(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20231205BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20231205BHJP
F15B 21/14 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
E02F9/22 M
F15B11/02 V
F15B21/14 B
(21)【出願番号】P 2022532330
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2021014801
(87)【国際公開番号】W WO2021256060
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020104904
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】土方 聖二
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅俊
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-069432(JP,A)
【文献】国際公開第2013/059020(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/02
11/028
11/08
21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を貯留するタンクと、
油圧シリンダと、
前記油圧シリンダからの戻り油を蓄えるアキュムレータと、
前記油圧シリンダのボトム側油室と前記アキュムレータとを接続する第1油路に配置された第1制御弁と、
前記油圧シリンダのロッド側油室と前記タンクとを接続する第2油路に配置された第2制御弁とを備えた建設機械において、
前記ロッド側油室と前記アキュムレータとを接続する第3油路に配置された第3制御弁と、
前記第1油路のうち前記ボトム側油室と前記第1制御弁とを接続する油路部分と前記第3油路のうち前記ロッド側油室と前記第3制御弁とを接続する油路部分とを接続する第4油路に配置された第4制御弁と
、
前記油圧シリンダの動作を指示するための操作レバーと、
前記操作レバーを介して入力される指示に応じて、前記第1制御弁、前記第2制御弁および前記第3制御弁を制御するコントローラと、
前記ボトム側油室の圧力を検出する第1圧力センサとを備え
、
前記第4制御弁は、前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの伸長動作が指示された場合に閉じ、前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの収縮動作が指示された場合に開くように構成されており、
前記コントローラは、
前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの伸長動作が指示され、かつ前記第1圧力センサで検出した前記ボトム側油室の圧力が第1の所定の圧力より高い場合に、前記第1制御弁および前記第2制御弁を開くと共に前記第3制御弁を閉じ、
前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの伸長動作が指示され、かつ前記第1圧力センサで検出した前記ボトム側油室の圧力が前記第1の所定の圧力以下の場合に、前記第1制御弁および前記第3制御弁を開くと共に前記第2制御弁を閉じる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
油圧ポンプを備え、
前記第4制御弁は、前記油圧ポンプから吐出された圧油を前記油圧シリンダに供給すると共に前記油圧シリンダからの戻り油を前記タンクに排出することが可能な方向制御弁である
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項
2に記載の建設機械において、
前記第1油路のうち前記ボトム側油室と前記第1制御弁とを接続する油路部分に配置された第1パイロットチェック弁と、
前記第4油路のうち前記ボトム側油室と前記方向制御弁とを接続する油路部分に配置された第2パイロットチェック弁と、
前記第1制御弁と前記第2制御弁と前記第3制御弁と前記第1パイロットチェック弁とを一体化する第1バルブブロックと、
