(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ウイルス感染を処置するための2,6-ジメチル-N-((ピリジン-4-イル)メチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミンおよび2,5-ジメチル-N-[(ピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20231205BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20231205BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20231205BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20231205BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20231205BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20231205BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231205BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231205BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231205BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231205BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20231205BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231205BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231205BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231205BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231205BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231205BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231205BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C07D487/04 144
C07D487/04 CSP
C07D487/04 142
A61K31/5025
A61P1/12
A61P1/18
A61P3/02
A61P3/08
A61P9/00
A61P11/00
A61P17/00
A61P21/00
A61P25/18
A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/14
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021518104
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2019072220
(87)【国際公開番号】W WO2020074159
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517102282
【氏名又は名称】キュロヴィル・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ベストマン,ヤコブ
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503830(JP,A)
【文献】特表2020-516599(JP,A)
【文献】特表2018-522861(JP,A)
【文献】国際公開第2017/055305(WO,A1)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2017年,60(1),pp.100-118
【文献】Tetrahedron Letters,2015年,56(44),pp.6077-6079
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2015年,58(9),pp.3767-3793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 477/00-491/22
A61K 31/5025
A61P 1/12
A61P 1/18
A61P 3/02
A61P 3/08
A61P 9/00
A61P 11/00
A61P 17/00
A61P 21/00
A61P 25/18
A61P 25/28
A61P 27/02
A61P 29/00
A61P 31/04
A61P 31/12
A61P 31/14
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
XおよびYのうち一方は、Cであり、他方は、Nであり;
R
1は、ハロゲン、CN、NH(CH
3)、N(CH
3)
2、1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルコキシ、および1~3個のハロゲン、CN、NH(CH
3)、またはN(CH
3)
2で置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択され;
R
2は、3,4-ジメトキシフェニルまたは1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イルである)
の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
R
2が、3,4-ジメトキシフェニルである、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
R
2が、1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イルである、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
R
1が、ハロゲン、CN、1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルコキシ、および1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
R
1が、F、CN、メトキシ、メチル、トリフルオロメチル、およびエチルから選択される、請求項4に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
R
1が、ハロゲン、および1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択される、請求項4に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項7】
R
1が、F、メチル、トリフルオロメチル、およびエチルから選択される、請求項6に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項8】
Xが、Nであり、Yが、Cである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Xが、Cであり、Yが、Nである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,6-ジメチル-N-((2-メチルピリジン-4-イル)メチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-((2-フルオロピリジン-4-イル)メチル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、および
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-メチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-エチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-メトキシピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-シアノピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、および
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-トリフルオロメチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン、
から選択される、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項11】
療法における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、および任意選択で医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
ウイルス感染の処置における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項14】
前記ウイルス感染が、RNAウイルス感染である、請求項13に記載の使用のための化合物または医薬的に許容される塩。
【請求項15】
前記RNAウイルス感染が、ピコルナウイルス感染である、請求項14に記載の使用のための化合物または医薬的に許容される塩。
【請求項16】
膵臓炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、がん、麻痺、心疾患、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、皮膚粘膜の病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、または炎症状態の処置のための、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のための化合物または医薬的に許容される塩。
【請求項17】
ウイルス感染の処置のための医薬品の製造における、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容される塩の使用。
【請求項18】
前記ウイルス感染が、RNAウイルス感染である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記RNAウイルス感染が、ピコルナウイルス感染である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記医薬が、膵臓炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、がん、麻痺、心疾患、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、皮膚粘膜の病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、神経変性疾患、または炎症状態の処置用である、請求項17~19のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、療法において、特定には、特定のウイルスによって引き起こされる状態、例えば風邪、脳炎、髄膜炎、心筋炎、結膜炎、膵臓炎、加えて、糖尿病、がん、ならびに神経変性疾患、例えばアルツハイマー病および筋萎縮性側索硬化症の処置において有用性を有する化合物に関する。より特定には、本発明は、療法における特定のアミノ置換ヘテロ芳香族化合物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ピラゾロ[1,5-a]ピリミジンは、医薬品化学において一般的に使用される足場であり、その誘導体は、鎮痛薬、ベンゾジアゼピン受容体アンタゴニスト、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、血管形成抑制薬、抗炎症剤、神経ペプチドY受容体アンタゴニスト、1型COX2-阻害剤および副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体アンタゴニストとして、さらに、CHK1阻害剤としての、その有力な有用性に関して公知である(例えばMayoら(Adv. Synth. Catal. 2003、345、620~624;Tellewら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2010、20、7259~7264);Chenら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004、14、3669~3673);Labroliら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011、21、471~474);Griffithら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011、21、2641~2645);Gilliganら、(J. Med. Chem. 2009、52、3073~3083);Heら(米国特許第6,313,124号B1);およびWrenら(WO2010/086040)。
