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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液体組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20231205BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20231205BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20231205BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20231205BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20231205BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20231205BHJP
   C11D 7/54 20060101ALI20231205BHJP
   C07B 33/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09K3/00 109
C11D7/32
C11D7/08
C11D3/30
C11D17/08
C11D7/34
C11D7/54
C07B33/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023547092
(86)(22)【出願日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2023014848
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2022066553
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 謙介
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/095948(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/006418(WO,A1)
【文献】特開昭62-166346(JP,A)
【文献】特開平03-136034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C07B 33/00
C11D 1/00- 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式1で表される化合物、下記式2で表される化合物、及び下記式4で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、及び水を含有し、酸性である、液体組成物。
【化1】

〔式1において、Xはハロゲン原子であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上24以下のアルキル基を表し、Yトリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選ばれる陰イオンを表す。〕
【化2】

〔式2において、Xはハロゲン原子であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上24以下のアルキル基を表し、Yトリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選ばれる陰イオンを表す。〕
【化3】

〔式4において、Xはハロゲン原子であり、Rは炭素数1以上24以下のアルキル基を表し、Yトリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選ばれる陰イオンを表す。〕
【請求項2】
さらに、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕を含有する、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
(B)成分の含有量の1モル部に対する(A)成分の含有量が1モル部以上100モル部以下である、請求項2に記載の液体組成物。
【請求項4】
25℃におけるpHが7未満である、請求項1に記載された液体組成物。
【請求項5】
酸化剤用である、請求項1に記載された液体組成物。
【請求項6】
漂白剤用である、請求項1に記載された液体組成物。
【請求項7】
(A)下記式1で表される化合物、下記式2で表される化合物、及び下記式4で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕を、酸性の水中で保存する、化合物の保存方法。
【化4】

〔式1において、Xはハロゲン原子であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上24以下のアルキル基を表し、Yトリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選ばれる陰イオンを表す。〕
【化5】

〔式2において、Xはハロゲン原子であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上24以下のアルキル基を表し、Yトリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選ばれる陰イオンを表す。〕
【化6】

〔式4において、Xはハロゲン原子であり、Rは炭素数1以上24以下のアルキル基を表し、Yトリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選ばれる陰イオンを表す。〕
【請求項8】
