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特許7397074医療的介入のためのロボットアームの自動的な位置合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】医療的介入のためのロボットアームの自動的な位置合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20231205BHJP
【FI】
A61B34/30
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021518885
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 FR2019053012
(87)【国際公開番号】W WO2020120901
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】1872735
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】バネガス,フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】オリーブ,セバスティアン
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527327(JP,A)
【文献】特開2004-089421(JP,A)
【文献】特表2020-509873(JP,A)
【文献】特表2016-523614(JP,A)
【文献】特開2004-261579(JP,A)
【文献】特表2008-541795(JP,A)
【文献】特表2009-519086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00-34/37
A61B 90/00-90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(30)の対象の解剖学的場所(31)に対する医療手術において施術者を支援するための医療ロボット(10)の多関節アーム(14)を位置決めする方法(100)であって、前記医療ロボット(10)は、前記多関節アーム(14)が連結されるベース(11)と、前記多関節アーム(14)が、判定された位置において構成されることを可能にする制御ユニット(12)とを含み、前記医療ロボット(10)は、電磁界生成器(23)と、2つの電磁センサ(21、22)とを含む電磁ナビゲーションシステムによって支援され、生成された電磁界は、前記2つの電磁センサ(21、22)の位置が前記電磁ナビゲーションシステムによって判定され得、且つ前記医療ロボット(10)に伝達され得る計測ゾーン(25)を形成し、第1電磁センサ(21)は、前記対象の解剖学的場所(31)において、前記方法(100)前のステップで位置決めされ、第2電磁センサ(22)は、前記多関節アーム(14)上に位置決めされる、方法(100)において、
前記2つの電磁センサ(21、22)が前記計測ゾーン(25)内に配置されるとき、前記電磁界生成器(23)の位置及び前記2つの電磁センサ(21、22)の前記位置から、前記計測ゾーン(25)のいわゆる「低減された影響の領域」(26)を判定すること(101)と、
前記計測ゾーン(25)内に配置される前記多関節アーム(14)の任意の金属部分が、前記低減された影響の領域(26)内に位置するように前記多関節アーム(14)を構成すること(102)と、を含み、前記患者に対する医療行為の実行のステップを含まないことを特徴とする方法(100)。
【請求項2】
前記電磁界生成器(23)は、プレートの形態をとり、及び前記低減された影響の領域(26)は、前記プレートに平行であり、且つ前記プレートに直交する方向において前記プレートから最大距離にある前記2つの電磁センサ(21、22)を通過する平面(52)に対して前記プレートの反対側に位置する、前記計測ゾーン(25)の領域であるものとして判定される、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記低減された影響の領域(26)は、前記電磁界生成器(23)の中心(24)を通過し、且つ前記電磁界生成器(23)の前記中心(24)から最大距離にある前記2つの電磁センサ(21、22)を通過する方向(52)に直交する平面(53)に対して前記電磁界生成器(23)の反対側に位置する、前記計測ゾーン(25)の領域であるものとして判定される、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記多関節アーム(14)は、前記医療ロボット(10)の前記制御ユニット(12)内に保存される手術計画に従って構成され、前記手術計画は、前記患者(30)の前記対象の解剖学的場所(31)に対して実行される少なくとも1つのアクションに関する情報を含み、前記多関節アームの前記構成は、前記施術者が、前記多関節アーム(14)を位置決めする前記方法(100)に続いて前記アクションを実行することを可能にするために、前記ナビゲーションシステムによって判定された前記2つの電磁センサ(21、22)の前記位置から判定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記手術計画のアクションが実行されることを可能にする前記多関節アーム(14)の構成は、
前記アクションに関する情報を含む手術前画像、
前記対象の解剖学的場所(31)に位置する前記第1電磁センサ(21)の前記位置に対する、前記患者(30)の前記対象の解剖学的場所(31)の位置に関する情報を含む手術中画像、
前記患者(30)の前記対象の解剖学的場所に対して実行される前記計画されたアクションに関する前記情報と、前記第1電磁センサ(21)の前記位置に対する、前記対象の解剖学的場所(31)の前記位置に関する前記情報との両方を含む画像を取得するための、前記手術前画像との前記手術中画像の位置合わせから判定される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記第1電磁センサ(21)は、前記手術中画像内で可視である要素を含み、及び前記要素の形状は、既知である、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記患者(30)の前記対象の解剖学的場所(31)及び前記第1電磁センサ(21)は、前記患者(30)の身体の内側に位置する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
患者(30)の対象の解剖学的場所(31)に対する医療手術において施術者を支援するための医療ロボット(10)であって、多関節アーム(14)が連結されるベース(11)と、前記多関節アーム(14)が、判定された位置において構成されることを可能にする制御ユニット(12)とを含み、電磁界生成器(23)と、2つの電磁センサ(21、22)とを含む電磁ナビゲーションシステムによって支援されることを意図され、生成された電磁界は、前記2つの電磁センサ(21、22)の位置が前記電磁ナビゲーションシステムによって判定され得、且つ前記医療ロボット(10)に伝達され得る計測ゾーン(25)を形成し、第1電磁センサ(21)は、前記対象の解剖学的場所(31)に位置決めされ、第2電磁センサ(22)は、前記多関節アーム(14)上に位置決めされる、医療ロボット(10)において、前記制御ユニット(12)は、前記2つの電磁センサ(21、22)が前記計測ゾーン(25)内に配置されるとき、前記電磁界生成器(23)の位置及び前記2つの電磁センサ(21、22)の前記位置から、前記計測ゾーン(25)のいわゆる「低減された影響の領域」(26)を判定し、且つ前記計測ゾーン(25)内に配置される前記多関節アーム(14)の任意の金属部分が、前記低減された影響の領域(26)内に位置するように前記多関節アーム(14)を構成するように構成されることを特徴とする医療ロボット(10)
