(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ワーク挿入装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H05K13/04 C
(21)【出願番号】P 2022509790
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012771
(87)【国際公開番号】W WO2021191980
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊川 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 信夫
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-280799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された複数のピンを有するワークの各ピンを、配列された複数の穴を有する被挿入物の対応する穴に挿入するワーク挿入装置であって、
前記ワークを保持する保持部材と、
前記保持部材を前記被挿入物に対して相対回転させる回転装置と、
前記回転装置の回転軸に直交する直交平面に沿って前記保持部材を前記被挿入物に対して相対移動させる移動装置と、
前記ワークの各ピンの実位置を測定し、各ピンにおいて測定した実位置の理想的な位置に対する位置ずれ量を算出し、前記被挿入物に対する相対的な前記ワークの回転角範囲のうちで前記位置ずれ量が最大のピンの位置ずれ量が最小となるような前記ワークの回転角度を求め、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する穴に挿入するに際して前記ワークの回転角度が求めた回転角度となるように前記回転装置を制御する制御装置と、
を備えるワーク挿入装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク挿入装置であって、
前記制御装置は、前記ワークの各ピンについて、前記実位置として前記理想的な位置を原点とする座標系における座標をそれぞれ記憶し、記憶したそれぞれの前記実位置の前記座標間の最大距離が最小となるように前記ワークの回転角度を求める、
ワーク挿入装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のワーク挿入装置であって、
前記制御装置は、前記位置ずれ量に基づいて同一の基準点を基準とした各ピンの位置をそれぞれプロットし、プロットした各ピンの位置を包含する最小円を設定し、前記最小円の半径が最小になる前記ワークの回転角度を求める、
ワーク挿入装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のワーク挿入装置であって、
前記制御装置は、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する穴に挿入するに際して前記最小円の半径が最小になるときの前記最小円の中心点の位置に基づいて前記被挿入物に対する相対的な前記ワークの前記直交平面に沿った位置が補正されるよう前記移動装置を制御する、
ワーク挿入装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のワーク挿入装置であって、
前記制御装置は、前記最小円の半径が最小になるときの前記ワークの回転角度を求めた後、前記ワークの回転角度を求めた回転角度とすると共に前記最小円の中心点の位置に基づいて前記ワークの前記直交平面に沿った位置を補正したときの各ピンの位置と対応する穴の位置とに基づいて、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する孔に挿入できるか否かを判定する、
ワーク挿入装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のワーク挿入装置であって、
前記ワークの各ピンの端面は、四角形状に形成され、
前記制御装置は、前記ワークの各ピンの位置から該各ピンの四隅の位置を推定し、各ピンの四隅の位置が前記被挿入物の対応する穴の領域内に収まるか否かを判定することにより、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する孔に挿入できるか否かを判定する、