前記方向制御弁と前記第2パイロットチェック弁とを一体化する第2バルブブロックとを備えた
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項
1に記載の建設機械において、
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの吐出ポートを前記アキュムレータまたは前記タンクに選択的に接続する第5制御弁と、
前記アキュムレータの圧力を検出する第2圧力センサとを備え、
前記コントローラは、前記第2圧力センサで検出した前記アキュムレータの圧力が第2の所定の圧力以上の場合は、前記油圧ポンプの吐出ポートが前記タンクに接続されるように前記第5制御弁を制御し、前記第2圧力センサで検出した前記アキュムレータの圧力が前記第2の所定の圧力より低い場合は、前記油圧ポンプの吐出ポートが前記アキュムレータに接続されるように前記第5制御弁を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、ブームの下げ動作時にブームシリンダのボトム側とロッド側を連通させ、さらにボトム側をアキュムレータに接続することにより、ブームシリンダからの戻り油を昇圧してアキュムレータに蓄えることができる。さらに特許文献2では、アキュムレータに蓄えた圧油をブームシリンダに供給し、その分ポンプからブームシリンダに送る流量を低減させることにより、燃費を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-275769号公報
【文献】特開2009-275771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び特許文献2の構成では、ブームシリンダのボトム圧を昇圧させてアキュムレータを蓄圧することから、アキュムレータの圧力も高くなる。このように高圧に蓄圧されたアキュムレータからブームシリンダに圧油を供給すると大きな圧力損失が発生し、アキュムレータに蓄えたエネルギーを有効に使えない懸念がある。ここで、ブームシリンダのボトム圧は、アームとバケットを含むフロントの姿勢に応じて変化する。例えばアームとバケットを抱え込んだ姿勢ではブームのボトム圧が低下する。その状態でアキュムレータからブームシリンダのボトム側に圧油を供給すると大きな圧力損失が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アキュムレータで油圧シリンダを効率良く駆動することが可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、作動油を貯留するタンクと、油圧シリンダと、前記油圧シリンダからの戻り油を蓄えるアキュムレータと、前記油圧シリンダのボトム側油室と前記アキュムレータとを接続する第1油路に配置された第1制御弁と、前記油圧シリンダのロッド側油室と前記タンクとを接続する第2油路に配置された第2制御弁とを備えた建設機械において、前記ロッド側油室と前記アキュムレータとを接続する第3油路に配置された第3制御弁と、前記第1油路のうち前記ボトム側油室と前記第1制御弁とを接続する油路部分と前記第3油路のうち前記ロッド側油室と前記第3制御弁とを接続する油路部分とを接続する第4油路に配置された第4制御弁と、前記油圧シリンダの動作を指示するための操作レバーと、前記操作レバーを介して入力される指示に応じて、前記第1制御弁、前記第2制御弁および前記第3制御弁を制御するコントローラと、前記ボトム側油室の圧力を検出する第1圧力センサとを備え、前記第4制御弁は、前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの収縮動作が指示された場合に開くように構成されており、前記コントローラは、前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの伸長動作が指示され、かつ前記第1圧力センサで検出した前記ボトム側油室の圧力が第1の所定の圧力より高い場合に、前記第1制御弁および前記第2制御弁を開くと共に前記第3制御弁を閉じ、前記操作レバーを介して前記油圧シリンダの伸長動作が指示され、かつ前記第1圧力センサで検出した前記ボトム側油室の圧力が前記第1の所定の圧力以下の場合に、前記第1制御弁および前記第3制御弁を開くと共に前記第2制御弁を閉じるものとする。
【0007】
