(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】光伝送システム及び光伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/272 20130101AFI20231205BHJP
【FI】
H04B10/272
(21)【出願番号】P 2023508636
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021047918
(87)【国際公開番号】W WO2022201703
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021047702
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0029195(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0006615(US,A1)
【文献】国際公開第2021/006789(WO,A2)
【文献】国際公開第2021/006783(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0171268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
H04B 7/022 - 7/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路によって親局と子局との間でデジタル信号を伝送する光伝送システムであって、
前記親局は、
通信事業者、周波数帯域及び帯域幅に対応してデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を記憶する記憶部を有する複数の送受信ユニットと、
前記複数の送受信ユニットからのデジタル信号を、指示されたマッピング情報に従って
伝送信号のデータ領域にマッピングする信号処理部と、
前記信号処理部に前記マッピング情報を指示する制御部と、を有し、
前記信号処理部と前記制御部がユニット収納部内に設けられ、
前記送受信ユニットが前記ユニット収納部に着脱可能に収納され、
前記制御部が、前記記憶部から前記周波数情報を読み込んで前記マッピング情報を生成し、前記信号処理部に当該マッピング情報を指示することを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
前記送受信ユニットに、信号の入力端子と、信号の出力端子と、前記入力端子と前記ユニット収納部との間に設けられ、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、前記出力端子と前記ユニット収納部との間に設けられ、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、を設けたことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項3】
親局のユニット収納部は、通信事業者、周波数帯域及び周波数幅が特定される周波数情報を記憶する送受信ユニットを複数挿入可能となっており、
制御部が、前記複数の送受信ユニットの内、前記ユニット収納部に挿入された送受信ユニットに記憶された周波数情報に基づいてマッピング情報を生成することを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項4】
親局は、子局に当該子局が保持するマッピング情報を問い合わせ、当該親局の送受信ユニットの記憶部に記憶されたマッピング情報と一致した場合に、デジタル信号の伝送を行うことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項5】
親局と子局との間を光伝送路によってデジタル信号を複数の周波数帯域で特定の帯域幅により伝送する光伝送方法であって、
前記親局は、ユニット収納部に挿入された送受信ユニット内の記憶部から通信事業者の周波数帯域と帯域幅に基づいてデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を読み込んでマッピング情報を生成し、当該マッピング情報に基づいてデジタル信号
を伝送信号のデータ領域にマッピング
し、前記光伝送路を介して前記子局に伝送することを特徴とする光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムに係り、特にファームウェア等を変更することなく、多様な通信事業者・周波数帯域・帯域幅の信号伝送に柔軟に対応して利便性を向上させ、多彩な無線エリア構築を図ることができる光伝送システム及び光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:
図10]
昨今、移動体通信においては、高速大容量通信のために多周波、キャリアアグリゲーション、マルチアンテナなどにより、複数の周波数帯及び複数の帯域幅の信号の伝送をしている。
