(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】リクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/496 20060101AFI20231205BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20231205BHJP
A61F 13/62 20060101ALI20231205BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20231205BHJP
A61F 13/493 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61F13/496 200
A61F13/56 211
A61F13/62 100
A61F13/15 351
A61F13/15 355Z
A61F13/15 356
A61F13/15 360
A61F13/15 370
A61F13/493
(21)【出願番号】P 2022517654
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2021016007
(87)【国際公開番号】W WO2021220878
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020079873
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】弁理士法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅林 豊志
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-226144(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176386(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/037146(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品であって、
着用者の胴回りを覆う前身頃1および後身頃2と、
着用者の股間を覆い上記前身頃1と上記後身頃2とを接続する股部材3と、
上記前身頃1に形成され、上記前身頃1を左右に分離または分離可能とする単一の分離部10と、
上記分離部10を間に挟んで互いに隣接する上記前身頃1の左右一対の分離端部1E,1Eと、
上記股部材3における上記前身頃1に対向する部位に設けられ、基端部41から突出端部42まで左右方向Xに延びる一対のフラップ4と、
上記一対の各フラップ4の少なくとも上記突出端部42の非肌面側4Bに設けられた左右一対の第1面ファスナFと、
上記前身頃1の上記左右一対の分離端部1E,1Eの肌面側1Fに設けられ、上記一対の各第1面ファスナFが係合して上記前身頃1を上記股部材3に再結合可能とする一対の第2面ファスナMとを備え、
上記一対の各第2面ファスナMは上記分離部10を挟んで上記分離部10の左側と右側の上記一対の分離端部1E,1Eの双方に設けられ、
上記着用物品の未使用の畳み状態において、上記突出端部42が上記基端部41に近づくように上記フラップ4が折り畳まれ、かつ、上記各フラップ4は上記突出端部42において上記各第1面ファスナFを介して上記互いに隣接する分離端部1E,1Eに配置された第2面ファスナMに係合され、
上記着用物品を使用する着用状態において、上記各フラップ4は上記突出端部42の上記第1面ファスナFが上記第2面ファスナMに対面して上記第2面ファスナMに係合できるように展開自在に構成され、
上記第1面ファスナFに対する上記第2面ファスナMの係合位置を変位させることで、上記胴回りのサイズ調整を行うことができるように、ウエストの大きい着用者の使用状態では、各上記第2面ファスナMが上記フラップ4の上記突出
端部42において上記第1面ファスナFに係合し、一方、ウエストの小さい着用者の使用状態では、各上記第2面ファスナMが上記フラップ4の上記基端部41において上記第1面ファスナFに係合するように、各上記フラップ4の上記基端部41から上記突出
端部42までの上記非肌面側4Bに上記第1面ファスナFが積層されていることを特徴とする、着用物品。
【請求項2】
請求項1において、上記分離部10は未使用時において、上記前身頃1を予め左右に分割している、着用物品。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、上記各フラップ4の上記未使用の畳み状態を維持する仮止メが上記フラップ4に設けられ、
