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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】塗料組成物セット
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20231205BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231205BHJP
   C09D 101/00 20060101ALI20231205BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231205BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231205BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20231205BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20231205BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20231205BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09D201/06
C09D5/00 D
C09D101/00
C09D5/00 Z
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/47
B05D1/36 Z
B05D5/06 G
B05D5/06 Z
B05D7/24 303A
B05D7/24 303J
B05D7/24 302C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021128103
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2023022979
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-07-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】清永 浩
(72)【発明者】
【氏名】丸王 健志
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 大介
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】荒木 禎人
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092878(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092874(WO,A1)
【文献】特開2018-178083(JP,A)
【文献】特開2017-25283(JP,A)
【文献】特開2017-43750(JP,A)
【文献】特開2020-99888(JP,A)
【文献】特開2018-123248(JP,A)
【文献】特開2009-155537(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012014(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175468(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色塗料組成物(a)によって形成された未硬化の着色塗膜(A)上に光輝性塗料組成物(b)を塗布し、光輝性塗料組成物(b)によって形成された未硬化の光輝性塗膜(B)上にクリヤー塗料組成物(c)を塗布した後、未硬化の着色塗膜(A)、未硬化の光輝性塗膜(B)および未硬化のクリヤー塗膜(C)を硬化して得られる複層塗膜形成用の、塗料組成物セットであって、
前記着色塗料組成物(a)は、水酸基含有樹脂(a1)、第1硬化剤(a2)および着色顔料(a3)を含み、
前記水酸基含有樹脂(a1)は、3,000以下の数平均分子量を有する第1水酸基含有樹脂(a11)、および、10万以上の数平均分子量を有する第2水酸基含有樹脂(a12)を含み、
前記光輝性塗料組成物(b)は、鱗片状顔料(b1)、セルロースエステル誘導体(b2)、セルロースナノファイバー(b3)、リン酸基含有化合物(b4)および水性溶媒(b5)を含み、
前記光輝性塗料組成物(b)の固形分含有率は、0.1質量%以上12質量%以下であり、
前記クリヤー塗料組成物(c)は、第3水酸基含有樹脂(c1)および第2硬化剤(c2)を含む2液型である、塗料組成物セット。
【請求項2】
前記第2水酸基含有樹脂(a12)のpH8の水溶液中における粒子径は、150nm以上である、請求項1に記載の塗料組成物セット。
【請求項3】
前記第1水酸基含有樹脂(a11)の含有量は、前記着色塗料組成物(a)の全樹脂固形分の8質量%以上60質量%以下である、請求項1または2に記載の塗料組成物セット。
【請求項4】
前記リン酸基含有化合物(b4)は、炭素数4~30のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル(b41)、および、リン酸基価が5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基含有ポリマー(b42)の少なくとも一方を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項5】
前記セルロースエステル誘導体(b2)の酸価は、20mgKOH/g以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項6】
前記鱗片状顔料(b1)の含有量は、前記光輝性塗料組成物(b)の全固形分の3質量%以上50質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項7】
前記リン酸基含有化合物(b4)の含有量は、前記光輝性塗料組成物(b)の全固形分の0.1質量%以上15質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項8】
前記光輝性塗料組成物(b)は、さらに、表面調整剤(b6)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項9】
前記着色塗料組成物(a)は、さらに、リン酸基含有化合物(a4)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項10】
前記光輝性塗料組成物(b)は、未硬化の前記着色塗膜(A)上に塗布される、請求項1~9のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項11】
前記クリヤー塗料組成物(c)は、未硬化の前記光輝性塗膜(B)上に塗布される、請求項1~10のいずれか一項に記載の塗料組成物セット。
【請求項12】
被塗物上に、着色塗料組成物(a)を塗装して未硬化の着色塗膜(A)を形成する工程と、
未硬化の着色塗膜(A)上に、光輝性塗料組成物(b)を塗装して未硬化の光輝性塗膜(B)を形成する工程と、
未硬化の光輝性塗膜(B)上に、クリヤー塗料組成物(c)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜(C)を形成する工程と、
未硬化の着色塗膜(A)、未硬化の光輝性塗膜(B)および未硬化のクリヤー塗膜(C)を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備え、
前記着色塗料組成物(a)は、水酸基含有樹脂(a1)、第1硬化剤(a2)および着色顔料(a3)を含み、
前記水酸基含有樹脂(a1)は、3,000以下の数平均分子量を有する第1水酸基含有樹脂(a11)、および、10万以上の数平均分子量を有する第2水酸基含有樹脂(a12)を含み、
前記光輝性塗料組成物(b)は、鱗片状顔料(b1)、セルロースエステル誘導体(b2)、セルロースナノファイバー(b3)、リン酸基含有化合物(b4)および水性溶媒(b5)を含み、
前記光輝性塗料組成物(b)の固形分含有率は、0.1質量%以上12質量%以下であり、
前記クリヤー塗料組成物(c)は、第3水酸基含有樹脂(c1)および第2硬化剤(c2)を含む2液型である、塗装板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の外装用に、金属のような光沢を付与することのできる塗膜が提案されている。例えば、特許文献1には、緻密な金属調塗膜を形成することができる光輝性顔料分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/175468号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の分散体を用いても、金属調の意匠が得られない場合がある。さらに、金属調の意匠を向上させようとすると、塗膜性能(特に、耐水性)が低下し易いことが判明した。本発明の課題は、金属調の意匠と塗膜性能とを両立できる塗料組成物セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
着色塗膜(A)を形成する着色塗料組成物(a)と、前記着色塗膜(A)上に塗布されて光輝性塗膜(B)を形成する光輝性塗料組成物(b)と、前記光輝性塗膜(B)上に塗布されてクリヤー塗膜(C)を形成するクリヤー塗料組成物(c)と、を含む、塗料組成物セットであって、
前記着色塗料組成物(a)は、水酸基含有樹脂(a1)、第1硬化剤(a2)および着色顔料(a3)を含み、
前記水酸基含有樹脂(a1)は、3,000以下の数平均分子量を有する第1水酸基含有樹脂(a11)、および、10万以上の数平均分子量を有する第2水酸基含有樹脂(a12)を含み、
前記光輝性塗料組成物(b)は、鱗片状顔料(b1)、セルロースエステル誘導体(b2)、セルロースナノファイバー(b3)、リン酸基含有化合物(b4)および水性溶媒(b5)を含み、
前記光輝性塗料組成物(b)の固形分含有率は、0.1質量%以上12質量%以下であり、
前記クリヤー塗料組成物(c)は、第3水酸基含有樹脂(c1)および第2硬化剤(c2)を含む2液型である、塗料組成物セット。
【0006】
[2]
前記第2水酸基含有樹脂(a12)のpH8の水溶液中における粒子径は、150nm以上である、上記[1]に記載の塗料組成物セット。
【0007】
[3]
前記第1水酸基含有樹脂(a11)の含有量は、前記着色塗料組成物(a)の全樹脂固形分の8質量%以上60質量%以下である、上記[1]または[2]に記載の塗料組成物セット。
【0008】
