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特許7397060筒状素子を倒立させるための素子の外側端部に接続するための連結具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】筒状素子を倒立させるための素子の外側端部に接続するための連結具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/66 20060101AFI20231205BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20231205BHJP
   B66C 1/42 20060101ALI20231205BHJP
   F03D 13/40 20160101ALI20231205BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20231205BHJP
   B63B 77/10 20200101ALI20231205BHJP
【FI】
B66C1/66 K
E02D27/52 A
B66C1/42 G
B66C1/42 L
F03D13/40
B63B35/00 T
B63B77/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021504333
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019069674
(87)【国際公開番号】W WO2020020821
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】2018/5540
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】520282638
【氏名又は名称】ディーム・オフショア・ベーエー・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ヴィム・ヤン・ラバウト
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ジェラルド・ファンニューウェンハイセ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・マリア・クーン・ミッシェルセン
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500135(JP,A)
【文献】実開昭62-099597(JP,U)
【文献】特表2018-515404(JP,A)
【文献】特開平10-002990(JP,A)
【文献】特開2001-207948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0016939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/66
E02D 27/52
B66C 1/42
F03D 13/40
B63B 35/00
B63B 77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状素子を倒立させることを目的として前記管状素子の外側端部に接続するための連結具であって、
前記管状素子の前記外側端部に係合するための係合手段と、
当該連結具をクレーンのような昇降手段から吊下げることが可能な回動可能な昇降部材と、
を備え、
当該連結具には、吊下げた当該連結具を前記外側端部に対して位置合わせすることを目的として、開始位置から前記管状素子の前記外側端部の壁部分に当接する位置まで移動させることが可能な弾性腕体が装着されており、
前記弾性腕体が、前記管状素子の前記外側端部の外壁部分に当接して配設されることが可能であり、
前記弾性腕体が、当該連結具に回動式に装着されており、駆動手段を用いてヒンジ回りに回転可能であり、
前記連結具が、
ビームの支持構造体と、
クリア位置から挟持位置であって当該挟持位置において前記管状素子の前記壁部分に連結するための挟持位置まで前記ビームに沿ってスライド可能である挟持部材と、
を備え、
前記挟持位置において、前記ビームが、前記管状素子の長手方向に対するほぼ横方向に延在することを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記駆動手段が、液圧ピストンシリンダを備えることを特徴とする請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記弾性腕体には、自由外側端部において、前記壁部分に当接して配設されることが可能な転動体が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の連結具。