以上のように構成した本発明によれば、油圧シリンダを収縮駆動する際に、第4制御弁を開いて油圧シリンダのボトム側をロッド側に連通させてボトム側を昇圧すると共に、第1制御弁を開いてボトム側をアキュムレータに連通させることにより、アキュムレータにボトム側からの戻り油を高圧で蓄えることが可能となる。また、油圧シリンダを伸長駆動する際に、第4制御弁を閉じて油圧シリンダのボトム側とロッド側との連通を解除すると共に、第1制御弁を開いてボトム側をアキュムレータに連通させ、かつ第2制御弁および第3制御弁のいずれか一方を開くことにより、ロッド側の背圧を調整しつつアキュムレータからボトム側に圧油を供給することができる。これにより、アキュムレータと油圧シリンダ1のボトム側との圧力差を小さくすることができるため、第1制御弁における圧力損失を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る建設機械によれば、アキュムレータで油圧シリンダを効率良く駆動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
【
図3】本発明の第1の実施例におけるコントローラのブームシリンダの駆動に係る制御フローを示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施例におけるコントローラのアキュムレータの蓄圧動作に係る制御フローを示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【0012】
図1に示すように、油圧ショベル100は、走行体101と、走行体101上に旋回可能に配置され、車体を構成する旋回体102と、旋回体102に上下方向に回動可能に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置103とを備えている。旋回体102は、旋回モータ104によって駆動される。
【0013】
作業装置103は、旋回体102に上下方向に回動可能に取り付けられるブーム105と、ブーム105の先端に上下方向に回動可能に取り付けられるアーム106と、アーム106の先端に上下方向に回動可能に取り付けられるバケット107とを含んでいる。ブーム105はブームシリンダ1によって駆動され、アーム106はアームシリンダ108によって駆動され、バケット107はバケットシリンダ109によって駆動される。
【0014】
旋回体102上の前側位置には運転室110を設けてあり、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウエイト111を設けてある。運転室110とカウンタウエイト111の間には機械室112を設けてある。機械室112には、エンジン、油圧ポンプ、コントロールバルブ113等が収容される。コントロールバルブ113は、油圧ポンプから各アクチュエータへ供給される作動油の流れを制御する。
【0015】
本実施の形態に係る油圧ショベル100には、以下の各実施例で説明する油圧駆動装置が搭載される。
【実施例1】
【0016】
図2は、本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
(構成)
図2を参照し、油圧駆動装置200の構成について説明する。
【0017】
アキュムレータ4は、ブームシリンダ1からの戻り油を蓄え、ブームシリンダ1の駆動時に圧油を供給する油圧機器である。アキュムレータ4とブームシリンダ1のボトム側油室1aとは油路21を介して接続されており、油路21には制御弁2およびパイロットチェック弁8が配置されている。制御弁2は、コントローラ6からの制御信号を受けて油路21を連通または遮断する。パイロットチェック弁8は、後述するブーム下げパイロット圧Pdが発生している間だけ開弁し、ブーム下げパイロット圧Pdが発生していないときは閉弁状態に保たれる。これにより、ブーム下げ動作時を除き、ブームシリンダ1のボトム側油室1aの圧力が保持されるため、ブームシリンダ1が意図せず収縮動作することを防ぐことができる。油路21のうちボトム側油室1aとパイロットチェック弁8とを接続する油路部分には、ボトム側油室1aの圧力を検出する圧力センサ9が設けられており、圧力センサ9の信号はコントローラ6に入力される。
【0018】
ブームシリンダ1のロッド側油室1bとタンク20とは油路22で接続されており、油路22には制御弁3が配置されている。制御弁3は、コントローラ6からの制御信号を受けて油路22を連通または遮断する。
【0019】
ブームシリンダ1のロッド側油室1bとアキュムレータ4とは油路23で接続されており、油路23には制御弁10が配置されている。制御弁10は、コントローラ6からの制御信号を受けて油路23を連通または遮断する。
