(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液化天然ガスプラントの運転条件決定方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
F25J1/00 B
(21)【出願番号】P 2022527360
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020932
(87)【国際公開番号】W WO2021240689
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝之
(72)【発明者】
【氏名】山口 芳弘
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154181(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/017421(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0209724(US,A1)
【文献】特開2019-028824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0356151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00
G05B 13/00
G05B 23/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスプラントの運転条件決定方法であって、
前記液化天然ガスプラントは、
フィードガスの軽質分と混合冷媒との熱交換により、前記軽質分から液化天然ガスを生成する主熱交換器と、
前記液化天然ガスを貯留するタンクと、
前記フィードガス及び前記液化天然ガスの一部を燃料として駆動されることにより、前記混合冷媒を圧縮する圧縮機と、
を備え、
前記フィードガスの組成、前記混合冷媒の組成、及び周囲温度を含む運転条件データと、前記液化天然ガスの生産効率を含む運転結果データと、を対応づけた学習データを用いた機械学習によって生成された学習モデルを準備し、
前記学習モデルの生成では、前記学習データ
として、過去の前記液化天然ガスプラントの運転によって得られた運転データが
用いられ、
前記運転データが不足している場合には、前記運転データを補完するデータとして前記液化天然ガスプラントの運転状況を模擬したシミュレーションモデルに基づき得られたシミュレーションデータが
更に用いられ、
前記液化天然ガスプラントにおける前記フィードガスの最新の組成、及び最新の周囲温度から前記学習モデルによって予測される前記液化天然ガスの生産効率が最大となる前記混合冷媒の組成を新たな運転条件の1つとして決定する、方法。
【請求項2】
前記生産効率は、前記フィードガスの流量またはその熱量換算値に対する、前記液化天然ガスの有効な流量またはその熱量換算値及び前記フィードガスの重質分の流量またはその熱量換算値の和の比であり、
前記液化天然ガスの有効な流量は、前記タンクに導入される前記液化天然ガスの流量から前記タンクから前記燃料として排出される前記液化天然ガスのボイルオフガスの流量を減じたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記運転条件をオペレータに表示するための運転支援画面を生成する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記運転支援画面には、前記液化天然ガスプラントにおける前記混合冷媒の現在の組成の情報と、前記運転条件の1つとして決定された前記混合冷媒の候補組成の情報とが含まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記混合冷媒には、窒素、メタン、及びプロパンがそれぞれ含まれ、
前記運転支援画面では、前記窒素及び前記プロパンに関する情報が強調表示される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記運転支援画面には、前記主熱交換器における前記軽質分及び前記液化天然ガスの温度プロファイルが含まれる、請求項3から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記主熱交換器における前記軽質分及び前記液化天然ガスの温度プロファイルには、前記軽質分が導入される前記主熱交換器の入口の温度と、前記液化天然ガスが排出される前記主熱交換器の出口の温度とがそれぞれ含まれ、
前記運転支援画面では、前記入口の温度及び前記出口の温度に関する情報が強調表示される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記運転支援画面には、前記温度プロファイルを表示する表示領域が含まれ、
前記表示領域では、前記主熱交換器の各部における前記軽質分、前記液化天然ガス、及び前記混合冷媒の温度の現在値ならびに最適値がそれぞれ並べて表示されている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
液化天然ガスプラントの運転条件決定システムであって、
前記
液化天然ガスプラントは、
フィードガスの軽質分と混合冷媒との熱交換により、前記軽質分から液化天然ガスを生成する主熱交換器と、