[4]
前記リン酸基含有化合物(b4)は、炭素数4~30のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル(b41)、および、リン酸基価が5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基含有ポリマー(b42)の少なくとも一方を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【0009】
[5]
前記セルロースエステル誘導体(b2)の酸価は、20mgKOH/g以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【0010】
[6]
前記鱗片状顔料(b1)の含有量は、前記光輝性塗料組成物(b)の全固形分の3質量%以上50質量%以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【0011】
[7]
前記リン酸基含有化合物(b4)の含有量は、前記光輝性塗料組成物(b)の全固形分の0.1質量%以上15質量%以下である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【0012】
[8]
前記光輝性塗料組成物(b)は、さらに、表面調整剤(b6)を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【0013】
[9]
前記着色塗料組成物(a)は、さらに、リン酸基含有化合物(a4)を含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【0014】
[10]
前記光輝性塗料組成物(b)は、未硬化の着色塗膜(A)上に塗布される、上記[1]~[9]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【0015】
[11]
前記クリヤー塗料組成物(c)は、未硬化の光輝性塗膜(B)上に塗布される、上記[1]~[10]のいずれかに記載の塗料組成物セット。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属調の意匠と塗膜性能とを両立できる塗料組成物セットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
金属調の意匠を得るには、鱗片状顔料を、光輝性塗膜の表面と平行に配列させることが求められる。そのため、光輝性塗膜を形成する塗料組成物(以下、単に光輝性塗料と称する場合がある。)の固形分(特に、樹脂成分)は、少ないほど望ましい。一方、樹脂成分が少ないと、光輝性塗膜の他の塗膜に対する密着性が低下し易くなって、塗膜性能(例えば、耐水性)も低下し易い。
【0018】
本実施形態では、鱗片状顔料の配列性を高めるために、固形分含有率の低い光輝性塗料を用いつつ、密着性を高めるために、樹脂成分を複層塗膜を構成する他の塗膜から光輝性塗膜に供給させることを着想した。具体的には、光輝性塗膜の一方の主面に配置される着色塗膜を形成する着色塗料組成物(以下、単に着色塗料と称する場合がある。)から、水酸基含有樹脂を光輝性塗料に供給させる。他方の主面に配置されるクリヤー塗膜を形成するクリヤー塗料組成物(以下、単にクリヤー塗料と称する場合がある。)から、硬化剤を光輝性塗料に供給させる。それぞれ供給された水酸基含有樹脂と硬化剤とは、光輝性塗料中で反応し、塗膜を形成する。
【0019】
光輝性塗料に供給させる水酸基含有樹脂として、着色塗料には分子量の小さな水酸基含有樹脂を配合する。分子量の小さな水酸基含有樹脂は、着色塗料から光輝性塗料へと容易に移動できる。加えて、着色塗料には、より分子量の大きな水酸基含有樹脂も配合する。分子量の大きな水酸基含有樹脂は、樹脂成分の光輝性塗料への移動量を制御する。これにより、着色塗膜の密着性の低下が抑制されて、複層塗膜としての性能が向上する。分子量の大きな水酸基含有樹脂は、さらに、配列した鱗片状顔料の着色塗膜側への落ち込みを抑制する。これにより、鱗片状顔料の配列性がより向上して、優れた金属調の意匠を容易に得ることができる。
【0020】
[塗料組成物セット]
本実施形態に係る塗料組成物セットは、着色塗膜(A)を形成する着色塗料組成物(a)と、着色塗膜(A)上に塗布されて光輝性塗膜(B)を形成する光輝性塗料組成物(b)と、光輝性塗膜(B)上に塗布されてクリヤー塗膜(C)を形成するクリヤー塗料組成物(c)と、を備える。すなわち、本実施形態に係る塗料組成物セットは、着色塗膜(A)と、着色塗膜(A)上に形成される光輝性塗膜(B)と、光輝性塗膜(B)上に形成されるクリヤー塗膜(C)と、を備える複層塗膜の形成に用いられる。
【0021】
着色塗料組成物(a)と光輝性塗料組成物(b)クリヤー塗料組成物(c)とをこの順で塗装することにより、得られる複層塗膜は、優れた金属調の意匠と高い塗膜性能とを発揮する。光輝性塗料組成物(b)を未硬化の着色塗膜(A)上に塗布することにより、金属調の意匠および塗膜性能はさらに向上する。クリヤー塗料組成物(c)を未硬化の光輝性塗膜(B)上に塗布することにより、金属調の意匠および塗膜性能はさらに向上する。一態様において、本実施形態に係る塗料組成物セットは、着色塗料組成物(a)によって形成された未硬化の着色塗膜(A)上に光輝性塗料組成物(b)を塗布し、光輝性塗料組成物(b)によって形成された未硬化の光輝性塗膜(B)上にクリヤー塗料組成物(c)を塗布した後、未硬化の着色塗膜(A)、未硬化の光輝性塗膜(B)および未硬化のクリヤー塗膜(C)を硬化して得られる複層塗膜の形成のために使用される。
【0022】
(a)着色塗料
着色塗料(a)は、水酸基含有樹脂(a1)、第1硬化剤(a2)および着色顔料(a3)を含む。着色塗料(a)は、必要に応じて、リン酸基含有化合物(a4)および各種添加剤等を含む。着色塗料(a)は、水酸基含有樹脂(a1)、第1硬化剤(a2)および着色顔料(a3)、さらにはリン酸基含有化合物(a4)(以下、第1リン酸基含有化合物(a4)と称する。)および各種添加剤等の混合物を、第1溶媒(a5)で希釈することにより調製される。着色塗料(a)は、1液型塗料であってよく、2液型塗料等の多液型塗料であってよい。
【0023】
着色塗料(a)の粘度は特に限定されない。着色塗料(a)の20℃でB型粘度計により測定される粘度は、例えば、500mPa・s/6rpm以上6,000mPa・s/6rpm以下である。
【0024】
着色塗料(a)の固形分含有率は特に限定されない。着色塗料(a)の固形分含有率は、30質量%以上70質量%以下が好ましい。着色塗料(a)の固形分は、着色塗料(a)から第1溶媒を除いた全成分である。
【0025】
(a1)水酸基含有樹脂
水酸基含有樹脂(a1)は、塗膜形成樹脂であって、第1硬化剤(a2)によって架橋されて塗膜を形成する。
【0026】
水酸基含有樹脂(a1)は、分子量の異なる少なくとも2種の水酸基含有樹脂を含む。具体的には、水酸基含有樹脂(a1)は、3,000以下の数平均分子量を有する第1水酸基含有樹脂(a11)と、10万以上の数平均分子量を有する第2水酸基含有樹脂(a12)とを含む。これにより、着色塗膜(A)の性能を維持しながら、光輝性塗膜(B)の密着性を向上することができる。さらに、光輝性塗膜(B)における鱗片状顔料(b1)の配向性を維持することができる。その結果、複層塗膜の性能および意匠性が向上する。
【0027】
着色塗料(a)は、その他の塗膜形成樹脂(a13)を含んでよい。その他の塗膜形成樹脂(a13)としては、例えば、3,000超、20万未満の数平均分子量を有する水酸基含有樹脂、水酸基を有さないエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリオール樹脂およびポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0028】
(a11)第1水酸基含有樹脂
第1水酸基含有樹脂(a11)は、3,000以下の数平均分子量を有する。このように小さな分子量を有する第1水酸基含有樹脂(a11)は、硬化される前に、光輝性塗料(b)の内部へと移行することができる。第1水酸基含有樹脂(a11)が、クリヤー塗料(c)から光輝性塗料(b)の内部へと移行してきた第2硬化剤(c2)と反応すると、光輝性塗膜の構成要素の一部になる。その結果、光輝性塗膜(B)の密着性が向上する。第1水酸基含有樹脂(a11)の数平均分子量は、2,000以下であってよい。第1水酸基含有樹脂(a11)の少なくとも一部が、光輝性塗料(b)の内部へと移行する。
【0029】
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出できる。ゲルパーミエーションクロマトグラフとしては、例えば、HLC8120GPC(東ソー社製)が用いられる。カラムとしては、TSKgel G-4000HXL、TSKgel G-3000HXL、TSKgel G-2500HXL、TSKgel G-2000HXL(いずれも東ソー(株)社製)が用いられる。クロマトグラフィーは、例えば、移動相としてテトラヒドロフランを、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用いて、測定温度40℃、流速1cc/分の条件下で行われる。
【0030】
光輝性塗膜の密着性向上の観点から、第1水酸基含有樹脂(a11)の含有量は、着色塗料(a)の全樹脂固形分の8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。意匠性の観点から、第1水酸基含有樹脂(a11)の含有量は、着色塗料(a)の全樹脂固形分の60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が特に好ましい。一態様において、第1水酸基含有樹脂(a11)の含有量は、着色塗料(a)の全樹脂固形分の8質量%以上60質量%以下である。
【0031】
着色塗料(a)の全樹脂固形分は、第1水酸基含有樹脂(a11)、第2水酸基含有樹脂(a12)、第1硬化剤(a2)およびその他の樹脂成分の合計の固形分である。
【0032】
第1水酸基含有樹脂(a11)は、1以上の水酸基を有する。第1水酸基含有樹脂(a11)としては、具体的には、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂が挙げられる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂および水酸基含有ポリエステル樹脂が好ましい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0033】
