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  • 特許-鉄鋼工業の設備の作動のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】鉄鋼工業の設備の作動のための方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 15/00 20060101AFI20231205BHJP
   B21B 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   B21B 1/26 20060101ALI20231205BHJP
   B21C 47/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B21B15/00 B
B21B1/00 B
B21B1/26 E
B21C47/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022528259
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2020080233
(87)【国際公開番号】W WO2021099077
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】102019217839.1
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ハセル・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ホーエン・カール
(72)【発明者】
【氏名】セセレ・コシモ・アンドレアス
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/020134(WO,A1)
【文献】特開平10-211512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00,1/26,1/46,15/00
B21C 47/02
B22D 11/126,11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離装置(9)または成形装置(10)の関与のもとでの、金属製品の製造のための鉄鋼工業の設備、または、鋳造設備及び/または圧延設備の作動のための方法であって、この方法が以下のステップ:即ち、
-前記金属製品の長さ部分(Lx)の規定、
この長さ部分内において、前記金属製品が、前記分離装置(9)を用いて切断されるべきであり、または、前記成形装置(10)を用いて成形されるべきである;
-前記設備を通っての前記金属製品の案内、および、
-少なくとも前記分離装置(9)または前記成形装置(10)への到達に至るまでの、前記設備を通っての前記金属製品の案内の間じゅうの、前記金属製品の予め定められた前記長さ部分の追跡;および、
-前記分離装置(9)または前記成形装置(10)の到達の際の、予め定められた前記長さ部分における、前記金属製品の切断または成形;
のステップを有している前記方法において、
以下のステップ:即ち、
a)前記分離装置または前記成形装置の能力のために特徴的な閾値の設定;
b)前記長さ部分内における、前記金属製品の特性量pのための実際値p Ist 計算、
この特性量が、分離工程または成形工程に対する、前記金属製品の抵抗力を表し;
c)前記特性量の前記実際値p Ist 前記閾値よりも大きいかどうかの、前記特性量のための予め与えられた前記閾値との、前記特性量の計算された前記実際値pIstの比較;
d1)前記特性量の前記実際値p Ist 前記閾値よりも大きい場合:
前記特性量の値が前記閾値の下方へと降下する程に、前記長さ部分内における前記金属製品を局部的に加工し、および、
前記特性量の前記実際値pIstが前記閾値よりも小さい場合に初めて、前記長さ部分内における前記金属製品を分離または成形する、または、
d2)前記特性量の前記実際値p Ist 前記閾値よりも小さい場合:
事前の加工無しで、前記長さ部分内における前記金属製品を分離または成形する、
ステップを有していることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記特性量pのための前記実際値pIstは、以下の関数的な結び付き:即ち、
Ist=f(w,d,T,k
に従って計算され、
その際、
dが、前記長さ部分内における前記金属製品の厚さ、
wが、前記長さ部分内における前記金属製品の幅、
Tが、前記長さ部分内における前記金属製品の温度、
