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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01L19/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021136912
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2023031432
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村本 大地
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/224453(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0041594(US,A1)
【文献】特開2004-279091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部を収容する収容部、当該収容部とは内壁を挟んで対向する凹部、及び、前記内壁に形成されて前記収容部と前記凹部とを連通させる貫通孔を有する筐体部と、
前記貫通孔を塞ぐフィルタと、
前記凹部を覆いつつ前記筐体部に取り付けられ、大気開放部を含むカバーと、を備え、
前記凹部は、前記内壁の一面である底面と、前記底面とは垂直で互いに対向する2つの側面とで形成され、
前記カバーは、矩形の上板と、当該上板の端辺から垂直方向に連続して互いに対向する2つの矩形の側板とで形成され、
前記上板は、前記凹部の前記底面と対向する位置に配置され、
前記側板は、前記凹部の2つの前記側面が互いに対向する間の位置に配置される、圧力センサ。
【請求項2】
前記筐体部は、表面が前記凹部の前記底面と連続して前記収容部の側部に位置し、かつ、外部に向けて突出する突起部を有する2つの側壁を有し、
前記カバーの前記側板の一部は、2つの前記側壁のいずれかと対向し、かつ、前記突起部が係合する係合穴を有する、請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記大気開放部は、前記上板の角部と前記側板の角部とにおいて連続するように前記カバーに形成された複数の切り欠き部である、請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記フィルタは、前記内壁における前記凹部の前記底面の側の中央に設置され、
前記内壁は、前記凹部の前記底面の側で、かつ、前記フィルタの設置位置を挟んで互いに前記凹部の前記側面に沿った位置に、一端が一方の前記側壁と連続し、他端が他方の前記側壁と連続する2つの第1溝部を有する、請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記カバーは、前記凹部の前記底面と対向する側の面に、前記フィルタよりも外周側の前記底面に向かって突出し、かつ、前記切り欠き部が形成されている方向に一部が面する複数のリブを有する、請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記大気開放部は、前記上板の前記端辺と連続する側とは反対側に位置する、前記側板の開放端である、請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記フィルタは、前記内壁における前記凹部の前記底面の側の中央に設置され、
前記内壁及び前記側壁は、前記凹部の前記底面の側と前記側壁の前記表面とで連続し、かつ、前記フィルタの設置位置を挟んで互いに前記凹部の前記側面に沿った位置に、2つの第2溝部を有する、請求項6に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧を基準として測定するゲージ圧型の圧力センサでは、圧力検出部の一方が大気開放されている。しかし、圧力検出部が単に大気開放されているだけでは、大気開放孔から水分や塵埃等がセンサ内部に進入することによる故障や、大気開放孔の詰まりによる検出精度の低下などが懸念される。そこで、特許文献1は、空気の流れを許容しつつ水分や塵埃等の通過を防止するフィルタを大気開放孔に取り付けた圧力センサに関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-296196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている圧力センサでは、フィルタとして撥水フィルタが例示されているが、撥水フィルタが外部に露出しているため、撥水しきれない水分や塵埃等により目詰まりを抑止することができない場合もあり得る。また、この圧力センサでは、内部において大気開放に係る通路の形状が複雑であり、より簡易的な構造が望まれる。