(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】検体分析システムの制御方法、検体分析システム、コンピュータおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N35/00 A
(21)【出願番号】P 2021030891
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2022-11-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-090369(JP,A)
【文献】特開2014-199211(JP,A)
【文献】特開2006-277424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析する分析装置を備えた検体分析システムの制御方法であって、
第1のコンピュータが、前記分析装置を制御し、
前記第1のコンピュータが、前記第1のコンピュータ
の所定の通信ポートとネットワークを介して通信可能に接続された、分析結果を管理するための第2のコンピュータに、分析結果を送信し、
前記第1のコンピュータが、前記第1のコンピュータと通信可能に接続された第3のコンピュータに、前記分析装置の制御プログラムに関する設定情報、および、
前記第1のコンピュータの通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、前記第1のコンピュータと前記第2のコンピュータとの通信に関する設定情報を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第1のコンピュータから送信された前記制御プログラムに関する設定情報、および前記通信に関する設定情報を記憶し、
前記第1のコンピュータに代わって、前記第3のコンピュータが、記憶した前記制御プログラムに関する設定情報に基づき前記分析装置を制御し、記憶した前記通信に関する設定情報に基づき
前記所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた通信ポートから前記第2のコンピュータに分析結果を送信する、検体分析システムの制御方法。
【請求項2】
前記第3のコンピュータが、記憶した前記制御プログラムに関する設定情報および記憶した前記通信に関する設定情報の適用指示を受け付けることをさらに含み、
前記第3のコンピュータは、前記適用指示を受け付けると、前記分析装置の制御および前記第2のコンピュータへの分析結果の送信を実行する、請求項1に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項3】
前記第3のコンピュータは、前記適用指示を、一回の入力操作による受け付ける、請求項2に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項4】
前記第3のコンピュータは、前記適用指示を受け付けるための画面を表示し、前記画面を介した入力操作により、前記適用指示を受け付ける、請求項2または3に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項5】
前記第3のコンピュータは、前記適用指示を受け付けると、前記制御プログラムに関する設定情報および前記通信に関する設定情報を前記第3のコンピュータに適用し、前記分析装置の制御および前記第2のコンピュータへの分析結果の送信を実行する、請求項2~4のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項6】
前記第3のコンピュータが、前記適用指示を受け付けると、前記分析装置の前記制御プログラムを自動実行する設定情報、前記第1のコンピュータのコンピュータ名の情報、前記第3のコンピュータを起動する第1スケジュールの設定情報、および、前記第1のコンピュータを起動する第2スケジュールの設定情報、の少なくともいずれかの情報を、前記第3のコンピュータにさらに適用する処理を実行する、請求項5に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項7】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに、前記分析装置の制御プログラム、又は前記制御プログラムの更新情報を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記制御プログラム、又は前記制御プログラムの更新情報を記憶し、
前記第1のコンピュータの故障時に、前記第3のコンピュータが、前記制御プログラム、または前記更新情報によって更新された制御プログラム、ならびに、前記制御プログラムに関する設定情報に基づき、前記分析装置を制御する、請求項1~6のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項8】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータを起動し、
前記第3のコンピュータが起動した後に、前記第1のコンピュータが、前記制御プログラムに関する設定情報および前記通信に関する設定情報の送信を実行する、請求項1~7のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項9】
前記第1のコンピュータが、予め設定された第1スケジュールに基づき、前記第3のコンピュータを起動する、請求項8に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項10】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに前記制御プログラムに関する設定情報および前記通信に関する設定情報を送信した後に、自動的に終了する、請求項1~9のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項11】
前記第3のコンピュータが、予め設定された第2スケジュールに基づき、前記第1のコンピュータを起動する、請求項10に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項12】
前記第1のコンピュータが、前記第2スケジュールの設定を受け付け、受け付けた前記第2スケジュールを前記第3のコンピュータに設定する、請求項11に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項13】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータを起動する第1スケジュールと、前記第1のコンピュータを起動する前記第2スケジュールと、を受け付ける、請求項12に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項14】
前記第1のコンピュータを起動する前記第2スケジュールの設定情報が、前記第3のコンピュータから起動コマンドを送信するTCP/IPプログラムに関する設定情報を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項15】
前記第3のコンピュータが、前記第1のコンピュータの起動後に自動的に終了する、請求項9~14のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項16】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに、前記第1スケジュールの設定情報を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第1スケジュールの設定情報を記憶する、請求項9に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項17】
前記分析結果が、検体の分析結果もしくは精度管理検体の分析結果である、請求項1~16のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項18】
前記制御プログラムに関する設定情報が、ユーザに関する情報、測定結果の評価基準に関する情報、前記分析装置の接続台数、前記分析装置の識別番号、および、前記分析装置が測定可能な項目に関する情報の少なくともいずれかを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項19】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに、前記分析結果を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第1のコンピュータから送信された前記分析結果を記憶する、請求項1~18のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項20】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに、前記分析結果に関連付けられた患者に関する情報を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第1のコンピュータから送信された前記患者に関する情報を、前記分析結果に関連付けて記憶する、請求項19に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項21】
前記第1のコンピュータから前記第3のコンピュータに送信される前記分析結果が、当該分析結果のグラフ表示に関する情報を含む、請求項19または20に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項22】
前記第3のコンピュータは、前記第1のコンピュータから送信された情報を、前記第1のコンピュータにおけるディレクトリ構造を維持して記憶する、請求項1~21のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項23】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに、前記分析装置の取扱方法に関する情報を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第1のコンピュータから送信された前記分析装置の取扱方法に関する情報を記憶する、請求項1~22のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項24】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに、前記分析装置の精度管理に関する情報を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第1のコンピュータから送信された前記精度管理に関する情報を記憶する、請求項1~23のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項25】
前記第3のコンピュータの前記制御プログラムのバージョンが、前記第1のコンピュータの前記制御プログラムのバージョンと同一に構成される、請求項1~24のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項26】
前記第1のコンピュータが、前記第3のコンピュータに、制御プログラムを所定のバージョンに更新するための更新情報を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第3のコンピュータにインストールされている制御プログラムを、前記第1のコンピュータから送信された前記更新情報により更新する、請求項25に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項27】
検体を分析する分析装置と、
前記分析装置を制御
する第1のコンピュータであって、
前記第1のコンピュータの所定の通信ポートとネットワークを介して
通信可能に接続された、分析結果を管理する第2のコンピュータに分析結果を送信する第1のコンピュータと、
前記第1のコンピュータと通信可能に接続された第3のコンピュータと、を備え、
前記第1のコンピュータは、前記第3のコンピュータに、前記分析装置の制御プログラムに関する設定情報、および、
前記第1のコンピュータの通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、前記第1のコンピュータと前記第2のコンピュータとの通信に関する設定情報
を送信し、
前記第3のコンピュータが、前記第1のコンピュータから送信された前記制御プログラムに関する設定情報、および前記通信に関する設定情報を記憶し、
前記第1のコンピュータに代わって、前記第3のコンピュータが、記憶した前記制御プログラムに関する設定情報に基づき前記分析装置を制御し、記憶した前記通信に関する設定情報に基づき
前記所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた通信ポートから前記第2のコンピュータに分析結果を送信する、検体分析システム。
【請求項28】
コンピュータにより、分析装置の制御および前記分析装置に関するバックアップ情報の取得を実行する検体分析システムの制御方法であって、
前記分析装置に接続され、前記分析装置を制御する他のコンピュータに記憶された情報の前記バックアップ情報を取得する第1モード、又は、前記分析装置を制御する第2モードを選択する工程と、
前記第1モードが選択された場合、前記他のコンピュータから前記バックアップ情報を取得する工程と、
前記第2モードが選択された場合、前記分析装置を制御する工程と、を含み、
前記他のコンピュータ
の所定の通信ポートは、前記分析装置で得られた分析結果を管理するホストコンピュータにネットワークを介して接続されており、
前記バックアップ情報は、
前記他のコンピュータの通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、前記他のコンピュータと前記ホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を含み、
前記検体分析システムの制御方法は、前記第2モードが選択された場合、前記他のコンピュータと前記ホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を用いて、
前記所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた前記コンピュータの通信ポートを利用して前記コンピュータと前記ホストコンピュータとの接続を確立する工程を更に含む、検体分析システムの制御方法。
【請求項29】