が、前記長さ部分内における前記金属製品の強度、
fが、上記パラメータw、d、T、及び/または、kの間の前記関数的な結び付き、
を意味し;且つ、
その際、前記結び付きが、
前記金属製品の前記厚さ、前記幅、及び/または、前記強度が増大する場合、特性量の実際値pIstに相応する前記結び付きの関数値が増大するように構成されており、及び/または、
前記金属製品の前記温度が増大する場合、前記結び付きの前記関数値が降下するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特性量の前記実際値pIstの減少のための、前記金属製品の前記加工は、
以下の個別ステップ:即ち、
それぞれに、予め定められた前記長さ部分内における、
-前記金属製品の前記厚さdの低減、
-前記金属製品の前記幅wの減少もしくは圧縮、
-前記金属製品の前記温度の上昇、
-前記金属製品の前記強度の減少、
の内の少なくとも1つの個別ステップを有していることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記強度kの前記減少は、前記設備の冷却装置内における適当な冷却手法でもっての前記金属製品の冷却によって行われることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記強度kの前記減少は、組織モデルを用いてのプロセス量の適当な変化によって行われ、
その際、このプロセス量が、炉温度、最終圧延温度、または、巻き取り機温度であり、及び/または、炉または仕上げ圧延ライン内における、特に前記金属製品の前記長さ部分の滞留継続時間である、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
行われる個別ステップの選択は、アルゴリズム、有利には人工知能KI-アルゴリズムを用いて行われ、
その際、このアルゴリズムが、特に、それら個別ステップの場合に実施するために必要な前記設備の機構ユニットが現実に設けられていないかまたは機能能力のない、該個別ステップを引き起こさない、
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記金属製品の前記加工のための処置として選択された前記個別ステップは、
前記設備の継続的な作動の間じゅう、場合によっては変化される作動条件に依存して変化されることを特徴とする請求項3から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記金属製品の前記長さにわたっての関数としての、前記長さ部分内における前記金属製品の前記厚さの低減、前記強度の低減、及び/または、前記温度の上昇は、
階段状、直線状、放物線状、または、正弦波形状に経過することを特徴とする請求項3から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
方法のステップd1)内において、前記特性量の前記実際値p Ist 、前記金属製品の加工のための個別ステップの内の少なくとも1つの個別ステップの実施の後にも、未だに前記閾値よりも小さくないことが確認された場合、
前記方法のステップb)、c)、d1)、または、d2)は、反復的に繰り返されて実施されることを特徴とする請求項3から8のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置または成形装置の関与のもとでの、金属製品の製造のための鉄鋼工業の設備、特に鋳造設備及び/または圧延設備、の作動のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、その設備が従来技術において基本的に公知であるような、鉄鋼工業のそのような該設備に関する1つの例示を示している。図3は、具体的に組み合わせられた鋳造設備と圧延設備とを示している。
鋳造設備は、参照符号1でもって示されている。この鋳造設備は、入口側に配置された鋳型と、この鋳型内において鋳込まれた鋳込みストランドの垂直方向から水平方向への方向転換ための、この鋳型に連続鋳造方向において後続して配置されたストランド案内部とから成っている。材料流動方向は、図3内において左側から右側である。
材料流動方向において、ストランド案内部に、第1の分離装置、特にせん断機2が接続しており、この分離装置は、鋳造設備と圧延設備との間の移行部をマーク付けしている。圧延設備は、材料流動方向に見て、例えば、2つの粗圧延ロールスタン3、1つの移送可能冷却装置4、1つの炉5、1つの誘導加熱装置6、複数の仕上げロールスタンド7、1つの冷却区間8、第2の分離装置、特にせん断機9、および、1つの成形装置、特に巻き取り機10を備えている。