前記液化天然ガスを貯留するタンクと、
前記フィードガス及び前記液化天然ガスの一部を燃料として駆動されることにより、前記混合冷媒を圧縮する圧縮機と、
を備え、
前記運転条件決定システムは、前記
液化天然ガスプラントの運転条件を決定する処理を行うプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記フィードガスの組成、前記混合冷媒の組成、及び周囲温度を含む運転条件データと、前記液化天然ガスの生産効率を含む運転結果データとを対応づけた学習データを用いた機械学習によって生成された学習モデルを準備し、
前記学習モデルの生成では、前記学習データ
として、過去の前記液化天然ガスプラントの運転によって得られた運転データが
用いられ、
前記運転データが不足している場合には、前記運転データを補完するデータとして前記液化天然ガスプラントの運転状況を模擬したシミュレーションモデルに基づき得られたシミュレーションデータが
更に用いられ、
前記
液化天然ガスプラントにおける前記フィードガスの最新の組成、及び最新の周囲温度から前記学習モデルによって予測される前記液化天然ガスの生産効率が最大となる前前記混合冷媒の組成を新たな運転条件の1つとして決定する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスプラントの運転条件決定方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスプラントに関し、原料の天然ガス(以下、「フィードガス」という。)の冷却によって得られる液化製品の生産効率を向上させることを目的とした技術が開発されている。従来、モデル予測制御に基づく高度プロセス制御器を用いて、メタンに富む原料の液化プロセスを制御する方法が知られている(特許文献1参照)。この従来の方法では、液化製品の生産を最適化するために、制御変数のセットの少なくとも1つを制御しながら、操作変数のセットに対する同時制御動作を決定する。制御変数のセットには、主熱交換器の暖端部の温度差、主熱交換器の中央点の温度差が含まれる。操作変数のセットには、重質冷媒フラクションの質量流量、軽質冷媒フラクションの質量流量、及びメタンに富む原料の質量流量が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液化天然ガスプラントでは、液化製品の生産効率を向上させるために、比較的制御が難しい運転条件の経時的変化に応じて、比較的制御が容易な運転条件を最適化する必要がある。比較的制御が難しい運転条件には、ガス田から算出されるフィードガスの組成及び圧力や周囲温度などが含まれる。比較的制御が容易な運転条件には、フィードガスの冷却に用いられる混合冷媒の組成などが含まれる。
【0005】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、未知の運転条件に対して液化製品の生産効率を精度良く予測できる学習モデルを生成した。この学習モデルは、液化天然ガスプラントの運転条件と運転結果とを対応づけた学習データを用いた機械学習を行うことにより得られる。液化天然ガスプラントでは、その学習モデルを用いることにより、比較的制御が難しい運転条件が変化した場合でも、液化製品の生産効率を向上させるための混合冷媒の組成をリアルタイムで決定できる。
【0006】
本発明の主目的は、液化天然ガスプラントの比較的制御が難しい運転条件が変化した場合に、液化製品の生産効率を改善するための混合冷媒の候補組成を、新たな運転条件の1つとして決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面では、液化天然ガスプラント(2)の運転条件決定方法であって、前記液化天然ガスプラントは、フィードガスの軽質分と混合冷媒との熱交換により、前記軽質分から液化天然ガスを生成する主熱交換器(24)と、前記液化天然ガスを貯留するタンク(57)と、前記フィードガス及び前記液化天然ガスの一部を燃料として駆動されることにより、前記混合冷媒を圧縮する圧縮機(27)と、を備え、前記フィードガスの組成、前記混合冷媒の組成、及び周囲温度を含む運転条件データと、前記液化天然ガスの生産効率を含む運転結果データとを対応づけた学習データを用いた機械学習によって生成された学習モデル(88)を準備し、前記液化天然ガスプラントにおける前記フィードガスの最新の組成、及び最新の周囲温度から前記学習モデルによって予測される前記液化天然ガスの生産効率が最大となる前記混合冷媒の組成を新たな運転条件の1つとして決定する構成とする。
【0008】
これによると、液化天然ガスプラントの運転条件が変化した場合に、液化製品の生産効率を改善するための混合冷媒の候補組成を、新たな運転条件の1つとして決定することができる。
【0009】
本発明の第2の側面では、前記生産効率は、前記フィードガスの流量またはその熱量換算値に対する、前記液化天然ガスの有効な流量またはその熱量換算値及び前記フィードガスの重質分の流量またはその熱量換算値の和の比であり、前記液化天然ガスの有効な流量は、前記タンクに導入される前記液化天然ガスの流量から前記タンクから前記燃料として排出される前記液化天然ガスのボイルオフガスの流量を減じたものである構成とする。
【0010】
これによると、フィードガス及び液化天然ガスの一部を燃料として駆動される混合冷媒圧縮機を備えた液化天然ガスプラントにおいて、液化製品の生産効率を改善するための混合冷媒の候補組成を容易に決定することができる。