上記仮止メは上記フラップ4を構成する素材を仮止メ剤により接着した接着部、あるいは、上記素材を溶着した溶着部により形成されている、着用物品。
【請求項4】
請求項1において、上記各第1面ファスナFは上記基端部41から上記突出端部42にわたって設けられており、上記基端部41の少なくとも一部が上記突出
端部42の少なくとも一部により隠れるように折り畳まれている、着用物品。
【請求項5】
請求項4において、上記未使用
の畳み状態において、上記各フラップ4は2つの折り曲げ部43を有するZ字状に折られており、上記突出端部42の上記第1面ファスナFに上記第2面ファスナMが係合している、着用物品。
【請求項6】
請求項1もしくは2において、上記股部材3は上記股間を覆う股部31から着用者の前胴を覆う前胴部32まで延びる縦部30と、上記一対のフラップ4とを備え、
上記一対の各フラップ4は、上記基端部41が上記前胴部32に接合され、上記突出端部42が上記前胴部32から上記左右方向Xに突出している、着用物品。
【請求項7】
請求項6において、上記一対のフラップ4は上記前胴部32に接合された1つの部材であるフラップ本体40と、上記第1面ファスナFを構成する雌面ファスナ部材WFとを備え、上記第1面ファスナFは上記フラップ本体40の非肌面側4Bに接合されている、着用物品。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項において、上記前身頃1における上記分離部10に近い上記分離端部1Eに上記前身頃1と上記第2面ファスナMとの間に補強ストリップ1Sが設けられている、着用物品。
【請求項9】
請求項
8において、上記補強ストリップ1Sは上記第2面ファスナMよりも広い領域に設けられ、上記補強ストリップ1Sの設けられた領域内に上記第2面ファスナMが配置されている、着用物品。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のリクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品の製造方法であって、前記着用物品は、
着用者の胴回りを覆う前身頃1および後身頃2と、
着用者の股間を覆い上記前身頃1と上記後身頃2とを接続する股部材3と、
上記前身頃1に形成され、上記前身頃1を左右に分離または分離可能とする分離部10と、
上記股部材3における上記前身頃1に対向する部位に設けられ、基端部41から突出端部42まで左右方向Xに延びる一対のフラップ4と、
上記一対の各フラップ4の少なくとも上記突出端部42の非肌面側4Bに設けられた左右一対の第1面ファスナFと、
上記前身頃1の肌面側1Fに設けられ、上記一対の各第1面ファスナFが係合して上記前身頃1を上記股部材3に再結合可能とする一対の第2面ファスナMとを備え、
上記一対の各第2面ファスナMは上記分離部10を挟んで上記分離部10の左側と右側の双方に設けられ、
ここにおいて、着用物品の製造方法は、
上記後身頃2となる後連続体W2を胴回り方向が搬送方向となるように搬送する工程と、
上記前身頃1となる前部材を胴回り方向が搬送方向となるように搬送する工程と、
上記搬送中の上記後連続体W2と上記前部材とに上記股部材3を架設する架設工程と、
上記架設工程に先立って、上記一対の各フラップ4の上記突出端部42が上記基端部41に近づくように、かつ、上記突出端部42において上記第1面ファスナFが露出した状態となるように、上記フラップ4となるフラップ部材W4を折り畳む工程と
、
上記第1面ファスナFが露出した状態で、かつ、上記第1面ファスナFに上記前部材に配置された一対の第2面ファスナMを係合させる係合工程とを備える、製造方法。
【請求項11】
請求項10において、上記前部材となる前連続体W1に着用物品ごとに上記分離部10を形成する工程を更に備える、製造方法。
【請求項12】
請求項11において、上記前連続体W1を上記前身頃1の胴回り方向の中央において胴回り方向に直交する仮想の切断線に沿って切断することで上記分離部10を形成し、上記分離部10において上記前身頃1を互いに分割する、製造方法。
【請求項13】
請求項10において、上記股部材3は上記股間を覆う股部31から着用者の前胴を覆う前胴部32まで延びる縦部30と、上記一対のフラップ4とを備え、上記一対のフラップ4は胴回り方向に互いに連なった1つのフラップ本体40上に配置された一対の第1面ファスナFを含み、
上記第1面ファスナFを上記フラップ本体40と共に折り畳んで、上記折り畳む工程を実行する、製造方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項において、上記第1面ファスナFが露出した状態で、かつ、上記第1面ファスナFに上記前部材に配置された一対の第2面ファスナMが係合するように、上記架設工程において上記股部材3を上記前部材と上記後連続体W2との間に架設する、製造方法。