【請求項4】
前記弾性腕体には、前記自由外側端部において、前記壁部分に当接して配設されることが可能であり当該弾性腕体の弾性側腕体に配設された第2転動体が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の連結具。
【請求項5】
前記挟持部材が、前記管状素子の中空の前記外側端部の内壁部分に連結するために、前記クリア位置から前記クリア位置よりも前記支持構造体の十字部の中心から離間して位置する前記挟持位置までスライド可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の連結具。
【請求項6】
前記弾性腕体が、前記支持構造体の前記ビームに装着されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の連結具。
【請求項7】
前記昇降部材に対する前記支持構造体の角度位置を調整するための手段であって前記支持構造体に回動式に連結された手段をさらに備えることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の連結具。
【請求項8】
前記管状素子の前記壁部分と接触可能な表面には、ゴム被覆のような衝撃吸収素子が設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の連結具。
【請求項9】
管状素子を外側端部において倒立させるためのデバイスであって、
搬送構造体によって搬送される昇降手段と、
請求項1からのいずれか1項に記載の連結具であって前記昇降部材によって取り上げられる連結具と、
を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
前記搬送構造体が、浮遊する船舶であることを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記管状素子が、風力タービンの基礎杭であることを特徴とする請求項または10に記載のデバイス。
【請求項12】
長手方向を有する管状素子を外側端部において倒立させるための方法であって、
-請求項から11のいずれか1項に記載のデバイスを用意するステップと、
-昇降手段を用いて前記昇降部材によって前記連結具を取り上げるステップと、
-吊下げた前記連結具を前記管状素子の外側端部まで運ぶステップと、
-吊下げた前記連結具を前記外側端部に対して位置合わせする目的で、前記連結具に装着されている前記弾性腕体を開始位置から前記管状素子の前記外側端部の壁部分に当接する位置まで移動させるステップと、
-前記連結具を前記外側端部に連結するステップと、
-前記連結具に連結された前記管状素子を倒立させるステップであって、前記連結具が前記昇降部材に対して回動する、ステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記連結具が、角度調整手段を用いて前記昇降部材に対して能動的に回動されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項から11のいずれか1項に記載のデバイスと、
前記デバイスに連結された管状素子と、
を備えることを特徴とする組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状素子を倒立させる目的のために長手方向を有する素子の外側端部に接続するための連結具に関する。本発明は、同様に、連結具を用いて外側端部において筒状素子を倒立させるためのデバイス及び方法に関する。本発明は、特に、水底に配置される風力タービンの基礎杭及び/または既に設置されている基礎に配置される風力タービン塔を外側端部において船舶から倒立させるためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、海上風力タービンを参照して明らかになる。しかしながら、この参照は、本発明を海上風力タービンに限定することを暗示してはおらず、デバイス及び方法は、任意の他の筒状素子を任意の地面に配置することについて同等に良好に適用され得る。このため、例えば、桟橋、レーダ及び他の塔の他の海上基礎構造体を配設することに関連して、また、海上用途に関して、本発明を適用できる。
【0003】