【請求項9】
前記多関節アーム(14)は、前記多関節アーム(14)の自由端部においてツールホルダ(17)を含み、前記ツールホルダは、非磁性材料で生成され、及び前記第2電磁センサ(22)は、前記ツールホルダ(17)上に位置決めされる、請求項8に記載の医療ロボット(10)。
【請求項10】
前記ツールホルダ(17)は、前記多関節アーム(14)の前記自由端部における前記多関節アーム(14)の最後のセクション(18)の長手方向に延在し、前記ツールホルダ(17)は、少なくとも10cmに等しい長さを有し、及び前記第2電磁センサ(22)は、前記ツールホルダ(17)の遠位端部に位置決めされる、請求項9に記載の医療ロボット(10)。
【請求項11】
前記電磁界生成器(23)は、プレートの形態をとり、及び前記低減された影響の領域(26)は、前記プレートに平行であり、且つ前記プレートに直交する方向において前記プレートから最大距離にある前記2つの電磁センサ(21、22)を通過する平面(52)に対して前記プレートの反対側に位置する、前記計測ゾーン(25)の領域であるものとして判定される、請求項8~10のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項12】
前記低減された影響の領域(26)は、前記電磁界生成器(23)の中心(24)を通過し、且つ前記電磁界生成器(23)の前記中心(24)から最大距離にある前記2つの電磁センサ(21、22)を通過する方向(52)に直交する平面(53)に対して前記電磁界生成器(23)の反対側に位置する、前記計測ゾーン(25)の領域であるものとして判定される、請求項8~10のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項13】
前記多関節アーム(14)は、前記医療ロボット(10)の前記制御ユニット(12)内に保存される手術計画に従って構成され、前記手術計画は、前記患者(30)の前記対象の解剖学的場所(31)に対して実行される少なくとも1つのアクションに関する情報を含み、前記多関節アームの前記構成は、前記施術者が前記アクションを実行することを可能にするために、前記ナビゲーションシステムによって判定された前記2つの電磁センサ(21、22)の前記位置から判定される、請求項8~12のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項14】
前記手術計画のアクションが実行されることを可能にする前記多関節アーム(14)の構成は、
前記アクションに関する情報を含む手術前画像、
前記対象の解剖学的場所(31)に位置する前記第1電磁センサ(21)の前記位置に対する、前記患者(30)の前記対象の解剖学的場所(31)の位置に関する情報を含む手術中画像、
前記患者(30)の前記対象の解剖学的場所に対して実行される前記計画されたアクションに関する前記情報と、前記第1電磁センサ(21)の前記位置に対する、前記対象の解剖学的場所(31)の前記位置に関する前記情報との両方を含む画像を取得するための、前記手術前画像との前記手術中画像の位置合わせから判定される、請求項13に記載の医療ロボット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療手術において施術者を支援することを意図された医療ロボットの分野内にある。特に、本発明は、電磁ナビゲーションシステムによって支援され、且つ電磁ナビゲーションシステムによって実行される計測を妨げることなく又はそれを少なくとも無視可能にのみ妨げながら、電磁ナビゲーションシステムの計測ゾーン内において医療ロボットの多関節アームを位置決めするように構成された医療ロボットに関する。本発明は、このような医療ロボットの多関節アームを位置決めする方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療手術は、医療器具(例えば、針、カテーテル、電極、超音波生成器、ドリルビットなど)が患者の対象の解剖学的場所に対して非常に正確に位置決めは変位されることを必要とする。
【0003】
いくつかの手術では、現時点において、施術者が医療器具の配置、保持又はガイドにおいて支援されることを可能にする医療ロボットが存在する。
【0004】
このような医療ロボットは、従って、施術者が、患者の対象の解剖学的場所に対して実行される1つ又は複数のアクションを含む手術計画を実行することを可能にするように位置決めしなければならない。
【0005】
このような手術計画は、一般に、施術者によって決定され、且つ次いで、これは、医療ロボットに送信され、医療ロボットは、医療ロボットに内蔵され、且つ医療ロボットを制御するように構成された制御ユニットのメモリ内にそれを保存する。
【0006】
従って、施術者が手術計画のアクションを実行することを可能にするように医療ロボットを最適に位置決めするために、医療手術中に医療ロボットに対する対象の解剖学的場所の位置を正確に定義できることが推奨される。
【0007】
いくつかのシステム及び特に米国特許第8,774,901B2号に記述されているシステムでは、患者の対象の解剖学的場所の位置は、医療手術において撮影される手術中画像を使用することにより、医療ロボットの基準フレーム内で定義することができる。このような場合、医療ロボットに対する撮像装置の位置は、既知でなければならず、且つ固定されなければならない。手術中画像は、実際に、患者の対象の解剖学的場所の位置が撮像装置に対して判定されることを可能にする。医療ロボットに対する撮像装置の位置が固定され、且つ既知であることから、従って、医療ロボットに対する患者の対象の解剖学的場所の位置を判定することができる。
【0008】
このようなシステムでは、別の手術中画像の撮影を伴うことなく、医療手術中の患者の対象の解剖学的場所の位置のシフトを検出することができないであろう。対象の解剖学的場所の位置のシフトは、例えば、患者の呼吸によって生成される運動、内部臓器の運動又は患者に対する手術者の手術中の操作に起因し得る。
【0009】
このようなシステムにおいて、医療ロボットは、特定の撮像装置と関連付けられる。システムは、一般的に、手術室のフロアに固定される。従って、医療ロボットは、複雑なセットアップを伴うことなしに、別の撮像装置と共に又は場合により別の手術室内で使用することができない。
【0010】
更に、このようなシステムは、手術の時点における手術中画像からの手術計画の決定を必要とする。従って、この計画条件は、対象の解剖学的場所に対して実行されるアクションを定義するための時間をほとんど有しない施術者にとって最適ではない。
【0011】