【0003】
この足場はまた、ホスファチジルイノシトール4-キナーゼ(PI4K)阻害剤においても記載されている。
【0004】
Biancoら(PLoS Pathogens、2012、8(3)、1~17)およびLaMarcheら(Antimicr. Agents and Chemother. 2012、56(10)、5149~5156)は、PI4Kは、C型肝炎ウイルス(HCV)の複製にとって重要であることを示し、Yangら(J. Biol. Chem. 2012、287(11)、8547~8467)は、コロナウイルスにとって同様に重要であることを示した。McLeodら(ACS Med. Chem. Lett. 2013、4(7)、585~589)およびvan der Schaarら(Antimicrobial Agents Chemother. 2013、57(10)、4971~4981)は、一部のイミダゾピラジン誘導体が、PI4Kを阻害し、ピコルナウイルスに対する有力な抗ウイルス剤であることを示した。
【0005】
Gudmundssonら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2009、19、5689~5692)は、ヘルペスウイルスに対して有力な活性を有するいくつかの3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジン開示している。
【0006】
Hwangら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2012、22、7297~7301)は、抗HCV作用を有するPI4K阻害剤としての3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジンを記載している。
【0007】
Decorら(Bioorg Med Chem Lett. 2013、23、3841~7)はまた、PI4Kはエンテロウイルスの複製にとって重要であることも示している。しかしながら、彼らはまた、PI4K阻害剤(非3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジンおよび3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジン3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,5-ジメチル-N-(2-モルホリノエチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(T-00127-HEV1と呼ばれる))が、インビボで試験した場合、マウスにおいて死を誘導したことも示しており、これは、PI4K阻害の安全性に対する疑念をもたらした。
【0008】
WO2015/110491において、特定の3-アリールピラゾロ[1,5-a]ピリミジンが、ウイルスによって誘発された疾患を処置するためのPI4K阻害剤として記載されている。
【0009】
イミダゾ[1,2-b]ピリダジン誘導体は、Mps1キナーゼ阻害剤として記載されている(Kusakabe, J. Med. Chem. 2015、58、1760~1775)。類似の足場が、ホスファチジルイノシトール4-キナーゼ(PI4K)阻害剤中に存在するとして記載されており(McLeodら(ACS Med. Chem. Lett. 2013、4(7)、585~589)およびvan der Schaarら(Antimicrobial Agents Chemother. 2013、57(10)、4971~4981)、PI4Kの阻害剤は、有力な抗ウイルス剤であることが示されている(Biancoら、PLoS Pathogens、2012、8(3)、1~17;LaMarcheら、Antimicr. Agents and Chemother. 2012、56(10)、5149~5156;Decorら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2013、23、3841~7)。
【0010】
自食作用は、細胞中のホメオスタシスによる分解プロセスであり、ストレス時において、さらに、傷害を受けた細胞器官またはサイトゾル中の微生物を再利用するためのメカニズムとして、栄養素を生成するのに使用される(Karanasiosら、2016, Autophagy at the cell, tissue and organismal level (Springer))。多くの病原体が宿主の自食経路と相互作用し、正常な自食作用を損なう可能性がある。Laiら(Viruses、2016、8(32)、1~13)は、ウイルスが自食作用機構を蝕むことで、ウイルス複製が有利となり、ウイルスが宿主から出ること、およびPI4KIIIβの阻害は、自食作用プロセスに対して作用を有し、したがってウイルス複製を阻害すると予想されることを記載している。Sridharら(EMBO J. 2013、32、324~339)は、PI4KIIIβを自食作用において主要な因子であると記載しており、例えば神経変性および神経精神疾患、がん、心疾患、炎症性疾患および糖尿病などの多くの疾患が、不良な、または異常な自食作用によって引き起こされるか、またはそれらに関連していると考えられている(Polajnarら、J. Cell. Mol. Med. 2014、9(18). 1705~1711;Levineら、Cell、2008、132(1)、27~42;Barlowら、DNA Cell. Biol、2015、34(4)、252~260)。
【0011】
シトクロムP450 3A4(CYP3A4と略記される)は、最も重要なシトクロムP450酵素の1つであり、多数の臨床的に有用な治療剤の酸化性の生体内変換に関与する。それゆえに、CYP3A4の阻害剤は、様々な薬物の代謝に影響を与える可能性があり、その生物学的利用率を増加させ、それによって予想外に高い薬物曝露による有害事象を引き起こす。数種の異なる薬物を平行して受ける患者において、このような薬物-薬物相互作用を回避することが必要であり、これは時に、一部のそれ以外の方式で治療上有用な医薬の使用を不可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第6,313,124号B1
【文献】WO2010/086040
【文献】WO2015/110491
【非特許文献】
【0013】
【文献】Mayoら(Adv. Synth. Catal. 2003、345、620~624)
【文献】Tellewら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2010、20、7259~7264)
【文献】Chenら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004、14、3669~3673)
【文献】Labroliら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011、21、471~474)
【文献】Griffithら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011、21、2641~2645)
【文献】Gilliganら、(J. Med. Chem. 2009、52、3073~3083)
【文献】Biancoら(PLoS Pathogens、2012、8(3)、1~17)
【文献】LaMarcheら(Antimicr. Agents and Chemother. 2012、56(10)、5149~5156
【文献】Yangら(J. Biol. Chem. 2012、287(11)、8547~8467)
【文献】McLeodら(ACS Med. Chem. Lett. 2013、4(7)、585~589)
【文献】van der Schaarら(Antimicrobial Agents Chemother. 2013、57(10)、4971~4981)
【文献】Gudmundssonら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2009、19、5689~5692
【文献】Hwangら(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2012、22、7297~7301)
【文献】Decorら(Bioorg Med Chem Lett. 2013、23、3841~7)
【文献】Kusakabe, J. Med. Chem. 2015、58、1760~1775
【文献】McLeodら(ACS Med. Chem. Lett. 2013、4(7)、585~589)
【文献】van der Schaarら(Antimicrobial Agents Chemother. 2013、57(10)、4971~4981)
【文献】Biancoら、PLoS Pathogens、2012、8(3)、1~17
【文献】LaMarcheら、Antimicr. Agents and Chemother. 2012、56(10)、5149~5156
【文献】Decorら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2013、23、3841~7。
【文献】Karanasiosら、2016, Autophagy at the cell, tissue and organismal level (Springer)
【文献】Viruses、2016、8(32)、1~13
【文献】Sridharら(EMBO J. 2013、32、324~339)
【文献】Polajnarら、J. Cell. Mol. Med. 2014、9(18). 1705~1711
【文献】Levineら、Cell、2008、132(1)、27~42
【文献】Barlowら、DNA Cell. Biol、2015、34(4)、252~260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
その結果として、求められている治療活性を有するだけでなく、薬物代謝酵素、特定にはCYP3A4、の活性への作用もない、またはほとんどない、新しい医薬への継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の形態は、式(I)
【化1】
(式中、
XおよびYのうち一方は、Cであり、他方は、Nであり;
R
1は、ハロゲン、CN、NH(CH
3)、N(CH
3)
2、1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルコキシ、および1~3個のハロゲン、CN、NH(CH
3)、またはN(CH
3)
2で置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択され;
R
2は、3,4-ジメトキシフェニルまたは1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イルである)
の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0016】