このような移動体通信システムには、光伝送システムを用いたものがある。
【0003】
従来のデジタル光伝送システム(単に光伝送システムと称する)について、
図10を用いて説明する。
図10は、従来の光伝送システムの構成を示す説明図である。
図10に示すように、従来の光伝送システムは、親局1と、複数の子局2と、親局1と各子局2とをそれぞれ接続する光ファイバ3とを備えている。
【0004】
親局1は、信号の入出力先毎に設けられたADC( Analog to Digital Converter )11及びDAC( Digital to Analog Converter )12の組と、入出力先に対応する複数の入力端子17及び出力端子18と、FPGA(Field Programmable Gate Array)13と、制御部14と、各子局2に対応する複数の光トランシーバ15とを備えている。
【0005】
ここで、ADC11及びDAC12の組は、通信事業者毎の周波数帯域(周波数帯)と帯域幅に対応するものであり、ADC11及びDAC12の組を複数備えて、複数の系統(複数の事業者の種々の周波数及び帯域幅)の信号を伝送可能としている。
【0006】
ADC11は、対応する入力端子17から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して、FPGA13に出力する。
DAC12は、FPGA13から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して出力端子18に出力する。
【0007】
FPGA13は、複数のADC11からパラレルに入力される信号を、所定のマッピング情報に従って異なる時間領域にマッピングし、シリアル信号として複数の光トランシーバ15に出力する。
また、FPGA13は、複数の光トランシーバ15から入力されるシリアル信号を、所定のマッピング情報に基づいてパラレル信号に分離して、対応するDAC12に出力する。
【0008】
光トランシーバ15は、電気信号を光信号に変換して、光ファイバ3を介して子局2に送信し、逆に、光ファイバ3から受信した光信号を電気信号に変換してFPGA13に出力する。
【0009】
子局2は、複数の光トランシーバ25と、FPGA23と、制御部24と、複数のADC21と複数のDACと、BPF(Band Pass Filter)27と、入出力端子28とを備えている。
【0010】
光トランシーバ25は、光ファイバ3に接続して光信号の送受信を行い、電気信号と光信号の相互変換を行う。
FPGA23は、光トランシーバ25から入力されたシリアル信号を、所定のマッピング情報に基づいてパラレル信号に変換し、それぞれ対応するDAC22に出力する。
また、FPGA23は、複数のADC21から入力されるパラレル信号を所定のマッピング情報に従って異なる時間領域に配置してシリアル信号に変換し、光トランシーバ25に出力する。
【0011】
BPF27は、複数のDAC22から入力される信号をそれぞれ対応する周波数帯域のみ通過させ入出力端子28に出力する。
また、BPF27は、入出力端子28から入力された信号を複数の周波数帯域に分離して、対応するADC21に出力する。
入出力端子28は、アンテナ等に接続されており、無線信号の入出力を行う。
【0012】
従来のデジタル光伝送システムにおいては、親局1におけるADC11、DAC12、FPGA13及び子局2におけるADC21、DAC22、FPGA23は一体構造になっていたり、組み合わせが固定となっていた。つまり、伝送する信号の組み合わせは固定となっていた。
また、親局1のFPGA13及び子局2のFPGA23における無線信号の周波数帯及び帯域幅のマッピングは予め設定された情報に基づいて、固定的に行われていた。
【0013】
[関連技術]
尚、光伝送システムに関する従来技術としては、特開2014-187450号公報「光伝送装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、多周波数共用で光伝送する場合に、光トランシーバの処理能力の範囲内で、各無線通信ユニットからの信号に対する圧縮率を変えて割り当てることで、信号の規格を満たしつつ、光伝送容量を低減できる光伝送装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の光伝送システムでは、通信事業者と周波数帯域と帯域幅の組み合わせのパターンは固定されており、通信事業者・周波数帯域・帯域幅の組み合わせを変更するためにはファームウェアを変更するなど、システム構成全体の変更を伴うものとなっている。
そのため、従来の光伝送システムでは、多様な通信事業者・周波数帯域・帯域幅の組み合わせに柔軟に対応することができず、不便であるという問題点があった。
【0016】
