(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20231205BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20231205BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01B11/02 H
H05K13/08 Q
H05K3/34 512A
(21)【出願番号】P 2022094015
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2020551746の分割
【原出願日】2018-10-23
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹也
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀一郎
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-315896(JP,A)
【文献】特開2008-216140(JP,A)
【文献】特開平09-250989(JP,A)
【文献】特開2003-86919(JP,A)
【文献】特開2008-235739(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184855(WO,A1)
【文献】特開2003-60398(JP,A)
【文献】特開平10-86322(JP,A)
【文献】特開2005-3381(JP,A)
【文献】特開2008-10666(JP,A)
【文献】特開2002-303590(JP,A)
【文献】米国特許第5912984(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/02
H05K 3/34
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材を保持する転写装置と、
部品を吸着し、前記部品の下面側の端子を前記転写装置の前記転写材に浸して前記端子に前記転写材を転写し、回路基板に実装する吸着ノズルと、
前記部品の画像を撮像する部品撮像用カメラと、
前記端子のサイズのデータを含む部品データを記憶する記憶装置と、
前記部品撮像用カメラで撮像した前記部品の画像を取得し、取得した前記画像が前記転写材の転写前に撮像した転写前画像であるか否かを判定し、前記転写前画像と判定した場合には、当該転写前画像の2値化処理のしきい値として、転写前しきい値を用いて当該転写前画像を2値化処理し
て当該転写前画像における前記端子のサイズを計測し前記部品データに含まれる前記端子のサイズのデータとの差が許容誤差範囲内であるか否かを判定し、取得した前記画像が前記転写前画像でないと判定した場合には、当該画像が前記転写材の転写後に撮像した転写後画像であると判定し、当該転写後画像の2値化処理のしきい値として、転写後しきい値を用いて当該転写後画像を2値化処理
して前記端子のサイズを計測し前記転写後画像における前記端子のサイズを計測し前記部品データに含まれる前記端子のサイズのデータとの差が許容誤差範囲内であるか否かを判定する制御装置と、
を備えた部品実装機。
【請求項2】
前記転写前しきい値と前記転写後しきい値は、前記転写前画像を2値化処理して計測した前記端子のサイズと、前記転写後画像を2値化処理して計測した前記端子のサイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように設定された、請求項
1に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品実装機の部品撮像用カメラで撮像した部品の画像を処理して当該部品を認識する機能を備えた部品実装機に関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特開2008-216140号公報)に記載されているように、部品実装機に半田等の転写材を溜める転写槽をセットして、部品供給装置から供給される部品を吸着ノズルに吸着して、その部品の下面側の複数の端子(バンプ)を転写槽内の転写材に浸して当該複数の端子に転写材を転写してから、当該部品を回路基板に実装するようにしたものがある。
【0003】
この部品実装機の稼働中には、部品を回路基板に実装する前に、部品の下面側を部品撮像用カメラで撮像して、その画像を2値化処理して部品の下面側の端子を認識して、その端子のサイズを計測し、その計測値と当該部品の画像処理用の部品データに含まれる端子サイズのデータとの差が許容誤差範囲内(トレランス範囲内)であるか否かを判定し、当該差が許容誤差範囲内であれば、実装可能な部品と判断して当該部品を回路基板に実装するが、当該差が許容誤差範囲を超えれば、実装不可の部品と判断して当該部品を所定の廃棄場所に廃棄するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、部品の下面側を部品撮像用カメラで撮像するタイミングは、下面側の端子への転写材の転写前と転写後のいずれか一方がユーザーによって選択される。しかし、部品データに含まれる端子サイズのデータは、カタログ等の製品仕様書に記載された端子仕様データやCADデータから求めたものが用いられたり、或は、当該部品をカメラで撮像して、その画像を2値化処理して部品の下面側の端子を認識して、その端子のサイズを計測し、その計測値を端子サイズとして部品データに含ませるようにしている。