(A)成分を、過酸化水素の共存下で保存する、請求項7に記載された保存方法。
【請求項9】
請求項1~6の何れかに記載された液体組成物から調製した処理液を、過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、酸化方法。
【請求項10】
請求項1~6の何れかに記載された液体組成物から調製した処理液を、過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、漂白方法。
【請求項11】
請求項1~6の何れかに記載された液体組成物の、酸化剤の製造のための使用。
【請求項12】
請求項1~6の何れかに記載された液体組成物の、漂白剤の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤、漂白剤などとして利用できる液体組成物に関する。
【0002】
背景技術
カチオン性化合物のなかでも、ウロニウム塩、ハロウロニウム塩、チアゾリウム塩は、酸化剤、漂白活性化剤、縮合剤などとして利用できることが知られている。酸化剤は、他の物質に対して酸化作用を示すものであり、その酸化作用は、有色物質に対しては、脱色、漂白、変色などの現象として認識され得るものである。酸化剤は、風呂・トイレ・台所等の硬質物品の漂白、カビ取り、衣類の漂白、汚れ・匂い原因物質の分解、除菌、パルプの漂白、繊維の精練などの様々な用途に用いられている。
一方、漂白剤としては、次亜塩素酸塩などを用いた、いわゆる塩素系漂白剤の他に、過酸化水素、ホウ酸塩、過炭酸塩、過ケイ酸塩、過燐酸塩等の過酸を用いた酸素系漂白剤が知られている。酸素系漂白剤では、その漂白力を高めるために、有機酸エステルなどの漂白活性化剤がしばしば併用される。酸素系漂白剤は、酸化剤(例えば過酸化水素)を漂白活性化剤である有機酸エステルなどと反応させて、漂白活性種(有機過酸など)を生成させて対象物を酸化して漂白する。
【0003】
特開平11-256188号公報には、ペルオキシ化合物と特定のホルムアミジニウム塩とをそれぞれ特定範囲の量で含有する洗剤またはクリーナーが開示されている。
【0004】
発明の概要
本発明は、ウロニウム塩、ハロウロニウム塩、及びチアゾリウム塩から選ばれる化合物を含有し、保存安定性に優れた液体組成物を提供する。
【0005】
本発明は、(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、及び水を含有し、酸性である、液体組成物に関する。
【0006】
【化1】
【0007】
〔式1において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0008】
【化2】
【0009】
〔式2において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0010】
【化3】
【0011】
〔式3において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0012】
【化4】
【0013】
〔式4において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0014】
【化5】
【0015】
〔式5において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0016】
また、本発明は、(A)成分を、酸性の水中で保存する、化合物の保存方法に関する。
【0017】
また、本発明は、前記本発明の液体組成物から調製した処理液を過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、酸化方法に関する。
【0018】
また、本発明は、前記本発明の液体組成物から調製した処理液を過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、漂白方法に関する。
【0019】
また、本発明は、前記本発明の液体組成物の、酸化剤の製造のための使用に関する。
【0020】
また、本発明は、前記本発明の液体組成物の、漂白剤の製造のための使用に関する。
【0021】
本発明によれば、所定のウロニウム塩、所定のハロウロニウム塩、及び所定のチアゾリウム塩から選ばれる化合物を含有し、保存安定性に優れた液体組成物が提供される。
【0022】
発明を実施するための形態
〔液体組成物〕
本発明の液体組成物は、(A)成分の前記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物、及び水を含有し、酸性である。
【0023】
式1~5中、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、酸化分解活性を向上させる観点からは、ハロゲン原子、更に塩素原子が好ましい。
式1~5中、Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。Rの炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が挙げられる。Rの炭化水素基の炭素数は、例えば、1以上、更に6以上、そして、24以下、更に12以下であってよい。
【0024】
式1中、Rの炭化水素基の炭素数は、水に対する溶解性が良い観点より、それぞれ、12以下、更に6以下、そして、1以上であってよい。
式2中、Rの炭化水素基の炭素数は、それぞれ、12以下、更に8以下、更に6以下、そして、1以上であってよい。また、式2中、4つのRの炭化水素基の炭素数の合計は、水に対する溶解性が良い観点より、24以下、更に16以下であってよい。
式4中、Rの炭化水素基の炭素数は、水に対する溶解性が良い観点より、12以下、更に6以下、そして、1以上であってよい。
【0025】