他のシステム及び特に米国特許出願公開第2016/0157887A1号に記述されているシステムでは、患者の対象の解剖学的場所の位置は、光学ナビゲーションシステムを使用することにより、医療ロボットに対して定義することができる。光学センサが患者の対象の解剖学的場所の近傍に配置される。別の光学センサが医療ロボット上に配置される。光学ナビゲーションシステムは、1つのセンサの位置が他のものに対して判定されることを可能にする。医療ツールが、患者の対象の解剖学的場所に配置された光学センサの基準フレーム内で対象の解剖学的場所に対してとらなければならない位置を判定するために、医療撮像装置も使用される。そのため、医療ツールの位置を医療ロボットの基準フレーム内で判定することができる。
【0012】
このようなシステムは、手術中の対象の解剖学的場所の任意の運動、特に患者の呼吸又は手術中の手術者による患者の操作に起因する運動をフォローすることを可能にする。
【0013】
但し、このようなシステムは、患者の身体の内側に位置する対象の解剖学的場所の位置を正確に判定するのに適していない。実際に、光学ナビゲーションシステムは、光学ナビゲーションシステムの制御装置に対して、光学センサが直接的視準線を伴って可視であることを必要とする。
【0014】
手術中、光学ナビゲーションシステムの光学センサと制御装置との間の視準線を妨害する任意の物体は、結果的に、患者の対象の解剖学的場所に対する医療ロボットの位置の推定及び従って前記対象の解剖学的場所に対する医療ツールの位置決めに関する誤りを生成することにもなるであろう。
【0015】
ナビゲーションシステムの制御装置とセンサとの間の直接的視準線を保証しなければならないことを回避するために、光学ナビゲーションシステムを電磁ナビゲーションシステムによって置換することが想定され得る。
【0016】
但し、電磁ナビゲーションシステムは、金属物体の存在下で電磁界の干渉及び歪の影響を受けやすいという欠点を有する。従って、例えば、非金属材料のみがナビゲーションシステムの計測ゾーンに進入することが推奨される。いくつかの場合、ナビゲーションシステムの電磁界生成器に対して医療ロボットの金属部分を隔離するために、アルミニウムプレートが使用される。
【0017】
医療ロボットの多関節アームの関節接続のモーターは、一般に、金属部分を含む。金属部分の数を低減すること又は医療ロボットの多関節アーム内でアルミニウムプレートを使用することは、結果的に多関節アームの自由度を低減する。換言すれば、多関節アームの可能な運動の数が大幅に低減される。従って、施術者が患者の対象の解剖学的場所に対して十分に正確に特定のアクションを実行することを可能にする位置において多関節アームを構成することが不可能となり得る。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、従来技術の欠点、特に上述のもののすべて又はいくつかを改善することである。
【0019】
この目的のために且つ第1態様によれば、本発明は、患者の対象の解剖学的場所に対する医療手術において施術者を支援するための医療ロボットの多関節アームを位置決めする方法を提案する。医療ロボットは、多関節アームが連結されるベースと、多関節アームが、判定された位置において構成されることを可能にする制御ユニットとを含む。医療ロボットは、電磁界生成器と、2つの電磁センサとを含む電磁ナビゲーションシステムによって支援される。生成された電磁界は、センサの位置が電磁ナビゲーションシステムによって判定され得、且つ医療ロボットに伝達され得る計測ゾーンを形成する。第1センサは、対象の解剖学的場所において、予備ステップで位置決めされ、第2センサは、多関節アーム上に位置決めされる。多関節アームを位置決めする方法は、それが、以下のステップ:
- 2つのセンサが計測ゾーン内に配置されるとき、電磁界生成器の位置及びセンサの位置から、いわゆる「低減された影響の領域」を判定するステップ、
- 計測ゾーン内に配置される多関節アームの任意の金属部分が、低減された影響の領域内に位置するように多関節アームを構成するステップ
を含む点で注目に値する。
【0020】
多関節アームを位置決めする方法は、患者に対する医療行為の実行のステップを含まない。医療ロボットの多関節アームは、実際に、施術者による医療行為の実行前に構成される。
【0021】
本出願において、「医療的」という用語は、広い意味で考慮されるべきであり、且つ手術状況又は非手術状況に等しく関連し得る。
【0022】
患者の「対象の解剖学的場所」は、医療手術が治療の対象とする患者の人体の少なくとも一部分を意味することが理解される。
【0023】
本出願において、「位置」という用語は、実際に、一般に3次元座標系である所与の基準フレーム内の物体の位置及び向きの組み合わせに対応する。「ポーズ」という用語は、本明細書では、この空間内の物体の位置及び向きの組み合わせを表すために使用される。
【0024】
医療ロボットの多関節アーム上に位置決めされた第2センサは、医療ロボットの基準フレーム内の既知の位置に配置される。
【0025】
電磁ナビゲーションシステムは、第1センサ及び第2センサの位置が電磁ナビゲーションシステムの基準フレーム内で判定されることを可能にする。例えば、このような基準フレームは、前記電磁ナビゲーションシステムの電磁界生成器の中心に対してセンタリングされる。従って、第1センサの位置及び第2センサの位置は、相互に対して既知である。第2センサの位置が医療ロボットの基準フレーム内で既知であることから、第1センサの位置を医療ロボットの基準フレーム内で判定することができる。ナビゲーションシステムの基準フレーム内のセンサの位置及び電磁界生成器の位置は、ナビゲーションシステムにより、医療ロボットに伝達される。「位置」という用語は、ナビゲーションシステムの基準フレームの3つの空間次元における位置及び向きを含む。
【0026】
患者の対象の解剖学的場所の位置は、第1センサの位置に対して既知である。例えば、患者の対象の解剖学的場所と第1センサの位置との両方が出現する手術中画像を医療手術において撮影することができる。
【0027】
第1センサに対する対象の解剖学的場所の位置及び医療ロボットに対する第1センサの位置を知ることにより、医療ロボットに対する対象の解剖学的場所の位置を判定することができる。
【0028】
いわゆる「低減された影響の領域」は、電磁ナビゲーションシステムの生成器によって生成された電磁界の計測ゾーン内に前記センサが配置されるとき、金属物体の導入が電磁ナビゲーションシステムによる第1センサ及び第2センサの位置の判定を実質的にまったく妨げない計測ゾーンの領域である。この領域は、この領域内に位置する金属物体が、センサの1つを通過する生成された電磁界の力線に対する歪を生成しないか又は無視可能にのみ生成するようなものである。
【0029】
本出願では、低減された影響のゾーン内で医療ロボット10の多関節アーム14の金属部分の存在によって誘発されるセンサ位置計測に対する妨害は、ナビゲーションシステムの基準フレームの3次元座標系のそれぞれの軸上のセンサの位置に関する計測誤差が閾値未満である場合、無視可能であるものと受け入れられる。この閾値は、例えば、1mm、場合により0.5mmの値を有し得る。
【0030】
医療ロボットの多関節アームの金属部分がこの領域内に留まる限り、2つのセンサの位置を正確にフォローすることが可能であり、且つ従って医療ロボットに対する対象の解剖学的場所の位置を判定することができる。
【0031】