尚、特許文献1には、通信事業者・周波数帯域・帯域幅の情報をユニットに記憶しておき、挿入されたユニットに記憶された情報に基づいてマッピングを行い、多様な信号の伝送を可能とすることは記載されていない。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、システムの大規模な変更を行うことなく、多様な通信事業者・周波数帯域・帯域幅の組み合わせに柔軟に対応して利便性を向上させ、多彩な無線エリア構築を図ることができる光伝送システム及び光伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、光伝送路によって親局と子局との間でデジタル信号を伝送する光伝送システムであって、親局は、通信事業者、周波数帯域及び帯域幅に対応してデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を記憶する記憶部を有する複数の送受信ユニットと、複数の送受信ユニットからのデジタル信号を、指示されたマッピング情報に従って伝送信号のデータ領域にマッピングする信号処理部と、信号処理部にマッピング情報を指示する制御部と、を有し、信号処理部と制御部がユニット収納部内に設けられ、送受信ユニットがユニット収納部に着脱可能に収納され、制御部が、記憶部から周波数情報を読み込んでマッピング情報を生成し、信号処理部に当該マッピング情報を指示することを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記光伝送システムにおいて、送受信ユニットに、信号の入力端子と、信号の出力端子と、入力端子とユニット収納部との間に設けられ、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、出力端子とユニット収納部との間に設けられ、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、を設けたことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記光伝送システムにおいて、親局のユニット収納部は、通信事業者、周波数帯域及び周波数幅が特定される周波数情報を記憶する送受信ユニットを複数挿入可能となっており、制御部が、複数の送受信ユニットの内、ユニット収納部に挿入された送受信ユニットに記憶された周波数情報に基づいてマッピング情報を生成することを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、親局は、子局に当該子局が保持するマッピング情報を問い合わせ、当該親局の送受信ユニットの記憶部に記憶されたマッピング情報と一致した場合に、デジタル信号の伝送を行うことを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、親局と子局との間を光伝送路によってデジタル信号を複数の周波数帯域で特定の帯域幅により伝送する光伝送方法であって、親局は、ユニット収納部に挿入された送受信ユニット内の記憶部から通信事業者の周波数帯域と帯域幅に基づいてデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を読み込んでマッピング情報を生成し、当該マッピング情報に基づいてデジタル信号を伝送信号のデータ領域にマッピングし、光伝送路を介して子局に伝送することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光伝送路によって親局と子局との間でデジタル信号を伝送する光伝送システムであって、親局は、通信事業者、周波数帯域及び帯域幅に対応してデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を記憶する記憶部を有する複数の送受信ユニットと、複数の送受信ユニットからのデジタル信号を、指示されたマッピング情報に従って伝送信号のデータ領域にマッピングする信号処理部と、信号処理部にマッピング情報を指示する制御部と、を有し、信号処理部と制御部がユニット収納部内に設けられ、送受信ユニットがユニット収納部に着脱可能に収納され、制御部が、記憶部から周波数情報を読み込んでマッピング情報を生成し、信号処理部に当該マッピング情報を指示する光伝送システムとしているので、所望の通信サービスに応じて、通信業者・周波数帯域・帯域幅に対応する送受信ユニットをユニット収納部に挿入することで容易にマッピング情報を生成でき、システム全体の変更を伴わずに、多様な通信業者・周波数帯域・帯域幅に柔軟に対応でき、利便性を向上させ、種々の無線エリアを構築することができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、親局は、子局に当該子局が保持するマッピング情報を問い合わせ、当該親局の送受信ユニットの記憶部に記憶されたマッピング情報と一致した場合に、デジタル信号の伝送を行う上記光伝送システムとしているので、親局と子局の間の伝送を確実に行うことができる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、親局と子局との間を光伝送路によってデジタル信号を複数の周波数帯域で特定の帯域幅により伝送する光伝送方法であって、親局は、ユニット収納部に挿入された送受信ユニット内の記憶部から通信事業者の周波数帯域と帯域幅に基づいてデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を読み込んでマッピング情報を生成し、当該マッピング情報に基づいてデジタル信号を伝送信号のデータ領域にマッピングし、光伝送路を介して子局に伝送する光伝送方法としているので、挿入された送受信ユニットに応じてマッピング情報を生成でき、システム全体の変更を伴わずに、多様な通信業者・周波数帯域・帯域幅に柔軟に対応でき、利便性を向上させ、種々の無線エリアを構築することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本光伝送システムの構成を示す説明図である。
