(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】自動車用バッテリデバイス、自動車、及びバッテリデバイスの動作方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20231205BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231205BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231205BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20231205BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
B62D25/20 E
(21)【出願番号】P 2022042614
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】10 2021 109 353.8
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ケルナー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フォルクマー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー へーグ
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520250(JP,A)
【文献】特開2012-129058(JP,A)
【文献】特開2017-091658(JP,A)
【文献】特開2004-311157(JP,A)
【文献】特開2012-243449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
B62D17/00-25/08
B62D25/14-29/04
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハウジング(5.1)を備えた第1のバッテリモジュール(1)と、
第2のハウジング(5.2)を備え、第1の方向(X)において前記第1のバッテリモジュール(1)に隣接して配置された第2のバッテリモジュール(2)と、
クーラントチャネル(12)と、
前記クーラントチャネル(12)に配置され、前記第1のバッテリモジュール(1)と前記第2のバッテリモジュール(2)とを電気的に接続するためのバッテリモジュールコネクタ(13)と
を備える、自動車(200)用バッテリデバイス(100)であって、
前記第1のハウジング(5.1)及び前記第2のハウジング(5.2)が、前記第1の方向(X)と直交して配置された第2の方向(Y)において、互いに反対側にあるそれぞれの端部側(5’)にクーラント入口開口部(10)を有し、前記第2の方向(Y)において前記第1のハウジング(5.1)又は前記第2のハウジング(5.2)の中央に配置され、前記クーラントチャネル(12)内につながる1つのクーラント出口開口部(11)をそれぞれ有することを特徴とする、自動車(200)用バッテリデバイス(100)。
【請求項2】
前記クーラントチャネル(12)が、前記第1の方向(X)に沿って主に延びる方向を有することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項3】
前記端部側(5’)が機械的に強化されて
いることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項4】
前記バッテリモジュールコネクタ(13)がバスバー(13.1)を有
することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項5】
前記第1のバッテリモジュール(1)が、第1のバッテリセルスタック(6)と更なる第1のバッテリセルスタック(7)とを有し、前記第1のバッテリセルスタック(6)と前記更なる第1のバッテリセルスタック(7)とが、前記第1のハウジング(5.1)内で前記第2の方向(Y)において互いに隣接して配置され、
前記第2のバッテリモジュール(2)が、第2のバッテリセルスタック(8)と更なる第2のバッテリセルスタック(9)とを有し、前記第2のバッテリセルスタック(8)と前記更なる第2のバッテリセルスタック(9)とが、前記第2のハウジング(5.2)内で前記第2の方向(Y)において互いに隣接して配置されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項6】