式(I)の化合物は、高い抗ウイルス活性と、低い、好ましくは本質的に無視できる程度のCYP3A4阻害活性とを兼ね備える。結果として、本明細書において、薬物-薬物相互作用のための、実質的にリスクを低減させた医薬を提供する。
【0017】
さらなる形態は、療法における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0018】
さらなる形態は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、および任意選択で医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0019】
さらなる形態は、ウイルス感染、例えばRNAウイルス感染の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0020】
さらなる形態は、ウイルス感染、例えばRNAウイルス感染の処置のための医薬品の製造における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用である。
【0021】
さらなる形態は、本明細書で述べられるような疾患の処置における使用のための、細胞における、不良な自食作用を改善すること、または異常な自食作用を調節することが可能な式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0022】
さらなる形態は、不良な、または異常な自食作用に関連する疾患の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0023】
さらなる形態は、不良な自食作用に関連する疾患の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0024】
さらなる形態は、異常な自食作用に関連する疾患の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0025】
さらなる形態は、非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルス感染の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0026】
さらなる形態は、エンテロウイルス感染、例えばピコルナウイルス感染の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0027】
よりさらなる形態は、膵臓炎、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、乳がん、前立腺がん、卵巣がんまたは結腸直腸がんなどのがん、麻痺、心筋炎などの心疾患、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、皮膚粘膜の病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、慢性疲労症候群、神経精神疾患、ならびに多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、およびハンチントン病などの神経変性疾患、または炎症状態から選択される疾患の処置における使用のための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0028】
さらなる形態は、このような処置が必要な哺乳動物に、治療有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することによる、ウイルス感染、例えばRNAウイルス感染を処置するための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
別段の指定がない限り、または文脈上明確に示されない限り、本明細書において使用される全ての専門用語および科学用語および略語は、この開示が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。しかしながら、本明細書において使用される一部の用語の定義は、本明細書の以下に示す通りである。
【0030】
「医薬的に許容される」は、全般的に、安全で、非毒性であり、生物学的にもそれ以外の観点でも有害ではない医薬組成物を調製することにおいて有用であることを意味し、獣医学的用途に加えてヒトの医薬用途にも有用であることなどを含む。
【0031】
疾患または障害を「処置すること」(またはその「処置」)という用語は、疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患またはその臨床症状の少なくとも1つの発生を停止または低減すること)、および/または患者が識別できない可能性がある少なくとも1つの物理的なパラメーターを改善することを指し得る。この用語はまた、物理的に(例えば、識別できる症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的なパラメーターの安定化)のいずれか、またはその両方で疾患または障害を阻害することを指す場合もある。
【0032】
「治療有効量」は、疾患を処置するために患者に投与される場合、このような疾患の処置をもたらすのに十分な化合物の量を指す。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、加えて、処置しようとする患者の年齢、体重などに応じて様々であると予想される。
【0033】
「ウイルス感染」は、哺乳動物におけるウイルスによる感染を指す。
【0034】
「RNAウイルス感染」は、遺伝物質としてRNA(リボ核酸)を有するウイルスのウイルス感染を指す。
【0035】
「非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルス感染」は、非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルスによる感染を指す。
【0036】
「非エンベロープウイルス」は、ウイルスエンベロープがないウイルスである。
【0037】
「一本鎖(+)RNAウイルス」は、遺伝物質が一本鎖RNAであるウイルスであり、ウイルスに感染した細胞は、このRNAを即座にウイルスタンパク質に翻訳することができる。
【0038】
「異常な自食作用」は、例えば、ウイルスの複製および放出に好都合な自食作用を意味する。
【0039】
「不良な自食作用」は、細胞における通常より低い機能を示す自食作用を意味する。
【0040】
本発明により処置され得る、不良な、または異常な自食作用に関連する疾患は、例えば、神経変性および神経精神疾患、がん、心疾患、炎症性疾患および糖尿病、例えば本明細書で述べられる疾患から選択することができる。
【0041】
用語「哺乳動物」は、ヒトまたはあらゆる哺乳動物、例えば霊長類、家畜、愛玩動物、または実験動物を指す。このような動物の例は、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラットなどである。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。しかしながら、一部の実施態様において、哺乳動物は、動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、またはブタなどの家畜である。一部の他の実施態様において、動物は、ペット、例えばイヌ、ネコまたはウサギである。
【0042】
用語「賦形剤」は、医薬的に許容される化学物質、例えば、医薬剤の投与を助けるための薬学の技術における当業者公知の化学物質を指す。これは、医薬組成物を調製することにおいて有用な、全般的に安全で、非毒性であり、生物学的にもそれ以外の観点でも有害ではない化合物であり、獣医学的用途に加えてヒトの医薬用途にも許容できる賦形剤を含む。例示的な賦形剤としては、結合剤、界面活性剤、希釈剤、崩壊剤、接着防止剤、および潤滑剤が挙げられる。
【0043】
別段の指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、用語「ハロゲン」は、F(フルオロ)、Cl(クロロ)、Br(ブロモ)、またはI(ヨード)を指す。
【0044】
別段の指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、用語「Cm~Cnアルキル」は、m~n個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基を意味する。例えば、用語「C1~C4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基を意味する。このようなC1~C4アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルが挙げられる。
【0045】
用語「Cm~Cnアルコキシ」は、式
【化2】
(式中、Rは、Cm~Cnアルキルである)
の部分を指す。
【0046】
NH(CH
3)という用語は、式
【化3】
の部分を表す。
【0047】
N(CH
3)
2という用語は、式
【化4】
の部分を表す。
【0048】
【0049】
式(I)の化合物において、XおよびYのうち一方は、Cであり、他方は、Nである。一部の実施態様において、Xは、Cであり、Yは、Nであり、すなわち化合物は、式(Ia)
【化6】
(式中、R
1およびR
2は、本明細書において定義される通りである)
によって表される。
【0050】
一部の実施態様において、Xは、Nであり、Yは、Cであり、すなわち本化合物は、式(Ib)
【化7】
(式中、R
1およびR
2は、本明細書において定義される通りである)
によって表される。
【0051】
式(I)の化合物において、R1は、ハロゲン、CN、NH(CH3)、N(CH3)2、1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルコキシ、および1~3個のハロゲン、CN、NH(CH3)、またはN(CH3)2で置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択される。
【0052】
一部の実施態様において、R1は、ハロゲン、CN、1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルコキシ、および1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択される。
【0053】
一部の実施態様において、R1がハロゲンである場合、前記ハロゲンは、F、Cl、およびBrから選択される。一部の実施態様において、前記ハロゲンは、FまたはClである。一部の実施態様において、前記ハロゲンは、Fである。
【0054】
一部の実施態様において、R1が、置換されていてもよいC1~C4アルキルである場合、前記アルキルは、より特定には、C1~C3アルキルである。一部の実施態様において、前記アルキルは、メチルまたはエチルである。一部の実施態様において、前記アルキルは、メチルである。一部の実施態様において、前記アルキルは、エチルである。
【0055】
一部の実施態様において、R1が、置換されていてもよいC1~C4アルキルである場合、前記アルキルは、非置換である。一部の他の実施態様において、前記アルキルは、1~3個のハロゲン、CN、NH(CH3)、またはN(CH3)2で置換されている。一部の実施態様において、前記アルキルが1~3個のハロゲンで置換されている場合、前記ハロゲンは、FおよびClから選択され、特定にはFである。一部の実施態様において、前記アルキルは、1~3個のハロゲンで置換されているか、ならびに/またはCN、NH(CH3)、およびN(CH3)2から選択される1つの置換基で置換されている。
【0056】
一部の実施態様において、R1が置換されたアルキルである場合、前記アルキル上のいずれかの置換基は、ハロゲンおよびCNから選択される。一部の他の実施態様において、R1が置換されたアルキルである場合、前記アルキル上のいずれかの置換基は、ハロゲン、NH(CH3)、およびN(CH3)2から選択される。一部の他の実施態様において、R1が置換されたアルキルである場合、前記アルキル上のいずれかの置換基は、NH(CH3)、およびN(CH3)2から選択される。一部の他の実施態様において、R1が置換されたアルキルである場合、前記アルキル上のいずれかの置換基は、ハロゲン、例えばFおよびClから選択され、特定にはFである。
【0057】