前記バックアップ情報は、前記分析装置の制御プログラム又は前記制御プログラムに関する設定情報を含み、
前記分析装置を制御する工程は、前記バックアップ情報を取得する工程を実行した後に、前記第2モードが選択された場合、前記制御プログラム又は前記
制御プログラムに関する設定情報を用いて前記分析装置を制御する工程を含む、請求項28に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項30】
前記第1モードが選択された場合、前記分析装置は前記他のコンピュータにより制御される、請求項28または29に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項31】
前記第2モードが選択された場合、前記コンピュータに記憶された情報の第2のバックアップ情報を、前記分析装置には接続されずに前記コンピュータに接続された別のコンピュータに送信する工程を更に含む、請求項28~30のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項32】
前記バックアップ情報を取得する工程は、前記他のコンピュータから、専用の通信回線を介して前記バックアップ情報を取得する工程を含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項33】
前記第1モードが選択された場合、前記コンピュータの起動時に、前記第2モードの選択を受け付ける画面を表示する工程を更に含む、請求項28~32のいずれか1項に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項34】
分析装置の制御および前記分析装置に関するバックアップ情報の取得を実行するコンピュータであって、
制御部を備え、
前記制御部は、
前記分析装置に接続され、前記分析装置を制御する他のコンピュータに記憶された情報の前記バックアップ情報を取得する第1モード、又は、前記分析装置を制御する第2モードを選択する工程と、
前記第1モードが選択された場合、前記他のコンピュータから前記バックアップ情報を取得する工程と、
前記第2モードが選択された場合、前記分析装置を制御する工程と、を実行し、
前記他のコンピュータ
の所定の通信ポートは、前記分析装置で得られた分析結果を管理するホストコンピュータにネットワークを介して接続されており、
前記バックアップ情報は、
前記他のコンピュータの通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、前記他のコンピュータと前記ホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を含み、
前記制御部は、前記第2モードが選択された場合、前記他のコンピュータと前記ホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を用いて、
前記所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた前記コンピュータの通信ポートを利用して前記コンピュータと前記ホストコンピュータとの接続を確立する工程を更に実行する、コンピュータ。
【請求項35】
分析装置の制御および前記分析装置に関するバックアップ情報の取得のためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記分析装置に接続され、前記分析装置を制御する他のコンピュータに記憶された情報の前記バックアップ情報を取得する第1モード、又は、前記分析装置を制御する第2モードを選択する工程と、
前記第1モードが選択された場合、前記他のコンピュータから前記バックアップ情報を取得する工程と、
前記第2モードが選択された場合、前記分析装置を制御する工程と、を実行させ、
前記他のコンピュータ
の所定の通信ポートは、前記分析装置で得られた分析結果を管理するホストコンピュータにネットワークを介して接続されており、
前記バックアップ情報は、
前記他のコンピュータの通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、前記他のコンピュータと前記ホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を含み、
前記コンピュータに、前記第2モードが選択された場合、前記他のコンピュータと前記ホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を用いて、
前記所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた前記コンピュータの通信ポートを利用して前記コンピュータと前記ホストコンピュータとの接続を確立する工程を更に実行させる、プログラム。
【請求項36】
分析装置に接続され、前記分析装置を制御するメインコンピュータ、および、前記メインコンピュータに接続されたバックアップコンピュータにより、分析装置の制御に関するバックアップ情報の送信および取得を実行する検体分析システムの制御方法であって、
前記バックアップ情報は、前記メインコンピュータと、前記メインコンピュータの所定の通信ポートとネットワークを介して通信可能に接続された、分析結果を管理するためのコンピュータとの通信に関する設定情報を含み、
前記設定情報は、前記メインコンピュータの通信ポートに割り当てられたアドレスを含み、
前記設定情報は、前記バックアップコンピュータが、前記所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた通信ポートから前記コンピュータに分析結果を送信するための情報であり、
前記バックアップコンピュータにより、設定された第1のスケジュールに従って前記メインコンピュータを起動する工程と、
前記メインコンピュータを起動する工程の後、前記バックアップコンピュータにより、前記バックアップコンピュータをシャットダウンする工程と、
前記メインコンピュータを起動する工程の後、前記メインコンピュータにより、前記分析装置を制御する工程と、
前記メインコンピュータにより、前記第1のスケジュールより遅い時刻に設定された第2のスケジュールに従って前記バックアップコンピュータを起動する工程と、
前記バックアップコンピュータを起動する工程の後、前記メインコンピュータから、前記メインコンピュータに記憶された情報の前記バックアップ情報を、前記バックアップコンピュータに送信する工程と、
前記バックアップコンピュータにより、前記メインコンピュータから、前記バックアップ情報を取得する工程と、
前記バックアップ情報を前記バックアップコンピュータに送信する工程の後、前記メインコンピュータにより、前記メインコンピュータをシャットダウンする工程と、
を含む、検体分析システムの制御方法。
【請求項37】
前記メインコンピュータが、前記メインコンピュータを起動するスケジュールの設定を受け付け、受け付けた前記スケジュールを前記バックアップコンピュータに設定する、請求項36に記載の検体分析システムの制御方法。
【請求項38】
前記メインコンピュータが、前記バックアップコンピュータを起動するスケジュールの設定と、前記メインコンピュータを起動するスケジュールの設定と、を受け付ける、請求項36または37に記載の検体分析システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析システムの制御方法、検体分析システム、コンピュータおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2台の自動分析装置と2台の操作部が同一のローカルエリアネットワークに接続されている検体分析システムにおいて、主操作部に記憶された検量線情報、試薬残量情報等の装置固有情報を副操作部の記憶媒体上にバックアップする構成が開示されている。主操作部及び副操作部は、検体毎の分析項目を入力したり、分析のスタート・ストップの指示を入力するなどの自動分析装置とのマンマシンインターフェースとして使用される。主操作部に異常が発生した場合、主操作部と同一ネットワーク上に接続されている副操作部の設定を、主操作部として使用できるよう設定変更する。これにより、副操作部が主操作部に代わって、主操作部が行っていた処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主操作部に異常が発生すると検体分析を継続できないため、上記した副操作部の設定変更は、速やかに実行する必要がある。しかし、主操作部に異常が発生して副操作部への切り替えが必要になることは頻繁に発生するものではないため、通常、検体分析システムの使用者は、上記した副操作部の設定変更の作業には不慣れであり、作業に長時間を要する。上記特許文献1では、主操作部に異常が発生した場合、副操作部の設定を、主操作部として使用できるよう設定変更する必要があるが、具体的な変更方法については開示がない。
【0005】
この発明は、検体分析システムにおいて、コンピュータを代替のコンピュータに切り替える作業に要する時間を短縮することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の検体分析システム(100)の制御方法は、
図1および
図2に示すように、検体を分析する分析装置(40)を備えた検体分析システム(100)の制御方法であって、第1のコンピュータ(10)が、分析装置(40)を制御し、第1のコンピュータ(10)が、第1のコンピュータ(10)
の所定の通信ポートとネットワークを介して通信可能に接続された、分析結果を管理するための第2のコンピュータ(20)に、分析結果を送信し、第1のコンピュータ(10)が、第1のコンピュータ(10)と通信可能に接続された第3のコンピュータ(30)に、分析装置(40)の制御プログラム(60)に関する設定情報(51c)、および、
第1のコンピュータ(10)の通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、第1のコンピュータ
(10)と第2のコンピュータ(20)との通信に関する設定情報(52c)を送信し、第3のコンピュータ(30)が、第1のコンピュータ(10)から送信された制御プログラム(60)に関する設定情報(51c)、および通信に関する設定情報(52c)を記憶し、第1のコンピュータ(10)に代わって、第3のコンピュータ(30)が、記憶した制御プログラム(60)に関する設定情報(51c)に基づき分析装置(40)を制御し、記憶した通信に関する設定情報(52c)に基づき
所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた通信ポートから第2のコンピュータ(20)に分析結果を送信する。
【0007】
本発明の検体分析システム(100)の制御方法は、分析装置(40)に接続された第1のコンピュータ(10)の故障時に、第3のコンピュータ(30)が、予め記憶した制御プログラム(60)に関する設定情報(51c)に基づき分析装置(40)を制御し、予め記憶した通信に関する設定情報(52c)に基づき第2のコンピュータ(20)と通信する。これにより、検体分析システム(100)において、コンピュータ(10)を代替のコンピュータ(30)に切り替える作業に要する時間を短縮することができる。
【0008】
本発明の検体分析システム(100)は、
図1および
図2に示すように、検体を分析する分析装置(40)と、分析装置(40)を制御
する第1のコンピュータ(10)であって、
第1のコンピュータ(10)の所定の通信ポートとネットワークを介して
通信可能に接続された、分析結果を管理する第2のコンピュータ(20)に分析結果を送信する第1のコンピュータ(10)と、第1のコンピュータ(10)と通信可能に接続された第3のコンピュータ(30)と、を備え、第1のコンピュータ(10)は、第3のコンピュータ(30)に、分析装置(40)の制御プログラム(60)に関する設定情報(51c)、および、
第1のコンピュータ(10)の通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、第1のコンピュータ
(10)と第2のコンピュータ(20)との通信に関する設定情報(52c)
を送信し、第3のコンピュータ(30)が、第1のコンピュータ(10)から送信された制御プログラム(60)に関する設定情報(51c)、および通信に関する設定情報(52c)を記憶し、第1のコンピュータ(10)に代わって、第3のコンピュータ(30)が、記憶した制御プログラム(60)に関する設定情報(51c)に基づき分析装置(40)を制御し、記憶した通信に関する設定情報(52c)に基づき
所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた通信ポートから第2のコンピュータ(20)に分析結果を送信する。
【0009】
本発明の検体分析システム(100)は、第1のコンピュータ(10)の故障時に、第3のコンピュータ(30)が、予め記憶した制御プログラムに関する設定情報に基づき分析装置(40)を制御し、予め記憶した通信に関する設定情報に基づき第2のコンピュータ(20)と通信する。これにより、検体分析システム(100)において、コンピュータ(10)を代替のコンピュータ(30)に切り替える作業に要する時間を短縮することができる。
【0010】
本発明の検体分析システムの制御方法は、
図1および
図2に示すように、コンピュータ(30)により、分析装置(40)の制御および分析装置(40)に関するバックアップ情報(50)の取得を実行するバックアップ方法であって、分析装置(40)に接続され、分析装置(40)を制御する他のコンピュータ(10)に記憶された情報のバックアップ情報(50)を取得する第1モード、又は、分析装置(40)を制御する第2モードを選択する工程と、第1モードが選択された場合、他のコンピュータ(10)からバックアップ情報(50)を取得する工程と、第2モードが選択された場合、分析装置(40)を制御する工程と、を含み、他のコンピュータ
(10)の所定の通信ポートは、分析装置
(40)で得られた分析結果を管理するホストコンピュータにネットワークを介して接続されており、バックアップ情報は、
他のコンピュータ(10)の通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、他のコンピュータ
(10)とホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を含み、検体分析システムの制御方法は、第2モードが選択された場合、他のコンピュータとホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を用いて、
所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられたコンピュータ
(30)の通信ポートとホストコンピュータとの接続を確立する工程を更に含む。