【請求項15】
請求項10~13のいずれか1項において、上記架設工程に先立って上記係合工程を実行し、上記架設工程において上記フラップ4と上記後連続体W2とに上記股部材3を架設する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の着用物品は前身頃が左右に分離または分離可能となっており、これらの前身頃が面ファスナを介して股部材に係合される(特許文献1,2)。こうしたリクローザブル式の着用物品では、左右の前身頃の面ファスナの係合を外して、胴回りサイズの調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4,574,548号
【文献】特許第6,013,331号
【発明の概要】
【0004】
しかし、上記先行技術において胴回りのサイズを小さく調整する場合、一方の前身頃の面ファスナを他方の前身頃の外面に係合させる。この他方の前身頃の外面はファスナ部材ではなく、不織布で形成されており、そのため、十分な係合力が得られない。大きな係合力を得るには前身頃の外面をループ材のような毛羽立った素材に変更する必要がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、前身頃の素材を通常の不織布で形成しても、サイズ調整後に面ファスナによる十分な係合力が得られるリクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品およびその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の着用物品はリクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品Nであって、
着用者の胴回りを覆う前身頃1および後身頃2と、
着用者の股間を覆い上記前身頃1と上記後身頃2とを接続する股部材3と、
上記前身頃1に形成され、上記前身頃1を左右に分離または分離可能とする分離部10と、
上記股部材3における上記前身頃1に対向する部位に設けられ、基端部41から突出端部42まで左右方向Xに延びる一対のフラップ4と、
上記一対の各フラップ4の少なくとも上記突出端部42の非肌面側4Bに設けられた左右一対の第1面ファスナFと、
上記前身頃1の肌面側1Fに設けられ、上記一対の各第1面ファスナFが係合して上記前身頃1を上記股部材3に再結合可能とする一対の第2面ファスナMとを備え、
上記一対の各第2面ファスナMは上記分離部10を挟んで上記分離部10の左側と右側の双方に設けられ、
上記着用物品の未使用の畳み状態において、上記各フラップ4は上記突出端部42において上記各第1面ファスナFを介して上記第2面ファスナMに係合され、かつ、上記突出端部42が上記基端部41に近づくように上記フラップ4が折り畳まれ、
上記着用物品を使用する着用状態において、上記各フラップ4は上記突出端部42の上記第1面ファスナFが上記第2面ファスナMに対面して上記第2面ファスナMに係合できるように展開自在に構成されている。
【0007】
本発明の製造方法はリクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品Nの製造方法であって、前記着用物品は、
着用者の胴回りを覆う前身頃1および後身頃2と、
着用者の股間を覆い上記前身頃1と上記後身頃2とを接続する股部材3と、
上記前身頃1に形成され、上記前身頃1を左右に分離または分離可能とする分離部10と、
上記股部材3における上記前身頃1に対向する部位に設けられ、基端部41から突出端部42まで左右方向Xに延びる一対のフラップ4と、
上記一対の各フラップ4の少なくとも上記突出端部42の非肌面側4Bに設けられた左右一対の第1面ファスナFと、
上記前身頃1の肌面側1Fに設けられ、上記一対の各第1面ファスナFが係合して上記前身頃1を上記股部材3に再結合可能とする一対の第2面ファスナMとを備え、
上記一対の各第2面ファスナMは上記分離部10を挟んで上記分離部10の左側と右側の双方に設けられ、
ここにおいて、着用物品の製造方法は、
上記後身頃2となる後連続体W2を胴回り方向が搬送方向となるように搬送する工程と、
上記前身頃1となる前部材を胴回り方向が搬送方向となるように搬送する工程と、
上記搬送中の上記後連続体W2と上記前部材とに上記股部材3を架設する架設工程と、
上記架設工程に先立って、上記一対の各フラップ4の上記突出端部42が上記基端部41に近づくように、かつ、上記突出端部42において上記第1面ファスナFが露出した状態となるように、上記フラップ4となるフラップ部材W4を折り畳む工程と、