多くの場合において、海上風力タービンの基礎杭は、鋼またはコンクリートの中空筒状素子を備え、これら中空筒状素子は、100mを越える長さ、6m以上の直径、800トンから2300トン以上に達し得る重量を有し得る。さらに、風力タービンが絶えず拡大化しているので、風力タービンのための基礎は、次第に重くなってきている。基礎が次第により大型化してきているので、これら基礎は、取り扱いが次第により困難になっている。基礎は、いわゆる単一杭型基礎またはジャケット型基礎を備え得る。
【0004】
水底に基礎杭を配置するための公知の方法は、昇降クレーンのような昇降手段を用いて船舶から基礎杭を取り上げるステップと、基礎杭を水底上へまたは水底内へ降下させるステップと、を備える。その後、基礎杭は、昇降手段から連結解除される。
【0005】
とりわけ、基礎杭が容易に損傷しやすい場合があるので、基礎杭を取り上げるステップは、繊細な動作である。重要であることは、基礎杭が長い距離にわたって船舶のデッキを越えて突出し得ること、及び、取り上げるためのデバイスと基礎杭との間の距離が例えば基礎杭の直径と比較して一般に非常に小さく、それにより、取り上げるためのデバイスと基礎杭の壁部分との間に望まない接触が容易に生じ得ること、を考慮することである。さらに、様々な操作者は、昇降クレーン、船舶のデッキに設けられたウインチなどのような器具の動作に携わっている。
【0006】
公知のデバイスの欠点は、基礎杭のような倒立される筒状素子を損傷させる可能性が高いこと、である。公知のデバイスは、同様に、海が比較的穏やかであるときにその機能を実行できるのみであり、一般的に限定された直径範囲でのみ適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、筒状素子を倒立させる目的で素子の外側端部に接続するための連結具と、長手方向を有する筒状素子を外側端部において倒立させるためのデバイス及び方法と、を提供することであり、これら連結具、デバイス及び方法は、上述した従来技術の欠点を少なくとも部分的に取り除くことを補助する。本発明は、特に、長手方向を有する筒状素子、特に水底に配置される風力タービンの基礎杭を外側端部において倒立させるための改良したデバイス及び方法を提供することを模索している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、請求項1にかかる連結具は、この目的のために提供される。連結具は、素子の外側端部に係合するための係合手段と、連結具をクレーンのような昇降手段から吊下げることが可能な回動可能な昇降部材と、を備え、連結具には、吊下げた連結具を外側端部に対して位置合わせすることを目的として、開始位置から素子の外側端部の壁部分に当接する位置まで移動させることが可能な弾性腕体が装着されている。
【0009】
使用中に、連結具の一部を形成する弾性腕体は、まず、倒立される外側端部と接触し、弾性は、連結具、より詳しくは連結具の係合手段が外側端部に対して位置合わせされることを保証する。弾性腕体が外側端部の壁部分に当接して配設されているので、これら弾性腕体は、壁部分にわたって移動して連結具、特に係合手段を協働して変位させることができ、それにより、これら手段は、外側端部と位置合わせされる。使用中に、弾性腕体は、素子の外側端部と接触し、連結具を素子の外側端部と位置合わせするまで、外側端部に対する連結具の運動を減衰させる。これにより、同様に、損傷を引き起こし得る予期しない運動の危険性があまりない状態で外側端部に係合できるように係合手段を位置付けることが可能となる。弾性腕体の弾性力は、壁部分の方向で作用し、それにより、弾性腕体は、ある力で壁部分を押圧する。この力は、弾性腕体による及び弾性腕体への損傷を回避するように大きすぎるべきではない。この目的のために必要なバネ定数は、簡素な態様で当業者によって決定され得る。
【0010】
実用的な形態は、連結具に関し、腕体は、素子における外側端部の外壁部分に当接して配設され得る。この形態において、弾性腕体の外側端部は、腕体の開始位置において、外壁部分から所定距離に位置し、この距離は、幅広い限界内で選択され得る。これは、例えば管状素子の直径などに依然しないため、この場合において、腕体が素子における外側端部の内壁部分に当接して配設され得るため、である。
【0011】
腕体の弾性作動は、任意の態様で実現され得る。このため、腕体を形成する材料の弾性を使用することができる。適切な形態は、連結具を備えており、腕体は、連結具に回動式に装着されており、駆動手段を用いてヒンジ回りに回転され得る。駆動手段が液圧ピストンシリンダを備える形態は、好ましい。液圧ピストンシリンダに運動を付与することによって、腕体は、連結具への腕体の回動接続周りに回転し得る。液圧ピストンシリンダは、同様に、腕体の弾性作動を部分的に支持し得、特に素子の外側端部に対する、吊下げた連結具の運動を減衰させることを保証し得る。