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、簡易的な構造で、大気圧を維持する部位に設けられるフィルタの目詰まりを抑止する圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る圧力センサは、検出対象の圧力を検出する圧力検出部と、圧力検出部を収容する収容部、収容部とは内壁を挟んで対向する凹部、及び、内壁に形成されて収容部と凹部とを連通させる貫通孔を有する筐体部と、貫通孔を塞ぐフィルタと、凹部を覆いつつ筐体部に取り付けられ、大気開放部を含むカバーと、を備え、凹部は、内壁の一面である底面と、底面とは垂直で互いに対向する2つの側面とで形成され、カバーは、矩形の上板と、上板の端辺から垂直方向に連続して互いに対向する2つの矩形の側板とで形成され、上板は、凹部の底面と対向する位置に配置され、側板は、凹部の2つの側面が互いに対向する間の位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る圧力センサの斜視図である。
図2】第1実施形態におけるカバー装着前の圧力センサの斜視図である。
図3】第1実施形態に係る圧力センサの断面図である。
図4】第1実施形態における裏面側から見たカバーの斜視図である。
図5】第1実施形態におけるフィルタへの被水抑止作用を説明する断面図である。
図6】第2実施形態に係る圧力センサの斜視図である。
図7】第2実施形態におけるカバー装着前の圧力センサの斜視図である。
図8】第2実施形態における裏面側から見たカバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて各実施形態に係る圧力センサについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る圧力センサ1の斜視図である。図2は、カバー50を装着する前の圧力センサ1の斜視図である。図3は、図1に示すII-II断面に対応した、圧力センサ1の断面図である。
【0010】
圧力センサ1は、大気圧を基準として検出対象の圧力を測定するゲージ圧型である。本実施形態では、一例として、圧力センサ1は、自動車等の車両に設けられるブレーキの操作力を低減する補助装置としてのブレーキブースター(Brake booster)に関して、倍力源となるエンジンの吸気圧(負圧)を検出する。圧力センサ1は、圧力センサモジュール10と、筐体部20と、端子部30と、フィルタ40と、カバー50と、取付部60とを備える。
【0011】
圧力センサモジュール10は、検出対象の圧力を検出する圧力検出部である。圧力センサモジュール10は、圧力センサ素子11と、配線板12と、信号処理回路13と、ユニットケース14とを有する。圧力センサ素子11は、検出対象の圧力の検出に用いられるセンサ部である。圧力センサ素子11の圧力レンジは、例えば、10~120kPaである。なお、圧力センサ素子11は、検出対象の種類や使用条件等により、適宜変更可能である。配線板12は、例えばプリント基板であり、圧力センサ素子11や信号処理回路13等を実装する。信号処理回路13は、圧力センサ素子11から出力されるセンサ信号に対して所定の処理等を行うICチップである。信号処理回路13は、端子部30と電気的に接続されている。ユニットケース14は、圧力センサ素子11、配線板12及び信号処理回路13を収容する収容空間部14aを有する樹脂製のユニット本体である。
【0012】
また、圧力センサモジュール10は、ダイヤフラム15と、ガラス台座16と、ステム17とを有してもよい。ダイヤフラム15は、検出対象の圧力の変化を変形力として圧力センサ素子11に伝達する。管状のガラス台座16は、ダイヤフラム15を支持する。ステム17は、ガラス台座16を支持するとともに、圧力センサモジュール10と取付部60との接続のために介する中間部材である。ステム17は、中心軸に沿って貫通する孔17aを有する。エンジン内に向けて外部より吸入された空気は、取付部60側から孔17aを通じてダイヤフラム15へ到達する。
【0013】
更に、圧力センサモジュール10は、予め1つのユニットとして製造されている。例えば、互いに異なる圧力レンジの圧力センサモジュール10が予め複数準備されていることで、作業者が圧力センサ1を組み立てる際には、適切な圧力レンジの圧力センサモジュール10を選択し、迅速に着手することができる。
【0014】
筐体部20は、PPS樹脂等の樹脂材で形成され、圧力センサ1の外装の一部となる部材である。筐体部20は、互いに一体的に連続する、筐体本体20aと、コネクタ部20bと、接続部20cとを有する。
【0015】
筐体本体20aは、収容部20dと、凹部20sとを有する。収容部20dと凹部20sとは、内壁20rを挟んで互いに対向する。内壁20rは、取付部60が筐体部20に接続される方向に対して垂直な平板部である。
【0016】
収容部20dは、取付部60が接続される側を開放部とし、圧力センサモジュール10を収容する。
