(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】タンク溶接線検査前処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/84 20060101AFI20231205BHJP
B08B 9/36 20060101ALI20231205BHJP
B24B 27/00 20060101ALI20231205BHJP
B24B 27/033 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01N27/84
B08B9/36
B24B27/00 L
B24B27/033 A
(21)【出願番号】P 2023099116
(22)【出願日】2023-06-16
【審査請求日】2023-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599123393
【氏名又は名称】東亜非破壊検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094581
【氏名又は名称】鯨田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】花田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 勝己
(72)【発明者】
【氏名】吹原 和郎
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-166579(JP,A)
【文献】特開平08-179083(JP,A)
【文献】特開平07-328578(JP,A)
【文献】特開2009-085894(JP,A)
【文献】特公平06-034090(JP,B2)
【文献】特開平10-085681(JP,A)
【文献】特表2020-516797(JP,A)
【文献】実公平06-034931(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-37/00
B08B 1/00-17/06
B24B 1/00-57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク床面又はタンク内周縁部に在る溶接線に対して検査の前処理を行うためのタンク溶接線検査前処理装置であって、
溶接線に沿って移動しながら、前記溶接線中の一方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向において少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動することにより前記一方の縁部側領域の表面側を磨き又は清掃する第1のブラシと、
前記第1のブラシの後方で前記第1のブラシと一定の距離を保ちつつ溶接線に沿って移動しながら、前記溶接線中の前記一方の縁部と対向する他方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向において少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動することにより前記他方の縁部側領域の表面側を磨き又は清掃する第2のブラシと、
前記第1のブラシ及び第2のブラシを前記溶接線に沿うように移動させる移動部と、
を備えたタンク溶接線検査前処理装置。
【請求項2】
前記第1のブラシ及び前記第2のブラシは、タンク床面を構成する複数の平板間に形成された溶接線を磨き又は清掃するものであり、それぞれが、側面視で溶接線の幅方向の中心に近づくほどタンク床面に近づくようにタンク床面に対して10~45度だけ傾斜するように、配置されている請求項1に記載のタンク溶接線検査前処理装置。
【請求項3】
前記第1のブラシ及び前記第2のブラシはタンク床面とタンク側面との間のタンク内周縁部に形成された溶接線を磨き又は清掃するものであり、
前記移動部は、前記第1のブラシを溶接線及びタンク床面に対向させながら移動させる第1の移動枠体と、前記第2のブラシを溶接線及びタンク側面に対向させながら移動させる第2の移動枠体と、前記第1の移動枠体及び前記第2の移動枠体を、それらの間のタンク床面と平行な方向における角度が変更可能なように連結する連結部とを含むものである請求項1に記載のタンク溶接線検査前処理装置。
【請求項4】
前記第1の移動枠体と前記第2の移動枠体にはそれぞれ、タンク側面に当接しながら回転する車輪が備えられている請求項3に記載のタンク溶接線検査前処理装置。
【請求項5】
前記第1のブラシ及び前記第2のブラシはタンク床面とタンク側面との間のタンク内周縁部に形成された溶接線を磨き又は清掃するものであり、
前記第1のブラシは、前記溶接線中のタンク床面側の領域であって当該溶接線の幅方向において少なくとも半分以上の領域に接触し且つ側面視で前記溶接線の幅方向の中心に近づくほどタンク床面に近づくようにタンク床面に対して10~45度だけ傾斜するように、配置され、
