転数未満である場合にはセンサレスベクトル制御を採用し、最小切替回転数以上である場合にはV/F制御を採用するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-210813号公報
【文献】特開2010-206945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来の物品搬送装置、物品選別装置および物品検査装置にあっては、モータ回転数やコンベア搬送速度、あるいはインバータ周波数に応じて、モータ制御方式をV/F制御とベクトル制御とに切り替えることで、搬送時のモータ駆動負荷変動を抑えるようなモータ制御方式の切替え制御が行われていたものの、次のような問題があった。
【0009】
すなわち、物品検査装置や物品選別装置等においては、搬送部でのコンベア搬送時間の経過やパルス数によってその物品検査や物品選別のタイミング制御を行うため、一定間隔(時間や距離)で搬送されることが望ましいが、搬送時のモータの負荷変動のみならず、例えば製品の性状、典型的にはウェット品かドライ品かによる製品のすべり、生産環境下での水や油等による搬送スリップの有無により、搬送物品の搬送タイミングにずれが発生する。
【0010】
しかし、従来装置では、搬送物品である製品の性状やその生産環境に応じて、搬送時のモータ駆動負荷が変動したりコンベア上での搬送物品のスリップやコンベアベルト自体のすべり等が原因となって物品搬送タイミングにずれが生じたりすることがあっても、そのようなタイミングのずれを抑制するようなモータ制御方式を行うことはできなかった。そのため、物品搬送タイミングのずれによる物品検査装置の検査や物品選別装置の選別動作に悪影響が生じ、そのような搬送路上での物品操作の精度が低下し易くなっていた。
【0011】
本発明は、上述のような従来の課題を解決すべくなされたものであり、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができる物品搬送装置、物品選別装置および物品検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る物品搬送装置は、上記目的達成のため、モータ駆動によるコンベアの搬送路上で物品を搬送する物品搬送装置であって、PWM制御方式のインバータで前記モータを駆動制御するモータ駆動制御部と、前記モータ駆動制御部が前記モータに対して行う制御をベクトル制御方式とV/F制御方式とに切替え可能な搬送制御部と、前記物品の搬送特性に応じて前記搬送制御部における制御方式を前記ベクトル制御方式および前記V/F制御方式のうちいずれか一方から他方に切り替え指示する制御方式設定部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成により、本発明では、物品の搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを選択したり切り替えたりすることができ、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができる。なお、ここにいう物品の搬送特性には、物品の質量等の性状に応じた搬送特性のみならず、搬送時の加減速や振動等に対して要求される条件に応じた搬送特性が含まれ得る。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、前記制御方式設定部は、前記制御方式の選択または切換え指示用の操作表示画面を有する構成とすることができる。
【0015】
この構成では、操作表示画面上で制御方式の選択または切換え指示が可能となるから、ユーザによる搬送制御方式の手動切換えを適時に実行できることになる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態においては、前記搬送路上の所定位置に達した物品を検知する物品検知手段と、前記該物品検知手段の検知情報に基づいて前記物品の搬送状態を監視する搬送状態監視手段と、をさらに備えた構成とすることができる。
【0017】
この構成では、物品検知手段による物品検知タイミングから物品の搬送状態を的確に監視可能となり、その搬送状態監視手段の監視情報を基に物品搬送間隔を好適に維持するよう搬送制御方式の切換えを適時に実行できることになる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、前記モータ駆動によるコンベアが、搬送ベルトにより前記物品を搬送するベルトコンベアである構成とすることもできる。
【0019】