【0011】
本発明の第3の側面では、前記学習データには、過去の前記液化天然ガスプラントの運転によって得られた運転データ(91)、及び前記液化天然ガスプラントの運転状況を模擬したシミュレーションモデルに基づき得られたシミュレーションデータ(92)の少なくとも一方が含まれる構成とする。
【0012】
これによると、過去のプラント運転データが存在しない場合や、過去のプラント運転データが不足している場合に、それをシミュレーションデータによって代替または補完することで、適切な学習データを取得することができる。
【0013】
本発明の第4の側面では、前記運転条件をオペレータに表示するための運転支援画面(110)を生成する構成とする。
【0014】
これによると、オペレータは、新たな運転条件を運転支援画面で確認しながら、液化天然ガスプラントの新たな運転条件を設定することができる。
【0015】
本発明の第5の側面では、前記運転支援画面には、前記液化天然ガスプラントにおける前記混合冷媒の現在の組成の情報と、前記運転条件の1つとして決定された前記混合冷媒の候補組成の情報とが含まれる構成とする。
【0016】
これによると、オペレータは、混合冷媒の現在の組成と、目標とすべき混合冷媒の候補組成とを同時に確認しながら、混合冷媒の組成に関する新たな運転条件を容易に設定することができる。
【0017】
本発明の第6の側面では、前記混合冷媒には、窒素、メタン、及びプロパンがそれぞれ含まれ、前記運転支援画面では、前記窒素及び前記プロパンに関する情報(115、116)が強調表示される構成とする。
【0018】
これによると、オペレータは、混合冷媒の組成のうち比較的重要度の高い窒素及びプロパンの比率を確認しながら、混合冷媒の組成に関する新たな運転条件を容易に設定することができる。
【0019】
本発明の第7の側面では、前記運転支援画面には、前記主熱交換器における前記軽質分及び前記液化天然ガスの温度プロファイル(121)が含まれる構成とする。
【0020】
これによると、オペレータは、主熱交換器における軽質分及び前記液化天然ガスの温度プロファイルを確認しながら、混合冷媒の組成に関する新たな運転条件を容易に設定することができる。
【0021】
本発明の第8の側面では、前記主熱交換器における前記軽質分及び前記液化天然ガスの温度プロファイルには、前記軽質分が導入される前記主熱交換器の入口の温度(122)と、前記液化天然ガスが排出される前記主熱交換器の出口の温度(123)とがそれぞれ含まれ、前記運転支援画面では、前記入口の温度及び前記出口の温度に関する情報が強調表示される構成とする。
【0022】
これによると、オペレータは、主熱交換器の各部における軽質分または液化天然ガスの温度のうち比較的重要度の高い入口の温度及び出口の温度を確認しながら、主熱交換器における軽質分または液化天然ガスの温度に関する新たな運転条件を容易に設定することができる。
【0023】
本発明の第9の側面では、液化天然ガスプラント(2)の運転条件決定システム(1)であって、前記液化天然ガスプラントは、フィードガスの軽質分と混合冷媒との熱交換により、前記軽質分から液化天然ガスを生成する主熱交換器(24)と、前記液化天然ガスを貯留するタンク(57)と、前記フィードガス及び前記液化天然ガスの一部を燃料として駆動されることにより、前記混合冷媒を圧縮する圧縮機(27)と、を備え、前記運転条件決定システムは、前記液化天然ガスプラントの運転条件決定する処理を行うプロセッサ(101)を備え、前記プロセッサは、前記フィードガスの組成、前記混合冷媒の組成、及び周囲温度を含む運転条件データと、前記液化天然ガスの生産効率を含む運転結果データとを対応づけた学習データを用いた機械学習によって生成された学習モデル(88)を準備し、前記液化天然ガスプラントにおける前記フィードガスの最新の組成、及び最新の周囲温度から前記学習モデルによって予測される前記液化天然ガスの生産効率が最大となる前記混合冷媒の組成を新たな運転条件の1つとして決定する構成とする。
【0024】
これによると、液化天然ガスプラントの運転条件が変化した場合に、液化製品の生産効率を改善するための混合冷媒の候補組成を、新たな運転条件の1つとして決定することができる。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明によれば、液化天然ガスプラントの比較的制御が難しい運転条件が変化した場合に、液化製品の生産効率を改善するための混合冷媒の候補組成を、新たな運転条件の1つとして決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る運転条件決定システムの構成図
【
図2】液化天然ガスプラントを構成するプラント設備の例を示す構成図
【
図5】運転条件決定装置のハードウェア構成を示すブロック図
【
図6】運転条件決定部による運転条件決定処理の流れを示すフロー図
【
図7】オペレータ端末に表示される運転支援画面の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、実施形態に係る液化天然ガスプラントの運転条件決定システム1の構成図である。
【0029】
運転条件決定システム1は、液化天然ガスプラント(以下、「LNGプラント」という。)2の運転条件を決定する運転条件決定装置3を備える。LNGプラント2は、プラント設備20(