【0020】
油圧ポンプ13は主にアキュムレータ4を蓄圧するための油圧機器であり、油圧ポンプ13の吐出ポートは制御弁18および油路24を介してアキュムレータ4に接続されている。制御弁18は、コントローラ6からの制御信号を受けて、図示ノーマル位置から切換操作される。制御弁18がノーマル位置にあるときは油圧ポンプ13の吐出油はタンク20に排出され、制御弁18がノーマル位置から切り換えられると、油圧ポンプ13の吐出油がアキュムレータ4に蓄えられる。油路24には、アキュムレータ4の圧力を検出する圧力センサ19が設けられており、圧力センサ19の信号はコントローラ6に入力される。
【0021】
油路21のうちパイロットチェック弁8と制御弁2とを接続する油路部分は、油路24を介して油路23のうちロッド側油室1bと制御弁10とを接続する部分と接続されており、油路24には制御弁7が配置されている。制御弁7は、後述するブーム下げパイロット圧Pdにより、図示遮断位置から連通位置に切換操作される。これにより、ブーム下げ動作時には、ブームシリンダ1のボトム側がロッド側と連通し、ブームシリンダ1のボトム側が昇圧される。
【0022】
オペレータにより操作レバー5がブーム上げ方向に操作されるとブーム上げパイロット圧Puが発生し、ブーム下げ方向に操作されるとブーム下げパイロット圧Pdが発生する。ブーム下げパイロット圧Pdは圧力センサ11によって検出され、ブーム上げパイロット圧Puは圧力センサ12によって検出され、圧力センサ11,12の信号はコントローラ6に入力される。
【0023】
次に、コントローラ6の処理内容について
図3および
図4を用いて説明する。
図3はブームシリンダ1の駆動に係る制御フローを表したものであり、
図4はアキュムレータ4の蓄圧動作に係る制御フローを表わしたものである。これらの制御フローは、例えば図示しないキースイッチをONにした場合に開始され、同時並行的に実行される。
【0024】
最初に、
図3を参照し、ブームシリンダ1の駆動に係る制御フローについて説明する。
【0025】
コントローラ6は、まず、圧力センサ12でブーム上げパイロット圧Puが検出されたか否かを判定する(ステップS101)。
【0026】
ステップS101でYes(ブーム上げパイロット圧Puが検出された)と判定した場合は、圧力センサ9で検出したブームシリンダ1のボトム圧が所定の圧力set1よりも高いか否かを判定する(ステップS102)。
【0027】
ステップS102でYes(ブームシリンダ1のボトム圧が所定の圧力set1よりも高い)と判定した場合は、制御弁10は閉じたまま、制御弁2,3を開き(ステップS103)、ステップS101へ戻る。これにより、ロッド側の背圧を抑えつつブームシリンダ1を伸長動作させることができる。
【0028】
ステップS102でNo(ブームシリンダ1のボトム圧が所定の圧力set1以下である)と判定した場合は、制御弁3は閉じたまま、制御弁2,10を開き(ステップS104)、ステップS101へ戻る。これにより、ロッド側に背圧を立てつつブームシリンダ1を伸張動作させることができる。この時、ブームシリンダ1とアキュムレータ4の圧力差が小さくなり、アキュムレータ4からブームシリンダ1へ圧油を供給する際の圧力損失が抑えられるため、効率良くブームシリンダ1を駆動することが可能となる。
【0029】
ステップS101でNo(ブーム上げパイロット圧Puが検出されなかった)と判定した場合は、圧力センサ11でブーム下げパイロット圧Pdが検出されたか否かを判定する(ステップS105)。
【0030】
ステップS105でYes(ブーム下げパイロット圧Pdが検出された)と判定した場合は、制御弁3,10は閉じたまま、制御弁2を開き(ステップS106)、ステップS101へ戻る。この時、ブーム下げパイロット圧Pdにより制御弁7は連通位置に切り換えられる。これにより、ブームシリンダ1のボトム側から排出された圧油の一部が制御弁2を介してアキュムレータ4に蓄えられると共に、残りの一部が制御弁7を介してブームシリンダ1のロッド側に供給され、ブームシリンダ1が収縮動作する。
【0031】
ステップS105でNo(ブーム下げパイロット圧Pdが検出されなかった)と判定した場合は、制御弁2,3,10を閉じ(ステップS107)、ステップS101へ戻る。これにより、ブームシリンダ1に作動油を給排する油路21~23が全て遮断されるため、ブームシリンダ1は静止状態に保たれる。
【0032】
次に、
図4を参照し、アキュムレータ4の蓄圧動作に係る制御フローについて説明する。