【0012】
本発明の別の形態は、連結具を目的としており、腕体には、自由外側端部において、転動体が設けられており、これら転動体は、壁部分に当接して配設され得る。転動体は、腕体の外側端部が壁部分にわたってより容易に移動し、これにより正確な位置合わせ位置を模索し得ることを保証する。
【0013】
さらに改善した形態は、連結具を備えており、腕体には、自由外側端部において、第2転動体が設けられており、これら第2転動体は、壁部分に当接して配設され得、腕体の弾性側腕体に配設されている。
【0014】
連結具は、原則として、任意の態様で具現化され得る。公知の連結具には、同様に、本発明にかかる弾性腕体が設けられ得る。相乗作用の形態は、連結具に関し、この連結具は、相互に連結されたビームからなる十字状支持構造体と、クリア(clear)位置から挟持位置までビームに沿ってスライド可能であり、挟持位置において管状素子における外側端部の壁部分に連結するための挟持部材の形態にある係合手段と、を備えており、この挟持位置において、ビームは、管状素子の長手方向に対してほぼ横方向に延在する。
【0015】
本発明の現説明に関連して、用語「ほぼ」は、示した値または特性の80%以上、より好ましくは85%以上、依然としてより好ましくは90%以上、同様に100%を意味すると理解される。
【0016】
スライド可能な挟持部材を管状素子の壁部分に連結することは、原則として、任意のタイプの連結を備え得る。適切な連結は、例えば、摩擦連結もしくはフランジ連結または2つの組合せである。摩擦連結は、挟持部材の表面と対応する壁部分の表面との間に摩擦力を発生させることに基づいており、挟持部材は、2つの表面を共に押すことによって、この対応する壁部分に係合する。フランジ連結は、挟持部材のフランジと対応する壁部分のフランジとをボルト接続することに基づき得、挟持部材は、この対応する壁部分に係合する。より良好なフランジ連結は、挟持部材が管状素子のフランジの下方にスライドし得それにより結果として機械的なフランジ結合を生じさせるように具現化することによって得られ得る。
【0017】
適切な形態にかかる連結具は、支持構造体のビームに装着された弾性腕体を備える。
【0018】
連結具、より詳しくは弾性腕体及びこの弾性腕体のスライド可能な挟持部材は、損傷する可能性が低い状態で、特に揺れ動いている船舶から管状素子を取り上げて倒立させ得ることを保証する。本発明にかかるデバイスによれば、倒立させられる管状素子の寸法における、より詳しくは直径における様々な変化を可能とする。
【0019】
一形態にかかる発明において、挟持部材は、管状素子における中空外側端部の内壁部に連結するために、クリア位置からクリア位置よりも支持構造体の十字の中心からさらに離間して位置する挟持位置までスライド可能である。挟持部材がクリア位置から挟持位置までスライドすることの選択肢を設けることにより、連結具をこの目的のために改変しなければならない必要性なく、直径が変化している管状素子を係合させて倒立させることができるようになる。連結具は、特に、直径が比較的大きい管状素子を倒立させることを保証する。本発明に関連して、比較的大きい直径は、6mより大きい、より好ましくは7mを超える、依然としてより好ましくは8mを超える、依然としてより好ましくは9mを超える、最も好ましくは10mを超える直径を意味すると理解される。
【0020】
本発明にかかる一形態の連結具は、管状素子における中空外側端部の内壁部分に連結するために、挟持部材がクリア位置からクリア位置よりも支持構造体の十字の中心からさらに離間して位置する挟持位置までスライド可能であること、を特徴とする。
【0021】
依然として別の形態は、連結具を提供し、この連結具は、管状素子の壁部分のために、ビームに接続された支持構造体をさらに備える。このような部材は、管状素子が重力に抗して倒立させている間に管状素子を支持するのに有用であり得る。支持部材は、好ましくは、直径が比較的大きい管状素子を倒立させるために適用され、管状素子の過負荷を回避することに有益である。
【0022】
一形態において、支持部材は、ビームの調整可能な固定位置においてビームに接続されている。依然として調整可能な固定位置は、例えば、支持部材と支持構造体の対応するビームとの間のピン-ホール接続によって形成され得る。
【0023】
本発明にかかる改善した形態は、連結具に関し、支持部材は、管状素子における外壁部分を支持するように構成されている。
【0024】
本発明にかかる依然として別の形態は、連結具に関し、この連結具は、支持部材とは異なりかつ管状素子の周縁の少なくとも一部に沿って、例えば周縁の1/2または1/4に沿って延在する支持構造体をさらに備える。支持構造体は、好ましくは、十字状の支持構造体の少なくとも2つのビームに接続されている。