【0017】
凹部20sは、取付部60が接続される側とは反対側を開放部とし、カバー50との組み合わせにより、内部を大気開放に係る空間部とする。具体的には、凹部20sは、内壁20rの一面である底面20gと、底面20gとは垂直で互いに対向する2つの側面20fとで形成される。底面20gの平面形状は、おおよそ矩形である。この場合、凹部20sの形状としては、底面20gとは垂直で、かつ、2つの側面20f同士が対向する方向とも垂直となる側面は存在しない。
【0018】
各々の側面20fには、カバー50が筐体部20に取り付けられたときに、カバー50の裏面の一部を支持する支持部20jが設けられていてもよい。各々の支持部20jは、カバー50が取り付けられる方向でカバー50と対向するので、例えば、カバー50が外部から衝撃を受けた際に、凹部20sの内部へのカバー50の変形を抑止する。
【0019】
筐体本体20aは、それぞれ、表面が凹部20sの底面20gと連続し、収容部20dの側部に位置する2つの側壁20hを有する。各々の側壁20hは、外部に向けて突出する突起部20iを有する。各々の突起部20iは、カバー50が筐体部20に取り付けられるとき、カバー50に設けられている係合穴50cに係合する。
【0020】
各々の支持部20jにおけるカバー50と対向する端部、及び、各々の側壁20hは、筐体本体20aの外面全体に対して、カバー50の厚み分、筐体本体20aの内側に下がっていてもよい。このような形状設定によれば、カバー50が筐体部20に取り付けられたときに、筐体本体20aとカバー50との高さ位置が合致し、筐体部20の外面全体が均一化するので、簡易的な形状による取り扱いの容易性、又は、外観面で有利となる。
【0021】
また、内壁20rは、収容部20dと凹部20sとを連通させる貫通孔20mを有する。貫通孔20mの一方の開口は、凹部20sの底面20gのおおよそ中央に位置する。また、内壁20rは、凹部20sの底面20gの側の中央に、貫通孔20mの開口を塞ぐようにフィルタ40を設置する開口端20kを有する。
【0022】
更に、内壁20rは、凹部20sの底面20gの側で、かつ、フィルタ40の設置位置である開口端20kを挟んで互いに凹部20sの側面20fに沿った位置に、2つの第1溝部20nを有する。具体的には、図2に示すように、一方の第1溝部20nは、一方の側面20fの近傍で、側面20fに沿って直線状に設けられる。同様に、他方の第1溝部20nは、他方の側面20fの近傍で、側面20fに沿って直線状に設けられる。各々の第1溝部20nの一端は、一方の側壁20hと連続し、他端は、他方の側壁20hと連続する。
【0023】
コネクタ部20bは、車両内に配策されているワイヤハーネス等の外部配線部材の外部コネクタを接続する。本実施形態では、コネクタ部20bは、取付部60が筐体部20に接続される方向とは垂直となる方向で筐体本体20aと連続する。コネクタ部20bは、一端が外部に開放され、端子部30の一部を露出させる開口部20eを有する。
【0024】
接続部20cは、フランジ状に形成され、取付部60を接続する。接続部20cは、取付部60の筐体接続部60bと、例えば接着により接続される。
【0025】
端子部30は、圧力センサモジュール10と外部コネクタの外部配線とを電気的に接続するための金属棒体である複数の端子を含む。端子部30は、例えば、電源用端子、信号用端子又はアース端子等の複数の端子を含んでもよい。
【0026】
フィルタ40は、大気を通しつつ、水分や塵埃等を通しづらい、円板シート状の撥水フィルタである。例えば、フィルタ40は、多孔質状に成形されたフッ素系樹脂に撥水処理が施されたものであってもよい。フィルタ40は、内壁20rにおける凹部20sの底面20gの側の中央に設けられた開口端20kに設置される。このとき、フィルタ40は、例えば溶着により開口端20kに固定されてもよい。これにより、凹部20s内に面する貫通孔20mの一方の開口は、フィルタ40により塞がれる。
【0027】
カバー50は、PPS樹脂等の樹脂材で形成され、凹部20sを覆いつつ、筐体部20に取り付けられる部材である。カバー50は、矩形の上板50aと、2つの矩形の側板50bとで形成される。各々の側板50bは、上板50aの端辺から垂直方向に連続して、互いに対向する。カバー50が筐体部20に取り付けられるとき、上板50aは、凹部20sの底面20gと対向する位置に配置される。一方、側板50bは、凹部20sの2つの側面20fが互いに対向する間の位置に配置される。また、カバー50が筐体部20に取り付けられるとき、一方の側板50bの一部は、一方の側壁20hと対向し、他方の側板50bの一部は、他方の側壁20hと対向する。各々の側板50bは、側壁20hと対向する一部に、側壁20hに形成されている突起部20iが係合する係合穴50cを有する。
【0028】
