(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】射出成形管理装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2022535312
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025281
(87)【国際公開番号】W WO2022009828
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020118166
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】細元 優希
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-001686(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192049(WO,A1)
【文献】特開2017-189917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の射出成形機のそれぞれから生産情報を収集する生産情報収集部と、
前記生産情報の中から選択される対象情報を抽出する対象情報抽出部と、
前記対象情報を所定の表示形態で表示する情報表示部と、
前記対象情報と前記表示形態との組み合わせをそれぞれ示す複数の操作画像を選択可能に表示する選択表示部と、
を備え
、
前記選択表示部が同じ画面上に表示する前記複数の操作画像は、前記対象情報と前記表示形態とが異なる組み合わせを示す2以上の前記操作画像を含む、射出成形管理装置。
【請求項2】
前記対象情報は、前記射出成形機の識別記号及び前記射出成形機で生産される製品又は生産される製品に適用される成形条件の識別記号の少なくともいずれかに基づいて選択される、請求項1に記載の射出成形管理装置。
【請求項3】
前記表示形態は、一覧表、グラフ及びタイムチャートの少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載の射出成形管理装置。
【請求項4】
前記表示形態は、前記対象情報から算出される稼働率、稼働時間、生産数及び消費電力量の少なくともいずれかを含む、請求項1から3のいずれかに記載の射出成形管理装置。
【請求項5】
前記選択表示部は、一部の組み合わせを示す前記操作画像のみを表示する、請求項1から4のいずれかに記載の射出成形管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の射出成形機が設置された工場等において、複数の射出成形機を集中管理する装置が用いられることがある。このような射出成形管理装置は、それぞれの射出成形機から様々な情報を取得して、オペレーションルーム等においてユーザが複数の射出成形機の稼働状態を確認できるよう構成される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムでは、全ての射出成形機の情報を表示する機械一覧表示画面と、予め設定されるグループに属する射出成形機の情報を表示するグループ表示画面と、1つの射出成形機の情報を表示する機械詳細表示画面と、が切換表示される。この画面の切換えは、それぞれの画面に対応し、各画面に表示されるコマンドボタンによって行うことができる。また、特許文献1に記載のシステムでは、機械詳細表示画面において、さらなるコマンドボタンにより、品質モニタテーブル表示、トレンドチャート表示、相関係数表示、分布関数表示、射出成形条件表示及び機械画面表示いずれかの表示形態を選択することができる。
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、所望の情報を確認するまでに、複数の操作を行う必要があり、煩雑である。このため、必要な情報を簡単に表示させられる射出成形管理装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る射出成形管理装置は、複数の射出成形機のそれぞれから生産情報を収集する生産情報収集部と、前記生産情報の中から選択される対象情報を抽出する対象情報抽出部と、前記対象情報を所定の表示形態で表示する情報表示部と、前記対象情報と前記表示形態との組み合わせをそれぞれ示す複数の操作画像を選択可能に表示する選択表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る射出成形管理装置によれば、必要な情報を簡単に表示させられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る射出成形管理装置を備える生産設備の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の射出成形管理装置の1つの表示画面を簡略化して示す図である。