【0025】
本発明にかかる別の有用な形態において、連結具は、昇降部材に対する指示構造体の角度位置を調整するための手段をさらに備え、この昇降部材は、支持構造体に回動式に連結されている。これにより、支持構造体の角度位置を調整することが可能となる。支持構造体は、挿入位置であってこの位置においてデバイスを管状構造体に連結し得る挿入位置から、管状素子が(部分的に)倒立位置にそして最終的に管状素子が垂直に垂れ下がる昇降位置まで移動され得る。
【0026】
角度調整手段は、任意の公知の態様で具現化され得、角度調整手段が昇降部材と支持構造体との間で延在する液圧ピストンシリンダを備える形態が好ましい。
【0027】
支持構造体の挟持部材は、原則的に、支持構造体の上側もしくは下側または両側に位置し得る。例示的な形態は、連結具に関し、昇降部材は、昇降手段に接続するために十字状の支持構造体の上側に位置し、挟持部材は、支持構造体の下側に沿ってスライド可能である。
【0028】
支持構造体の挟持部材は、原則的に、当業者に公知の態様で支持構造体のビームに沿ってスライド可能であり得る。比較的維持が容易な形態は、連結具に関し、挟持部材は、挟持部材と支持構造体との間に延在する液圧ピストンシリンダを用いてスライド可能である。
【0029】
本発明の一形態によれば、支持構造体は、十字状であり、この十字状は、複数の腕体が中心から延在する構造体を意味すると理解される。腕体の数は、ランダムに選択され得るが、X字状及び/またはY字状である十字状の支持構造体は、好ましい。このような支持構造体は、4または3の腕体を有する。
【0030】
連結具がその目的のために吊下げられる管状素子への損傷を少なくとも部分的に防止しなければならないので、本発明の別の形態は、連結具によって形成されており、管状素子の壁部分と接触し得る表面には、ゴム被覆のような衝撃吸収素子が設けられている。いくつかの形態において、これら表面は、例えば、挟持部材の、支持部材の、弾性腕体の、及び/または、支持構造体の、端面であり得る。
【0031】
本発明にかかる別の態様は、管状素子を外側端部において倒立させるためのデバイスに関し、このデバイスは、搬送構造体によって搬送される昇降手段と、昇降部材によって取り上げられて弾性腕体が設けられた連結具と、を備える。デバイスは、特に、海上で管状素子を倒立させるのに適しており、この目的のために、一形態にかかるデバイスは、搬送構造体として浮遊船舶を備える。この形態において、デバイスは、船舶の作業デッキ、例えばジャッキアッププラットフォームから操縦される。本発明の利点は、搬送構造体が重い対象物を昇降させるのに適した浮遊船舶を備える場合に、最も明確に示されている。
【0032】
本発明にかかる依然として別の態様は、長手方向を有する管状素子を外側端部において倒立させるための方法に関する。この方法は、
-本発明にかかるデバイスを用意するステップと、
-昇降手段を用いて昇降部材によって連結具を取り上げるステップと、
-吊下げた連結具を管状素子の外側端部まで運ぶステップと、
-吊下げた連結具を外側端部に対して位置合わせする目的で、連結具に装着されている弾性腕体を開始位置から素子の外側端部の壁部分に当接する位置まで移動させるステップと、
-連結具を外側端部に連結するステップと、
-位置合わせした位置において連結具に連結された管状素子を倒立させるステップであって、連結具が昇降部材に対して回動する、ステップと、
を備える。
【0033】
一形態において、連結するステップは、挟持位置で管状素子における外側端部の壁部分にこれら部材を結合する目的で、挟持部材をクリア位置から挟持位置までスライドさせるステップを備え得、この挟持位置において、ビームは、管状素子の長手方向に対するほぼ横方向に延在する。
【0034】
一形態にかかる方法は、同様に、デバイスに連結された管状素子を所望位置まで上昇させるステップと、さらに別の形態において挟持部材をビームに沿って挟持位置からクリア位置までスライドさせてそれによりデバイスを管状素子から結合解除するステップと、をさらに備え得る。
【0035】
素子の周辺部分は、素子を倒立させている間に適切な挟持張力で挟持部材によって係合されている。デバイスを管状素子の中空外側端部内に挿入している間に挟持部材が例えば十字状の支持構造体の中心に比較的近接して位置しているので、損傷が生じにくくなる。これにより、同様に、必要に応じて、従来技術の方法で可能であったよりも大きいうねりでも動作することが可能となる。
【0036】