一部の実施態様において、R1がC1~C4アルコキシである場合、前記アルコキシは、より特定には、C1~C3アルコキシである。一部の実施態様において、前記アルコキシは、C1~C2アルコキシである。一部の実施態様において、前記アルコキシは、メトキシである。一部の実施態様において、R1が、置換されていてもよいC1~C4アルコキシである場合、前記アルコキシは、非置換である。一部の他の実施態様において、前記アルコキシは、1~3個のハロゲンで置換されている。一部の実施態様において、前記アルコキシが1~3個のハロゲンで置換されている場合、このようなハロゲンはいずれも、FおよびClから選択され、特定にはFである。
【0058】
一部の実施態様において、R1は、ハロゲン、CN、置換されていてもよいC1~C4アルコキシ、および置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択される。これらの実施態様の一部において、R1は、ハロゲン、置換されていてもよいC1~C3アルコキシ、および置換されていてもよいC1~C3アルキルから選択され、例えば、F、Cl、CN、置換されていてもよいC1~C3アルコキシ、および置換されていてもよいC1~C3アルキルから選択されるか;またはF、Cl、CN、置換されていてもよいCメトキシ、ならびに置換されていてもよいCメチルおよびエチルから選択されるか;またはFおよび置換されていてもよいCメチルから選択される。これらの実施態様の一部において、いずれのアルキルまたはアルコキシ上のいずれかの置換基は、FまたはClであり、特定にはFである。これらの実施態様のさらに一部において、R1は、ハロゲン、非置換のC1~C4アルコキシおよび非置換のC1~C4アルキルから選択され、例えば、F、Cl、CN、C1~C3アルコキシおよびC1~C3アルキルから選択されるか;またはF、Cl、CN、メトキシ、メチルおよびエチルから選択されるか;またはFおよびメチルから選択される。
【0059】
一部の実施態様において、R1は、ハロゲン、および置換されていてもよいC1~C4アルキルから選択される。これらの実施態様の一部において、R1は、ハロゲン、および置換されていてもよいC1~C3アルキルから選択され、例えば、F、Cl、および置換されていてもよいC1~C3アルキルから選択されるか;またはF、Cl、および置換されていてもよいCメチルまたはエチルから選択されるか;またはF、および置換されていてもよいCメチルまたはエチルから選択されるか;またはFおよび置換されていてもよいCメチルから選択される。これらの実施態様の一部において、アルキル上のいずれかの置換基は、FまたはClであり、特定にはFである。これらの実施態様のさらに一部において、R1は、ハロゲン、および非置換のC1~C4アルキルから選択され、例えばF、Cl、およびC1~C3アルキルから選択されるか;またはF、Cl、メチルおよびエチルから選択されるか;またはF、メチルおよびエチルから選択されるか;またはFおよびメチルから選択される。
【0060】
一部の他の実施態様において、R1は、ハロゲン、非置換のC1~C4アルキルおよび非置換のC1~C4アルコキシから選択され、例えば、F、Cl、C1~C3アルキルおよびC1~C3アルコキシから選択されるか;またはF、Cl、メチル、エチル、およびメトキシから選択されるか;またはF、メチル、エチル、およびメトキシから選択されるか;またはF、メチル、およびメトキシから選択されるか;またはメチルおよびメトキシから選択される。
【0061】
一部の実施態様において、R1は、置換されていてもよいC1~C4アルキル、および置換されていてもよいC1~C4アルコキシから選択される。一部の実施態様において、R1は、非置換のC1~C4アルキル、および非置換のC1~C4アルコキシから選択される。さらに他の実施態様において、R1は、置換されていてもよいC1~C4アルキル、および非置換のC1~C4アルコキシから選択される。さらに他の実施態様において、R1は、C1~C4アルキルおよびC1~C4アルコキシから選択され、前記アルコキシおよびアルキルは、1~3個のハロゲン、例えばFおよびClから選択される1~3個のハロゲン、特定には1~3個のFで置換されていてもよい。一部の実施態様において、R1は、メチル、エチル、トリフルオロメチルおよびメトキシから選択される。
【0062】
さらに他の実施態様において、R1は、ハロゲンから選択され、例えばR1は、FまたはClであり、特定にはFである。
【0063】
さらに一部のさらなる実施態様において、R1は、F、CN、メトキシ、メチル、トリフルオロメチル、およびエチルから選択され;例えば、F、メチル、トリフルオロメチル、およびエチルから選択される。
【0064】
式(I)の化合物において、R
2は、3,4-ジメトキシフェニルまたは1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イルであり、すなわちR
2は、式(II)または(III)
【化8】
の部分である。
【0065】
一部の実施態様において、R
2は、3,4-ジメトキシフェニルであり、すなわち式(II)の部分であり、本明細書で提供される化合物は、式(Ic)
【化9】
(式中、X、YおよびR
1は、本明細書において定義される通りである)
によって表すことができる。
【0066】
一部の他の実施態様において、R
2は、1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イルであり、すなわち式(III)の部分であり、本明細書で提供される化合物は、式(Id)
【化10】
(式中、X、YおよびR
1は、本明細書において定義される通りである)
によって表すことができる。
【0067】
式(Ic)の化合物の一部の実施態様において、Xは、Cであり、Yは、Nであり、すなわち本化合物は、式(Ie)
【化11】
(式中、R
1は、本明細書において定義される通りである)
によって表すことができる。
【0068】
式(Ic)の化合物の一部の他の実施態様において、Xは、Nであり、Yは、Cであり、すなわち本化合物は、式(If)
【化12】
(式中、R
1は、本明細書において定義される通りである)
によって表すことができる。
【0069】
式(Id)の化合物の一部の実施態様において、Xは、Cであり、Yは、Nであり、すなわち本化合物は、式(Ig)
【化13】
(式中、R
1は、本明細書において定義される通りである)
によって表すことができる。
【0070】
式(Id)の化合物の一部の他の実施態様において、Xは、Nであり、Yは、Cであり、すなわち本化合物は、式(Ih)
【化14】
(式中、R
1は、本明細書において定義される通りである)
によって表すことができる。
【0071】
別段の規定がない限り、または文脈から明らかでない限り、式(I)の化合物への言及はいずれも、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、および(Ih)のいずれかによって表される化合物への言及としても解釈されるものとする。
【0072】
一部の実施態様において、式(I)の化合物は、より特定には、式(Ie)または(Ih)の化合物であり、すなわち式(I)
【化15】
(式中、
R
1は、本明細書において定義される通りであり;
Xは、Cであり、Yは、Nであり、R
2は、3,4-ジメトキシフェニルであるか;または
Xは、Nであり、Yは、Cであり、R
2は、21,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イルである)
の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0073】
式(I)の化合物はまた、好適な医薬的に許容される塩に変換されていてもよい。化合物の医薬的に許容される塩という用語は、本明細書において定義されるように、医薬的に許容され、親化合物の望ましい薬理活性を有する塩を指す。医薬的に許容される塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と共に形成された酸付加塩;または例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸(hydroxynaphtoic acid)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などの有機酸と共に形成された酸付加塩などが挙げられる。
【0074】
酸付加塩の調製において、好ましくは、治療上許容できる塩を好適に形成するような酸が使用される。このような酸の例は、ヒドロハロゲン酸、硫酸、リン酸、硝酸、脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式のカルボン酸もしくはスルホン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、エンボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ハロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸である。
【0075】
化学構造中にキラル原子が存在する場合はいつでも、別段の規定がない限り、そのキラル原子に関連する全ての立体異性体が構造に包含されることが意図される。カーン-インゴルド-プレローグのRS表記法を使用すると、いずれの非対称原子も(R)-または(S)-立体配置で存在する可能性があり、本化合物は、その立体異性体の混合物、例えばラセミ混合物として存在していてもよいし、または1種の立体異性体のみとして存在していてもよく、どちらも本発明の範囲内である。
【0076】
本発明は、式(I)の化合物、もしくは個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物またはその医薬的に許容される塩を、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤、例えば担体、および任意選択で他の治療的および/または予防的成分と共に含む医薬組成物を含む。
【0077】
本発明は、少なくとも1つの式(I)の化合物、もしくは個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物またはその医薬的に許容される塩を、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤、例えば担体、および任意選択で他の治療的および/または予防的成分と共に含む医薬組成物を含む。
【0078】
本発明による医薬組成物は、哺乳動物(特にヒト)への、局所(topical)(局所(local))または全身投与、例えば経腸投与、例えば直腸または経口投与、または非経口投与のためのものであってもよく、活性成分として、治療有効量の本発明による化合物またはその医薬的に許容される塩を、医薬的に許容される賦形剤、例えば医薬的に許容される担体と共に含む。治療有効量の活性成分は、本明細書の上記で定義される通りであり、例えば、哺乳動物の種、体重、年齢、個体の状態、個体の薬物動態学的なデータ、処置しようとする疾患および投与様式に依存する。
【0079】
経腸投与、例えば経口投与の場合、本発明の化合物は、様々な剤形の形態で製剤化することができる。医薬組成物および剤形は、活性成分として、本発明の1つもしくは複数の化合物またはその医薬的に許容される塩を含んでいてもよい。医薬的に許容される担体は、固体または液体のいずれであってもよい。固形製剤としては、粉剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性の顆粒剤が挙げられる。固形担体は、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても作用し得る1種またはそれより多くの物質であってもよい。粉剤において、担体は、一般的に、微粉化した活性成分との混合物である微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、一般的に、必要な結合能力を好適な比率で有する担体と混合され、望ましい形状およびサイズに圧縮される。好適な担体としては、これらに限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点のワックス、カカオバターなどが挙げられる。活性化合物の製剤は、担体として封入材料を含んでいてもよく、担体有りまたは無しで、活性成分が、それに結合している担体で取り囲まれているカプセルが提供される。
【0080】