【0033】
コントローラ6は、まず、圧力センサ19で検出したアキュムレータ4の圧力(アキュムレータ圧)が所定の圧力set2よりも低いか否かを判定する(ステップS201)。ここでいう所定の圧力set2は、制御弁7を開いてロッド側に背圧を立てた状態でもブームシリンダ1のボトム側油室1aに圧油を供給できる程度の圧力に設定される。
【0034】
ステップS201でYes(アキュムレータ圧が所定の圧力set2よりも低い)と判定した場合は、制御弁18をノーマル位置から切り換えて油圧ポンプ13の吐出ポートをアキュムレータ4に接続し(ステップS202)、ステップS201へ戻る。これにより、油圧ポンプ13の吐出油がアキュムレータ4に蓄えられ、アキュムレータ4の圧力が所定の圧力set2以上に保たれるため、任意のタイミングでブームシリンダ1を駆動することが可能となる。
【0035】
ステップS201でNo(アキュムレータ圧が所定の圧力set2以上である)と判定した場合は、制御弁18をノーマル位置に戻して油圧ポンプ13の吐出ポートをタンク20に接続し(ステップS202)、ステップS201へ戻る。これにより、油圧ポンプ13によって必要以上にアキュムレータ4が蓄圧されないため、不要なエネルギー消費を抑えることができる。
(動作)
図2を参照し、油圧駆動装置200の動作について説明する。
【0036】
まず、ブーム105の下げ動作(ブームシリンダ1の収縮動作)について説明する。
【0037】
操作レバー5をブーム下げ方向に操作すると、ブーム下げパイロット圧Pdによってパイロットチェック弁8の圧力保持が解除されると共に制御弁7が開き、ブームシリンダ1のボトム側がロッド側と連通して昇圧される。また同時に、コントローラ6が制御弁2を開くことにより、ボトム側の圧油がアキュムレータ4に流入してエネルギーが回生されると共にブームシリンダ1が収縮する。この時、昇圧されたボトム圧によってアキュムレータ4が蓄圧される。
【0038】
次に、ブーム105の上げ動作(ブームシリンダ1の伸長動作)について説明する。
【0039】
操作レバー5がブーム上げ方向に操作されると、コントローラ6はブーム上げパイロット圧Puが検出されたと判定し、制御弁2を開くと共にブームシリンダ1のボトム圧に応じて制御弁3,10のいずれか一方を開く。具体的には、ブームシリンダ1のボトム圧が所定の圧力set1より高い場合は、制御弁10を閉じた状態で制御弁3を開くことによりロッド側の背圧を抑え、効率よくブームシリンダ1を伸長させる。このとき、アキュムレータ4の圧力とボトム圧との圧力差が小さいため、制御弁2で大きな圧力損失は生じない。一方、ブームシリンダ1のボトム圧が所定の圧力set1以下のときは、制御弁3を閉じた状態で制御弁10を開き、ブームシリンダ1のロッド側をアキュムレータ4に接続することにより、ロッド側に背圧を発生させる。これにより、ブームシリンダ1のボトム側の圧力も上昇するため、ブームシリンダ1のボトム側とアキュムレータ4との圧力差が小さくなり、制御弁2で発生する圧力損失を小さくすることができる。この時、ブームシリンダ1のロッド側に発生させた背圧は制御弁10を介してそのままアキュムレータ4に回生されるため、背圧を発生させることによるエネルギー損失は生じない。
(効果)
本実施例では、作動油を貯留するタンク20と、油圧シリンダ1と、油圧シリンダ1からの戻り油を蓄えるアキュムレータ4と、油圧シリンダ1のボトム側油室1aとアキュムレータ4とを接続する第1油路21に配置された第1制御弁2と、油圧シリンダ1のロッド側油室1bとタンク20とを接続する第2油路22に配置された第2制御弁3とを備えた建設機械100において、ロッド側油室1bとアキュムレータ4とを接続する第3油路23に配置された第3制御弁10と、第1油路21のうちボトム側油室1aと第1制御弁2とを接続する油路部分と第3油路23のうちロッド側油室と第3制御弁10とを接続する油路部分とを接続する第4油路24に配置された第4制御弁7とを備える。
【0040】
以上のように構成した本実施例によれば、油圧シリンダ1を収縮駆動する際に、第4制御弁7を開いて油圧シリンダ1のボトム側をロッド側に連通させてボトム側を昇圧すると共に、第1制御弁2を開いてボトム側をアキュムレータ4に連通させることにより、アキュムレータ4にボトム側からの戻り油を高圧で蓄えることが可能となる。また、油圧シリンダ1を伸長駆動する際に、第4制御弁7を閉じて油圧シリンダ1のボトム側とロッド側との連通を解除すると共に、第1制御弁2を開いてボトム側をアキュムレータ4に連通させ、かつ第2制御弁3および第3制御弁10のいずれか一方を開くことにより、ロッド側の背圧を調整しつつアキュムレータ4からボトム側に圧油を供給することができる。これにより、アキュムレータ4と油圧シリンダ1のボトム側との圧力差を小さくすることができるため、第1制御弁2における圧力損失を低減することが可能となる。