上記第1面ファスナFが露出した状態で、かつ、上記第1面ファスナFに上記前部材に配置された一対の第2面ファスナMを係合させる係合工程とを備える。
【0008】
本発明によれば、第1面ファスナに対する第2面ファスナの係合位置を変位させることで、胴回りのサイズ調整を行うことができる。また、前身頃の素材を通常の不織布で形成でき、ループ材とする必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3Aは同未使用時の着用物品の平面図、
図3Bは着用物品の使用時の平面図である。なお、
図3Aは
図1Aと同じ図であり、
図3Bは
図4Aと同じ図であるが、未使用時と使用時の相違を分かり易くするために上下に並べて配置して示した。
【
図5】
図5Aは胴回りを小さくした場合の着用物品の平面図、
図5Bは同正面図である。
【
図6】
図6は着用物品の製造設備の一例を示すレイアウト図である。
【
図7】
図7はフラップを含む着用物品の製造方法を示す工程図である。
【
図8】
図8は股部材の製造方法を示す平面図である。
【
図9】
図9は着用物品の製造方法を示す平面図である。
【
図11】
図11はフラップを含む着用物品の別の製造方法を示す工程図である。
【
図12】
図12は同フラップを備えた着用物品の製造設備の別の例を示すレイアウト図である。
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
【0013】
図1Aおよび
図1Bは未使用の状態のパンツを示す。これらの図に示すように、着用物品Nは前身頃1、後身頃2および股部材3を備える。
【0014】
図4Aおよび
図4Bに示す使用状態において、前身頃1および後身頃2は着用者の胴回りを覆う。一方、股部材3は着用者の股間を覆い、
図2に示すように、前身頃1と後身頃2とを接続する。股部材3は股間を覆う股部31から着用者の前胴を覆う前胴部32まで延びる縦部30を有する。
【0015】
図2に示すように、前身頃1および後身頃2は、胴回り方向つまり左右方向Xに延びる多数の弾性部材5が2枚の不織布の間に挟まれて形成されていてもよい。一方、股部材3は図示しない吸収体を着脱自在に取り替える構造であってもよい。
【0016】
図1Bにグレーで示すように、
図1Aの前身頃1と後身頃2とは側端部のサイドシール部6において互いに溶着されて、互いに連なっていてもよい。一方、前身頃1には分離部10が形成されている。この分離部10において、前身頃1は左右に分割ないし、分離可能とされている。本態様の場合、前身頃1は左右方向Xの中心において縦方向(左右方向に直交する方向)に切断されている。
【0017】
分離部10はミシン目や熱劣化した脆弱部で形成されて、未使用時に前身頃1が左右に継がっているが、使用時に破断されることで、分離可能とされていてもよい。また、分離部10は未使用時に予め左右に分離されていてもよい。
【0018】
図4Aおよび
図4Bに示すように、股部材3における前身頃1に対向する部位には一対のフラップ4,4が設けられている。これら一対のフラップ4,4は本態様では股部材3
とは別のフラップ本体40が縦部30の前胴部32に接合されている。なお、フラップ4,4は股部材3に一体に形成されていてもよい。
【0019】
図4Aの左右の各フラップ4は縦部30の前胴部32に接合された基端部41と、前胴部32から左右方向Xに延び出る突出端部42とを有する。各フラップの基端部41から突出端部42までの非肌面側4Bには雌面ファスナ(第1面ファスナの一例)Fが設けられている。
【0020】
一方、
図4Aの左右の各前身頃1の分離端部1Eの肌面側1Fには雄面ファスナ(第2面ファスナの一例)Mが設けられている。雄面ファスナMは雌面ファスナFに係脱する。左右一対の分離端部1E,1Eは分離部10を間に挟んで互いに隣接している。
【0021】
本発明において、「肌面側」とは着用者の肌に対面する側を意味し、「非肌面側」とは肌面側の反対の側を意味する。
【0022】
図1Aの雄面ファスナMは分離部10を挟んで互いに分割して設けられ、各々、雌面ファスナFに係脱して、
図5Aおよび
図3Bのように、前身頃1を股部材3に再結合可能とする。なお、雄面ファスナMは分離部10を挟んで分離部10の左側と右側の双方のフラップ4,4に設けられていればよく、必ずしも予め分割されている必要はない。
【0023】
以下に説明するように、本着用物品Nは
図3Aの未使用の畳み状態から
図3Bの着用状態に形態が変更されて使用される。
【0024】
図3Aの未使用の畳み状態においては、各フラップ4は突出端部42において雌面ファスナFを介して雄面ファスナMに係合され、かつ、基端部41の少なくとも一部が突出端部42の少なくとも一部により隠れるように折り畳まれている。なお、突出端部42が基端部41に近づくように折り畳まれていればよい。一方、