【
図3】
図1の射出成形管理装置の
図2とは異なる表示画面を示す図である。
【
図4】
図1の射出成形管理装置の
図2及び3とは異なる表示画面を示す図である。
【
図5】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至4とは異なる表示画面を示す図である。
【
図6】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至5とは異なる表示画面を示す図である。
【
図7】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至6とは異なる表示画面を示す図である。
【
図8】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至7とは異なる表示画面を示す図である。
【
図9】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至8とは異なる表示画面を示す図である。
【
図10】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至9とは異なる表示画面を示す図である。
【
図11】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至10とは異なる表示画面を示す図である。
【
図12】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至11とは異なる表示画面を示す図である。
【
図13】
図1の射出成形管理装置の
図2乃至12とは異なる表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る射出成形管理装置1を備える生産設備の構成を示す模式図である。
【0010】
生産設備は、複数の射出成形機Eと、複数の射出成形機Eと通信ネットワークNを介して接続される本開示の一実施形態に係る射出成形管理装置1と、を備える。
【0011】
射出成形機Eは、通信インターフェイスを有するローカル制御装置をそれぞれ備え、射出成形管理装置1と通信可能に構成される。射出成形機Eは、射出成形装置本体だけでなく、樹脂を供給する装置、成形品をハンドリングする装置、成形品を検査する装置等の一体に制御される付帯設備を含み得る。
【0012】
通信ネットワークNは、例えばイーサネット等の有線LAN、例えばWiFi等の無線LAN、携帯電話ネットワーク等の公衆通信網など、任意のネットワークとすることができるが、中でも有線LANが特に好適に用いられる。
【0013】
射出成形管理装置1は、制御装置10と表示装置20とを備える。制御装置10は、例えばCPU、メモリ、通信インターフェイス等を備える1又は複数のコンピュータ装置に適切なプログラフを読み込ませることで実現することができる。表示装置20は、例えば液晶モニタ等から構成することができ、制御装置10と一体となっていてもよい。
【0014】
制御装置10は、生産情報収集部11と、対象情報抽出部12と、情報表示部13と、選択表示部14と、を有する。これらの構成要素は、制御装置10の機能を類別したものであって、その機械的構造及びプログラム構造において明確に区分できるものでなくてもよい。また、制御装置10は、他の機能を実現するさらなる構成要素を有してもよい。
【0015】
生産情報収集部11は、複数の射出成形機Eのそれぞれから生産情報を収集する。射出成形機Eから収集する生産情報としては、射出成形機Eの識別記号、生産されている製品又は生産されている製品に適用されている成形条件の識別記号、稼働状態(自動運転、手動運転、警報停止、運転休止等のステイタス)、良品数(ショット数)、消費電力等が挙げられる。これらの生産情報は、時刻毎の情報として収集されることが好ましい。
【0016】
対象情報抽出部12は、生産情報の中から選択される対象情報を抽出する。対象情報は、射出成形機Eの識別記号及び射出成形Eで生産される製品又は成形条件の識別記号の少なくともいずれかに基づいて選択されることが好ましい。つまり、対象情報を抽出する検索式は、射出成形機Eの識別記号及び製品(成形条件)の識別記号の少なくとも一方を指定するものであることが好ましい。また、対象情報の抽出には、射出成形機Eの識別記号及び製品(成形条件)の識別記号類の少なくとも一方に加えて、他の検索条件が設定されてもよい。
【0017】
具体的には、対象情報は、単一の射出成形機Eについての稼働状態、良品数、消費電力等の複数の時系列データであったり、単一の製品(成形条件)についての稼働状態、良品数、消費電力の複数の時系列データであったり、複数の射出成形機Eからなるグループについての稼働状況のみの時系列データであったり、全ての射出成形機Eについての現在のみの稼働状態、良品数、消費電力等のデータであったりしてもよい。