前記第2の方向(Y)に沿ってクーラントを導くためのクーラントセクション(14)が、前記第1のバッテリセルスタック(6)、前記更なる第1のバッテリセルスタック(7)、前記第2のバッテリセルスタック(8)、及び前記更なる第2のバッテリセルスタック(9)の下側(6.1、7.1)に、並びに前記第1のバッテリセルスタック(6)、前記更なる第1のバッテリセルスタック(7)、前記第2のバッテリセルスタック(8)、及び前記更なる第2のバッテリセルスタック(9)の、前記下側(6.1、7.1)とは反対側にある上側(6.2、7.2)に配置されることを特徴とする、請求項5に記
載のバッテリデバイス(100)。
【請求項7】
前記第2の方向(Y)に沿ってクーラントを導くための更なるクーラントセクション(15)が、前記第1のバッテリセルスタック(6)、前記更なる第1のバッテリセルスタック(7)、前記第2のバッテリセルスタック(8)、及び前記更なる第2のバッテリセルスタック(9)のバッテリセル(6’、7’、8’、9’)の間に配置されることを特徴とする、請求項6に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項8】
前記第1の方向(X)及び前記第2の方向(Y)と直交する第3の方向(Z)に沿ってクーラントを導くための更なるクーラントセクション(15)が、前記第1のバッテリセルスタック(6)、前記更なる第1のバッテリセルスタック(7)、前記第2のバッテリセルスタック(8)、及び前記更なる第2のバッテリセルスタック(9)のバッテリセル(6’、7’、8’、9’)の間に配置されることを特徴とする、請求項6に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項9】
前記クーラントセクション(14)を液密に閉鎖するためのクロージャ要素(16)が、前記クーラントセクション(14)において、前記第1のバッテリセルスタック(6)、前記更なる第1のバッテリセルスタック(7)、前記第2のバッテリセルスタック(8)、及び前記更なる第2のバッテリセルスタック(9)の、前記端部側(5’)に面する前記外側(6.3、7.3)で前記上側(6.2、7.2)に、及び前記外側(6.3、7.3)とは反対側にある内側(6.4、7.4)で前記下側(6.1、7.1)に配置されること、又は前記クーラントセクション(14)を液密に閉鎖するためのクロージャ要素(16)が、前記クーラントセクション(14)において、前記第1のバッテリセルスタック(6)、前記更なる第1のバッテリセルスタック(7)、前記第2のバッテリセルスタック(8)、及び前記更なる第2のバッテリセルスタック(9)の前記外側(6.3、7.3)で前記下側(6.1、7.1)に、及び前記内側(6.4、7.4)で前記上側(6.2、7.2)に配置されることを特徴とする、請求項8に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項10】
前記クーラントチャネル(12)が、前記第1のハウジング(5.1)及び前記第2のハウジング(5.2)の内部空間(5’’’)の上側(5’’)且つ外側に配置
されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のバッテリデバイス(100)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のバッテリデバイス(100)を備える自動車(200)。
【請求項12】
前記第1の方向(X)が、前記自動車(200)の長手方向軸(x)に沿って配置され、前記第2の方向(Y)が、前記自動車(200)の横断方向軸(y)に沿って配置されることを特徴とする、請求項11に記載の自動車(200)。
【請求項13】
前記端部側(5’)が、前記自動車(200)のシル(201)に面して配置されることを特徴とする、請求項12に記載の自動車(200)。
【請求項14】
第1のハウジング(5.1)を備えた第1のバッテリモジュール(1)と、
第2のハウジング(5.2)を備え、第1の方向(X)において前記第1のバッテリモジュール(1)に隣接して配置された第2のバッテリモジュール(2)と、
クーラントチャネル(12)と、
前記クーラントチャネル(12)に配置され、前記第1のバッテリモジュール(1)と前記第2のバッテリモジュール(2)とを電気的に接続するためのバッテリモジュールコネクタ(13)と
を備える、自動車(200)用バッテリデバイス(100)の動作方法であって、
前記第1のハウジング(5.1)及び前記第2のハウジング(5.2)が、前記第1の