【0011】
本発明の検体分析システムの制御方法は、分析装置(40)を制御する他のコンピュータ(10)が正常に機能している間、コンピュータ(30)を第1モードで動作させてバックアップ情報(50)を取得させておき、コンピュータ(30)のモードを第2モードに変更することで、分析装置(40)を制御する他のコンピュータ(10)に代わって、予め記憶したバックアップ情報(50)を用いて分析装置(40)を制御することができる。これにより、検体分析システム(100)において、他のコンピュータ(10)を代替のコンピュータ(30)に切り替える作業に要する時間を短縮することができる。
【0012】
本発明のコンピュータ(30)は、
図1および
図2に示すように、分析装置(40)の制御および分析装置(40)に関するバックアップ情報(50)の取得を実行するコンピュータ(30)であって、制御部(31)を備え、制御部(31)は、分析装置(40)に接続され、分析装置(40)を制御する他のコンピュータ(10)に記憶された情報のバックアップ情報(50)を取得する第1モード、又は、分析装置(40)を制御する第2モードを選択する工程と、第1モードが選択された場合、他のコンピュータ(10)からバックアップ情報(50)を取得する工程と、第2モードが選択された場合、分析装置(40)を制御する工程と、を実行し、他のコンピュータ
(10)の所定の通信ポートは、分析装置
(40)で得られた分析結果を管理するホストコンピュータにネットワークを介して接続されており、バックアップ情報は、
他のコンピュータ(10)の通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、他のコンピュータ
(10)とホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を含み、制御部
(31)は、第2モードが選択された場合、他のコンピュータとホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を用いて、
所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられたコンピュータ(30)の通信ポートを利用してコンピュータ
(30)とホストコンピュータとの接続を確立する工程を更に実行する。
【0013】
本発明のコンピュータ(30)は、第1モードで動作させて予めバックアップ情報(50)を記憶したコンピュータ(30)のモードを第2モードに変更することで、分析装置(40)を制御する他のコンピュータ(10)に代わって、予め記憶したバックアップ情報(50)を用いて分析装置(40)を制御することができる。これにより、検体分析システム(100)において、他のコンピュータ(10)を代替のコンピュータ(30)に切り替える作業に要する時間を短縮することができる。
【0014】
本発明のプログラム(60)は、
図1および
図2に示すように、分析装置(40)の制御および分析装置(40)に関するバックアップ情報(50)の取得のためのプログラム(60)であって、コンピュータ(30)に、分析装置(40)に接続され、分析装置(40)を制御する他のコンピュータ(10)に記憶された情報のバックアップ情報(50)を取得する第1モード、又は、分析装置(40)を制御する第2モードを選択する工程と、第1モードが選択された場合、他のコンピュータ(10)からバックアップ情報(50)を取得する工程と、第2モードが選択された場合、分析装置(40)を制御する工程と、を実行させ、他のコンピュータ
(10)の所定の通信ポートは、分析装置
(40)で得られた分析結果を管理するホストコンピュータにネットワークを介して接続されており、バックアップ情報は、
他のコンピュータ(10)の通信ポートに割り当てられたアドレスを含む、他のコンピュータ
(10)とホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を含み、コンピュータ
(30)に、第2モードが選択された場合、他のコンピュータとホストコンピュータとの間の通信に関する設定情報を用いて、
所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられたコンピュータ(30)の通信ポートを利用してコンピュータ
(30)とホストコンピュータとの接続を確立する工程を更に実行させる。
【0015】
本発明のプログラム(60)は、第1モードで動作させて予めバックアップ情報(50)を記憶したコンピュータ(30)のモードを第2モードに変更することで、分析装置(40)を制御する他のコンピュータ(10)に代わって、予め記憶したバックアップ情報(50)を用いて分析装置(40)を制御することができる。これにより、検体分析システム(100)において、他のコンピュータ(10)を代替のコンピュータ(30)に切り替える作業に要する時間を短縮することができる。
【0016】
本発明の検体分析システムの制御方法は、
図1および
図9に示すように、分析装置
(40)に接続され、分析装置
(40)を制御するメインコンピュータ
(10)、および、メインコンピュータ
(10)に接続されたバックアップコンピュータ(30)により、分析装置(40)の制御に関するバックアップ情報(50)の送信および取得を実行する検体分析システム(100)の制御方法であって、
バックアップ情報(50)は、メインコンピュータ(10)と、メインコンピュータ(10)の所定の通信ポートとネットワークを介して通信可能に接続された、分析結果を管理するためのコンピュータとの通信に関する設定情報を含み、設定情報は、メインコンピュータ(10)の通信ポートに割り当てられたアドレスを含み、設定情報は、バックアップコンピュータ(30)が、所定の通信ポートと同じアドレスが割り当てられた通信ポートからコンピュータに分析結果を送信するための情報であり、バックアップコンピュータ
(30)により、設定された第1のスケジュールに従ってメインコンピュータ(10)を起動する工程と、メインコンピュータ
(10)を起動する工程の後、バックアップコンピュータ
(30)により、バックアップコンピュータ
(30)をシャットダウンする工程と、メインコンピュータ
(10)を起動する工程の後、メインコンピュータ
(10)により、分析装置
(40)を制御する工程と、メインコンピュータ
(10)により、第1のスケジュールより遅い時刻に設定された第2のスケジュールに従ってバックアップコンピュータ
(30)を起動する工程と、バックアップコンピュータ
(30)を起動する工程の後、メインコンピュータ
(10)から、メインコンピュータ
(10)に記憶された情報のバックアップ情報を、バックアップコンピュータ
(30)に送信する工程と、バックアップコンピュータ
(30)により、メインコンピュータ(10)から、バックアップ情報(50)を取得する工程と、バックアップ情報
(50)をバックアップコンピュータ
(30)に送信する工程の後、メインコンピュータ
(10)により、メインコンピュータ
(10)をシャットダウンする工程と、を含む。
【0017】
これにより、バックアップ情報(50)を記憶するバックアップコンピュータ(30)により、分析装置(40)を制御するメインコンピュータ(10)を起動することが可能となり、メインコンピュータ(10)の起動のために別途コンピュータを設けることなく、ユーザの都合に合わせたメインコンピュータ(10)の自動起動が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、検体分析システムにおいて、コンピュータを代替のコンピュータに切り替える作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1のコンピュータが正常に稼働しているときの検体分析システムを示したブロック図である。
【
図2】第1のコンピュータが故障したときの検体分析システムを示したブロック図である。
【
図5】検体分析システムを構成する各ユニットの相互接続関係を示すブロック図である。
【
図6】測定ユニットおよび搬送ユニットの構成例を示した模式図である。
【
図7】コンピュータのハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】バックアップ情報を説明するための図である。
【
図9】検体分析システムの動作を説明するためのフロー図である。
【
図10】バックアップ処理におけるコンピュータの制御部の処理(A)およびバックアップコンピュータの制御部の処理(B)を示したフロー図である。
【
図11】コンピュータの自動起動処理における通信インターフェースの処理(A)およびバックアップコンピュータの制御部の処理(B)を示したフロー図である。
【
図12】第1スケジュールの設定画面を含むGUIを示した図である。
【
図13】第2スケジュールの設定画面を含むGUIを示した図である。
【
図14】バックアップ対象とする情報の設定を行う設定画面を示した図である。
【
図15】コンピュータの故障時に、コンピュータとバックアップコンピュータとを交換した状態を示したシステム構成図である。
【
図16】バックアップコンピュータを第1モードから第2モードに切り替える処理を説明するためのフロー図である。
【
図17】第2モードの選択を受け付ける画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[検体分析システムおよび検体分析システムの制御方法の概要]
まず、
図1および
図2を参照して、本実施形態による検体分析システム100および検体分析システム100の制御方法の概要について説明する。
【0024】
(検体分析システム)
図1に示すように、検体分析システム100は、分析装置40と、第1のコンピュータ10と、第3のコンピュータ30と、を備える。第1のコンピュータ10は、ネットワークNWを介して、第2のコンピュータ20と通信可能である。検体は、生物由来の試料である。検体は、患者などの被験体から採取される。検体分析システム100は、検体の分析を行い、検体の分析結果を生成する。
【0025】
分析装置40は、検体を分析する。分析装置40は、検体分析システム100に1台または複数台設けられる。分析装置40は、コンピュータ10による制御の下、検体中の検出対象成分の測定動作を実行する。分析装置40は、検出対象成分の測定結果をコンピュータ10に出力する。
【0026】
コンピュータ10は、1台または複数台の分析装置40を制御するメインコンピュータである。コンピュータ10は、検体分析システム100に1台または複数台設けられる。コンピュータ10は、分析装置40から出力された、検体中の検出対象成分の測定結果を取得する。コンピュータ10は、取得した検出対象成分の測定結果を解析し、検体の分析結果を生成する。コンピュータ10は、ネットワークNWを介して、分析結果を管理するコンピュータ20に分析結果を送信する。
【0027】
コンピュータ20は、コンピュータ10から送信された分析結果を受信し、記憶する。コンピュータ20は、たとえば検体分析システム100における検体情報を管理するホストコンピュータである。検体分析システム100で分析される個々の検体は、固有の識別情報である検体IDが付与される。検体分析システム100では、検体IDにより、個々の検体、検体の由来となった被験体の情報、および分析結果の情報が互いに対応付けられて管理される。コンピュータ20は、検体ID、検体に対する測定オーダー、被験体の情報、分析結果の情報などを管理する。
【0028】
コンピュータ30は、コンピュータ10と通信可能に接続されている。コンピュータ30は、メインコンピュータであるコンピュータ10の故障時に、コンピュータ10の代わりにメインコンピュータとして機能するバックアップコンピュータである。なお、以下の説明において、バックアップコンピュータとして機能しているコンピュータ30を、バックアップコンピュータ30とよぶことがある。なお、コンピュータ10に代わってコンピュータ30が分析装置40の制御、およびコンピュータ20への分析結果の送信を行う場合としては、コンピュータ10の故障時の他に、コンピュータ10の動作が遅くなり、検体分析システム100による検査業務に支障が出ている場合、又は支障が出ることが懸念される場合などが挙げられる。
【0029】
(メインコンピュータおよびバックアップコンピュータの構成)
コンピュータ10およびコンピュータ30は、実質的に同一の構成を備えたコンピュータである。コンピュータ10は、制御部11および記憶部12を備える。コンピュータ30は、制御部31および記憶部32を備える。制御部11および制御部31は、CPU(CentralProcessingUnit)などのプロセッサにより構成される。記憶部12および記憶部32は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどにより構成される。
【0030】
以下、コンピュータ30を例として、更に説明する。制御部31は、(1)分析装置40に接続され、分析装置40を制御するコンピュータ10に記憶された情報のバックアップ情報50を取得する第1モード、又は、分析装置40を制御する第2モードを選択する工程と、(2)第1モードが選択された場合、コンピュータ10からバックアップ情報50を取得する工程と、(3)第2モードが選択された場合、分析装置40を制御する工程と、を実行する。
【0031】
コンピュータ30の記憶部32は、制御部31を、モード選択部31a、分析装置制御部31b、解析部31c、バックアップ情報送信部31d、およびバックアップ情報受信部31eとして機能させるための制御プログラム60と、バックアップ情報50とを記憶する。制御プログラム60は、コンピュータ30にインストールされる。バックアップ情報50は、コンピュータ10の記憶部12に記憶された情報のコピーであり、コンピュータ10にインストールされた制御プログラム60のコピーである制御プログラム60c、制御プログラム60に関する設定情報51のコピーである設定情報51c、コンピュータ10とコンピュータ20との間の通信に関する設定情報52のコピーである通信設定情報52c、および分析結果55のコピーである分析結果55cを含む。なお、バックアップ情報50は、これらの情報全てを含む必要はなく、例えば、設定情報51cおよび通信設定情報52cのみを含んでいてもよい。
【0032】
制御プログラム60は、分析装置40の制御、ホストコンピュータ20との通信、およびバックアップ情報50の取得のためのプログラムである。制御部31は、コンピュータ30にインストールされた制御プログラム60を実行することにより、上記工程(1)~(3)を実行する。
【0033】
すなわち、制御部31は、制御プログラム60を実行することにより、モード選択部31a、分析装置制御部31b、解析部31c、バックアップ情報送信部31dおよびバックアップ情報受信部31eとして機能する。
【0034】