経口投与に好適な他の形態としては、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水溶液剤、水性懸濁剤、または固形製剤などの液状製剤が挙げられ、これらは、使用前に短時間で液状製剤に変換されるように意図されている。乳剤は、溶液中で、例えば、水性プロピレングリコール溶液中で調製してもよいし、または乳化剤、例えばレシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアラビアゴム(acacia)などを含有していてもよい。水溶液剤は、水中に活性成分を溶解させ、好適な着色剤、矯味矯臭薬剤、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。水性懸濁剤は、粘性物質、例えば、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁化剤を含む水中に微粉化した活性成分を分散させることによって調製することができる。固形製剤としては、液剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられ、これらは、活性成分に加えて、着色剤、矯味矯臭薬剤、安定剤、緩衝液、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有していてもよい。
【0081】
直腸内投与のための例示的な組成物としては、坐剤が挙げられ、これは、例えば、好適な非刺激性の賦形剤、例えばカカオバター、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコールを含有していてもよく、このような賦形剤は、常温で固体であるが、直腸腔中で液化および/または溶解して薬物を放出する。
【0082】
本発明の化合物はまた、非経口的に投与されてもよく、例えば、吸入、注射または輸注によって、例えば、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、大脳内、脳室内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内、頭蓋内、皮内および皮下への注射または輸注によって投与されてもよい。
【0083】
したがって、非経口投与の場合、本発明の医薬組成物は、滅菌された注射可能な、または不溶解性の製剤、例えば、滅菌された水性または油性懸濁液などの形態であってもよい。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween 80)、および懸濁化剤を使用して、当業界において公知の技術により製剤化することができる。滅菌された注射可能な、または不溶解性の製剤はまた、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の、滅菌された注射可能な、または不溶解性の溶液もしくは懸濁液であってもよい。例えば、医薬組成物は、1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。本発明の組成物中の採用可能な許容できる媒体および溶媒の他の例としては、これらに限定されないが、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、滅菌された不揮発性油が、慣習的に溶媒または懸濁媒として採用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドなどのあらゆる刺激の少ない不揮発性油が採用され得る。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、特にそのポリオキシエチル化されたバージョンで、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の医薬的に許容される油であることから、注射可能物質の調製において有用である。これらの油の溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコールである希釈剤または分散剤を含有していてもよい。
【0084】
非経口用途のための溶液はまた、好適な安定化剤、必要に応じて、緩衝物質を含有していてもよい。好適な安定化剤としては、抗酸化剤、例えば重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸、単独または組合せのいずれかの、クエン酸およびその塩ならびにナトリウムEDTAが挙げられる。非経口溶液はまた、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベン、およびクロロブタノール(cholorobutanol)を含有していてもよい。
【0085】
吸入または経鼻投与の場合、好適な医薬製剤は、粒子、エアロゾル、粉末、ミストまたは液滴、例えば、直径約10μmまたはそれ未満の平均サイズを有するもののような医薬製剤である。例えば、吸入のための組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の好適な保存剤、生物学的利用率を強化するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当業界において公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を採用して、生理食塩水中の溶液として調製してもよい。
【0086】
一部の実施態様において、本発明の製剤は、リポソーム製剤である。リポソーム製剤は、医薬分野において周知であり、例えばRemington、Essentials of Pharmaceutics、Linda Felton編(Pharmaceutical Press 2012)、456~7頁に、さらに多数の他の出版物に記載されている。例えば好適なリポソーム製剤、好適な脂質、調製方法などの選択に関する情報は、当業者に容易に入手可能である。リポソーム形成のための脂質の例は、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、および脂肪酸である。リポソーム形成に好適な脂質は、例えばアヴァンティポーラリピッド社(Avanti(登録商標)Polar Lipids, Inc.)から購入してもよい。
【0087】
本発明の医薬組成物はまた、皮膚または粘膜に局所投与することもできる。局所適用の場合、医薬組成物は、経粘膜送達のための、例えばローション剤、ゲル剤、ペースト剤、チンキ剤、経皮パッチ、またはゲル剤であり得る。
【0088】
組成物は、担体中に懸濁または溶解させた活性成分を含有する好適な軟膏として製剤化されてもよい。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、これらに限定されないが、鉱油、流動石油、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられる。
【0089】
代替として、医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解させた活性化合物を含有する好適なローションまたはクリームとして製剤化されてもよい。好適な担体としては、これらに限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール(cetaryl alcohol)、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0090】
本発明の医薬組成物はまた、肛門坐薬製剤によって、または好適な浣腸製剤の形態で、下部消化管に局所適用することもできる。
【0091】
好適な医薬賦形剤、例えば担体、および医薬剤形の調製方法は、製剤学分野における標準的な参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Companyに記載されている。
【0092】
医薬組成物は、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤と共に、およそ1%~およそ95%、好ましくはおよそ20%~およそ90%の式(I)の化合物を含んでいてもよい。一般的に、本発明の化合物は、類似の有効性を付与する薬剤にとって容認された投与様式のいずれかによって、治療有効量で投与されると予想される。好適な1日投薬量は、典型的には、例えば処置しようとする疾患の重症度、患者の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効力、投与の経路および形態、ならびに投与が指示される適応症などの多数の要因に応じて、1~1000mg、例えば1日1~500mg、または1日1~50mgの範囲である。このような疾患を処置する分野の当業者は、余計な実験を行うことなく、個人的な知識と本出願の開示に頼って、所与の疾患のための本発明の化合物の治療有効量の確認が可能であると予想される。本発明の化合物は、経腸または非経口投与に好適なものなどの医薬製剤として投与されてもよい。好ましい投与方式は、一般的に、苦しみの程度に従って調整することができる便利な1日投薬量レジメンを使用する経口投与である。
【0093】
本発明の化合物は、哺乳動物においてRNAウイルス感染によって引き起こされる疾患、例えば、非エンベロープ一本鎖(+)RNAウイルス感染、特定にはピコルナウイルスによって引き起こされる疾患の処置に有用であると予期される。
【0094】
ピコルナウイルスは、例えば、パレコウイルス(例えばユンガン(Ljungan)またはパレコ)、カルジオウイルス(例えばEMCVまたはタイラーウイルス)、エンテロウイルス(例えばEV、コクサッキー、ポリオ、ライノ)またはヘパトウイルスであり得る。獣医学的用途の場合、ピコルナウイルスは、例えばアフトウイルスまたはテッショウウイルスであり得る。
【0095】
ウイルス感染、例えばピコルナウイルスによるウイルス感染に関連する、それによって引き起こされる、またはそれ以外の方式でそれに関連するとみなされる疾患は、例えば、多発性硬化症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン病、灰白髄炎、脳炎、髄膜炎、敗血症、がん、麻痺、心筋炎、糖尿病、風邪、手足口病、ヘルパンギーナ、胸膜痛、下痢、皮膚粘膜の病変、呼吸器疾患、結膜炎、筋炎、および慢性疲労症候群などの神経変性疾患である。
【0096】
一般的に以下の非限定的な例に記載される方法、ならびに文献、例えばPCT/EP2018/058522(WO2018/185120A1として公開)、およびPCT/EP2015/051177(WO2015/110491A2として公開)に記載される一般的な方法に従うことによって、本明細書において定義される式(I)の化合物を合成し、同定することは、当業者の知識十分に当業者の知識の範囲内であるとみなされ、これらの出願の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0097】
一般的な手順
反応は、別段の規定がない限り、アルゴンまたは窒素の正圧下で、火炎乾燥した密封チューブまたはオーブンで乾燥したガラス製品中で実行された。空気や水分の影響を受けやすい液体および溶液は、シリンジを介して移動させた。テトラヒドロフラン(THF)は、ナトリウム/ベンゾフェノンケチルから蒸留させて得た。ジクロロメタン(CH2Cl2)は、水素化カルシウムから蒸留させて得た。全ての他の化学物質は、商業的な販売元から得て、これらは、別段の既定がない限りそれ以上精製せずに使用した。分子篩は、350℃で活性化され、使用直前に粉砕し、次いで真空中で火炎乾燥した。反応は、0.25mmのE.メルク(E. Merck)のプレコーティングされたシリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした。有機溶液は、50℃未満で、ロータリーエバポレーションで濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、60~120、230~400メッシュのシリカゲルおよび中性アルミナを採用して実行した。収量は、別段の規定がない限り、クロマトグラフィー的および分光学的に純粋な化合物についての収量である。
【0098】
機器
1Hおよび13Cスペクトルを、ブルカー(Bruker)AVANCE III HD 400MHz分光計またはブルカーAVANCE II 300MHz分光計のいずれかで記録した。化学シフトは、テトラメチルシランから低磁場側の百万分率(δスケール)で示され、NMR溶媒中の残留した共鳴を参照としたものである(CHCl3:1H NMRで、δ7.26、13C NMRで、δ77.16)。LC-MSを、ケミステーション(chemstation)およびブルカーのダルトニクス(daltonics)ソフトウェアを備えたアジレント(Agilent)XCTイオントラップで実行した。