方向(X)と直交して配置された第2の方向(Y)において互いに反対側にあるそれぞれの端部側(5’)にクーラント入口開口部(10)を有し、前記クーラント入口開口部(10)を通ってクーラントがそれぞれの前記ハウジング(5.1、5.2)に流入し、
前記第1のハウジング(5.1)及び前記第2のハウジング(5.2)が、前記第2の方向(Y)において前記第1のハウジング(5.1)又は前記第2のハウジング(5.2)の中央に配置され、前記クーラントチャネル(12)内につながるクーラント出口開口部(11)をそれぞれ有し、前記クーラント出口開口部(11)を通って前記クーラントがそれぞれの前記ハウジング(5.1、5.2)から流れ出る、自動車(200)用バッテリデバイス(100)の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のハウジングを備えた第1のバッテリモジュールと、第2のハウジングを備え第1の方向において第1のバッテリモジュールに隣接して配置された第2のバッテリモジュールと、クーラントチャネルと、クーラントチャネルに配置され第1のバッテリモジュールと第2のバッテリモジュールとを電気的に接続するためのバッテリモジュールコネクタと、を備える、自動車用バッテリデバイスに関し、また自動車に関する。更に、本発明は、このタイプのバッテリデバイスの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用バッテリデバイス、特に、自動車のトラクション駆動装置に電気エネルギーを供給するためのバッテリデバイスは、自動車の動作中に熱を発生する。バッテリデバイスの実用寿命を比較的長くするには、この熱を除去しなければならない。この点については、液体冷却システムが極めて有効であることが証明されている。一般には、バッテリセルに(例えば、熱伝導性ペーストを介して)熱的に取り付けられている熱的接点が、液体クーラントの作用を受ける。しかしながら、代替的又は追加的に、バッテリモジュール又はバッテリセルもまた、著しく大きな冷却力を提供し得る非導電性の液体クーラントの作用を直接受けることができる。
【0003】
バッテリデバイスは従来、複数のバッテリモジュールから構築され、複数のバッテリモジュールは、複数のバッテリセルを有する少なくとも1つのバッテリセルスタックを備える。バッテリモジュールはバッテリモジュールコネクタによって電気的に接続されているため、すべてのバッテリモジュールは、バッテリデバイスの共通の電気的接続を介して充電及び放電され得る。
【0004】
バッテリデバイスの動作中、バッテリセルだけでなくバッテリモジュールコネクタでも(例えば、抵抗損に起因して)廃熱が発生する。このことも都合が悪く、その理由は、バッテリモジュールコネクタで発生した熱が熱伝導によってバッテリセルに伝わることがあるためである。また、バッテリモジュールコネクタのオーム抵抗が大きくなって実用寿命が短くなるためでもある。
【0005】
従来技術から、バッテリセル及びバッテリモジュールコネクタを冷却することが知られている。例えば、(特許文献1)は、バスバーが配置されたクーラントチャネルを通してバッテリモジュールにクーラントが導かれ、再び排出される、自動車用バッテリデバイスを開示している。この場合、バッテリモジュールと、バッテリモジュールどうしを電気的に接続するバスバーとが冷却される。
【0006】
この欠点は、バッテリモジュールがバスバーよりも大きな冷却力を必要とすることが考慮されていないという点である。バスバーによって既に加熱されているクーラントでバッテリモジュールを冷却することは、非効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第108232361A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を持たず、それどころかバッテリデバイスの極めて効率的な冷却を可能にするバッテリデバイスを提供することであり、本バッテリデバイスにおいては、利用可能な冷却力についてのバッテリデバイスの構成要素の要件が考慮される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、
第1のハウジングを備えた第1のバッテリモジュールと、第2のハウジングを備え、第1の方向において第1のバッテリモジュールに隣接して配置された第2のバッテリモジュールと、クーラントチャネルと、クーラントチャネルに配置され、第1のバッテリモジュールと第2のバッテリモジュールとを電気的に接続するためのバッテリモジュールコネクタと、を備える、自動車用バッテリデバイスであって、第1のハウジング及び第2のハウジングが、第1の方向と直交して配置された第2の方向において互いに反対側にあるそれぞれの端部側にクーラント入口開口部を有し、第2の方向において第1のハウジング又は第2のハウジングの中央に配置され、クーラントチャネル内につながる1つのクーラント出口開口部をそれぞれ有する、自動車用バッテリデバイスによって達成される。