このような方式は、ロボットの金属部分が対象の解剖学的場所の近傍に配置される場合でも、且つ物体が対象の解剖学的場所とナビゲーションシステムの制御装置との間の視準線を遮断する場合でも、患者の対象の解剖学的場所の位置が手術の持続時間の全体を通して医療ロボットに対して判定されることを可能にする。
【0032】
特定の実施形態において、本発明は、単独で又は任意の技術的に可能な組み合わせに従って実現される以下の特徴の1つ又は複数を更に含み得る。
【0033】
特定の実施形態において、電磁界生成器は、プレートの形態をとり、及び低減された影響の領域は、プレートに平行であり、且つプレートに直交する方向においてプレートから最大距離にあるセンサを通過する平面に対して前記プレートの反対側に位置する、計測ゾーンの領域であるものとして判定される。
【0034】
特定の実施形態において、低減された影響の領域は、電磁界生成器の中心を通過し、且つ電磁界生成器の中心から最大距離にあるセンサを通過する方向に直交する平面に対して電磁界生成器の反対側に位置する、計測ゾーンの領域であるものとして判定される。
【0035】
このような方式は、医療ロボットの多関節アームの金属部分が、前記センサを通過する力線に接する平面を「超えて」留まることを保証することを可能にする。従って、前記金属部分は、センサを通過する力線を切断することができず、従って、結果的に、これらは、ナビゲーションシステムによって実行される計測を実質的にまったく妨害しない。
【0036】
特定の実施形態において、多関節アームは、医療ロボットの制御ユニット内に保存される手術計画に従って構成される。前記手術計画は、患者の対象の解剖学的場所に対して実行される少なくとも1つのアクションに関する情報を含む。多関節アームの構成は、施術者が、位置決め方法に続いて前記アクションを実行することを可能にするために、ナビゲーションシステムによって判定されたセンサの位置から判定される。
【0037】
このような方式は、患者の対象の解剖学的場所が、例えば、患者の呼吸、手術中の操作又は対象の解剖学的場所の内部運動に起因して位置のシフトを経験した際、対象の解剖学的場所の位置のシフトをフォローする、即ち患者の対象の解剖学的場所の位置に対して医療ロボットの多関節アームの位置を調節することを可能にする。従って、本発明は、患者の対象の解剖学的場所の運動に応じた医療ロボットの多関節アームの位置の自動的な位置合わせを可能にする。
【0038】
特定の実施形態において、ツールは、多関節アームの自由端部に取り付けられたツールホルダ上に取り付けられ得、及び手術計画のアクションは、患者の前記対象の解剖学的場所に対して、既定の位置において、既定の容積内において又は既定の軌跡に従ってツールの配置を可能にすることに対応する。
【0039】
「自由端部」は、医療ロボットのベースに連結されていない多関節アームの端部を意味することが理解される。
【0040】
このような医療行為(例えば、患者の対象の解剖学的場所への針の挿入)は、医療ロボットの多関節アームを位置決めする方法後に施術者によって実行されることに留意されたい。従って、このような医療行為の実行は、多関節アームを位置決めする方法の一部分を形成しない。
【0041】
特定の実施形態において、手術計画のアクションが実行されることを可能にする多関節アームの構成は、
- 患者の対象の解剖学的場所に対して実行される前記計画されたアクションに関する情報を含む手術前画像、
- 対象の解剖学的場所に位置する第1センサの位置に対する、患者の対象の解剖学的場所の位置に関する情報を含む手術中画像、
- 患者の対象の解剖学的場所に対して実行される計画されたアクションに関する情報と、前記第1センサの位置に対する、対象の前記解剖学的場所の位置に関する情報との両方を含む画像を取得するための、手術前画像との手術中画像の位置合わせ
から判定される。
【0042】
手術計画は、実際には、スキャナ、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、超音波、X線タイプ及び他のこのようなタイプの医療画像に基づいて、計画フェーズにおいて施術者によって判定することができる。次いで、施術者は、1つ又は複数の医療画像上において、患者の対象の解剖学的場所に対する医療器具の位置又は軌跡を選択することができる。
【0043】
但し、手術の時点における患者の対象の解剖学的場所の実際の位置は、必ずしも手術前の計画フェーズで予測又はモデル化された位置に対応しない。従って、対象の解剖学的場所に対して実行されるアクションが計画される手術前画像を、手術の時点における患者の対象の解剖学的場所の位置を正確に表す手術中画像と位置合わせ可能であることが有利である。
【0044】
手術の時点における患者の対象の解剖学的場所の位置は、スキャナ、CT、MRI、PET、超音波、X線、蛍光透視、円錐ビームコンピュータ断層撮影(CBCT)タイプ及び他のこのようなタイプの医療画像から判定することができる。
【0045】
特定の実施形態において、第1センサは、前記手術中画像内で可視である要素を含み、及び前記要素の形状は、既知である。
【0046】
このような方式は、対象の解剖学的場所に対する第1センサの位置が手術中画像上で正確に判定されることを可能にする。
【0047】
特定の実施形態において、患者の対象の解剖学的場所及び第1電磁センサは、患者の身体の内側に位置する。
【0048】
電磁ナビゲーションシステムによれば、実際には、患者の対象の解剖学的場所に位置決めされたセンサが可視であることは、必須ではない。
【0049】
第2態様によれば、本発明は、患者の対象の解剖学的場所に対する医療手術において施術者を支援するための医療ロボットに関する。医療ロボットは、多関節アームが連結されるベースと、多関節アームが、判定された位置において構成されることを可能にする制御ユニットとを含む。医療ロボットは、電磁界生成器と、2つの電磁センサとを含む電磁ナビゲーションシステムによって支援されることを意図される。前記生成器によって生成された電磁界は、センサの位置が電磁ナビゲーションシステムによって判定され得、且つ医療ロボットに伝達され得る計測ゾーンを形成する。第1センサは、対象の解剖学的場所に位置決めされ、第2センサは、多関節アーム上に位置決めされる。制御ユニットは、2つのセンサが計測ゾーン内に配置されるとき、電磁界生成器の位置及びセンサの位置から、計測ゾーンのいわゆる「低減された影響の領域」を判定し、且つ計測ゾーン内に配置される多関節アームの任意の金属部分が、前記低減された影響のゾーン内に位置するように多関節アームを構成するように構成される。
【0050】
特定の実施形態において、本発明は、単独で又は任意の技術的に可能な組み合わせに従って以下の特徴の1つ又は複数を更に含み得る。
【0051】
特定の実施形態において、多関節アームは、多関節アームの自由端部においてツールホルダを含む。ツールホルダは、非磁性材料で生成され、及び第2センサは、ツールホルダ上に位置決めされる。
【0052】
「非磁性材料」は、磁石によって吸着又は反発されない(又はそれが困難である)材料を意味することが理解される。例えば、ツールホルダは、プラスチック、セラミック又はシリーズ300ステンレス鋼から製造される。
【0053】
特定の実施形態において、ツールホルダは、多関節アームの自由端部における多関節アームの最後のセクションの長手方向に延在し、ツールホルダは、少なくとも10cmに等しい長さを有し、及び第2センサは、ツールホルダの遠位端部に位置決めされる。
【0054】