図4Aに示すように、各フラップ4は突出端部42の雌面ファスナFが雄面ファスナMに対面して雄面ファスナMに係合できるように、展開自在に構成されている。
【0025】
図3Aの未使用状態において、本例の場合のように、各フラップ4は2つの折り曲げ部43を有するZ字状ないしS字状に折られていてもよい。この状態において、突出端部42の雌面ファスナFに雄面ファスナMが係合している。
【0026】
図3Bに示すように、ウエストの大きい着用者の場合の使用状態では、各雄面ファスナMはフラップ4の突出端部42において雌面ファスナFに係合する。一方、
図5Bおよび
図5Aに示すように、ウエストの小さい着用者の使用状態では、各雄面ファスナMはフラップ4の基端部41において雌面ファスナFに係合する。
【0027】
こうして、本態様の着用物品Nは着用者のウエストが大きい場合および小さい場合のいずれの場合も雄面ファスナMが雌面ファスナFに係合する。したがって、サイズ調整後に面ファスナによる十分な係合力が得られる。
【0028】
つぎに、着用物品Nの全体の製造方法の説明に先立って
図7および
図8の股部材3の製造方法について説明する。
【0029】
図7(a)の互いに接合された雌面ファスナ部材WFおよびフラップ部材W4を
図6の第1折り装置61に連続方向に供給する。第1折り装置61は、
図7(b)のように、1つ目の折り曲げ部43で雌面ファスナ部材WFおよびフラップ部材W4の端部をフラップ部材W4同士が対面する方向に折り曲げる。つづいて、第2折り装置62(
図6)において、
図7(c)のように、2つ目の折り曲げ部43で雌面ファスナ部材WFおよびフラップ部材W4を雌面ファスナ部材WF同士が互いに対面するように折り曲げる。
【0030】
こうして、雌面ファスナ部材WFが接合されたフラップ部材W4は、互いに左右対称で、かつ、一方の端部がZ字状に折られ、他方の端部が逆Z字状となるように折り畳まれる。これらの折り畳み工程は
図8に示すように、雌面ファスナ部材WFおよびフラップ部材W4が搬送方向に連続した連続体の状態で実行される。
【0031】
すなわち、
図7(c)に示すように、これらの折り畳む工程では、前述の一対の各フラップ4の基端部41が突出端部42により隠れるように、かつ、突出端部42において雌面ファスナFが露出した状態となるように、フラップ4となるフラップ部材W4を折り畳む。こうして、雌面ファスナFとなる雌面ファスナ部材WFがフラップ本体40となるフラップ部材W4と共に折り畳まれる。
【0032】
この折り畳み後、仮止工程が実行されてもよい。仮止工程は
図6の溶着ロール63により
図7(d)の雌面ファスナFの一部が溶着されることで仮止メ部44で基端部41と突出端部42とが中間部45を介して互いに緩く接合されてもよい。
【0033】
上記仮止工程後、
図8のフラップ部材W4は個々の着用物品の単位に
図6のカッタロール64で次々に切断された後、周知のカットアンドスリップ方式で、
図8の股部材3となる股連続体W3上に配置される。
【0034】
図6の股連続体W3はカッタ65で個々の股部材3の単位に切断され、各股部材3はリピッチターンドラム66で
図8のように90°姿勢が変更される。こうして、
図7(e)のように、フラップ4,4が折り畳まれた状態で股部材3に貼り付けられる。
【0035】
つぎに、着用物品Nの全体の製造方法について
図6および
図9に従って説明する。
【0036】
図9に示すように、後身頃2となる後連続体W2を胴回り方向が搬送方向となるように搬送すると共に、前身頃1となる前連続体W1を胴回り方向が搬送方向となるように搬送する。これらは互いに平行に搬送され、搬送中の後連続体W2と前連続体W1とに股部材3が架設される。前身頃1となる前連続体W1には各着用物品Nの単位ごとに一対の雄面ファスナMが貼り付けてある。
【0037】
これらの工程は一般的な工程で、
図6のリピッチターンドラム66とバキュームドラム67とで架設工程が実行される。この架設工程において、
図7(f)の雌面ファスナF(第1面ファスナ)が露出した状態で、かつ、雌面ファスナFに前連続体W1に配置された一対の雄面ファスナM(第2面ファスナ)が係合するように、
図9の股部材3を前連続体W1と後連続体W2との間に架設する
【0038】
ここで、
図6のバキュームドラム67に接するフロント部カッタ68は股部材3が前連続体W1および後連続体W2に架設される前に、
図9のように、前連続体W1を切断して各前身頃1ごとに分離部10を形成する。こうして、
図7(f)の分離部10が形成された前連続体W1に股部材3およびフラップ4が配置される。
【0039】
この際、
図7(f)の一対の股部材3およびフラップ4は、分離部10を股ぐように配置される。すなわち、一方のフラップ4の雌面ファスナFと他方のフラップ4の雌面ファスナFとは分離部10を挟んで互いに離れて配置される。