【0010】
本発明によるバッテリデバイスの場合、クーラントが、端部壁を介してバッテリモジュールに横方向に供給される。クーラント入口開口部はハウジングの互いに反対側にある2つの端部側に位置するため、端部側は外側である。クーラントは、バッテリモジュールの外側から、バッテリモジュールを通って中央に流れ、バッテリモジュールを冷却し、その後、中央に配置されたクーラント出口開口部を通ってバッテリモジュールコネクタに導かれ得る。したがって、最適に温度制御されたクーラントがバッテリモジュールに供給されるように、クーラントは、まずバッテリモジュールを冷却し、次いでバッテリモジュールコネクタを冷却する。このことは第1のバッテリモジュール及び第2のバッテリモジュールの両方に適用されるため、両者の要件は同じであり、したがって、第1のバッテリモジュールから第2のバッテリモジュールまでにおいて、バッテリモジュールコネクタの中間冷却に起因して冷却力が低下することがない。
【0011】
バッテリデバイスが、第1のバッテリモジュール及び/又は第2のバッテリモジュールと同じ特徴を有する更なるバッテリモジュールを備えることが想定される。第1のハウジング及び/若しくは第2のハウジング並びに/又はクーラントチャネルが、プラスチック、特に絶縁プラスチックから製造されることが想定される。しかしながら、第1のハウジング及び/若しくは第2のハウジング並びに/又はクーラントチャネルが、金属、特にアルミニウムから作られた構造を有することも想定される。この目的で、第1のハウジング及び/若しくは第2のハウジング並びに/又はクーラントチャネルが、第1のハウジング及び/若しくは第2のハウジング並びに/又はクーラントチャネルを絶縁するための更なる構造を有することが想定される。例えば、この目的で、第1のハウジング及び/若しくは第2のハウジング並びに/又はクーラントチャネルが、金属と絶縁材料(例えば、プラスチック)とから作られたサンドイッチ構造を有することが想定される。
【0012】
本発明の有利な改良及び発展形は、従属請求項、及び図面を参照した説明から得ることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、クーラントチャネルが、第1の方向に沿って主に延びる方向を有する。これにより、クーラントチャネルは好都合なことに、クーラントチャネルが主に延びる方向に一列に並んで配置されているバッテリモジュールに沿って、中央に延びる。好ましくは、バッテリモジュールがバッテリモジュールコネクタと電気的に接触することによって、バッテリモジュールどうしの機械的接続も生じ、これにより、バッテリデバイスの機械的安定性が大幅に高まる。
【0014】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、端部側が機械的に強化され、好ましくは、端部側が、ハウジングの他方の側よりも厚い、及び/又は補強リブを有する、及び/又はハウジングの他方の側よりも高い剛性の材料から製造される。これにより、好都合なことに、バッテリデバイスが、事故時に発生する運動エネルギーを吸収できるとともに、運動エネルギーを運び去り、狙いどおりに運動エネルギーを消散できるという効果が得られる。このことは、クーラントチャネルが進行方向に沿って配置されているときには、特に側面衝突の場合に当てはまる。
【0015】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、バッテリモジュールコネクタがバスバーを有し、好ましくは、バスバーが、第1の方向に沿って配置される。これにより、バッテリモジュールどうしの安定した電気的接続が低抵抗損で可能となる。好ましくは、バスバーは、銅若しくはアルミニウム、又は銅及び/若しくはアルミニウムを含む金属合金から製造される。
【0016】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、第1のバッテリモジュールが、第1のバッテリセルスタックと更なる第1のバッテリセルスタックとを有し、第1のバッテリセルスタックと更なる第1のバッテリセルスタックとが、第1のハウジング内で第2の方向において互いに隣接して配置され、第2のバッテリモジュールが、第2のバッテリセルスタックと更なる第2のバッテリセルスタックとを有し、第2のバッテリセルスタックと更なる第2のバッテリセルスタックとが、第2のハウジング内で第2の方向において互いに隣接して配置される。このことにより、好都合なことに、中央に配置されたクーラントチャネルの左右にそれぞれのバッテリセルスタックを配置することが可能になる。