ワーク挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ワーク挿入装置について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、リード部品の各リードを取付箇所の対応する挿入穴に挿入する部品実装機(ワーク挿入装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この部品実装機は、部品認識カメラによりリード部品の各リードの実測位置を測定すると共に測定した実測位置の回帰直線を最小二乗法によって算出する。続いて、部品実装機は、基板認識カメラにより取付箇所の各挿入穴の実測位置を測定すると共に測定した実測位置の回帰直線の最小二乗法によって算出する。そして、部品実装機は、リード部品について算出した回帰直線と取付箇所について算出した回帰直線とがなす角度に基づいてヘッドユニットがリード部品を取付箇所に取り付ける際のリード部品の回転角度を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばリード部品が備える多数のリードのうち1つにのみ位置ずれがある場合、回帰直線は、位置ずれのない多数の他のリードの実測位置の影響を強く受けるように算出される。このため、特許文献1記載の部品実装機では、回帰直線に基づいてリード部品の回転角度を調整しても、位置ずれのあるリードの位置が十分に補正されず、対応する挿入穴に挿入できないおそれがある。
【0005】
本開示は、複数のピンを有するワークの各ピンを、複数の穴を有する被挿入物の対応する穴に挿入するものにおいて、複数のピンのうち一部のピンにのみ位置ずれが生じていても、各ピンを対応する穴に挿入することができるワーク挿入装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のワーク挿入装置は、
配列された複数のピンを有するワークの各ピンを、配列された複数の穴を有する被挿入物の対応する穴に挿入するワーク挿入装置であって、
前記ワークを保持する保持部材と、
前記保持部材を前記被挿入物に対して相対回転させる回転装置と、
前記回転装置の回転軸に直交する直交平面に沿って前記保持部材を前記被挿入物に対して相対移動させる移動装置と、
前記ワークの各ピンの実位置を測定し、各ピンにおいて測定した実位置の理想的な位置に対する位置ずれ量を算出し、前記被挿入物に対する相対的な前記ワークの回転角範囲のうちで前記位置ずれ量が最大のピンの位置ずれ量が最小となるような前記ワークの回転角度を求め、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する穴に挿入するに際して前記ワークの回転角度が求めた回転角度となるように前記回転装置を制御する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示のワーク挿入装置は、ワークの各ピンの実位置を測定し、各ピンにおいて測定した実位置の理想的な位置に対する位置ずれ量を算出する。続いて、ワーク挿入装置は、被挿入物に対する相対的なワークの回転角範囲のうちで位置ずれ量が最大のピンの位置ずれ量が最小となるようなワークの回転角度を求める。そして、ワーク挿入装置は、ワークの各ピンを被挿入物の対応する穴に挿入するに際してワークの回転角度が求めた回転角度となるように回転装置を制御する。これにより、複数のピンを有するワークの各ピンを、複数の穴を有する被挿入物の対応する穴に挿入するものにおいて、複数のピンのうち一部のピンにのみ位置ずれが生じていても、各ピンを対応する穴に挿入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のワーク挿入装置の概略構成図である。
【
図2】ワーク挿入装置10の制御ブロック図である。
【
図3】ワーク挿入処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】画像処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】画像処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】ワークの中心位置を認識する様子を示す説明図である。
【
図7】各ピンの実位置を認識する様子を示す説明図である。
【
図8】各ピンの理想位置を推定する様子を示す説明図である。
【
図9】各ピンの理想位置に対する実位置の位置ずれ量を算出する様子を示す説明図である。
【
図10】各ピンの位置ずれ量のプロットの様子を示す説明図である。
【
図11】最小円を設定する様子を示す説明図である。
【
図14】挿入穴を推定する様子を示す説明図である。
【
図15】各ピンの外形を認識する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のワーク挿入装置の概略構成図である。
図2は、ワーク挿入装置10の制御ブロック図である。なお、
図1中、左右方向はX軸方向示し、前後方向はY軸方向を示し、上下方向はZ軸方向を示す。本実施形態のワーク挿入装置10は、所定の間隔をおいて配列された複数のピンP(例えば端面が四角形のピン)を裏面に有するワークW(例えばコネクタ)の各ピンPを、所定の間隔をおいて配列された複数の挿入穴Hを表面に有する被挿入物(例えば基板やソケット)の対応する挿入穴Hに挿入するものとして構成される。このワーク挿入装置10は、