このような方式は、ナビゲーションシステムによる前記センサの位置の計測を妨げないように又は場合により無視可能にのみ妨げるように、医療ロボットの金属部分が第2センサから十分に遠く離れることを保証するための更なるマージンを可能にする。
【0055】
特定の実施形態において、電磁界生成器は、プレートの形態をとり、及び低減された影響の領域は、プレートに平行であり、且つプレートに直交する方向においてプレートから最大距離にあるセンサを通過する平面に対して前記プレートの反対側に位置する、計測ゾーンの領域であるものとして制御ユニットによって判定される。
【0056】
特定の実施形態において、低減された影響の領域は、電磁界生成器の中心を通過し、且つ電磁界生成器の中心から最大距離にあるセンサを通過する方向に直交する平面に対して電磁界生成器の反対側に位置する、計測ゾーンの領域であるものとして制御ユニットによって判定される。
【0057】
特定の実施形態において、多関節アームは、医療ロボットの制御ユニット内に保存される手術計画に従って制御ユニットによって構成される。前記手術計画は、患者の対象の解剖学的場所に対して実行される少なくとも1つのアクションに関する情報を含む。多関節アームの構成は、施術者が位置決め方法に続いて前記アクションを実行することを可能にするために、ナビゲーションシステムによって判定されたセンサの位置から判定される。
【0058】
特定の実施形態において、手術計画のアクションが実行されることを可能にする多関節アームの構成は、
- 患者の対象の解剖学的場所に対して実行される前記計画されたアクションに関する情報を含む手術前画像、
- 対象の解剖学的場所に位置する第1センサの位置に対する、患者の対象の解剖学的場所の位置に関する情報を含む手術中画像、
- 患者の対象の解剖学的場所に対して実行される計画されたアクションに関する情報と、前記第1センサの位置に対する、対象の前記解剖学的場所の位置に関する情報との両方を含む画像を取得するための、手術前画像との手術中画像の位置合わせ
から判定される。
【0059】
本発明は、非限定的な例として付与され、且つ以下の図1図7を参照する以下の説明を読むことでよりよく理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明による医療ロボットの概略図である。
図2】電磁ナビゲーションシステムの電磁界生成器と、手術テーブル上に横になった患者の対応する計測ゾーンとの配置の上方から観察された概略図である。
図3】計測ゾーンのいわゆる「低減された影響の領域」の概略図である。
図4】本発明の特定の実装形態における計測ゾーンのいわゆる「低減された影響の領域」の判定の概略図である。
図5】本発明の特定の実装形態における計測ゾーンのいわゆる「低減された影響の領域」の判定の概略図である。
図6図5を参照して記述される本発明の特定の実装形態の別の概略図である。
図7】本発明による医療ロボットの多関節アームを位置決めする方法の主要なステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
これらの図では、1つの図から別の図において同一である参照符号は、同一又は類似の要素を表記する。わかりやすさを目的として、表される要素は、そうでない旨が記述されない限り、必ずしも縮尺が同一ではない。
【0062】
図1は、本発明による医療ロボット10と、手術テーブル上に横になった患者30とを概略的に表す。
【0063】
医療ロボット10は、ベース11を含む。図1に示される例において、医療ロボット10のベース11は、車輪を装備し、これらは、医療ロボット10が平行運動及び/又は回転運動により異なる方向に動き回ることを可能にする。
【0064】
医療ロボット10は、一端がベース11に連結された多関節アーム14を含む。多関節アーム14の自由端部、即ち医療ロボット10のベース11に連結されていない多関節アーム14の端部において医療ツールをツールホルダ17上に取り付けることができる。
【0065】
このような医療ロボット10は、従って、医療ツールを位置決め、保持又はガイドする際に施術者を支援するために使用することができる。医療ロボット10は、従って、施術者のための第3の手として機能する。
【0066】
多関節アーム14は、好ましくは、3次元空間内で医療ツールを位置決めし、及び/又は運動させることができるように、少なくとも6つの自由度を有する。更に好ましくは、多関節アームは、アームの構成がツールの位置を維持しつつ変更されることを可能にする7つの自由度を有する。
【0067】
例えば、ツールは、患者30の対象の解剖学的場所のターゲットゾーン内に針、カテーテル又は電極などの器具を埋植するためのガイドであり得る。
【0068】
別の例によれば、ツールは、患者30の対象の解剖学的場所の一部分の生検、切除又は除去を可能にするために、ターゲット臓器内に非常に正確に導入しなければならない医療器具、プローブ又は電極であり得る。
【0069】
以下の説明において、例として且つ非限定的な方式により仮定される状況は、ツールホルダ17が医療ロボット10の多関節アーム14の自由端部に取り付けられ、且つツールホルダ17上に取り付けられたツールが、針をガイドするためのガイド器具である場合である。図1に示されるように、ツールホルダ17は、例えば、フランジ16を介して医療ロボット10の多関節アーム14上に取り付けられる。
【0070】
医療ロボット10は、患者30の解剖学的場所に対する精度を有して、既定の位置においてツールを位置決めするか、又は既定の空間内において若しくは既定の軌跡に従ってツールの位置をシフトさせ得ることが重要である。
【0071】
多関節アーム14は、医療ロボット10の制御ユニット12によって制御される1つ又は複数の関節接続15を含む。多関節アーム14の1つの可能な構成は、従って、多関節アーム14の1つ又は複数の関節接続15によってとられるパラメータの値の組(例えば、回転の角度、平行運動の距離など)に対応する。
【0072】
制御ユニット12は、例えば、1つ又は複数のプロセッサと、メモリ13(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスクなど)とを含み、メモリ13内には、医療ロボット10の多関節アーム14を位置決めする方法の様々なステップを実装するために実行されるプログラムコード命令の組の形態のコンピュータプログラム製品が保存される。代わりに又は加えて、制御ユニット12は、前記位置決め方法の前記ステップのすべて又は一部を実装するのに適した1つ若しくは複数のプログラム可能な論理回路(FPGA、PLDなど)、及び/又は1つ若しくは複数のカスタム集積回路(ASIC)、及び/又は別個の電子コンポーネントの組などを含む。
【0073】
患者30の対象の解剖学的場所の位置が医療ロボット10に対して判定されることを可能にするために電磁ナビゲーションシステムが使用される。電磁ナビゲーションシステムは、電磁界生成器23と、2つの電磁センサ21、22とを含む。第1センサ21は、患者30の対象の解剖学的場所31に配置される。第2センサ22は、医療ロボット10の基準フレーム内の既知の位置で医療ロボット10の多関節アーム14上に取り付けられる。
【0074】
ナビゲーションシステムは、前記センサ21、22によって実行される計測からセンサ21、22の位置を判定するように構成されている、集中化された制御装置も含み得る。このような制御装置は、図示されていない。これは、場合により、電磁界生成器23と共に内蔵することができる。制御装置は、例えば、無線通信手段を介してセンサ21、22の位置を医療ロボット10の制御ユニットに12に伝達するように構成される。