【0006】
部品の下面側を撮像した画像は、端子部分が白色系の色で、その周囲の背景部分が黒色系の色に写るが、転写材の転写前と転写後では端子部分の輝度が相違し、転写材が半田の場合には、転写後の端子部分が転写前の端子部分よりも暗く写る。しかし、従来は、転写後の画像を2値化処理する場合も、転写前の画像を2値化処理する場合と同じしきい値を用いて2値化処理するようにしているため、転写前と転写後では端子サイズの計測値が異なってくる(転写材が半田の場合は転写後の端子サイズの計測値が小さくなる)。このため、転写後の画像を2値化処理した場合には、端子サイズの計測値と部品データに含まれる端子サイズのデータとの差が許容誤差範囲を超えてしまう可能性があり、2値化処理により端子を誤認識してしまう可能性があった。その結果、本来的に実装可能な部品を実装不可と誤認識して廃棄してしまったり、その反対に、本来的に実装不可の部品を実装可能と誤認識して回路基板に実装してしまう可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、転写材を保持する転写装置と、部品を吸着し、前記部品の下面側の端子を前記転写装置の前記転写材に浸して前記端子に前記転写材を転写し、回路基板に実装する吸着ノズルと、前記部品の画像を撮像する部品撮像用カメラと、前記端子のサイズのデータを含む部品データを記憶する記憶装置と、前記部品撮像用カメラで撮像した前記部品の画像を取得し、取得した前記画像が前記転写材の転写前に撮像した転写前画像であるか否かを判定し、前記転写前画像と判定した場合には、当該転写前画像の2値化処理のしきい値として、転写前しきい値を用いて当該転写前画像を2値化処理して当該転写前画像における前記端子のサイズを計測し前記部品データに含まれる前記端子のサイズのデータとの差が許容誤差範囲内であるか否かを判定し、取得した前記画像が前記転写前画像でないと判定した場合には、当該画像が前記転写材の転写後に撮像した転写後画像であると判定し、当該転写後画像の2値化処理のしきい値として、転写後しきい値を用いて当該転写後画像を2値化処理して前記端子のサイズを計測し前記転写後画像における前記端子のサイズを計測し前記部品データに含まれる前記端子のサイズのデータとの差が許容誤差範囲内であるか否かを判定する制御装置と、を備えた構成としたものである。
【0008】
この構成により、部品撮像用カメラが撮像した部品の画像を2値化処理する際に、転写の前後で2値化処理のしきい値を転写前しきい値と転写後しきい値とで自動的に切り換えて2値化処理することができ、転写前画像と転写後画像のどちらも適正な2値化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施例1の部品データ作成システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は部品実装機の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は実施例1の2値化処理用しきい値設定プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は実施例1の画像処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は実施例2の転写前しきい値設定プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書で開示した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1を
図1乃至
図4に基づいて説明する。
図1に示すように、部品データ作成システム10は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ11と、部品データ作成対象となる部品の撮像画像を取り込むためのカメラ12と、このカメラ12で撮像する部品を照明する照明装置13と、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置14と、液晶ディスプレイ、CRT等の表示装置15と、後述する部品データ作成プログラムや各種のデータ等を記憶する記憶装置16とを備えた構成となっている。コンピュータ11は、カメラ12で撮像した部品の画像を処理する画像処理装置としても機能し、その画像処理結果に基づいて部品データを作成する。
【0012】
この部品データは、後述する部品実装機20の部品撮像用カメラ21で撮像した部品の画像を処理して当該部品を認識する際に使用する当該部品の形状的な特徴を示す形状データを含む。この形状データは、例えば、部品ボディのサイズ(X、Y、Z方向の寸法等)や端子に関するデータであり、例えば、リード付き部品であれば、リードの幅、長さ、リードピッチ、リードの位置、リード本数等のデータであり、BGA部品であれば、バンプ径(端子のサイズ)、バンプピッチ(端子のピッチ)、バンプの位置、バンプ個数等のデータである。