【0041】
また、本実施例に係る建設機械100は、油圧シリンダ1の動作を指示するための操作レバー5と、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の伸長動作が指示された場合に、第1制御弁2を開くと共に第2制御弁3および第3制御弁10のいずれか一方を開くように制御するコントローラ6とを備え、コントローラ6は、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の伸長動作が指示された場合に第4制御弁7を閉じ、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の収縮動作が指示された場合に第4制御弁7を開くように制御する。
【0042】
このように構成することにより、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の収縮動作が指示された場合は、第4制御弁7が開くことにより油圧シリンダ1のボトム側がロッド側に連通して昇圧され、かつ第1制御弁2が開いてボトム側がアキュムレータ4に連通するため、アキュムレータ4にボトム側の戻り油を高圧で蓄えることができる。また、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の伸長動作が指示された場合は、第4制御弁7が閉じることにより油圧シリンダ1のボトム側とロッド側との連通が解除され、かつ第2制御弁3および第3制御弁10のいずれか一方が開いてロッド側がタンク20またはアキュムレータ4に連通するため、ロッド側の背圧を調整することができる。
【0043】
また、本実施例に係る建設機械100は、ボトム側油室1aの圧力を検出する第1圧力センサ9を備え、コントローラ6は、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の伸長動作が指示され、かつ第1圧力センサ9で検出したボトム側油室1aの圧力が第1の所定の圧力set1より高い場合は、第3制御弁10を閉じると共に第2制御弁3を開き、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の伸長動作が指示され、かつ第1圧力センサ9で検出したボトム側油室1aの圧力が第1の所定の圧力set1以下の場合は、第2制御弁3を閉じると共に第3制御弁10を開くように制御する。
【0044】
このように構成することにより、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の伸長動作が指示された場合でボトム側油室1aの圧力が第1の所定の圧力set1以下のときは、ロッド側をアキュムレータ4に連通させて背圧を立て、アキュムレータ4と油圧シリンダ1のボトム側との圧力差を小さくすることにより、制御弁2における圧力損失を低減することができる。また、操作レバー5を介して油圧シリンダ1の伸長動作が指示された場合でボトム側油室1aの圧力が第1の所定の圧力set1より高いときは、ロッド側をタンク20に連通させて背圧を抑えることにより、効率良く油圧シリンダ1を伸長駆動することができる。
【0045】
また、本実施例に係る建設機械100は、油圧ポンプ13と、油圧ポンプ13の吐出ポートをアキュムレータ4またはタンク20に選択的に接続する第5制御弁18と、アキュムレータ4の圧力を検出する第2圧力センサ19とを備え、コントローラ6は、第2圧力センサ19で検出したアキュムレータ4の圧力が第2の所定の圧力set2以上の場合は、油圧ポンプ13の吐出ポートがタンク20に接続されるように第5制御弁18を制御し、第2圧力センサ19で検出したアキュムレータ4の圧力が第2の所定の圧力set2より低い場合は、油圧ポンプ13の吐出ポートがアキュムレータ4に接続されるように第5制御弁18を制御する。
【0046】
このように構成することにより、アキュムレータ4の圧力が第2の所定の圧力set2以上に保たれるため、任意のタイミングで油圧シリンダ1を駆動することが可能となる。
【実施例2】
【0047】
図5は、本発明の第2の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
【0048】