モード選択部31aは、コンピュータ30を、第1モードと第2モードとのうち、いずれのモードで動作させるかを選択する。モード選択部31aは、入力装置を介して受け付けられる操作入力に基づいて、第1モードと第2モードとのいずれかを選択する。
【0035】
〈第1モード〉
制御部31は、第1モードが選択された場合、バックアップ情報受信部31eとして機能する。
【0036】
バックアップ情報受信部31eは、コンピュータ10から送信されたバックアップ情報50を受信し、記憶部32に記録する。
【0037】
バックアップ情報受信部31eは、コンピュータ10から、専用の通信回線285を介してバックアップ情報50を取得する。これにより、コンピュータ10が、コンピュータ20および分析装置40と通信するときの通信速度が低下すること抑止できる。特に、バックアップ情報50が後述するスキャッタグラムの情報を含む場合、その通信量が大きいため、コンピュータ10とコンピュータ30との通信回線と、コンピュータ10とコンピュータ20及び/又は分析装置40との通信回線とが共用であると、コンピュータ10が、コンピュータ20および分析装置40と通信するときの通信速度が低下するが、専用の通信回線285を用いることにより、そのような通信速度の低下を抑止できる。専用の通信回線は、コンピュータ30とコンピュータ10とを直接接続する通信ケーブルであることが好ましいが、コンピュータ30とコンピュータ10とが集線装置を介して接続されていてもよい。通信ケーブルは、例えばLANケーブルであり、LANケーブルは、クロスケーブルであってもストレートケーブルであってもよい。
【0038】
〈第2モード〉
以下、コンピュータ10を例として、第2モードを説明する。制御部11は、第2モードが選択された場合、分析装置制御部31b、解析部31c、バックアップ情報送信部31dとして機能する。
【0039】
分析装置制御部31bは、コンピュータ10にインストールされた制御プログラム60、および設定情報51を用いて分析装置40を制御する。
【0040】
分析装置制御部31bは、分析装置40による検体の測定開始、測定終了、検体毎の測定項目の指示などを、分析装置40に送信する。分析装置制御部31bは、分析装置40から検出対象成分の測定結果を取得する。
【0041】
解析部31cは、分析装置40から取得した測定結果を解析し、検体の分析結果を生成し、分析結果55として記憶部12に記憶する。
【0042】
また解析部31cは、記憶部12に記憶した分析結果55を、コンピュータ20に送信する工程を実行する。
【0043】
バックアップ情報送信部31dは、設定情報51、通信設定情報52、分析結果55、および制御プログラム60をコピーすることによりバックアップ情報50を生成し、生成したバックアップ情報50をコンピュータ30に送信する。
【0044】
(検体分析システムの制御方法)
次に、上記した検体分析システム100の制御方法を説明する。
【0045】
本実施形態の検体分析システム100の制御方法では、コンピュータ10が、分析装置40を制御する。コンピュータ10が、コンピュータ20に、ネットワークNWを介して分析結果55を送信する。コンピュータ10が、コンピュータ30に、バックアップ情報50を送信する。コンピュータ10の正常稼働中、コンピュータ30が、バックアップ情報50を受信し、記憶部32に記憶する。コンピュータ10の故障時などに、コンピュータ10に代わって、コンピュータ30が、分析装置40およびコンピュータ20と通信ケーブルで接続され、予め記憶部32に記憶した制御プログラム60に関する設定情報51cに基づき分析装置40を制御し、予め記憶部32に記憶した通信に関する通信設定情報52cに基づきコンピュータ20に分析結果を送信する。
【0046】
これにより、検体分析システム100において、コンピュータ10を代替のコンピュータ30に切り替える作業に要する時間を短縮することができる。
【0047】
図1に示すように、コンピュータ10は、コンピュータ10の正常稼働中、第2モードが選択されることにより、メインコンピュータとして動作する。コンピュータ30は、コンピュータ10の正常稼働中、第1モードが選択されることにより、バックアップ用のコンピュータとして動作する。これにより、コンピュータ10のバックアップ情報送信部31dが、バックアップ情報50を送信し、コンピュータ30のバックアップ情報受信部31eが、送信されたバックアップ情報50を受信し、記憶部32に記憶する。その結果、コンピュータ10の正常稼働中、コンピュータ30の記憶部32には、バックアップ情報50が最新の状態を維持するように記録される。
【0048】
図2に示すように、コンピュータ10が故障した時、検体分析システム100のユーザが、コンピュータ10の通信ポートに接続されていたケーブルを、コンピュータ30の通信ポートにつなぎ替える。すなわち、コンピュータ30が、分析装置40およびコンピュータ20とそれぞれ接続される。そして、コンピュータ30のモード選択部31aが、ユーザの操作入力に応じて第2モードを選択する。これにより、コンピュータ30の動作モードが第1モードから第2モードに切り替わる。また、モード選択部31aが、設定情報51c、通信設定情報52cを、制御プログラム60の実行に適した、記憶部32内のフォルダにコピーする。また、モード選択部31aが、制御プログラム60cを制御プログラム60に上書きして制御プログラム60とし、制御プログラム60cを削除する。これにより、コンピュータ10において制御プログラム60が更新されていた場合であっても、コンピュータ30の制御プログラム60のバージョンが、コンピュータ10の制御プログラム60のバージョンと同じになる。なお、コンピュータ30の制御プログラム60のバージョンが最新のものである場合、もしくは他の方法でコンピュータ30の制御プログラム60を更新する場合には、制御プログラム60cによる制御プログラム60の上書きは省略できる。
【0049】
これにより、第2モードに切り替えられたコンピュータ30の制御部31が、記憶部32に記憶された通信設定情報52cに基づいてコンピュータ20とのネットワークNWを介した通信接続を確立する。その後、分析装置制御部31bが分析装置40を制御して分析装置40から測定結果を受信し、解析部31cが測定結果を解析して分析結果を生成し、記憶部32に記憶する。また解析部31cが、ネットワークNWを介して分析結果をコンピュータ20に送信する。
【0050】
コンピュータ30が第2モードでの動作を開始した後、検体分析システム100には、新たなバックアップ用コンピュータを導入できる。ユーザは、新たなコンピュータを、第1モードで動作するように設定する。この結果、コンピュータ30がメインコンピュータ、新たなコンピュータがバックアップ用のコンピュータとして、上記した動作を行う。
【0051】
コンピュータ30が第2モードでの動作を開始した後、検体分析システム100には、新たなメインコンピュータを導入してもよい。この場合、新たなコンピュータは、第2モードで動作するように設定される。ユーザは、コンピュータ30の通信ポートに接続されていた通信ケーブルを、新たなコンピュータの通信ポートにつなぎ替える。またユーザは、コンピュータ30と新たなコンピュータとを通信ケーブルで接続する。ユーザは、コンピュータ30を第1モードで動作するように設定する。この結果、新たなコンピュータがメインコンピュータ、コンピュータ30がバックアップ用のコンピュータとして、上記した動作を行う。
【0052】
これにより、本実施形態では、分析装置40を制御するコンピュータ10が正常に機能している間、コンピュータ30を第1モードで動作させてバックアップ情報50を取得させておき、コンピュータ10の故障時に、コンピュータ30のモードを第2モードに変更することで、予め記憶したバックアップ情報50を用いて分析装置40を制御することができる。これにより、検体分析システム100において故障した他のコンピュータ10を代替のコンピュータ30に切り替える作業に要する時間を短縮することができる。特に、コンピュータの通信設定には、コンピュータネットワークに関する専門的な知識が要求される。検体分析システム100のユーザは、コンピュータネットワークに関する専門的な知識を有していない場合が多く、従来のバックアップコンピュータでは、その設定に長時間を要したり、専門の作業者の訪問を待ったりする必要があったが、本実施形態によれば、コンピュータ30に予め通信設定情報52cが記憶されているため、モードを第2モードに変更することで、短時間で切り替え作業を完了させることができる。
【0053】
[検体分析システムの構成]
次に、
図3~
図8を参照して、検体分析システム100の構成を詳細に説明する。
【0054】
図3および
図4において、水平面内で直交する2方向をX方向およびY方向とし、上下方向をZ方向とする。Y方向のうち、検体分析システム100の前方および後方をそれぞれY1方向およびY2方向とする。X方向のうち、検体分析システム100の左方向および右方向をそれぞれX1方向およびX2方向とする。Z方向のうち、上方向および下方向をそれぞれZ1方向およびZ2方向とする。
【0055】
図3および
図4に示す検体分析システム100は、分析装置である第1測定ユニット110Aと、第2測定ユニット110Bと、搬送装置である搬送ユニット120と、測定ユニットを制御するコンピュータ10(
図4参照)と、コンピュータ10と通信可能に接続されたバックアップコンピュータ30(
図4参照)とを備える。第1測定ユニット110Aおよび第2測定ユニット110Bは、分析装置40の一例である。
【0056】
本実施形態では、検体分析システム100は、第1測定ユニット110A、第2測定ユニット110B、搬送ユニット120、コンピュータ10およびバックアップコンピュータ30を含む単位システム101を2つ備える。2つの単位システム101は、隣り合って配置され、互いの搬送ユニット120が接続されている。単位システム101(
図3参照)は、検体分析システム100の最小構成単位でもある。なお、「搬送ユニットが接続される」とは、接続された搬送ユニットの間で検体ラック91を相互に受け渡すことが可能なように、搬送路が連結されることである。
【0057】
図4に示すように、第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bとは、生物由来の検体を分析する分析装置であって、搬送ユニット120に沿って並んで配置されている。第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bとは、たとえば血液分析装置であって、具体的には血球計数装置である。
【0058】
搬送ユニット120は、測定ユニットの前方(Y1方向)に配置されている。搬送ユニット120は、搬送コントローラ170によって制御される。搬送ユニット120は、複数のラック搬送路を備え、第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bに検体ラック91を振り分けて供給することが可能である。検体ラック91は、複数の検体容器90を直立状態で保持可能である。検体容器90は、血液検体が入った容器である。
【0059】
図4の例では、検体分析システム100は、2つの単位システム101に加えて、投入ユニット130をさらに備える。投入ユニット130は、2つの単位システム101よりも上流側(X2方向側)に配置されている。投入ユニット130は、2つの単位システム101のうち上流側に配置される1つの単位システム101と隣り合って配置されている。投入ユニット130は、検体ラック91を単位システム101に搬送するための搬送ユニット131を備える。測定前の検体容器90を保持した検体ラック91が、ユーザにより搬送ユニット131にセットされる。搬送ユニット131は、隣り合う単位システム101の搬送ユニット120と接続されている。
【0060】
検体分析システム100は、さらに、処理ユニット140と、搬送ユニット150と、回収ユニット160とを備える。処理ユニット140は、血液検体の塗抹標本を作製する装置である。回収ユニット160は、使用済みの検体容器90(検体ラック91)を回収する装置である。処理ユニット140は、2つの単位システム101のうち下流側(X1方向側)に配置される1つの単位システム101と隣り合って配置され、回収ユニット160は、処理ユニット140よりも検体分析システム100の下流側において、処理ユニット140と隣り合って配置されている。
【0061】
搬送ユニット150は、検体ラック91を処理ユニット140に搬送するためのラック搬送路を備え、処理ユニット140の前方(Y1方向)に配置されている。また、搬送ユニット150は、単位システム101の搬送ユニット120および回収ユニット160にそれぞれ接続されている。
【0062】
このように、
図4の検体分析システム100では、検体ラック91の搬送方向の上流側(X2方向)から下流側(X1方向)に向けて、投入ユニット130、上流側の単位システム101、下流側の単位システム101、処理ユニット140、回収ユニット160がこの順で並んで設置されている。投入ユニット130、上流側の単位システム101、下流側の単位システム101、処理ユニット140、回収ユニット160の各搬送ユニット(120、131、150)は、隣り合う搬送ユニットと相互に接続されている。これにより、検体分析システム100は、投入ユニット130に設置された検体ラック91を、上流側の単位システム101、下流側の単位システム101、処理ユニット140、回収ユニット160へ搬送方向(X1方向)に沿って順番に搬送できる。
【0063】
図3に示すように、検体分析システム100が備える各ユニットは、それぞれ支持台の上に載置されている。たとえば、1つの単位システム101を構成する第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bおよび搬送ユニット120が、1つの支持台124の上に載置されている。支持台124の内部には、測定ユニットで使用される試薬が入った試薬容器125が収納されている。コンピュータ10の制御部11は、試薬の種類、残量、ロット番号、使用期限に関する情報を管理している。
【0064】
図4に示すように、検体分析システム100では、コンピュータ10は、ネットワークNW1を介して精度管理サーバ200に接続されている。精度管理サーバ200は、「コンピュータ20」の一例である。コンピュータ10は、測定ユニットで、所定の測定対象成分を既知濃度で含む精度管理検体が測定された場合に、その分析結果を精度管理サーバ200に送信する。精度管理サーバ200は、コンピュータ10から送信される精度管理検体の分析結果を記憶する。ネットワークNW1は、例えばインターネットである。
【0065】