【
図2】通信事業者毎の周波数帯と帯域幅を示す説明図である。
【
図3】周波数帯と選択幅の選択例(1)を示す説明図である。
【
図4】周波数帯と帯域幅の選択例(2)を示す説明図である。
【
図5】親局における周波数配列情報の生成を示す説明図である。
【
図6】デジタルデータマッピングの例(1)を示す説明図である。
【
図7】デジタルデータマッピング(2)を示す説明図である。
【
図8】子局200に対する制御(1)を示す説明図である。
【
図9】子局に対する制御(2)を示す説明図である。
【
図10】従来の光伝送システムの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る光伝送システム(本光伝送システム)は、親局のユニット収納部に、通信業者、周波数帯域及び帯域幅に対応してデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を記憶する複数の送受信ユニットが着脱可能に収納され、制御部が、ユニット収容部に挿入された送受信ユニットの記憶部から周波数情報を読み込んでマッピング情報を生成して信号処理部に出力し、信号処理部が、当該マッピング情報に基づいて複数の送受信ユニットからのデジタル信号をマッピングするようにしており、各送受信ユニットに通信業者・周波数帯域・帯域幅を特定する周波数情報を記憶しておき、所望の通信サービスに応じて送受信ユニットを挿入することで、容易にマッピング情報を生成することができ、システム全体を大幅に変更することなく、多様な通信業者・周波数帯域・帯域幅に柔軟に対応することができるものである。
【0028】
また、本光伝送システムは、親局が、子局に当該子局が保持するマッピング情報を問い合わせ、親局の送受信ユニットの記憶部に記憶されたマッピング情報と一致した場合に、デジタル信号の伝送を行い、一致しない場合には、子局のマッピング情報を親局のマッピング情報と一致させるよう制御するようにしており、親局と子局の間の伝送を確実に行うことができるものである。
また、本発明の実施の形態に係る光伝送方法は、本光伝送システムにおける光伝送方法である。
【0029】
[本光伝送システムの構成:
図1]
本光伝送システムの構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本光伝送システムの構成を示す説明図である。尚、
図10に示した従来の光伝送システムと同様の部分については同一の符号を付しており、説明は省略する。
図1に示すように、本光伝送システムは、無線送受信ユニット収容部100と、複数の無線送受信ユニット101-1~101-n(1つのみ図示、個々を区別しない場合には無線送受信ユニット101と記載する)とを備えた親局10と、複数の子局200とを備え、親局10と各子局200とを接続する光ファイバ3とを備えている。
尚、親局10と子局200との間に中継局を設け、当該中継局を介して光伝送を行うように構成してもよい。
【0030】
本光伝送システムの特徴部分について説明する。
親局10の無線送受信ユニット収容部100は、内部に、FPGA113と、制御部114と、複数の光トランシーバ15と、接続基板(BB)117とを備え、外部に、複数の無線送受信ユニット101を挿入可能な挿入部が形成され、挿入された無線送受信ユニット101を収納する。
挿入部には、無線送受信ユニット101と、接続基板117とを接続する電極及び配線が形成されている。
【0031】
無線送受信ユニット101は、本光伝送システムの特徴部分であり、通信事業者・周波数帯域・帯域幅の組み合わせに対応して、複数設けられている。
各無線送受信ユニット101は、ADC11と、DAC12と、入力端子17と、出力端子18と、周波数情報記憶部(図ではBand Infoと記載)116とを備えている。
【0032】
ADC11は、従来と同様に、入力端子17から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して接続基板117に出力する。
DAC12は、接続基板117から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換して、出力端子18に出力する。
【0033】
周波数情報記憶部116は、通信事業者・周波数帯域・帯域幅を含む周波数情報を記憶している。周波数情報については後述する。