【0075】
既知のように、電磁センサ21、22は、例えば、前記センサ21、22が外部電磁界に曝された際、6つの自由度を計測するように構成され得る少なくとも2つの導電性コイルを含む。電磁センサ21、22のそれぞれのコイルは、電磁界に対するコイルの位置に依存する特性を有する誘発された電気信号を生成する。
【0076】
従って、ナビゲーションシステムは、センサ21、22がナビゲーションシステムの計測ゾーン25内に配置されるとき、第1センサ21の位置及び第2センサ22の位置がナビゲーションシステムの基準フレーム内で判定されることを可能にする。このような基準フレームは、例えば、電磁界生成器23の中心24に対してセンタリングされる。
【0077】
計測ゾーン25は、生成器23によって放出される電磁界が、このゾーン内に配置される電磁センサ21、22の位置が判定されることを可能にするために十分に強力である空間の領域に対応する。検討され且つ図1及び図2に示される例において、ナビゲーションシステムの電磁界生成器23は、患者30が横になった手術テーブル40の下方において水平方向に固定されたプレートである。計測ゾーン25は、手術テーブル40の上方において延在する、約500mmの直径と、約600mmの高さとを有し、且つそのベースが生成器23によって形成されたプレート上でセンタリングされる、円筒体の形態をとる。図2に示されるように、電磁界生成器23は、患者30の対象の解剖学的場所31に配置されたセンサ21が計測ゾーン25内に含まれるような位置で手術テーブル40の下方に固定される。
【0078】
電磁ナビゲーションシステムは、第1センサ21の位置及び第2センサ22の位置が電磁ナビゲーションシステムの基準フレーム内で判定されることを可能にする。従って、第1センサ21の位置及び第2センサ22の位置は、相互に対して既知である。第2センサ22の位置が医療ロボット10の基準フレーム内で既知であることから、第1センサ21の位置を医療ロボット10の基準フレーム内で判定することができる。
【0079】
患者30の対象の解剖学的場所31の位置は、第1センサ21の位置に対して既知である。例えば、患者30の対象の解剖学的場所31と第1センサ21の位置との両方を示す手術中画像を医療手術中に生成することができる。
【0080】
手術中画像内に出現するように、第1センサ21は、例えば、放射線不透過性のセラミックボールを含み得る。前記ボールの形状は、手術中画像上で対象の解剖学的場所31に対する第1センサ21の位置を正確に判定し得るように既知である。
【0081】
第1センサ21に対する対象の解剖学的場所31の位置及び医療ロボット10に対する第1センサ21の位置を知ることにより、医療ロボット10に対する対象の解剖学的場所31の位置を判定することができる。
【0082】
従って、医療手術の全体を通して既定の位置に医療ツールを配置及び保持し、患者30の対象の解剖学的場所31に対して、既定の空間内において及び/又は既定の軌跡に従って正確にツールの位置をシフトさせるために、医療ロボット10の多関節アーム14の構成をセンサ21、22の位置に従って判定することができる。
【0083】
具体的には、対象の解剖学的場所31の運動をフォローし、且つこれらの運動に従って医療ロボット10の多関節アーム14の位置を調節するか又は換言すれば位置合わせすることができる。患者30の対象の解剖学的場所31の運動は、例えば、患者の呼吸、患者30に対する手術中の操作又は患者30の内部臓器の運動に起因し得る。
【0084】
特定の実装形態において、多関節アーム14は、医療ロボット10の制御ユニット12内に保存される手術計画に従って構成される。
【0085】
手術計画は、患者30の対象の解剖学的場所31に対して実行される1つ又は複数のアクションに関する情報を含む。手術計画のアクションは、例えば、既定の空間内で医療ツールを操作し得ること、既定の位置にツールを配置すること又はさもなければ患者30の対象の解剖学的場所31に対して既定の軌跡に従ってツールの位置をシフトさせることに対応する。
【0086】
手術計画は、計画フェーズ中に生成される。この計画フェーズは、医療手術に先行することが可能であり、これは、従って、手術前医療画像から定義される。別の例によれば、計画フェーズは、手術中医療画像から手術中に定義することができる。
【0087】
この計画フェーズにおいて、施術者は、対象の解剖学的場所に対して実行しなければならない様々なアクションを定義する。手術計画は、例えば、CTスキャン、MRI、PET、超音波、X線タイプ又は他のタイプの医療画像を使用することにより生成することができる。手術者、一般には医療ロボット10を使用して手術を実行することになる施術者は、ツールのパラメータ(例えば、長さ、直径、3D形態、供給されるエネルギーパワーレベル、電流強度、治療時間など)を選択する。1つ又は複数のアクションを、実行される治療のタイプに応じて計画することができる。計画は、完全に手動的なものであるか、対話型のものであるか、又はセグメント化及び計画アルゴリズムを使用して完全に自動化され得る。これらの決定支援アルゴリズムは、例えば、エキスパートシステム(事実及び既知の規則に基づいた理由付けを実行することにより、施術者の認知メカニズムを再生する能力を有するシステム)又はインテリジェントな自動的学習メカニズム(例えば、畳み込み型のニューラルネットワークを有するもの)に基づき得る。
【0088】
手術計画のアクションは、例えば、コンピュータファイル内で制御ユニット12により既知の命令の形態においてエンコーディングされる。手術計画に対応するコンピュータファイルは、例えば、医療ロボット10とは別個であるコンピュータ上で生成することができる。次いで、ファイルは、医療ロボット10に送信され、且つ制御ユニット12のメモリ13内に保存される。このコンピュータファイルの送信は、従来のように、例えばUSB(ユニバーサルシリアルバス)キーによるファイル送信又はさもなければ無線通信などの様々な方式により実行することができる。
【0089】
手術計画のアクションは、例えば、患者30の対象の解剖学的場所31に対するツールの異なる位置又は異なる運動を表す。制御ユニット12は、多関節アーム14及びツールの幾何学的モデルについても認識する。例えば、アーム14は、その軸のそれぞれのものの角度位置を知ることを可能にし、且つ計算によりツールの位置を知ることを可能にするコーダを装備する。制御ユニット12は、従って、手術計画内に含まれる情報から、施術者が手術計画によって提供されるアクションを実行することができるようになる多関節アーム14の1つ又は複数の構成を判定することができる。
【0090】
例えば、患者30の対象の解剖学的場所31への針の挿入などの医療行為は、医療ロボット10の多関節アーム14を位置決めする方法後にのみ施術者によって実行される。従って、このような医療行為の実行は、本発明による多関節アーム14を位置決めする方法の一部分を形成しない。
【0091】
施術者が、例えば、手術前の数日又は数時間など、医療手術に先行する計画フェーズにおいて手術計画を定義可能であることが有利である。但し、手術の時点における患者30の対象の解剖学的場所31の実際の位置は、必ずしも手術前の計画フェーズで予測又はモデル化された位置に対応しない。従って、対象の解剖学的場所31に対して実行されるアクションが計画される手術前画像を、手術の時点における患者30の対象の解剖学的場所31の位置を正確に表す手術中画像と位置合わせ可能であることが有利である。