【0017】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、第2の方向に沿ってクーラントを導くためのクーラントセクションが、第1のバッテリセルスタック、更なる第1のバッテリセルスタック、第2のバッテリセルスタック、及び更なる第2のバッテリセルスタックの下側に、並びに第1のバッテリセルスタック、更なる第1のバッテリセルスタック、第2のバッテリセルスタック、及び更なる第2のバッテリセルスタックの、下側とは反対側にある上側に配置される。これにより、好都合に、クーラントはバッテリセルスタックの上側及び下側に沿って狙いどおりに導かれ、バッテリセルスタックを冷却することが可能になる。好ましくは、クーラントは上側及び下側に直接作用する。この目的のために、好ましくは、クーラントは絶縁クーラント、特にオイルである。しかしながら、バッテリセルに熱的に接続される熱伝導要素は、バッテリセルスタックの上側及び下側に配置されることも想定される。例えば、熱伝導要素は、フィン・ピン構造及び/又はリブ構造を有することが想定される。熱伝導要素は、絶縁熱伝導要素であることが想定される。
【0018】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、第2の方向に沿ってクーラントを導くための更なるクーラントセクションが、第1のバッテリセルスタック、更なる第1のバッテリセルスタック、第2のバッテリセルスタック、及び更なる第2のバッテリセルスタックのバッテリセルの間に配置される。第2の方向に沿った複数の(好ましくは、平行な)更なるクーラントセクションを使用することによって、極めて有効な冷却が生み出される。この目的のために、バッテリセルは、第1の方向及び第2の方向と直交する第3の方向に沿って積み重ねられる。好ましくは、バッテリセルスタックのすべてのバッテリセルの間に更なるクーラントセクションが設けられる。
【0019】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、第1の方向及び第2の方向と直交する第3の方向に沿ってクーラントを導くための更なるクーラントセクションが、第1のバッテリセルスタック、更なる第1のバッテリセルスタック、第2のバッテリセルスタック、及び更なる第2のバッテリセルスタックのバッテリセルの間に配置される。第3の方向に沿った複数の(好ましくは、平行な)更なるクーラントセクションを使用することによって、極めて有効な冷却が同様に生み出される。この目的のために、バッテリセルは、第1の方向又は第2の方向に沿って積み重ねられる、即ち一列に並べられる。好ましくは、バッテリセルスタックのすべてのバッテリセルの間に更なるクーラントセクションが設けられる。クーラントセクション及び更なるクーラントセクションは、クーラントがバッテリセルスタックを通して蛇行して導かれるように設計されることが想定される。
【0020】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、クーラントセクションを液密に閉鎖するためのクロージャ要素が、クーラントセクションにおいて、第1のバッテリセルスタック、更なる第1のバッテリセルスタック、第2のバッテリセルスタック、及び更なる第2のバッテリセルスタックの、端部側に面する外側で上側に、及び外側とは反対側にある内側で下側に配置されること、又はクーラントセクションを液密に閉鎖するためのクロージャ要素が、クーラントセクションにおいて、第1のバッテリセルスタック、更なる第1のバッテリセルスタック、第2のバッテリセルスタック、及び更なる第2のバッテリセルスタックの外側で下側に、及び内側で上側に配置される。これにより、バッテリセルスタックに沿った長い経路にクーラントが追いやられる。そのため、クーラントセクションを更に流れずにクーラントセクションに沿ってクーラント出口開口部まで直接流れることが防止される。同様に、更なるクーラントセクションにおいて加熱されたクーラントは、クーラント入口開口部への逆流が防止され、したがって、既に加熱されたクーラントが再びバッテリセルスタックを流れることが防止される。