【0018】
ユーザの管理対象及び管理目的によって、確認すべき生産情報が異なり、全てのユーザに全ての生産情報を提供することは非効率である。このため、対象情報は、ユーザが一度に確認することが効率的である生産情報をグループ化したものとすることが好ましく、ユーザの属性、例えば、経営者、生産設備の管理者、設備保守管理者、金型管理者等の種別に応じて異なる対象情報が設定され得る。具体的には、生産設備全体の管理が目的である場合、生産設備全体を俯瞰した稼働率、稼働時間、生産数、消費電力等を把握する必要がある。射出成形機Eの保守が目的の場合、射出成形機E毎の稼働率、稼働時間を把握する必要がある。生産管理を行う場合、射出成形機Eではなく製品(成形条件)毎の生産数を把握する必要がある。
【0019】
情報表示部13は、対象情報を所定の表示形態で表示装置20に表示する。情報表示部13が表示する表示形態は、一覧表、グラフ及びタイムチャートの少なくともいずれか1つを含むことができる。一覧表は、
図2及び3に示すように、例えば単一の射出成形E又は製品(成形条件)について、複数の生産情報を文字(数字及び記号を含み得る)により表示するものであってもよい。グラフは、
図4乃至7に示すように、1又は複数の射出成形機E又は製品(成形条件)について、数値で表せる生産情報の時間変化を示す棒グラフ、折れ線グラフ等であってもよい。タイムチャートは、
図8に示すように、1又は複数の射出成形機Eについて、数値化できない稼働状態等の時刻毎の遷移を図示するのであってもよい。また、情報表示部13が表示する表示形態は、例えば
図9に示すように、一覧表、グラフ及びタイムチャートの複数を含んでもよい。さらに、情報表示部13が表示する表示形態は、一覧表、グラフ及びタイムチャート以外の情報表示を含んでもよい。
【0020】
また、情報表示部13が表示する表示形態は、対象情報から算出される稼働率、稼働時間、生産数(良品数の積算値)及び消費電力量(消費電力の積算値)の少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0021】
選択表示部14は、
図10から
図13に示すように、対象情報と表示形態との組み合わせをそれぞれ示す複数の操作画像G1~G8を表示装置20に選択可能に表示する。選択表示部14は、理論上は可能であってもユーザに提示する有用性が乏しい対象情報と表示形態との組み合わせを除外した一部の組み合わせを示す操作画像G1~G8を選択的に表示することが好ましく、例えばログインID、画面上での選択等によって特定されるユーザの属性に応じて表示する操作画像G1~G8を選択することがより好ましい。
【0022】
選択表示部14によって表示される操作画像G1~G8は、ユーザが対象情報と表示形態との組み合わせを容易に認識しやすいようアイコン化されることが好ましい。
図10から
図13に例示する操作画像G1~G8は、対象情報を示す画像が表示形態を示す画像の上に重ね合わせられて構成される。また、操作画像G1~G8は、例えば対象情報に含まれる射出成形機Eのグループを示す識別記号等の最低限の文字情報を含んでもよい。図示する例において、対象情報を示す画像としては、単一の射出成形機Eを示す画像、単一の製品(成形条件)を示す画像、複数の射出成形機を示す画像、及び複数の製品(成形条件)を示す画像が用いられている。また、表示形態を示す画像としては、一覧表を示す画像、グラフを示す画像、タイムチャートを示す画像、及びタイムチャートと一覧表の組み合わせを示す画像とが用いられている。
【0023】
ユーザの管理対象及び管理目的によって確認すべき生産情報が異なるだけでなく、ユーザの管理対象及び管理目的によって、最適な生産情報の表示形態が異なる。例として、ユーザが経営者であれば、全体を概略的に把握しやすいよう、視認性が重視され、グラフによって大まかなトレンドを確認しやすくすることが望まれる。一方、生産設備の保全の要否を判断する場合や、生産性を向上するための改善を行う場合には、詳細な数値や時刻を特定できる文字情報を含む一覧表が望ましいことがある。
【0024】
具体例として、選択表示部14は、ユーザが経営者である場合、
図10に示すように、生産設備全体の稼働状態の把握のために有用な、複数の射出成形機Eの単位時間(図では経過時間)当たりの稼働状態をそれぞれグラフで表示する画面(
図6)に遷移する第1の操作画像G1と、複数の射出成形機Eの稼働状態をそれぞれタイムチャートで表示する画面(
図8)に遷移する第2の操作画像G2と、複数の製品(又は成形条件毎)の単位時間(図では経過時間)当たりの生産数及び稼働状態をそれぞれグラフで表示する画面(