デバイスは、特に、比較的大きなサイズの、例えば6m以上の直径を有する及び80m以上に達し得る長さを有する管状素子を倒立させるのに適している。一形態は、この目的のために、デバイスを提供し、このデバイスは、昇降部材によって支持構造体を取り上げるための搬送構造体によって搬送されている昇降手段を備える。適切な昇降手段は、任意のタイプの昇降クレーンを備える。昇降手段のための支持構造体は、地面、土壌、コンクリートプレートなどを備え得る。
【0037】
本発明にかかるデバイスの利点は、一形態において最も明確に示されており、管状素子は、風力タービンの基礎杭及び/または既に設置されている基礎に配置される風力タービン塔である。
【0038】
一形態にかかるこの方法において、特に取り上げられる管状素子の位置に適切な挿入位置へ連結具を移動させるために、角度調整手段を用いて連結具を昇降部材に対して能動的に回動させる。
【0039】
本発明の別の態様は、説明した形態のいずれかにかかるデバイスとこのようなデバイスに連結された管状素子との組立体に関する。
【0040】
本特許出願で説明する発明の形態は、これら形態の可能性のある組合せにおいて組み合わせられ得、形態それぞれは、個別に、分割特許出願の主題を形成し得る。
【0041】
本発明は、以下の図面であってこれら図面に限定されない図面に基づいてさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態にかかるデバイスを示す概略分解斜視図である。
図2図1に示す実施形態の組立済状態にある概略頂面図である。
図3図1に示す本発明にかかる一実施形態のデバイスを示す概略頂面図であり、筒所素子がデバイスに連結されている、概略頂面図である。
図4図1に示す本発明にかかる一実施形態のデバイスを2つの角度位置において示す概略側面図である。
図5図1に示す本発明にかかる一実施形態のデバイスを示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図面を参照すると、長手方向21を有する基礎杭20を外側端部において倒立させるための連結具1が示されている。連結具1は、同様に、例えば風力タービンマストの移行片のような長手方向を有する他の複数の素子を倒立させて互いにまたは別の表面に配置するのに適している。図示した実施形態において、連結具1は、相互連結されたビーム(2a、2b)の形態にある十字状支持構造体を備える。しかしながら、支持構造体は、同様に、例えばY字状支持構造体の脚部を形成する3本のビームなど複数のビームを備え得る。連結は、例えば、ビーム部品を溶接することによってなされ得る。ビームは、例えば、筒状断面を有しているが、H型ビームまたはI型ビームも可能である。十字の中心において、支持構造体には、2つのヒンジ接続型プレート(3a、3b)が設けられており、これらヒンジ接続型プレートにおいて、昇降部材4は、ピン-ホール接続を用いて支持構造体2に回動式に接続されている。昇降部材4には、昇降側において、クレーン(図示略)のような昇降手段に接続するための昇降孔40が設けられており、昇降手段との間には、それぞれが昇降孔40に接続されているホイストケーブルが介在されている。昇降孔40の機能は、同様に、例えばシャフトスタブまたはトラニオンのような異なる形態を取り得る。昇降部材4を用いて、連結具1は、昇降手段から吊下げられ得、それにより、支持構造体2は、ヒンジ接続されたプレート(3a、3b)に垂直に延在する回転軸5回りで比較的妨げられない態様で回転し得る。
【0044】
本発明によれば、連結具1には、弾性腕体10が設けられており、これら弾性腕体は、十字の中心に対して反対側にある2つの位置において2つのビーム(2a、2b)間に配設された横方向ビーム11に装着されている。横方向ビーム11への接続は、図5に示すように、ヒンジ12を通って延在している。同様に図5によれば、腕体は、図示した開始位置から、懸架した連結具1を外側端部200に対して位置合わせすることを目的とした筒状素子20の外側端部200の壁部分20bに対する位置まで移動され得る。腕体10は、破線で示す位置にある。図示した実施形態において、支持構造体2に対する腕体10の回転は、腕体10と支持構造体2との間に配設された液圧シリンダに運動を付与することによってなされる。連結具1の一部を形成する弾性腕体10は、十分に大きい長さを有しており、まず、倒立される素子の外側端部200と接触することができる。
【0045】
腕体10には、自由外側端部において転動体14が設けられており、これら転動体は、使用中に壁部分20bと接触する。転動体14は、腕体10の外側端部が長手方向21において壁部分20bをより容易に越えて移動し得ることを保証し、それにより、正確な位置合わせ位置を模索する。転動体14は、シャフト接続体140回りの回転方向で回転し得る。