前記第2のブラシは、前記溶接線中のタンク側面側の領域であって当該溶接線の幅方向において少なくとも半分以上の領域に接触し且つ側面視で前記溶接線の幅方向の中心に近づくほどタンク側面に近づくようにタンク側面に対して10~45度だけ傾斜するように、配置されている請求項1に記載のタンク溶接線検査前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク床面又はタンク内周縁部の溶接線に対して、検査の前処理を行うための、タンク溶接線検査前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場等に設置されるタンクに関しては、
図7に示すような、タンク床面を構成する複数の平板21a間を接合するタンク床面の溶接線22、及びタンク床面とタンク側面との間を接合する例えば円形状のタンク内周縁部の溶接線23に対して磁粉探傷試験などによる検査を行う場合に、その検査の前処理として、前記各溶接線22,23の表面を磨き又は清掃して汚れ等を除く処理をすることが行われている。このような処理は、従来は、例えば作業者が研磨用具(
図8(a)参照)を手に持ってその研磨用具に装着したブラシ(
図8(b)参照)を溶接線22,23の表面に当てて磨き又は清掃することで行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業者が前述のように研磨用具を手に持ってブラシを溶接線22,23の表面に当てて磨き又は清掃する方法による作業は、極めて効率が悪いものであった。
【0005】
本発明はこのような従来技術の課題に着目して為されたものであって、タンク床面又はタンク内周縁部に在る溶接線に対して検査の前処理として行われる溶接線の表面側を磨き又は清掃する作業を大幅に効率化させることができるタンク溶接線検査前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するための本発明によるタンク溶接線検査前処理装置は、タンク床面又はタンク内周縁部に在る溶接線を検査するための前処理を行う溶接線の検査前処理装置であって、溶接線に沿って移動しながら、前記溶接線中の一方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動することにより前記一方の縁部側領域の表面側を磨き又は清掃する第1のブラシと、前記第1のブラシの後方で前記第1のブラシと一定の距離を保ちつつ溶接線に沿って移動しながら、前記溶接線中の前記一方の縁部と対向する他方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域(前記第1のブラシが磨き又は清掃する領域と部分的に重複する領域を含んでいてもよい。)に接触して回転又は振動することにより前記他方の縁部側領域の表面側を磨き又は清掃する第2のブラシと、前記第1のブラシ及び第2のブラシを前記溶接線に沿うように移動させる移動部とを備えるものである。
【0007】
また本発明によるタンク溶接線検査前処理装置においては、前記第1のブラシ及び前記第2のブラシは、タンク床面を構成する複数の平板間に形成された溶接線を磨き又は清掃するものであり、それぞれが、側面視で溶接線の幅方向の中心(溶接線の幅方向の両縁部間の中心)に近づくほどタンク床面に近づくようにタンク床面に対して約10~45度だけ傾斜するように、配置されていてもよい。
【0008】
また本発明によるタンク溶接線検査前処理装置においては、前記第1のブラシ及び前記第2のブラシはタンク床面とタンク側面との間のタンク内周縁部に形成された溶接線を磨き又は清掃するものであり、前記移動部は、前記第1のブラシを溶接線及びタンク床面に対向させながら(さらにはこれらと一定の距離を保ちながら)移動させる第1の移動枠体と、前記第2のブラシを溶接線及びタンク側面に対向させながら(さらにはこれらと一定の距離を保ちながら)移動させる第2の移動枠体と、前記第1の移動枠体と前記第2の移動枠体とを、それらの間のタンク床面と平行な方向における角度が変更(調整)可能であるように連結する連結部とを含むものであってもよい。
【0009】
また本発明においては、前記第1の移動枠体と前記第2の移動枠体にそれぞれ、タンク側面に当接しながら回転する車輪を備えるようにしてもよい。
【0010】
さらに本発明によるタンク溶接線検査前処理装置においては、前記第1のブラシ及び前記第2のブラシはタンク床面とタンク側面との間のタンク内周縁部に形成された溶接線を磨き又は清掃するものであり、前記第1のブラシは、前記溶接線中のタンク床面側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触し、且つ側面視で前記溶接線の幅方向の中心に近づくほどタンク床面に近づくようにタンク床面に対して約10~45度だけ傾斜するように、配置され、前記第2のブラシは、前記溶接線中のタンク側面側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触し、且つ側面視で前記溶接線の幅方向の中心に近づくほどタンク側面に近づくようにタンク側面に対して約10~45度だけ傾斜するように、配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、溶接線中の一方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動する第1のブラシと、前記溶接線中の前記一方の縁部と対向する他方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域(前記第1のブラシが磨き又は清掃する領域と部分的に重複する領域を含んでいてもよい。)