図1に示すように、ワーク供給装置21と搬送装置22とヘッド移動装置30とヘッド40とワークカメラ24とマークカメラ25と廃棄ボックス26と制御装置60(
図2参照)とを備える。これらは、筐体12に収容されている。
【0012】
ワーク供給装置21としては、例えば、ワークWを収容する収容ポケットを多数有するトレイを供給するトレイ供給装置などを挙げることができる。
【0013】
搬送装置22は、例えば、前後(Y軸方向)に所定の間隔をおいて設置され、左右(X軸方向)に架け渡された一対のコンベアベルトを有する。搬送装置22は、一対のコンベアベルトを駆動することにより、被挿入物としての基板Sを左から右へと搬送する。
【0014】
ヘッド移動装置30は、ヘッド40を前後左右(XY軸方向)に移動させるものであり、
図1に示すように、X軸スライダ32とY軸スライダ34とを備える。X軸スライダ32は、Y軸スライダ34の前面に左右方向(X軸方向)に延在するように設置された上下一対のX軸ガイドレール33に支持されている。X軸スライダ32は、X軸アクチュエータ36(
図2参照)の駆動によってX軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動する。Y軸スライダ34は、筐体12の上段部に前後方向(Y軸方向)に延在するように設置された左右一対のY軸ガイドレール35に支持されている。Y軸スライダ34は、Y軸アクチュエータ38(
図2参照)の駆動によってY軸ガイドレール35に沿ってY軸方向に移動する。なお、X軸スライダ32は、X軸位置センサ37(
図2参照)によりX軸方向における位置が検知される。また、Y軸スライダ34は、Y軸位置センサ39(
図2参照)によりY軸方向における位置が検知される。X軸スライダ32にはヘッド40が取り付けられている。このため、ヘッド40は、ヘッド移動装置30(X軸アクチュエータ36およびY軸アクチュエータ38)を駆動制御することにより、XY平面(水平面)に沿って移動する。
【0015】
ヘッド40は、ワークWをピックアップ(吸着)して保持する吸着ノズル41を備える。吸着ノズル41には、図示しないが、電磁弁(開閉弁)を介して負圧源が接続され、吸着ノズル41は、負圧源からの負圧の供給を受けてワークWを吸着する。また、吸着ノズル41は、Z軸アクチュエータ42(
図2参照)の駆動によって上下方向(Z軸方向)に移動し、Θ軸アクチュエータ44(
図2参照)の駆動によってZ軸回りに回転する。なお、吸着ノズル41は、Z軸位置センサ43(
図2参照)によりZ軸方向における位置が検知され、Θ軸位置センサ45(
図2参照)によりΘ軸方向における位置(回転角度Θ)が検知される。
【0016】
ワークカメラ24は、
図1に示すように、ワーク供給装置21と搬送装置22との間に設置されている。ワークカメラ24は、ワーク供給装置21により供給されたワークWをピックアップして搬送装置22により搬送された基板Sに装着(挿入)するに際して、ワークカメラ24の上方をワークWが通過するときに当該ワークWを下方から撮像する。ワークカメラ24で撮像された画像は、吸着ノズル41に保持されているワークWの吸着ノズル41に対する位置ずれ量を判定したり、ワークWの各ピンPを基板Sの対応する挿入穴Hに挿入するための当該ワークWの最適な姿勢を決定したり、ワークWの不良を判定したりするのに用いられる。
【0017】
マークカメラ25は、
図1に示すように、X軸スライダ32に取り付けられ、ヘッド移動装置30によりヘッド40と共にXY軸方向に移動する。マークカメラ25は、搬送装置22により搬入された基板Sに付された基準マークを上方から撮像する。マークカメラ25で撮像された画像は、基板Sの位置を確認したり、基板Sの種類を確認したりするのに用いられる。
【0018】
廃棄ボックス26は、ワーク供給装置21と搬送装置22との間に、ワークカメラ24に隣接して設置されている。廃棄ボックス26は、不良が発生しているワークWを廃棄するためのボックスである。
【0019】
制御装置60は、
図2に示すように、CPU61を中心としたマイクロプロセッサとて構成されており、CPU61の他に、ROM62と、HDD63と、RAM64と、入出力インタフェース65とを備える。これらは、バス66を介して電気的に接続されている。制御装置60には、X軸位置センサ37やY軸位置センサ39、Z軸位置センサ43、Θ軸位置センサ45からの位置信号が入力される。また、制御装置60には、ワークカメラ24やマークカメラ25からの画像信号なども入力される。一方、制御装置60からは、ワーク供給装置21や搬送装置22、X軸アクチュエータ36、Y軸アクチュエータ38、Z軸アクチュエータ42、Θ軸アクチュエータ44への駆動信号が出力される。また、制御装置60からは、ワークカメラ24やマークカメラ25への制御信号も出力される。
【0020】
次に、こうして構成されたワーク挿入装置10の動作について説明する。