図2参照)を有する。また、LNGプラント2は、プラント設備20を運転するオペレータによって操作されるオペレータ端末11を有する。また、LNGプラント2は、オペレータの操作に基づきプラント設備20を制御するプラント制御装置12を有する。オペレータ端末11及びプラント制御装置12は、運転条件決定システム1の一部を構成し得る。LNGプラント2は、複数のオペレータ端末11及び複数のプラント制御装置12を備え得る。
【0030】
オペレータ端末11及びプラント制御装置12は、無線または有線を介して相互に通信可能に接続される。また、オペレータ端末11及びプラント制御装置12は、それぞれネットワーク5を介して運転条件決定装置3と通信可能に接続される。ネットワーク5は、LAN及びWANなどのコンピュータネットワークから構成される。
【0031】
図2は、液化天然ガスプラント2を構成するプラント設備20の例を示す構成図である。
【0032】
プラント設備20は、ガス井から産出されるフィードガスを液化する。ガス井から産出されるフィードガスは、約80~98mol%のメタンと、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素と、窒素と、その他の不純物とを含む。産出されるフィードガスの組成及び圧力は、ガス井毎の特性や残量によって経時的に変化する。プラント設備20に導入されたフィードガスは、前処理設備22によって前処理される。前処理設備22は、コンデンセート除去装置、水銀除去装置、酸性ガス除去装置、及び脱水装置等を含む。コンデンセート除去装置は、フィードガスから液状炭化水素を除去する。水銀除去装置は、フィードガスから水銀を除去する。酸性ガス除去装置は、フィードガスからH2S、CO2、及び有機硫黄等の酸性ガスを除去する。脱水装置は、フィードガスから水分を除去する。
【0033】
プラント設備20は、予冷設備23、主熱交換器24、及び混合冷媒圧縮機27(以下、単に「圧縮機」とする。)を備える。予冷設備23は、前処理されたフィードガス及び混合冷媒を予冷用冷媒によって冷却する。主熱交換器24は、予冷設備23によって冷却されたフィードガスを混合冷媒によって液化する。圧縮機27は、熱交換後の混合冷媒の気体を圧縮する。圧縮機27は、駆動機としてガスタービンを有する。ただし、圧縮機27は、補助的な駆動機として電気モータを備えてもよい。
【0034】
プラント設備20は、C3-MR(C3-MR:Propane(C3)pre-cooled Mixed Refrigerant)方式を採用している。プラント設備20では、予冷設備23において予冷用冷媒によりフィードガスが予冷されると共に、主熱交換器24において混合冷媒によりフィードガスの液化及び極低温までの過冷却が行われる。
【0035】
予冷用冷媒は、プロパンを主成分とする。混合冷媒は、窒素、メタン、及びプロパンを含む。混合冷媒には、エタンまたはエチレンがさらに含まれてもよい。混合冷媒の組成は、それら各成分の混合比率であり、所定範囲において任意に変更することができる。
【0036】
前処理設備22によって前処理されたフィードガスは、ラインL1によって予冷設備23に供給される。予冷設備23において、フィードガスは予冷用冷媒によって約-30℃まで冷却される。前処理設備22によって前処理されたフィードガスの一部は、ラインL1から分岐するラインL1aに流入する。ラインL1aを流れるフィードガスは、圧縮機27が備える駆動用のガスタービン(図示せず)の燃料として用いられる。
【0037】
予冷設備23を通過したフィードガスは、ラインL11を介して分離設備40に導入される。分離設備40は、例えばスクラブカラムから構成される。分離設備40では、メタンを含む軽質分から重質分が分離される。フィードガスの重質分は、ラインL9を介して分離設備40の塔底部から凝縮液として排出される。この凝縮液は、LNGプラント2で生産される液化製品の一部である。凝縮液の重質分は、主として比較的凝固点の高いベンゼンやC5+炭化水素などの高沸点成分であるが、メタン以外のC2+炭化水素等を含み得る。一方、フィードガスの軽質分は、分離設備40の塔頂部から排出される。
【0038】
分離設備40から排出されたフィードガスの軽質分は、ラインL12を介して主熱交換器24の塔底部に導入される。主熱交換器24は、フィードガスの軽質分及び混合冷媒が流れる伝熱管の束がコイル状に巻かれた状態でシェル47に収められたスプール巻き(Spool Wound)型熱交換器である。シェル47内では、後述する第1及び第2スプレーヘッダ48、49から供給された液体の混合冷媒が塔底部に向けて流れている。主熱交換器24は、塔底部から塔頂部にかけて暖温領域、冷温領域を順に有し、塔底部から塔頂部側にかけて温度が低下する。シェル47内の伝熱管は、フィードガスが流れる第1伝熱管51と、混合冷媒が流れる第2及び第3伝熱管52、53とを有する。
【0039】
ラインL12は、主熱交換器24の塔底部において第1伝熱管51の下端に接続されている。第1伝熱管51は、主熱交換器24の塔底部から塔頂部に延びている。フィードガスの軽質分は、第1伝熱管51において液化及び過冷却される。第1伝熱管51の上端は、ラインL13を介して貯蔵用のLNGタンク57に接続されている。ラインL13は、第1膨張弁56を備える。第1伝熱管51において液化されたフィードガスの軽質分(以下、「LNG」という。)は、第1膨張弁56において膨張し、その後LNGタンク57に送られる。LNGタンク57に貯留されるLNGは、LNGプラント2で生産される液化製品の一部である。第1膨張弁56を通過した後のLNGの温度は、-150~160℃程度である。