【0021】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、クーラントチャネルは、第1のハウジング及び第2のハウジングの内部空間の上側且つ外側に配置され、好ましくは、そこに溶接、接着、及び/又はねじ止めされ、好ましくは、バッテリモジュールコネクタの一部分が内部空間に配置され、好ましくは、バッテリモジュールコネクタの一部分がクーラントチャネルに配置され、特に好ましくは、バスバーがクーラントチャネルに配置される。これにより、好都合なことに、バッテリセルスタックの冷却とバスバーの冷却とを空間的に分離することが実現される。更に、クーラントチャネルが上部において利用可能であることにより、バッテリデバイスの設置が大幅に簡略化される。
【0022】
冒頭に述べた目的を達成するために、本発明は、本発明によるバッテリデバイスを備えた自動車に更に関する。好ましくは、バッテリデバイスは、自動車のトラクション駆動装置に電気エネルギーを供給するためのバッテリデバイスである。好ましくは、自動車は、部分的に電気的に作動する自動車(即ち、電気駆動エンジンと燃焼エンジンとを有するハイブリッド自動車と呼ばれる自動車)又は完全に電気的に作動する自動車である。この目的のために、好ましくは、第1の方向は、自動車の長手方向軸に沿って配置され、第2の方向は、自動車の横断方向軸に沿って配置される。
【0023】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、端部側が自動車のシルに面して配置される。好ましくは、バッテリデバイスは、一方のシルから他方のシルまで延びる。本発明でいうシルは、自動車の車体のサイドシルである。このことにより、好都合なことに、空間が有効に使用される。
【0024】
本発明は、第1のハウジングを備えた第1のバッテリモジュールと、第2のハウジングを備え第1の方向において第1のバッテリモジュールに隣接して配置された第2のバッテリモジュールと、クーラントチャネルと、クーラントチャネルに配置され第1のバッテリモジュールと第2のバッテリモジュールとを電気的に接続するためのバッテリモジュールコネクタとを備える、自動車用バッテリデバイスの動作方法であって、第1のハウジング及び第2のハウジングが、第1の方向と直交して配置された第2の方向において互いに反対側にあるそれぞれの端部側にクーラント入口開口部を有し、クーラント入口開口部を通ってクーラントがそれぞれのハウジングに流入し、第1のハウジング及び第2のハウジング(5.1、5.2)が、第2の方向(Y)において第1のハウジング又は第2のハウジング(5.1、5.2)の中央に配置され、クーラントチャネル(12)内につながるクーラント出口開口部(11)をそれぞれ有し、クーラント出口開口部を通ってクーラントがそれぞれのハウジング(5.1、5.2)から流れ出る、自動車用バッテリデバイスの動作方法に、更に関する。
【0025】
また、バッテリデバイスに関連して説明した利点は、自動車及びバッテリデバイスの動作方法においても達成される。
【0026】
好ましくは、バッテリデバイスは、本発明によるバッテリデバイスである。
【0027】
本発明によるバッテリデバイスに関連して上で開示した詳細、特徴、及び利点のすべてが、本発明による自動車及び本発明による方法にも同様に関連する。
【0028】
本発明の更なる詳細、特徴、及び利点は、図面と図面を参照した好ましい実施形態の以下の説明とから明らかになる。図面は、本発明の例示的な実施形態を示しているに過ぎず、本発明の概念を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるバッテリデバイスを概略的に示す。
【
図2】本発明の例示的な実施形態によるバッテリデバイスを概略的に示す。
【
図3】本発明の例示的な実施形態によるバッテリデバイスを概略的に示す。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による自動車を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、第3の方向に沿って、ここでは上方から見た、バッテリデバイス100を概略的に示す(
図1を参照)。第1のバッテリモジュール1、第2のバッテリモジュール2、第3のバッテリモジュール3、第4のバッテリモジュール4が見える。バッテリモジュール1、2、3、4は、第3の方向と直交する方向を向く第1の方向Xにおいて互いに隣接して配置される。バッテリデバイス100は、自動車(
図4を参照)用バッテリデバイス100である。第1の方向X及び第3の方向と直交する第2の方向Yにおいて、自動車のシル201が、バッテリモジュール1、2、3、4に隣接して配置される。バッテリモジュール1、2、3、4は、ハウジングを備える。ここでは、第1のバッテリモジュール1の第1のハウジング5.1と、第2のバッテリモジュール2の第2のハウジング5.2とを記している。
【0031】