鋳造設備と圧延設備との上記部分機構ユニットは、部分的に選択的であり、且つ、決して、常に全てが具体的な設備において実現されている必要はない。全ての部分機構ユニットは、中心的なプロセス制御装置および材料追跡装置11の支配下にある。
【0003】
図3内において示された設備は、典型的なCSP設備(Continuous Slap Production CSP-Anlage)であり、このCSP設備が、特に、バッチ式作動モードにおいて作動され得る。本発明は、しかしながら、決してこれに限定されていない。
むしろ、本発明は、同様に、上記された様式の適宜の設備、特にバッチ式作動と並んで同様にいわゆるエンドレス式作動及び/またはいわゆるセミエンドレス式作動においても作動され得る、そのような設備においても使用され得る。
【0004】
強固に設置された分離装置または成形装置を有する鉄鋼工業の設備は、時折、新しい、製造されるべき金属製品が、もはや切断または成形可能でない。何故ならば、これら金属製品が過度に強固であるか、もしくは、これら金属製品の抵抗力が、分離または成形に対して過度に大きいからである。
この場合、強固に設置された分離装置または成形装置の能力は、この状況においてもはや十分ではない。そのような状況において、全設備の機能性を、特に1つの分離装置の能力に基づいてもはや制限する必要がなく、むしろ維持可能であるために、製造されるべき金属製品を、その長さ部分内において金属製品が分離装置を用いて切断されるべき、予め規定された該長さ部分内において合目的に弱化することは従来技術において公知である。
特許文献1は、この目的のために、この長さ部分内における金属製品の温度を、合目的に増大すること、および、これに伴って、この長さ部分内におけるこの金属製品の強度を、この金属製品の切断が、設けられており、能力を制限された分離装置によって可能である程度に低減することを推奨している。
【0005】
金属製品の製造の際に達成しようとされる全品質等級もしくは品質は、この処置によって有利には阻害されない。何故ならば、上記温度上昇が、ただ極めて狭小に、その長さ部分内において元来金属製品の分離が意図される該長さ部分に適用されるだけであるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第3177412B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底をなす課題は、その方法において金属製品の分離または成形が制限された能力を有する分離装置または成形装置によって行われる、鉄鋼工業の設備の作動のための選択的な該方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に従う方法によって解決される。
この方法は、以下のステップ:即ち、
a)前記分離装置または前記成形装置の能力のために特徴的な閾値の設定;
b)前記長さ部分内における、前記金属製品の特性量pのための実際値p Ist 計算、
この特性量が、分離工程または成形工程に対する、前記金属製品の抵抗力を表し;
c)前記特性量の前記実際値p Ist 前記閾値よりも大きいかどうかの、前記特性量のための予め与えられた前記閾値との、前記特性量の計算された前記実際値pIstの比較;
d1)前記特性量の前記実際値p Ist 前記閾値よりも大きい場合:
前記特性量の値が前記閾値の下方へと降下する程に、前記長さ部分内における前記金属製品を局部的に加工し、および、
前記特性量の前記実際値pIstが前記閾値よりも小さい場合に初めて、前記長さ部分内における前記金属製品を分離または成形する、または、
d2)前記特性量の前記実際値p Ist 前記閾値よりも小さい場合:
事前の加工無しで、前記長さ部分内における前記金属製品を分離または成形する、
ステップを有していることによって特徴付けられている。
【発明の効果】
【0009】
記載「分離装置または成形装置」、または、動詞「分離する/成形する」との関連において使用される概念「または」は、排除する「または」として理解されるべきではなく、むしろ、「及び/または」の趣旨で、理解されるべきである。
【0010】
この請求された方法は、先ず第一に、設備内において設けられている分離装置または成形装置の能力が、製造されるべき金属製品の分離または成形のために十分であるかどうかが検査されることの利点を提供する。このことがそのような状況ではない場合にだけ、能力を表す閾値が、長さ部分内における金属製品の抵抗力を表す、特性量の実際値よりも小さいという理由で、適当な加工、即ち、金属製品の弱化が、前もって規定された長さ部分内において行われる。
