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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】スライドトレイアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/31 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01N1/31
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021516723
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 AU2019051407
(87)【国際公開番号】W WO2020124154
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】2018904849
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】504466373
【氏名又は名称】ライカ・バイオシステムズ・メルボルン・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LEICA BIOSYSTEMS MELBOURNE PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ブレンデン・アンソニー・ショークロフト
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2016-0099295(KR,A)
【文献】特開2016-006534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0134793(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104502171(CN,A)
【文献】中国実用新案第205246405(CN,U)
【文献】特表2013-513782(JP,A)
【文献】特開2013-040974(JP,A)
【文献】特表2005-506535(JP,A)
【文献】特表2005-527811(JP,A)
【文献】特開2002-267942(JP,A)
【文献】特開平04-310841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0253225(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0123979(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0300931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド上に配置された組織サンプルを処理するための自動処理装置のスライド投入モジュール又はスライド排出モジュールのためのスライドトレイアセンブリであって、
前記スライドトレイアセンブリは、
スライドトレイと、
前記スライドトレイに近接するスライドトレイカバーであって、前記スライドトレイと前記スライドトレイカバーとの間にスライドを受け入れるための1以上の空隙を形成するスライドトレイカバーと、
を備え、
前記スライドトレイカバーは、前記スライドトレイカバーの一端部に窪み部を有し、前記窪み部は、前記自動処理装置のスライドハンドリングロボット又は前記自動処理装置の操作者によって前記スライドが前記空隙内に配置される際に、前記スライド上の前記組織サンプルが前記スライドトレイカバーで擦られることを小さく抑えるように構成されている
スライドトレイアセンブリ。
【請求項2】
前記スライドトレイアセンブリは、前記自動処理装置の操作者が前記空隙内のスライドにアクセス可能な開放位置と、前記自動処理装置のスライドハンドリングロボットが前記空隙内のスライドにアクセス可能な閉鎖位置との間で移動可能である、請求項1に記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項3】
前記スライドトレイアセンブリは、前記開放位置と前記閉鎖位置との間で枢動する、請求項2に記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項4】
前記スライドトレイアセンブリは、ドアをそれぞれ有する前記スライド投入モジュール及び前記スライド排出モジュールのために用いられるものであり、