バッテリモジュール1、2、3、4のハウジング5.1、5.2には、第1のバッテリモジュール1の第1のバッテリセルスタック6及び更なる第1のバッテリセルスタック7と、第2のバッテリモジュール2の第2のバッテリセルスタック8及び更なる第2のバッテリセルスタック9と、第3のバッテリモジュール3の第3のバッテリセルスタック8’及び更なる第3のバッテリセルスタック9’と、第4のバッテリモジュール4の第4のバッテリセルスタック8’’及び更なる第4のバッテリセルスタック9’’とが配置される。
【0032】
バッテリセルスタック6、7、8、8’、8’’、9、9’、9’’を冷却するために、ハウジング5.1、5.2のシル201に面する端部側5’が、クーラント入口開口部10を有する。明確にするために、
図1ではクーラント入口開口部10は2つの位置だけにしか記されていないが、すべてのバッテリモジュール1、2、3、4の両方の端部側5’に存在する。クーラント(好ましくは、絶縁クーラント)は、クーラント入口開口部10を通ってハウジング5.1、5.2に流入し、バッテリセルスタック6、7、8、8’、8’’、9、9’、9’’に作用する。ここでは、クーラントの流路を破線の矢印で示している。
【0033】
クーラントは、端部側5’からクーラントセクション14を通って中央に向かって流れ、中央において、クーラントはクーラント出口開口部11を通ってクーラントチャネル12に流入する。明確にするために、ここではクーラントセクション14及びクーラント出口開口部11は1度だけしか記されていないが、バッテリモジュール1、2、3、4のそれぞれに存在する。
【0034】
クーラントチャネル12は、バッテリセルスタック6、7、8、8’、8’’、9、9’、9’’によって加熱されたクーラントを回収し、上記クーラントを第1の方向Xに沿って前方に運ぶ。クーラントチャネル12には、クーラントによって同様に冷却されるバッテリモジュールコネクタ(
図2及び
図3参照)が配置される。
【0035】
図2は、本発明の例示的な実施形態によるバッテリデバイス100を概略的に示す。ここでは
図1のバッテリデバイス100を第1の方向に沿って(即ち、正面から)見て示している。ここでは、第1のハウジング5.1を備えた第1のバッテリモジュール1、端部壁5’、横方向のクーラント入口開口部10、第1のバッテリセルスタック6、更なる第1のバッテリセルスタック7、及びクーラント経路(ここでも破線の矢印で示されている)が同様に見える。第2のバッテリモジュールは、視点の関係でここでは見えない。
【0036】
ここでは、クーラントが、端部側5’のクーラント入口開口部10を通って第1のハウジング5.1に入り、第1のバッテリセルスタック6及び更なる第1のバッテリセルスタック7のバッテリセル6’、7’の周りを流れる様子、及びその過程でそれらを冷却する様子が容易に分かる。クーラントは、クーラント入口開口部10から、まず第3の方向Zに沿って(ここでは上方及び下方に)流れ、第1のバッテリセルスタック6及び第1のバッテリセルスタック7の端部側5’に面する外側6.3、7.3を通過する。ここで、クーラントは、第1のバッテリセルスタック6及び第1のバッテリセルスタック7の下側6.1、7.1及び上側6.2、7.2に沿ったクーラントセクション14と、第1のバッテリセルスタック6及び第1のバッテリセルスタック7の個々のバッテリセル6’、7’の間において第2の方向Yに沿って(ここでは水平方向に)中央に向かう更なるクーラントセクション15とに分割される。バッテリセル6’、7’は、第3の方向Zに沿って積み重ねられる。
【0037】
クーラントは、第1のハウジング5.1の中央において、まず第1のハウジング5.1の内部空間5’’’においてバッテリモジュールコネクタ13の一部分の周りを流れ、次いで第1のバッテリセルスタック6及び第1のバッテリセルスタック7の内側6.4、7.4に沿って導かれ、クーラント出口開口部11を通り、第1のハウジング5.1の上側5’’に配置されたクーラントチャネル12内に導かれる。
【0038】
クーラントチャネル12には、クーラントによって同様に冷却されるバッテリモジュールコネクタ13のバスバー13.1が配置される。
【0039】
ここでは第2のバッテリモジュール2、第3のバッテリモジュール3、及び第4のバッテリモジュール4が見えていないが、これらのバッテリモジュール2、3、4におけるクーラントの流れについても、ここに示したものと全く同様に導かれる。
【0040】
クーラントチャネル12及び第1のハウジング5.1は両方とも電気的に絶縁される。端部壁5’は、第1のハウジング5.1の他方の側よりも顕著に大幅に厚い。これにより、事故の際にもエネルギーを吸収して放散させることができる。
【0041】