【0099】
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-8-ヨード-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジンの合成
合成中間3-(3,4-ジメトキシフェニル)-8-ヨード-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジンを、以下のように多段階プロセスで合成した:
工程1:2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン
エタノール(500mL)中の6-メチルピリダジン-3-イルアミン(50g、455.3mmol)の撹拌した溶液に、クロロアセトン(58ml、683mmol)を添加し、溶液を85℃で10時間で加熱した。完了したら、反応物中のエタノールを蒸留して除いた。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、10%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(36g、53.4%)を暗褐色の固体として精製した。
【0100】
工程2:3-ブロモ-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン
アセトニトリル(360mL)中の2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(36g、244.5mmol)の撹拌した溶液に、N-ブロモスクシンイミド(NBS)(52.2g、293.4mmol)を添加し、周囲温度で1時間撹拌した。完了したら、反応物中のアセトニトリルを蒸留して除いた。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、15%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である3-ブロモ-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(18g、32.5%)を固体として精製した。
【0101】
工程3:3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン
100mlの丸底フラスコに、3-ブロモ-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(5g、17.6mmol)、ボロン酸エステル(4.4g、19.4mmol)、炭酸カリウム(7.5g、54.3mmol)およびジオキサン:水(45ml:5ml)を入れた。この溶液をN2で10分脱気し、次いで[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)・ジクロロメタン複合体(Pd(dppf)Cl2・DCM複合体)(1.8g、2.2mmol)を添加した。反応物を100℃で16時間で加熱した。完了したら、反応物を酢酸エチルで希釈し、セライト層に通過させてろ過した。ろ液を、酢酸エチルと水との間で分配した。酢酸エチル層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、30%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(4.2g、67.7%)をオフホワイト色の固体として精製した。
【0102】
工程4:3-(3,4-ジメトキシフェニル)-8-ヨード-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン
-78℃でのTHF中の2Mのリチウムジイソプロピルアミド(LDA)(0.7ml、1.4mmol)の撹拌した溶液に、THF(5mL)中に溶解させた3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(0.2g、0.705mmol)の溶液を一滴ずつ添加した。10分後、THF(3mL)中に溶解させたヨウ素(0.178g、0.705mmol)を添加し、反応物を周囲温度で1時間撹拌した。完了したら、反応物を飽和NH4Cl溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を、Na2SO4下で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、30%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である3-(3,4-ジメトキシフェニル)-8-ヨード-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(30mg、10.7%)を薄黄色の固体として精製した。
【0103】
実施例1
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,6-ジメチル-N-((2-メチルピリジン-4-イル)メチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン
【化16】
トルエン(2mL)中の3-(3,4-ジメトキシフェニル)-8-ヨード-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(0.1g、0.240mmol)およびアミン(0.06g、0.312mmol)の撹拌した溶液に、炭酸セシウム(0.156g、0.48mmol)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP(7mg、0.012mmol)およびPd(OAc)
2(2mg、0.012mmol)を添加した。反応物を105℃で16時間撹拌した。完了したら、反応物を10%のMeOH-CH
2Cl
2で希釈し、セライト層に通過させてろ過した。ろ液を濃縮し、得られた固体を、アセトニトリルで洗浄して、実施例2(0.09g、91.83%)を薄茶色の固体として得た。
【0104】
実施例2
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-((2-フルオロピリジン-4-イル)メチル)-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-8-アミン
【化17】
トルエン(3mL)中の3-(3,4-ジメトキシフェニル)-8-ヨード-2,6-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン(0.15g、0.360mmol)およびアミン(0.093g、0.46mmol)の撹拌した溶液に、炭酸セシウム(0.23g、0.72mmol)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)(11mg、0.018mmol)およびPd(OAc)
2(4mg、0.018mmol)を添加した。反応物を105℃で16時間撹拌した。完了したら、反応物を10%のMeOH-CH
2Cl
2で希釈し、セライト層に通過させてろ過した。ろ液を濃縮し、得られた固体を、アセトニトリルで洗浄して、実施例1(0.120g、80%)を薄茶色の固体として得た。
【0105】
7-クロロ-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジンの合成
合成中間体の7-クロロ-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジンを、以下のように多段階プロセスで合成した:
工程1:2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-オール
丸底フラスコに、3-アミノ-5-メチルピラゾール(100g、1.02mol)、エチルアセトアセテート(161mL、1.23mol)、酢酸(300mL)および1,4-ジオキサン(1000mL)を入れた。反応物を105℃で16時間還流した。反応が完了したらオフホワイト色の固体が得られ、これを吸引ろ過した。固体を冷たいヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させて、2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-オール(85g、49%)をオフホワイト色の固体として得た。
【0106】
工程2:7-クロロ-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン
アセトニトリル(1200mL)中の2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-オール(120g、0.73mol)の溶液に、POCl3(103ml、1.1mol)を一滴ずつ添加した。添加が完了したら、反応物を80℃で12時間で加熱した。完了したら、反応物中のPOCl3を蒸留して除いた。未精製の生成物を水で希釈し、飽和NaHCO3溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって、20%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、7-クロロ-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジンをオフホワイト色の固体として精製した(108g、80.8%)。
【0107】
工程3:7-クロロ-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン
アセトニトリル(1200mL)中の7-クロロ-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(120g、0.66mol)の-10℃で氷冷した溶液に、N-ヨードスクシンイミド(163.5g、0.726mol)を段階的に添加した。反応物を、この温度で1時間撹拌した。完了したら、固体を観察した。反応物を氷水でクエンチし、吸引ろ過した。得られた固体を、ヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させて、7-クロロ-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジンを白色の固体として得た(182.8g、89.9%)。
【0108】
1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾールの合成
ボロン酸エステル1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾールを、以下のように多段階プロセスで合成した:
工程1:5-ブロモ-1,3-ジメチル-1H-インダゾール
ピリジン(500mL)中の1-(5-ブロモ-2-フルオロフェニル)エタノン(50g、230mmol)およびN-メチルヒドラジン(42.4mL、805mmol)の撹拌した溶液を、90℃で10時間で加熱した。完了したら、反応物中のピリジンを蒸留して除いた。未精製の生成物を、水と酢酸エチルとの間で分配した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、2%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である5-ブロモ-1,3-ジメチル-1H-インダゾール(20.23g、41.8%)を薄茶色の粘性の化合物として精製した。
【0109】
工程2:1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール
1,4-ジオキサン(260mL)中の5-ブロモ-1,3-ジメチル-1H-インダゾール(26g、115mmol)およびビスピナコラートジボロン(32.3g、127mmol)の溶液に、KOAc(34g、345mmol)を添加した。反応物をN2で10分脱気し、次いでPd(PPh3)4(6.6g、5.57mmol)を添加し、95℃で16時間加熱した。添加が完了したら、反応物を80℃で12時間で加熱した。完了したら、反応物をセライトに通過させてろ過し、ろ液を濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、5%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール(18g、52.1%)をオフホワイト色の固体化合物として精製した。