【0040】
LNGタンク57には、ボイルオフガスを排出するためのBOG排出ラインL30が設けられている。ボイルオフガスには、第1膨張弁56での膨張によって気化したLNGや、LNGタンク57内で気化したLNGが含まれる。BOG排出ラインL30の下流側は、ラインL1aに接続される。これにより、BOG排出ラインL30を流れるボイルオフガスは、ラインL1aを流れるフィードガスに混合され、圧縮機27が備える駆動用のガスタービンの燃料として用いられる。本実施形態では、圧縮機27を駆動するための燃料は、LNGプラント2の外からは供給されず、フィードガス及びボイルオフガスのみが用いられる。
【0041】
プラント設備20では、BOG排出ラインL30を流れるボイルオフガスをガスタービンの燃料として優先的に使用することにより、燃料として用いられるフィードガスの量、すなわちラインL1aを流れるフィードガスの量をできる限り小さくするとよい。これにより、後述するLNGプラント2の生産効率を向上させることができる。一方、プラント設備20では、BOG排出ラインL30を流れるボイルオフガスの量を、燃料として必要な量を超えないように調節する必要がある。これにより、焼却処理されるボイルオフガスを低減し、LNGプラント2の生産効率を向上させることができる。
【0042】
次に、プラント設備20における混合冷媒の流れについて説明する。予冷設備23において一部液化した高圧の混合冷媒がラインL15を介して冷媒セパレータ58に供給される。冷媒セパレータ58は、混合冷媒を気相成分と液相成分に分離する。ラインL16は、冷媒セパレータ58と第2伝熱管52とを接続する。冷媒セパレータ58において分離された液体の混合冷媒は、ラインL16を介して第2伝熱管52の下端に供給される。第2伝熱管52は、主熱交換器24の塔底部から暖温領域にかけて延びている。第2伝熱管52の上端は、ラインL17を介して第1スプレーヘッダ48に接続されている。ラインL17は、第2膨張弁59を備える。液体の混合冷媒は、第2伝熱管52内を上方に流れた後、第2膨張弁59において膨張し、その一部はフラッシュ蒸発する。
【0043】
第2膨張弁59を通過した混合冷媒は、第1スプレーヘッダ48から下向きに吐出される。第1スプレーヘッダ48から吐出される混合冷媒は、主熱交換器24内のフィードガスの流れに対して向流となる。その混合冷媒は、第1~第3伝熱管51~53内を流れるフィードガスの軽質分及び混合冷媒と熱交換しながら下方に流れる。
【0044】
冷媒セパレータ58において分離された混合冷媒の気相成分は、冷媒セパレータ58と第3伝熱管53とを接続するラインL19を介して第3伝熱管53の下端に供給される。第3伝熱管53は、主熱交換器24の塔底部から冷温領域にかけて延びている。第3伝熱管53の上端は、ラインL21を介して第2スプレーヘッダ49に接続されている。ラインL21は、第3膨張弁61を備える。その混合冷媒は、第3伝熱管53内を上方に流れた後、第3膨張弁61において膨張し、その一部はフラッシュ蒸発する。
【0045】
第3膨張弁61を通過した混合冷媒の温度は、第1膨張弁56を通過する前のLNGの温度よりも低い。第3膨張弁61を通過した混合冷媒は、冷温領域の上部に配置された第2スプレーヘッダ49から下向きに吐出される。第2スプレーヘッダ49から吐出された混合冷媒は、主熱交換器24内のフィードガスの流れに対して向流となる。その混合冷媒は、冷温領域に配置された第1及び第3伝熱管51、53によって構成される上部管束と熱交換しながら下方に流れる。その後、第2スプレーヘッダ49から吐出された混合冷媒は、下方に位置する第1スプレーヘッダ48から吐出された混合冷媒と混ざり合った後、第1~第3伝熱管51~53と熱交換しながら下方に流れる。
【0046】
第1及び第2スプレーヘッダ48、49から主熱交換器24内に吐出された混合冷媒は、主熱交換器24の塔底部から低圧の混合冷媒の気体として排出される。低圧の混合冷媒は、例えば-40℃、圧力3.5baraである。主熱交換器24の塔底部に設けられた混合冷媒の排出口は、ラインL23を介して圧縮機27の吸込口に接続されている。圧縮機27の吐出口は、ラインL25を介して予冷設備23のラインL3に接続されている。ラインL25には冷却器66が設けられている。冷却器66は、空冷式熱交換器である。
【0047】
主熱交換器24の塔底部から排出された混合冷媒は、圧縮機27及び冷却器66を通って予冷設備23に供給される。このとき、混合冷媒は、圧縮機27において昇圧される。また、混合冷媒は、冷却器66において冷却される。その後、混合冷媒は、予冷設備23において予冷用冷媒によって冷却されて一部液化した後、ラインL15を介して再び冷媒セパレータ58に供給される。
【0048】
ラインL23における主熱交換器24と圧縮機27との間の部分には、混合冷媒の原料を補充するための補充ラインL28が接続されている。補充ラインL28には、混合冷媒を構成する複数の原料の供給源がそれぞれ接続されている。混合冷媒の原料としての成分は、窒素(N2)、メタン(C1)、エタン(C2)、及びプロパン(C3)である。各供給源と補充ラインL28との間には、補充量調節弁71~74が設けられている。補充量調節弁71~74の開度を変化させることによって、混合冷媒を構成する各成分の補充量を調節することができる。