図4は、裏面側から見たカバー50の斜視図である。カバー50は、カバー50と凹部20sとの間に形成される空間部を圧力センサ1の外部に対して大気開放させる大気開放部を含む。本実施形態における大気開放部は、上板50aの角部と側板50bの角部とにおいて連続するようにカバー50に形成された4つの切り欠き部50dである。なお、本実施形態では、上板50aの四隅のそれぞれに対応した計4つの切り欠き部50dが形成されているが、例えば、上板50aの四隅のうちのいずれかだけに対応した複数の切り欠き部50dが形成されてもよい。
【0029】
また、カバー50は、上板50aの裏面に、複数のリブ50eを有する。ここで、上板50aの裏面は、カバー50が筐体部20に取り付けられたときに、凹部20sの底面20gと対向する側の面に相当する。複数のリブ50eは、カバー50が筐体部20に取り付けられたとき、フィルタ40よりも外周側の底面20gに向かって突出し、かつ、切り欠き部50dが形成されている方向に一部が面するような形状を有する。各々のリブ50eの先端は、カバー50が筐体部20に取り付けられたときには、底面20gと接触してもよい。本実施形態では、4つの切り欠き部50dの各々に対応するように、4つのリブ50eが設けられている。4つのリブ50eは、フィルタ40の外径よりも大きな径の円周に沿って、各々の切り欠き部50dに対応するように等間隔に設けられ、かつ、互いに接触しない曲壁部で構成される(図5参照)。
【0030】
なお、図4に示すように、カバー50において、上板50aの端辺と連続する側とは反対側に位置する、各々の側板50bの開放端50gには、面取り部50fが形成されていてもよい。面取り部50fが設けられていることで、例えば、作業者がカバー50を筐体部20に取り付けるときに、突起部20iへの係合穴50cの係合を容易とすることができる。
【0031】
取付部60は、PPS樹脂等の樹脂材で形成され、筐体部20とともに圧力センサ1の外装の一部となる部材である。取付部60は、互いに一体的に連続する、取付管部60aと、筐体接続部60bとを有する。
【0032】
取付管部60aは、圧力センサ1を取り付ける被取付部材の取付穴に接続される。取付管部60aは、内周側に、一端が外部に開放される第1導入孔60cを有する。例えば、第1導入孔60cは、圧力センサ1が被取付部材に取り付けられているとき、エンジン内に向けて吸入された空気が流通する流路内に開放される。
【0033】
筐体接続部60bは、フランジ状に形成され、筐体部20の接続部20cに接続される。筐体接続部60bは、内部に、第1導入孔60cよりも径が小さい第2導入孔60dを有する。第2導入孔60dの一端は、第1導入孔60cと連通する。第2導入孔60dの他端は、筐体部20の収容部20dに開放される。筐体接続部60bは、収容部20d側で、圧力センサモジュール10を密に保持する。そして、第2導入孔60dは、圧力センサモジュール10のステム17の一部を支持し、ステム17の孔17aと連通する。
【0034】
次に、圧力センサ1の作用について説明する。
【0035】
まず、圧力センサ1内では、カバー50の設けられている大気開放部としての切り欠き部50d、凹部20s、貫通孔20m及び収容部20dを通じて、圧力センサ素子11の一方の側が大気開放されている。その上で、圧力センサ素子11は、取付部60の第1導入孔60c及び第2導入孔60d、並びに、ステム17の孔17aを通じてダイヤフラム15へ到達する検出対象の圧力を検出する。
【0036】
ここで、本実施形態では、大気開放に係る通路上にある貫通孔20mの位置に合わせてフィルタ40が設けられているので、大気中に含まれる水分や塵埃等の圧力センサモジュール10側への進入が、おおよそ抑止される。更に、本実施形態では、フィルタ40は、直接的に外部に露出しておらず、カバー50と凹部20sとに囲まれた空間部の内部に配置されているので、大気中に含まれる水分や塵埃等は、フィルタ40に到達しづらい。
【0037】
また、本実施形態では、カバー50に設けられている複数のリブ50eが、フィルタ40への被水を抑止するように作用する。図5は、図3中のV-V断面に対応した、フィルタ40への被水抑止作用を説明する断面図である。カバー50と凹部20sとに囲まれた空間部では、切り欠き部50dとフィルタ40とを結ぶ間に、リブ50eが配置されている。そのため、万が一、切り欠き部50dを通じて、外部からカバー50と凹部20sとに囲まれた空間部に水分等Wが進入したとしても、図5中の矢印で示すように、水分等Wは、切り欠き部50dに遮られ、フィルタ40に直接的に向かうことができない。つまり、フィルタ40には、切り欠き部50dから進入した水分等Wが付着しづらい。なお、互いに隣り合うリブ50e同士は、非接触であるので、リブ50eが、フィルタ40を通じた大気開放を遮ることはない。
【0038】