この構成では、搬送物品の質量や搬送方向長さ等を考慮した搬送制御方式の切換えを実行できるだけでなく、コンベアベルトと物品の間の摩擦や滑り等を考慮した搬送制御方式の切換えを実行できることになる。
【0020】
本発明に係る物品選別装置は、上記のいずれかの構成を有する物品搬送装置を搬送部として備え、前記搬送路上の前記物品を選別する選別部をさらに備えたものである。
【0021】
この発明の物品選別装置では、搬送部で物品搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを切り替え、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができるので、的確で安定した選別動作が可能となる。
【0022】
本発明に係る物品検査装置は、上記のいずれかの構成を有する物品搬送装置を搬送部として備え、前記搬送路上の前記物品を検査する検査部をさらに備えたものである。
【0023】
この発明の物品検査装置では、搬送部で物品搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを切り替え、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができるので、的確で安定した物品検査が可能となる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態においては、前記検査部が、前記物品をX線画像により検査するX線検査部で構成されるとともに、前記X線画像に基づいて前記物品の搬送状態を監視する搬送状態監視手段をさらに備えた構成とすることができる。
【0025】
本発明の物品検査装置の好ましい実施形態においては、物品検査部で得られるX線画像に基づいて梱包や包装、未包装の物品の搬送状態をその内容物の状態を含めて的確に監視可能となり、より好適な物品検査ができることになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、物品の搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを切り替えるので、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができる物品搬送装置、物品選別装置および物品検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る物品搬送装置を備えた物品生産システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る物品搬送装置を備えた物品生産システムにおいて搬送方式を選択設定するための品種設定登録時の操作画面の説明図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る物品搬送装置を備えた物品生産システムにおける生産中の搬送状況監視処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る物品搬送装置を備えた物品生産システムにおける2つの搬送制御方式を選択設定するための被搬送物品の分類の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1ないし
図4は、本発明の一実施形態に係る物品搬送装置を備えた物品生産システムを示しており、同システムが、物品搬送装置を搬送部として備え、さらに物品検査を行う検査部または物品選別を行う選別部を備えた物品検査装置または物品選別装置として構成される場合を例示している。なお、
図1中には物品生産システムの一部を示しており、物品の投入もしくは加工、包装、搬出等のいずれかの工程が、本物品生産システムにおける図外の搬送領域でなされ得るものである。
【0030】
まず、その構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の物品搬送装置10は、モータ駆動によるコンベア搬送路上で物品搬送するものであり、それぞれベルトコンベアで構成された前段コンベア11およびその下流側の搬送コンベア12と、少なくとも搬送コンベア12を駆動するモータ13と、モータ13に接続されたインバータ21およびインバータ制御用の制御演算回路22を有するモータ制御ユニット20とを具備している。
【0032】
物品搬送装置10は、さらに、モータ制御ユニット20を介してモータ13を駆動制御する制御部30と、搬送コンベア12上の製品P(物品)に対して所定の操作、例えば選別排出の操作もしくは物品検査に係る操作を実行することができる物品操作部40とを具備しており、制御部30は物品操作部40の動作やその条件を設定および制御できるようになっている。