本実施例に係る油圧駆動装置200は、油圧ポンプ13の吐出油をブームシリンダ1に供給し、ブームシリンダ1から排出される圧油をタンク
20に流すための方向制御弁14を備えている。方向制御弁14は、ブーム上げパイロット圧Puによって図示中立位置から左側位置に切換操作され、ブーム下げパイロット圧Pdによって中立位置から右側位置に切換操作される。左側位置に切換操作された方向制御弁14は、油圧ポンプ13の吐出ポートをブームシリンダ1のボトム側油室1aに連通させると共にロッド側油室1bをタンク20に連通させる。右側位置に切換操作された方向制御弁14は、ブームシリンダ1のボトム側油室1aをロッド側油室1bに連通させる。このように、方向制御弁14の右側位置には、第1の実施例における制御弁7(
図2に示す)の機能が実装されている。
【0049】
さらに本実施例では、方向制御弁14と油圧シリンダ1の間にパイロットチェック弁15を配置すると共に、方向制御弁14とパイロットチェック弁15を一体のバルブブロック17として構成し、その他の弁をバルブブロック16として構成している。すなわち、バルブブロック17は、従来の油圧ショベルに搭載されている、油圧ポンプからアクチュエータへの圧油の供給を制御するためのメインコントロールバルブを構成し、バルブブロック16は、アキュムレータへの圧油の供給を制御するためのハイブリッド用バルブを構成する。
(効果)
本実施例に係る建設機械100は、油圧ポンプ13を備え、第4制御弁14は、油圧ポンプ13から吐出された圧油を油圧シリンダ1に供給すると共に油圧シリンダ1からの戻り油をタンク20に排出することが可能な方向制御弁14である。
【0050】
以上のように構成した本実施例によれば、第1の実施例による効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0051】
ブームシリンダ1のボトム側をロッド側に連通させて昇圧する機能を方向制御弁14の右側位置に実装したことにより、第1の実施例における制御弁7(
図2に示す)が不要となる。また、油圧ポンプ13から方向制御弁14を介して油圧シリンダ1に圧油を供給可能としたことにより、アキュムレータ4をチャージする必要が無くなるため、第1の実施例における制御弁18および圧力センサ19(
図2に示す)も不要になる。これにより、油圧回路が複雑になること防ぐことができる。
【0052】
また、本実施例に係る建設機械100は、第1油路21のうちボトム側油室1aと第1制御弁2とを接続する油路部分に配置された第1パイロットチェック弁8と、第4油路24のうちボトム側油室1aと方向制御弁14とを接続する油路部分に配置された第2パイロットチェック弁15と、第1制御弁2と第2制御弁3と第3制御弁10と第1パイロットチェック弁8とを一体化する第1バルブブロック16と、方向制御弁14と第2パイロットチェック弁15とを一体化する第2バルブブロック17とを備える。
【0053】
このように構成することにより、ハイブリッド用バルブを従来のメインコントロールバルブにアドオンするだけで建設機械をハイブリッド化できると共に、メインコントロールバルブとハイブリッド用バルブのそれぞれに設けたパイロットチェック弁8,15によりブームシリンダ1のリークを確実に防止することができる。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…ブームシリンダ(油圧シリンダ)、2…制御弁(第1制御弁)、3…制御弁(第2制御弁)、4…アキュムレータ、5…操作レバー、6…コントローラ、7…制御弁(第4制御弁)、8…パイロットチェック弁(第1パイロットチェック弁)、9…圧力センサ(第1圧力センサ)、10…制御弁(第3制御弁)、11…圧力センサ、12…圧力センサ、13…油圧ポンプ、14…方向制御弁(第4制御弁)、15…パイロットチェック弁(第2パイロットチェック弁)、16…バルブブロック(第1バルブブロック)、17…バルブブロック(第2バルブブロック)、18…制御弁(第5制御弁)、19…圧力センサ(第2圧力センサ)、20…タンク、21…油路(第1油路)、22…油路(第2油路)、23…油路(第3油路)、24…油路(第4油路)、25…油路、26…制御弁、100…油圧ショベル(建設機械)、101…走行体、102…旋回体、103…作業装置、104…旋回モータ、105…ブーム、106…アーム、107…バケット、108…アームシリンダ、109…バケットシリンダ、110…運転室、111…カウンタウエイト、112…機械室、113…コントロールバルブ、200…油圧駆動装置。