第1水酸基含有樹脂(a11)の水酸基価は特に限定されない。塗膜性能(特に、耐水性)の観点から、第1水酸基含有樹脂(a11)の水酸基価は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。第1水酸基含有樹脂(a11)の水酸基価は、200mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましい。水酸基価は、JIS K5601 2-1 酸価測定方法に基づいて算出される。具体的には、水酸基価は、第1水酸基含有樹脂(a11)の固形分1g中の遊離酸を中和するのに要する、水酸化カリウム(KOH)のmg数である。第2水酸基含有樹脂(a12)の水酸基価も同様である。
【0034】
第1溶媒(a5)として水を用いる場合、第1水酸基含有樹脂(a11)の水酸基を中和してアルカリ塩とすることにより、第1水酸基含有樹脂(a11)は水溶性化もしくは水分散化される。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムおよびアミン化合物等のアルカリ性物質が挙げられる。
【0035】
(a12)第2水酸基含有樹脂
第2水酸基含有樹脂(a12)は、10万以上の数平均分子量を有する。このように大きな分子量を有する第2水酸基含有樹脂(a12)は、例えば、塗装および/または硬化工程の際、鱗片状顔料が着色塗膜(A)側に落ち込むことを抑制する。その結果、鱗片状顔料の配向性が向上する。第2水酸基含有樹脂(a12)の数平均分子量は、20万以上であってよく、30万以上であってよい。
【0036】
意匠性向上の観点から、第2水酸基含有樹脂(a12)のpH8の水溶液中における粒子径は、150nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましい。第2水酸基含有樹脂(a12)の上記粒子径は、700nm以下であってよく、600nm以下であってよく、500nm以下であってよい。第2水酸基含有樹脂(a12)の粒子径は、レーザ回折・散乱方式の粒度分布測定装置を用いた体積基準の粒度分布における、50%平均粒子径(D50)である。
【0037】
意匠性向上の観点から、第2水酸基含有樹脂(a12)の含有量は、着色塗料(a)の全樹脂固形分の8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。外観の観点から、第2水酸基含有樹脂(a12)の含有量は、着色塗料(a)の全樹脂固形分の60質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。一態様において、第2水酸基含有樹脂(a12)の含有量は、着色塗料(a)の全樹脂固形分の8質量%以上60質量%以下である。
【0038】
第2水酸基含有樹脂(a12)は、第1水酸基含有樹脂(a11)と同様に、1以上の水酸基を有する。第2水酸基含有樹脂(a12)としては、第1水酸基含有樹脂(a11)における例示と同様のものが挙げられる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂および水酸基含有ポリエステル樹脂が好ましく、水酸基含有アクリル樹脂が特に好ましい。
【0039】
第2水酸基含有樹脂(a12)の水酸基価は特に限定されない。塗膜性能の観点から、第2水酸基含有樹脂(a12)の水酸基価は、20mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましい。第2水酸基含有樹脂(a12)の水酸基価は、200mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましい。
【0040】
第2水酸基含有樹脂(a12)は、第2水酸基含有樹脂(a12)の原料モノマーを界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合させることにより、水分散した状態で調製され得る。あるいは、第2水酸基含有樹脂(a12)を乳化剤により、水分散させてもよい。
【0041】
(a2)第1硬化剤
第1硬化剤(a2)は特に限定されず、水酸基含有樹脂(a1)に応じて適宜選択すればよい。第1硬化剤(a2)としては、例えば、アミノ樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物およびセミカルバジド基含有化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたブロック化ポリイソシアネート化合物を包含する。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、得られる塗膜の諸性能およびコストの点で、アミノ樹脂およびポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0042】
アミノ樹脂としては、例えば、水溶性あるいは非水溶性のメラミン樹脂が挙げられる。アミノ樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミンまたは尿素等のアミノ化合物と、ホルムアルデヒドとを縮合させ、さらには低級1価アルコールでエーテル化することにより得られる。
【0043】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、分子中にイソシアネート基に結合していない芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ポリイソシアネート)、芳香族ポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。ブロック剤としては、例えば、フェノール化合物、ラクタム化合物、アルコール、エーテル、オキシム化合物、活性メチレン基を有する化合物、メルカプタン化合物、酸アミド化合物、イミド化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、尿素化合物、カルバミン酸エステル、イミン化合物、亜硫酸塩、アゾール化合物およびケトン化合物が挙げられる。
【0044】
第1硬化剤(a2)の量は特に限定されない。硬化性の点で、第1硬化剤(a2)の固形分質量は、水酸基含有樹脂(a1)の合計の固形分質量と第1硬化剤(a2)の固形分質量の合計の10質量%以上が好ましく、15質量%以上より好ましい。第1硬化剤(a2)の固形分質量は、水酸基含有樹脂(a1)の合計の固形分質量と第1硬化剤(a2)の固形分質量の合計の60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0045】
(a3)着色顔料
着色顔料(a3)は特に限定されない。着色顔料(a3)としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料および金属錯体顔料等の有機系着色顔料:黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラックおよび二酸化チタン等の無機系着色顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0046】
着色塗料(a)は、さらに体質顔料を含んでもよい。体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレーおよびタルクが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
着色顔料(a3)および体質顔料の含有量は特に限定されない。全顔料の樹脂固形分質量に対する質量割合(PWC)は、0.1質量%以上70質量%以下の範囲で適宜調整される。PWCの下限は、好ましくは0.5質量%であり、より好ましくは1.0質量%である。PWCの上限は、好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%である。
【0048】
(a4)第1リン酸基含有化合物
着色塗料(a)は、さらに、第1リン酸基含有化合物(a4)を含むことが好ましい。この場合、水酸基含有樹脂(a1)(主として、第2水酸基含有樹脂(a12))と第1硬化剤(a2)との硬化反応が促進されて、着色塗膜(A)の密着性が向上し易くなる。
【0049】
第1リン酸基含有化合物(a4)の含有量は特に限定されない。密着性向上の観点から、第1リン酸基含有化合物(a4)の含有量は、着色塗料(a)の全固形分の0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。第1リン酸基含有化合物(a4)の含有量は、着色塗料(a)の全固形分の15質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。一態様において、第1リン酸基含有化合物(a4)の含有量は、着色塗料(a)の全固形分の0.1質量%以上15質量%以下である。
【0050】
第1リン酸基含有化合物(a4)は、リン酸基(-P(=O)OR(Rは、それぞれ独立して、水素または炭化水素基)を有する限り、特に限定されない。密着性向上の観点から、第1リン酸基含有化合物(a4)は、炭素数4~30のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル(a41)、および、リン酸基価が5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基含有ポリマー(a42)の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0051】
(a41)アルキルリン酸エステル
アルキルリン酸エステル(a41)は、炭素数4~30のアルキル基を有する。アルキルリン酸エステル(a41)としては、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、およびこれらの混合物が挙げられる。ジアルキルリン酸エステルにおいて、2つのアルキル基は同じであってよく、異なっていてよい。ジアルキルリン酸エステルは、好ましくは、同じ2つのアルキル基を有する。
【0052】
炭素数4~30のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基およびオクタコシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であってよく、分岐していてよい。
【0053】