【0033】
ここで、物品操作部40は、搬送コンベア12上の製品Pをその搬送路12pから外側方に選別排出する操作を行うことができる公知の物品選別部であるか、あるいは、搬送コンベア12上の製品Pの製品品質に係る所定の物品検査、例えば搬送中の製品Pに対しX線を照射する操作および透過したX線を所定周期でライン検出する操作によってX線画像を形成し、画像判定によって製品品質を検査する物品検査部として構成されている。勿論、物品操作部40は、他の検査、例えば製品P中に混入する金属を検出する金属検査や製品Pの質量を搬送中に自動計測する質量計測、あるいは製品Pの形状検査等を行うもの、あるいは、そのような複数の検査のうち少なくとも1つの検査を行うものであってもよい。
【0034】
物品搬送装置10における前段コンベア11およびその下流側の搬送コンベア12は、それぞれ所定の物品サイズおよび質量範囲内の製品Pを搬送可能なコンベアであり、前段コンベア11は、例えば複数のローラに無端のコンベアベルトを巻回し、支持させたベルトコンベア式のもので、製品Pを所定搬送速度で
図1中の右方向に搬送可能である。
【0035】
また、搬送コンベア12は、例えば平行に離間する駆動ローラ12aおよび従動ローラ12bに無端のコンベアベルト12cを巻回したベルトコンベア式のものであり、駆動ローラ12aがモータ13によってコンベアベルト12cの搬送駆動方向に回転駆動されるようになっている。もっとも、前段コンベア11や搬送コンベア12は、モータ13の出力をベルトやチェーン等でフリーローラに伝動し、搬送駆動するローラコンベアタイプのものでもよい。
【0036】
モータ13は、搬送コンベア12の上流側の駆動ローラ12aをコンベアベルト12cの搬送駆動方向に回転させる交流モータで、例えば3相誘導モータで構成されている。このモータ13は、図示しない連動機構を介して、前段コンベア11を搬送コンベア12と同期駆動するようにしてもよい。
【0037】
モータ制御ユニット20は、PWM(パルス幅変調)方式のインバータ21でモータ13を駆動制御するモータ駆動制御部となっており、インバータ21は、制御演算回路22および制御部30と協働して、例えばV/F制御とベクトル制御を含む複数の搬送方式(搬送モータ駆動方式)のうち任意の一方式でモータ13を駆動することができるとともに、モータ13の過電流・過電圧などの異常を検知して、制御演算回路22に伝える機能を有している。
【0038】
このインバータ21は、詳細を図示しないが、例えば外部の交流電源15からの交流を直流に変換するAC/DCコンバータと、PWM制御される複数のパワートランジスタによりAC/DCコンバータからの直流を可変周波数の3相交流出力に変換するパワーアンプ回路と、必要とする周波数の指令信号と一定周波数の三角波信号との比較結果に応じて複数のパワートランジスタを制御し、各相の出力の時間平均電圧を調整するPWM制御回路とを有している。
【0039】
また、制御演算回路22は、後述する製品通過時間に係る各種演算を実行するとともに、モータ制御ユニット20を介してモータ13を駆動制御する制御部30と協働し、製品通過時間に応じてあるいは製品Pの品種設定情報等に応じて、インバータ21によるモータ13の駆動方式を、V/F制御とベクトル制御のうちいずれか一方に選択設定可能になっている。
【0040】
ここにいうV/F制御は、モータ13の速度制御のためにインバータ周波数を変化させるときに同時にその周波数(F)に対する出力電圧(V)の比(V/F)を一定にする制御であり、モータ13の3相コイルに一定の電流を流し、インバータ周波数と電圧出力の比(V/F)を一定に保ちながらPWM信号の電圧波形を可変して、モータ13を駆動するようになっている。
【0041】
また、ここにいうベクトル制御は、モータ13の速度制御に必要なトルクに応じた電圧を出力する制御で、インバータ21の出力による3相誘導モータへの誘導電流から電流のトルク成分(トルク分電流)と励磁成分(励磁分電流)を抽出し、それぞれの成分をフィードバック制御することで合成したPWM信号の電圧波形を可変して、モータ13を駆動するようになっている。
【0042】
このベクトル制御は、本実施形態では、速度センサを用いてモータ13の回転速度を目標速度に追従させるF/B(フィードバック)制御でなく、モータ13の電機子電流等から回転速度を推定するセンサレスベクトル制御である。すなわち、このセンサレスベクトル制御では、モータ13の回転速度を電機子電流等から推定しつつ目標速度に追従させるオープンループ制御がなされるようになっている。
【0043】