図7)に遷移する第3の操作画像G3と、を表示してもよい。
【0025】
選択表示部14は、ユーザが生産管理者である場合、
図11に示すように、生産の進捗把握に有用な、単一の射出成形機Eの稼働情報、良品数等の一覧表を表示する画面(
図2)に遷移する第4の操作画像G4、単一の射出成形機Eの単位時間(図では経過時間)当たりの生産数及び稼働状態を示すグラフを表示する画面(
図4)に遷移する第5の操作画像G5と、単一の製品(成形条件の種別)の生産数及び稼働状態の時系列変化を示すグラフを表示する画面(
図5)に遷移する第6の操作画像G6と、を表示してもよい。
【0026】
選択表示部14は、操作画像G4の選択により表示される対象情報、つまり表示する射出成形機E又は製品を、使用頻度、製品の種類、直近の稼働状態等に応じて選択する機能を有してもよい。例として、選択表示部14は、直近の一定期間内に現在生産している製品と同じ製品の生産数が多い射出成形機Eに係る生産情報を対象情報としてもよい。かかる場合、選択表示部14は、操作画像G4に選択した対象情報を特定する文字情報を付加して表示してもよく、例えば生産数が上位の複数の対象情報についてそれぞれ文字情報を付加した複数の操作画像G4を表示してもよい。
【0027】
選択表示部14は、ユーザが射出成形機Eの保全管理者である場合、
図12に示すように、射出成形機の保守時期の把握に有用な、単一の射出成形機Eの稼働状態の経時変化を示すタイムチャート及び時刻毎の稼働状態を示す一覧表を表示する画面(
図9)に遷移する第7の操作画像G7と、複数の射出成形機Eの稼働状態の経時変化をそれぞれタイムチャートで表示する画面(
図8)に遷移する第2の操作画像G2と、を表示してもよい。
【0028】
選択表示部14は、ユーザが金型の管理者である場合、
図13に示すように、金型の寿命の把握に有用な、単一の成形条件下での稼働時間、良品数等の一覧表を表示する画面(
図3)に遷移する第8の操作画像G8と、単一の成形条件下での稼働時間及び生産数を数値の時系列変化を示すグラフを表示する画面(
図5)に遷移する第6の操作画像G6と、を表示してもよい。
【0029】
このように、選択表示部14が対象情報と表示形態との組み合わせを示す複数の操作画像G1~G8を表示することによって、ユーザは、少ない操作で、必要な情報を分かりやすい表示形態で確認することができる。これに対して、従来の射出成形管理装置では、表示形態と表示対象とする生産情報とを順番に指定する必要があったため、作業が煩雑であった。
【0030】
また、理論上可能な生産情報と表示形態との組み合わせの中には、情報としての価値が殆どないものも少なくない。不必要な生産情報と表示形態との組み合わせとしては、全ての射出成形機Eについての生産情報の一覧表示が挙げられる。例えば経営者は生産設備による製造の全体像を把握することが必要とされるが、全ての情報を文字で表示しても、情報量が多すぎるだけでなく、可読性が低いため、その全体像を把握することが容易ではない。全ての製品についての一覧表示も同様であり、個別の製品の生産の進捗把握、金型の寿命予測等には適していない。また、単一の成形条件は稼働頻度が低い場合があり、単一の成形条件又は他全ての成形条件について稼働状態をタイムチャート表示しても、不使用状態が目立つだけとなり、個別の金型の寿命予測や点検時期の判断に必要な稼働時間を適切に把握することができない。
【0031】
しかしながら、本実施形態の射出成形管理装置1では、選択表示部14がユーザに必要とされる生産情報(対象情報)と表示形態とを組み合わせについての表示を行う操作画像G1~G8だけを表示するので、ユーザの操作が容易となるだけでなく、不必要な生産情報と表示形態との組み合わせのためのプログラムが不要であるので、プログラムを簡素化することも可能となる。
【0032】
以上、本開示に係る射出成形管理装置の実施形態について説明したが、本開示の範囲は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本開示に係る射出成形管理装置から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本開示に係る射出成形管理装置による効果は、前述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0033】
例として、本発明に係る射出成形管理装置は、射出成形機及び製品(成形条件)以外の属性に基づいて対象情報を特定するものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 射出成形管理装置
10 制御装置
11 生産情報収集部
12 対象情報抽出部
13 情報表示部
14 選択表示部
20 表示装置
E 射出成形機
G1~G8 操作画像
N 通信ネットワーク