【0092】
従って、特定の実装形態において、実行される手術計画のアクションを可能にする多関節アーム14の構成は、
- 前記アクションに関する情報を含む手術前画像、
- 対象の解剖学的場所31に位置する第1センサ21の位置に対する、患者30の対象の解剖学的場所31の位置に関する情報を含む手術中画像、
- 患者30の対象の解剖学的場所において実行される計画されたアクションに関する情報と、前記センサ21の位置に対する、対象の前記解剖学的場所31の位置に関する情報との両方を含む画像を取得するための、手術前画像との手術中画像の位置合わせ
から判定される。
【0093】
1つの画像を別のものとアライメントする様々な方法が存在する。このような方法は、当業者に既知であるものと考えられる。
【0094】
電磁ナビゲーションシステムの1つの欠点は、ナビゲーションシステムによるセンサ21、22の位置の計測の精度が計測ゾーン25内の金属物体の存在によって妨害され得ることである。特に、ツールホルダ17が取り付けられるフランジ16及び医療ロボット10の多関節アーム14のモーターを有する関節接続15は、一般に、金属部分を含む。金属部分が、センサ21、22を通過する、生成器23によって放出された電磁界の力線27を妨害する場合、前記センサ21、22によって知覚される電磁界の歪が生成されることになる。従って、ナビゲーションシステムによる前記センサ21、22の位置の判定が歪曲されることになる。
【0095】
従って、計測ゾーン25内に配置される医療ロボット10の多関節アーム14の金属部分がナビゲーションシステムによるセンサ21、22の位置の計測を妨害しないか、又は場合により無視可能な程度にのみ妨害することを保証することが推奨される。
【0096】
この目的のために且つ図3に概略的に示されるように、制御ユニット12は、電磁ナビゲーションシステムの電磁界生成器23によって生成された電磁界の計測ゾーン内に前記センサ21、22が配置されるとき、金属物体の導入が電磁ナビゲーションシステムによる第1センサ21の位置及び第2センサ22の位置の判定をほとんどまったく妨害しない、計測ゾーン25のいわゆる「低減された影響の領域」26を判定するように構成される。理想的には、低減された影響の領域26は、計測ゾーン25内に配置される医療ロボット10の多関節アーム14の任意の金属部分が、センサ21、22を通過する力線27を妨害しないように定義される。
【0097】
医療ロボット10の制御ユニット12は、医療手術中、計測ゾーン25内に配置される多関節アーム14の任意の金属部分が、低減された影響の領域26内に位置するように医療ロボット10の多関節アーム14を構成するようにも設計される。
【0098】
必要とされるよりも多くの数の自由度を有する医療ロボット10の多関節アーム14の場合、実行される計画されたアクションを可能にする多関節アーム14のいくつかの構成が想定され得る。例えば、6つの自由度を有する擬人化多関節アーム14は、一般に、その軸のいくつかの異なる構成に従い、既定のエントリポイントを通過する直線的方向に従って針ガイドを位置決めすることができる。従って、医療ロボット10の制御ユニット12は、一般に、計測ゾーン25内に配置された多関節アーム14の任意の金属部分が、低減された影響の領域26内に位置しなければならないという制約に適合した多関節アーム14の構成を選択することができる。
【0099】
低減された影響の領域は、この制約が常に手術中に検証されることを保証するために、センサ21、22の位置が変化するのに伴って又は変化した際に再計算される。
【0100】
医療ロボット10の多関節アーム14の金属部分が、この低減された影響の領域26内に留まる限り、2つのセンサ21、22の位置を正確にフォローすることが可能であり、且つ従って医療ロボット10に対する対象の解剖学的場所31の位置を正確に判定することができる。
【0101】
このような方式は、ロボットの金属部分が対象の解剖学的場所31に相対的に近接した状態に配置された場合でも、且つ患者30の対象の解剖学的場所31が医療手術中に運動を経験した場合でも、患者30の対象の解剖学的場所31の位置が手術の持続時間の全体を通して医療ロボット10に対して判定されることを可能にする。
【0102】
従って、医療手術中に対象の解剖学的場所31の運動に従って医療ロボット10の多関節アーム14の位置を自動的に位置合わせすることができる。
【0103】
図4は、低減された影響の領域26の判定のための特定の実装形態を概略的に表す。この特定の実装形態において、電磁界生成器23は、プレートの形態をとり、及び低減された影響の領域26は、プレートに平行であり、且つプレートに直交する方向においてプレートから最大距離にあるセンサ21、22を通過する平面51に対して前記プレートの反対側に位置する、計測ゾーン25の領域である。
【0104】
図4に示される例において、医療ロボット10の多関節アーム14上に位置する第2センサ22は、生成器23によって形成されたプレートに直交する方向において生成器23から最も遠く離れたセンサである。従って、平面51によって範囲が定められた計測ゾーン25の上部部分は、多関節アーム14の金属部分がナビゲーションシステムによるセンサ21、22の位置の判定を実質的に妨害することなしに導入され得る、低減された影響の領域26に対応する。
【0105】
従って、低減された影響の領域26を判定することにより、多関節アーム14の金属部分は、電磁界生成器23に対してセンサ21、22の「上方」に永久的に留まる。
【0106】
図4を参照して記述された特定の実装形態による、低減された影響の領域26の判定は、簡単であり、且つ多関節アーム14の自由端部の側における最後のセクション18が、テーブル40及び生成器23に対して実質的に垂直方向の方向において、患者30の対象の解剖学的場所31に対して機能しなければならない際に特に適している。但し、これは、多関節アーム14の最後のセクション18が、テーブル40及び生成器23に対して実質的に水平方向の方向において患者30の対象の解剖学的場所31に対して機能しなければならない場合によく適していない。
【0107】
図5は、低減された影響の領域26の判定のための別の特定の実装形態を概略的に表す。この特定の実装形態において、低減された影響の領域26は、電磁界生成器23の中心24を通過し、且つ電磁界生成器23の中心24から最大距離にあるセンサ21、22を通過する方向52に直交する平面53に対して電磁界生成器23の反対側に位置する、計測ゾーン25の領域である。
【0108】
電磁界生成器23の中心24の位置及び計測ゾーン25の位置は、医療ロボット10の基準フレーム内で制御ユニット12によって判定することが可能であり、なぜなら、一方では、第2センサ22の位置が医療ロボット10の基準フレーム内で既知であり、且つ他方では、生成器23の位置がナビゲーションシステムの基準フレーム内の前記第2センサ22の位置に対して判定され得るためであることに留意されたい。従って、変換マトリックスが、従来のように、医療ロボット10の基準フレーム内の生成器23の位置を判定することを可能にする。計測ゾーン25は、その一部分について既知であり、なぜなら、これは、電磁界生成器23の位置に対して、使用されるナビゲーションシステムについて規定されるからである。計測ゾーン25の仕様は、例えば、医療ロボット10の制御ユニット12のメモリ13内に保存することができる。