に接触して回転又は振動する第2のブラシとを、前記溶接線に沿うように移動させるようにしたので、前記第1のブラシと前記第2のブラシを溶接線に沿って移動させるだけで溶接線の磨き又は清掃が行われるようになり、タンク床面又はタンク内周縁部の溶接線の検査前処理として行われる溶接線の表面側を磨き又は清掃する作業の効率が大幅に向上されるようになる。
【0012】
また、本発明において、前記第1のブラシ及び前記第2のブラシによりタンク床面を構成する複数の平板間に形成された溶接線を磨き又は清掃するとき、前記第1のブラシ及び前記第2のブラシをそれぞれ溶接線の幅方向の中心(溶接線の幅方向の両縁部間の中心)に近づくほどタンク床面に近づくように側面視でタンク床面に対して約10~45度だけ傾斜するように配置するようにしたときは、前記回転又は振動する各ブラシの先端部が溶接線表面に対して強く当たるようになるので、タンク床面を構成する複数の平板間に形成された溶接線の全体の磨き又は清掃を効率よく且つ確実に行えるようになる。
【0013】
また本発明において、前記連結部により、前記第1の移動枠体と前記第2の移動枠体とを、それらの間の角度がタンク床面と平行な方向において変更(調整)可能であるように連結するようにしたときは、タンク床面とタンク側面との間の例えば円形状のタンク内周縁部に形成された溶接線を前記第1のブラシ及び前記第2のブラシにより磨き又は清掃する場合において、前記第1の移動枠体が前記第1のブラシを溶接線及びタンク床面に対して一定の距離を保ちながら移動させるとき、前記第2の移動枠体も前記第2のブラシを溶接線及びタンク側面に対して一定の距離を保ちながら移動させられるようになるので、タンク面とタンク側面との間のタンク内周縁部に形成された溶接線の磨き又は清掃を前記溶接線全体に渡って均一に且つ正確に行うことが可能になる。
【0014】
また本発明において、前記第1の移動枠体と前記第2の移動枠体に、それぞれ、タンク側面に当接しながら回転する車輪を備えるようにしたときは、前記第1の移動枠体及び前記第2の移動枠体のタンク側面との距離を一定に保持することができるので、前記各ブラシを前記タンク内周縁部の溶接線上に正確に当てて磨き又は清掃することができるようになる。
【0015】
さらに本発明において、前記第1のブラシ及び前記第2のブラシによりタンク床面とタンク側面との間のタンク内周縁部に形成された溶接線を磨き又は清掃する場合に、前記第1のブラシを前記溶接線中のタンク床面側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触し、且つ前記溶接線の幅方向の中心に近づくほどタンク床面に近づくように側面視でタンク床面に対して約10~45度だけ傾斜するように配置すると共に、前記第2のブラシを前記溶接線中のタンク側面側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触し、且つ前記溶接線の幅方向の中心に近づくほどタンク側面に近づくように側面視でタンク側面に対して約10~45度だけ傾斜するように配置したときは、前記回転又は振動する各ブラシの先端部が溶接線表面に対して強く当たるようになるので、タンク床面とタンク側面との間のタンク内周縁部に形成された溶接線の全体の磨き又は清掃を効率よく且つ確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係るタンク溶接線検査前処理装置を示す斜視図である。
【
図2A】本実施形態1に係るタンク溶接線検査前処理装置の側面図である。
【
図2B】(a)は本実施形態1に係るタンク溶接線検査前処理装置の背面図、(b)はその平面図である。
【
図3】本実施形態1における各ブラシの溶接線及びタンク床面に対する位置及び動作を説明するための概略図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係るタンク溶接線検査前処理装置を示す斜視図である。
【
図5A】本実施形態2に係るタンク溶接線検査前処理装置の側面図である。
【
図5B】(a)は本実施形態2に係るタンク溶接線検査前処理装置の平面図、(b)は
図5Aにおけるブラシ15及びその周辺を
図5Aのブラシ15の図示右側から見たときの概略断面図である。
【
図6】本実施形態2における各ブラシの溶接線、タンク床面及び同側面に対する位置及び動作を示す概略図である。
【
図7】タンクの床面を構成する各平板間を接合する溶接線、及びタンクの床面と側面との間を接合する溶接線を説明するための概略図である。
【