【0013】
更に、部品データ作成対象の部品がその下面側の端子に半田、導体ペースト、フラックス、接着剤のいずれかの転写材を転写してから回路基板に実装するBGA部品等の転写対象部品である場合、作成する部品データには、形状データの他に、転写材の転写前の部品の下面側を撮像した転写前画像を2値化処理するための転写前しきい値と、転写材の転写後の部品の下面側を撮像した転写後画像を2値化処理するための転写後しきい値とが含まれる。形状データには、部品データに含まれる転写前しきい値(又は転写後しきい値)を用いて転写前画像(又は転写後画像)を2値化処理して計測した端子のサイズ、端子のピッチ、端子の位置、端子の個数等が含まれる。転写前しきい値と転写後しきい値の設定方法については後述する。
【0014】
カメラ12は、
図2に示す部品実装機20に搭載された部品撮像用カメラ21と同種のカメラであり、グレースケール画像(モノクロ画像)を撮像する撮像素子を用いて構成されている。照明装置13は、部品実装機20の部品撮像用カメラ21で撮像する部品を照明する照明装置22と同一の照明条件(照明角度、照明光量、照明パターン等)で部品データ作成対象となる部品を照明できるように構成されている。
【0015】
図2に示すように、部品実装機20の制御装置23には、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置24と、液晶ディスプレイ、CRT等の表示装置25と、部品実装機20の各機能の動作を制御する制御プログラムや各種データを記憶する記憶装置26等が接続されている。部品実装機20の制御装置23は、1台又は複数台のコンピュータ(CPU)を主体として構成され、部品撮像用カメラ21やマーク撮像用カメラ27で撮像した画像を処理する画像処理装置としても機能する。
【0016】
尚、部品データ作成システム10は、部品実装機20の各装置を利用して構成しても良い。この場合、部品データ作成システム10のコンピュータ11、カメラ12、照明装置13、入力装置14、表示装置15、記憶装置16は、部品実装機20の制御装置23、部品撮像用カメラ21、照明装置22、入力装置24、表示装置25、記憶装置26を利用すれば良い。
【0017】
部品実装機20の制御装置23は、部品実装機20の稼働中に、実装ヘッド(図示せず)を移動させる実装ヘッド移動装置28と、回路基板を搬送するコンベア29の動作を制御し、テープフィーダ、トレイフィーダ等の部品供給装置30から供給される部品を実装ヘッドの吸着ノズル(図示せず)で吸着して回路基板に実装する動作を制御する。この際、吸着ノズルに吸着した部品がBGA部品等の転写対象部品である場合には、吸着ノズルに吸着した部品を転写装置31の上方へ移動させて下降させることで、当該部品の下面側の各端子(バンプ)を転写装置31の転写槽内の半田、導体ペースト、フラックス、接着剤のいずれかの転写材に浸して各端子に転写材を転写してから、当該部品を回路基板に実装する。
【0018】
更に、部品実装機20の制御装置23は、吸着ノズルに吸着した転写対象部品に転写材を転写する前又は転写材を転写した後に、当該部品の下面側を部品撮像用カメラ21で撮像し、この撮像画像を2値化処理して当該部品の端子を認識して端子のサイズ(バンプ径等)を計測する。この際、部品実装機20の制御装置23は、後述する
図4の画像処理プログラムを実行することで、転写前画像を2値化処理する場合には、後述する部品データに含まれる転写前しきい値を用いて当該転写前画像を2値化処理して端子のサイズを計測し、一方、転写後画像を2値化処理する場合には、部品データに含まれる転写後しきい値を用いて当該転写後画像を2値化処理して端子のサイズを計測する。部品実装機20の制御装置23は、転写前画像又は転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、部品データの形状データに含まれる端子サイズのデータとの差が許容誤差範囲内(トレランス範囲内)であるか否かを判定し、当該差が許容誤差範囲内である場合には、実装可能な部品と判断して当該部品を回路基板に実装するが、当該差が許容誤差範囲を超えている場合には、実装不可の部品と判断して当該部品を所定の廃棄場所に廃棄する。
【0019】
前述したように、部品データ作成対象の部品が転写対象部品である場合、部品データ作成システム10で作成する部品データには、当該部品の形状的な特徴を示す形状データの他に、転写材の転写前の部品の下面側を撮像した転写前画像を2値化処理するための転写前しきい値と、転写材の転写後の部品の下面側を撮像した転写後画像を2値化処理するための転写後しきい値とが含まれる。部品データ作成システム10のコンピュータ11は、後述する
図3の2値化処理用しきい値設定プログラムを実行することで、転写前しきい値と転写後しきい値を、転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように設定する。
【0020】