前記スライドトレイアセンブリは、前記ドアに取り付けられ、前記閉鎖位置にあるときに前記操作者が前記ドアを開くことで、前記開放位置に枢動するように構成されている、請求項3に記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項5】
前記スライドトレイカバーは、前記スライドトレイに枢動可能に接続されている、請求項1~4のいずれか1つに記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項6】
前記スライドトレイカバーは、4つのスライドトレイに枢動可能に接続され、前記4つのスライドトレイは、前記スライドハンドリングロボット及び前記操作者が前記空隙内のスライドにアクセスできるように、互いに長手方向にジグザグに配置されている、請求項5に記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項7】
前記スライドトレイアセンブリは、24個の前記空隙を有する、請求項6に記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項8】
前記空隙は、一端部にラベルを有する前記スライドが前記空隙に配置されているときに前記スライドハンドリングロボットが前記ラベルを視認できるように構成されている、
請求項1に記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項9】
前記スライドトレイは、前記空隙内に前記スライドを配置する前記スライドハンドリングロボットの位置精度を向上させるための位置基準部を有する、請求項1に記載のスライドトレイアセンブリ。
【請求項10】
前記窪み部は、スカラップ状のスライド投入部である、請求項1に記載のスライドトレイアセンブリ
【請求項11】
前記スライドトレイは、前記スライドトレイカバーの前記窪み部に近接する一端部にスライド保持リップを備える、請求項1に記載のスライドトレイアセンブリ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド上に配置された組織サンプルを処理するための自動染色装置のスライド投入モジュール又はスライド排出モジュール用のスライドトレイアセンブリに関するものである。特に、本発明は、スライドを受け入れるためにスライドトレイアセンブリに1以上の空隙を形成し、自動処理装置のスライドハンドリングロボット及び自動処理装置の操作者が当該空隙内のスライドにアクセス可能であることに関する。
【背景技術】
【0002】
解剖学的な病理サンプルなどの生物学的サンプルを自動的に処理する装置は、よく知られている。処理には、免疫化学、インサイチュハイブリダイゼーション(in-situ hybridisation)、特殊染色、細胞診などに代表される染色処理が含まれる。染色作業の自動化により、病理検査の迅速化が図られ、早期診断や場合によっては処置につながることもある。染色は、通常、生物学的サンプルの組織学的特徴を強調するために、顕微鏡のスライド上に置かれたサンプルに対して行われ、サンプルを少量の試薬と共に培養することが多い。多くの場合、自動化されたサンプルの染色は、染色を達成するためにロボットアームを操作して試薬の一定分量を供給することを含む。
【0003】
既存の自動処理装置の例において、組織サンプルは、スライド上に置かれ、装置のスライド処理モジュールに移動されて、試薬を用いて処理される。ここでのサンプルの処理は、染色プロトコルに従って予め決められた順序でスライド上のサンプルに試薬を吐出するように構成された1以上のロボットによって自動的に行われる。また、ロボットは、投入モジュールから装置内でスライドを自動的に移動させるためにも使用される。当該スライドは、まず、操作者によって装置内に装填され、処理のためにスライド処理モジュールに装填され、その後、排出モジュールに装填される。排出モジュールにおいて、スライドは、操作者によって取り出されるまでの時間、放置される。この間に、スライド上の組織サンプルは、脱水し始め、ダメージを受ける可能性がある。
【0004】