アルキルリン酸エステル(a41)としては、例えば、ブチルアシッドホスフェート(モノブチルリン酸エステルとジブチルリン酸エステルとの混合物)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(モノ-2-エチルヘキシルリン酸エステルとジ-2-エチルヘキシルリン酸エステルとの混合物)、イソデシルアシッドホスフェート(モノイソデシルリン酸エステルとジイソデシルリン酸エステルとの混合物)、ジラウリルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート(モノラウリルリン酸エステルとジラウリルリン酸エステルとの混合物)、トリデシルアシッドホスフェート(モノトリデシルリン酸エステルとジトリデシルリン酸エステルとの混合物)、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート(モノステアリルリン酸エステルとジステアリルリン酸エステルとの混合物)、イソステアリルアシッドホスフェート(モノイソステアリルリン酸エステルとジイソステアリルリン酸エステルとの混合物)、オレイルアシッドホスフェート(モノオレイルリン酸エステルとジオレイルリン酸エステルとの混合物)、ベヘニルアシッドホスフェート(モノベヘニルリン酸エステルとジベヘニルリン酸エステルとの混合物)が挙げられる。
【0054】
(a42)リン酸基含有ポリマー
リン酸基含有ポリマー(a42)は、5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基価を有する。リン酸基価がこの範囲であると、密着性とともに耐水性が向上し易い。リン酸基含有ポリマー(a42)のリン酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、50mgKOH/g以上がより好ましい。リン酸基含有ポリマー(a42)のリン酸基価は、250mgKOH/g以下が好ましい。一態様において、リン酸基含有ポリマー(a42)は、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基価を有する。
【0055】
リン酸基価は、JIS K5601 2-1 酸価測定方法に基づいて算出される。具体的には、リン酸基価は、リン酸基含有ポリマー(a42)の固形分1g中の遊離酸を中和するのに要する、水酸化カリウム(KOH)のmg数である。
【0056】
リン酸基含有ポリマー(a42)の数平均分子量は、例えば、1,000以上50,000以下である。リン酸基含有ポリマー(a42)の数平均分子量は、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましい。リン酸基含有ポリマー(a42)の数平均分子量は、30,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましい。
【0057】
リン酸基含有ポリマー(a42)としては、例えば、リン酸基価が5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、耐水性の観点から、リン酸基含有アクリル樹脂が好ましい。リン酸基含有アクリル樹脂は、例えば、リン酸基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを重合する、あるいは、このモノマーとリン酸基を含有しない他のα,β-エチレン性不飽和モノマーとを共重合することによって得られる。
【0058】
(a5)第1溶媒
第1溶媒は特に限定されない。第1溶媒は水(脱イオン水)であってよく、有機溶媒であってよく、これらの組み合わせであってよい。なかでも、低VOC(Volatile Organic Compounds)の観点から、水が好ましい。第1溶媒に占める水の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましい。
【0059】
有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、エトキシプロパノール、ブタノール、メトキシブタノール、メチルメトキシブタノール、プロピルアルコール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;スワゾール、シェルゾール、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素系溶剤;キシレン、トルエン、ソルベッソ-100(S-100)、ソルベッソ-150(S-150)などの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0060】
第1溶媒(a5)の量は特に限定されず、着色塗料(a)の固形分および粘度等に応じて適宜設定される。第1溶媒は、例えば、着色塗料(a)の固形分が30質量%以上70質量%以下であって、着色塗料(a)の20℃でB型粘度計により測定される粘度が500mPa・s/6rpm以上6,000mPa・s/6rpm以下になるように、添加される。
【0061】
(その他)
着色塗料(a)は、その他、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、分散剤、ピンホール防止剤が挙げられる。
【0062】
(b)光輝性塗料
光輝性塗料(b)は、鱗片状顔料(b1)、セルロースエステル誘導体(b2)、セルロースナノファイバー(b3)、リン酸基含有化合物(b4)および水性溶媒(b5)を含む。光輝性塗料(b)は、必要に応じて、表面調整剤(b6)および各種添加剤等を含む。光輝性塗料(b)は、鱗片状顔料(b1)、セルロースエステル誘導体(b2)、セルロースナノファイバー(b3)およびリン酸基含有化合物(b4)(以下、第2リン酸基含有化合物と称する。)、さらには表面調整剤(b6)および各種添加剤等の混合物を、水性溶媒(b5)で希釈することにより調製される。
【0063】
光輝性塗料(b)の固形分含有率は、0.1質量%以上12質量%以下である。これにより、鱗片状顔料は、被塗物に沿って高い密度で配列し易い。光輝性塗料(b)の固形分含有率は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が特に好ましい。光輝性塗料(b)の固形分含有率は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。光輝性塗料(b)の固形分は、光輝性塗料(b)から水性溶媒(b5)を除いた全成分である。
【0064】
光輝性塗料(b)の粘度は特に限定されない。光輝性塗料(b)の粘度は、鱗片状顔料(b1)の配列の乱れが抑制され易くなる点で、20℃でB型粘度計により測定される粘度は、20mPa・s/6rpm以上2,000mPa・s/6rpm以下が好ましい。
【0065】
(b1)鱗片状顔料
鱗片状顔料は、光を反射する限り特に限定されない。金属調の質感が向上し易い点で、鱗片状顔料のアスペクト比は、2以上が好ましい。アスペクト比は、鱗片状顔料の一方の主面の長径と、鱗片状顔料の2つの主面の間の距離(厚さ)との比:長径/厚さである。鱗片状顔料のアスペクト比は、10以上1000以下であってよい。
【0066】
鱗片状顔料(b1)の長径は特に限定されない。鱗片状顔料(b1)の長径は、例えば、1μm以上であってよく、3μm以上であってよい。上記長径は、80μm以下であってよく、50μm以下であってよい。上記長径は、複層塗膜をその法線方向から電子顕微鏡で観察することにより算出される。観察視野において、鱗片状顔料(b1)に対応する領域とそれ以外の領域とを画像処理ソフトにより二値化する。次いで、任意に20個の鱗片状顔料(b1)を選出し、その最も長い径をそれぞれ測定する。これら測定値の平均値が、鱗片状顔料(b1)の長径である。
【0067】
鱗片状顔料(b1)の厚さは特に限定されない。鱗片状顔料(b1)の厚さは、例えば、0.02μm以上であってよい。鱗片状顔料(b1)の厚さは、1μm以下であってよく、0.5μm以下であってよい。上記厚さは、光輝性塗膜(B)の断面を電子顕微鏡で観察することにより算出してもよい。観察視野において、鱗片状顔料(b1)に対応する領域とそれ以外の領域とを画像処理ソフトにより二値化する。次いで、任意に20個の鱗片状顔料(b1)を選出し、その最も厚い部分の長さをそれぞれ測定する。これら測定値の平均値が、鱗片状顔料(b1)の厚さである。
【0068】
鱗片状顔料(b1)の平均粒子径は特に限定されない。金属調の質感が向上し易い点で、鱗片状顔料(b1)の平均粒子径は、2μm以上であってよく、5μm以上であってよい。上記平均粒子径は、50μm以下であってよく、35μm以下であってよい。平均粒子径は、体積平均粒子径D50を意味する。体積平均粒子径D50は、レーザードップラー式粒度分析計(例えば、日機装社製、「マイクロトラックUPA150」)を用いて測定することができる。
【0069】
鱗片状顔料(b1)の含有量は、意匠性の観点から、光輝性塗料の全固形分の3質量%以上であってよく、5質量%以上であってよく、7質量%以上であってよい。鱗片状顔料(b1)の含有量は、例えば、光輝性塗料の全固形分の50質量%以下であり、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。一態様において、鱗片状顔料(b1)の含有量は、光輝性塗料の全固形分の3質量%以上50質量%以下である。特に、セルロースナノファイバーの含有量が光輝性塗料の0.03質量%以上1質量%以下であって、鱗片状顔料の含有量が光輝性塗料の全固形分の3質量%以上50質量%以下であると、意匠性はさらに向上し得る。
【0070】
鱗片状顔料(b1)は特に限定されない。鱗片状顔料(b1)としては、例えば、金属粒子、金属被覆マイカ、金属被覆ガラス粒子、グラファイトが挙げられる。金属粒子としては、具体的には、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、リン化鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウムおよびこれらを含む合金の粒子が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。鱗片状顔料(b1)は、着色されていてもよい。なかでも、金属調の質感が向上し易い点で、アルミニウム粒子が好ましい。
【0071】
(b2)セルロースエステル誘導体
セルロースエステル誘導体は、鱗片状顔料の配列性をさらに向上させる。
【0072】
セルロースエステル誘導体は、オキソ酸(代表的には、カルボン酸)と、セルロース((C10)との縮合反応物である。セルロースエステル誘導体において、セルロースのヒドロキシ基はエステル化されているため、親水性と疎水性とのバランスがコントロールされている。さらに、セルロースエステル誘導体のアスペクト比は、セルロースナノファイバー(CNF)より小さく、例えば10未満である。これらにより、セルロースエステル誘導体は、光輝性塗料あるいは光輝性塗膜中において、CNFとは異なる挙動を示す。
【0073】
オキソ酸(言い換えれば、セルロースのヒドロキシ基とエステル結合を形成する基)は、炭素数1~20の炭化水素基を有することが好ましい。セルロースエステル誘導体の一般的な構造を、下記式に示す。
【0074】
【化1】