それに対して、分離装置または成形装置の十分な能力が確認される場合には、長さ部分内における金属製品の合目的な加工もしくは弱化が見合わせされ、且つ、これと関連する費用が節約される。その特性量が、ただ金属製品の抵抗力を、分離工程または成形工程に対して少なくとも端緒的に表す限り、該特性量として、金属製品のそれぞれの物理的または冶金学的な特性が、本発明に従う方法の実施のために援用され得る。
特性量が、例えば金属製品の材料の厚さ、幅、温度、または、強度のような、個々のパラメータであることは可能であり、しかしながら同様にそのような個別パラメータの関数的な結び付きであることも可能である。相応して、長さ部分内における、金属製品の合目的な弱化のための加工ステップは、個々の処置に対して限定されていない。
金属製品を局部的に合目的に弱化するため、および、この金属製品をこれに伴って、同様に制限された能力を有する強固に設置された分離装置または成形装置を有する鉄鋼工業の設備内においても製造可能とするために、それぞれの金属製品の特性量および材料、および、その他のプロセス条件に応じて、個々の加工ステップの1つのバンドルから、個々の、または、複数の加工ステップが選択され得る。
【0011】
第1の実施例に従い、特性量pとして、
以下の関数的な関係が使用され:即ち、
p=f(w,d,T,k) (1)
その際、
dが、特に前記長さ部分内における前記金属製品の厚さ、
wが、特に前記長さ部分内における前記金属製品の幅、
Tが、特に前記長さ部分内における前記金属製品の温度、
が、特に前記長さ部分内における前記金属製品の強度、
fが、上記パラメータw、d、T、及び/または、kの間の前記関数的な結び付き、
を意味し;且つ、
その際、前記結び付きが、
前記金属製品の前記厚さ、前記幅、及び/または、前記強度が増大する場合、特性量の実際値pIstに相応する前記結び付きの関数値が増大するように構成されており、及び/または、
前記金属製品の前記温度が増大する場合、前記結び付きの前記関数値が降下するように構成されている。
【0012】
この関数的な関係f内において、同様に上記パラメータd、w、T、kの内の個々のパラメータが、ゼロへと設定される、または、省略されることも可能である。
【0013】
式(1)に対する具体的な構成において、特性量pは、例えば以下のように計算され得る:即ち、
【数1】
【0014】
選択的に、特性量pは、式(1)の特別の場合として、例えば、同様に以下のように計算され得る:即ち、
p=d・w・k・c (3)
温度は、式(3)において考慮されない。
【0015】
3つの式(1)、(2)、および、(3)の全て内において、パラメータd、w、T、kは、上記された同じ意義を有している。
パラメータcは、
【数2】
でもっての適宜な定数を意味する。
【0016】
方法のステップd1)に従い、金属製品のための特性量の実際値が、同様に予め規定された長さ部分内における、行われた加工の後にも、未だに閾値よりも小さくないことが判明した場合には、
本発明は、有利には、分離工程または成形工程を、その場合に設けられている性能制限された分離装置または成形装置でもって実施可能とするために、特性量の実際値が閾値よりも小さい状態になるまで、ステップb)、c)、および、d1)、または、d2)が反復的に繰り返されることを意図する。
【0017】
本発明に従う方法の更なる有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0018】
この明細書には以下の図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】金属製品の予め規定された長さ部分における、請求された加工ステップ、ここで例示的に厚さの低減のための第1の実施例の図である。
図2】長さ部分にわたっての、請求された加工ステップ:ここで例示的に金属製品の強度の低減のための第2の実施例の図である。
図3】従来技術の、鋳造設備と圧延設備との図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を、以下で、実施例の形態での上記された図1および2との関連のもとで、詳細に説明する。全ての図内において、同じ技術的な要素は、同じ参照符号によって示されている。
【0021】
分離装置の切断力、および、成形装置の成形可能性、特に巻き取り機の巻回可能性は、常に制限されている。特に、最初の巻回の巻回開始のための巻き取り機によって必要とされる出力は大きい。
鉄鋼工業の設備内において設けられている分離装置及び/または成形装置を、それぞれに制限された能力でもって可能な限り最高に利用可能とすることのため、および、厚い、幅広の、または、高強度の金属製品の生産を排除する必要が無いことのために、