【0046】
転動体14を有する弾性腕体10を壁部分20bに当接保持する弾性力は、液圧シリンダ13の圧力によって決定される。液圧シリンダ13は、腕体10を壁部分10bに当接保持しているときに特定の反圧力をもたらす。この反圧力は、弾性腕体10による及び弾性腕体への損傷を回避するようにそれほど高くはない。
【0047】
連結具1は、クリア位置から挟持位置までビーム(2a、2b)に沿ってスライド可能である挟持部材6をさらに備える。挟持部材6それぞれは、U字状断面を有しており、このようにして、ビーム(2a、2b)を少なくとも部分的に囲み得、それにより、挟持部材6は、ビーム(2a、2b)との接触を損なうことなく対応するビーム(2a、2b)にわたってスライド面でスライドできる。図示した実施形態において、挟持部材6は、支持構造体2の下側部に沿ってスライド可能である。支持構造体2の下側部は、本明細書において、昇降部材4が位置しない側と規定される。この昇降部材4は、十字状の支持構造体2の上側部に位置する。挟持部材6は、対応する挟持部材6と支持構造体2との間に延在する液圧ピストンシリンダ7を用いてビーム(2a、2b)にわたってスライドされ得る。図2にかかるように表示した方向8で径方向外側への運動をシリンダに付与することによって、挟持部材6は、十字の中心に径方向で比較的近接するクリア位置Aから支持構造体の十字の中心からより離間して位置する挟持位置Bまで移動される。図3に示すように、挟持位置Bにおいて、挟持部材6は、圧力を受けて、基礎杭20の中空外側端部の内壁部分20aに当接して位置し、挟持部材部分は、基礎杭のフランジまたは突出縁部(図示略)の下方をスライドされる。これにより、結果として、挟持部材6の端面と基礎杭20の内壁部分20aとの間の選択的な摩擦連結と組み合わされた機械的連結がもたらされる。この連結をさらに改善するために、挟持部材6のうち壁部分20aと接触する端面には、ゴム被覆のような衝撃吸収素子が設けられ得る。図は、挟持部材6の挟持位置において、ビーム(2a、2b)が基礎杭20の長手方向21のほぼ横方向に延在すること、を示している。図3において、長手方向21は、図の平面の垂直に延在する。
【0048】
連結具1には、ビーム(2a、2b)に接続された支持部材9がさらに設けられている。支持部材9は、基礎杭20の外周の少なくとも一部に沿って、基礎杭20の外壁部分20bを支持するように構成されている。支持部材9は、同様に、U字状断面を有しており、対応するビーム(2a、2b)の調整可能な固定位置までビーム(2a、2b)の端部分にわたってスライドされ得る。調整可能な固定位置は、例えば、複数の開口部22によって決定されており、これら開口部は、ビーム(2a、2b)の側壁に配列されており、この部材をビーム(2a、2b)に安定化させるために、これら開口部には、支持部材9の対応するピン92が配設されている。支持部材9が倒立中に基礎杭20の外壁部分20bを支持するように構成されているので、支持部材9は、全体として、径方向8において挟持部材6よりも径方向外側に位置し、これら挟持部材は、結局は図示した実施形態において、倒立中に基礎杭20の内壁部分20aを挟持するように構成されている。
【0049】
例えば6m以上などの直径が比較的大きいかつ/または例えば800トン以上2300トン以下などの重量が比較的重い基礎杭20に関して、有用であり得ることは、支持構造体25の形態にあるさらなる支持体を設けること、であり、この支持体は、支持部材9とは異なり、基礎杭20の外周の少なくとも一部に沿って延在する。十分な強度を得るために、有用であり得ることは、図2及び図3に示すように、支持構造体25を少なくとも2つのビーム(2a、2b)に接続すること、である。支持構造体25のうち基礎杭20の壁部分と接触し得る表面には、同様に、例えばゴム被覆の形態にある衝撃吸収素子26が設けられ得る。
【0050】
使用中に基礎杭20を倒立させているとき、支持部材9及び支持構造体25双方は、部分的に倒立した位置にある基礎杭20の下側部にある。したがって、支持部材9及び必要に応じて支持構造体25は、基礎杭20自身の重量を吸収することに特に有用である。
【0051】
最後に、連結具1には、同様に、昇降部材4に対して支持構造体2の角度方向位置を調節するための手段が設けられ得、この手段は、支持構造体2に回動式に接続されている。図示した実施形態において、図4に示すように、角度調節手段は、昇降部材4と支持構造体2の平面29との間に延在する液圧ピストンシリンダ24を備える。この昇降位置において、昇降部材4の平面と支持構造体の平面との間の角度45は、ほぼ0°である。シリンダ24を後退させることによって、支持構造体2は、図4に示す挿入位置から同じ図4で破線で示す吊下位置まで回転軸5(図2参照)回りに回転される。支持構造体2の平面29は、昇降部材4の平面に対してほぼ垂直に延在する。昇降部材4と支持構造体2との間の角度45は、約90度まで増加されている。