【0075】
式中、Rは、それぞれ独立して水素(H)、アシル基(-C(=O)-R)、炭化水素基(-R)、カルボキシアルキル基(-RCOOH)であり、少なくとも1つはアシル基である。複数のRおよびRは、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
【0076】
は、例えば、炭素数1~20の炭化水素基である。炭化水素基は、鎖状、分岐状あるいは環状の脂肪族炭化水素基であってよく、芳香環を有していてもよい。なかでも、Rは、炭素数2~10、さらには炭素数2~4の鎖状あるいは分岐した脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0077】
は、例えば、炭素数1~20のアルキレン基である。アルキレン基は、鎖状、分岐状あるいは環状であってよい。なかでも、Rは、炭素数2~10、さらには炭素数2~4の鎖状あるいは分岐したアルキレン基が好ましい。
【0078】
セルロースエステル誘導体の酸価は、20mgKOH/g以上が好ましい。これにより、セルロースエステル誘導体が水性塗料内で安定的に存在することができて、その効果が発揮され易くなる。セルロースエステル誘導体の酸価は、40mgKOH/g以上がより好ましい。セルロースエステル誘導体の酸価は、150mgKOH/g以下であってよい。
【0079】
セルロースエステル誘導体としては、具体的には、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレートが好ましい。
【0080】
セルロースエステル誘導体の含有量は、CNFの含有量に応じて設定されることが好ましい。セルロースナノファイバーの含有量Cとセルロースエステル誘導体の含有量Cとの比率:C/Cは、0.03以上が好ましい。これにより、CNFによる効果、すなわち、粘度上昇および鱗片状顔料の沈降防止がより発現され易い。比率:C/Cは、3.0以下がより好ましい。これにより、セルロースエステル誘導体の効果、すなわち、塗膜欠陥の発生抑制がより発現され易い。比率:C/Cは、0.06以上がさらに好ましく、0.1以上が特に好ましい。比率:C/Cは、2.0以下がより好ましく、1.5以下が特に好ましい。一態様において、比率:C/Cは、0.03以上3.0以下である。含有量は、固形分を基準に算出される。
【0081】
(b3)セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバー(CNF)は、光輝性塗料中で網目状に分散し、塗料の粘度を上昇させる。CNFは、さらに、鱗片状顔料の沈降を抑制する。
【0082】
CNFは、ISO TS 20477に定義されているように、植物素材を機械的に解繊することにより得られる。CNFは、結晶部、准結晶部、非晶部からなるセルロースミクロフィブリル(シングルナノファイバー)単独または、縦に引き裂かれたもの、もつれたもの、または網目状の構造を持つそれらの集合体である。CNFには、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロース、ナノセルロースクリスタル等と言われるものも含まれる。植物素材としては、主に木材が挙げられる。その他の植物素材としては、例えば、竹、稲わら、麦わら、もみ殻、草本類(ススキ等)、海藻が挙げられる。CNFは、後述するように、例えば10以上のアスペクト比を有し、繊維状である。そのため、
【0083】
機械的な解繊に先立って、通常、植物素材には化学的処理が施される。化学的処理によって、植物素材の形状は変化せず、繊維状である。化学処理によって、得られるCNFには、カルボキシ基、リン酸基、亜リン酸基、カルボキシメチル基、スルホ基等のアニオン性基が導入される。化学的処理としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)を用いた酸化によりカルボキシ基を導入するTEMPO酸化法、リン酸基を導入するリン酸エステル化法、亜リン酸基を導入する亜リン酸エステル化法、カルボキシメチル基を導入するカルボキシメチル化法、スルホ基を導入するスルホン化法が挙げられる。化学的処理の種類によって、得られるCNFの特徴は異なり得る。本実施形態ではいずれの化学的処理が施されたCNFも使用可能である。
【0084】
なかでも、透明性に優れる点で、TEMPO酸化法により処理されたCNF(以下、TEMPO酸化型CNFと称す。)が好ましい。特に、酸処理された後、TEMPO酸化法により処理されたCNFが好ましい。酸処理は、例えば、pH2~6、温度30℃以上120℃以下の条件で行われる。酸は、無機酸であってよく、有機酸であってよい。
【0085】
TEMPO酸化型CNFの絶乾質量に対するカルボキシ基の量は、0.5mmol/g以上が好ましく、1.0mmol/g以上がより好ましく、1.3mmol/g以上が特に好ましい。上記カルボキシ基の量は、2.5mmol/g以下が好ましく、2.0mmol/g以下がより好ましく、1.6mmol/g以下が特に好ましい。
【0086】
カルボキシ基の量は、例えば、以下の方法により算出される。TEMPO酸化型CNFの0.5質量%スラリー60mLに0.1M塩酸水溶液を加えて、pH2.5に調整する。続いて、このスラリーに0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11になるまでの電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された、水酸化ナトリウム量(a)を特定する。この水酸化ナトリウム量(a)および下記式から、カルボキシ基の量を算出する。
カルボキシル基の量[mmol/gTEMPO酸化型CNF]=a[mL]×0.05/TEMPO酸化型CNFの質量[g]
【0087】
鱗片状顔料の沈降防止の観点から、CNFの平均繊維幅は、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が特に好ましい。透明性の観点から、CNFの平均繊維幅は、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、90nm以下が特に好ましい。
【0088】
鱗片状顔料の沈降防止の観点から、CNFの平均繊維長は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましく、2μm以上が特に好ましい。透明性の観点から、CNFの平均繊維長は、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、90μm以下が特に好ましい。
【0089】
CNFのアスペクト比は、例えば、10以上、20以上、25以上、100以上であってよい。CNFのアスペクト比は、例えば、2,000以下、1,000以下、500以下であってよい。
【0090】
平均繊維幅および平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、十分な数の繊維の繊維径および繊維長を測定し、これらを平均化することにより算出できる。アスペクト比は、平均繊維幅を平均繊維長で除した値(平均繊維長/平均繊維幅)である。
【0091】
CNFの含有量Cは、光輝性塗料の0.03質量%以上が好ましい。これにより、CNFによる上記の効果がより発現され易い。含有量Cは、光輝性塗料の1.0質量%以下が好ましい。これにより、塗膜欠陥の発生が抑制され易い。含有量Cは、光輝性塗料の0.06質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。含有量Cは、光輝性塗料の0.6質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が特に好ましい。一態様において、含有量Cは、光輝性塗料の0.03質量%以上1.0質量%以下である。
【0092】
(b4)第2リン酸基含有化合物
光輝性塗料(b)は、第2リン酸基含有化合物(b4)を含む。これにより、鱗片状顔料(b1)の分散性が向上して、さらに配列性が高まる。加えて、光輝性塗膜(B)中における、第1水酸基含有樹脂(a11)と第2硬化剤(c2)との硬化反応が促進されて、光輝性塗膜(B)の密着性がより向上し易くなる。
【0093】
第2リン酸基含有化合物(b4)の含有量は特に限定されない。意匠性および密着性向上の観点から、第2リン酸基含有化合物(b4)の含有量は、光輝性塗料(b)の全固形分の0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。第2リン酸基含有化合物(b4)の含有量は、光輝性塗料(b)の全固形分の15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。一態様において、第2リン酸基含有化合物(b4)の含有量は、光輝性塗料(b)の全固形分の0.1質量%以上15質量%以下である。
【0094】
第2リン酸基含有化合物(b4)は、リン酸基(-P(=O)OR(Rは、それぞれ独立して、水素または炭化水素基)を有する限り、特に限定されない。配列性および密着性向上の観点から、第2リン酸基含有化合物(b4)は、炭素数4~30のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル(b41)、および、リン酸基価が5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基含有ポリマー(b42)の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0095】
アルキルリン酸エステル(b41)およびリン酸基含有ポリマー(b42)としては、アルキルリン酸エステル(b41)に関して例示された化合物と同様のものが挙げられる。第1リン酸基含有化合物(a4)と第2リン酸基含有化合物(b4)とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0096】
リン酸基含有ポリマー(b42)のリン酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、50mgKOH/g以上がより好ましい。リン酸基価がこの範囲であると、密着性とともに耐水性が向上し易い。リン酸基含有ポリマー(b42)のリン酸基価は、250mgKOH/g以下が好ましい。一態様において、リン酸基含有ポリマー(b42)は、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基価を有する。
【0097】
(b5)水性溶媒
水性溶媒としては、純水、イオン交換水、蒸留水、水道水、工業水などの各種水が挙げられる。光輝性塗料(b)は、水性溶媒とともに、上記の有機溶媒を含んでもよい。水性溶媒(b5)の量は特に限定されず、光輝性塗料(b)の固形分含有率が0.1質量%以上10質量%以下になるように、設定される。