図8】(a)は従来のタンクの溶接線の検査前処理用具を示す斜視図、(b)はその下面側に装着されたブラシを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1に係るタンク床面側の溶接線の検査前処理装置を
図1-3を参照して説明する。
図1は本実施形態1を示す斜視図、
図2Aはその側面図、
図2Bはその背面図及び平面図、
図3は本実施形態1における各ブラシ3,4の溶接線22及びタンク床面21に対する位置及び動作を説明するための概略図である。
【0018】
図1、
図2A、
図2Bにおいて、1は計4個の車輪2及びモーターにより自走可能な移動枠体、3,4は前記移動枠体1の下面側に配置された計2個のブラシ(
図8(b)に示すものと同様のブラシで例えば自らが回転又は振動して溶接線の表面を磨き又は清掃するもの)、5は本実施形態1を動作させるための操作盤及び電源装置などを備えた操作ボックスである。前記2個の各ブラシ3,4は、前記移動枠体1の移動方向においては互いに重ならないようにずれた位置であって且つ同移動方向と直交する方向(溶接線22の幅方向)においては互いに一部だけが重なるように且つ双方で溶接線22全体をカバーできるようにずれた位置に、配置されている。
【0019】
これにより、本実施形態1では、前記移動枠体1が溶接線22(
図7参照)に沿って移動すると、前記溶接線22の上面を前記2個のブラシ3,4が互いに所定距離だけ離れた位置(ずれた位置)で回転又は振動しながら移動する。すなわち、まず一方のブラシ3の移動により前記溶接線22の一方の縁部側の少なくとも半分以上の領域が研磨等され、この一方のブラシ3よりも一定の僅かな距離だけ離れて移動する他方のブラシ4の同じ方向への移動により前記溶接線22の他方の縁部側の少なくとも半分以上の領域が研磨等される。よって、前述のような2個のブラシ3,4が移動しながら回転又は振動することにより、前記溶接線22の上面全体が磨き又は清掃される。
【0020】
また、本実施形態1では、
図3に示すように、前記2個のブラシ3,4はそれぞれ、前記各ブラシ3,4がタンク床面21を構成する複数の平板21a(
図7参照)間に形成された溶接線22(
図7参照)を磨き又は清掃しているとき、前記ブラシ3及び前記ブラシ4がそれぞれ溶接線22の幅方向の各縁部22a,22b間の中心22c(
図3参照)に近づくほどタンク床面21に近づくように(各ブラシ3,4が溶接線22の幅方向の各縁部22a,22b間の中心22cから離れるほどそれぞれタンク床面21から離れるように)、側面視でタンク床面21に対して約10~45度(より望ましくは約20~35度)だけ傾斜するように、配置されている。よって、本実施形態1では、前記回転又は振動する各ブラシ3,4の毛の先端が、前記溶接線22中の幅方向の中心22c及びこれに近い領域表面に対して強く当たるようになるので、タンク床面21を構成する複数の平板21a間に形成された溶接線22の全体の磨き又は清掃が効率よく且つ確実に行われる。
【0021】
以上のように、本実施形態1によれば、溶接線22中の一方の縁部22a(
図3参照)側の領域であって当該溶接線22の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動するブラシ3と、前記溶接線22中の前記一方の縁部22aと対向する他方の縁部22b(
図3参照)側の領域であって当該溶接線22の幅方向の少なくとも半分以上の領域(前記ブラシ3が磨き又は清掃する領域と部分的に重複する領域を含む。)に接触して回転又は振動するブラシ4とを、前記溶接線22に沿うように移動させるようにしたので、前記各ブラシ3,4を溶接線22に沿って移動させるだけで溶接線22全体の磨き又は清掃が行われるようになり、タンク床面21の溶接線22の検査前処理としての溶接線の表面側を磨き又は清掃する作業の効率を大きく向上させることができる。
【0022】
また本実施形態1においては、前記各ブラシ3,4によりタンク床面21を構成する複数の平板21a間に形成された溶接線22を磨き又は清掃するとき、前記各ブラシ3,4をそれぞれ、溶接線22の幅方向の中心22c(
図3参照)に近づくほどタンク床面21に近づくように(各ブラシ3,4が溶接線22の幅方向の両縁部22a,22b間の中心22cから離れるほどそれぞれタンク床面21から離れるように)、側面視でタンク床面21に対して約10~45度(望ましくは約20~35度)だけ傾斜するように配置するようにしたので、前記回転又は振動する各ブラシ3,4の先端部が溶接線22表面に対して強く当たるようになり(
図3参照)、その結果、タンク床面21を構成する複数の平板21a間に形成された溶接線22の全体の磨き又は清掃が効率よく確実に行われるようになる。
【0023】
〔実施形態2〕
次に、本発明の実施形態2に係るタンク内周縁側溶接線の検査前処理装置を
図4-6を参照して説明する。
図4は本実施形態2に係るタンク溶接線検査前処理装置を示す斜視図、
図5Aは本実施形態2に係るタンク溶接線検査前処理装置の側面図、
図5B(a)は本実施形態2に係るタンク溶接線検査前処理装置の平面図、同(b)は
図5Aにおけるブラシ15及びその周辺を