本発明に従い、金属製品が、設備を通っての通過の際に、より後に分離、即ち切断される、または、成形されるべきである長さ部分内において、分離装置または成形装置のための負荷を低減することは意図されている。
【0022】
上述の長さ部分は、基本的に、金属ストリップの長さにわたっての適宜な位置において予め規定され得る。
従って、この長さ部分は、例えば分離装置の切断点において、即ち次のストリップ始端部へのストリップ終端部の移行部において確定され得、または、巻き取り機による成形の場合に金属製品のストリップ頭部において;後者の場合に巻き取り機の上でのストリップ頭部の特に最初の巻回の巻回開始を容易化するために、確定され得る。
一般的に、分離装置および成形装置のための負荷は、金属製品の材料の増大する厚さ、増大する幅、および、増大する強度と共に増大する。逆に、この負荷は、増大する温度と共に降下する。何故ならば、その場合に、材料の強度もしくは降伏応力がより小さくなるからである。更に、この負荷は、材料に依存する。より小さなkを有するより柔らかい材料は、より強固な材料よりも、より容易に切断もしくは巻回され得る。
概念「負荷」は、分離または成形工程に対する金属製品の抵抗力を意味する。抵抗力に影響を及ぼす上記された複数の個別パラメータを考慮して、既に述べたように分離または成形工程に対する金属製品の抵抗力を表す、1つの金属製品のための特性量pを規定することが合目的であるように思われる。
本発明は、この特性量を、上述の式(1)のための1つの実施例に従い、次のように、実際値pIstとして計算することを推奨する:即ち、
【数3】
【0023】
その際、dが金属製品の厚さを、wが金属製品の幅を、Tが金属製品の温度を、および、kが金属製品の材料パラメータを意味し、この材料パラメータがこの金属製品の強度を表す。パラメータcは、適宜の定数を意味する。
【0024】
選択的な実施例に従い、特性量pは、同様に次のように、実際値pIstとして計算され得る。
Ist=d・w・k・c (3)
【0025】
この選択的な定義において、金属製品の温度は考慮されない。
【0026】
上記のこれら式を用いて、設備で製造されるべきそれぞれの金属製品のために、長さ部分内における特性量のための実際値は計算され得る。
【0027】
少なくとも個々の、有利には設備内において設けられている全ての分離装置または成形装置のために、本発明に従い、それぞれ1つの閾値が規定され、この閾値が、個々の分離装置または成形装置の能力を、これらの分離力または成形力を考慮して特徴付ける。
【0028】
本発明に従う方法は、それに加えて、製造されるべき金属製品のために計算された、特性量の実際値が、個々の装置の能力のための予め与えられた閾値と、実際値が閾値よりも大きいかどうかという趣旨で比較されることを意図する(方法のステップc)を参照)。即ち、金属製品の抵抗力が、個々の装置、特に最も低い性能性の装置の能力よりも大きいかどうかが検査される。
このことがそのような状況である場合、金属製品は、設備を通っての通過の際に、相応する分離装置または成形装置の到達の以前に、上記された長さ部分内において、特性量の実際値が閾値の下方に降下することの目的で、合目的に弱化される。
【0029】
この目的が達成されて初めて、金属製品の意図された分離または成形が、上記された長さ部分内において、設備内において設けられている分離装置または成形装置を用いて行われ得る。特性量の実際値が、未だ閾値の下方に位置しない限り、製造されるべき金属製品は、分離装置または成形装置によって、正確に加工され得ない。
特性量の実際値が、金属製品の第1の加工ステップの通過の後、未だ、閾値の下方に降下されていない場合、特性量の実際値が閾値の下方に降下されているまでその間ずっと、特に請求された方法のステップb)、c)、および、d1)またはd2)の繰返しが推奨される。その際に初めて、金属製品は、設けられている分離装置または成形装置によって加工され得る。
【0030】
加工の際、即ち、金属製品の合目的な弱化の際に、この弱化が所望されていないことは顧慮されるべきである。何故ならば、この弱化が、製造されるべき金属製品の達成しようとされる材料特性と矛盾するからである。従って、設備の自動化によって、金属製品の加工もしくは弱化が専ら先に規定された長さ部分だけに対して制限されており且つこれに伴って分離装置が金属製品を切断するべきまたは成形装置がこの金属製品を成形するべき、ただその場所だけで行われることは、保障される必要がある。
この目的のために、既に先立って、特に既に鋳造の際に、どの位置において後に分離もしくは切断、または、成形が行われるべきかが確定されることは必要である。この典型的に、設備の自動制御によって先立って確定される位置、もしくは、金属製品の相応する長さ部分Lxは、設備を通っての金属製品の案内の際に、少なくとも分離装置または成形装置の到達に至るまで追跡される。