検体分析システム100では、コンピュータ10は、ネットワークNW2を介してホストコンピュータ250に接続されている。ホストコンピュータ250は、「コンピュータ20」の一例である。検体分析システム100は、例えば、病院等の検査室に設置される。この場合、ホストコンピュータ250の一例は、複数の検査機器に接続され、各検査機器に必要な情報を提供するコンピュータであり、臨床検査情報システム(LIS;Laboratory Information System)を構成する。ホストコンピュータ250には、各検体容器90に対して行われる検査に関する情報が登録されている。コンピュータ10は、検体容器90に付された検体IDにより、ホストコンピュータ250から、検体の測定オーダーを取得する。コンピュータ10は、測定オーダーに従って検体の分析結果を生成した場合に、生成した分析結果を検体IDとともにホストコンピュータ250に送信する。ホストコンピュータ250はコンピュータ10から送信される分析結果を検体IDと対応付けて記憶する。ネットワークNW2は、例えば、コンピュータ10およびホストコンピュータ250が設置された施設のローカルエリアネットワーク(LAN)である。
【0066】
図5は、検体分析システム100を構成する各ユニットの相互接続関係を示すブロック図である。
図5に示すように、コンピュータ10は、単位システム101毎に設けられている。コンピュータ10は、同じ単位システム101内の測定ユニットと通信可能に接続され、同じ単位システム101内の測定ユニットを制御する。コンピュータ10は、制御部11により、第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bとを制御する。また、コンピュータ10は、制御部11により、第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bとから検体の測定データを受信して、測定項目に応じた検体の分析結果を生成し、記憶部12に記憶するように構成されている。
【0067】
(測定ユニットの構成)
第1測定ユニット110Aおよび第2測定ユニット110Bは、実質的に同種類の分析装置である。具体的には、第2測定ユニット110Bは、第1測定ユニット110Aと同じ測定原理を使用して、同一の測定項目について検体を測定する。さらに、第2測定ユニット110Bは、第1測定ユニット110Aが分析しない測定項目についても測定する。第1測定ユニット110Aおよび第2測定ユニット110Bの装置構成は同様であるので、以下、代表して、第1測定ユニット110Aの構成を説明する。
【0068】
第1測定ユニット110Aは、
図6に示すように、吸引部111と、試料調製部112と、WBC分類測定部113と、DC測定部114と、HGB測定部115と、測定制御部116と、通信部117とを含んでいる。
【0069】
なお、搬送ユニット120は、検体容器90に付された情報記録媒体92から検体IDを読み取る情報読取部121を備える。搬送ユニット120は、検体ラック91に保持された検体容器90を情報読取部121による読み取り位置P1に順番に搬送する。情報読取部121が読み取り位置P1に配置された検体容器90の情報記録媒体92から検体IDを読み取る。情報記録媒体92は、たとえばコード化された検体IDが印字されたバーコードラベルであり、情報読取部121は、バーコードリーダである。情報読取の後、搬送ユニット120は、検体ラック91に保持された測定対象の検体容器90を、検体吸引位置P2及び/または検体吸引位置P3へ搬送する。
【0070】
吸引部111は、検体を吸引するピペット111aと、ピペット111aの移動機構とを含む。吸引部111は、検体吸引位置P2へ配置された検体容器90の内部にピペット111aを移動させ、検体を吸引させる。検体の吸引後、ピペット111aは検体容器90の外部へ退避される。なお、第2測定ユニット110Bの吸引部111は、検体吸引位置P3へ配置された検体容器90から検体を吸引する。
【0071】
試料調製部112は、検体と所定の試薬とを混合し、それぞれの測定部における測定処理に適した測定用試料を調製する。試薬は、支持台124の内部に設置された試薬容器125中の試薬の他、測定ユニットの内部にセットされる試薬容器に収容された試薬を含む、複数種類が用いられる。
【0072】
WBC分類測定部113は、光学式のフローサイトメータであり、半導体レーザ光を用いたフローサイトメトリー法により、白血球分類検出を行う。WBC分類測定部113は、レーザ光の照射に伴って測定試料流から出射された前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光を、フォトダイオードにより検出する。WBC分類測定部113は、受光量に応じて複数のフォトダイオードから出力された電気信号(前方散乱光信号、側方散乱光信号、側方蛍光信号)を増幅し、測定制御部116へ出力する。
【0073】
DC測定部114は、シースフローDC検出法により、赤血球数(RBC)および血小板数(PLT)を測定する。DC測定部114は、シース流に包まれた試料流を形成し、検出器のアパーチャ(開口)を通過させる際の検出器の電気抵抗変化を測定し、測定制御部116へ出力する。また、DC測定部114は、赤血球パルス波高値検出法により、ヘマトクリット値(HCT)を算出するための測定データも得ることが可能に構成されている。
【0074】
HGB測定部115は、SLS-ヘモグロビン法により、血色素量(HGB)を測定する。HGB測定部115は、検体、希釈液および溶血剤が混合された測定試料に対して光を照射し、測定試料の吸光度を測定し、測定制御部116へ出力する。HGB測定部115では、SLS-ヘモグロビンの濃度が吸光度として測定される。
【0075】
測定制御部116は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成されており、測定ユニットの各部の動作制御を行う。通信部117は、コンピュータ10と通信可能に接続されている。通信部117は、たとえばUSBインターフェースである。測定制御部116は、通信部117を介して、コンピュータ10へ測定結果データを送信する。また、測定制御部116は、情報読取部121により読み取られた検体IDを通信部117を介して取得し、コンピュータ10へ送信する。
【0076】
コンピュータ10の制御部11は、検体IDを用いて、ホストコンピュータ250から、検体IDに対応する検体の測定項目を取得し、取得した測定項目を測定制御部116に送信する。測定制御部116は、受信した測定項目の内容に応じて、WBC分類測定部113、DC測定部114およびHGB測定部115のいずれか又は全部による測定動作を実行する。測定制御部116は、測定項目に応じた測定結果のデータを、コンピュータ10へ送信する。コンピュータ10の制御部11が、測定結果のデータを解析することにより、分析結果を生成する。分析結果は、測定項目ごとの検出対象成分の濃度値を含む。
【0077】
(コンピュータのハードウェア構成)
図7は、コンピュータ10のハードウェア構成を例示したブロック図である。コンピュータ30のハードウェア構成は、コンピュータ10と同じであるため、コンピュータ10を例として説明する。コンピュータ10は、バス186を介して互いに接続された制御部11と、主記憶装置182と、補助記憶装置183と、入出力インターフェース184と、通信インターフェース185とを備えている。制御部11、主記憶装置182、および補助記憶装置183は、それぞれ、例えばCPU、RAM、ハードディスクドライブである。主記憶装置182および補助記憶装置183は、記憶部12の一例である。
【0078】
補助記憶装置183には、OS(Operating System)および制御プログラム60などの各種のプログラム、制御プログラム60に関する設定情報51、通信に関する通信設定情報52などが格納されている。制御プログラム60は、ネットワークを介して、コンピュータ10の外部からダウンロードされて提供されてもよいし、半導体メモリ、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータで読み取り可能な不揮発性の情報記録媒体105によって提供されてもよい。制御プログラム60は、コンピュータ10にインストールされ、補助記憶装置183に格納される。制御部11は、補助記憶装置183に格納された制御プログラム60を主記憶装置182上に展開してプログラムに含まれる命令を実行する。
【0079】
入出力インターフェース184は、コンピュータ10とコンピュータの周辺機器とを接続する。入出力インターフェース184は、たとえばUSBインターフェースである。入出力インターフェース184には、ユーザがコンピュータ10に各種情報を入力するための入力装置187、コンピュータ10が各種情報を表示するための表示装置188、および測定ユニット(第1測定ユニット110Aおよび第2測定ユニット110B)等の周辺機器が接続される。入力装置187は、たとえばキーボードおよびマウスである。表示装置188は、たとえば液晶表示ディスプレイである。
図7の例では、入力装置187、表示装置188、各測定ユニットが、USBケーブルにより入出力インターフェース184に接続されている。
【0080】
通信インターフェース185は、コンピュータ10が外部の装置と通信するための通信インターフェースカード(NIC;Network Interface Card)により構成されている。NICは、通信ポートごとに1枚ずつ設けられていることが好ましいが、複数の通信ポートに1枚のNICを設けてもよい。
【0081】
通信インターフェース185は、有線通信および無線通信が可能である。通信インターフェース185は、有線通信のための複数のLAN(Local Area Network)ポート(端子)を有する。LANポートは、いわゆるLANケーブルの接続用ソケットである。本実施形態では、通信インターフェース185は、3以上のLANポートを有する。
【0082】
第1のLANポート185aは、バックアップコンピュータとの通信に用いられる。コンピュータ10とバックアップコンピュータ30とは、各々の第1のLANポート185a同士が、集線装置を介さずにLANケーブルで接続される。これにより、バックアップコンピュータ30とコンピュータ10とは、1対1のネットワークを形成する。
【0083】
第2のLANポート185bは、ホストコンピュータ250との通信に用いられる。コンピュータ10は、第2のLANポート185bに接続されたLANケーブルにより集線装置172と接続され、集線装置172がネットワークNW2に接続されている。集線装置は、ネットワークハブやルーターなどの1又は複数の中継機器の総称である。コンピュータ10は、ネットワークNW2を介して、ホストコンピュータ250と通信が可能である。バックアップコンピュータ30の第2のLANポート185bは、使用されず未接続とされる。
【0084】
第3のLANポート185cは、精度管理サーバ200との通信に用いられる。コンピュータ10は、第3のLANポート185cに接続されたLANケーブルにより集線装置171と接続され、集線装置171がネットワークNW1に接続されている。コンピュータ10は、ネットワークNW1を介して、精度管理サーバ200と通信が可能である。バックアップコンピュータ30の第3のLANポート185cは、使用されず未接続とされる。
【0085】
これらの第1~第3のLANポートには、互いに異なる固定IPアドレスが割り当てられる。そのため、コンピュータ10の故障時には、ユーザによって、コンピュータ10の第2のLANポート185bおよび第3のLANポート185cにそれぞれ接続された各LANケーブルが、バックアップコンピュータ30の同じポート(第2のLANポート185bおよび第3のLANポート185c)につなぎ替えられる。この結果、バックアップコンピュータ30が通信設定情報52cを適用すると、元のコンピュータ10と同じ固定IPアドレスを利用して、ホストコンピュータ250および精度管理サーバ200の各々との通信が可能である。つまり、ホストコンピュータ250および精度管理サーバ200の側から通信を行う場合に設定変更等が不要となる。
【0086】
(コンピュータ10の機能)
以下、メインコンピュータとしてのコンピュータ10の機能を説明する。
図5に示すように、コンピュータ10の制御部11は、通信設定情報52に基づき、生成した分析結果をホストコンピュータ250または精度管理サーバ200に送信する。送信される分析結果は、検体の分析結果もしくは精度管理検体の分析結果である。検体の分析結果は、ホストコンピュータ250に送信される。精度管理検体の分析結果は、精度管理サーバ200に送信される。
【0087】
コンピュータ10の制御部11は、測定ユニットより得られる測定結果に関する情報を記憶部12に記憶する。測定結果に関する情報には、検体の識別番号、測定項目ごとの検出対象成分の濃度に関する情報(分析結果)、検体を取得した患者に関する情報、が含まれる。これらの測定結果に関する情報は、検体ID(すなわち、検体の識別番号)に関連付けて記憶される。
【0088】
また、制御部11は、測定ユニットの保守に関する情報も記憶部12に記憶する。測定ユニットの保守に関する情報は、エラーやアラート等の各種履歴に関する情報、キャリブレーションおよび精度管理に関する情報を含む。また、制御部11は、測定ユニットの取扱説明に関する情報を記憶する。取扱説明に関する情報は、取扱説明書のデータである。
【0089】
また、制御部11は、測定ユニットを制御する制御プログラム60に関する設定情報51を記憶部12に記憶する。制御プログラム60に関する設定情報51が、ユーザに関する情報、測定結果の評価基準に関する情報、分析装置(測定ユニット)の接続台数、分析装置(測定ユニット)の識別番号、および、分析装置(測定ユニット)が測定可能な項目に関する情報を含む。
【0090】
ユーザに関する情報は、制御プログラム60を使用するユーザを識別するための識別情報である。測定結果の評価基準に関する情報は、測定項目ごとの異常値の閾値に関する情報であり、測定結果が正常(あるいは陰性)か異常(あるいは陽性)かを判定するための情報である。分析装置の接続台数は、コンピュータ10に接続される測定ユニットの台数であり、
図5の例では2台である。分析装置40の識別番号は、第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bとを区別するための情報である。分析装置40が測定可能な項目に関する情報は、第1測定ユニット110Aと第2測定ユニット110Bとの各々における測定可能な測定項目の情報である。この他、設定情報51には、制御プログラム60のユーザインターフェースのレイアウト設定に関する情報が含まれる。
【0091】
制御部11は、ホストコンピュータ250および精度管理サーバ200との通信に関する通信設定情報52を記憶する。通信設定情報52は、具体的には、ホストコンピュータ250の固定IPアドレスと、コンピュータ10のLANポート185a~185cの固定IPアドレス、サブネットマスク、および、デフォルトゲートウェイの情報と、精度管理サーバ200への接続に必要なDNS設定に関する情報と、を含む。
【0092】
制御部11は、バックアップ情報50を生成し、生成したバックアップ情報50をバックアップコンピュータ30に送信する。