自動染色装置でスライド上のサンプルの処理能力を高めることは望ましいことであるが、較正、メンテナンス、及び洗浄を必要とする無数の可動部品があることが問題となり得る。多くの場合、処理されたサンプルの処理能力は、バッチ処理体制によって制限されており、サンプルの処理時間は、装置のスライド処理モジュールでバッチ内に投与されている最も遅い染色プロトコル(又は処理時間)によって制限される。そのため、処理された組織サンプルを含むスライドは、排出モジュールに様々な時間置かれる可能性があり、排出モジュールに最も長く置かれたものは、脱水の対象となるか、脱水を防ぐために操作者が介入するかのいずれかとなる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、スライド上に配置された組織サンプルを処理するための自動処理装置のスライド投入モジュール又はスライド排出モジュールのためのスライドトレイアセンブリを提供する。スライドトレイアセンブリは、スライドトレイと、スライドトレイに隣接するスライドトレイカバーであって、スライドトレイとスライドトレイカバーとの間にスライドを受け入れるための1以上の空隙を形成するスライドトレイカバーと、を備える。スライドトレイカバーは、スライドトレイカバーの一端部に窪み部を有し、自動処理装置のスライドハンドリングロボット及び自動処理装置の操作者が窪み部を介して空隙内のスライドにアクセス可能である。
【0006】
一実施形態において、スライドトレイアセンブリは、自動処理装置の操作者が空隙内のスライドにアクセス可能な開放位置と、自動処理装置のスライドハンドリングロボットが空隙内のスライドにアクセス可能な閉鎖位置との間で移動可能である。好ましくは、スライドトレイアセンブリは、開放位置と閉鎖位置との間で枢動する。
【0007】
一実施形態において、スライド投入モジュール及びスライド排出モジュールは、ドアを備え、スライドトレイアセンブリは、ドアに取り付けられ、閉鎖位置にあるときに操作者がドアを開くことで、開放位置に枢動する。更に、スライドトレイカバーは、スライドトレイに枢動可能に接続されている。したがって、スライドトレイ及びスライドトレイカバーの内部に、容易にアクセスすることができ、清掃することができる。
【0008】
一実施形態において、スライドトレイカバーは、4つのスライドトレイに枢動可能に接続され、4つのスライドトレイは、スライドハンドリングロボット及び操作者が空隙内のスライドにアクセスできるように、互いに長手方向にジグザグに配置されている。好ましくは、スライドトレイアセンブリは、24個の空隙を有する。
【0009】
例えば、空隙は、4列×6段に配置されている。これらの空隙により、操作者がスライド投入モジュールにスライドを配置可能であるとともに、スライドハンドリングロボットがスライド排出モジュールにスライドを配置可能である。すなわち、本装置のスライド処理モジュール内でスライド上の組織サンプルを処理した後、スライドハンドリングロボットがスライドをスライド排出モジュールの空隙内に配置する。一実施形態において、スライドは、装置の操作者によって取り出される前に、スライド排出モジュール内で水和された状態を維持する。例えば、装置を使用する際、スライドは、スライド排出モジュールの空隙内に最大12時間まで配置されてもよく、装置がぶつけられても、スライドはスライド排出モジュール内で水和された状態を維持する。
【0010】
一実施形態において、スライドトレイは、空隙内にスライドを配置するスライドハンドリングロボットの位置精度を向上させるための位置基準部を有する。
【0011】
一実施形態において、窪み部は、スライドが空隙に配置されているときに、スライド上の組織サンプルがスライドトレイカバーに擦れるのを小さくするように構成されている。例えば、窪み部は、操作者又はロボットによってスライドが空隙内に配置されたときに、スライド上の組織サンプルがスライドトレイカバー上で擦られるのを小さくするように構成されたスカラップ状のスライド投入部である。
【0012】
一実施形態において、スライドトレイは、空隙内にスライドを配置するスライドハンドリングロボットの位置精度を向上させるための位置基準部を有する。
【0013】
一実施形態において、スライドトレイは、スライドトレイカバーの窪み部に近接する一端部にスライド保持リップを備える。したがって、例えば、装置を誤ってぶつけた場合、スライドが空隙から排出されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る自動スライド処理装置の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るスライド排出モジュールの閉鎖位置における斜視図である。
図3図2のスライド排出モジュールの開放位置における斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るスライド排出トレイアセンブリの斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るスライド排出トレイとスライド排出トレイカバーとの間に形成される空隙の断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るスライド排出トレイカバーの一部を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係るスライド排出トレイの一部の斜視図である。