金属製品の分離または成形は、次いで、上記された分離装置または成形装置によって、専ら予め定められた長さ部分内だけにおいて行われる。
【0031】
特性量のそこにおける局部的な実際値の減少のための、長さ範囲Lx内における金属製品の本発明に従う加工もしくは切断は、以下の個別ステップの内の少なくとも1つの個別ステップによって実施され得:即ち、
i)それら圧延スタンドが、その金属製品のより強度な減面によって、より少ない厚さを長さ部分Lxにわたって誘起する、1つまたは複数の該圧延スタンドによる、該金属製品の厚さdの低減;図1を参照。この処置は、材料の量が、長さ部分Lx内において低減され得ることの特別な利点を有している。
ii)圧縮機を用いての、または、鋳型内における鋳込みストランドの幅の変化による、金属製品の幅wの減少;このことは、同様に、材料が、長さ部分、即ち移行領域内において、例えば階段状に低減もしくは減少されることの利点を有している。
iii)例えば誘導的な加熱による、または、移送可能冷却による、または、鋳造設備、または、圧延設備の冷却区間の二次冷却装置内における適当な冷却手法の作動による、金属製品の温度の増大、その際、この手法が、それぞれに、長さ部分にわたっての冷却能力の減少を意図する。
iv)例えば同様に適当な冷却手法の作動による、長さ部分にわたっての金属製品の強度の低減、図2を参照。従って、例えば、早期の冷却の代わりの遅れて初めての冷却により、または、迅速な冷却の代わりの遅鈍な冷却により、低減された強度を、例えば、放物線状の経過によって長さ部分にわたって調節すること、および、これに伴って、この長さ部分内における特性量の実際値を低減すること、は可能である。このことは、同様に巻き取り機温度によっても達成され得る。
【0032】
更に、長さ部分内における、より低い目標強度もしくはパラメータkのための低減された値は、プロセス量がそのために適当に予め与えられるというやり方で、組織モデルによって調節され得る。
プロセス量が、例えば、炉温度、最終圧延温度、または、巻き取り機温度であることは可能であり、または、炉または仕上げ圧延ライン内における、特に金属製品の長さ部分の滞留継続時間であることは可能である。同様に、組織モデルの、予め与えられるべきプロセス量が、金属製品の厚さ、幅、または、強度、または、温度のような、上述されたパラメータであることも可能である。
付加的に、特性は、しかしながら同様に、スタンド内における減面率分布の変化によっても影響を及ぼされ得る。
【0033】
-アルゴリズム、または、ニューロンのネットワークまたは他のもののような人工知能アルゴリズムを基礎とする-上位のモジュールは、インストールされ得、このモジュールが、その場合に、特性量の実際値を閾値の下方に降下するために、厚さ、温度、幅、または、材料パラメータk、または、これらの値の複数の値が変化されるべきかどうかを判定する。更に、このモジュールは、どの機構ユニット、即ち設備のどの分離装置または成形装置が、選択されたパラメータの変化を受け取るべきかを判定する。
これら分離装置または成形装置の個々の分離装置または成形装置における問題または障害の場合に、本発明に従い、同様に、継続的な作動状態において、再計画立案は行われ得る。このことは、例えば、この厚さの低減のために設けられた圧延スタンドの障害に基づいての、先ず第一に計画された金属製品の厚さの低減の代わりに、特性量の実際値を閾値の下方に降下するために、幅の減少及び/または温度の上昇が、金属製品の長さ部分にわたって実施されることを意味する。
再計画立案の際の判定量は、可能な限り最高の品質が達成されること、または、可能な限り少ないエネルギーが消費されること、または、製品が可能な限り安定的に且つ安全に保持されることである。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1. 分離装置(9)または成形装置(10)の関与のもとでの、金属製品の製造のための鉄鋼工業の設備、特に鋳造設備及び/または圧延設備の作動のための方法であって、この方法が以下のステップ:即ち、
-前記金属製品の長さ部分(Lx)の規定、
この長さ部分内において、前記金属製品が、前記分離装置(9)を用いて切断されるべきであり、または、前記成形装置(10)を用いて成形されるべきである;
-前記設備を通っての前記金属製品の案内、および、
-少なくとも前記分離装置(9)または前記成形装置(10)への到達に至るまでの、前記設備を通っての前記金属製品の案内の間じゅうの、前記金属製品の予め定められた前記長さ部分の追跡;および、