式1~5中、Yは陰イオンである。Yの陰イオンとしては、例えば、有機陰イオン、無機陰イオンのいずれであってもよい。Yの陰イオンとしては、例えば、pKaが5以下の酸の共役塩基である陰イオンが挙げられる。Yの陰イオンは、ヨウ化物イオン以外の陰イオンが好ましい。Yの陰イオンとしては、例えば、pKaが5以下の酸の共役塩基である陰イオンが挙げられる。Yの陰イオンとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(OTf)、パラトルエンスルホン酸イオン(OTs)、メタンスルホン酸イオン(OMs)等のスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン(OSO3Me)等のアルキル硫酸イオン、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)等のハロゲン化物イオン(ヨウ化物イオン(I)を除く)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 )等のフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)等のフルオロリン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミドイオン((CF3SO2)2N)等のイミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO)等のフルオロ酢酸イオン、過塩素酸イオン(ClO4 -)、塩素酸イオン(ClO3 -)、亜塩素酸イオン(ClO2 -)などが挙げられる。Yは、好ましくはOTf、OSO3Me、OTs、OMs、Cl、及びBrから選ばれる陰イオンである。
【0026】
本発明では、酸化分解活性を向上させる観点からは、(A)成分は、式1で表される化合物、式2で表される化合物及び式4で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
【0027】
本発明の液体組成物は、(A)成分を、酸化分解活性を向上させる観点から、例えば、0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、更に1質量%以上、そして、20質量%以下、更に10質量%以下、更に5質量%以下含有することが好ましい。
【0028】
本発明の液体組成物は、水を含有する。水は、イオン交換水、水道水などが挙げられる。水は、本発明の液体組成物の組成の合計を100質量%にするための量で用いることができる。本発明の液体組成物は、水を、例えば、50質量%以上、更に80質量%以上、更に90質量%以上、そして、99質量%以下、更に95質量%以下、更に90質量%以下含有することができる。
【0029】
本発明の液体組成物は、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕を含有することができる。本発明の液体組成物が(B)成分を含有する場合、該組成物は、(B)成分を、安全性に優れる観点から、例えば、0.01質量%以上、更に1質量%以上、更に3質量%以上、そして、30質量%以下、更に20質量%以下、更に10質量%以下含有することが好ましい。
【0030】
本発明の液体組成物が(B)成分を含有する場合、酸化分解活性を向上させる観点から、(A)成分の含有量の1モル部に対する(B)成分の含有量は、例えば、1モル部以上、更に22モル部以上、更に33モル部以上、そして、100モル部以下、更に55モル部以下、更に44モル部以下が好ましい。
【0031】
本発明の液体組成物は、(B)成分の他にも任意の成分を含有することができる。そのような任意の成分としては、例えば、キレート剤、増粘剤、界面活性剤、ポリマーなどが挙げられる。なお、(B)成分は過酸化水素水として配合してもよい。過酸化水素水のように、水を含む態様で所定の成分を配合する場合、その水は、本発明の液体組成物における水成分の一部又は全部となる。
【0032】
本発明の液体組成物は、酸化剤用として好適である。すなわち、例えば、本発明の液体組成物を過酸化水素と共に酸化剤として用いる、あるいは酸化剤の製造ために用いることができる。
また、本発明の液体組成物は、漂白剤用として好適である。すなわち、例えば、本発明の液体組成物を過酸化水素と共に漂白剤として用いる、あるいは漂白剤の製造ために用いることができる。
【0033】
本発明の液体組成物は、使用時、例えば酸化剤又は漂白剤として使用するときの(A)成分の濃度は、例えば、0.0001質量%以上、更に0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、そして、10質量%以下、更に1質量%以下、更に0.1質量%以下であってよい。
また、本発明の液体組成物が(B)成分を含有する場合、使用時、例えば酸化剤又は漂白剤として使用するときの(B)成分の濃度は、例えば、0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、そして、30質量%以下、更に3質量%以下、更に1質量%以下であってよい。
【0034】
本発明の液体組成物は、例えば、(A)成分を含有する固体の剤と水とを混合して得ることもできる。すなわち、本発明は、(A)成分を含有する固体の剤を含んで構成される、(A)成分と水とを含有する酸性の液体組成物のためのキットを提供する。
【0035】
本発明の液体組成物は、25℃のpHが、例えば、2以上、更に3以上、そして、7未満、更に6以下、更に5以下であってよい。このようなpHにするために、例えば、pH調整剤などの成分を含有することができる。pH調整剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸水素塩、乳酸、コハク酸、グルコン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸などの有機酸、リン酸、ホウ酸、塩酸、硫酸などの無機酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸などのスルホン酸、などが挙げられる。pH調整剤は、緩衝能を有する組み合わせで選択されてもよい。