図8図6のスライド排出トレイカバーの一部の斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係るスライド排出トレイアセンブリの一部の側面図である。
図10】本発明の実施形態に係るスライド排出モジュールの斜視図である。
図11】本発明の実施形態に係るスライド排出モジュールの閉鎖位置における側面図である。
図12図11のスライド排出モジュールの開放位置における更なる側面図である。
図13図11のスライド排出モジュールの閉鎖位置における更なる側面図である。
図14】本発明の実施形態に係るスライド投入トレイアセンブリの斜視図である。
図15】本発明の実施形態に係るスライド投入モジュール及びスライド排出モジュールの開放位置における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る自動組織サンプル処理装置10であって、スライド上に配置された1以上の組織サンプルを処理するための装置を示している。本実施形態において、装置10は、スライド上の組織サンプルを自動的に処理するように装置10を動作させるように構成された制御部(図示せず)を備えている。しかしながら、他の実施形態において、制御部が装置10から離れた位置に設けられてもよいことは、当業者には理解されるであろう。
【0016】
装置10は、ハウジング13の下方に配置され、処理のためにスライドを受け入れるように配置された複数のスライド処理モジュール(図示せず)を備えている。更に、装置10は、ハウジング13の下方に配置された少なくとも1つのバルク流体ロボット(BFR)を備えている。BFRは、制御部によって、スライド上の組織サンプルを処理するために、BFR上に配置された排出ノズルを介して、試薬容器12に格納された複数の試薬を、スライド処理モジュールに受け入れられたスライドに吐出するように構成されている。本実施形態において、BFRは、制御部によって、その上に配置された組織サンプルを処理するために、シュウ酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、アルコール、脱脂剤、ヘマトキシリン、過酸化物、クエン酸、EDTA、脱イオン水(DI water)、ボンド(登録商標)ウォッシュなどの試薬(例えば、バルク流体試薬)をスライドに吐出するように構成されている。
【0017】
また、装置10は、試薬容器12からBFRの排出ノズルに試薬を圧送するための少なくとも1つの圧送手段(図示せず)を備えている。BFRは、制御部によって、各スライドに配置された1以上の組織サンプルを独立して処理するために、スライド処理モジュール内の面に対して予め決められた順序でこれらの試薬を吐出するように構成される。試薬を吐出するために、装置10は、各試薬に関連付けられた複数の試薬ライン(図示せず)を備えている。これらの試薬ラインは、各試薬容器12からそれぞれの圧送手段を介してBFRまで延びている。
【0018】
更に、装置10は、ハウジング13の下方に配置された流体搬送プローブ(FTP)ロボットを備えている。FTPロボットは、制御部によって、高価値試薬容器14に収容された複数の高価値試薬を、FTPロボット上に配置されたFTPノズルを介してスライド処理モジュール内のスライドにおける組織サンプルに吐出するように構成されている。このように、使用時において、BFR及びFTPロボットは、制御部によって、バルク流体試薬及び高価値試薬を予め決められた順序で吐出して、スライド上の組織サンプルを処理し、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH:in-situ hybridisation)及び免疫組織化学的(IHC:immunohistochemical)適用のための予め決められた染色プロトコルに従って組織サンプルを染色するように構成されている。このように、BFR及びFTPロボットは、制御部によって、各スライド処理モジュールに対して試薬を吐出し、スライド処理モジュール内の各スライドに配置された組織サンプルを独立して処理(例えば、染色)するように構成されている。
【0019】
また、実施形態において、FTPロボットは、制御部によって、各スライド上の組織サンプルを独立して処理するために、装置10の様々なモジュール間で、装置10内のスライドを移動させるように構成されている。すなわち、FTPロボットは、上述した装置10のスライドハンドリングロボットの機能を果たす。
【0020】