V/F制御によるモータ13の搬送駆動は、相対的に低トルク特性となり、さらに、V/F制御でのモータ13の出力トルクは、例えば出力周波数60Hzを最大トルクとして周波数が低下すると出力トルクも低下し、20Hzでは基準トルクの80%に、10Hzでは基準トルクの60%に低下する。したがって、V/F制御による搬送駆動中に、前段コンベア11から搬送コンベア12に比較的質量の大きい製品Pが乗り移ると、モータ13の駆動負荷が変動し、モータ13の回転速度が一旦低下した後、徐々に元の回転速度に戻るという回転状態の変化が生じることになる。
【0044】
また、V/F制御は、インバータ周波数と電圧出力の比で指定速が決まるノンフィードバック制御であるため、応答が鈍く、安定した搬送トルクが得られない(例えば速度追従トルクが±5%程度)という欠点がある反面、急激な加速が無いことで、製品Pのスリップが発生し難いという利点もある。
【0045】
一方、ベクトル制御によるモータ13の搬送駆動は、誘導モータのすべり分をリアルタイムに計算し上乗せするものとなるため、V/F制御による搬送駆動に比して、相対的に高トルクとなり、ベクトル制御でのモータ13の出力トルクは、例えば出力周波数60Hzから20Hzまでの周波数範囲において基準トルクの100%を保持でき、10Hzでも基準トルクの70%程度を確保できることとなる。したがって、不可変動にかかわらず一定速度での搬送制御(例えば速度追従トルクが±1%程度)が可能となる。
【0046】
また、ベクトル制御では、速度ズレを検知もしくは推定すると、指定速度に素早く戻すので、安定した搬送力が得られる反面、製品Pのスリップが発生する可能性がある。
【0047】
モータ制御ユニット20は、さらに、物品操作部40の運転や停止、モータ13に要求される速度制御用のパルスやモータ制御方式等といった制御部30からのコンベア駆動指令を、制御演算回路22で受信し、そのコンベア駆動指令に対応する接点信号やシリアル通信信号をインバータ21に送出するようになっている。
【0048】
制御部30は、例えば物品操作部40における製品Pの品種設定等を操作表示部31で実行する際に、モータ13の駆動方式を、V/F制御とベクトル制御のうちいずれか一方に選択設定できるようになっている。
【0049】
具体的には、制御部30は、タッチパネル状の操作表示部31と、物品操作部40の動作を制御する物品操作制御部32と、モータ13の回転を制御して搬送コンベア12の搬送動作を制御するコンベア制御部33とを含んでおり、コンベア制御部33は、モータ制御ユニット20がモータ13に対して行う制御をベクトル制御方式とV/F制御方式とに切り替えることができる搬送制御部となっている。
【0050】
操作表示部31は、物品操作制御部32に対しユーザによる手動設定入力を行ったり、物品操作制御部32からの表示制御信号に応じて物品搬送装置10や物品操作部40の動作あるいは設定に係る各種画面を出力したりするようになっている。
【0051】
図2に示すように、操作表示部31では、製品Pの新品種を設定登録するときに、併せて、例えば箱状の製品搬送かバラ状の製品搬送かといった製品搬送方法の選択設定と、コンベア速度V(mm/s)や製品長L(mm)、搬送時間間隔の許容ずれ率(%)等の搬送条件の入力と、搬送(モータ駆動)方式を手動設定するか自動設定するかの選択入力と、高トルクの搬送かそれより相対的に低トルクの搬送かの選択設定状態表示と、搬送方式を手動設定する場合の製品がドライ品かウェット品かの選択設定と、エラー/アラームの表示・出力設定と、運転/停止指令入力等を実行可能になっている。
【0052】
ここで、箱状か否か、高トルク搬送か否か、ドライ品か否かは、搬送方式を自動設定する場合に、モータ13をベクトル制御で高トルク搬送することが可能か否かを決定するのに有効な選択設定入力であり、一方、バラ状か否か、低トルク搬送か否か、ウェット品か否かは、搬送方式を自動設定する場合に、モータ13をV/F制御することで一定トルク搬送することが可能か否かを決定するのに有効な選択設定入力である。
【0053】
すなわち、制御部30は、操作表示部31により、製品Pの搬送特性に応じてコンベア制御部33におけるモータ制御方式をベクトル制御方式およびV/F制御方式のうちいずれか一方から他方に切り替え指示する制御方式設定部の機能を有しており、制御方式の選択または切換え指示用の操作表示画面31aを形成可能な操作表示部31を有している。ここにいう製品Pの搬送特性には、製品Pの質量や水分や油分等でスリップし易い等の性状に応じた搬送特性のみならず、搬送時の加減速や振動等に対して要求される制約条件に応じた搬送特性が含まれ得る。
【0054】
制御部30のコンベア制御部33は、