【0093】
制御部11は、ユーザの指示により、もしくはユーザが予め指定したスケジュールで、バックアップ情報50をバックアップコンピュータ30に送信する。バックアップコンピュータ30は、コンピュータ10から受信したバックアップ情報50を記憶する。
【0094】
なお、制御部31は制御部11と同じ種別のOSで動作するように構成されていることが好ましい。
【0095】
本実施形態では、バックアップコンピュータ30の制御プログラム60のバージョンが、コンピュータ10の制御プログラム60のバージョンと同一に構成される。これにより、制御プログラム60のバージョンの相違に起因する不具合の発生を防止できる。
【0096】
具体的には、コンピュータ10が、更新プログラムを適用して制御プログラム60をバージョンアップすると、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30に、当該更新プログラムのコピーを送信し、バックアップコンピュータ30が、当該更新プログラムのコピーを記憶する。そして、バックアップコンピュータ30により、記憶した更新プログラムのコピーを実行することにより、バックアップコンピュータ30の制御プログラム60が更新され、コンピュータ10の制御プログラム60のバージョンと同一になる。
【0097】
これにより、コンピュータ10の制御プログラム60と同じバージョン環境で、バックアップコンピュータ30が制御プログラム60を実行できる。そのため、プログラムのバージョンの相違に起因する不具合を防止できる。
【0098】
なお、制御プログラム60に更新プログラムを適用するのではなく、バックアップ情報50に含まれる、制御プログラム60のコピーである制御プログラム60cによって、制御プログラム60を書き換えることによって、バックアップコンピュータ30の制御プログラム60のバージョンを、コンピュータ10の制御プログラム60のバージョンと同一にしてもよい。また、バックアップコンピュータ30の制御プログラム60は、更新プログラムを保持するWEBサーバから更新プログラムを取得し、制御プログラム60を適用することによって更新してもよい。
【0099】
(バックアップ情報)
バックアップコンピュータ30に送信されるバックアップ情報50は、
図8に示す各種情報を含む。
【0100】
図8は、バックアップ対象となる情報のファイル名もしくはフォルダ名、それぞれのファイルもしくはフォルダに格納されているデータの内容、および記憶部32(補助記憶装置183)におけるファイルもしくはフォルダの保存ディレクトリ(パス)を示す。
【0101】
本実施形態では、バックアップコンピュータ30は、コンピュータ10から送信された情報を、コンピュータ10におけるディレクトリ構造(
図8における保存場所パス)を維持して記憶する。これにより、バックアップコンピュータ30において、ディレクトリ構造を再構築する必要がなくなる。
【0102】
「XXX.vhd」ファイル301には、制御プログラム60に関する設定情報51c、ホストコンピュータ250との通信に関する通信設定情報52c、試薬に関する試薬情報、制御プログラム60の画面表示レイアウトに関するレイアウト設定が含まれている。
【0103】
上記の通り、設定情報51cは、ユーザに関する情報、測定結果の評価基準に関する情報、分析装置(測定ユニット)の接続台数、分析装置(測定ユニット)の識別番号、および、分析装置(測定ユニット)が測定可能な項目に関する情報を含む。これにより、コンピュータ10の故障時にも、ユーザに関する情報、測定結果の評価基準に関する情報、分析装置40の接続台数、分析装置40の識別番号、分析装置40が測定可能な項目に関する情報をバックアップコンピュータ30に引き継いで、速やかに検体分析システム100の復旧を行える。
【0104】
ホストコンピュータ250との通信に関する通信設定情報52cは、ホストコンピュータ250の固定IPアドレスを含む。これにより、コンピュータ10の故障時にも、ホストコンピュータ250の固定IPアドレスをバックアップコンピュータ30に引き継いで、速やかに検体分析システム100の復旧を行える。
【0105】
「DATABASE」フォルダ302には、分析結果55c、分析結果に関連付けられた患者に関する患者情報、発生したエラーの履歴を示す履歴情報、および、測定ユニットの精度管理に関する情報が格納されている。分析結果55cには、検体の識別番号、測定項目ごとの検出対象成分の濃度に関する情報(分析結果)が含まれる。
【0106】
このように、バックアップ情報50が、分析結果55cを含む。本実施形態では、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30に、分析結果55cを送信し、バックアップコンピュータ30が、コンピュータ10から送信された分析結果55cを記憶する。これにより、分析結果のデータ全てをバックアップコンピュータ30にバックアップしておくことができる。コンピュータ10からホストコンピュータ250に送信される分析結果は、その値の正確性が確認されたものに限られるなど、コンピュータ10で得られる全ての分析結果ではないこともあるため、コンピュータ10の故障による分析結果の紛失を防ぐことが可能になる。
【0107】
また、本実施形態では、バックアップ情報50が、「DATABASE」フォルダ302において、分析結果に関連付けられた患者情報を含む。つまり、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30に、分析結果に関連付けられた患者情報を送信し、バックアップコンピュータ30が、コンピュータ10から送信された患者情報を、分析結果に関連付けて記憶する。これにより、分析結果と患者情報との関連付けを保持したまま、これらの情報をバックアップコンピュータ30でバックアップできる。
【0108】
また、本実施形態では、バックアップ情報50が、「DATABASE」フォルダ302において、測定ユニットの精度管理に関する情報を含む。つまり、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30に、測定ユニットの精度管理に関する情報を送信し、バックアップコンピュータ30が、コンピュータ10から送信された精度管理に関する情報を記憶する。これにより、測定ユニットの精度管理情報を引き継いでバックアップコンピュータ30で利用できる。そのため、バックアップコンピュータ30による復旧時に、改めて精度管理検体の分析結果を取得する必要がない。
【0109】
「SCATTER FILES」フォルダ303には、測定結果に基づき生成された分析結果のグラフ表示に関する情報が格納されている。分析結果のグラフ表示に関する情報は、測定ユニットで得られた測定結果に基づき生成したスキャッタグラム(血液中の各細胞を示すドットを、2次元又は3次元の分布図上にプロットした図)およびヒストグラムである。
【0110】
このように、本実施形態では、コンピュータ10からバックアップコンピュータ30に送信される分析結果が、当該分析結果のグラフ表示に関する情報を含む。これにより、スキャッタグラムやヒストグラムなどの分析結果のグラフ表示をバックアップコンピュータ30に記憶し、バックアップコンピュータ30で参照することができる。
【0111】
「MANUAL」フォルダ304には、制御プログラム60から参照できる取扱説明書に関する情報が格納されている。
【0112】
このように、本実施形態では、バックアップ情報50が、測定ユニットの取扱方法に関する情報を含む。そのため、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30に、測定ユニットの取扱方法に関する情報を送信し、バックアップコンピュータ30が、コンピュータ10から送信された測定ユニットの取扱方法に関する情報を記憶する。
【0113】
「AutoBackupSchedule.xml」ファイル305には、自動バックアップを実行する第1スケジュールに関する情報が含まれている。
【0114】
「AutoBootSchedule.xml」ファイル306には、制御部31によって制御部11を自動起動する第2スケジュールに関する情報が含まれている。これらの第1スケジュールおよび第2スケジュールについては、後述する。
【0115】
「BackupManagerSetting.xml」ファイル307には、バックアップ対象とする情報の設定に関する情報が含まれている。本実施形態では、
図8に示したバックアップ情報50のうち、分析結果55c、患者情報、スキャッタグラムの各情報については、バックアップ情報50に含めるか否かを個別に設定可能であり、その設定が「BackupManagerSetting.xml」ファイル307に記録される。バックアップ情報50から除外する設定がされた情報については、コンピュータ10からバックアップコンピュータ30へ送信されない。これにより、特にデータ量が多い分析結果およびスキャッタグラムの情報についてバックアップを行うか否かをユーザが主体的に選択できる。これらの情報をバックアップ情報50から除外すると、バックアップ処理に要する処理時間を効果的に低減できる。
【0116】
「mainPCAddress.xml」ファイル308には、コンピュータを自動起動するために必要なネットワークインターフェースカード(NIC)に関する情報が含まれている。コンピュータの自動起動については後述する。
【0117】
「LANInfo」ファイル309には、ホストコンピュータ250および精度管理サーバ200との通信に関する通信設定情報52cが含まれる。具体的には、「LANInfo」ファイルには、コンピュータ10のLANポート185a~185cの固定IPアドレス、サブネットマスク、およびデフォルトゲートウェイと、精度管理サーバ200への接続に必要なDNS設定に関する情報と、が含まれている。
【0118】
「OSInfo」ファイル310には、コンピュータ10に対して設定されているコンピュータ名に関する情報が含まれている。
【0119】
(検体分析システムの動作)
図9を参照して、検体分析システム100により実行される処理について説明する。
【0120】
検体分析システム100の使用方法の一例として、病院等の検査室での始業時においては、コンピュータ10は起動しておらず、バックアップコンピュータ30が起動している状態になっている例を説明する。コンピュータ10の処理は制御部11により実行される。バックアップコンピュータ30の処理は制御部31により実行される。
【0121】
ステップS1において、制御部31は、コンピュータ10の自動起動処理を行う。自動起動処理の詳細は後述する。
【0122】
ステップS2において、制御部31からの起動コマンドに応じて、制御部11は、コンピュータ10を起動する。
【0123】
自動起動処理の後、ステップS3において、制御部31は、コンピュータ30をシャットダウンする。
【0124】
ステップS4において、制御部11は、制御プログラム60を自動的に起動し、その後、検査業務に応じて分析装置40の制御を行う。
【0125】
ステップS5において、制御部11は、バックアップ処理を行う。バックアップ処理においては、コンピュータ10からバックアップコンピュータ30に、設定情報51cおよび通信設定情報52cを含むバックアップ情報が送信される。バックアップ処理の詳細は後述する。一例として、ステップS5は、検査室の一日の業務の終了時に実行される。
【0126】
ステップS6において、ステップS5においてコンピュータ10から送信される起動信号に応じて制御部31がバックアップコンピュータ30を起動し、バックアップ処理を実施する。バックアップ処理の詳細は後述する。その後、制御部31は、ステップS10まで稼働状態を継続する。
【0127】
このように、本実施形態では、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30を起動し、バックアップコンピュータ30が起動した後に、コンピュータ10が、設定情報51cおよび通信設定情報52cの送信を実行する。これにより、ユーザが手動でバックアップコンピュータ30を起動せずに設定情報のバックアップを行える。
【0128】
ステップS7において、制御部11は、コンピュータ10をシャットダウンする。
【0129】
ステップS8において、制御部31は、コンピュータ10の自動起動処理を行う。ステップS8における自動起動処理は、ステップS1の処理と同じである。一例として、ステップS8は、検査室の一日の業務の開始時に実行される。ステップS9において、制御部31からの起動コマンドに応じて制御部11は、コンピュータ10を起動する。ステップS9における起動処理は、ステップS2の処理と同じである。ステップS10において、制御部31は、バックアップコンピュータ30をシャットダウンする。ステップS10におけるシャットダウン処理は、ステップS3の処理と同じである。ステップS11において、制御部11は、制御プログラム60を自動的に起動し、その後、検査業務に応じて分析装置40の制御を行う。以降、検査分析システムは、同様の処理を繰り返す。
【0130】
このように、本実施形態では、検査施設で検査業務が遂行される間はコンピュータ10が起動し、バックアップコンピュータ30が起動していない。検査業務の終了時などの所定のタイミングでバックアップコンピュータ30へバックアップを行う際に、制御部11がバックアップコンピュータ30を起動させる。このような構成にすることにより、バックアップコンピュータ30の消費電力を低減させることができるとともに、バックアップコンピュータ30の寿命を延長し、安定性を向上させることができる。
【0131】
(コンピュータ30の自動起動及びバックアップ処理)
図10を参照して、制御部11および制御部31におけるバックアップ処理について説明する。バックアップ処理は、
図9のステップS5およびステップS6の処理である。
【0132】
図10(A)のフローチャートを用いて、制御部11のバックアップ処理(ステップS5)を説明する。制御部11は、ユーザからの手動での指示もしくは、ユーザが予め指定したスケジュールに基づき、バックアップを開始する。
【0133】
ステップS21において、制御部11は、バックアップコンピュータ30に起動コマンドを送信する。制御部11は、Wake-on-LAN(WOL)機能によりバックアップコンピュータ30を起動する。
【0134】
WOL機能は、TCP/IPプロトコルのブロードキャスト送信を利用して、起動したいコンピュータのネットワークインターフェースカード(NIC)に対してマジックパケットを送信し、コンピュータを起動させる機能である。マジックパケットは、FF:FF:FF:FF:FF:FFに続けて起動したい装置のMACアドレスを16回繰り返したデータパターンがペイロードのいずれかの位置に含まれるパケットである。つまり、送信されるマジックパケットが起動コマンドである。
【0135】