FTPロボットは、吸引手段などの把持部を備えてもよい。把持部は、各スライド上の組織サンプルを処理又は染色できるように、スライドを把持して、(装置10の操作者が処理のために組織サンプルを載せたスライドを装置10に導入する)スライド投入モジュール16からスライド処理モジュールにスライドを移動させる。そのために、FTPロボットは、制御部によって、x、y、z、及びθ(シータ)軸方向に移動するように構成されている。また、BFRは、FTPロボットによるスライドの移動を妨げないように、制御部によって、x、y、z軸方向に移動するように構成されている。処理後、FTPロボットは、スライドSをスライド排出モジュール18に移動させ、装置10からスライドSが取り出されるまで待機する。取り出しを待機している間、スライド排出モジュール18は、4時間から12時間などの指定時間、スライドの水和を維持するように構成されている。
【0021】
スライド投入モジュール16の主な機能は、染色を必要とするスライドを収容することにあり、スライド排出モジュール18の主な機能は、染色が終了したスライドを収容することにある。これらのモジュール16,18は、装置10の操作者(開放されているとき)と、FTPロボットなどのスライドハンドリングロボット(閉鎖しているとき)との両方によってアクセスされ、ロボットがスライド排出モジュール18にアクセスしている場合でも、操作者が投入モジュール16を開放することができるように独立している。
【0022】
図2及び図3は、自動処理装置10のスライド排出モジュール18をより詳細に示している。図2は、閉鎖位置におけるスライド排出モジュール18を示し、図3は、開放位置に枢動したスライド排出モジュール18を示している。図4は、スライド排出モジュール18用のスライドトレイアセンブリ20を示し、図14は、スライド投入モジュール16用のスライドトレイアセンブリ20Aを示している。スライドトレイアセンブリ20,20Aは、スライドトレイ24と、当該スライドトレイ24に隣接するスライドトレイカバー26を備えている。スライドトレイ24とスライドトレイカバー26との間には、スライドを受け入れる1以上の空隙23が形成される。スライドトレイアセンブリ20,20Aは、スライドトレイカバー26の一端部に窪み部21を有している。装置10のFTPロボットの形態をしたスライドハンドリングロボット及び装置10の操作者は、窪み部21を介して空隙23内のスライドにアクセス可能である。また、窪み部は、操作者又はFTPロボットによってスライドが空隙23内に配置される際に、スライドS上の組織サンプルがスライドトレイカバー26上で擦られることを小さく抑えるように構成されている。
【0023】
スライド投入モジュール16及びスライド排出モジュール18は、24個のスライドポジション22を有するスライド排出トレイアセンブリ20,20Aを備えている。各スライドポジションは、スライドSがその中に配置されるための空隙23を有している。空隙23は、図5により明確に示されている。また、24個のスライドポジションを実現するために、図4及び図14により明確に示されているスライドトレイ24は、スライドトレイ24を互いに積み重ね、階段のようにジグザグに配置するスライドトレイアセンブリ20,20Aの一部である。このジグザグ配置は、バーコードの読み取りと、スライドを取り扱うためのロボットのアクセスを可能にする。
【0024】
スライド投入モジュール16とスライド排出モジュール18とは、スライド排出モジュール18のみで行われるスライドの水和に必要な特別な機能のため、同一ではない。スライド排出モジュール18における水和は、スライド上の組織サンプルの染色後、操作者が必要とするときにスライドがすぐに利用でき、乾燥しないことを保証する。水和が実施されなかった場合、水和は、スライド染色モジュールなどの装置10の別のモジュールで行われなければならない。この場合、例えば、操作者は、スライド染色モジュールから個々のスライドを要求する必要があり、当該スライドをロボットがスライド染色モジュールから取り出すのに15秒ほどかかる。仮に24枚のスライドが要求された場合、約6分かかる。
【0025】
すなわち、スライドトレイアセンブリ20,20Aのジグザグ設計は、小さな設置面積で最も多くの量のスライドを許容する一方で、スライド排出モジュール18内でスライドの識別、処理、水和を行うことができる。スライドトレイアセンブリ20,20Aは、スライド染色モジュールにおけるスライドのロボットによる整列をアシストするためにスライド投入モジュール16において、及び、排出トレイウィンドウへの挿入を容易にするためにスライド排出モジュール18において、スライドSを実用的な範囲でデータムすることを試みる。スライド排出トレイアセンブリ20,20Aは、ロボットがスライドを挿入するためのX及びYのクリアランスをより多く有することになる。例えば、スライド染色モジュールの蓋を開放する動作中に、スライドが予め決められた位置からずれてしまった場合、スライドの挿入が損なわれる可能性がある。