そして、本光伝送システムでは、通信事業者・周波数帯域・帯域幅の組み合わせに対応して個々の無線送受信ユニット101が用意されており、所望の通信サービスに応じて、必要な無線送受信ユニット101を選択して無線送受信ユニット収容部100に挿入することで、親局10のFPGA113における多様な信号のマッピングを可能とし、当該通信サービスを実現するものである。
【0034】
尚、無線送受信ユニット101の挿入とは、実際に無線送受信ユニット101を挿入部(スロット)に挿入することでもよいし、予め複数の無線送受信ユニット101が挿入されていて、スイッチによって接続基板117との接続状態を「接続」とすることでもよい。
【0035】
接続基板117は、無線送受信ユニット101が無線送受信ユニット収容部100の挿入部に挿入された場合に、無線送受信ユニット101が差し込まれる基板であり、各無線送受信ユニット101と無線送受信ユニット収容部100内部のFPGA113、制御部114とを接続するものである。
【0036】
制御部114は、本光伝送システムの特徴部分であり、挿入された複数の無線送受信ユニット101の周波数情報記憶部116から周波数情報を読み出して加算し、親局10のマッピング情報(親局マッピング情報)を生成してFPGA113に出力する。
【0037】
また、制御部114は、後述するように、子局200に対して、子局200が記憶しているマッピング情報(子局マッピング情報)を要求し、親局マッピング情報と一致するかどうかをチェックして、一致した場合に限って子局200との間の信号伝送を行う。
子局マッピング情報が親局マッピング情報と異なる場合には、子局200に対して、子局マッピング情報を修正するよう制御する。
制御部114の動作については後述する。
【0038】
FPGA113は、請求項に記載した信号処理部に相当し、複数の無線送受信ユニット101からパラレルに入力される信号を、制御部114から指示される親局マッピング情報に従って、異なる時間軸にマッピングして、複数の光トランシーバ15に出力する。
同様に、FPGA113は、複数の光トランシーバ15から入力されるマッピングされた信号を、親局マッピング情報に基づいて分離し、複数の無線送受信ユニット101に出力する。
【0039】
本光伝送システムでは、FPGA113におけるマッピング処理及びその逆処理は従来と変わらないものの、処理に用いられるマッピング情報が固定ではなく、挿入される無線送受信ユニット101に応じて制御部114で生成された親局マッピング情報を用いる。
これにより、本光伝送システムでは、多様な系統の信号に合わせたマッピングを可能とし、様々な無線通信サービスを実現することができるようにしている。
また、FPGA113では、無線送受信ユニット101の周波数情報部116から読み込んだ情報に応じて、複数種類の帯域幅/アンテナに対応するデジタルフィルタを構成(設定)するようにしている。
【0040】
子局200は、基本的な構成は従来と同様であるが、子局マッピング情報を記憶する周波数情報記憶部226を備え、制御部224、FPGA223における動作が従来とは一部異なっている。
【0041】
周波数情報記憶部226は、子局200のFPGA223におけるマッピング処理で用いられる子局マッピング情報を記憶している。
本光伝送システムの特徴として、予め設定された子局マッピング情報が親局10の親局マッピング情報と異なる場合には、制御部224によって書き替えられる。
【0042】
制御部224は、親局10から子局マッピング情報の書き替えの指示を受信した場合に、周波数情報記憶部226の子局マッピング情報を書き替えて更新し、更新された子局マッピング情報をFPGA223に出力する。
【0043】
FPGA223は、従来と同様に複数のADC21,DAC22と光トランシーバ22との間のパラレルーシリアル変換又はシリアルーパラレル変換の処理を行うものであるが、マッピング処理及びその逆処理に用いられる子局マッピング情報が固定ではなく、周波数情報記憶部226に記憶された情報を用いる。
【0044】
そして、子局200では、光トランシーバ25で受信した信号を、FPGA223が制御部224から指示された子局マッピング情報に基づいて複数の通信事業者・通信帯域・総帯域幅の組に分離し、それぞれ対応するDAC22に出力して、BPF27、入出力端子28を介してアンテナ等に出力される。
【0045】
[通信事業者の周波数帯と帯域幅:
図2]
次に、通信事業者毎の周波数帯と帯域幅について
図2を用いて説明する。
図2は、通信事業者毎の周波数帯と帯域幅を示す説明図であり、(a)は通信事業者X、(b)は通信事業者Y、(c)は通信事業者Zに対応している。
親局10と子局200との間の伝送容量は帯域幅で決まり、複数のデジタル無線信号をシリアル伝送する光トランシーバ15,25によって制限される。
【0046】
図2に示すように、本光伝送システムで伝送する信号について、通信事業者、周波数帯(周波数帯域)、帯域幅/アンテナ数、アンテナ数、総帯域幅が規定されている。本実施の形態では、通信事業者・周波数帯域・総帯域幅の組み合わせを周波数情報と称するものとする。
例えば、