図2に示すような操作表示部31の選択設定画面31a上で、選択ボタン操作等によって搬送方式の自動設定が選択されると、測定指定回数指令(自動測定のための搬送回数nやバッチ数N)等をモータ制御ユニット20の制御演算回路22に送信出力するようになっている。
【0055】
モータ制御ユニット20には、さらに、搬送コンベア12の搬送路12p上の製品Pが搬送方向の所定位置を通過するときにこれを検知する物品検知手段で、製品Pの搬送状態、例えば理想的な搬送タイミングからのずれを監視可能な物品通過監視センサ25が設けられている。この物品通過監視センサ25は、製品Pの先端が搬送方向の所定位置に達してから製品Pの後端が所定位置を通過するまで検出状態(ON)となり、そのセンサ信号がモータ制御ユニット20の制御演算回路22および制御部30の物品操作制御部32にそれぞれ取り込まれるようになっている。なお、物品操作制御部32は、検査用のX線画像を画像処理することに加え、X線画像に基づき製品Pの搬送状態を監視することで、物品通過監視センサ25に代わるかこれと協働する搬送状態監視手段の機能を有するものとすることもできる。
【0056】
制御演算回路22またはコンベア制御部33は、物品通過監視センサ25からのセンサ情報を基に、例えば各製品Pが搬送方向所定位置を通過する通過時刻、もしくは所定個数差で前後する複数の製品Pの通過タイミングの時間間隔(製品搬送時間間隔)を、生産中の製品の通過平均時間として算出することができる。なお、ここでは、製品Pの先端が搬送方向所定位置を通過してから製品Pの後端が搬送方向所定位置を通過するまでの通過時間の中間時点を、製品Pの中心の通過タイミングとするが、先端通過タイミングや後端追加タイミングを用いてもよい。
【0057】
また、制御演算回路22またはコンベア制御部33は、理想的な製品通過平均時間を基準値として、各通過平均時間が許容範囲内か否か、例えば各製品Pの中心や先端の通過時刻が許容時間範囲内か否かチェックして、製品Pの搬送状態が許容範囲内となる正常状態か否かを監視することができる。コンベア制御部33は、物品通過監視センサ25の検知情報に基づいて製品Pの搬送状態を監視する搬送状態監視手段となっている。なお、モータ制御ユニット20は、制御部30側に統合されて搭載されてもよい。
【0058】
さらに、コンベア制御部33は、搬送コンベア12上での滑りによる製品Pの搬送タイミングのずれを監視するために、製品Pの通過タイミングが理想値に対し一定範囲内にあるか否かを判定するのみならず、生産中の搬送状況の変化により製品Pの通過タイミングが理想値から一定範囲外に外れると、操作表示部31への警告表示等の所定形式のアラームを出力するようになっている。
【0059】
より具体的には、
図2に示す設定画面31a上における搬送(モータ駆動)方式の選択設定は、使用者が製品Pの性質や性状に応じて手動選択する方式と、予めの搬送テストにおける搬送状態の監視結果に応じて自動選択する方式とのうち任意の一方を選択するもので、モータ13に対する異なる搬送駆動モードとして準備されている。
【0060】
手動選択の場合、物品搬送装置10の使用者が、品種登録時に製品Pの性質に応じて
図2に示す選択設定画面31a上でドライ品、ウェット品のいずれかを選択することで、ドライ品選択時にはベクトル制御が、ウェット品選択時にはV/F制御が選択設定される。
【0061】
一方、選別方式の自動選択の場合、コンベア制御部33は、制御演算回路22と協働して、物品搬送装置10を含む生産システムの生産開始前に、製品Pを指定速度でのそれぞれの搬送方式であるV/F制御とベクトル制御とで同一品種を指定回数n回流すことで、各搬送方式について、物品通過監視センサ25の通過時間平均値Tpa=ΣTp/nを測定し、V/F制御での通過時間平均値Tp_f(s)と、ベクトル制御の通過時間平均値Tp_v(s)とを算出した上で、理想通過時間Tr(s)=製品長L(mm)/コンベア速度Vc(mm/s)に対する通過時間のずれ、すなわち時間差Tr-Tp_fと時間差Tr-Tp_vとの差が小さい方の搬送方式を選択するようになっている。
【0062】
換言すれば、V/F制御での時間差Tr-Tp_fがベクトル制御での時間差Tr-Tp_v以上であれば、ベクトル制御を選択し、V/F制御での時間差Tr-Tp_fがベクトル制御での時間差Tr-Tp_v未満であれば、V/F制御を選択することになる。また、ここで選択したモータ制御方式によって、物品操作部40における物品選別もしくは検査のタイミングが調整されることになる。
【0063】
図4は、搬送方式を手動または自動設定する場合において、製品Pがドライ品かウェット品かを分類する条件を例示している。
【0064】