【0040】
この配置の際に、股部材3の一対の各雌面ファスナF,Fは前身頃1の一対の雄面ファスナM,Mに対峙した状態で押し付けられる。したがって、一対の各雌面ファスナF,Fは一対の各雄面ファスナM,Mに係合する。
【0041】
こうして、股部材3が雄雌のファスナを介して、前身頃1に着脱自在に固定される。その一方で、分離部10で分割されている前身頃1が胴回り方向に不用意に移動することなく股部材3に固定される。
【0042】
図9の上記股部材3の配置後、前身頃1が後身頃2に重なるように、股部材3が2つに折られ、更に、前身頃1および後身頃2が互いにサイドシール部6で互いに溶着された後、各着用物品Nの単位に切断される。
【0043】
つぎに、前身頃の構造の別の実施形態について
図10Aおよび
図10Bを用いて説明する。
【0044】
図10Aおよび
図10Bに示すように、前身頃1における分離部10(
図1A参照)に近い
図10Bの分離端部1Eに前身頃1と雄面ファスナMとの間に補強ストリップ1Sが設けられている。
【0045】
この補強ストリップ1Sは雄面ファスナMよりも広い領域に設けられ、補強ストリップ1Sの設けられた領域内に雄面ファスナMが配置されている。
【0046】
補強ストリップ1Sは例えば帯状の2枚の不織布が互いに積層されて構成されていてもよい。
【0047】
つぎに、フラップを含む着用物品の別の製造方法について
図11を用いて説明する。
【0048】
図11に示す着用物品の製造方法は、
図7に示す方法に対し、(a)~(d)については同じ方法であり、(e)および(f)に係る製造手順が異なる。
【0049】
すなわち、
図7(e)および(f)ではフラップ部材W4に股連続体W3を積層した後に、股部材3を前身頃1に重ねた。これに対し、
図11(e)および(f)では前身頃1の雄面ファスナM上に雌面ファスナFが係合するように、前身頃1となる前部材にフラップ4を重ね、その後に、フラップ4に股部材3を重ねる。
【0050】
つぎに、着用物品Nの別の製造方法について
図12を用いて簡単に説明する。
図12において、フラップ部材W4(
図11(a))は、第1折り装置61、第2折り装置62および溶着ロール63で成形された後に、周知のカットアンドスリップで個々の着用物品の単位であるフラップにカッタロール75で切り分けられた後、リピッチターンドラム76に供給される。
【0051】
生成されたフラップ4(
図11(e))はバキュームドラム67上において前連続体W1上に配置される。この後、前連続体W1は後連続体W2に接合された後、
図12のドラム87に供給される。一方、股連続体W3がカッタ85で切断された股部材3(
図11(f))はリピッチターンドラム86上に供給された後、ドラム87上において、
図11(f)のように、フラップ4に接合される。
【0052】
本製造方法のその他の方法については、前述の
図6および
図7に示した方法と同様であり、その説明を省略する。
【0053】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
【0054】
好ましい着用物品においては、上記各フラップ4の上記未使用の畳み状態を維持する仮止メが上記フラップ4に設けられている。
【0055】
この場合、商品が消費者の手元に届くまで、フラップの畳み状態が維持される。
【0056】
たとえば、上記仮止メは上記フラップ4を構成する素材を仮止メ剤により接着した接着部、あるいは、上記素材を溶着した溶着部により形成されていてもよい。
【0057】
好ましくは、上記各雌面ファスナF(第1面ファスナ)は上記基端部41から上記突出端部42にわたって設けられている。
【0058】
この場合、雄面ファスナM(第2面ファスナ)をフラップ4の基端部41から突出端部42までの適宜の位置で止めることができ、サイズ調整が容易である。
【0059】
より好ましくは、上記未使用状態において、上記各フラップ4は2つの折り曲げ部43を有するZ字状に折られており、上記突出端部42の上記雌面ファスナFに上記雄面ファスナMが係合している。
【0060】
Z字状に折られたフラップ4は展開した際に大きく拡がる。
好ましくは、上記股部材3は上記股間を覆う股部31から着用者の前胴を覆う前胴部32まで延びる縦部30と、上記一対のフラップ4とを備え、
上記一対の各フラップ4は、上記基端部41が上記前胴部32に接合され、上記突出端部42が上記前胴部32から上記左右方向Xに突出している。
【0061】
前胴部から左右方向Xに突出したフラップは、調整できる胴回りのサイズを大きくする。
この場合、上記一対のフラップ4は上記前胴部32に接合された1つのフラップ本体40と、上記雌面ファスナFとを備え、上記雌面ファスナFは上記フラップ本体40の非肌面側4Bに設けられていてもよい。