【0110】
実施例3
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
【化18】
工程1:N-[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル]-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
エタノール(5.5mL)中の7-クロロ-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(1.1g、3.57mmol)および1-(2-フルオロピリジン-4-イル)メタンアミン(0.586g、4.6mmol)の撹拌した溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(5.5mL、5倍量)を添加し、80℃で6時間撹拌した。完了したら、反応物中のエタノールを蒸留して除いた。未精製の生成物を、水と酢酸エチルとの間で分配した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーにより、必要な化合物を35%の酢酸エチル-ヘキサンで溶出させた。濃縮されたら、N-[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル]-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(0.9g、63.82%)を薄黄色の化合物として得た。
【0111】
工程2:tert-ブチル[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル](3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)カルバメート
ジクロロメタン(DCM)(5mL)中のN-[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル]-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(0.5g、1.26mmol)の撹拌した溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.153g、1.26mmol)を0℃で添加した。次いでBoc無水物(二炭酸ジ-tert-ブチル)(0.33ml、1.51mmol)をこの温度で一滴ずつ添加し、周囲温度で2時間撹拌した。完了したら、反応物を水で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、10%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物であるtert-ブチル[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル](3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)カルバメート(0.51g、82.2%)をオフホワイト色の固体として精製した。
【0112】
工程3:[3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル]-(2-フルオロ-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル
25mlの丸底フラスコに、tert-ブチル[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル](3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)カルバメート(0.45g、0.904mmol)、1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール(0.322g、1.17mmol)、炭酸カリウム(0.311g、2.26mmol)およびジオキサン:水(4.5mL:0.5mL)を入れた。この溶液をN2で10分脱気し、次いでPd(dppf)Cl2・DCM複合体(0.110g、0.135mmol)を添加した。反応物を100℃で16時間で加熱した。完了したら、反応物を酢酸エチルで希釈し、セライト層に通過させてろ過した。ろ液を、酢酸エチルと水との間で分配した。酢酸エチル層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、30%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である[3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル]-(2-フルオロ-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.2g、42.9%)をオフホワイト色の固体として精製した。
【0113】
工程4:3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
ジクロロメタン(2mL)中の[3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル]-(2-フルオロ-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.2g、0.388mmol)の氷冷した溶液に、TFA(2mL)を一滴ずつ添加した。添加が完了した後、反応物の塊を周囲温度で6時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒と過量のTFAを蒸留して除いた。未精製の生成物を1NのNaOH溶液で塩基性にし、10%のMeOH-DCMで抽出した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、70%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である実施例3(0.06g、37.5%)をオフホワイト色の固体として精製した。
【0114】
実施例4
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-メチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
【化19】
工程1:3-ヨード-2,5-ジメチル-N-[(2-メチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
エタノール(5.5ml)中の7-クロロ-3-ヨード-2,5-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(1.1g、3.57mmol)および1-(2-メチルピリジン-4-イル)メタンアミン(0.586g、4.6mmol)の撹拌した溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(5.5mL、5倍量)を添加し、80℃で6時間撹拌した。完了したら、反応物中のエタノールを蒸留して除いた。未精製の生成物を、水と酢酸エチルとの間で分配した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーにより、35%酢酸エチル-ヘキサンで必要な化合物を溶出させた。濃縮されたら、3-ヨード-2,5-ジメチル-N-[(2-メチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(0.9g、40.1%)を薄黄色の化合物として得た。
【0115】
工程2:(3-ヨード-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)-(2-メチル-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル
ジクロロメタン(5mL)中の3-ヨード-2,5-ジメチル-N-[(2-メチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(0.5g、1.26mmol)の撹拌した溶液に、DMAP(0.153g、1.26mmol)を0℃で添加した。次いでBoc無水物(0.33ml、1.51mmol)をこの温度で一滴ずつ添加し、周囲温度で2時間撹拌した。完了したら、反応物を水で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、10%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である(3-ヨード-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)-(2-メチル-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.51g、82.2%)をオフホワイト色の固体として精製した。
【0116】
工程3:[3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル]-(2-メチル-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル
25mlの丸底フラスコに、(3-ヨード-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル)-(2-メチル-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.45g、0.904mmol)、1,3-ジメチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-インダゾール(0.322g、1.17mmol)、炭酸カリウム(0.311g、2.26mmol)およびジオキサン:水(4.5mL:0.5mL)を入れた。この溶液をN2で10分脱気し、次いでPd(dppf)Cl2・DCM複合体(0.110g、0.135mmol)を添加した。反応物を100℃で16時間で加熱した。完了したら、反応物を酢酸エチルで希釈し、セライト層に通過させてろ過した。ろ液を、酢酸エチルと水との間で分配した。酢酸エチル層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、30%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である[3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル]-(2-メチル-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.2g、43.4%)をオフホワイト色の固体として精製した。
【0117】
工程4:3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-メチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
ジクロロメタン(2mL)中の[3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イル]-(2-メチル-ピリジン-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(0.2g、0.388mmol)の氷冷した溶液に、トリフルオロ酢酸(TFA)(2mL)を一滴ずつ添加した。添加が完了した後、反応物の塊を周囲温度で6時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒と過量のTFAを蒸留して除いた。未精製の生成物を1NのNaOH溶液で塩基性にし、10%のMeOH-DCMで抽出した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた未精製の生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって、70%酢酸エチル-ヘキサンで溶出させることにより、必要な化合物である実施例4(0.06g、37.7%)をオフホワイト色の固体として精製した。