図3は、制御装置60のCPU61により実行されるワーク挿入処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、上位の管理コンピュータ(図示せず)から生産の指示を受信したときに実行される。
【0021】
ワーク挿入処理が実行されると、制御装置60のCPU61は、まず、ワーク供給装置21から供給されるワークWの上面を吸着ノズル41に吸着させる吸着動作を行なう(ステップS100)。吸着動作は、ワーク供給装置21によるワークWの供給位置の上方へ吸着ノズル41が移動するようヘッド移動装置30(X軸アクチュエータ36およびY軸アクチュエータ38)を制御した後、吸着ノズル41が下降するようZ軸アクチュエータ42を制御すると共に当該吸着ノズル41に負圧が供給されるよう電磁弁を制御することにより行なわれる。
【0022】
続いて、CPU61は、ワークWを吸着した吸着ノズル41がワークカメラ24の上方へ移動するようヘッド移動装置30を制御して(ステップS110)、ワークカメラ24でワークWの撮像を行なう(ステップS120)。そして、CPU61は、得られた撮像画像に画像処理を施す(ステップS130)。ここで、画像処理では、ワークWの全てのピンPを基板Sの対応する挿入穴Hに挿入させるためのワークWの最適な挿入姿勢(挿入位置および挿入角度)が決定される。更に、画像処理では、ワークWの挿入姿勢の最適化によってワークWの全てのピンPを基板Sの対応する挿入穴Hに挿入させることができるか否かが判定される。こうした画像処理の詳細については後述する。
【0023】
CPU61は、画像処理の結果、ワークWの全てのピンPが基板Sの対応する挿入穴Hに挿入可能であると判定すると(ステップS140の「YES」)、ワークWの挿入位置および挿入角度を画像処理で最適化した挿入位置および挿入角度に補正する(ステップS150)。そして、CPU61は、補正した挿入位置および挿入角度でワークWの各ピンPを基板Sの対応する挿入穴Hに挿入させる挿入動作を行なって(ステップS160)、ワーク挿入処理を終了する。挿入動作は、吸着ノズル41に吸着されているワークWが挿入位置の上方へ移動すると共に挿入角度へ回転するようヘッド移動装置30とΘ軸アクチュエータ44を制御した後、吸着ノズル41が下降するようZ軸アクチュエータ42を制御すると共に当該吸着ノズル41への負圧の供給が解除されるよう電磁弁を制御することにより行なわれる。
【0024】
一方、CPU61は、画像処理の結果、ワークWのいずれかのピンPが基板Sの対応する挿入穴Hに挿入不能であると判定すると(ステップS140の「NO」)、ワークWに不良が発生していると判断し、当該ワークWを廃棄ボックス26へ廃棄する廃棄動作を行なって(ステップS170)、ワーク挿入処理を終了する。廃棄動作は、吸着ノズル41に吸着されているワークWが廃棄ボックス26の上方へ移動するようヘッド移動装置30を制御した後、吸着ノズル41への負圧の供給が解除されるよう電磁弁を制御することにより行なわれる。
【0025】
次に、ステップS130の画像処理の詳細について説明する。
図4および
図5は、画像処理の一例を示すフローチャートである。以下、画像処理について、
図6~
図15を適宜参照しながら説明する。
【0026】
画像処理では、CPU61は、まず、ワークWの全てのピンPをサーチし、ワークWの中心位置Oを認識する(ステップS200)。この処理は、例えば、予め登録したシェイプデータを用いたパターンマッチングにより全てのピンPを認識し、認識した全てのピンPを包含する矩形領域を設定し、設定した矩形領域の中心座標をワークWの中心位置Oとして設定することにより行なわれる(
図6参照)。
【0027】
続いて、CPU61は、ワークWの各ピンPを個別にサーチし、各ピンPの実位置を認識する(ステップS210)。この処理は、例えば、シェイプデータを用いたパターンマッチングにより各ピンPを個別に認識し、認識した各ピンPの外形(四角形)の中心座標(
図7中、バツ印の交点の座標)をそれぞれ実位置として設定することにより行なわれる。
【0028】
そして、CPU61は、ステップS200で認識したワークWの中心位置Oから各ピンPの理想的な位置を推定する(ステップS220)。ここで、各ピンPの理想的な位置は、位置ずれがない状態での各ピンPの外形の中心座標(
図8中、十字の交点の座標)を示す。ステップS220の処理は、ワークWの中心位置Oと各ピンPの理想位置との関係をそれぞれ予め求めて登録しておき、ワークWの中心位置Oを認識すると、認識した中心位置Oと登録した関係とから各ピンPの理想位置をそれぞれ導出することにより行なわれる。
【0029】
CPU61は、こうして各ピンPの実位置を認識すると共に理想位置を推定すると、各ピンPの実位置と理想位置との位置ずれ量Δx,Δyを算出する(ステップS230)。この処理は、X軸方向およびY軸方向のそれぞれにおいて、実位置と理想位置との距離を算出することにより行なわれる(
図9参照)。
【0030】