本実施例1では、コンピュータ11は、部品データに含ませる転写前しきい値を用いて転写前画像を2値化処理して端子のサイズを計測する転写前計測工程と、転写後しきい値の暫定値を設定してその暫定値で前記転写後画像を2値化処理して前記端子のサイズを計測する転写後計測工程と、前記転写前計測工程で計測した端子のサイズと前記転写後計測工程で計測した端子のサイズとの差が所定の許容範囲内に収まるまで前記転写後しきい値の暫定値を修正して前記転写後計測工程で端子のサイズを計測する処理を繰り返し、前記差が前記所定の許容範囲内に収まったときの転写後しきい値の暫定値を最適な前記転写後しきい値として部品データに含ませる転写後しきい値最適化工程とを実行する。
【0021】
ここで、転写前計測工程の2値化処理で使用する転写前しきい値は、従来と同様の方法で事前に設定された転写前しきい値(部品データに含まれる転写前しきい値)であり、例えば、転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、製品仕様書等に記載された端子仕様又はCADデータから求めた基準サイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように転写前しきい値が設定されている。
【0022】
以上説明した転写前しきい値と転写後しきい値の設定処理は、部品データ作成システム10のコンピュータ11によって
図3の2値化処理用しきい値設定プログラムに従って次のように実行される。
【0023】
コンピュータ11は、
図3の2値化処理用しきい値設定プログラムを起動すると、まずステップ101で、事前に部品データに設定された転写前しきい値を取得した後、ステップ102に進み、転写前しきい値を用いて転写前画像を2値化処理して端子のサイズAを計測する。この際、転写前画像を撮像するタイミングは、転写前画像の2値化処理直前に限定されず、2値化処理前であれば、いつであっても良い。例えば、事前に転写材の転写前の部品の下面側をカメラ12で撮像して、その画像を転写前画像として記憶装置16に記憶しておき、その記憶装置16から転写前画像をコンピュータ11が読み込むようにしても良い。或は、部品実装機20の部品撮像用カメラ21で撮像した転写前画像をコンピュータ11に転送するようにしても良い。
【0024】
この後、ステップ103に進み、転写後しきい値の暫定値(初期値)を転写前しきい値に基づいて設定する。この際、転写後しきい値の暫定値(初期値)は、転写前しきい値と同じ値に設定しても良いし、転写前しきい値を少し減少又は増加させた値に設定しても良い。転写材が半田の場合には、転写後画像が転写前画像よりも暗く写るため、転写後しきい値の暫定値(初期値)を転写前しきい値よりも少し小さい値に設定しても良い。転写後しきい値の暫定値(初期値)は、転写前しきい値に対して固定値を減算又は加算した値に設定しても良いし、或は、転写前しきい値に所定の増減係数(1±α)を乗算した値に設定しても良い。この転写後しきい値の暫定値(初期値)は、コンピュータ11が自動設定するようにしても良いし、作業者が入力装置14を操作して手動設定するようにしても良い。
【0025】
転写後しきい値の暫定値(初期値)の設定後、ステップ104に進み、転写後しきい値の暫定値を用いて転写後画像を2値化処理して端子のサイズBを計測する。この際、転写後画像を撮像するタイミングは、当該転写後画像の2値化処理直前に限定されず、2値化処理前であれば、いつであっても良い。例えば、事前に転写材の転写後の部品の下面側をカメラ12で撮像して、その画像を転写後画像として記憶装置16に記憶しておき、その記憶装置16から転写後画像をコンピュータ11が読み込むようにしても良い。或は、部品実装機20の部品撮像用カメラ21で撮像した転写後画像をコンピュータ11に転送するようにしても良い。
【0026】
この後、ステップ105に進み、前記ステップ102(転写前計測工程)で計測した端子のサイズAと、前記ステップ104(転写後計測工程)で計測した端子のサイズBとの差(A-B)が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定する。その結果、当該差(A-B)が所定の許容範囲内に収まっていないと判定した場合には、ステップ106に進み、転写後しきい値の暫定値を修正する。この際、差(A-B)がプラス値の場合には、転写後しきい値の暫定値を小さくする方向に修正し、差(A-B)がマイナス値の場合には、転写後しきい値の暫定値を大きくする方向に修正する。転写後しきい値の暫定値の修正量は、予め決められた固定値又は固定割合であっても良いし、差(A-B)に応じて暫定値の修正量を増減させるようにしても良い。転写後しきい値の暫定値の修正量は、コンピュータ11が自動設定するようにしても良いし、作業者が入力装置14を操作して手動設定するようにしても良い。
【0027】