ここで同様に分かるように、クーラントチャネル12は複数部分に分かれている。クーラント出口開口部11の左右には、2つの下部部分12.2が第1のハウジング5.1に液密に接続される。下部部分12.2に同様に液密に接続された上部部分12.1が、2つの下部部分12.2上に配置される。クーラントチャネル12は、ここでは第1のハウジング5.1上に接着又は溶接される。
【0042】
図3は、本発明の例示的な実施形態によるバッテリデバイス100を概略的に示す。バッテリデバイス100のここで示す実施形態は、
図2に示す実施形態と同様であるが、ここでは、第1のバッテリモジュール1のバッテリセル6’、7’が第2の方向Yに沿って互いに隣接して一列に並ぶ点が異なる。(破線矢印で示す)クーラントは、第1ハウジング5.1の端部側5’にあるクーラント入口開口部10を通って入ると、まず第1のハウジング5.1の内部空間5’’’に流入して、第1のバッテリセルスタック6及び第1のバッテリセルスタック7の下側6.1、7.1へ流入する。クーラントは、下側6.1、7.1に沿ったクーラントセクション14において、更なるクーラントセクション15の間で分割され、第3の方向Zに沿って、第1のバッテリセルスタック6及び第1のバッテリセルスタック7の上側6.2、7.2に流れる。次いで、クーラントは、上側6.2、7.2に沿ってクーラントセクション14を通って中央に導かれ、クーラント出口開口部11を通ってクーラントチャネル12内に導かれる。
【0043】
クーラントが、単にクーラントセクション14を通過してバッテリセルスタック6、7の外側6.3、7.3又は内側6.4、7.4に沿って流れるだけではなく、更なるクーラントセクション15を通って流れるという効果を得るために、バッテリデバイス100は液密クロージャ要素16を備える。
【0044】
ここに示した実施形態の代わりに、クーラントはまた、クロージャ要素16を使用することによって、まず外側6.3、7.3に沿って上方に流れ、更なるクーラントセクション15を通って下方に戻り、最後に内側6.4、7.4を通って再び上方に流れて、クーラント出口開口部11に至ることもできる。また、クーラントがバッテリセル6’、7’の間を(即ち、上方と下方とを交互に)蛇行するように、クロージャ要素が配置されることも想定される。
【0045】
また、ここでは、
図2に示す例示的な実施形態と同様に、バスバー13.1を備えたバッテリモジュールコネクタ13と、下部部分12.2及び上部部分12.1を備えたクーラントチャネル12の複数部分構造とが見られる。
【0046】
ここでは第2のバッテリモジュール2、第3のバッテリモジュール3、及び第4のバッテリモジュール4が見えないが、これらのバッテリモジュール2、3、4におけるクーラントの流れについても、ここに示したものと全く同様に導かれる。
【0047】
図4は、本発明の例示的な実施形態による自動車200を概略的に示す。自動車200は、本発明の例示的な実施形態によるバッテリデバイス100を備える。自動車200のシル201が見えている。また、自動車200の長手方向軸xに相当する第1の方向X、自動車200の横断方向軸yに相当する第2の方向Y、及び自動車200の上下方向軸zに相当する第3の方向Zも示されている。
【符号の説明】
【0048】
1 第1のバッテリモジュール
2 第2のバッテリモジュール
3 第3のバッテリモジュール
4 第4のバッテリモジュール
5.1 第1のハウジング
5.2 第2のハウジング
5’ 端部側
5’’ 上側
5’’’ 内部空間
6 第1のバッテリセルスタック
6.1 第1のバッテリセルスタックの下側
6.2 第1のバッテリセルスタックの上側
6.3 第1のバッテリセルスタックの外側
6.4 第1のバッテリセルスタックの内側
7 更なる第1のバッテリセルスタック
7.1 更なる第1のバッテリセルスタックの下側
7.2 更なる第1のバッテリセルスタックの上側
7.3 更なる第1のバッテリセルスタックの外側
7.4 更なる第1のバッテリセルスタックの内側
8 第2のバッテリセルスタック
8’ 第3のバッテリセルスタック
8’’ 第4のバッテリセルスタック
9 更なる第2のバッテリセルスタック
9’ 更なる第3のバッテリセルスタック
9’’ 更なる第4のバッテリセルスタック
10 クーラント入口開口部
11 クーラント出口開口部
12 クーラントチャネル
12.1 上部部分
12.2 下部部分
13 バッテリモジュールコネクタ
13.1 バスバー
14 クーラントセクション
15 更なるクーラントセクション
16 クロージャ要素
200 自動車
201 シル
x 長手方向軸
X 第1の方向
y 横断方向軸
Y 第2の方向
z 上下方向軸
Z 第3の方向