更に、本実施形態では、凹部20sに面して内壁20rに設けられている2つの第1溝部20nが、カバー50と凹部20sとに囲まれた空間部に進入した水分等Wを外部に排出するように作用する。万が一、切り欠き部50dを通じて、外部からカバー50と凹部20sとに囲まれた空間部に水分等Wが進入したとしても、図2中の矢印で示すように、水分等Wは、第1溝部20nに向かう。そして、第1溝部20nの両端は、側壁20hと連続しているので、水分等Wは、側壁20hの表面上を伝って流れ、いずれ、側壁20hとカバー50とに挟まれた微小空間から外部に排出される。
【0039】
次に、圧力センサ1の効果について説明する。
【0040】
本実施形態に係る圧力センサ1は、検出対象の圧力を検出する圧力検出部(圧力センサモジュール10)を備える。圧力センサ1は、圧力検出部を収容する収容部20d、収容部20dとは内壁20rを挟んで対向する凹部20s、及び、内壁20rに形成されて収容部20dと凹部20sとを連通させる貫通孔20mを有する筐体部20を備える。また、圧力センサ1は、貫通孔20mを塞ぐフィルタ40と、凹部20sを覆いつつ筐体部20に取り付けられ、大気開放部を含むカバー50とを備える。凹部20sは、内壁20rの一面である底面20gと、底面20gとは垂直で互いに対向する2つの側面20fとで形成される。カバー50は、矩形の上板50aと、上板50aの端辺から垂直方向に連続して互いに対向する2つの矩形の側板50bとで形成される。上板50aは、凹部20sの底面20gと対向する位置に配置される。側板50bは、凹部20sの2つの側面20fが互いに対向する間の位置に配置される。
【0041】
まず、圧力センサ1では、大気開放に係る通路となる貫通孔20mの位置に合わせてフィルタ40が設けられているので、大気中に含まれる水分や塵埃等の圧力センサモジュール10側への進入が、おおよそ抑止される。更に、圧力センサ1では、フィルタ40は、カバー50と凹部20sとに囲まれた空間部の内部に配置されているので、大気中に含まれる水分や塵埃等は、フィルタが直接的に外部に露出している場合に比べて、フィルタ40に到達しづらい。したがって、圧力センサ1によれば、大気中に含まれる水分や塵埃等に起因したフィルタ40の目詰まりを抑止しやすくすることができる。
【0042】
また、圧力センサ1では、フィルタ40が直接的に外部に露出しないように設けられる空間部を、上板50a及び2つの側板50bのみで形成されるカバー50と、カバー50の形状に合わせた筐体部20の凹部20sとで形成される。また、カバー50と凹部20sとに囲まれる空間部を大気開放とする大気開放部は、カバー50に設けられる。したがって、カバー50の形状の複雑化を回避しつつ、筐体部20に大気開放部として機能する流路や孔等を別途構成させる必要がないため、圧力センサ1の全体としての構造を簡易化させることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、簡易的な構造で、大気圧を維持する部位に設けられるフィルタ40の目詰まりを抑止する圧力センサ1を提供することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る圧力センサ1では、筐体部20は、表面が凹部20sの底面20gと連続して収容部20dの側部に位置し、かつ、外部に向けて突出する突起部20iを有する2つの側壁20hを有してもよい。カバー50の側板50bの一部は、2つの側壁20hのいずれかと対向し、かつ、突起部20iが係合する係合穴50cを有してもよい。
【0045】
この圧力センサ1によれば、例えば、作業者が圧力センサ1を組み立てる場合、カバー50の筐体部20への取り付けをワンタッチで実現することができるので、組付け性を向上させる点で有利となる。
【0046】
また、本実施形態に係る圧力センサ1では、大気開放部は、上板50aの角部と側板50bの角部とにおいて連続するようにカバー50に形成された複数の切り欠き部50dであってもよい。
【0047】
この圧力センサ1によれば、カバー50と凹部20sとに囲まれる空間部が、当該空間部の端部から大気開放されることになるので、万が一、空間部に水分や塵埃等が進入したとしても、フィルタ40に到達しづらくすることができる。結果として、フィルタ40の目詰まりをより抑止しやすくすることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る圧力センサ1では、フィルタ40は、内壁20rにおける凹部20sの底面20gの側の中央に設置されてもよい。内壁20rは、凹部20sの底面20gの側で、かつ、フィルタ40の設置位置を挟んで互いに凹部20sの側面20fに沿った位置に、一端が一方の側壁20hと連続し、他端が他方の側壁20hと連続する2つの第1溝部20nを有してもよい。
【0049】
この圧力センサ1によれば、排水作用として上記説明したとおり、万が一、切り欠き部50dを通じて、カバー50と凹部20sとに囲まれた空間部に水分等Wが進入したとしても、第1溝部20nを通じて容易に外部に排出させることができる。結果として、フィルタ40の目詰まりをより抑止しやすくすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る圧力センサ1では、カバー50は、凹部20sの底面20gと対向する側の面に、フィルタ40よりも外周側の底面20gに向かって突出し、かつ、切り欠き部50dが形成されている方向に一部が面する複数のリブ50eを有してもよい。