【0098】
(b6)表面調整剤
光輝性塗料(b)は、表面調整剤(b6)を含むことが好ましい。これにより、光輝性塗料(b)の表面張力が制御されて、鱗片状顔料(b1)は、さらに光輝性塗膜(B)と平行に配列し易くなる。加えて、光輝性塗料(b)の未硬化の着色塗膜(A)に対する濡れ性が向上し易くなって、層間の密着性が向上する。
【0099】
表面調整剤(b6)は特に限定されない。表面調整剤(b6)としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、ビニル系、フッ素系の表面調整剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、意匠性および耐水性等の観点から、シリコーン系の表面調整剤が好ましい。シリコーン系の表面調整剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびこれを変性した変性シリコーンが挙げられる。変性シリコーンとしては、例えば、ポリエーテル変性体、アクリル変性体、ポリエステル変性体が挙げられる。
【0100】
市販されている表面調整剤としては、例えば、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、Tegoシリーズ(エボニック社製)、グラノールシリーズ、ポリフローシリーズ(いずれも共栄社化学社製)、ディスパロンシリーズ(楠本化成社製)が挙げられる。
【0101】
表面調整剤(b6)の量は特に限定されない。表面調整剤(b6)の量は、光輝性塗料(b)の0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が特に好ましい。表面調整剤(b6)の量は、光輝性塗料(b)の10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が特に好ましい。
【0102】
(その他)
光輝性塗料(b)は、その他、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、分散剤、ピンホール防止剤、セルロースエステル誘導体(b2)およびセルロースナノファイバー(b3)以外の粘度調整剤、鱗片状顔料(b1)以外の顔料が挙げられる。
【0103】
上記の粘性調整剤としては、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロースエーテルが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。セルロースエーテルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドリキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0104】
光輝性塗料(b)は、隠蔽性等に応じて、鱗片状顔料(b1)以外の他の顔料を含み得る。他の顔料としては、例えば、防錆顔料、着色顔料、上記の体質顔料が挙げられる。ただし、鱗片状顔料が塗膜と平行に配列し易くなる点で、他の顔料の含有量は、全鱗片状顔料(b1)と他の顔料との合計の10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。
【0105】
光輝性塗料(b)は、上記のような塗膜形成樹脂(b7)を含んでもよい。光輝性塗料(b)における塗膜形成樹脂(b7)の含有量は、光輝性塗料(b)の固形分質量の50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0106】
(c)クリヤー塗料
クリヤー塗料(c)は、第3水酸基含有樹脂(c1)および第2硬化剤(c2)を含む2液型である。2液型のクリヤー塗料を用いることにより、より高い塗膜性能が得られ易い。第2硬化剤(c2)は、第3水酸基含有樹脂(c1)と反応してクリヤー塗膜(C)を形成するとともに、光輝性塗料(b)内に移動して、第1水酸基含有樹脂(a11)と反応し、光輝性塗膜(B)を形成する。第1水酸基含有樹脂(a11)は、着色塗料(a)から供給される。
【0107】
クリヤー塗料(c)の粘度は特に限定されない。クリヤー塗料(c)の20℃におけるNo.4フォードカップ粘度は、20秒以上50秒以下である。
【0108】
クリヤー塗料(c)の固形分は特に限定されない。クリヤー塗料(c)の固形分は、例えば、40質量%以上65質量%以下である。クリヤー塗料(c)の固形分は、クリヤー塗料(c)から溶媒を除いた全成分である。
【0109】
(c1)第3水酸基含有樹脂
第3水酸基含有樹脂(c1)は、1以上の水酸基を有しており、第1水酸基含有樹脂(a11)および/または第2水酸基含有樹脂(a12)として例示されたのと同様の樹脂が挙げられる。ただし、その数平均分子量は限定されない。具体的には、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0110】
(c2)第2硬化剤
第2硬化剤(c2)は特に限定されず、第3水酸基含有樹脂(c1)に応じて適宜選択すればよい。第2硬化剤(c2)としては、第1硬化剤(a2)として例示されたのと同様の硬化剤が挙げられる。なかでも、得られる塗膜の諸性能およびコストの点で、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0111】
第3水酸基含有樹脂(c1)の水酸基と第2硬化剤(c2)であるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比(=NCO/OH)は特に限定されない。塗膜の硬化性および耐擦傷性等の観点から、上記当量比(=NCO/OH)は、0.5以上2.0以下が好ましく、0.8以上1.5以下がより好ましい。
【0112】
(c3)第2溶媒
クリヤー塗料(c)は、必要に応じて、第2溶媒(c3)を含む。
第2溶媒(c3)は、有機溶媒であってよい。第2溶媒(c3)に用いられる有機溶媒としては、第1溶媒(a5)として例示されたのと同様の有機溶媒が挙げられる。
【0113】
第2溶媒(c3)の量は特に限定されず、クリヤー塗料(c)の固形分および粘度等に応じて適宜設定される。第3溶媒は、例えば、クリヤー塗料(c)の固形分が40質量%以上65質量%以下になるように、添加される。
【0114】
(その他)
クリヤー塗料(c)は、透明性を損なわない範囲で、顔料を含み得る。顔料は特に限定されず、従来公知の顔料を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。顔料の添加量は特に限定されない。クリヤー塗料(c)は、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、ピンホール防止剤が挙げられる。
【0115】
[塗装板]
塗装板は、被塗物および複層塗膜を備える。複層塗膜は、着色塗膜(A)と、着色塗膜(A)上に形成される光輝性塗膜(B)と、光輝性塗膜(B)上に形成されるクリヤー塗膜(C)と、を備える。着色塗膜(A)は、上記の着色塗料(a)により形成される。光輝性塗膜(B)は、上記の光輝性塗料(b)により形成される。クリヤー塗膜(C)は、上記の2液型のクリヤー塗料(c)により形成される。これら着色塗料(a)、光輝性塗料(b)およびクリヤー塗料(c)をこの順に塗装されて形成される複層塗膜は、優れた金属調の意匠と高い塗膜性能とを有する。
【0116】
(被塗物)
被塗物は、特に限定されない。被塗物は、例えば、乗用車、トラック、バスなどの車体の少なくとも一部であってよく、これらの外装であってよい。外装とは、塗装される部分のうち、外部から視認できる部材である。被塗物の材質としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛またはこれらの合金を含む金属材が挙げられる。被塗物の形状も特に限定されない。被塗物は、板状であってもよいし、立体形状を有していてもよい。
【0117】
被塗物は、脱脂処理および/または表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム化成処理、複合酸化物処理が挙げられる。金属材は、表面処理後、電着塗料によって下塗り塗装されていることが好ましい。電着塗料は、カチオン型であってよく、アニオン型であってよい。
【0118】
(複層塗膜)
複層塗膜は、被塗物上に形成される着色塗膜(A)と、着色塗膜(A)上に形成される光輝性塗膜(B)と、光輝性塗膜(B)上に形成されるクリヤー塗膜(C)と、を備える。複層塗膜において、着色塗膜(A)、光輝性塗膜(B)およびクリヤー塗膜(C)は硬化している。
【0119】
(A)着色塗膜
着色塗膜(A)は、着色塗料(a)により形成される。着色塗膜(A)は、被塗物の質感および色彩を隠蔽し、自動車車体に所望の色調を与える。
【0120】
着色塗膜(A)の厚さは特に限定されない。隠蔽性の観点から、着色塗膜(A)の厚さは、15μm以上であってよく、18μm以上であってよく、20μm以上であってよい。着色塗膜(A)の厚さは、50μm以下であってよく、45μm以下であってよく、40μm以下であってよい。着色塗膜(A)の厚さがこの範囲であると、被塗物の質感および色彩は着色塗膜(A)から透けることなく隠蔽され易い。着色塗膜(A)の厚さは、例えば、電磁式膜厚計により測定される。着色塗膜(A)の厚さは、異なる5つの試料における着色塗膜の厚さの平均値である。他の層の厚さも同様に測定および算出できる。
【0121】
(B)光輝性塗膜
光輝性塗膜(B)は、光輝性塗料(b)により形成される。光輝性塗膜(B)は、自動車車体に金属調の質感を与える。
【0122】
光輝性塗膜(B)の単位面積当たりの質量(光輝性塗料(b)の乾燥後の付着量)は、6×10-6g/mm以下が好ましい。このように、光輝性塗膜(B)の付着量が少ないと、鱗片状顔料は、さらに被塗物に沿って高い密度で配列し易くなる。光輝性塗膜(B)の単位面積当たりの質量は、1×10-6g/mm以下がより好ましい。光輝性塗膜(B)の単位面積当たりの質量は、1×10-7g/mm以上であってよい。一態様において、光輝性塗膜(B)の単位面積当たりの質量は、1×10-7g/mm以上6×10-6g/mm以下である。
【0123】
(C)クリヤー塗膜
クリヤー塗膜(C)は、2液型のクリヤー塗料(c)により形成される。クリヤー塗膜(C)は、着色塗膜(A)および光輝性塗膜(B)を保護する。
【0124】
クリヤー塗膜(C)の厚さは特に限定されない。耐擦傷性の観点から、クリヤー塗膜(C)の厚さは、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。白さおよび金属調の質感が損なわれ難い点で、クリヤー塗膜(C)の厚さは、50μm以下であってよく、40μm以下であってよい。
【0125】
