(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】スペクトル的な色印象に基づいて異なる出力アプリケーションに対して一致する色描画を行う方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20231205BHJP
H04N 1/46 20060101ALI20231205BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H04N1/60
H04N1/46
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2021524099
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(86)【国際出願番号】 DE2019100640
(87)【国際公開番号】W WO2020011310
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】102018116717.2
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521014032
【氏名又は名称】カラーディジタル ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】ColorDigital GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Zollhafen 24, 50678 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ ケリング
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-229295(JP,A)
【文献】特開2015-111804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46- 1/64
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々異なる出力アプリケーション対して一致する色描画を行う、コンピュータ支援された方法であって、前記方法は、以下の指示、すなわち、
a)特定の色データをスペクトルデータセットとして識別する指示と、
b)ITインフラストラクチャにおける記憶場所に、識別した前記色データを記憶する指示と、
c)出力アプリケーションについての、前記ITインフラストラクチャを介するデータ照会を識別する指示と、
d)記憶された前記色データを、照会されたアプリケーションに対するLab色空間の値に変換する指示と、
e)特定の出力装置用に装置固有のカラープロファイル
として、ICCプロファイルを照会する指示と、
f)前記照会に対して定められた前記出力装置の前記装置固有のカラープロファイルに、生成したLabデータを変換する指示と、
g)前記照会に対して定められた前記出力装置に、生成した前記Labデータから変換処理した装置固有の前記色データを伝送する指示と、
を有する方法。
【請求項2】
方法ステージa)に対し、使用のために、識別される前記色データをすでに格納されている色データから供給する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2のインフラストラクチャの装置固有の前記カラープロファイルに、方法ステージf)において行われる前記Labデータの前記変換を行う、
請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な標準にしたがってデータ処理技術的に色値が利用される多種多様な出力アプリケーションに対して色情報値を処理する分野に関連し、また位置に依存せずに、意図した色再現に色データを調整および適合させることにより、任意の出力アプリケーションに対し、特にディスプレイおよび別の光学式再現装置に対し、ならびに印刷技術的および染色技術的な再現に対し、あらかじめ定められた色印象を制御し、損失なしに、かつ正しい色で描画することに関する。
【背景技術】
【0002】
カラーマネージメントは、一般に、入力装置の取り込み可能な色空間を、描画システムによって描画可能な色の範囲に適合させるために使用される。従来技術によれば、これに対して種々異なる方法が公知であり、これらは一般にカラーマネージメントという名称でもまとめられる。
【0003】
刊行物欧州特許第1370071号明細書により、カラーマネージメントによって画像データを最適化するこのような方法が開示されている。この発明が取り組んでいる課題は、取り込み可能な色空間において、入力装置によって生成される画像と、画像描画システムによって描画可能な、出力側の色空間と、が調整され得るようにすることである。この特許明細書には、このために、処理固有の色データを、処理に依存しない色空間に変換処理し、次にこの色空間から再び別の処理固有の色空間に変換処理するという着想が記載されている。
【0004】
しかしながらそこで開示されている発明において不利な点として残っているのは、装置固有の色空間の色データを、処理に依存しない色空間に変換処理するために、意図した色に対する偏差を甘受しなければならないことである。したがってこの方法によっては、入力装置を介して出力アプリケーションまで、損失なしに実際の色印象を伝送することはできない。
【0005】
従来技術では、2014年の"Systems and Methods for Color Management"という名称の刊行物国際公開第2015153764号により、別の方法が開示されており、この方法は、色空間を変換処理するための変換に実際の色受容器についての固定の色データを使用することにより、装置固有の色空間および装置に依存しない色空間の変換処理から引き起こされる偏差の欠点を回避しようと試みている。ここでの欠点は、上記のような特定の色受容器が使用されるアプリケーションに、この方法が限定されてしまうことである。開示されたこの発明は、特定の繊維染料および技術に限定されている。この発明は、別の染色技術に転用するのが困難である。というのは染料が特定の素材に生成する色印象は、素材および別のカテゴリに応じて異なるからである。