図2(a)に示すように、通信事業者Xは、周波数帯F1では、帯域幅/アンテナ数はB、アンテナ数は2、総帯域幅はB×2(総帯域幅=(帯域幅/アンテナ数)×アンテナ数)となっている。ここで、「B」は、帯域幅の基準値であり、光トランシーバ15,25で伝送可能な帯域幅の合計をB×100としている。
尚、アンテナは、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)等のマルチアンテナに対応する伝送経路を示している。
【0047】
そして、本光伝送システムでは、無線送受信ユニット101の周波数情報部116に、例えば
図2に示したすべての周波数情報が記憶されており、各無線送受信ユニット101では、それらの中から、通信事業者・周波数帯・帯域幅(総帯域幅)が1対1対1に組み合わされた情報、つまり
図2の各テーブルの1行分の情報が特定された(選択された)状態となっている。
【0048】
[周波数帯と帯域幅の選択例(1):
図3]
次に、上述した通信事業者・周波数帯・帯域幅の組み合わせの中から、任意に選択した例(1)について
図3を用いて説明する。
図3は、周波数帯と選択幅の選択例(1)を示す説明図である。
図3に示すように、この例では、通信事業者Xのみの信号を伝送するものとしており、
図2の情報を記憶した無線送受信ユニット101の内、通信事業者Xの、選択された周波数帯域に対応する周波数情報が特定された無線送受信ユニット101を無線送受信ユニット収容部100に挿入することで実現される。
この例では、周波数帯域に対応した7個の無線送受信ユニット101が挿入される。
【0049】
そして、制御部114で複数の無線送受信ユニット101の情報が統合されて、
図3の内容を示す親局マッピング情報が生成され、FPGA113に出力されて、マッピング処理が行われる。
本光伝送システムで伝送可能な帯域幅の合計はB×100であるが、
図3の例では、総帯域幅はB×63.5である。このように総帯域幅の合計が伝送容量の上限に満たない場合には、「0」等の固定データで埋めて伝送する。
【0050】
[周波数帯と帯域幅の選択例(2):
図4]
図4は、周波数帯と帯域幅の選択例(2)を示す説明図である。
図4の例では、通信事業者X,Y,Zの信号を伝送するものとしており、
図2の情報を記憶した無線送受信ユニット101の内、選択された通信事業者・周波数帯・総帯域幅に対応する周波数情報が特定された複数(ここでは12個)のユニットを、無線送受信ユニット収容部100に挿入することで実現される。
図4の総帯域幅の合計は、伝送可能な帯域幅の上限であるB×100に一致している。
【0051】
[親局における周波数配列情報の例:
図5]
次に、親局における周波数配列情報の例について
図5を用いて説明する。
図5は、親局における周波数配列情報の生成を示す説明図である。
親局の周波数配列情報は、FPGA113で用いられる親局マッピング情報を特定する配列情報である。
【0052】
無線送受信ユニット収容部100には、複数(ここではN個とする)の無線送受信ユニット101が挿入可能となっている。無線送受信ユニット101の数は、ここでは、想定される通信事業者・周波数帯・総帯域幅 の組(周波数情報)の数に一致しており、例えば、
図2に示した周波数情報の数に一致しているものとする。
そして、各無線送受信ユニット101の周波数情報記憶部116には、
図2に示したすべての周波数情報が記憶されており、それらの周波数情報の内のいずれか1つ(1つの組、
図2の1行分)が選択特定されている。
【0053】
周波数情報を特定する場合、例えば、無線送受信ユニット101に、N個の周波数情報に1対1に対応するディップスイッチを設け、それらのスイッチの内1つをONに設定することで、対応する1組の周波数情報が特定される。
図5では、各無線送受信ユニット101において、N個のディップスイッチの内のいずれがONになっているか、また、それによって特定される通信事業者、周波数帯、総帯域幅の情報が示されている。
【0054】
図5の例では、無線送受信ユニット(1)は、1番目のスイッチがONとなって、通信事業者X、周波数帯F1、総帯域幅B×2の情報が特定され、無線送受信ユニット(2)は、2番目のスイッチがONとなって、通信事業者Y、周波数帯F1、総帯域幅B×2の情報が特定され、・・・無線送受信ユニットNは、N番目のスイッチがONとなって、通信事業者X、周波数帯F10、総帯域幅B×5の情報が特定されている。
【0055】
ディップスイッチのオン/オフの情報は、無線送受信ユニット101毎に、Nビットの情報となる。
例えば、無線送受信ユニット(1)のスイッチのオン/オフの状態を示すスイッチ情報は、「000…001」であり、無線送受信ユニット(2)のスイッチ情報は、「000…010」である。
【0056】
親機10の制御部114は、各無線送受信ユニット101が無線送受信ユニット収容部100に挿入されているか否かを検出する。挿入有無の検出は、例えば、各無線送受信ユニット101の挿入位置を決めておき、接続基板117からの信号の入力/非入力で検出する。