転写後しきい値の暫定値の修正後、前記ステップ104に戻り、修正した転写後しきい値の暫定値を用いて転写後画像を2値化処理して端子のサイズBを計測した後、ステップ105に進み、差(A-B)が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定する。以上の処理によって、差(A-B)が所定の許容範囲内に収まるまで転写後しきい値の暫定値を修正して転写後画像を2値化処理して端子のサイズBを計測する処理を繰り返し、差(A-B)が所定の許容範囲内に収まったと判定した時点で、ステップ105からステップ107に進み、その時点の転写後しきい値の暫定値を最適な転写後しきい値として部品データに設定して、本プログラムを終了する。
【0028】
以上説明した
図3の2値化処理用しきい値設定プログラムによって作成した部品データは、部品実装機20の制御装置23に転送される。部品実装機20の制御装置23は、部品撮像用カメラ21で部品を撮像する毎に、
図4の画像処理プログラムを実行して、次のようにして当該部品の画像を処理する。
【0029】
部品実装機20の制御装置23は、
図4の画像処理プログラムを起動すると、まず、ステップ201で、部品撮像用カメラ21で撮像した部品の画像を取得する。この後、ステップ202に進み、取得した部品の画像が転写対象部品の画像であるか否かを判定し、転写対象部品の画像でないと判定した場合には、ステップ208に進み、転写材を転写しない部品の画像を対象とする通常の画像処理を行って、本プログラムを終了する。
【0030】
これに対し、上記ステップ202で、取得した部品の画像が転写対象部品の画像であると判定した場合には、ステップ203に進み、取得した部品の画像が転写材の転写前に撮像した転写前画像であるか否かを判定して、転写前画像と判定した場合には、ステップ204に進み、当該転写前画像の2値化処理のしきい値として、部品データに含まれる転写前しきい値を選択して、次のステップ205で、当該転写前しきい値を用いて当該転写前画像を2値化処理して端子のサイズを計測して、本プログラムを終了する。
【0031】
一方、上記ステップ203で、転写前画像でないと判定した場合、つまり転写材の転写後に撮像した転写後画像と判定した場合には、ステップ206に進み、当該転写後画像の2値化処理のしきい値として、部品データに含まれる転写後しきい値を選択して、次のステップ207で、当該転写後しきい値を用いて当該転写後画像を2値化処理して端子のサイズを計測して、本プログラムを終了する。
【0032】
以上説明した本実施例1によれば、部品データには、転写前画像を2値化処理するための転写前しきい値と、転写後画像を2値化処理するための転写後しきい値とが含まれるため、転写前画像を2値化処理する場合には、部品データに含まれる転写前しきい値を用いて転写前画像を2値化処理して端子のサイズを計測し、一方、転写後画像を2値化処理する場合には、部品データに含まれる転写後しきい値を用いて転写後画像を2値化処理して端子のサイズを計測することができる。
【0033】
更に、本実施例1では、転写前しきい値と転写後しきい値は、転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように設定されているため、転写前画像と転写後画像のどちらを2値化処理しても、端子のサイズの計測値を許容誤差範囲内に収めることができて、2値化処理による端子の誤認識を未然に防止できる。
【実施例2】
【0034】
次に、
図5を用いて実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一の部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0035】
前記実施例1で説明した
図3の2値化処理用しきい値設定プログラムでは、転写前画像の2値化処理で使用する転写前しきい値は、事前に部品データに設定されている転写前しきい値を使用するようにしたが、本実施例2では、部品データ作成システム10のコンピュータ11によって
図5の転写前しきい値設定プログラムを実行することで、転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、製品仕様書等に記載された端子仕様又はCADデータから求めた基準サイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように転写前しきい値を設定した後、
図3の2値化処理用しきい値設定プログラムを実行して転写後しきい値を設定するようにしている。
【0036】
部品データ作成システム10のコンピュータ11は、
図5の転写前しきい値設定プログラムを起動すると、まず、ステップ301で、製品仕様書等に記載された端子仕様又はCADデータから端子の基準サイズCを設定する。ここで、端子の基準サイズCは、転写前しきい値を最適化するための端子サイズの目標計測値に相当する。この基準サイズCは、コンピュータ11が自動設定するようにしても良いし、作業者が入力装置14を操作して手動設定するようにしても良い。
【0037】
基準サイズCの設定後、ステップ302に進み、転写前しきい値の暫定値(初期値)を設定する。この転写前しきい値の暫定値(初期値)は、コンピュータ11が自動設定するようにしても良いし、作業者が入力装置14を操作して手動設定するようにしても良い。
【0038】