【0026】
より具体的には、図4に示す実施形態において、スライド排出トレイアセンブリ20は、4つのスライド排出トレイ24と4つのスライド排出トレイカバー26とを備え、各スライド排出トレイ24及び各スライド排出トレイカバー26は、6つのスライドポジション22を有している。すなわち、スライド排出トレイ24は、24個のスライドポジション22を形成するように、スライド排出カバー26に近接している。これらのスライドポジション22の各々には、スライド排出トレイ24とスライド排出トレイカバー26との間に、スライドSを受け入れるための空隙23が形成されている。図4には、それぞれ空隙23にスライドSを受け入れる6つのスライドポジション22の1列が示されている。また、各スライド排出トレイ24は、空隙23にアクセスして清掃できるように、軸部59を介して、それぞれのスライド排出カバー26に枢動可能に接続されている。
【0027】
スライドポジション22の1つを図5に詳細に示す。スライド排出トレイアセンブリ20の一部であるこの断面図では、スライド排出トレイカバー26が、空隙23の1つと連通する流体投入部30を有する第1面28を有していることが分かる。流体投入部30は、吐出プローブ32からの流体が空隙23に連通するのを容易にするために漏斗状になっている(すなわち、流体のための鋭いエッジがない)。前述したように、流体は、スライドの水和を維持するために、一般に脱イオン水である。更に、使用時において、吐出プローブ32は、漏斗状の流体投入部30に接触しないように流体を吐出するように構成されている。
【0028】
また、スライド排出トレイカバー26は、自動染色装置10によるスライドの処理(例えば、染色)後の指定時間(例えば、12時間)の間、流体投入部30から受け入れた流体によるスライドSの水和を維持するために、空隙23内にスライドSと共に水和室を形成するように構成された第2面34を有している。
【0029】
空隙23は、スライド排出トレイカバー26の第2面34に設けられた空隙天井36と、スライドSと、空隙天井36まで延びるスライド排出トレイ24の側壁38とによってバインドされている。前述したように、空隙天井36は、流体投入部30から受け入れた流体によるスライドSの水和を維持するように構成された表面を有している。実施形態において、空隙天井36の表面は、水和の維持を強化するために高表面エネルギの材料特性を有し、スライドSに対して約3mmの均一な高さを有する。更に、空隙天井36の表面は、流体投入部30から受け入れた流体によるスライドの水和を維持するために、テクスチャ仕上げなどの仕上げを有してもよい。好ましくは、流体(例えば、脱イオン水)は、流体によるスライドの水和を維持するように構成された表面張力(例えば、72.2ダイン/cm)を有している。すなわち、流体は、空隙天井36とスライドSとによってバインドされたメニスカスを形成し、流体によるスライドSの水和を維持するのをアシストする。このようにして、スライドS上に配置された組織サンプルの上に流体が維持される。
【0030】
空隙天井36は、流体投入部から受け入れた流体によるスライドの水和を維持するため、流体投入部30の両側に、スライドSに対して相対する方向において空隙天井36に沿って長手方向に延びる2つの凹部40を更に備える。更に、空隙天井36は、長手方向に延びるとともに2つの凹部40からそれぞれ張り出すレール42を有している。更に、空隙天井36は、側壁凹部44を有し、側壁38は、空隙天井36の側壁凹部44内に延びている。スライドSは、空隙23内において、側壁38の間のスライド排出トレイ24のベース46上で且つスライドSの各側面の間に隙間48を有して配置されている。ベース46には、スライドSがベース46に付着したり、ベース46にゴミが付着してスライドSがベース46に対して斜めになったりすることを避けるために、スライドSの下面とベース46との接触面積を小さくするために、ベース46から僅かに突出したレールが設けられてもよい。
【0031】
スライド排出トレイカバー26は、図6及び図8に更に詳細に示されており、スライド排出トレイ24は、図7に更に詳細に示されている。スライドSは、図9において、スライド排出トレイカバー26とスライド排出トレイ24との間に形成された空隙23内に位置するように示されている。スライド排出トレイカバー26は、流体投入部30に近接するスカラップ状(scalloped)のスライド投入部50の形態の窪み部21を有しており、装置10のロボットによってスライドSが空隙23に配置される際に、スライドS上の組織サンプルがスライド排出トレイカバー26に擦れるのを小さく抑えるように構成されている。また、スライド排出トレイカバー26は、当該トレイカバー26の流体投入部30と対向する端部において、流体投入部30からの余分な流体を排出するように構成されている。図8は、指定時間にわたって流体投入部30から流体を排出するように構成されたリブ51を有するスライド排出トレイカバー26の下面を示している。