【0049】
冷媒セパレータ58と第2伝熱管52とを接続するラインL16には液体の混合冷媒を外部に抜き出すための第1抜き出しラインL31が接続されている。冷媒セパレータ58と第3伝熱管53とを接続するラインL19には気体の混合冷媒を外部に抜き出すための第2抜き出しラインL32が接続されている。第1抜き出しラインL31及び第2抜き出しラインL32には、それぞれ抜出量調節弁76、77が設けられている。抜出量調節弁76、77の開度を調節することによって、液体及び気体の混合冷媒の抜き出し量を調節することができる。
【0050】
オペレータは、補充量調節弁71~74及び抜出量調節弁76、77を調節することによって、混合冷媒の組成、及び圧力を決定する要素となる系内の冷媒存在量を調節することができる。
【0051】
プラント設備20には、フィードガス、混合冷媒、及び予冷用冷媒の温度を測定する温度計が設けられている。また、プラント設備20には、フィードガス、混合冷媒、及び予冷用冷媒の圧力計、流量計、組成分析計が設けられている。また、プラント設備20には、周囲温度を測定する温度計が設けられている。それら温度計、圧力計、流量計、並びに組成分析計は、それぞれコントローラーやモニタを有している。
【0052】
温度計、圧力計、流量計、及び組成分析計は、測定値に応じた信号をプラント制御装置12(
図1参照)に出力する。プラント制御装置12は、圧縮機27、第1~第3膨張弁56、59、61、補充量調節弁71~74、及び抜出量調節弁76、77を制御する。
【0053】
図3は、運転条件決定装置3の機能ブロック図である。
図4は、学習処理部87による学習処理の説明図である。
【0054】
運転条件決定装置3は、学習データ入力部81、制御部82、運転条件出力部83、及び記憶部84を有する。記憶部84には、運転条件決定装置3の処理に用いられる各種のデータ及びプログラムが格納される。
【0055】
学習データ入力部81には、LNGプラント2における過去のプラント運転データ91が入力される。過去のプラント運転データ91としては、プラント制御装置12に保存された過去の運転データを用いることができる。過去のプラント運転データ91には、フィードガスの組成、混合冷媒の組成、及び周囲温度などを含む運転条件データと、LNGプラント2の生産効率などを含む運転結果データとが含まれる。運転条件データには、周囲温度に限らず、気圧などの他の気象条件が含まれてもよい。予冷用冷媒や混合冷媒の冷却に空冷式熱交換器を用いる場合には、外気温度が「周囲温度」として定義される。一方、予冷用冷媒や混合冷媒の冷却に水冷式熱交換器を用いる場合には、水冷用の水または海水の温度が「周囲温度」として定義される。
【0056】
生産効率は、次の式(1)、(2)に基づき算出される。
生産効率=(H
L+H
C)/H
F ・・・(1)
H
L=h
T-h
B ・・・(2)
ただし、
H
L:LNGプラント2で生産されるLNGの有効な質量流量の熱量換算値[kJ/h]
H
C:分離設備40で分離されたフィードガスの重質分(
図2中のL9を参照)の質量流量の熱量換算値[kJ/h]
H
F:フィードガス(
図2中のL0を参照)の質量流量の熱量換算値[kJ/h]
h
T:LNGタンク57に導入されるLNG(
図2中のL13を参照)の質量流量の熱量換算値[kJ/h]
h
B:LNGタンク57から燃料として排出されるLNGのボイルオフガス(
図2中のL30を参照)の質量流量の熱量換算値[kJ/h]
【0057】
生産効率は、フィードガスの質量流量の熱量換算値に対する、LNGプラント2で生産されるLNGの有効な質量流量の熱量換算値及び重質分の質量流量の熱量換算値の和の比である。LNGプラント2で生産されるLNGの有効な質量流量とは、LNGタンク57に導入されるLNGの質量流量から、LNGタンク57から燃料として排出されるLNGのボイルオフガスの質量流量を減じたものである。それらの熱量換算値には、質量流量と低位発熱量とを積算した値を用いることができる。ただし、生産効率としては、式(1)、(2)以外の他の指標を用いることもできる。また、生産効率の算出に用いられるHL、HC、HF、hT、及びhBについては、質量流量の熱量換算値の代わりに、質量流量を用いることもできる。
【0058】
過去のプラント運転データ91では、LNGプラント2に採用可能な運転条件を網羅的にカバーできない場合がある。そこで、学習データ入力部81には、必要に応じて、プロセスシミュレータを用いて取得されたプラントシミュレーションデータ92が入力される。プラントシミュレーションデータ92には、過去のプラント運転データ91と同様のデータが含まれる。過去のプラント運転データが存在しない場合には、過去のプラント運転データがプラントシミュレーションデータ92によって代替される。また、過去のプラント運転データが不足している場合には、過去のプラント運転データがプラントシミュレーションデータ92によって補完される。その後、過去のプラント運転データ91及びプラントシミュレーションデータ92の少なくとも一方は、制御部82における学習処理部87に入力される。
【0059】
学習処理部87は、教師データありの機械学習を実行することにより、学習モデル88を生成する。学習処理部87は、訓練用の学習データとして、上述の過去のプラント運転データ91及びプラントシミュレーションデータ92を用いる。
