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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D25/08 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021041780
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141462
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋田 樹徳
(72)【発明者】
【氏名】小坂 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 聡
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-276718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
キャビンと、前記キャビンの前方に位置するフロントコンパートメントを有するボディと、
前記ボディに下方から取り付けられているとともに、前記フロントコンパートメントに配置された搭載部品を支持するサブフレームと、
を備え、
前記ボディは、後方に向かうにつれて下方に傾斜している第1対向面を有し、
前記サブフレームは、前記ボディの前記第1対向面に対向するとともに後方に向かうにつれて下方に傾斜している第2対向面を有し、
前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一方は、その少なくとも一部の範囲において、前記車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜しており
前記ボディは、
前記キャビンと前記フロントコンパートメントとを区分するダッシュパネルと、
前記ダッシュパネルから前方に向けて前記フロントコンパートメント内を延びるフロントサイドメンバと、
前記フロントサイドメンバ及び前記ダッシュパネルに亘って固定されているとともに、前記サブフレームの後端が固定されたレール取付部と、を有し、
前記第1対向面は、前記レール取付部の前面に位置している、
車両。
【請求項2】
前記第1対向面は、その少なくとも一部の範囲において、前記車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜している、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1対向面は、前記左右方向における全体に亘って、前記左右方向内側に向かうほど後方に傾斜している、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1対向面の前記左右方向における傾斜角度は、5度よりも大きい、請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
前記第2対向面は、その少なくとも一部の範囲において、前記車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜している、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記第2対向面は、前記左右方向における全体に亘って、前記左右方向内側に向かうほど後方に傾斜している、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記第2対向面の前記左右方向における傾斜角度は、5度よりも大きい、請求項5又は6に記載の車両。
【請求項8】
前記第1対向面と前記第2対向面との両者は、その少なくとも一部の範囲において、前記車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜している、請求項7に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両が開示されている。この車両は、フロントコンパートメントを有するボディと、ボディに下方から取り付けられたサブフレームとを備え、サブフレームは、フロントコンパートメントに配置された搭載部品(例えば、電動パワーステアリング)を支持している。ボディには第1対向面が設けられており、サブフレームには、第1対向面と対向する第2対向面が設けられている。これらの対向面は、後方に向かうにつれて下方に傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-119359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した構成の車両では、正面衝突が発生したときに、サブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面と接触する。これらの対向面には、前述した傾斜が設けられているので、衝突荷重によって後方へ移動するサブフレームが、その傾斜に沿って下方に押し下げられていく。その結果、サブフレームがボディから離脱することにより、ボディ(又は、周辺部品等)の変形が抑制される。しかしながら、車両に斜め衝突が発生したときには、後方へ移動するサブフレームの動きに回転運動が加わり、サブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面に対して意図しない角度で接触するおそれがある。このような接触が生じると、例えば第2対向面のエッジ部分が、第1対向面に食い込むことがある。