図5の例では、無線送受信ユニット(1)は挿入(挿入有)、無線送受信ユニット(2)は非挿入(挿入無)、無線送受信ユニット(3)は挿入(挿入有)、・・・無線送受信ユニット(N-2)は挿入、無線送受信ユニット(N-1)は非挿入、無線送受信ユニット(N)は挿入、というように検出されている。
【0057】
そして、親局10の制御部114は、挿入有の無線送受信ユニット101のNビットのスイッチ情報を加算して、
図5に示すように、親局10全体のスイッチの状態を示すNビットの情報(親局実装情報、親局配列情報)を生成する。
図5に示すように、親局実装情報によって、「1」が設定されているビットに応じて
図3、
図4に示したような、伝送すべき複数の「通信事業者・通信帯域・総帯域幅」の組が特定されるものである。
【0058】
伝送すべき「通信事業者・通信帯域・総帯域幅」の組 を示す情報を、親局マッピング情報と称するものとし、制御部114は親局マッピング情報をFPGA113に出力(指示)し、FPGA113は入力された(指示された)親局マッピング情報に基づいて、入力データのマッピングを行う。
【0059】
このように、本光伝送システムでは、「通信事業者・通信帯域・総帯域幅」 の組を特定する周波数情報を、無線送受信ユニット101に1対1に対応付けて記憶しておき、所望の伝送システムに合わせて、適切な無線送受信ユニット101を無線送受信ユニット収容部100に挿入することで、所望の伝送システムを実現することが可能である。
【0060】
特に、本光伝送システムでは、無線送受信ユニットへの設定を予め実施しておくことで、親局10を設置する現場では細かい設定を不要とし、必要な無線送受信ユニット101を無線送受信ユニット収容部100に挿入するだけでよいため、設置作業を大幅に簡略化することができるものである。
【0061】
[デジタルデータマッピングの例(1):
図6]
次に、FPGA113におけるデジタルデータマッピングの例について
図6を用いて説明する。
図6は、デジタルデータマッピングの例(1)を示す説明図である。
図6に示すように、伝送信号は制御信号領域(C-Plane)と、データ領域(U-Plane)に分かれており、FPGA113は、制御部114からの親局マッピング情報に基づいて、複数の無線送受信ユニット101のADC11から入力されたデジタル信号をデータ領域にマッピングする。
【0062】
図6のマッピングは、
図3に示した親局マッピング情報(
図6の左下に示す)に基づくものであり、通信事業者Xのデータをマッピングしている。
また、上述したように、伝送容量に空きがある場合には「0」などの固定データを配置する。
制御信号領域には、制御部114で生成されたNビットの親局配列情報等が含まれる。
そして、FPGA113は、マッピングした伝送データを光トランシーバ15に出力する。
【0063】
また、FPGA113は、光トランシーバ15から受信したシリアルデータを、親局マッピング情報に基づいて、複数の通信事業者・通信帯域・総帯域幅の組に分離して、それぞれ対応する無線送受信ユニット101のDAC12に出力する。
【0064】
[デジタルデータマッピングの例(2):
図7]
FPGA113におけるデジタルデータなマッピングの別の例について
図7を用いて説明する。
図7は、デジタルデータマッピング(2)を示す説明図である。
図7は、
図4に示した親局マッピング情報に基づくものであり、通信事業者X,Y,Zのデータをマッピングしている。
この例では、親局マッピング情報に基づく総帯域幅はB×100となり、最大伝送容量と一致する。
【0065】
[子局のマッピング情報]
本光伝送システムでは、親局10が子局200のマッピング情報を監視し、親局10と子局200のマッピング情報が一致した場合に伝送を行い、一致しない場合には伝送を行わない。
【0066】
子局200では、周波数情報記憶部226に子局マッピング情報を記憶している。
子局マッピング情報は、基本的には親局マッピング情報と一致するように、予め子局マッピング情報及びそれを特定する配列情報が設定されているが、親局10側で親局マッピング情報が変更された場合や、誤った子局装置が接続された場合等には、親局10からの制御により子局マッピング情報を修正する制御を行う。
尚、子局200には、複数のタイプがあり、タイプによって記憶している子局マッピング情報が異なっている。
【0067】
[子局に対する制御(1):
図8]
子局200に対する制御の例について
図8を用いて説明する。
図8は、子局200に対する制御(1)を示す説明図である。
図8に示すように、親局10の制御部114では、親局マッピング情報を特定する配列情報として、「1100・・・0011」を記憶している。
子局200(タイプ1)の周波数情報記憶部226には、配列情報として「1100・・・0011」が記憶されている。
上述したように、配列情報とマッピング情報とは1対1に対応している。
【0068】
本光伝送システムでは、運用開始時に、もしくは定期的に、親局10の制御部114が、親局10に接続されるそれぞれの子局200に対して配列情報を要求する。
子局200の制御部224は、親局10からの要求を受けると、自己の周波数情報記憶部226に記憶している配列情報を読み出して、親局10に応答する(配列情報応答)。