【0060】
より詳細には、学習処理部87は、
図4に示すように、多層ニューラルネットワークで構成される深層学習モデルを有している。入力層では、LNGプラント2の運転条件データが説明変数として入力される。運転条件データには、フィードガス組成、混合冷媒組成、及び周囲温度などが含まれる。出力層では、LNGプラント2の運転結果データが目的変数として出力される。運転結果データには、生産効率が含まれる。過去のプラント運転データ91及びプラントシミュレーションデータ92に含まれる生産効率は、正解ラベルとして用いられる。学習処理部87では、正解ラベルの値と出力値との誤差に基づき、各層に含まれる各ノードの重みを調整することができる。
【0061】
運転条件決定装置3は、必ずしも自装置で学習モデル88を生成する必要はない。運転条件決定装置3は、学習処理部87を省略し、他の装置によって生成された学習モデル88を用いることもできる。また、運転条件決定装置3は、サポートベクターマシンや、ランダムフォレストなどの他の機械学習モデルを採用してもよい。
【0062】
制御部82の運転条件決定部89は、運転条件決定処理を実行する。後に詳述するように(
図5参照)、運転条件決定部89は、複数の運転条件の未知データから学習モデル88により生産効率をそれぞれ予測する。
【0063】
運転条件の未知データは、最新のプラント運転データ93と、混合冷媒の候補組成のデータとを組み合わせたものである。混合冷媒の複数の候補組成のデータは、それぞれ適切な数値範囲に収まるデータとして予め準備され、記憶部84に格納される。
【0064】
運転条件決定部89は、生産効率の予測結果に基づき、最適な混合冷媒組成を含む新たな運転条件を決定する。
【0065】
運転条件出力部83は、運転条件決定部89によって決定された新たな運転条件のデータを、最適運転条件データ94として出力する。
【0066】
オペレータ端末11は、ネットワーク5を介して、運転条件決定部89から出力された最適運転条件データ94を取得することができる。オペレータ端末11の表示装置には、その最適運転条件データ94に基づき、オペレータ用の運転支援画面110(後述する
図7参照)を表示することができる。このとき、オペレータは、最適な運転条件でプラント設備20を運転するために、運転支援画面110の表示にしたがってプラント設備20の各操作量を設定することができる。例えば、オペレータは、運転条件の1つである混合冷媒の組成を最適化するために、補充量調節弁71~74の開度を設定することができる。
【0067】
あるいは、プラント制御装置12は、ネットワーク5を介して、運転条件決定部89から出力された最適運転条件データ94を取得することができる。プラント制御装置12は、オペレータによる操作の代わりに、その最適運転条件データ94に基づきプラント設備20の各操作量を自動で設定することができる。
【0068】
図5は、運転条件決定装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0069】
運転条件決定装置3は、所定の制御プログラムに基づき、運転条件決定を統括的に実行するCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ101を有する。また、運転条件決定装置3は、プロセッサ101のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)102、プロセッサ101が実行するプログラムを格納するROM(Read Only Memory)103を有する。また、運転条件決定装置3は、HDD(Hard Disk Drive)などからなるストレージ104、液晶モニタなどからなる表示装置105、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどからなる入力装置106を有する。また、運転条件決定装置3は、ネットワーク5を介した他の装置との通信を制御する通信インタフェース107を有する。運転条件決定装置3の各構成要素101-107は、バス108を介して相互に接続される。
【0070】
運転条件決定装置3としては、PCやサーバなどの情報処理装置を用いることができる。
図3及び
図4に示した運転条件決定装置3の機能の少なくとも一部は、プロセッサ101による制御プログラムの実行によって実現できる。
【0071】
なお、オペレータ端末11及びプラント制御装置12として、運転条件決定装置3と同様のハードウェア構成を有する情報処理装置を用いることができる。オペレータ端末11及びプラント制御装置12の機能の少なくとも一部は、プロセッサによる制御プログラムの実行によって実現できる。オペレータ端末11は、プラント制御装置12と一体に構成されてもよい。
【0072】
図6は、運転条件決定部89による運転条件決定処理の流れを示すフロー図である。
【0073】
運転条件決定処理において、運転条件決定部89は、最新のプラント運転データ93を取得する(ST101)。最新のプラント運転データ93には、LNGプラント2におけるフィードガスの組成、混合冷媒の組成、及び周囲温度を含む運転条件データが含まれる。
【0074】
次に、運転条件決定部89は、混合冷媒の複数の候補組成のデータを取得する(ST102)。このとき、混合冷媒の組成を除く最新のプラント運転データ93と、混合冷媒の各候補組成のデータとが組み合わされることにより、複数の運転条件の未知データが生成される。