この場合、ドライ品は、箱物やカートン、袋物またはトレー製品のような搬送形態を有する物品であり、例えばカップ麺、製菓、食品缶(箱)、小麦粉、袋入りのマカロニ、野菜、果実、トレーに載せた穀物等があげられる。ドライ品は、滑りにくいので、重量物の搬送や定速搬送に好適で、ベクトル制御が有効である。
【0065】
ウェット品は、バラ状、いわゆる裸物、外装に水や氷等の液体成分が付着している物であり、例えば肉や肉加工品、裸物の水産品、水や油分を含む裸物の製品、豆・穀物などのバラ状製品、表面に水・氷が付着している箱入り、袋入りもしくはトレー付きの冷凍品等があげられる。ウェット品は、滑りやすいため、一定トルクでの搬送に好適で、V/F制御が有効である。
【0066】
次に、動作について説明する。
【0067】
上述のように構成された本実施形態の物品生産システムでは、搬送コンベア12によって製品Pが順次所定間隔で搬送されるとき、物品操作部40によって選別指令信号や検査結果信号に応じた選別排出動作、あるいは、製品Pの品質等に係る物品検査が実行され、それに伴う所定の動作が搬送コンベア12の搬送路12p上で実行される。
【0068】
このような物品搬送状態においては、搬送状況が変化すると、各製品Pが搬送方向所定位置を通過する搬送タイミングにずれが生じ得るので、コンベア制御部33は、
図3に示すような処理手順で、生産中の物品搬送タイミングのずれ量を監視する。
【0069】
まず、本システムの運転開始前に、操作表示部31からの設定入力によって、予め製品長(mm)やコンベア速度(mm/s)等の生産情報を入力し、理想通過時間Tr(s)=製品長/コンベア速度を算出設定する。さらに、搬送監視設定として、搬送状態監視の有無、搬送監視発生時の処置、例えばエラーやアラームの有無やそれらの切替え条件、測定バッチ数N回、ずれ率(例えば、0-50%)等を設定入力する(ステップS11)。
【0070】
次に、システムの運転が開始されると、生産中に物品通過監視センサ25で製品Pの通過時間を測定し、バッチ数N回分の移動平均演算で算出した平均通過時間を生産中製品通過平均時間To(s)に設定する(ステップS12)。すなわち、生産中製品通過平均時間To(s)=Σ測定N_通過時間(s)/バッチ数N(回)とする設定がなされる。
【0071】
そして、この生産中製品通過平均時間To(s)が理想通過時間Tr(s)×(1-ずれ率(%)/100)未満で、製品Pのスリップによる搬送タイミングのずれが大きい(搬送時間間隔が縮まった)という所定搬送条件が成立するか否かを判定し(ステップS13)、その所定搬送条件が不成立であれば、搬送タイミングのずれが許容範囲内であるものとして、再度バッチ数N回分の移動平均演算で生産中製品通過平均時間To(s)を算出する。
【0072】
一方、前述の所定搬送条件が成立する場合には、次の判定に進み(ステップS14)、今回の運転中におけるその条件成立回数が所定回数未満(同図中「成立回数小」)であれば、搬送コンベア12を停止させることなく警告のみのアラーム表示を外部出力し、その条件成立回数が所定回数以上(同図中「成立回数大」)であれば、エラーと判定して搬送コンベア12を停止させる(ステップS15)。
【0073】
このように、本実施形態では、生産中製品通過平均時間To(s)と理想通過時間Tr(s)×(1-ずれ率(%)/100)という2つの通過時間を比較して、生産中のタイミングのずれ量を監視し、搬送タイミングのずれ量が大きくなると、アラーム表示を外部に出力し、エラー時にはコンベアを停止する。
【0074】
次に、作用について説明する。
【0075】
上述のように構成された本実施形態においては、PWM制御方式のインバータ21でモータ13を駆動制御するモータ制御ユニット20(モータ駆動制御部)と、モータ制御ユニット20がコンベア搬送駆動用のモータ13に対して行う制御をベクトル制御方式とV/F制御方式とに切替え可能なコンベア制御部33(搬送制御部)と、製品Pの搬送スリップの容易さにつながる性状(ウェット品)や包装形態や荷姿等の搬送特性に応じてコンベア制御部33における制御方式をベクトル制御方式およびV/F制御方式のうちいずれか一方から他方に切り替え指示するタッチパネル状の操作表示部31(制御方式設定部)を有する制御部30とを備えている。
【0076】
したがって、本実施形態の物品生産システムでは、製品Pの搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを選択したり切り替えたりすることができ、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態においては、制御部30がモータ13を駆動する制御方式の選択または切換え指示用のタッチパネル状の操作表示部31を有するので、その操作表示画面31a上での制御方式の選択または切換え指示が可能となり、ユーザによる搬送制御方式の手動切換えを適時に容易に実行できることになる。