-前記分離装置(9)または前記成形装置(10)の到達の際の、予め定められた前記長さ部分における、前記金属製品の切断または成形;
のステップを有している前記方法において、
以下のステップ:即ち、
a)前記分離装置または前記成形装置の能力のために特徴的な閾値の設定;
b)前記長さ部分内における、前記金属製品の特性量pのための実際値の計算、
この特性量が、分離工程または成形工程に対する、前記金属製品の抵抗を表し;
c)前記特性量の前記実際値が前記閾値よりも大きいかどうかの、前記特性量のための予め与えられた前記閾値との、前記特性量の計算された前記実際値pIstの比較;
d1)はいの場合:
前記特性量の値が前記閾値の下方へと降下する程の、前記長さ部分内における前記金属製品の局部的な加工、および、
前記特性量の前記実際値pIstが前記閾値よりも小さい場合に初めての、前記長さ部分内における前記金属製品の分離または成形、または、
d2)いいえの場合:
前記事前の加工無しでの、前記長さ部分内における前記金属製品の分離または成形、
を有していることを特徴とする方法。
2. 前記特性量pのための前記実際値pIstは、以下の関数的な結び付き:即ち、
Ist=f(w,d,T,k
に従って計算され、
その際、
dが、前記長さ部分内における前記金属製品の厚さ、
wが、前記長さ部分内における前記金属製品の幅、
Tが、前記長さ部分内における前記金属製品の温度、
が、前記長さ部分内における前記金属製品の強度、
fが、上記パラメータw、d、T、及び/または、kの間の前記関数的な結び付き、
を意味し;且つ、
その際、前記結び付きが、
前記金属製品の前記厚さ、前記幅、及び/または、前記強度が増大する場合、特性量の実際値pIstに相応する前記結び付きの関数値が増大するように構成されており、及び/または、
前記金属製品の前記温度が増大する場合、前記結び付きの前記関数値が降下するように構成されている、
ことを特徴とする上記1に記載の方法。
3. 前記特性量の前記実際値pIstの減少のための、前記金属製品の前記加工は、
以下の個別ステップ:即ち、
それぞれに、予め定められた前記長さ部分内における、
-前記金属製品の前記厚さdの低減、
-前記金属製品の前記幅wの減少もしくは圧縮、
-前記金属製品の温度の上昇、
-前記金属製品の強度の減少、
の内の少なくとも1つの個別ステップを有していることを特徴とする上記1または2に記載の方法。
4. 前記強度kの前記減少は、前記設備の冷却装置内における適当な冷却手法でもっての前記金属製品の冷却によって行われることを特徴とする上記3に記載の方法。
5. 前記強度kの前記減少は、組織モデルを用いてのプロセス量の適当な変化によって行われ、
その際、このプロセス量が、例えば、炉温度、最終圧延温度、または、巻き取り機温度であり、及び/または、炉または仕上げ圧延ライン内における、特に前記金属製品の前記長さ部分の滞留継続時間である、
ことを特徴とする上記3または4に記載の方法。
6. 行われる個別ステップの選択は、アルゴリズム、有利には人工知能KI-アルゴリズムを用いて行われ、
その際、このアルゴリズムが、特に、それら個別ステップの場合に実施するために必要な前記設備の機構ユニットが現実に設けられていないかまたは機能能力のない、該個別ステップを引き起こさない、
ことを特徴とする上記3から5のいずれか一つに記載の方法。
7. 前記金属製品の前記加工のための処置として選択された前記個別ステップは、
前記設備の継続的な作動の間じゅう、場合によっては変化される作動条件に依存して変化されることを特徴とする上記3から6のいずれか一つに記載の方法。
8. 前記金属製品の前記長さにわたっての関数としての、前記長さ部分内における前記金属製品の前記厚さの低減、前記強度の低減、及び/または、前記温度の上昇は、
階段状、直線状、放物線状、または、正弦波形状に経過することを特徴とする上記3から7のいずれか一つに記載の方法。
9. 方法のステップd1)内において、前記特性量の前記実際値が、前記金属製品の加工のための個別ステップの内の少なくとも1つの個別ステップの実施の後にも、未だに前記閾値よりも小さくないことが確認された場合、
前記方法のステップb)、c)、d1)、または、d2)は、反復的に繰り返されて実施されることを特徴とする上記3から8のいずれか一つに記載の方法。
【符号の説明】
【0034】
1 鋳造設備
2 分離装置、特にせん断機
3 粗圧延ロールスタンド
4 移送可能冷却装置
5 炉
6 誘導加熱装置
7 仕上げロールスタンド
8 冷却区間
9 分離装置、特にせん断機
10 成形装置、特に巻き取り機
11 プロセス制御装置、材料追跡装置
Lx 長さ部分
p 特性量
d 金属製品の厚さ
図1
図2
図3