図5Aのブラシ15の図示右側から見たときの概略断面図、
図6は実施形態2における各ブラシ14,15の溶接線23、タンク床面21及び同側面24に対する位置及び動作を示す概略図である。
【0024】
図4、
図5A、
図5Bにおいて、10は操作盤及び電源装置などを収容する操作ボックス、11は計4個の車輪18a,18bとモーターにより自走可能な第1移動枠体、12は計2個の車輪19を備え且つ前記第1移動枠体11に連結されこれに引っ張られて走行する第2移動枠体、13は、前記第1移動枠体11と前記第2移動枠体12とを、それらの間のタンク床面21と平行な方向における角度が変更(調整)可能であるように、連結する連結部13である。なお、前記第1移動枠体11及び前記第2移動枠体12にはそれぞれ、タンク側面24側に当接しながら回転する位置決め用の車輪20a及び20bが、少なくとも1個以上、備えられている。
【0025】
また
図4、
図5A、
図5Bにおいて、14は主としてタンク床面21側に向かってブラシの毛が伸びるように前記第1移動枠体11のタンク床面21に対向する部分に配置されたブラシ、15は主としてタンク側面24側に向かってブラシの毛が伸びるように前記第2移動枠体12のタンク側面24に対向する部分に配置されたブラシである。前記ブラシ14は、タンク内周縁側溶接線23(
図5B(b)、
図6、
図7参照)の中、タンク床面21側の少なくとも半分以上の領域を磨く又は清掃するものである(
図6参照)。また、前記ブラシ15は、タンク内周縁側溶接線23の中、タンク側面24側の少なくとも半分以上の領域を磨く又は清掃するものである(
図6参照)。
【0026】
本実施形態2では、前述のような連結部13により、前記第1移動枠体11と前記第2移動枠体12とを、それらの間の角度がタンク床面21と平行な方向において変更(調整)可能となるように連結するようにしたので、前記各ブラシ14,15によりタンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23を磨き又は清掃するとき、前記第1移動枠体11により引っ張られる(従動される)前記第2移動枠体12が前記ブラシ15を前記溶接線23及びタンク側面24に対して一定の距離を保ちながら、タンク内周縁部に沿って円形状に移動することが可能となるので、タンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された例えば円形状の溶接線23の磨き又は清掃を前記溶接線23全体に渡って均一に且つ正確に行うことが可能になる。
【0027】
また本実施形態2では、前記各ブラシ14は、タンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23を磨き又は清掃するとき、ブラシ14の毛(
図6の符号14aなど参照)が溶接線23の幅方向の中心23a(
図6参照)に近づくほどタンクの床面21に近づくように(逆に溶接線23の幅方向の中心23aから離れるほどタンクの側面21から離れるように)、タンク床面21に対して約10~45度(望ましくは約20~35度)だけ傾斜するように配置するようにしている。また、前記各ブラシ15は、タンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23を磨き又は清掃するとき、ブラシ15の毛(
図6の符号15aなど参照)が溶接線23の幅方向の中心23a(
図6参照)に近づくほどタンクの側面21に近づくように(逆に溶接線23の幅方向の中心23aから離れるほどタンクの側面21から離れるように)、タンク側面21に対して約10~45度(望ましくは約20~35度)だけ傾斜するように配置するようにしている。よって、本実施形態2では、前記回転又は振動する各ブラシ14,15の先端部が溶接線23表面に対して強く当たるようになり(
図6参照)、その結果、タンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23の全体の磨き又は清掃を効率よく確実に行えるようになる。
【0028】
以上のように、本実施形態2によれば、溶接線23中のタンク床面21側の領域であって当該溶接線23の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動するブラシ14と、前記溶接線23中の前記タンク床面21側と対向するタンク側面24側の領域であって当該溶接線23の幅方向の少なくとも半分以上の領域(前記ブラシ14が磨き又は清掃する領域と部分的に重複する領域を含む。)に接触して回転又は振動するブラシ15とを、前記溶接線23に沿うように移動させるようにしたので、前記ブラシ14と前記ブラシ15を溶接線23に沿って移動させるだけで溶接線23全体の磨き又は清掃が行われるようになり、タンク内周縁部の溶接線23の検査の前処理として行われる溶接線の表面側を磨き又は清掃するための作業の効率を大きく向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態2においては、前記ブラシ14及び前記ブラシ15によりタンク内周縁部の溶接線23を磨き又は清掃するとき、前記ブラシ14を溶接線23の幅方向の両縁部間の中心23aに近づくほどタンク床面21に近づくように側面視でタンク床面に対して10~45度だけ傾斜するように配置するようにすると共に、前記ブラシ15を溶接線23の幅方向の両縁部間の中心23aに近づくほどタンク側面24に近づくように側面視でタンク側面に対して10~45度だけ傾斜するように配置するようにした(