次に、CPU61は、各ピンPにおいて、XY座標系における同じ基準点から位置ずれ量Δx,Δyだけ離れた点をそれぞれプロットし(ステップS240、
図10参照)、プロットした全ての点を包含する最小円を設定する(ステップS250、
図11参照)。続いて、CPU61は、ワークWの中心位置Oを中心として各ピンPの理想位置を回転させ、最小円の半径が最小になる最適角度θを導出する(ステップS260)。この処理は、例えば、以下のようにして行なうことができる。すなわち、CPU61は、まず、中心位置Oを中心として各ピンPの理想位置を所定角ずつ正逆両回転方向に回転させながら、回転角度ごとの各ピンPの新たな理想位置とステップS210で認識した各ピンPの実位置と位置ずれ量Δx,Δyを算出してXY座標系にプロットする(
図12および
図13参照)。続いて、CPU61は、プロットした全ての点を包含する最小円を設定し、設定した最小円の半径を算出する。そして、CPU61は、半径が最小の最小円が設定された回転角度を最適角度θに設定する。この処理は、Θ軸アクチュエータ44によるワークWの回転角度範囲のうちで、位置ずれ量が最も大きいピンPの位置ずれ量が最小となるようなワークWの回転角度(挿入姿勢)を見つけ出す処理であると言える。これにより、ワークWの各ピンPのうち一部のピンPに位置ずれが生じていても、全てのピンPを基板Sの対応する挿入穴Hに挿入することが可能となる。
【0031】
CPU61は、こうして最小円の半径が最小となる最適角度θを導出すると、導出した最適角度θを角度補正値に設定すると共に(ステップS270)、半径が最小となる最小円の中心点と基準点とのX軸方向およびY軸方向におけるずれ量を位置補正値に設定する(ステップS280)。これにより、ワークWの挿入姿勢は、ワーク挿入処理のステップS150において、位置補正値によりワーク挿入位置が補正されると共に、角度補正値によりワーク挿入角度が補正されることで最適化されることになる。
【0032】
CPU61は、こうしてワークWの挿入姿勢(挿入位置および挿入角度)を最適化すると、被挿入物である基板Sの各挿入穴Hの位置および外形(
図14中、破線参照)を設定する(ステップS290)。この処理は、ステップS260で導出した最適角度θでの各ピンPの理想位置を各挿入穴Hの位置に設定すると共に当該理想位置を中心とした半径rの外形(円)を設定することにより行なわれる。なお、各挿入穴Hの位置および外形は、マークカメラ25で基板Sを撮像して得られた画像にパターンマッチングを適用することにより推定(認識)されてもよい。
【0033】
続いて、CPU61は、実位置を中心とした各ピンPの外形を設定する(ステップS300)。この処理は、各ピンPの実位置と各ピンPのサイズ(縦横長さ)とに基づいて四隅の位置を設定することにより行なわれる。そして、CPU61は、設定した各ピンPの外形がステップS290で設定した対応する挿入穴Hの外形に完全に包含されるか否かを判定する(ステップS310)。この処理は、各ピンPの四隅の位置がいずれも、対応する挿入穴Hの外形に含まれるか否かを判定することにより行なわれる(
図15参照)。なお、CUP61は、各ピンPの外形として、各ピンPの四隅に外接する外接円を設定し、設定した外接円が対応する挿入穴Hの外形に包含するか否かを判定してもよい。CPU61は、ステップS310の判定が肯定的な判定(「YES」)であれば、ワークWの全てのピンPを基板Sの対応する挿入穴Hに挿入可能であると判定して(ステップS330)、画像処理を終了する。この場合、上述したように、ワーク挿入処理のステップS140において肯定的な判定(「YES」)がなされ、ワークWは、画像処理で最適化された挿入位置および挿入姿勢で基板Sに挿入されることになる。
【0034】
一方、CPU61は、ステップS310の判定が否定的な判定(「NO」)であれば、ワークWをどのような姿勢で挿入しようとしても、ワークWを基板Sに挿入不能であると判定して(ステップS340)、画像処理を終了する。この場合、上述したように、ワーク挿入処理のステップS140において否定的な判定(「NO」)がなされ、ワークWは、廃棄ボックス26へ廃棄されることになる。
【0035】
ここで、実施形態の主要な要素と請求の範囲の欄に記載した主要な要素との対応関係について説明する。即ち、本実施形態の吸着ノズル41が「保持部材」に相当し、Θ軸アクチュエータ44が「回転装置」に相当し、ヘッド移動装置30が「移動装置」に相当し、制御装置60が「制御装置」に相当する。
【0036】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、ワークWの挿入位置および挿入角度を最適化した後、ワークWの全てのピンPが基板S(被挿入物)の対応する挿入穴Hに挿入可能であるか否かを判定するものとした。しかし、こうした判定を省略してもよい。
【0038】