この場合、サブフレームがボディから正しく離脱しないおそれがあり、ボディに意図しない変形等が生じることで、フロントコンパートメントに配置された搭載部品が損傷するおそれがある。これらを避けるためには、第1対向面を有するボディの剛性を高めることが必要となるが、その一方で、ボディの重量を増大させてしまう。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、ボディの重量を増大させることなく、斜め衝突が発生した場合に、フロントコンパートメントに配置された搭載部品への損傷を回避、又は抑制し得るための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、車両に具現化される。この車両は、フロントコンパートメントを有するボディと、前記ボディに下方から取り付けられているとともに、前記フロントコンパートメントに配置された搭載部品を支持するサブフレームとを備える。前記ボディは、後方に向かうにつれて下方に傾斜している第1対向面を有する。前記サブフレームは、前記ボディの前記第1対向面に対向するとともに後方に向かうにつれて下方に傾斜している第2の対向面を有する。前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一方は、その少なくとも一部の範囲において、前記車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜している。
【0007】
上記した車両においても、ボディ側の第1対向面と、その第1対向面に対向するサブフレーム側の第2対向面との両者は、後方に向かうにつれて下方に傾斜している。これにより、車両の正面衝突が発生したときは、衝突荷重によって後方へ移動するサブフレームが、それら対向面の傾斜に沿って下方に押し下げられることで、サブフレームをボディから離脱させることができる。加えて、ボディ側の第1対向面と、サブフレーム側の第2対向面との少なくとも一方は、その少なくとも一部の範囲において、車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜している。このような構成によると、車両に斜め衝突が発生し、後方へ移動するサブフレームの動きに、内側へ向かう回転運動が加わったときでも、サブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面に接触し難くなる。これにより、例えば第2対向面のエッジ部分が、第1対向面に食い込むといった事態が抑制され、フロントコンパートメントに配置された搭載部品が損傷することを抑制、又は回避し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の車両10を模式的に示す図。
図2】フロントコンパートメント12fにおける構造を説明する図。なお、ダッシュパネル62を破線で記載しており、各フロントサイドメンバ58、60を省略している。
図3】ボディ12の左レール取付部50と、サブフレーム28の左サイドレール30の左当接部40との位置関係を側面視で示す図。
図4】ボディ12の右レール取付部52と、サブフレーム28の右サイドレール32の右当接部42との位置関係を側面視で示す図。
図5】ボディ12における左レール取付部50の第1対向面54と、サブフレーム28における左当接部40の第2対向面44との位置関係を示す斜視図。
図6】ボディ12における左レール取付部50の第1対向面54と、サブフレーム28における左当接部40の第2対向面44との位置関係を平面視で示す図。
図7図7(A)-(C)は、車両10に斜め衝突が発生した場合における、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との位置関係の一例を経時的に示す図。
図8図8(A)-(C)は、車両10に斜め衝突が発生した場合における、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との位置関係の一例を経時的に示す図。
図9図9(A)-(C)は、車両10に斜め衝突が発生した場合における、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との位置関係の一例を経時的に示す図。
図10図10(A)-(C)は、車両10に斜め衝突が発生した場合における、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との位置関係の一例を経時的に示す図。
図11図11(A)-(C)は、車両10に斜め衝突が発生した場合における、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との位置関係の一例を経時的に示す図。
図12図12(A)-(C)は、車両10に斜め衝突が発生した場合における、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との位置関係の一例を経時的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、第1対向面は、その少なくとも一部の範囲において、車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜していてもよい。このような構成によると、ボディに設けられた第1対向面の内側部分が、同じく第1対向面の外側部分よりも後方に位置する。これにより、車両に斜め衝突が発生したときに、サブフレームの回転運動に伴って後方内側へ移動するサブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面と接触することを抑制、又は回避し得る。
【0010】