【0006】
上に説明した従来技術によれば、色情報がつねに、LAB、RGBまたは類似の色空間のような圧縮された表色系に基づくことは不利である。RGB色空間が、好適には、入力装置および出力装置において装置に依存して使用されるのに対し、LAB色空間は、前もって定義される光源の下での平均的な観察者の眼による色知覚を記述する。2つの色空間において、すべての色を一致して描画することはできない。
【0007】
一つの色の一意的な記述は、従来技術によれば、スペクトル測定によってのみ可能である。しかしながらこのような一意的な記述の情報は、色ファイルおよび画像ファイルを用いた色情報を交換するために、または使用するためには使用されない。一般に、比較的小さい情報ボリュームを有しかつ多くの出力装置および別の応用において色データの利用を可能にするファイル形式が標準として使用される。ファイルサイズに加え、特にインタプリタが存在しないことは、出力アプリケーション用の色情報の定義にスペクトルデータセットが使用されないことの別の理由である。
【0008】
その代わりに色情報は、システムが原因で偏差および色空間損失が生じたとしても、インタープリト可能な標準に変換処理される。色ファイルおよび画像ファイルの生成のために、物理的に測定される色値は、スペクトル測定を用いた一意の記述に対応しない適合した色空間に対応付けられる。したがって記録の際にすでに技術的に生じる偏差は、色の対応付けを変化させてしまうことがあり、また作成側では一意の記述を歪めてしまう装置調整が行われる。偏差は、出力媒体においても生じる。というのは、測定された色の一意の記述の再現にとっては、装置技術的なさまざまな条件は、すでに偏差の原因であるからである。
【0009】
確かに記録媒体および出力媒体は、可能な限りに統一されておりかつ一致する色再現を、異なる出力媒体において実現するために、較正によって標準装置に適合可能である。しかしながらこの較正によって確定しかつ表すことができるのは、規格に対する偏差だけである。この規格は、標準化された色空間システムによる特定の色値の、他の装置における再現にしたがって決定され、スペクトル測定によるのと同様の色印象の一意の記述ではない。
【0010】
従来技術によれば、いわゆるICCプロファイル(インターナショナルカラーコンソーシアム、同義用語:カラープロファイル)の使用が公知でありかつ広く行き渡っている。これは、例えばモニタ、プリンタ、スキャナなどの色入力装置または色再現装置の色空間を記述する規格化されたデータセットである。ICCは、グラフィックプログラム、画像処理プログラムおよびレイアウトプログラムの多くのメーカの連合体を表す。ICCは、カラーマネージメントシステムの統一を達成するという目的で1993に設立されている。これにより、任意の入力装置によって取り込んだ原本を出力装置において可能な限りにそっくりに再現しようとしている。最終的にこのカラーマネージメントシステムは、スキャナ、デジタルカメラ、モニタ、プリンタならびにフィルムセッタおよびプレートセッタのような装置を互いに調整して、さまざまな条件に対応して色を表示するために使用される。
【0011】
ここでの欠点は、比較的小さい色空間による、使用される色ファイルにより、種々異なるカラープロファイル間で一致するインターオペラビリティが可能にならず、特に、すべての色データを含むカラープロファイルによって可能にならないことである。特定の装置に描画することができない色は、ICCプロファイルにあらかじめ記憶されている値によって置き換えられる。逆に、置き換えられた色データから一意の記述に戻すことはできない。
【0012】
従来技術によるカラーマネージメントでは、原本との色比較によるパターンの制御のない出力媒体により、色一致についての保証が得られず不都合になることがある。例えば、開発プロセスおよび設計プロセスでは、作製対象の製品に造形の色印象を伝達できるようにするために色パターンが要求されて比較される。この点において造形プロセスにはコストがかかる。というのは、CAD方式で開発される製品の色印象は、デジタル的にだけでは調整できないからである。
【0013】
したがって、出力アプリケーションに至るまでの不都合な色偏差を回避する方法に対する要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって本発明の根底にある課題は、任意の出力アプリケーションにおいて色印象を制御して、損失なしに、かつ正しい色で描画することを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、請求項1に記載された、色の一意の記述のデータを使用および用意する方法によって解決され、これにより、色の一意の記述のためのこれらのデータは、特定可能なLAB色空間への変換処理にリアルタイムに利用され、別のアプリケーション固有の色空間への変換のためのこれらのデータの利用は、場合によっては、特定の出力装置についてのICCプロファイルを使用して行われる。
【0016】
色の一意の記述を可能にするスペクトルデータを使用することにより、装置に依存しない色空間の計算のために、種々異なるLAB色空間を要求し、装置固有の色空間への変換処理のために、ICCプロファイルも考慮して、色データを最適な品質で生成して伝送することも可能である。LABまたはRGBのような色空間に基づく色ファイルの使用および格納によって生じる色偏差は、これによって回避される。この方法にはクラウド技術が利用され、これにより、特にスペクトル測定にしたがって得られるような、一意の色記述の極めて膨大な情報をあらゆるところに供給可能である。色の一意の記述を有する色ファイルを使用および用意することにより、変更されていない標準による色空間から変換処理することなく、対象とされる色空間についての標準の変更をつねに考慮することができる。さらに、有利には、本発明により、画像技術アプリケーションまたは印刷技術アプリケーションに限定されることがなく、純粋に物理的な色印象が記憶されて移行可能になり、さらにその格納およびアーカイブ化にも利用可能な独立した別の方法が提供される。