上述した実施形態では、ワーク挿入装置10は、ヘッド移動装置30によりヘッド40に保持されたワークWをXY軸方向(前後左右方向)に移動させるものとした。しかし、ワーク挿入装置10は、基板S(被挿入物)をXY軸方向に移動させるものとしてもよい。すなわち、ワークWは、被挿入物に対して相対的にXY軸方向に移動させられるものであればよい。
【0039】
上述した実施形態では、ワーク挿入装置10は、Z軸アクチュエータ42によりワークWをZ軸方向に移動させるものとし、Θ軸アクチュエータ44によりワークWをZ軸回りに回転させるものとした。しかし、ワーク挿入装置10は、基板S(被挿入物)をZ軸方向に移動させると共にZ軸回りに回転させるものとしてもよい。すなわち、ワークWは、被挿入物に対して相対的にZ軸方向に移動させられ、Z軸回りに回転させられるものであればよい。
【0040】
以上説明したように、本開示のワーク挿入装置は、配列された複数のピンを有するワークの各ピンを、配列された複数の穴を有する被挿入物の対応する穴に挿入するワーク挿入装置であって、前記ワークを保持する保持部材と、前記保持部材を前記被挿入物に対して相対回転させる回転装置と、前記回転装置の回転軸に直交する直交平面に沿って前記保持部材を前記被挿入物に対して相対移動させる移動装置と、前記ワークの各ピンの実位置を測定し、各ピンにおいて測定した実位置の理想的な位置に対する位置ずれ量を算出し、前記被挿入物に対する相対的な前記ワークの回転角範囲のうちで前記位置ずれ量が最大のピンの位置ずれ量が最小となるような前記ワークの回転角度を求め、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する穴に挿入するに際して前記ワークの回転角度が求めた回転角度となるように前記回転装置を制御する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0041】
この本開示のワーク挿入装置は、ワークの各ピンの実位置を測定し、各ピンにおいて測定した実位置の理想的な位置に対する位置ずれ量を算出する。続いて、ワーク挿入装置は、被挿入物に対する相対的なワークの回転角範囲のうちで位置ずれ量が最大のピンの位置ずれ量が最小となるようなワークの回転角度を求める。そして、ワーク挿入装置は、ワークの各ピンを被挿入物の対応する穴に挿入するに際してワークの回転角度が求めた回転角度となるように回転装置を制御する。これにより、複数のピンを有するワークの各ピンを、複数の穴を有する被挿入物の対応する穴に挿入するものにおいて、複数のピンのうち一部のピンにのみ位置ずれが生じていても、各ピンを対応する穴に挿入することが可能となる。
【0042】
こうした本開示のワーク挿入装置において、前記制御装置は、前記位置ずれ量に基づいて同一の基準点を基準とした各ピンの位置をそれぞれプロットし、プロットした各ピンの位置を包含する最小円を設定し、前記最小円の半径が最小になる前記ワークの回転角度を求めるものとしてもよい。この場合、前記制御装置は、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する穴に挿入するに際して前記最小円の半径が最小になるときの前記最小円の中心点の位置に基づいて前記被挿入物に対する相対的な前記ワークの前記直交平面に沿った位置が補正されるよう前記移動装置を制御するものとしてもよい。またこの場合、前記制御装置は、前記最小円の半径が最小になるときの前記ワークの回転角度を求めた後、前記ワークの回転角度を求めた回転角度とすると共に前記最小円の中心点の位置に基づいて前記ワークの前記直交平面に沿った位置を補正したときの各ピンの位置と対応する穴の位置とに基づいて、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する孔に挿入できるか否かを判定するものとしてもよい。さらにこの場合、前記ワークの各ピンの端面は、四角形状に形成され、前記制御装置は、前記ワークの各ピンの位置から該各ピンの四隅の位置を推定し、各ピンの四隅の位置が前記被挿入物の対応する穴の領域内に収まるか否かを判定することにより、前記ワークの各ピンを前記被挿入物の対応する孔に挿入できるか否かを判定するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示は、ワーク挿入装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 ワーク挿入装置、12 筐体、21 ワーク供給装置、22 搬送装置、24 ワークカメラ、25 マークカメラ、26 廃棄ボックス、30 ヘッド移動装置、32 X軸スライダ、33 X軸ガイドレール、34 Y軸スライダ、35 Y軸ガイドレール、36 X軸アクチュエータ、37 X軸位置センサ、38 Y軸アクチュエータ、39 Y軸位置センサ、40 ヘッド、41 吸着ノズル、42 Z軸アクチュエータ、43 Z軸位置センサ、44 Θ軸アクチュエータ、45 Θ軸位置センサ、60 制御装置、61 CPU、62 ROM、63 HDD、64 RAM、65 入出力インタフェース、66 バス、H 挿入穴、S 基板、W ワーク、P ピン。