親局10の制御部114は、記憶している親局10の配列情報と、子局200から受信した配列情報とを比較し、ビットごとに比較して差分を抽出する。
【0069】
差分が0の場合(全ビット一致していた場合)には、親局10は、子局200に対して現在設定されている配列情報「1100・・・0011」を有効とするよう指示し、子局200の制御部224は、それに従って当該配列情報を有効とし、FPGA223に当該配列情報に対応する子局マッピング情報を出力する。
このようにして、親局10と子局200のマッピング情報が一致していることが確認され、親局10と子局200との間の伝送が正常に行われるものである。
【0070】
[子局に対する制御(2):
図9]
子局に対する別の制御について
図9を用いて説明する。
図9は、子局に対する制御(2)を示す説明図である。
親局10の制御部114は、親局10の配列情報と、子局200から受信した配列情報とを比較した結果、いずれかのビットが異なっていた場合には伝送を行わない。
そして、異なっているビットを示す情報を送信し、当該ビットを反転させるよう制御する。
【0071】
図9の例では、親局10の配列情報が「1000・・・0011」であり、子局200の配列情報が「1100・・・0011」であった場合を示しており、親局10は、親局と子局とで異なっているビットを示す「0100・・・0000」を送信し、当該ビットを反転させるよう指示する。図では、「0100・・・0000を無効に」と記載している。
【0072】
これにより、子局200の制御部224は、異なっていたビットを「1」から「0」に反転して周波数情報記憶部226に記憶し、子局の配列情報は「1000・・・0011」となって親局10の配列情報と一致する。
この場合には、親局10と子局200の配列情報が一致するので、親局10と子局200との間の伝送は可能となる。
このように、親局10の配列情報が変わった場合にも、別の子局200を用意して接続しなおす必要はなく、容易にシステムを修正することができるものである。
【0073】
また、親局10の制御部114は、子局200の配列情報が親局10の配列情報と異なっていた場合には、表示部(図示せず)に子局200の識別情報と配列情報不一致を示すアラーム表示を行い、また、外部にアラート信号を発報してその旨報知する。
【0074】
アラーム表示やアラートの発報は、配列情報の相違の程度が大きい場合、例えば親局10の配列情報と一致しないビットの数が特定数以上の場合等に行うようにしてもよい。
また、例えば誤った接続により、本来接続すべき子局200ではない子局装置が接続された場合など、子局200の周波数帯域と帯域幅の構成が親局と1つも一致しない場合などの異常時にも同様にアラーム発報を行う。
同様に、子局200が親局10から配列情報が異なる旨の制御情報を受信した場合に、子局200においてもランプを点滅させる等の表示を行ってもよい。
【0075】
[実施の形態の効果]
本光伝送システムによれば、親局10の無線送受信ユニット収納部100に、通信業者、周波数帯域及び帯域幅に対応してデジタル信号のマッピングを行うための周波数情報を記憶する複数の無線送受信ユニット101が着脱可能に収納され、制御部114が、無線送受信ユニット収容部100に挿入された無線送受信ユニット101の周波数情報記憶部116から周波数情報を読み込んでマッピング情報を生成してFPGA113に出力し、FPGA113が、当該マッピング情報に基づいて複数の無線送受信ユニット101からのデジタル信号をマッピングするようにしており、各無線送受信ユニット101に通信業者・周波数帯域・帯域幅を特定する周波数情報を記憶しておき、所望の通信サービスに応じて無線送受信ユニット101を挿入することで、容易にマッピング情報を生成することができ、システム全体を大幅に変更することなく、多様な通信業者・周波数帯域・帯域幅に柔軟に対応することができる効果がある。
【0076】
尚、本実施の形態では、親局10の制御部114が、無線送受信ユニット101の周波数情報に基づいて親局マッピング情報を生成するものとして記載したが、この処理をFPGA113で行うようにしてもよい。
【0077】
この出願は、2021年3月22日に出願された日本出願特願2021-047702を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、システムの大規模な変更を行うことなく、多様な通信事業者・周波数帯域・帯域幅の組み合わせに柔軟に対応して利便性を向上させ、多彩な無線エリア構築を図ることができる光伝送システム及び光伝送方法に適している。
【符号の説明】
【0079】
1,10…親局、 2,200…子局、 3…光ファイバ、 11,21…ADC、 12,22…DAC、 13,23,113,223…FPGA、 14,24,114,224…制御部、 15,25…光トランシーバ、 17…入力端子、 18…出力端子、 27…BPF、 28…入出力端子、 100…無線送受信ユニット収容部、 101…無線送受信ユニット、 116,226…周波数情報記憶部、 117…接続基板