【0109】
図5に示される例において、医療ロボット10の多関節アーム14上に位置する第2センサ22は、生成器23の中心24から最も遠く離れたセンサである。平面53は、センサ22を通過する力線27に実質的に接する平面である。医療ロボット10の多関節アーム14の金属部分が生成器23に対してこの平面53を「超えて」留まる限り、これらは、センサ21、22を通過する力線を妨害することができず、これらは、結果的に、ナビゲーションシステムによって実行される計測を無視可能な程度にのみ妨害する。
【0110】
この特定の実施形態において、生成器23がプレート形態を有するか又はさもなければ別の形態を有するかは、重要でないことに留意されたい。
【0111】
図6は、医療ロボット10の多関節アーム14の自由端部の側における最後のセクションが実質的に水平方向の位置をとるとき、図5を参照して記述されるものと同一の実装形態によって判定される、低減された影響の領域26を表す。
【0112】
この低減された影響の領域26を判定する方法は、医療ロボット10の多関節アーム14のこのような構成を妨げないことが明らかに示されている。
【0113】
特定の実施形態において、多関節アーム14は、多関節アーム14の自由端部においてツールホルダ17を含む。ツールホルダは、非磁性材料、即ち磁石によって吸着又は反発されない(又はそれが困難である)材料で生成される。非限定的な例として、ツールホルダは、例えば、プラスチック、セラミック又はシリーズ300ステンレス鋼から製造することができる。多関節アーム14上に位置決めされた第2センサ22は、ツールホルダ17上に位置決めされる。
【0114】
好ましくは、ツールホルダ17は、多関節アーム14の自由端部における多関節アーム14の最後のセクションの長手方向に延在し、ツールホルダ17は、少なくとも10cmに等しい長さを有し、及び第2センサ22は、ツールホルダ17の遠位端部に位置決めされる。
【0115】
このような方式は、ナビゲーションシステムによる前記第2センサ22の位置の計測を実質的に妨害しないように、医療ロボット10の金属部分が第2センサ22から十分に遠くに離れていることを保証するための更なるマージンを可能にする。使用される医療ロボット10の材料及び電磁界生成器23のタイプに応じて、ツールホルダ17の長さは、異なり得る。特に、いくつかの場合、少なくとも19cmに等しい長さを有するツールホルダ17を有することが有利であり得る。
【0116】
図7は、上述される医療ロボット10の多関節アーム14を位置決めする方法100の主要なステップを概略的に表す。
【0117】
位置決め方法100の実行前に、第1センサ21は、治療対象の患者30の対象の解剖学的場所に位置決めされるものと見なされる。患者及び電磁界生成器23も、前記第1センサ21が電磁ナビゲーションシステムの計測ゾーン25内に位置するように相互に対して設置されるものと見なされる。最後に、医療ロボット10は、医療ロボット10の多関節アーム14が、対象の解剖学的場所31に対して実行されるアクションのすべてを実行することを可能にする位置で患者30の近傍に配置されるものと見なされる。
【0118】
医療ロボット10の多関節アーム14が、対象の解剖学的場所31上において実行されるアクションのすべてを実行する能力を有する位置に医療ロボット10を配置する様々な方法が存在する。これは、完全に手動的方法であり得、この場合、手術者が医療ロボット10をこのような位置に移動させる。これは、完全に自動化された方法でもあり得、この場合、医療ロボット10は、例えば、空間内位置検出手段(カメラ、レンジファインダ、慣性、光学又はオドメータセンサなど)と、このような位置及びそこでの位置決めを自律的に検出する演算手段とを含む。
【0119】
以上から、本発明による医療ロボット10の多関節アーム14を自動的に位置決めする方法100は、手術中に対象の解剖学的場所31の位置を検出し、且つ正確にフォローするように、及び施術者が、対象の解剖学的場所において実行されるアクションを実行することと、センサ21、22の位置が判定されることを可能にする電磁ナビゲーションシステムの計測をほとんどまったく妨害しないこととの両方を可能にするのに適した位置において多関節アーム14を構成するように実装することができる。
【0120】
多関節アーム14を位置決めする方法100は、特に、以下のステップ:
- 2つのセンサ21、22が計測ゾーン25内に配置されるとき、電磁界生成器23の位置及びセンサ21、22の位置から、計測ゾーン25のいわゆる「低減された影響の領域」26を判定するステップ101、
- 計測ゾーン25内に配置される多関節アーム14の任意の金属部分が、低減された影響の領域26内に位置するように多関節アーム14を構成するステップ102
を含む。
【0121】
上述の説明は、その様々な特性及びその利点を通して、本発明が目的の組を実現することを明瞭に示している。
【0122】
具体的には、医療ロボット10は、任意の手術室内で動作可能であり、これは、特定の手術室に連結されておらず、且つその位置は、特定の撮像装置に対して既知である必要がない。これは、従って、ロボット支援型の医療手術に関係する費用を制限し、なぜなら、医療ロボットをそれぞれの手術室と関連付けるか、又は場合によりその内部で機能可能となるように医療ロボットのための手術室を特別に準備する必要性が存在しないからである。
【0123】
電磁ナビゲーションシステムは、光学ナビゲーションシステムと比較して有利であり、なぜなら、これは、センサとナビゲーションシステムの制御装置との間の直接的な視準線を遮断する任意の障害物の影響を受けにくいからである。
【0124】
電磁ナビゲーションシステムは、患者30の人体の内側に配置されたセンサ21の位置が判定されることも可能にし、これにより、患者30の身体の内側に配置される対象の解剖学的場所31を治療することが可能になる。
【0125】
電磁ナビゲーションシステムに起因して、医療ロボット10は、手術中に患者の対象の解剖学的場所31の位置を永久的にフォローする能力を有する。従って、医療ロボット10は、手術中、対象の解剖学的場所31の運動に従ってその多関節アーム14の位置を調節することができる。
【0126】
手術の全体を通したセンサ21、22の位置に応じた、低減された影響の領域26の判定は、医療ロボット10の制御ユニット12が、電磁ナビゲーションシステムによって供給される計測がナビゲーションシステムの計測ゾーン25内の金属部分の存在によってわずかにのみ妨害されることを保証しつつ、施術者が予想されたアクションを実行することを可能にする、多関節アーム14の構成を選択することを可能にする。
【0127】
更に、一般的には、以上で検討された実装形態及び実施形態は、非限定的な例として記述され、且つ結果的に他の変形形態が想定され得ることにも留意されたい。
【0128】
特に、様々な方法は、計測ゾーン25の低減された影響の領域26を判定するように提示されている。しかしながら、他の方法も想定することができる。このような方法は、本発明の変形形態に対応するものであるに過ぎない。
図1
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図7