[塗装板の製造方法]
塗装板は、着色塗料(a)を塗装して未硬化の着色塗膜(A)を形成する工程と、未硬化の着色塗膜(A)上に、光輝性塗料(b)を塗装して未硬化の光輝性塗膜(B)を形成する工程と、未硬化の光輝性塗膜(B)上に、クリヤー塗料(c)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜(C)を形成する工程と、未硬化の着色塗膜(A)、未硬化の光輝性塗膜(B)および未硬化のクリヤー塗膜(C)を硬化させて複層塗膜を得る工程と、を備える方法により製造される。未硬化の状態で各塗膜を積層することにより、着色塗料(a)から第2水酸基含有樹脂(a12)が、クリヤー塗料(c)から第2硬化剤(c2)が、光輝性塗料(b)へとそれぞれ供給されて、金属調の意匠と塗膜性能とが両立された塗装板が得られる。
【0126】
本明細書において、硬化は、固化を含む概念である。すなわち、本明細書における硬化は、化学反応を伴うか否かにかかわらず、塗膜が流動性を失うことを意味する。具体的には、本明細書における硬化は、し、JIS K 5500(塗料用語)で規定されている「硬化乾燥」と同義である。すなわち、硬化は、a)試験片の中央を親指と人指し指とで強く挟んでみて、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面を指先で急速に繰り返してこすってみて、すり跡が付かない状態(dry hard)であることをいう。本明細書における未硬化は、上記の硬化以外の状態であり、半硬化状態を含む。
【0127】
(1)未硬化の着色塗膜を形成する工程(S11)
被塗物上に着色塗料(a)を塗装して、未硬化の着色塗膜(A)を形成する。
【0128】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装が挙げられる。これらの方法と静電塗装とを組み合わせてもよい。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。回転霧化式静電塗装には、例えば、通称「マイクロ・マイクロベル(μμベル)」、「マイクロベル(μベル)」、「メタリックベル(メタベル)」などと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機が用いられる。
【0129】
着色塗料(a)の塗布量は特に限定されない。着色塗料(a)は、例えば、硬化後の着色塗膜(A)の厚さが15μm以上50μm以下になるように、塗布される。
【0130】
着色塗料(a)を塗装した後、予備乾燥(プレヒートとも称される)を行ってもよい。これにより、硬化工程において着色塗膜(A)に含まれる溶媒の突沸が抑制されて、ワキの発生が抑制され易くなる。
【0131】
予備乾燥の条件は特に限定されない。予備乾燥としては、例えば、20℃以上25℃以下の温度条件で15分以上30分以下放置する方法、50℃以上100℃以下の温度条件で30秒以上10分以下加熱する方法が挙げられる。
【0132】
(2)未硬化の光輝性塗膜を形成する工程(S12)
未硬化の着色塗膜(A)上に光輝性塗料(b)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜(B)を形成する。
【0133】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、着色塗料(a)の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。
【0134】
光輝性塗料(b)は、光輝性塗膜(B)の単位面積当たりの質量(光輝性塗料(b)の乾燥後の付着量)が1×10-7g/mm以上6×10-6g/mm以下になるように塗布されることが好ましい。
【0135】
光輝性塗料(b)を塗装した後、予備乾燥を行ってもよい。これにより、光輝性塗膜(B)の流動性が速やかに低下して、鱗片状顔料(b1)の流動も抑制され易くなる。予備乾燥の条件は特に限定されず、着色塗膜(A)の予備乾燥と同様であってよい。
【0136】
(3)未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程(S13)
未硬化の光輝性塗膜(B)上にクリヤー塗料(c)を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜(C)を形成する。
【0137】
塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、着色塗料(a)の塗装方法と同様の方法が挙げられる。なかでも、塗着効率の観点から、回転霧化式静電塗装が好ましい。
【0138】
クリヤー塗料(c)の塗布量は特に限定されない。クリヤー塗料(c)は、例えば、硬化後のクリヤー塗膜(C)の厚さが10μm以上50μm以下になるように、塗布される。
【0139】
(4)硬化工程(S14)
未硬化の着色塗膜(A)、未硬化の光輝性塗膜(B)および未硬化のクリヤー塗膜(C)を一度に硬化させる。各塗膜は加熱により硬化し得る。
【0140】
加熱条件は、各塗膜の組成等に応じて適宜設定される。加熱温度は、例えば70℃以上160℃以下であり、80℃以上150℃以下であってよい。加熱時間は、例えば10分以上40分以下であり、20分以上30分以下であってよい。加熱装置としては、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉が挙げられる。
【実施例
【0141】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。「部」及び「%」はいずれも質量を基準にしている。
【0142】
[製造例A-1]第1水酸基含有樹脂(a11-1)の製造
反応器にイソフタル酸25.6部、無水フタル酸22.8部、アジピン酸5.6部、トリメチロールプロパン19.3部、ネオペンチルグリコール26.7部、ε-カプロラクトン17.5部およびジブチルスズオキサイド0.1部を加え、これらを混合撹拌しながら170℃まで昇温した。その後3時間かけて反応物を220℃まで昇温しつつ、酸価8となるまで縮合反応により生成する水を除去した。次いで、反応器に無水トリメリット酸7.9部を加え、150℃で1時間反応させ、酸価が40のポリエステル樹脂を得た。さらに、ポリエステル樹脂を100℃まで冷却した後、ブチルセロソルブ11.2部を加え均一になるまで撹拌した。続いて、ポリエステル樹脂を60℃まで冷却し、その後、イオン交換水98.8部およびジメチルエタノールアミン5.9部を加えた。これにより、固形分50質量%の第1水酸基含有樹脂(a11-1、水酸基含有ポリエステル樹脂)を得た。第1水酸基含有樹脂(a11-1)の、固形分酸価は40mgKOH/g、固形分水酸基価は110mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
【0143】
[製造例A-2]第1水酸基含有樹脂(a11-2)の製造
モノマーの比率を変更したこと以外は製造例A-1と同様にして、第1水酸基含有樹脂(a11-2、水酸基含有ポリエステル樹脂)を得た。第1水酸基含有樹脂(a11-2)の、固形分酸価は30mgKOH/g、固形分水酸基価は70mgKOH/g、数平均分子量は3,000であった。
【0144】
[製造例A-3]第1水酸基含有樹脂(a11-3)の製造
モノマーの比率を変更したこと以外は製造例A-1と同様にして、第1水酸基含有樹脂(a11-3、水酸基含有ポリエステル樹脂)を得た。第1水酸基含有樹脂(a11-3)の、固形分酸価は15mgKOH/g、固形分水酸基価は50mgKOH/g、数平均分子量は5,000であった。
【0145】
[製造例B-1]第2水酸基含有樹脂(a12-1)の製造
反応器に水445部およびニューコール293(日本乳化剤社製)5部を仕込み、これらを攪拌しながら75℃に昇温した。メタクリル酸メチル145部、スチレン50部、アクリル酸エチル220部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル70部およびメタクリル酸15部を含むモノマー混合物、水240部およびニューコール293(日本乳化剤社製)30部の混合物を、ホモジナイザーを用いて乳化して、モノマープレ乳化液を得た。上記反応容器内を攪拌しながら、モノマープレ乳化液を3時間にわたって滴下した。モノマープレ乳化液の滴下と併行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)1部を水50部に溶解した水溶液を、上記反応容器中に上記モノマープレ乳化液の滴下終了時まで均等に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間、反応を継続した。反応物を冷却した後、上記反応容器にジメチルアミノエタノール2部を水20部に溶解した水溶液を投入した。次いで、200メッシュフィルターで濾過し、固形分40.6%の第2水酸基含有樹脂(a12-1、アクリル樹脂エマルション)を得た。第2水酸基含有樹脂(a12-1)の、数平均分子量は10万超、pH8の水溶液中における粒子径(D50)は200nm、固形分酸価は15mgKOH/g、固形分水酸基価は50mgKOH/gであった。
【0146】
[製造例B-2]第2水酸基含有樹脂(a12-2)の製造
乳化剤の量を変更したこと以外は、製造例B-1と同様にして、第2水酸基含有樹脂(a12-2、アクリル樹脂エマルション)を得た。第2水酸基含有樹脂(a12-2)の、数平均分子量は10万超、pH8の水溶液中における粒子径(D50)は100nm、固形分酸価は15mgKOH/g、固形分水酸基価は50mgKOH/gであった。
【0147】
[製造例C]リン酸基含有ポリマー(a42、b42)の製造
反応容器にエトキシプロパノール40質量部を仕込み、これに、スチレン4質量部、n-ブチルアクリレート35.96質量部、エチルヘキシルメタクリレート18.45質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート13.92質量部、メタクリル酸7.67質量部、アシッドホスホオキシヘキサ(オキシプロピレン)モノメタクリレート(ユニケミカル社製「ホスマーPP」)20質量部、エトキシプロパノール20質量部、およびアゾビスイソブチロニトリル1.7質量部からなるモノマー溶液(121.7質量部)を120℃で3時間かけて滴下した後、同温度で1時間攪拌を継続して、リン酸基含有ポリマー(リン酸基含有アクリル樹脂)を含む液を得た(不揮発分:63質量%)。得られたリン酸基含有ポリマーの、数平均分子量は6,000、固形分リン酸基価は100mgKOH/g、水酸基価は60mgKOH/gであった。
【0148】
[製造例D-1]その他の塗膜形成樹脂(a13)の調製
以下のようにして製造された水溶性アクリル樹脂/ポリウレタンエマルション/ポリエーテルポリオールを、固形分質量で1/1/1の割合で混合して、その他の塗膜形成樹脂(a13)を調製した。