【0052】
使用中に、ホイストケーブル(図示略)を孔40または昇降部材4の代替の接続手段に接続することによって本発明の連結具1をまずクレーン(図示略)のホイストケーブルに接続する。そして、支持構造体2は、クレーンを用いて昇降部材4によって取り上げられ、基礎杭20の外側端部へ運ばれる。倒立されなければならないかつ例えば海底に配置されなければならない基礎杭20は、全体として、水平位置で、船舶の作業デッキ、例えばジャッキアッププラットフォームにある。連結具1を用いてこのように水平に方向付けられた基礎杭20を上昇させるために、デバイスの支持構造体2は、図4において実線で示されている挿入位置へ移動され、シリンダ24に運動を付与することによって基礎杭20の中空外側端部内に挿入される。挟持部材6は、クリア位置Aにある、すなわち、十字の中心に比較的近接している。
【0053】
本発明によれば、連結具1を挿入することは、弾性腕体10を用いて行われる。連結具1の一部を形成する弾性腕体10は、図5に示す休止位置から触れられる壁部分20bに近接して位置する位置まで移動される。この状況において、連結具1は、クレーンから吊下げられているので、ある程度揺動する。腕体10が壁部分20bに十分に近づいた後、腕体10は、まず、倒立される外側端部200と接触し、この弾性は、連結具1、より詳しくは連結手段6が設けられている支持構造体2が外側端部200に対して位置合わせされることを保証する。弾性腕体10が外側端部200の壁部分20bに当接して配置しているので、これら弾性腕体は、転動体14の回転によってこの壁部分にわたって移動できる。連結具1、特に支持構造体2は、この運動において共に変位され、それにより、支持構造体は、外側端部200と位置合わせされる。これにより、支持構造体の平面29に垂直に延在する軸15は、倒立される素子の長手方向軸とほぼ平行に位置するようになる。この位置合わせにより、素子、特に基礎杭20への損傷を引き起こし得る予期しない運動の高い危険性なく、これら連結手段が外側端部200に係合できるように連結手段6を位置付けることが可能となる。
【0054】
その後、挟持部材6は、これら挟持部材のクリア位置Aからこれら挟持部材の挟持位置Bまでビーム(2a、2b)に沿ってスライドされ、基礎杭20における中空外側端部の内壁部分20aとの連結を実現する。この教示位置において、ビーム(2a、2b)は、基礎杭20の長手方向に対するほぼ横方向に延在する。その後、デバイス1に連結する基礎杭20は、クレーンを用いて全体を揚げることによって倒立される。ここで、支持構造体2は、角度45が90度まで減少するまで、すなわち支持構造体2の平面29が昇降部材4の平面49に対してほぼ垂直に延在するまで、昇降部材4に対して回動する。この位置において、デバイス1に連結した基礎杭20は、クレーンを用いて所望位置、例えば基礎杭20を海底まで降下しなければならない位置へ揚げられる。その後、所望位置において、挟持部材6は、挟持位置Bからクリア位置Aまでビーム(2a、2b)に沿って径方向内側にスライドされ、それにより、デバイス1を基礎杭20から係合解除する。基礎杭20を倒立させている間、必要に応じて、基礎杭は、支持部材9及び/または支持構造体25によってさらに支持され得る。
【0055】
明らかであることは、上述した実施形態には例えば液圧源及び電源、これら液圧源及び電源のための供給導管などの周辺機器を設けなければならないこと、である。この周辺機器をさらに詳細には説明しない。
【0056】
上で詳述した一実施形態にかかる本発明のデバイスによれば、管状物体、特に風力タービンの基礎杭は、浮遊している船舶から地面、特に水底に配置され得、この配置は、公知の方法よりも悪天候条件の下も可能である。これにより、管状物体への損傷の危険性を低減する。このデバイスにより、同様に、直径が比較的大きい管状素子を操ることが可能となり、様々な寸法を受け入れ得る。
【符号の説明】
【0057】
1 連結具,デバイス、2 支持構造体、2a,2b ビーム、4 昇降部材、6 連結手段,挟持部材、7 液圧ピストンシリンダ、9 支持部材、10 弾性腕体、11 横方向ビーム、13 液圧シリンダ、14 転動体、20 筒状素子,基礎杭、20a 内壁部分、20b 外壁部分、24 液圧ピストンシリンダ、25 支持構造体、26 衝撃吸収素子、200 外側端部
図1
図2
図3
図4
図5