図6参照)ので、前記回転又は振動する各ブラシ14,15の先端部が溶接線23の表面に対して強く当たるようになり(
図6の符号14a,15a参照)、タンク内周縁部の溶接線23の全体の磨き又は清掃を効率よく確実に行えるようになる。
【0030】
また本実施形態2においては、前記連結部13(
図5A参照)により、前記第1移動枠体11と前記第2移動体12とをそれらの間の角度がタンク床面21と平行な方向において変更(調整)可能であるように連結するようにしたので、タンク床面21とタンク側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23を前記ブラシ14及び前記ブラシ15により磨き又は清掃する場合において、前記第1移動枠体11が前記ブラシ14を溶接線23及びタンク床面21と一定の距離を保って移動するとき、前記第2移動枠体12も同様に前記ブラシ15を溶接線23(及びタンク側面24)に対して一定の距離を保ちながら移動できるようになり、タンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23の磨き又は清掃を前記溶接線23全体に渡って均一に且つ正確に行うことが可能になる。
【0031】
また本実施形態においては、前記第1移動枠体11と前記第2移動枠体12に、それぞれ、タンク側面24に当接しながら回転する車輪20a,20bを備えるようにしたので、前記第1移動枠体11及び前記第2動枠体12のタンク側面24との距離を常に一定に保持することができ、前記各ブラシ14,15を前記タンク内周縁部の溶接線23上に正確に当てて磨き又は清掃することができるようになる。
【0032】
さらに本実施形態2においては、前記ブラシ14及び前記ブラシ15によりタンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23を磨き又は清掃するとき、前記ブラシ14を前記溶接線23中のタンク床面21側の領域であって当該溶接線23の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触し且つ前記溶接線23の幅方向の中心23aに近づくほどタンク床面21に近づくように側面視でタンク床面に対して10~45度だけ傾斜するように配置し(
図6参照)、前記ブラシ15を前記溶接線23中のタンク側面24側の領域であって当該溶接線23の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触し且つ前記溶接線23の幅方向の中心23aに近づくほどタンク側面24に近づくように側面視でタンク側面に対して10~45度だけ傾斜するように配置する(
図6参照)ようにしたので、前記回転又は振動する各ブラシ14,15の先端部が溶接線23表面に対して強く当たるようになり(
図6の符号14a,15a参照)、タンクの床面21と側面24との間のタンク内周縁部に形成された溶接線23の全体の磨き又は清掃を効率よく且つ確実に行えるようになる。
【0033】
なお、以上本発明の各実施形態について説明したが、本発明ではこれらに限定することなく様々な変更等が可能である。例えば、前記各実施形態における各ブラシ3,4,14,15は回転することで溶接線22,23の表面を研磨等する場合が一般的ではあるが、例えば前記各ブラシ3,4,14,15を細かく振動させることにより溶接線22,23の表面を研磨等させることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1,11,12 移動枠体
2,18a,18b,19,20a,20b 車輪
3,4,14,15 ブラシ
5,10 操作ボックス
13 連結部
21 タンク床面
22,23 溶接線
22a,22b 溶接線の縁部
22c,23a 溶接線の幅方向の中心部分
24 タンク側面
【要約】
【目的】タンク床面又はタンク内周縁部に在る溶接線に対して検査の前処理として行われる溶接線の表面側を磨き又は清掃する作業を大幅に効率化させることができるタンク溶接線検査前処理装置を提供する。
【構成】前記溶接線中の一方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動することにより前記一方の縁部側領域の表面側を磨き又は清掃する第1のブラシと、前記溶接線中の前記一方の縁部と対向する他方の縁部側の領域であって当該溶接線の幅方向の少なくとも半分以上の領域に接触して回転又は振動することにより前記他方の縁部側領域の表面側を磨き又は清掃する第2のブラシと、前記各ブラシを溶接線に沿って移動させる移動部とを備えた検査前処理装置である。
【選択図】
図1