【0149】
ポリウレタンエマルションとしては、アビシア社製「ネオレッツR-9603」(ポリカーポネート系ウレタンエマルション樹脂、不揮発分33質量%)を用いた。ポリエーテルポリオールとしては、三洋化成工業社製「プライムポールPX-1000」(2官能ポリエーテルポリオール、数平均分子量1,000)を用いた。
【0150】
(水溶性アクリル樹脂の製造)
反応容器にトリプロピレングリコールメチルエーテル23.89質量部およびプロピレングリコールメチルエーテル16.11質量部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら105℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル13.1質量部、アクリル酸エチル68.4質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル11.6質量部およびメタクリル酸6.9質量部を含むモノマー混合物を作成し、そのモノマー混合物100質量部、トリプロピレングリコールメチルエーテル10.0質量部およびターシャルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート1質量部からなる開始剤溶液を3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
【0151】
さらに、トリプロピレングリコールメチルエーテル5.0質量部およびターシャルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート0.3質量部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
【0152】
脱溶剤装置により、減圧下(70torr)110℃で溶剤を16.1質量部留去した後、脱イオン水204質量部およびジメチルアミノエタノール7.1質量部を加えて水溶性アクリル樹脂溶液を得た。得られた水溶性アクリル樹脂溶液の、不揮発分は30質量%であり、数平均分子量は10,000、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/gであった。
【0153】
[製造例D-2]塗膜形成樹脂(b7)の調製
以下のようにして製造された水酸基含有アクリル樹脂エマルション/メラミン樹脂(サイメル327)を、固形分質量で7/3の割合で混合して、塗膜形成樹脂(b7)を調製した。
【0154】
(水酸基含有アクリル樹脂エマルションの製造)
反応容器に脱イオン水330gを加え、窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温した。ついで、アクリル酸11.25部、アクリル酸n-ブチル139部、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸n-ブチル187部、メタクリル酸2-エチルヘキシル75部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル150部、スチレン112部、チオカルコール20(n-ドデシルメルカプタン、花王社製、有効成分100%)11.2部、およびラテムルPD-104(乳化剤、花王社製、有効成分20%)74.3部、および脱イオン水300部からなるモノマー乳化物のうち3%分と、過硫酸アンモニウム2.63部、および脱イオン水90部からなる開始剤溶液の30%分とを、15分間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、同温度で15分間熟成を行った。さらに、残りのモノマー乳化物と開始剤溶液とを180分間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。次いで、40℃まで冷却し、200メッシュフィルターで濾過し、平均粒子径200nm、不揮発分49%、固形分酸価15mgKOH/g、水酸基価85mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂エマルションを得た。
【0155】
[製造例E]白色顔料分散ペーストの製造
分散剤としてDisperbyk 190(ビックケミー社製、ノニオン・アニオン系分散剤)4.5部、消泡剤としてBYK-011(ビックケミー社製)0.5部、イオン交換水22.9部、二酸化チタン(着色顔料a3)72.1部を予備混合した後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、二酸化チタンの二次粒子径が5μm以下となるまで室温で混合し、顔料分散ペーストを得た。
【0156】
[実施例1]
(I)被塗物の準備
被塗物として、硬化電着塗膜を備えるリン酸亜鉛処理鋼板を準備した。硬化電着塗膜は、日本ペイント社製のカチオン電着塗料組成物である「パワーニクス」を、乾燥膜厚が20μmとなるようにリン酸亜鉛処理鋼板に電着塗装した後、160℃で30分間加熱することにより形成した。
【0157】
(II)塗料組成物セットの準備
(II-1)着色塗料の調製
表1に示す成分および配合割合に従って、第1水酸基含有樹脂、第2水酸基含有樹脂および白色顔料分散ペースト等を混合し、着色塗料(a)を調製した。着色塗料(a)の塗料温度20℃、60rpmの条件でB型粘度計(東機産業社製、形式TVB10、単一円筒型回転式粘度計)で測定した粘度は、4,000mPa・s、固形分含有率は50質量%であった。硬化剤としては、サイメル327(allnex社製、メラミン樹脂)を用いた。表1に示す配合割合は、固形分質量を基準にしている。
【0158】
(II-2)光輝性塗料の調製
表1に示す成分および配合割合に従って、光輝性塗料(b)を調製した。光輝性塗料A1の、B型粘度計(東機産業社製、形式TVB10、単一円筒型回転式粘度計)で測定した粘度は、400mPa・s、固形分含有率は約4.1質量%であった。
【0159】
(II-3)クリヤー塗料の準備
クリヤー塗料(c)として、PUエクセルO-2100(日本ペイント社製、2液型クリヤー塗料)を準備した。クリヤー塗料(c)は、主剤として水酸基含有アクリル樹脂を含み、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含む。クリヤー塗料(c)の、No.4フォードカップを用いて20℃で測定した粘度は、25秒であった。
【0160】
実施例および比較例において使用された各成分は、以下のとおりである。
(鱗片状顔料)
アルミニウム粒子:商品名SB-10、旭化成社製、厚さ0.06μm、平均粒子径10μm
(セルロースナノファイバー)
TEMPO酸化型CNF:平均繊維幅2-4nm、カルボキシ基量1.4mmol/g
(セルロースエステル誘導体)
カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート(CAB):商品名Solus3050、酸価50mgKOH/g、イーストマン ケミカル カンパニー社製
(表面調整剤)
ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤:商品名TEGOFLOW425、エボニック社製
(界面活性剤)
アセチレンジオール系界面活性剤:商品名サーフィノール104A、エボニック社製
【0161】
(III)未硬化の着色塗膜の形成工程
被塗物上に、着色塗料(X-1)をメタベルを用いて塗装した。
【0162】
(IV)未硬化の光輝性塗膜の形成工程
未硬化の着色塗膜上に、光輝性塗料(b)をメタベルを用いて塗装した。
【0163】
(V)未硬化のクリヤー塗膜の形成工程
未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(c)をマイクロマイクロベルを用いて塗装した。
【0164】
(VI)硬化工程
クリヤー塗膜の形成工程(V)の後、140℃で20分間加熱して、複層塗膜A1を備える被塗物を得た。複層塗膜A1において、着色塗膜の厚さは30μmであり、着色塗膜の白黒隠蔽膜厚は60μmであった。光輝性塗膜の単位面積当たりの質量は0.7×10-6g/mmであった。クリヤー塗膜の厚さは30μmであった。
【0165】
[実施例2-8、比較例1-3]
表1に示す成分および配合割合に従って、各塗料をそれぞれ調製したこと以外、実施例1と同様にして、複層塗膜を備える塗装板を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0166】
[評価]
(1)意匠性
多角度分光測色計MA-68(X-Rite社製)を用いて、複層塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して受光角15度の分光反射率を測定した。次いで、分光反射率から計算されたL表色系(CIE1976L色空間)における明度L(L値)を算出した。L値が大きいほど、金属調に優れている。算出されたL値を、以下の基準に従って評価した。硬化着色塗膜形成後、光輝性塗料塗装前の被塗物のL値は、90であった。
良:100以上
可:95以上100未満
不良:95未満
【0167】
(2)耐水性(浸漬試験後の密着性)
循環機能の付いた恒温水槽を40℃に設定し、脱イオン水で満たした。ここに、塗装板を浸漬した。240時間浸漬した後、塗装板を引き上げて室温(23℃)に置き、水滴を軽くふき取った。引き上げた後10分以内に、NTカッター(エヌティー株式会社製)により、被塗物に達する切れ目(縦11本、横11本、2mm間隔)を入れ、100個のマス目を作った。すべてのマス目を覆うように、粘着テープ(ニチバン株式会社製、セロハンテープ、24mm幅)を貼り付けて、上から爪等で強く密着させた。次いで、テープを、塗膜との成す角が約45°になるように引っ張りながら、剥離した。テープ剥離後の塗膜を、目視により評価した。評価基準は、以下の通りである。
【0168】
良:切れ目の両側および切れ目同士の交点に塗膜の欠けが見られず、すべてのマス目内にも剥がれがみられない
可:切れ目の両側および切れ目同士の交点に塗膜のわずかな欠けが見られるが、いずれのマス目内にも剥がれはみられない。
不良:1以上のマス目内に剥がれがみられる
【0169】
(3)沈降性
光輝性塗料をガラス製の容器に入れて密閉し、20℃で10日間静置した。その後の塗料の様子を目視により評価した。評価基準は、以下の通りである。
良:鱗片状顔料の沈降はみられない
可:塗料静置後、7日経過するまでに沈降がみられる
不良:塗料静置後、1日経過するまでに沈降がみられる
【0170】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の塗料組成物セットは、金属調の意匠と塗膜性能とを両立できるため、特に自動車外装の塗装に適している。