【0032】
空隙内でのスライドSの位置決めを更にアシストするために、スライド排出トレイ24は、図7に示す空隙23内でスライドを位置決めする装置10のロボットの位置精度を高めるためのスライド位置基準部54を有している。また、図7には、空隙23と連通する流体排出部52を有するスライド排出トレイ24が示されている。また、スライド排出トレイ24は、空隙内のスライドS上における流体投入部30から流体排出部52への流体伝搬を促進するために、装置10のスライドに対して長手方向に指定角度で設けられている。
【0033】
図4に戻って参照すると、スライドSは、スライドSの一端部に設けられ、FTPロボットから視認可能なラベルLを有している。スライドSは、スライド排出トレイ24の角度のために、流体投入部30から流体排出部52までラベルLから離れる方向に流体が伝搬するように、空隙23内に配置されている。更に、スライド排出トレイ24は、一端部に図9に示すスライド保持リップ(slide retaining lip)56を備え、流体排出部52は、スライド保持リップ56と対向する端部にある。スライド保持リップ56は、スライドSの水和に悪影響を及ぼす可能性のある、空隙23の外へ(場合によっては装置10の別の領域内へ)、スライドSが不用意にぶつかることを抑える。
【0034】
図10図13は、スライド排出モジュール18の特徴を更に詳細に示している。図10は、トレイアセンブリ20のないスライド排出モジュール18又はスライド投入モジュール16を、軸部58を中心に閉鎖位置から開放位置へと枢動する回転式引出しの形態で示している。引出しは、フロントドア56を用いて手動で操作される。前述したように、投入モジュール16及び排出モジュール18は、6列×4行で24枚のスライドを収容することができる。投入モジュール16及び排出モジュール18は、ロッドホルダハウジングと固定ロッドとを有するシャーシプレート60上に構成されている。サイドプレート62は、ロッドを中心として回転する。排出されたスライドトレイアセンブリ20などのスライドトレイアセンブリは、サイドプレート62の内側にデータムされてロックされる。また、ドアアーム64は、サイドプレート62から独立した状態で、同じ軸部58に取り付けられている。各ドアアームに取り付けられた2つのカスタムばねは、サイドプレート62とドアアーム64との間にロストモーション機能を発生させる。これにより、ドア56とスライドトレイアセンブリ20とが切り離され、水和不良を回避し、ドア56からスライドトレイアセンブリ20への振動の伝達を小さく抑えることができる。更に、各ドアアーム64にねじ込まれた2つの段付きボルトは、引出しの開閉時にサイドプレート62をピックアップする。
【0035】
引出し機構は、油圧式の非加圧ダンパ66を閉じる際に圧縮して使用する。ダンパ66は、ユーザが引出しを閉じる際に引出しの速度が上げることを抑える。これにより、引出しを閉じる際にスライドが落下したり、脱イオン水がこぼれたりするリスクを低減することができる。それは、ユーザの悪用を止めるものではないが、ドア56をバタンと閉めないように教育するものである。
【0036】
引出しを開けているとき、ダンパ66の保持力は最小である。その結果、ソフトクローズダンパが開放位置での動きを減衰させるために使用される。ドア56が閉鎖位置にあると、引張りばねが装置10の鼻隠し(fascia)に対してドアを引っ張る。引張りばねは、ユーザが開く際に適切な引張力を確保する。また、カウンタウェイト76は、ユーザのための適切な引張力と閉鎖力を確保する。
【0037】
引出しロック及び存在検知機構72は、光センサ68と、ソレノイドと、チェックストラップ74とを備えている。また、この機構は、2つの段付きボルトを備えている。ソレノイドのピンは、チェックストラップ74を押し上げるために使用される。操作者が引出しを開けようとすると、チェックストラップ74は段付きボルトにロックされる。ロストモーションは、ドア56が僅かに開放することを許容し、スライド(又は水和)に影響を与えない。電源オフやソレノイドの作動停止の場合は、チェックストラップ74が自重で下がり、引出しのロックが解除される。
【0038】