【0078】
さらに、本実施形態では、搬送コンベア12の搬送路12p上の所定位置に達した製品Pを検知する物品通過監視センサ25と、その検知情報に基づいて製品Pの搬送状態を監視する搬送状態監視手段としてのコンベア制御部33をさらに備えているので、物品通過監視センサ25による物品検知タイミングから製品Pの搬送状態を的確に監視可能となり、その監視情報を基に製品Pの搬送間隔を好適に維持するよう搬送制御方式の切換えを適時に実行できることになる。
【0079】
加えて、本実施形態では、モータ駆動による搬送コンベア12が、搬送ベルト12cにより物品搬送するベルトコンベアであるから、搬送物品の質量や搬送方向長さ等を考慮した搬送制御方式の切換えを実行できるだけでなく、コンベアベルト12cと製品Pの間の摩擦や滑り等を考慮した搬送制御方式の切換えを的確に実行できることになる。
【0080】
また、本実施形態では、物品搬送装置10を搬送部とし、物品操作部40を搬送路12p上の製品Pを選別する選別部としてさらに備える物品選別装置の構成をとり得るので、搬送部で物品搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを切り替えながら、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態下で、的確で安定した選別動作を実行できることになる。
【0081】
さらに、本実施形態では、物品搬送装置10を搬送部とし、物品操作部40を搬送路12p上の製品Pを物品検査する検査部としてさらに備える物品検査装置の構成をとり得るので、搬送部で物品搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを切り替えながら、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態下で、的確で安定した物品検査を実行できることになる。
【0082】
また、物品操作部40が製品PをX線画像により検査するX線検査部として構成され得るので、X線画像に基づいて製品Pの搬送状態を監視する搬送状態監視手段を構成することも容易に可能であり、梱包や包装がされた製品Pの搬送状態をその内容物の状態を含めて的確に監視可能となり、より安定した好適な搬送制御および物品検査ができることになる。
【0083】
このように、本実施形態の物品生産システムにおいては、製品Pの搬送特性に応じてベクトル制御方式かV/F制御方式かを切り替えるので、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができる物品搬送装置、物品選別装置および物品検査装置を提供することができるものである。
【0084】
なお、上述の一実施形態においては、物品搬送装置10が物品選別装置または物品検査装置として構成され得る生産システムとして例示したが、物品搬送装置10は、各種製品の生産ラインに組み込まれて使用され得るものであり、物品操作部40の操作内容が特に限定されるものでないことはいうまでもない。また、ここでは、モータ13は3相誘導モータとして説明したが、インバータ制御が可能な他方式のモータであってもよいことは勿論である。また、交流電源15も3相の交流電源に限定されるものではなく、単相の交流電源であってもよい。
【0085】
以上説明したように、本発明の物品搬送装置は、搬送タイミングのばらつきを抑えつつ安定した物品搬送状態を得ることができる物品搬送装置、物品選別装置および物品検査装置を提供することができるものである。かかる本発明は、コンベア搬送の制御方式を切り替え可能な物品搬送装置と同装置を搬送部とする物品選別装置および物品検査装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0086】
10 物品搬送装置(搬送部)
11 前段コンベア
12 搬送コンベア(ベルトコンベア)
12a 駆動ローラ
12b 従動ローラ
12c コンベアベルト
12c 搬送ベルト
12p 搬送路
13 モータ
15 交流電源
20 モータ制御ユニット(モータ駆動制御部)
21 インバータ
22 制御演算回路
25 物品通過監視センサ(物品検知手段、搬送状態監視手段)
30 制御部(搬送状態監視手段)
31 操作表示部(制御方式設定部)
31a 操作表示画面(選択設定画面)
32 物品操作制御部
33 コンベア制御部(搬送制御部、制御方式設定部)
40 物品操作部(選別部、検査部)