【0075】
そこで、運転条件決定部89は、運転条件の未知データの各々について、学習モデル88により生産効率を予測する(ST103)。続いて、運転条件決定部89は、ステップST103で予測した複数の生産効率の中から最大の生産効率を選択し、その最大の生産効率に対応する未知データに含まれる混合冷媒の候補組成を抽出する(ST104)。さらに、運転条件決定部89は、ステップST104で抽出した混合冷媒の候補組成を含む最適運転条件として決定する(ST105)。
【0076】
最適運転条件には、最新のプラント運転データ93におけるフィードガス及びLNGの温度や、混合冷媒の温度が含まれ得る。運転条件決定部89は、最適運転条件に含まれる混合冷媒の候補組成に基づき、それらの温度を所定の関係式から算出することが可能である。それらの温度は、主熱交換器24におけるフィードガス及びLNG並びに混合冷媒の候補温度プロファイルを構成する。
【0077】
図7は、オペレータ端末11に表示される運転支援画面110の一例を示す説明図である。
【0078】
運転支援画面110には、混合冷媒組成に関するデータを表示する第1表示領域111が含まれる。第1表示領域111には、混合冷媒に含まれる窒素、メタン、エタン、及びプロパンのモル百分率(mol%)を示す折れ線グラフ112が含まれる。折れ線グラフ112には、混合冷媒組成の現在値及び最適値が含まれる。混合冷媒組成の最適値は、運転条件決定装置3から取得した最適運転条件データ94に含まれる値である。また、第1表示領域111には、混合冷媒に含まれる窒素、メタン、エタン、及びプロパンのモル百分率(mol%)の値を示す組成表113が含まれる。組成表113では、混合冷媒組成の現在値及び最適値が上下二段に並べて表示されている。
【0079】
運転支援画面110では、混合冷媒において特に重要な成分である窒素(N2)及びプロパン(C3)に関する情報が強調表示するとよい。組成表113では、窒素(N2)の表示欄115及びプロパン(C3)の表示欄116が太枠で強調表示されている。強調表示は、表示欄115、116への着色や、表示される文字や数値の拡大によって行われてもよい。
【0080】
運転支援画面110には、主熱交換器24の温度プロファイルを表示する第2表示領域121が含まれる。第2表示領域121では、各部におけるフィードガスの軽質分またはLNGの温度、及び混合冷媒の温度の現在値ならびに最適値が上下二段に並べて表示されている。また、第2表示領域121では、各部における混合冷媒の温度及び流量の現在値ならびに最適値が上下二段に並べて表示されている。各温度及び各流量の最適値は、運転条件決定装置3から取得した最適運転条件データ94に含まれる値である。
【0081】
なお、運転支援画面110に表示される混合冷媒組成以外のデータについては、運転条件決定装置3から取得した最適運転条件データ94によらずに、オペレータ端末11またはプラント制御装置12によって算出されてもよい。
【0082】
また、第2表示領域121には、特に重要な運転条件として、フィードガスまたはLNGの入口温度122及び出口温度123、ならびに混合冷媒(MR)の入口温度124の最適値がそれぞれ太枠で強調表示されている。
【0083】
このように、運転支援画面110には、混合冷媒組成の現在値及び最適値、ならびに主熱交換器24のフィードガスの軽質分及びLNG並びに混合冷媒の温度プロファイルが表示される。これにより、オペレータは、それら温度プロファイルの双方を確認しながら、混合冷媒組成の現在値を最適値に近づけるように、混合冷媒組成や流量などを設定することができる。
【0084】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上述の実施形態に示した本発明に係る液化天然ガスプラントの運転条件決定方法及びそのシステムの各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも当業者であれば本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 :運転条件決定システム
2 :液化天然ガスプラント
3 :運転条件決定装置
5 :ネットワーク
10 :運転支援画面
11 :オペレータ端末
12 :プラント制御装置
20 :プラント設備
22 :前処理設備
23 :予冷設備
24 :主熱交換器
27 :混合冷媒圧縮機
40 :分離設備
47 :シェル
48 :第1スプレーヘッダ
49 :第2スプレーヘッダ
51 :第1伝熱管
52 :第2伝熱管
53 :第3伝熱管
56 :第1膨張弁
57 :LNGタンク
58 :冷媒セパレータ
59 :第2膨張弁
61 :第3膨張弁
66 :冷却器
71~74:補充量調節弁
76~77:抜出量調節弁
81 :学習データ入力部
82 :制御部
83 :運転条件出力部
84 :記憶部
87 :学習処理部
88 :学習モデル
89 :運転条件決定部
91 :プラント運転データ
92 :プラントシミュレーションデータ
93 :プラント運転データ
94 :最適運転条件データ
101:プロセッサ
104:ストレージ
105:表示装置
106:入力装置
107:通信インタフェース
108:バス
110:運転支援画面
122:混合冷媒入口温度
123:LNG出口温度
124:フィードガス軽質分入口温度