制御部11は、WOL機能を利用するため、コンピュータ10から起動コマンドを送信するTCP/IPプログラムに関する設定情報をコンピュータ10の記憶部32に記憶している。TCP/IPプログラムに関する設定情報は、バックアップコンピュータ30のNIC情報(固定IPアドレスおよびサブネットマスク)、MACアドレス情報を含む。制御部11は、ステップS21において、記憶しているバックアップコンピュータ30のMACアドレスおよびNIC情報に基づきマジックパケットを生成し、送信する。
【0136】
ステップS22において、制御部11は、制御部31が起動したことを確認する。起動の確認は、共有フォルダへのアクセス可否、pingを用いた応答要求に対する制御部31からの応答有無、制御部31から制御部11に送信される起動通知などにより確認する。制御部11は、制御部31が起動していることを確認すると、処理をステップS23に進める。
【0137】
ステップS23において、制御部11は、バックアップ情報50をバックアップコンピュータ30に送信する。これに応答して、制御部31は、バックアップ情報50を正常に受信および記憶した場合には、完了通知をコンピュータ10に送信する。制御部31は、バックアップ情報50を正常に受信および記憶できなかった場合には、エラー通知をコンピュータ10に送信する。
【0138】
バックアップ情報50の送信後、完了通知を受信した場合、
図9のステップS7において、制御部11は、コンピュータ10をシャットダウンする。バックアップ情報50の送信後、エラー通知を受信した場合、制御部11は、表示装置188にその旨を表示させる。
【0139】
次に、
図10(B)のフローチャートを用いて、制御部31のバックアップ処理(ステップS6)を説明する。
【0140】
ステップS31において、制御部31は、コンピュータ10より送信される起動コマンド(マジックパケット)を、制御部31の通信インターフェース185(ネットワークインターフェースカード)を介して受信する。
【0141】
ステップS32において、制御部31は、通信インターフェース185による起動コマンドの受信に応じて、バックアップコンピュータ30を起動する。
【0142】
ステップS33において、制御部31は、制御部11から送信されたバックアップ情報50を受信する。
【0143】
ステップS34において、制御部31は、受信したバックアップ情報50を所定のディレクトリに保存する。つまり、制御部11は、制御部31の記憶部32の共有フォルダにバックアップ情報50を記憶する。
【0144】
図8に示したように、具体的にどの情報(データファイル)をどのディレクトリにコピーするかは、「XXX.vhd」ファイル301に含まれるスクリプトファイルで規定されている。当該スクリプトファイルは、バックアップ情報50の一部として制御部31に記憶されている。ステップS34の処理は、制御部31によるスクリプトファイルの実行により進められる。
【0145】
ステップS35において、制御部31は、バックアップ情報50を記録するとき、1回前のバックアップ処理で記憶していたバックアップ情報50を削除する。これにより、記憶部32の記憶領域の空き容量を保つことができる。なお、制御部31は、1回前のバックアップ処理で記憶していたバックアップ情報50と、今回のバックアップ情報50との差分のみを、記憶部32に記憶してもよい。これにより、バックアップ処理の時間を短縮することができる。
【0146】
(コンピュータ10の自動起動)
図11を参照して、コンピュータ10の制御部11の自動起動処理について説明する。自動起動処理は、
図9のステップS2、S9およびステップS1、S8の処理である。
【0147】
本実施形態では、制御部31は、バックアップ情報の送信を完了してシャットダウンしたコンピュータ10を、ユーザが指定したタイミングで起動させることができる。これにより、業務の開始前にコンピュータ10を起動しておくことが可能になり、出勤後すぐに検体分析システム100による検体測定を開始することができる。
【0148】
まず、
図11(B)のフローチャートを用いて、制御部31の処理(ステップS1、S8)を説明する。
【0149】
ステップS41において、制御部31は、予め設定されたスケジュールに基づき、コンピュータ10を起動するための起動コマンドをコンピュータ10に送信する。
【0150】
制御部31は、WOL機能を利用するため、コンピュータ30から起動コマンドを送信するTCP/IPプログラムに関する設定情報を記憶部32に記憶している。TCP/IPプログラムに関する設定情報は、コンピュータ10のNIC情報(固定IPアドレスおよびサブネットマスク)、MACアドレス情報を含む。制御部31は、ステップS41において、記憶しているコンピュータ10のNIC情報およびMACアドレスに基づき、起動コマンド(マジックパケット)を生成し、送信する。
【0151】
なお、
図9に示したように、自動起動処理の実行後、ステップS3、S10において、制御部31は、バックアップコンピュータ30をシャットダウンする。このように、本実施形態では、バックアップコンピュータ30が、コンピュータ10の起動後に自動的に終了する。これにより、バックアップコンピュータ30の不必要な連続稼働を防止することにより、待機電力消費を低減できる。また、ユーザがバックアップコンピュータ30の操作を行う必要がない。
【0152】
次に、
図11(A)のフローチャートを用いて、制御部11の処理(ステップS2,S9)を説明する。
【0153】
ステップS51において、制御部11は、通信インターフェース185が、制御部31から送信された起動コマンド(マジックパケット)を受信したことを認識する。通信インターフェース185は、上記のように、ネットワークインターフェースカード(NIC)である。
【0154】
ステップS52において、制御部11は、コンピュータ10を起動する。
【0155】
なお、
図9のステップS4、S11に示したように、コンピュータ10の制御部11は、起動時に自動的に測定ユニットの制御プログラム60を起動する。これにより、コンピュータ10のユーザは、測定ユニットの制御プログラム60を起動する操作を行わなくても検査業務を開始できる。
【0156】
(スケジュール機能)
次に、
図12~
図14を参照して、検体分析システム100におけるスケジュール機能を説明する。
【0157】
本実施形態では、コンピュータ10が、予め設定された第1スケジュールに基づき、バックアップコンピュータ30を起動する。コンピュータ10は、バックアップコンピュータ30の起動後、バックアップコンピュータ30へのバックアップ情報50の送信を行う。これにより、バックアップコンピュータ30の起動及びバックアップ処理をスケジュールに沿って自動実行できる。第1スケジュールは、コンピュータ30の自動起動を含むバックアップ処理の実行スケジュールである。
【0158】
また、バックアップコンピュータ30が、予め設定された第2スケジュールに基づき、コンピュータ10を起動する。これにより、ユーザが手動で起動操作を行う必要がなく、バックアップ用のバックアップコンピュータ30を利用することでコンピュータ10をスケジュールに沿って自動起動できる。第2スケジュールは、業務開始時におけるメインコンピュータの自動起動の実行スケジュールである。
【0159】
このように、本実施形態では、コンピュータ10の制御部11がバックアップ処理を実行する第1スケジュール、コンピュータ30の制御部31がコンピュータ10を自動起動させる第2スケジュール、を予め設定しておくことで、スケジュールに従った自動的なバックアップ処理および起動処理が実行される。
【0160】
図12および
図13は、制御プログラム60を実行することにより表示される、第1スケジュールおよび第2スケジュールの両方を、タブの切替により設定可能なGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)320である。
図12が第1スケジュールの設定画面321を、
図13が第2スケジュールの設定画面322の例を示している。これらの設定画面は、コンピュータ10の表示装置188(
図7参照)に表示され、ユーザにより操作入力が行われる。
【0161】
すなわち、本実施形態では、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30を起動する第1スケジュールと、コンピュータ10を起動する第2スケジュールと、を受け付ける。これにより、メインコンピュータであるコンピュータ10への操作だけで、コンピュータ10への第1スケジュールの設定と、バックアップコンピュータ30への第2スケジュールの設定とを行える。
【0162】
図12および
図13に共通して表示されるカレンダー323の各日付には、自動起動スケジュール(第2スケジュール)が設定されていることを示すアイコン324とその時刻とが表示されている。また、カレンダー323の各日付には、自動バックアップスケジュール(第1スケジュール)が設定されていることを示すアイコン325が表示されている。GUI320上に、最新のバックアップが行われた日時に関する情報や、バックアップが失敗したことを示す情報が表示されるよう構成してもよい。
【0163】
第1スケジュールの設定画面321では、バックアップの実施日の設定が受け付けられる。第1スケジュールの設定画面321は、カレンダー323から選択した日をバックアップ実施日にセットするボタン321a、カレンダー323から選択した日をバックアップ実施日から解除するボタン321b、カレンダー323の全ての日をバックアップ実施日にセットするボタン321c、カレンダー323の全ての日をバックアップ実施日から解除するボタン321d、曜日選択欄から選択された曜日に該当する日をバックアップ実施日にセットするボタン321e、曜日選択欄から選択された曜日に該当する日をバックアップ実施日から解除するボタン321f、が設けられている。第1スケジュールに基づく自動的なバックアップ処理は、シャットダウン指示を受け付けた時に実施されるため、バックアップ処理の実施時刻は設定されない。
【0164】
第2スケジュールの設定画面322では、バックアップコンピュータ30からコンピュータ10を自動起動する日時の設定が受け付けられる。第2スケジュールの設定画面322は、起動時刻の設定欄322a、カレンダー323から選択した日を自動起動の指定日にセットするボタン322b、カレンダー323から選択した日を指定日から解除するボタン322c、カレンダー323の全ての日を指定日にセットするボタン322d、カレンダー323の全ての日を指定日から解除するボタン322e、曜日選択欄から選択された曜日に該当する日を指定日にセットするボタン322f、曜日選択欄から選択された曜日に該当する日を指定日から解除するボタン322g、が設けられている。これにより、第2スケジュールに基づく自動起動処理は、指定日の起動時刻に該当したときに実施される。
【0165】
第2スケジュールについては、コンピュータ10が、第2スケジュールの設定を受け付け、受け付けた第2スケジュールをバックアップコンピュータ30に設定する。これにより、ユーザは、コンピュータ10とバックアップコンピュータ30とを別々に操作する必要がなく、メインコンピュータであるコンピュータ10への操作だけでバックアップコンピュータ30への設定ができる。第2スケジュールの設定画面322で設定された第2スケジュールは、
図8に示したバックアップ情報50のうち、「AutoBootSchedule.xml」ファイル306に記録され、バックアップ処理の際にコンピュータ10からバックアップコンピュータ30に送信される。
【0166】
なお、コンピュータ30からコンピュータ10を起動する第2スケジュールの設定情報は、コンピュータ30から起動コマンドを送信するTCP/IPプログラムに関する設定情報を含む。これにより、標準的な通信プロトコルであるTCP/IPを利用したWOL機能によるコンピュータ10の起動処理を行える。このため、自動起動を行うための専用線や専用の装置を設ける必要がない。
【0167】
また、GUI320では、手動によるバックアップ実施の指示も受け付け可能である。すなわち、GUI320には、バックアップ実施ボタン326が設けられている。バックアップ実施ボタン326が選択されると、制御部11は、ステップS5のバックアップ処理を実行する。また、それに応じて、制御部31は、ステップS6のバックアップ処理を実行する。この場合、制御部11は、バックアップ処理を開始してもよいか否かを確認するためのダイアログなどを表示装置188に表示してもよい。
【0168】
また、このGUI320のバックアップ設定ボタン327が入力されることにより、
図14に示す、バックアップ対象とする情報の設定を行う設定画面328を呼び出すこともできる。バックアップ処理に関する設定は、バックアップする情報の対象として、分析結果を含めるか否か、分析結果を含める場合には分析結果に関連する患者情報も含めるか否かを設定することができる。なお、分析結果を含めない選択がされる(チェックボックスのチェックが解除される)と、スキャッタグラムの情報についてもバックアップ対象から除外される。この設定内容が、
図8に示したバックアップ情報50の「BackupManagerSetting.xml」ファイル307に記録される。
【0169】
設定画面328において、コンピュータ10から起動コマンドを送信するTCP/IPプログラムに関する設定情報を設定することができる。具体的には、TCP/IPプログラムに関する設定情報は、コンピュータ30へ起動コマンドを送信するためのコンピュータ30の固定IPアドレス、サブネットマスク、MACアドレス情報を含み、これらの情報が設定画面328から設定することができる。
【0170】
なお、第1スケジュールの設定画面321で設定された第1スケジュールについても、バックアップコンピュータ30に記憶されるバックアップ情報50に含まれる。つまり、コンピュータ10が、バックアップコンピュータ30に、第1スケジュールの設定情報を送信し、バックアップコンピュータ30が、第1スケジュールの設定情報を記憶する。第1スケジュールの設定情報は、
図8に示したバックアップ情報50の「AutoBackupSchedule.xml」ファイル305に記録される。
【0171】
第1スケジュールの設定情報は、バックアップコンピュータ30が第2モードで動作している間は、利用されない。メインのコンピュータ10が故障し、バックアップコンピュータ30がメインコンピュータとして第1モードで動作する場合に、コンピュータ30が新たに導入されるコンピュータに対して実施する第1スケジュールの設定を引き継ぐことができる。
【0172】
(コンピュータ10の故障時の動作)
図15は、コンピュータ10が故障し、コンピュータ10と、バックアップコンピュータであるコンピュータ30とを交換した状態のシステム構成図を示す。
【0173】
図15では、2台あったコンピュータ10のうち1台のコンピュータ10が故障したために、バックアップコンピュータであるコンピュータ30で検体分析システム100を復旧した状況を例示している。コンピュータ30は、コンピュータ10に代わって、第1測定ユニット110A、第2測定ユニット110B、搬送ユニット120、ホストコンピュータ250、および精度管理サーバ200と接続されている。コンピュータ30の記憶部32には、