上記の実施形態において、第1対向面は、左右方向における全体に亘って、左右方向内側に向かうほど後方に傾斜していてもよい。このような構成においても、第1対向面は内側部分に向かうほど後方に位置することから、車両に斜め衝突が発生したときに、後方内側へ移動するサブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面と接触することを抑制、又は回避し得る。
【0011】
上記の実施形態において、第1対向面の左右方向における傾斜角度は、5度よりも大きくてもよい。なお、第1対向面の左右方向における傾斜角度の具体的な数値は、特に限定されない。但し、第1対向面の左右方向における傾斜角度が大きいほど、当該対向面の内側部分は外側部分よりも後方に位置することから、車両に斜め衝突が発生したときに、後方内側へ移動するサブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面と強く接触することを抑制、又は回避し得る。
【0012】
上記に加えて、又は代えて、第2対向面は、その少なくとも一部の範囲において、車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜していてもよい。このような構成によると、サブフレームに設けられた第2対向面の外側部分が、同じく第2対向面の内側部分よりも前方に位置する。これにより、車両に斜め衝突が発生したときに、サブフレームの回転運動に伴って後方内側へ移動するサブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面と接触することを抑制、又は回避し得る。
【0013】
上記の実施形態において、第2対向面は、左右方向における全体に亘って、左右方向内側に向かうほど後方に傾斜していてもよい。このような構成においても、第2対向面は外側部分に向かうほど前方に位置することから、車両に斜め衝突が発生したときに、後方内側へ移動するサブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面と強く接触することを抑制、又は回避し得る。
【0014】
上記の実施形態において、第2対向面の左右方向における傾斜角度は、5度よりも大きくてもよい。なお、第2対向面の左右方向における傾斜角度の具体的な数値は、特に限定されない。但し、第2対向面の左右方向における傾斜角度が大きいほど、当該対向面の外側部分は内側部分よりも前方に位置することから、車両に斜め衝突が発生したときに、後方内側へ移動するサブフレーム側の第2対向面が、ボディ側の第1対向面と強く接触することを抑制、又は回避し得る。
【0015】
上記の実施形態において、第1対向面と第2対向面との両者は、その少なくとも一部の範囲において、車両の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜していてもよい。このような構成によると、上記した作用効果に加えて、車両に正面衝突が発生したときに、ボディ側の第1対向面と、サブフレーム側の第2対向面とが、局所的に接触することを避けることができる。
【実施例
【0016】
図面を参照して、実施例の車両10について説明する。車両10は、いわゆる自動車であって、路面を走行する車両である。ここで、図面における方向FRは、車両10の前後方向における前方を示し、方向RRは車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の左右方向(あるいは幅方向)における左方を示し、方向RHは車両10の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは車両10の上下方向における上方を示し、方向DWは車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、車両10の前後方向、車両10の左右方向、車両10の上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向、上下方向と称することがある。
【0017】
図1に示すように、車両10は、ボディ12と、複数の車輪14f、14rとを備える。ボディ12は、特に限定されないが、スチール材又はアルミニウム合金といった金属で構成されている。ボディ12は、概して、フロントコンパートメント12fと、キャビン12cと、リアコンパートメント12rとを有する。フロントコンパートメント12fは、キャビン12cの前方に位置しており、リアコンパートメント12rは、キャビン12cの後方に位置している。図3、4に示すように、本実施例の車両10において、フロントコンパートメント12fと、キャビン12cとは、ダッシュパネル62によって区分される。複数の車輪14f、14rは、ボディ12に対して回転可能に取り付けられている。複数の車輪14f、14rには、ボディ12の前部に位置する一対の前輪14fと、ボディ12の後部に位置する一対の後輪14rとが含まれる。一対の前輪14fは互いに同軸に配置されており、一対の後輪14rも互いに同軸に配置されている。なお、車輪14f、14rの数は、四つに限定されない。
【0018】
図1、2に示すように、車両10は、モータ16と、電力制御ユニット18(以下、PCU18と称する)をさらに備える。特に限定されないが、モータ16と、PCU18とは、それらが一体となった機電一体ユニット20として車両10に搭載されている。モータ16は、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つ(例えば、一対の前輪14f)を駆動する。図2に示すように、機電一体ユニット20は、ドライブシャフト22を介して、一対の前輪14fに接続されている。そのため、モータ16は、一対の前輪14fを駆動することができる。なお、モータ16は、一対の前輪14fに限られず、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つを駆動するように構成されていればよい。