転写前しきい値の暫定値(初期値)の設定後、ステップ303に進み、転写前しきい値の暫定値を用いて転写前画像を2値化処理して端子のサイズDを計測する。この際、転写前画像を撮像するタイミングは、当該転写前画像の2値化処理直前に限定されず、2値化処理前であれば、いつであっても良い。例えば、事前に転写材の転写前の部品の下面側をカメラ12で撮像して、その画像を転写前画像として記憶装置16に記憶しておき、その記憶装置16から転写前画像をコンピュータ11が読み込むようにしても良い。或は、部品実装機20の部品撮像用カメラ21で撮像した転写前画像をコンピュータ11に転送するようにしても良い。
【0039】
この後、ステップ304に進み、上記ステップ301で設定した端子の基準サイズCと上記ステップ303で計測した端子のサイズDとの差(C-D)が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定する。その結果、当該差(C-D)が所定の許容範囲内に収まっていないと判定した場合には、ステップ305に進み、転写前しきい値の暫定値を修正する。この際、差(C-D)がプラス値の場合には、転写前しきい値の暫定値を小さくする方向に修正し、差(C-D)がマイナス値の場合には、転写前しきい値の暫定値を大きくする方向に修正する。転写前しきい値の暫定値の修正量は、予め決められた固定値又は固定割合であっても良いし、差(C-D)に応じて暫定値の修正量を増減させるようにしても良い。転写前しきい値の暫定値の修正量は、コンピュータ11が自動設定するようにしても良いし、作業者が入力装置14を操作して手動設定するようにしても良い。
【0040】
転写前しきい値の暫定値の修正後、前記ステップ303に戻り、修正した転写前しきい値の暫定値を用いて転写前画像を2値化処理して端子のサイズDを計測した後、ステップ304に進み、差(C-D)が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定する。以上の処理によって、差(C-D)が所定の許容範囲内に収まるまで転写前しきい値の暫定値を修正して転写前画像を2値化処理して端子のサイズDを計測する処理を繰り返し、差(C-D)が所定の許容範囲内に収まったと判定した時点で、ステップ304からステップ306に進み、その時点の転写前しきい値の暫定値を最適な転写前しきい値として部品データに設定して、本プログラムを終了する。この後、
図3の2値化処理用しきい値設定プログラムを実行して転写後しきい値を設定する。
【0041】
以上のようにして設定した転写前しきい値を用いて転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズ、端子のピッチ、端子の位置、端子の個数等は、形状データとして部品データに設定される。或は、転写後しきい値を用いて転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズ、端子のピッチ、端子の位置、端子の個数等を、形状データとして部品データに設定するようにしても良い。
【0042】
[その他の実施例]
前記実施例1では、転写前しきい値と転写後しきい値は、転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように設定したが、製品仕様書等に記載された端子仕様又はCADデータから端子の基準サイズを設定し、転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズと基準サイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように転写前しきい値を設定すると共に、転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズと基準サイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように転写後しきい値を設定するようにしても良い。
【0043】
また、前記実施例2では、転写前しきい値を設定した後、転写後しきい値を設定するようにしたが、この設定順序を逆にして、転写後しきい値を設定した後、転写前しきい値を設定するようにしても良い。この場合は、転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、端子仕様又はCADデータから求めた基準サイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように転写後しきい値を設定した後、この転写後しきい値を用いて転写後画像を2値化処理して計測した端子のサイズと、転写前画像を2値化処理して計測した端子のサイズとの差が所定の許容範囲内に収まるように転写前しきい値を設定するようにすれば良い。
【0044】
その他、本発明は、上記各実施例に限定されず、種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
10…部品データ作成システム、11…コンピュータ、12…カメラ、13…照明装置、14…入力装置、15…表示装置、16…記憶装置、20…部品実装機、21…部品撮像用カメラ、22…照明装置、23…制御装置(画像処理装置)、24…入力装置、25…表示装置、25…記憶装置、30…部品供給装置、31…転写装置