図2に示したように、測定ユニットを制御するための制御プログラム60、制御プログラム60に関する設定情報51c、精度管理サーバ200およびホストコンピュータ250との通信に関する通信設定情報52cなどが記録されているため、コンピュータ10の故障発生時においても迅速に検体分析システムを復旧させることができる。
【0174】
コンピュータ30とホストコンピュータ250とは、コンピュータ10とホストコンピュータ250とが接続されていた時と同じLANポートで接続される。コンピュータ30と搬送ユニット120、コンピュータ30と精度管理サーバ200との接続も同様に、コンピュータ10と同じLANポートで接続される。コンピュータ30と第1測定ユニット110Aおよび第2測定ユニット110Bとは、それぞれコンピュータ10から取り外されたUSBケーブルにより接続される。
【0175】
コンピュータ30に記憶されるバックアップ情報50が、復旧時のUSBケーブルやLANケーブルのつなぎ替え手順を示すチュートリアルを実行するプログラムを含んでいてもよい。これにより、ユーザは間違いなく故障したコンピュータ10からバックアップコンピュータ30に接続を切り替えることができる。
【0176】
本実施形態では、コンピュータ10の故障時に、コンピュータ30が、バックアップ情報50の適用指示を受け付ける。コンピュータ30が、受け付けた適用指示に基づいて制御プログラム60に関する設定情報51cおよび通信設定情報52cをコンピュータ30に適用する。これにより、バックアップコンピュータ30へ適用指示を入力するだけで、コンピュータ10の故障発生までにコンピュータ30に記憶させた情報をコンピュータ30に適用させる処理を行える。
【0177】
図16にコンピュータ30を用いて検体分析システム100を復旧させる際の動作を説明する。
【0178】
ユーザがコンピュータ30の電源を投入し、オペレーションシステム(OS)などの起動処理が完了すると、ステップS61において、制御部31は、制御プログラム60を起動する。
【0179】
ステップS62において、制御部31は、これまでバックアップ用のコンピュータとして使用していたコンピュータ30を、測定ユニットを制御するためのメインコンピュータとして使用するために、第2モードの選択を受け付ける画面330(
図17参照)を表示する。
【0180】
画面330は、「Set Routine PC」ボタン331と、「Set Buckup PC」ボタン332とを含む。「Set Routine PC」ボタン331は、コンピュータを第2モードに設定する指示を入力するためのボタンである。「Set Buckup PC」ボタン332は、コンピュータを第1モードに設定する指示を入力するためのボタンである。
【0181】
図17に示すように、第1モードが選択された場合(つまり、バックアップコンピュータとして動作している場合)、コンピュータ30の起動時に、第2モードの選択を受け付ける画面330を表示する工程(ステップS62)が実行される。これにより、コンピュータ10が故障してコンピュータ30を第1モードから第2モードへ切り替える必要が生じた場合に、コンピュータ30を起動させるだけで第2モードへの切替操作を行える。このため、設定作業に不慣れなユーザにとっての利便性が向上する。
【0182】
ステップS63において、制御部31は、
図17に示す画面330において、「Set Routine PC」ボタン331の入力を受け付ける。
【0183】
ステップS64において、制御部31は、「Set Routine PC」ボタン331が入力されたことに応じて、第1モードから第2モードに切り替えて第2モードでの動作を開始する。制御部31は、バックアップ情報50を適用する処理を行う。
【0184】
より具体的には、制御部31は、「XXX.vhd」ファイル301に格納されているホストコンピュータ250の固定IPアドレスを、OSおよび通信インターフェース185の設定情報に適用する。また制御部31は、「LANInfo」ファイル309に格納されているコンピュータ10の固定IPアドレス、サブネットマスク、およびデフォルトゲートウェイと、精度管理サーバ200のDNS設定と、をOSおよび通信インターフェース185の設定情報に適用する。適用の方法は、制御プログラム60およびOSによるが、例えば、固定IPアドレス、DNS設定等の情報を、制御プログラム60が指定するフォルダに記憶することを含む。
【0185】
また、コンピュータ30は、適用指示を受け付けると、測定ユニットの制御プログラム60を自動実行する設定情報を、バックアップコンピュータ30に適用する処理を実行する。具体的には、制御部31は、コンピュータ30の起動時に、自動的に第2モードが選択されるようにフラグを設定する。また、コンピュータ30は、コンピュータ10のコンピュータ名の情報、バックアップコンピュータ30を起動する第1スケジュールの設定情報、および、コンピュータ10を起動する第2スケジュールの設定情報を、バックアップコンピュータ30に適用する処理を実行する。
【0186】
これにより、制御プログラム60を自動実行する設定情報の適用により、バックアップコンピュータ30を起動させるだけでコンピュータ10の代わりに測定ユニットの制御機能を実行できる。コンピュータ10のコンピュータ名の情報の適用により、コンピュータ10として直ちにコンピュータ20との通信を行える。第1スケジュールの設定情報の適用、および第2スケジュールの設定情報の適用によれば、次のバックアップ用のコンピュータとして新たなコンピュータを導入した場合に導入前のスケジュール設定をそのまま継続することができる。
【0187】
具体的には、制御部31は、「XXX.vhd」ファイル301により、次回以降の起動時のスタートアップ処理として、測定ユニットの制御プログラム60が自動的に起動される設定を適用する。また、制御部31は、「OSInfo」ファイル310から、故障したコンピュータ10が使用していたコンピュータ名を取得し、新たにコンピュータ30のコンピュータ名としてOSに適用する。また、制御部31は、「AutoBackupSchedule.xml」ファイル305により、第1スケジュールの設定情報を制御プログラム60に適用する。また、制御部31は、「AutoBootSchedule.xml」ファイル306により、第2スケジュールの設定情報を制御プログラム60に適用する。第2スケジュールの設定情報は、新たに導入されるバックアップコンピュータがコンピュータ30に接続されたときに、バックアップコンピュータへ反映される。
【0188】
これらの設定が完了すると、制御部31は、OSを再起動する。再起動した制御部31は、第2モードで動作を開始し、メインコンピュータであるコンピュータ10の制御部11と同様に動作することができる。なお、コンピュータ30への新たなバックアップコンピュータの接続は、直ちに実行する必要がないため、ユーザは、業務の閑散時に実行したり、フィールドエンジニアに作業を依頼したりすることもできる。
【0189】
また、バックアップコンピュータ30で第2モードが選択された場合、再起動後には、ホストコンピュータ250および精度管理サーバ200との通信に関する設定情報52cを用いて、コンピュータ30とホストコンピュータ250との接続を確立する工程が実行される。これにより、コンピュータ10の故障時に、ユーザがコンピュータ30を第2モードに変更するだけで、通信設定作業を行うことなく、ホストコンピュータ250と、コンピュータ10の代替となるコンピュータ30との通信接続を確立できる。
【0190】
また、この例では、バックアップコンピュータ30は、ステップS63で一回の適用指示(「Set Routine PC」ボタン331の入力)を受け付けることによって、バックアップコンピュータ30にさらに適用する情報のうち二以上の適用処理を実行する。つまり、測定ユニットの制御プログラム60を自動実行する設定情報、コンピュータ10のコンピュータ名の情報、バックアップコンピュータ30を起動する第1スケジュールの設定情報、および、コンピュータ10を起動する第2スケジュールの設定情報が、一回の適用指示に応じてそれぞれ適用される。これにより、ユーザが実行する作業が簡単になるので、コンピュータの設定操作に不慣れなユーザにとっての利便性が向上する。
【0191】
なお、
図17では、入力可能な選択肢が「Set Routine PC」ボタン331の1つだけであり、「Set Buckup PC」ボタン332は入力不可能なグレーアウト状態となっている。つまり、
図17は、コンピュータ30が、現在、「Set Buckup PC」ボタン332を入力した場合の第2モードで動作し、「Set Routine PC」ボタン331を入力することで第2モードから第1モードに切り替え可能であることを示している。コンピュータ10の正常稼働時にコンピュータ30を起動した場合などでは、「Set Routine PC」ボタン331を入力しなければ、コンピュータ30はそのまま第2モードでの動作を継続する。
【0192】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0193】
たとえば、上記実施形態では、検体分析システム100が2つの単位システム101を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。検体分析システム100は単位システム101を1つまたは3つ以上備えていてもよい。また、単位システム101が2つの測定ユニットを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。単位システム101は1つまたは3つ以上の測定ユニットを備えていてもよい。
【0194】
また、上記実施形態では、2つの単位システム101に1つずつバックアップコンピュータ30を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、2つの単位システム101に対して1つのバックアップコンピュータ30を設けてもよい。この場合、バックアップコンピュータ30が、一方の単位システム101のコンピュータ10に対するバックアップ情報50と、他方の単位システム101のコンピュータ10に対するバックアップ情報50と、をそれぞれ記憶する。そして、バックアップコンピュータ30が第2モードに切り替えられる場合に、一方の単位システム101のコンピュータ10に対するバックアップ情報50を適用するか、他方の単位システム101のコンピュータ10に対するバックアップ情報50を適用するか、を選択できる。
【0195】
また、上記実施形態では、分析装置である測定ユニットが血球計数装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。分析装置は、血球計数装置以外の装置であってよい。分析装置は、たとえば核酸分析装置、細胞画像分析装置、血液凝固測定装置、免疫測定装置、尿中有形成分測定装置などであってよく、これら以外の分析装置であってもよい。
【0196】
また、上記実施形態では、検体分析システム100が投入ユニット130と、処理ユニット140および搬送ユニット150と、回収ユニット160とを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。検体分析システム100に投入ユニット130を設けなくてもよい。検体ラック91は搬送ユニット120に投入されてもよい。検体分析システム100に処理ユニット140および搬送ユニット150を設けなくてもよい。検体分析システム100に回収ユニット160を設けなくてもよい。
【0197】
また、上記実施形態では、コンピュータ10と、バックアップコンピュータ30、ホストコンピュータ250および精度管理サーバ200に接続するための集線装置171とが、LANケーブルにより有線接続される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コンピュータ10と、バックアップコンピュータ30、ホストコンピュータ250および精度管理サーバ200とが無線接続されてもよい。たとえば、Wifi(登録商標)などの無線LAN規格による通信接続が行われてもよい。
【0198】
また、上記実施形態では、コンピュータ20の具体例として、精度管理サーバ200およびホストコンピュータ250を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、精度管理サーバおよびホストコンピュータの一方又は両方を設けなくてもよい。また、第2のコンピュータが、精度管理サーバおよびホストコンピュータ以外のコンピュータ、サーバであってもよい。
【0199】
また、上記実施形態では、コンピュータ10の故障時に、バックアップコンピュータ30が、測定ユニットの制御プログラム60を自動実行する設定情報、コンピュータ10のコンピュータ名の情報、バックアップコンピュータ30を起動する第1スケジュールの設定情報、および、コンピュータ10を起動する第2スケジュールの設定情報を、バックアップコンピュータ30にさらに適用する処理を実行する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、これらの情報のうち一部の情報だけを、バックアップコンピュータ30に適用してもよい。また、これらの情報を適用する処理を実行しなくてもよい。
【0200】
また、上記実施形態では、制御プログラム60に関する設定情報51、51cが、ユーザに関する情報、測定結果の評価基準に関する情報、測定ユニットの接続台数、測定ユニットの識別番号、および、測定ユニットが測定可能な項目に関する情報を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御プログラム60に関する設定情報51、51cが、これらの情報のうち一部の情報だけを含んでいてもよい。また、制御プログラム60に関する設定情報51、51cが、これらの情報を含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0201】
10:コンピュータ(第1のコンピュータ)、11:制御部、20:コンピュータ(第2のコンピュータ)、30:バックアップコンピュータ(第3のコンピュータ)、31:制御部、40:分析装置、50:バックアップ情報、51:制御プログラムに関する設定情報、51c:制御プログラムに関する設定情報のコピー、52:コンピュータとの通信に関する設定情報、52c:コンピュータとの通信に関する設定情報のコピー、60:制御プログラム、100:検体分析システム、110A:第1測定ユニット(分析装置)、110B:第2測定ユニット(分析装置)、200:精度管理サーバ(第2のコンピュータ)、250:ホストコンピュータ(第2のコンピュータ)、330:第2モードの選択を受け付ける画面