【0017】
一実施形態において本発明には、実際の装置固有の色データを生成する、コンピュータ実装方法が含まれる。ここでは特定の出力装置用の出力アプリケーションに応じて、装置固有のICCプロファイルを利用し、造形プロセス用に格納された色ファイルを使用することができる。第1の方法ステップでは色データをスペクトルデータセットとして取り込み、本発明による方法における使用のためにアドレッシングする。このようなスペクトルデータセットは、測定によって生成可能である。しかしながら、このスペクトルデータセットを修正することも可能である。この場合にこの実施には、デジタル式造形によって生成または変更されるスペクトルデータセットも含まれる。
【0018】
第2の方法ステップでは、次に、コンピュータネットワークを介するITインフラストラクチャ、好適にはクラウドアプリケーションにおける記憶場所にこのような生成された色データを記憶して利用可能にする。
【0019】
第3の方法ステップでは、出力アプリケーションについての、ITインフラストラクチャを介する外部からのデータ照会を検査し、照会者の設定に基づいて処理する。第4の方法ステップでは、格納された色データを、照会されたアプリケーションに有利なまたは特定された、対応するLAB色空間のLab値に変換するように構成される。いわゆるLAB色空間は、観察者を質問することによって特定される、光量によっても観察者によっても異なる結果となる色記述である。この色モデルは、DIN EN ISO 11664-4、"Colorimetry - Part 4: CIE 1976 L*a*b* Colour space"に準拠する標準CIE LAB色空間として規格化されている。しかしながら標準CIE LAB色空間にも変更が行われる。したがってCIE値については、色位置と観察条件との色差分をより良好に考慮できるようにするために、改善された色差分公式が開発されている。
【0020】
第6の方法ステップでは、照会者によって目標とされている出力アプリケーション用に、場合によっては設けられているICCプロファイルを照会し、後続の方法ステップに利用する。
【0021】
次に、第6の方法ステップでは照会固有に、特定の出力装置を考慮し、ICCプロファイルに基づき、第5の方法ステップで生成したLAB値を装置固有の色空間に変換処理することができる。したがってこの変換処理により、LAB値を介し、スペクトルデータセットの一意の記述から、目標とされている出力装置の装置固有の色空間への色情報の変換がリアルタイムに行われる。第8方法ステップでは、変換処理された色空間をデータセットとしてアプリケーション用に伝送する。リアルタイムに色データを計算することによって保証することができるのは、描画される要素(色)が、出力装置の技術的な可能性に関して、つねに最適な品質で再現されることである。RGB色空間もLab色空間も、数学的な立体として表される。したがってそれらの比に起因して、RGBカラープロファイルに基づく色の記述の変換により、LABカラープロファイルまたは別のRGBカラープロファイルに確実に変換処理することはできない。同じことは、特定のRGBカラープロファイルの、別の出力装置のRGBカラープロファイルへの変換処理についても当てはまる。出力装置には種々異なるICC標準が使用され、これにより、1つのRGBカラープロファイルから別の1つのRGBカラープロファイルに変換処理する際には一意の色情報が失われる。スペクトル測定に基づく色データをスペクトルデータセットとして、例えばクラウドのような外部環境に中央で記憶して供給することは有利である。というのは、このような色ファイルは、極めて大きいからである。好ましいアプリケーションにおいて、色ファイルは31チャネルを有する。スペクトルデータセットの交換は、これに対応して遅くなることがある。さらに加えて、スペクトルデータセットの使用に対して、出力装置において使用されるインタプリタはない。
【0022】
本発明の別の特徴および利点は、本発明を例示的に詳しく説明しようとする以下の図および実施例に示されているが、本発明はこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一意の画像記述から、LAB色空間による画像データに変換処理する際の階層を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、流れ図を示しており、また一意の画像記述の画像データを、LAB色空間による画像データに変換処理する際の階層を説明しており、これらの画像データは、装置固有に種々異なるICCプロファイルにおいて、具体的な出力媒体に供給可能である。このようにして、比較的大きな色空間プロファイルを有するデータセットからつねに画像データの変換処理が行われる。
【0025】
一意でありかつしたがって最大の色再現可能性を有するスペクトルデータセットとして格納される色値は、例えば、スペクトル測定により、またはデジタル造形における設計によって生成され、出力アプリケーション用に呼び出し可能に格納される。これにより、ユーザには、造形プロセスにおいて、出力アプリケーションとは無関係に、造形時に設定された色印象が、出力の際に再現されることが保証される。このためには、特定の出力アプリケーション用に変換処理された色データセットを呼び出す際には、この固有の出力アプリケーションに対する色印象を再現するために、格納されたスペクトルデータセットがLABデータセットを介して装置固有値に変換される。別の出力アプリケーションに対しては、格納されたスペクトルデータセットに基づいて、新たにLABデータセットを生成可能である。LAB値は、アプリケーション固有に要求され、したがって異なっていてよい。