【0019】
図1に示すように、車両10は、バッテリユニット24と、電子制御ユニット26(以下、ECU26と称する)とをさらに備える。バッテリユニット24は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力によって繰り返し充電可能に構成されている。バッテリユニット24は、PCU18を介してモータ16に接続されており、モータ16へ電力を供給する。PCU18は、DC-DCコンバータ及び/又はインバータを内蔵しており、バッテリユニット24とモータ16との間で伝達される電力を制御する。ECU26は、プロセッサを有しており、例えばユーザの操作に応じてPCU18へ制御指令を与える。
【0020】
車両10は、モータ16に代えて、又は加えて、エンジンといった他の原動機をさらに備えてもよい。また、車両10は、バッテリユニット24に加えて、又は代えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源を備えてもよい。このように、車両10は、電動車両に限定されることなく、エンジン車両、ハイブリッド車両、燃料電池車両、ソーラーカー等も含む。
【0021】
図1、2に示すように、車両10は、サブフレーム28をさらに備える。サブフレーム28は、特に限定されないが、スチール材又はアルミニウム合金といった金属で構成されている。図2に示すように、サブフレーム28は、概して枠状の形状を有しており、一対の左サイドレール30及び右サイドレール32と、それらの間を延びるフロントクロスメンバ34及びリアクロスメンバ36とを備える。左サイドレール30と右サイドレール32は、左右方向において互いに対称な形状を有しており、それぞれ車両10の前後方向に沿って延びている。二つのサイドレール30、32の前端部には、クラッシュボックス(図示省略)を介してバンパリインフォースメント38が取り付けられている。なお、二つのサイドレール30、32の具体的な形状や構造については、特に限定されない。
【0022】
図3、4に示すように、サブフレーム28は、ボディ12下方から取り付けられており、フロントコンパートメント12fの底部に位置している。サブフレーム28は、複数の固定箇所においてボディ12に固定されている。特に限定されないが、複数の固定箇所には、各サイドレール30、32の後端部が含まれる。複数の固定箇所には、ボルト48がそれぞれ設けられており、それらのボルト48を用いることによって、サブフレーム28はボディ12に固定される。
【0023】
サブフレーム28には、機電一体ユニット20が取り付けられている。一例ではあるが、機電一体ユニット20は、複数のブラケット39を介してサブフレーム28に固定されている。サブフレーム28は、機電一体ユニット20を下方から支持しており、機電一体ユニット20は、フロントコンパートメント12fに配置されている。なお、サブフレーム28には、機電一体ユニット20に代えて、他の搭載部品が取り付けられてもよい。サブフレーム28は、機電一体ユニット20に限られず、フロントコンパートメント12fに配置される各種の搭載部品を支持することができる。例えば、モータ16やPCU18を含む機電一体ユニット20に加えて、又は代えて、ギアボックス等がフロントコンパートメント12fに配置されるとともに、サブフレーム28によって支持されてもよい。
【0024】
図3に示すように、ボディ12は、左フロントサイドメンバ58と、左レール取付部50とを備える。左フロントサイドメンバ58及び左レール取付部50は、フロントコンパートメント12fの左側部分に位置している。左レール取付部50には、サブフレーム28の左サイドレール30の後端部が、ボルト48を用いて固定されている。一例ではあるが、左レール取付部50は、左フロントサイドメンバ58(及び、ダッシュパネル62)に固定されている。左レール取付部50は、第1対向面54を有する。第1対向面54は、左レール取付部50の前面に位置しており、概して前方を向いている。第1対向面54は、後方に向かうにつれて下方に傾斜している。なお、第1対向面54は、その少なくとも一部の範囲において、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜していればよい。即ち、第1対向面54の一部又は全体が、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜していればよい。また、左レール取付部50が固定される部分は、特に限定されない。即ち、左レール取付部50は、ボディ12において、ボディ12の左フロントサイドメンバ58(及び、ダッシュパネル62)とは異なる部分に設けられていてもよい。
【0025】
図3に示すように、サブフレーム28の左サイドレール30には、左レール取付部50と対向する位置に、左当接部40が設けられている。左当接部40は、第2対向面44を有する。第2対向面44は、左当接部40の後面に位置しており、左レール取付部50の第1対向面54と対向している。第2対向面44は、左レール取付部50の第1対向面54と同様に、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜している。なお、左当接部40の第2対向面44も、その少なくとも一部の範囲において、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜していればよい。即ち、第2対向面44も、その一部又は全体が、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜していればよい。
【0026】
図4に示すように、ボディ12は、右フロントサイドメンバ60と、右レール取付部52とを備える。右フロントサイドメンバ60及び右レール取付部52は、上述した左フロントサイドメンバ58及び左レール取付部50と、左右対称に設けられている。即ち、右フロントサイドメンバ60及び右レール取付部52は、フロントコンパートメント12fの右側部分に位置しており、右レール取付部52には、サブフレーム28の右サイドレール32の後端部が、ボルト48を用いて固定されている。左レール取付部50は、第1対向面56を有しており、その第1対向面56は、後方に向かうにつれて下方に傾斜している。右レール取付部52の第1対向面54についても、その少なくとも一部の範囲において、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜していればよい。
【0027】
図4に示すように、サブフレーム28の右サイドレール32には、右レール取付部52と対向する位置に、右当接部42が設けられている。右当接部42は第2対向面46を有し、その第2対向面46は、右レール取付部52の第1対向面56と対向している。右当接部42の第2対向面46は、右レール取付部52の第1対向面56と同様に、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜している。この右当接部42の第2対向面46についても、その少なくとも一部の範囲において、車両10の後方に向かうにつれて下方に傾斜していればよい。
【0028】
上記のように、ボディ12における左レール取付部50の第1対向面54と、サブフレーム28における左当接部40の第2対向面44との関係は、ボディ12における右レール取付部52の第1対向面56と、サブフレーム28における右当接部42の第2対向面46との関係と同様である。従って、図5、6では、ボディ12における左レール取付部50の第1対向面54と、サブフレーム28における左当接部40の第2対向面44との関係のみが代表して図示されている。
【0029】
上記した構成では、車両10に正面衝突が発生したときに、サブフレーム28側の第2対向面44、46が、ボディ12側の第1対向面54、56と接触する。このとき、サブフレーム28側の第2対向面44、46は、ボディ12側の第1対向面54,56に対して平行を維持しながら、サブフレーム28が後方へ移動する。第1対向面54、56及び第2対向面44、46には、前述した傾斜が設けられているので、衝突荷重によって後方へ移動するサブフレーム28が、その傾斜に沿って下方に押し下げられていく。その結果、サブフレーム28がボディ12から離脱することにより、ボディ12(又は、周辺部品等)の変形が抑制される。しかしながら、車両10に斜め衝突が発生したときには、後方へ移動するサブフレーム28の動きに回転運動が加わり、サブフレーム28側の第2対向面44、46が、ボディ12側の第1対向面54、56に対して意図しない角度で接触するおそれがある。例えば、サブフレーム28に左前方から衝突荷重が加えられると、サブフレーム28は後方内側へ移動することから、サブフレーム28の左サイドレール30に設けられた第2対向面44の左エッジ部分44sが、ボディ12側の第1対向面54に対して局所的に当接するおそれがある。このような接触が生じると、第2対向面44の左エッジ部分44sが、第1対向面54に食い込むことがある。この場合、サブフレーム28がボディ12から正しく離脱しないおそれがあり、ボディ12に意図しない変形等が生じることで、機電一体ユニット20といった、フロントコンパートメント12fに配置された搭載部品が損傷するおそれがある。
【0030】
上記に関して、本実施例の車両10では、ボディ12側の第1対向面54、56と、サブフレーム28側の第2対向面44、46との少なくとも一方を、車両10の左右方向に関してさらに傾斜させてもよい。具体的には、第1対向面54、56と第2対向面44、46との少なくとも一方を、その少なくとも一部の範囲において、車両10の左右方向内側に向かうほど後方に傾斜させてもよい。図7図12では、説明の便宜上、左レール取付部50の第1対向面54と、左当接部40の第2対向面44を例に挙げて、それらの挙動を模式的に示す。図7図12の各(A)には、本実施例の車両10における第1対向面54と、第2対向面44との具体的な構成を示す。これに加えて、図7図12の各(B)及び各(C)には、車両10に斜め衝突が発生した場合における第1対向面54と、第2対向面44との経時的な位置関係の変化を示す。
【0031】
図7は、ボディ12側の第1対向面54の一部の範囲に、車両10の左右方向に関して傾斜を設けた一例を示す。前述したように、ボディ12側の第1対向面54は、上下方向に関しても、後方に向かうにつれて下方に傾斜している。これに加えて、図7(A)に示すように、ボディ12側の第1対向面54は、その一部の範囲において、車両10の右側(即ち、車両10の内側)に向かうほど後方に傾斜している。これに対して、サブフレーム28側の第2対向面44では、後方に向かうにつれて下方に傾斜しているが、左右方向には傾斜を有さない。
【0032】
上記の構成によると、ボディ12に設けられた第1対向面54の内側部分が、同じく第1対向面54の外側部分よりも後方に位置する(図7(A)参照)。車両10に斜め衝突が発生すると、サブフレーム28は、図7(B)、(C)に示すように、回転運動に伴って後方内側へ移動する。このとき、ボディ12に設けられた第1対向面54の内側部分が、左右方向内側に向かうほど後方に傾斜していることから、サブフレーム28側の第2対向面44が、ボディ12側の第1対向面54と接触することを抑制、又は回避し得る。これにより、例えば第2対向面44の左エッジ部分44sが、第1対向面54に食い込むといった事態が抑制され、サブフレーム28がボディ12から正しく離脱するように支援される。その結果、機電一体ユニット20といった、フロントコンパートメント12fに配置された搭載部品が損傷することを抑制、又は回避し得る。