【0118】
実施例5~8を、実施例3および4について説明したのと同じ一般的な方法を使用して合成した。
【0119】
実施例5
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-エチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
【化20】
実施例6
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-メトキシピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
【化21】
実施例7
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-シアノピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
【化22】
実施例8
3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-トリフルオロメチルピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン
【化23】
表1に、実施例1~8の化合物の分析データを示す。
【0120】
【0121】
実施例9
リポソーム製剤
50mgの3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(2-フルオロピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(実施例3)および500mgのダイズレシチンをビーカーに移した。クロロホルム(約10ml)を添加し、成分が完全に溶解するまで混合物を撹拌下に維持した。次いで溶媒をロータリーエバポレーターによって除去して、薄い脂質の薄層を得た。脂質薄層に水(10ml)を添加し、室温で薄層を元に戻した。この製剤を徹底的に混合し、音波処理して、微細な分散液を形成した。この製剤は、pH6.42を有していた。
【0122】
生物学的アッセイ
インビトロでの哺乳類細胞培養におけるアッセイ
ウイルスが哺乳類細胞培養においてウイルス細胞変性効果(CPE)を起こさないようにする化合物の能力に基づいて、本発明の化合物の抗ウイルス活性を評価した。インキュベーション時間、細胞株、細胞密度およびウイルスタイターはアッセイ間で異なっていたが、一般的な手順は以下の通りとした:96ウェルの平底プレートで細胞を、好適な培地中でおよそ90%のコンフルエンス(細胞20000~90000個/ウェル)に培養した。ウイルスのタイターを、細胞における組織培養感染用量(TCID50)の標準的な方法によって決定した。簡単に言えば、細胞を50μlのウイルス懸濁液で感染させ、培地で10倍に希釈した。プレートを、5%のCO2と共に、37℃で3~7日間インキュベートし、細胞をCPEについて毎日試験した。CPEを決定した後、プレートをグラム・クリスタルバイオレット溶液で染色し、光学密度を540nmで読んだ。アッセイでは、>95%のCPEをもたらした最大のウイルス希釈物を使用した。最終濃度2.5~20μMの物質およびウイルスを細胞に添加し、使用されたウイルスおよび細胞株に応じて3~7日間インキュベートした。対照として、非感染細胞およびウイルスで感染させた細胞(物質なし)を各プレート上に含めた。感染させた対照におけるCPEを決定した後、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、光学密度を540nmで読んだ。感染させなかった対照および感染させた対照との比較によって、阻害能力を%として計算した。
【0123】
本発明の実施例1~4の化合物を、上述したプロトコールを使用して試験した。加えて、ピリジン環上の2位における置換基がない化合物、すなわち、3-(3,4-ジメトキシフェニル)-2,5-ジメチル-N-(ピリジン-4-イルメチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(化合物「X」)および3-(1,3-ジメチル-1H-インダゾール-5-イル)-2,5-ジメチル-N-[(ピリジン-4-イル)メチル]ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(化合物「Y」)を使用して、同じ試験を実行した:
【化24】
【0124】
表2および3は、それぞれ10nMおよび100nMでの、異なるピコルナウイルスに対する試験した化合物の阻害能力を示す。EV6:エンテロウイルス株6;EV30:エンテロウイルス株30;EV-D68:エンテロウイルスD68;EV71:エンテロウイルス株71;Cox B1:コクサッキーBウイルス株1;Cox B2:コクサッキーBウイルス株2;Cox B3:コクサッキーBウイルス株3;Cox B5:コクサッキーBウイルス株5;ポリオ1:ポリオウイルス株1。
【0125】
【0126】
プローブ基質方法によるヒト肝ミクロソームにおけるインビトロでのCYP3A4酵素阻害研究
インビトロでのCYP3A4酵素阻害アッセイを、ヒト肝ミクロソームを0.5mg/mLの濃度で使用して実行した。ケトコナゾールを、参照阻害剤として使用し、ミダゾラムを、CYP3A4酵素のための選択的なプローブ基質として使用した。試験/対照物の連続希釈物をリン酸カリウム緩衝液(50mM、pH7.40)で調製して、1:4の希釈パターンでそれぞれ8種の濃度を得た。アセトニトリル/DMSOのパーセンテージを、それぞれ2.5×連続希釈した対照/試験物品の溶液中の2.5%/0.25%に維持した。アセトニトリル/DMSOの最終的なパーセンテージは、それぞれ1%/0.1%であった。中間溶液、例えばヒト肝臓ミクロソーム溶液の10×標準溶液(5mg/mL)、緩衝液中の10×濃度の参照プローブ基質、5×濃度の補因子(5.0mMのNADP+、25.0mMのG-6-P、3.0IU/mLのG-6-PDHおよび10.0mMのMgCl2)を、リン酸カリウム緩衝液で調製した。反応混合物中の肝ミクロソームの最終濃度は、0.5mg/mLであり、補因子は、1.0mMのNADP+、5.0mMのG-6-P、0.6IU/mLのG-6-PDHおよび2.0mMのMgCl2であった。ミダゾラムを5μMの試験濃度で試験した。40μLの2.5×連続希釈試験/対照物品溶液および10μLの5×肝臓ミクロソーム溶液を、96ウェルプレートに添加し、サーモミキサーを使用して、振盪条件下(400rpm)で、37℃で10分インキュベートした。プレインキュベーション後、20μLのリン酸カリウム緩衝液、10μLのそれぞれのプローブ基質標準溶液および20μLの補因子ミックスを添加した。表4に、IC50としてμMで示された結果を示す。
【0127】
【0128】
薬物動態学的特性
製剤の調製
10mgの化合物の重さを量り、目盛り付きのチューブに移した。次いで500μLのDMA(5%v/v)を添加し、徹底的にボルテックス混合し、試験物品が完全に溶解するまで音波処理した。次いで5mLのPEG200(50%v/v)を添加し、徹底的にボルテックス混合した。その後、滅菌注射用水(SWFI)を少しずつ添加し、徹底的にボルテックス混合した。最後に、体積をSWFI(45%v/v)で10mLにし、1mg/mLの最終的な製剤濃度を有する透明な溶液を得た。製剤のpHは6.51であることが見出された。製剤は、動物への投与前に新たに調製した。
【0129】
用量投与
8~10週齢の成体の健康な雄スプラギー・ダーレー(Sprague Dawley)ラットを、最低限でも3日の順化後に実験に使用した。絶食動物に、推奨された媒体(5%DMA+50%PEG200+45%SWFI)中の試験化合物を、経口経路によって、10mg/kg体重の用量、および10mL/kg体重の用量体積で投与した。
【0130】
投与後の異なるタイムポイントで、軽度のイソフルラン麻酔下で、抗凝血剤(K2EDTA-2mg/mL血液)を含有する予めラベルしたチューブに血液試料を採取した。採取された血液試料を、4000rpm、4℃で10分間遠心分離し、血漿を分離し、分析まで-80℃で貯蔵した。表5に結果を示す。
【0131】
【0132】
代謝的安定性
代謝的安定性アッセイを、ヒト/ラット肝ミクロソームを使用して行った。アッセイの最終的な組成は、DMSOの最終濃度が0.1%になるようにDMSOストックから調製された5μMの試験物品および対照物品(ジクロフェナクまたはイミプラミン)、0.25mg/mLのミクロソームタンパク質および補因子(5.0mMのG-6-P、0.06U/mLのG-6-PDH、2.0mMのMgCl2、1.0mMのNADP+)を含んでいた。試験物品/対照物品を、補因子有りおよび補因子無して、ヒト/ラット肝ミクロソームと共にインキュベートした。特定の期間で反応混合物(100μL)を除去し、停止溶液の添加によって反応を止めた。内部標準の存在下でサンプルを抽出し、LC-MS/MSを使用して分析した。0分の時点でのピーク領域の比率に対する、特定のインキュベーション期間後に残存した試験/対照物品のパーセントを計算した。
【0133】
簡単なプロトコール
4×標準濃度の試験物品(20μM)/対照物品(20μM)を、5mMのDMSOストックを使用して、50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)で調製した。
【0134】
10×標準濃度のヒト/ラット肝臓ミクロソーム溶液(2.5mg/mL)を、ヒト/ラット肝ミクロソームのストック溶液(20mg/mLのタンパク質濃度)を使用して、50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.40)で調製した。100μLの反応混合物(各タイムポイントにつき)を、45μLのリン酸カリウム緩衝液、10μLの希釈ヒト/ラット肝臓ミクロソーム溶液(2.5mg/mL)、25μLの試験/対照物品(20μM)および20μLの補因子/緩衝液を添加することによってインキュベートした。反応混合物をさらに、37℃で特定されたインキュベーションタイムポイントにわたりインキュベートした(補因子有り:0、15、30、60および120分;補因子無し:0および120分)。特定されたインキュベーションタイムポイントにおける試験物品および対照物品の100μLのインキュベーションサンプルを、サンプル抽出ごとにそれぞれのチューブに移した。
【0135】
タンパク質沈殿抽出方法
試験および対照物品試料を、タンパク質沈殿方法によって抽出した。各タイムポイントにおける100μLのインキュベーションサンプルを、200μLの氷冷したアセトニトリルおよび50μLのハロペリドール溶液(0.5μg/mL)を含有するチューブに添加した。次いでチューブを徹底的にボルテックス混合し、10000rpmで、4℃で10分間遠心分離した。200μLのサンプルの透明な上清をLC-MS/MS分析に供した。表6に、60分のインキュベーション後における残存率%として表した結果を示す。
【0136】
【0137】
ヒトおよびラット血漿タンパク質結合
手法
分子量カットオフが8,000ダルトンの透析膜を含有する迅速平衡透析(RED)デバイスを使用して、血漿タンパク質結合研究を実行した。
【0138】
各透析インサートは、2つのチャンバーを含有していた。赤いチャンバーは、血漿のためであり、一方で白いチャンバーは緩衝液のためであった。試験物品および対照物品(ワルファリンおよびプロプラノロール)を、10mMのDMSOストック(最終的なDMSO濃度は0.1%であった)を使用して、ヒト/ラット血漿(pHは7.40に調整された)中の10μMの必要な試験濃度で調製した。300μLの血漿サンプルを、サンプルチャンバーに添加した。500μLの緩衝液を、緩衝液チャンバーに添加した。接着性フィルムでREDデバイスを密封した後、インキュベーションを、37℃で、300rpmで4時間振盪しながら行った。インキュベーション後、50μLのアリコートを各ウェル(血漿および緩衝液側)から取り出し、等しい体積の反対側の媒質(matrix)で希釈し、媒質の作用を相殺し、サンプル抽出に供した。
【0139】
タンパク質沈殿抽出方法
全てのサンプルを、200μLの氷冷アセトニトリルおよび50μLの内部標準(0.1μg/mLでのハロペリドール)溶液を添加することによるタンパク質沈殿方法によって抽出した。チューブを徹底的にボルテックス混合し、10000rpmで、4℃で10分間遠心分離した。200μLのサンプルの透明な上清をLC-MS/MS分析に供した。表7に、%血漿タンパク質結合として表した結果を示す。
【0140】