【0051】
この圧力センサ1によれば、被水抑止作用として上記説明したとおり、万が一、切り欠き部50dを通じて、カバー50と凹部20sとに囲まれた空間部に水分等Wが進入したとしても、フィルタ40に、進入した水分等Wを付着しづらくすることができる。結果として、フィルタ40の目詰まりをより抑止しやすくすることができる。
【0052】
(第2実施形態)
第1実施形態では、カバー50に含まれる大気開放部として、切り欠き部50dを例示した。これに対して、本実施形態では、特にカバーの形状をより簡易化させる場合の例について説明する。
【0053】
図6は、第2実施形態に係る圧力センサ2の斜視図である。図7は、カバー70を装着する前の圧力センサ2の斜視図である。図8は、裏面側から見たカバー70の斜視図である。ここで、図6は、第1実施形態に関する図1に対応している。図7は、第1実施形態に関する図2に対応している。図8は、第1実施形態に関する図4に対応している。以下、圧力センサ2に関して、第1実施形態に係る圧力センサ1と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
カバー70は、第1実施形態におけるカバー50と同様に、上板70aと、2つの側板70bと、2つの係合穴70cと、2つの面取り部70fとを有する。しかし、カバー70は、カバー50に設けられていた、切り欠き部50d及びリブ50eを有さない。
【0055】
そして、カバー70は、切り欠き部50d及びリブ50eを有さない代替構成として、まず、本実施形態における大気開放部を、上板70aの端辺と連続する側とは反対側に位置する、側板70bの開放端70gとする。ここで、各々の側板70bの高さ寸法は、第1実施形態における側板50bの高さよりも短い。その結果、図6に示すように、カバー70が筐体部20に取り付けられている状態では、開放端70gと接続部20cとの間には、隙間Gが形成される。
【0056】
一方、本実施形態における筐体部20では、第1実施形態における2つの第1溝部20nに代えて、内壁20r及び側壁20hが2つの第2溝部20pを有する。2つの第2溝部20pは、凹部20sの底面20gの側と側壁20hの表面とで連続し、かつ、フィルタ40の設置位置を挟んで互いに凹部20sの側面20fに沿った位置に形成される。
【0057】
このような構成を有する圧力センサ2では、カバー70と凹部20sとに囲まれる空間部は、隙間Gを通じて大気開放されることになる。このとき、側壁20hとカバー70の側板70bとで挟まれる領域には、隙間Gと底面20gとの間で連続する第2溝部20pの一部がある。そのため、第2溝部20pは、第1実施形態と同様の排水作用の他に、大気開放のための流路としても作用し得る。
【0058】
また、この場合、カバー70における開放端70gが大気開放部となることで、実際上、フィルタ40には、外部からの水分等が直接的に付着しづらい。したがって、カバー70は、第1実施形態におけるカバー50のリブ50eのような部位を設けなくてもよい。
【0059】
このように、本実施形態に係る圧力センサ2では、まず、大気開放部は、上板70aの端辺と連続する側とは反対側に位置する、側板70bの開放端70gであってもよい。
【0060】
この圧力センサ2によれば、カバー70の形状を、第1実施形態におけるカバー50の形状よりも簡略化させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る圧力センサ2では、内壁20r及び側壁20hは、凹部20sの底面20gの側と側壁20hの表面とで連続し、かつ、フィルタ40の設置位置を挟んで互いに凹部20sの側面20fに沿った位置に2つの第2溝部20pを有してもよい。
【0062】
この圧力センサ2によれば、第2溝部20pが、第1実施形態と同様に、外部に水分等Wを排出するように作用しつつ、大気開放を促進する流路としても作用する。したがって、カバー70の形状がより簡易化されたとしても、フィルタ40の目詰まりを抑止することができる。
【0063】
以上、各実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1,2 圧力センサ
10 圧力センサモジュール
20 筐体部
20d 収容部
20f 側面
20g 底面
20h 側壁
20i 突起部
20m 貫通孔
20n 第1溝部
20p 第2溝部
20r 内壁
20s 凹部
40 フィルタ
50,70 カバー
50a,70a 上板
50b,70b 側板
50c,70c 係合穴
50d 切り欠き部
50e リブ
70g 開放端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8