【0033】
図8は、ボディ12側の第1対向面54の全体に亘って、車両10の左右方向に関して傾斜を設けた一例を示す。このような構成によっても、図8(A)-(C)によって経時的に示すように、車両10に斜め衝突が発生したときには、サブフレーム28側の第2対向面44が(図示する例では左エッジ部分44sが)、ボディ12側の第1対向面54と接触することを抑制、又は回避し得る。
【0034】
図9は、ボディ12側の第1対向面54に代えて、サブフレーム28側の第2対向面44の一部の範囲に、車両10の左右方向に関して傾斜を設けた一例を示す。図9(A)に示すように、サブフレーム28側の第2対向面44は、その一部の範囲において、車両10の右側(即ち、車両10の内側)に向かうほど後方に傾斜している。これに対して、ボディ12側の第1対向面54では、後方に向かうにつれて下方に傾斜しているが、左右方向には傾斜を有さない。このような構成によると、サブフレーム28側の第2対向面44の外側部分が、同じく第2対向面44の内側部分よりも前方に位置する(図9(A)参照)。従って、図9(A)-(C)に経時的に示すように、車両10に斜め衝突が発生したときには、サブフレーム28側の第2対向面44が(図示する例では左エッジ部分44sが)、ボディ12側の第1対向面54と接触することを抑制、又は回避し得る。
【0035】
図10は、サブフレーム28側の第2対向面44の全体に亘って、車両10の左右方向に関して傾斜を設けた一例を示す。このような構成によっても、図10(A)-(C)によって経時的に示すように、車両10に斜め衝突が発生したときには、サブフレーム28の第2対向面44が(図示する例では左エッジ部分44sが)、ボディ12の第1対向面54と接触することを抑制、又は回避し得る。
【0036】
図11は、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との両者について、その一部の範囲に、車両10の左右方向に関して傾斜を設けた一例を示す。図12は、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44との両者について、その全体に亘って、車両10の左右方向に関して傾斜を設けた一例を示す。これらのような構成によっても、図11(A)-(C)及び図12(A)-(C)によってそれぞれ経時的に示すように、車両10に斜め衝突が発生したときには、サブフレーム28の第2対向面44が(図示する例では左エッジ部分44sが)、ボディ12の第1対向面54と接触することを抑制、又は回避し得る。これに加えて、車両10に正面衝突が発生したときには、ボディ12側の第1対向面54と、サブフレーム28側の第2対向面44とが、局所的に接触することを避けることができる。
【0037】
一例ではあるが、ボディ12側の第1対向面54の左右方向における傾斜角度は、5度よりも大きくてもよい。上記に加えて、又は代えて、サブフレーム28側の第2対向面44の左右方向における傾斜角度は、5度よりも大きくてもよい。なお、第1対向面54及び第2対向面44の左右方向における傾斜角度の具体的な数値は、特に限定されない。但し、第1対向面54及び第2対向面44の左右方向における傾斜角度が大きいほど、車両10に斜め衝突が発生したときに、後方内側へ移動するサブフレーム28側の第2対向面44が、ボディ12側の第1対向面54と強く接触することを抑制、又は回避し得る。
【0038】
なお、車両10に正面衝突、又は斜め衝突が発生した場合において、サブフレーム28がボディ12側の第2対向面44の傾斜に沿って下方に押し下げられる距離は、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例の車両10において、第2対向面44が第1対向面54と対向する上下方向の寸法を小さくすると、車両10に衝突が発生したときに、サブフレーム28が第1対向面54の傾斜に沿って下方に押し下げられる距離を短くすることができる。これにより、サブフレーム28は、早い段階でボディ12から離脱することができる。このように、サブフレーム28がボディ12から離脱するまでに、下方に押し下げられる距離を調整することによって、サブフレーム28が支持する機電一体ユニット20等が損傷することを抑制、又は回避し得る。
【0039】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0040】
10:車両
12:ボディ
12c:キャビン
12f:フロントコンパートメント
12r:リアコンパートメント
14f、14r:車輪
16:モータ
18:電力制御ユニット
20:機電一体ユニット
22:ドライブシャフト
24:バッテリユニット
26:電子制御ユニット
28:サブフレーム
30:左サイドレール
32:右サイドレール
34:フロントクロスメンバ
36:リアクロスメンバ
38:バンパリインフォースメント
39:ブラケット
40:左当接部
42:右当接部
44、46:第2対向面
44s:左エッジ部分
48:ボルト
50:左レール取付部
52:右レール取付部
54、56:第1対向面
58:左フロントサイドメンバ
60:右フロントサイドメンバ
62:ダッシュパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12