前述したように、スライド排出トレイアセンブリ20は、自動染色装置10のロボットによって空隙内のスライドにアクセス可能なスライド排出モジュールの閉鎖位置と、自動染色装置10の操作者によって空隙内のスライドにアクセス可能なスライド排出モジュール18の開放位置との間で枢動される。スライド排出モジュール18は、図11に示すように、スライド排出トレイアセンブリが閉鎖位置にあるときに、流体投入部30から受け入れた空隙内の流体が静的水和廃液バケット80に伝搬されるように、流体経路82を介してスライド排出トレイアセンブリ20の空隙と連通する静的水和廃液バケット80を更に備えている。すなわち、開放位置にあるときに残っている流体の量を小さくするために、流体の一部は、ドア56が開放される前に静的水和廃液バケット80に移される。静的水和廃液バケット80は、約430mLの容量を有するキャビティである。更に、静的水和廃液バケット80は、静的水和廃液バケット80内の流体の指定量を検知して、静的水和廃液バケット80内の流体を除去するように操作者又は装置10に警告するように構成された液面センサを有する。
【0039】
スライド排出モジュール18は、図12に示すように、スライド排出トレイアセンブリ20の空隙と連通する動的水和廃液バケット84を更に備え、スライド排出トレイアセンブリ20が閉鎖位置から開放位置に枢動されたとき、流体投入部30から受け入れた空隙内の流体が動的水和廃液バケット84に伝搬される。動的水和廃液バケット84は、約215mLの容量を有するキャビティであり、ドア56を開閉している間にバケット84の外側に流体が飛び散るのを止めるように構成されている。そのために、動的水和廃液バケット84は、ドア56を開閉している間にバケット84の外側に流体が飛び散らないように、壁を有するドア56内のキャビティのような形状になっている。
【0040】
更に、動的水和廃液バケット84内の流体は、図13に示すように、スライド排出トレイアセンブリ20が閉鎖位置に戻るように枢動されると、流体経路82を介して静的水和廃液バケット80に伝播される。残りの流体は、引出しが閉じられる間に、静的水和廃液バケット84内に搬送される。
【0041】
図15を参照すると、スライド投入モジュール16及びスライド排出モジュール18の両方のためのスライドトレイアセンブリ20,20Aが、装置10の操作者が空隙23内のスライドSにアクセス可能な開放位置(この図に示される)と、装置10のFTPロボットが空隙23内のスライドSにアクセス可能な閉鎖位置(図1に示される)との間で移動可能である。前述したように、スライド投入モジュール16及びスライド排出モジュール18は、ドア56を備えている。スライドトレイアセンブリ20,20Aは、操作者がドア56を軸部58を中心として開閉するとき、開放位置と閉鎖位置との間で枢動する。また、スライドトレイカバー26は、空隙23にアクセスして清掃できるように、4つの軸部59を中心として閉鎖位置から開放位置まで枢動する。具体的には、スライドトレイカバー26は、軸部59を介して4つのスライドトレイ24に枢動可能に接続され、FTPロボット及び操作者が空隙23内のスライドSにアクセスできるように、4つのスライドトレイが互いに長手方向にジグザグに配置されていることがわかる。
【0042】
実施形態において、装置10の制御部は、メモリに記憶された命令に関連してプロセッサのモジュールに実装され、各BFRロボット及びFTPロボットの移動及び試薬の吐出、並びに、吐出プローブ32を介してスライド上の組織サンプルを水和させるための流体の吐出を制御する。メモリが、装置10に収容されたコンピュータに備えられてもよいし、制御部とデータ通信するコンピュータから遠隔でホストされてもよいことは、当業者には理解されるであろう。
【0043】
本発明の趣旨から逸脱することなく、先に説明した部品に様々な変更、追加、及び/又は修正を加えることができ、且つ、上記の教示に照らして、本発明が当業者によって理解されるような様々な態様でソフトウェア、ファームウェア、及び/又はハードウェアに実装することは、理解されるべきである。
【0044】
本明細書では、本発明のコンテキストを提供することのみを目的として、文献、作用、材料、装置、物品などの説明がなされている。これらの事項のいずれか又は全ては、本出願の各請求項の優先日の前に存在するものとして、先行技術基盤の一部を形成していたこと又は本発明に関連する分野における一般的な知識であったことを示唆又は表明するものではない。
【0045】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、「備える(comprise)」という語、及び「備える(comprising)」や「備える(comprises)」などの語の変形は、他の付加物、部品、完成品、又はステップを除外することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15