【0062】
好ましくは、上記前身頃1における上記分離部10に近い分離端部1Eに上記前身頃1と上記雄面ファスナMとの間に補強ストリップ1Sが設けられている。
この場合、分離端部1Eの厚みが大きくなって、分離端部1Eの剛性がアップして、接合時に分離端部1Eにフラップ4が不用意に折れるのを抑制でき、見栄えが向上する。また、分離端部1Eの厚さが大きくなることで、分離端部1Eの剛性のアップにより、雄面ファスナMをより強固にフラップ4に接合することができる。
【0063】
好ましくは、上記補強ストリップ1Sは上記雄面ファスナMよりも広い領域に設けられ、上記補強ストリップ1Sの設けられた領域内に上記雄面ファスナMが配置されている。
雄面ファスナMが前身頃1に直接接合されている場合、応力集中が生じ易いのに対し、補強ストリップ1Sの領域内に雄面ファスナMが配置されていることにより、応力集中が生じにくく、フラップ4の不用意な折れを抑制できる。
【0064】
ある製造方法においては、上記前部材となる前連続体W1に着用物品ごとに上記分離部10を形成する工程を更に備えていてもよい。
【0065】
好ましくは、上記前連続体W1を上記前身頃1の胴回り方向の中央において胴回り方向に直交する仮想の切断線に沿って切断することで上記分離部10を形成する。
【0066】
予め、前身頃1が切断された分離部10は、着用時に前身頃1を開き易い。
【0067】
好ましくは、上記股部材3は上記股間を覆う股部31から着用者の前胴を覆う前胴部32まで延びる縦部30と、上記一対のフラップ4とを備え、上記一対のフラップ4は胴回り方向に互いに連なった1つのフラップ本体40上に配置された一対の雌面ファスナFを含み、
上記雌面ファスナFを上記フラップ本体40と共に折り畳んで、上記折り畳む工程を実行する。
【0068】
フラップ本体40に雌面ファスナFが積層されていることによりフラップ4に必要な剛性が得られる。
【0069】
好ましくは、上記雌面ファスナFが露出した状態で、かつ、上記雌面ファスナFに上記前部材に配置された一対の雄面ファスナMが係合するように、上記架設工程において上記股部材3を上記前部材と上記後連続体W2との間に架設する。
この場合、股連続体W3とフラップ部材W4を重ねたものを個々の着用物品の単位(股部材3)に切り取って前身頃1と後身頃2とに架設するので、リピッチターンの工程(リピッチターンドラム)を1つにすることができ、設備のコストダウンを図ることができる。
【0070】
好ましくは、上記架設工程に先立って上記係合工程を実行し、上記架設工程において上記フラップ4と上記後連続体W2とに上記股部材3を架設する。
この場合、股部材3に貼り付けられていない状態のフラップ4の雌面ファスナFを雄面ファスナMに結合させる。そのため、結合させる両者にコアのような厚物がなく、結合させ易くなる。その結果、結合状態の再現性が高くなり、結合状態のバラツキが小さくなって、結合の信頼性が向上する。
【0071】
1つの実施態様または好ましい各実施形態に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様において同一または類似な形で、および/または他の実施態様と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【0072】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、雄面ファスナをフラップに設け雌面ファスナを前身頃に設けることもできる。
また、股部材にフラップが連なっていてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明はリクローザブル式のパンツ型の使い捨て着用物品およびその製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1:前身頃 1E:分離端部 1F:肌面側 1S:補強ストリップ 10:分離部
2:後身頃
3:股部材 30:縦部 31:股部 32:前胴部
4:フラップ 4B:非肌面側 40:フラップ本体 41:基端部 42:突出端部 43:折り曲げ部 44:仮止メ部 45:中間部
5:弾性部材
6:サイドシール部 61:第1折り装置 62:第2折り装置 63:溶着ロール
64:カッタロール 65:カッタ 66:リピッチターンドラム 67:バキュームドラム 68:フロント部カッタ 75:カッタロール 76:リピッチターンドラム
85:カッタ 86:リピッチターンドラム 87:ドラム
F:第1面ファスナ(雌面ファスナ) M:第2面ファスナ(雄面ファスナ)
N:着用物品
X:左右方向
W1:前連続体(前部材の一例) W2:後連続体
W3:股連続体 W4:フラップ部材 WF:雌面ファスナ部材