【0036】
本発明の液体組成物は、風呂、トイレ、台所等の硬質物品の漂白、カビ取り、衣類の漂白、汚れ・匂い原因物質の分解、除菌、殺ウイルス、パルプの漂白、など、処理の対象物に対して酸化作用が有用な効果をもたらす様々な用途に用いることができる。本発明の液体組成物は、必要により過酸化水素などと組み合わせて、例えば、漂白剤組成物、漂白洗浄剤組成物、カビ取り剤組成物、脱色剤組成物、消臭剤組成物、殺菌剤組成物、殺ウイルス剤組成物などとして使用できる。なかでも、本発明の液体組成物は、漂白用又は漂白洗浄用であることが好ましい。更に、硬質物品の漂白用又は漂白洗浄用であることが好ましい。
【0037】
本発明により、本発明の液体組成物の、酸化剤の製造のための使用が提供される。
また、本発明により、本発明の液体組成物の、漂白剤の製造のための使用が提供される。
本発明の液体組成物が、酸化や漂白に適した組成であるならば、該組成物をそのまま用いて酸化剤又は漂白剤を製造することもできる。
【0038】
前記使用では、酸化剤又は漂白剤は、(A)成分を、酸化分解活性を向上させる観点から、例えば、0.0001質量%以上、更に0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、そして、10質量%以下、更に1質量%以下、更に0.1質量%以下含有することが好ましい。前記組成物は、この範囲で(A)成分を含有することができる。
前記使用では、酸化剤又は漂白剤は(B)成分を含有することが好ましい。その場合、酸化剤又は漂白剤は、(B)成分を、例えば、0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、そして、30質量%以下、更に3質量%以下、更に1質量%以下含有することが好ましい。前記組成物は、この範囲で(B)成分を含有することができる。
【0039】
〔酸化方法及び漂白方法〕
本発明により、本発明の液体組成物から調製した処理液を過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、酸化方法が提供される。
また、本発明により、本発明の液体組成物から調製した処理液(以下、本発明の処理液ともいう)を過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、漂白方法が提供される。
【0040】
本発明の処理液は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する処理液が好ましい。本発明の液体組成物が、酸化や漂白に適した組成であるならば、該組成物をそのまま本発明の処理液としてそのまま用いることもできる。また、本発明の処理液は、(A)成分を含有し(B)成分を含有しない組成物を、(B)成分の供給源となる化合物又は(B)成分を含有する組成物と混合して調製してもよい。
【0041】
本発明の処理液は、(A)成分及び水を含有する本発明の液体組成物と、(B)成分及び/又は(B)成分の供給源、例えば、水中で過酸化水素を生成する過酸化物と、必要に応じて水と、を混合して得ることができる。水中で過酸化水素を生成する過酸化物としては、無機過酸化物、過酸化水素付加物が挙げられ、好ましくは、過炭酸塩、トリポリリン酸塩・過酸化水素付加物、ピロリン酸塩・過酸化水素付加物、尿素・過酸化水素付加物、硫酸塩・過酸化水素付加物、過ホウ酸塩、過ケイ酸塩、過酸化塩であり、より好ましくは、過炭酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物、ピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物、尿素・過酸化水素付加物、又は4NaSO・2H、過ホウ酸ナトリウム一水和物、過ホウ酸ナトリウム四水化物、過ケイ酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム等である。また、前記のようなキットを用いて本発明の液体組成物を調製した後、該組成物と、(B)成分及び/又は(B)成分の供給源と、必要に応じて水と、を混合して得ることもできる。さらに、後述するように、使用目的に応じて、例えば、リン酸緩衝液のように緩衝剤としても機能するpH調整剤を加えて、処理液のpHを、例えば、3以上、更に5以上、更に6以上、そして、12以下、更に10以下、更に8以下に調整してもよい。
【0042】
本発明の処理液は、(A)成分を、酸化分解活性を向上させる観点から、例えば、0.0001質量%以上、更に0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、そして、10質量%以下、更に1質量%以下、更に0.1質量%以下含有することが好ましい。
【0043】
本発明の処理液は、(B)成分を、例えば、0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、そして、30質量%以下、更に3質量%以下、更に1質量%以下含有することができる。
【0044】
前記酸化方法及び前記漂白方法の対象物は、例えば、風呂、トイレ、台所等の硬質物品、衣類等の繊維製品などが挙げられる。前記酸化方法及び前記漂白方法では、本発明の液体組成物を、過酸化水素の存在下、浸漬、塗布、噴霧などの方法で対象物と接触させることができる。本発明の処理液と対象物とを接触させる際の接触時間や接触温度は限定されない。
【0045】
本発明の処理液は、本発明の液体組成物で述べた任意の成分を含有することができる。
【0046】
本発明の処理液のpHは、例えば、3以上、更に5以上、更に6以上、そして、12以下、更に10以下、更に8以下であってよい。このpHは、本発明の酸化方法又は漂白方法を行う温度でのpHであるが、例えば、25℃でのpHであってよい。本発明の酸化方法又は漂白方法では、過酸化水素の存在下、中性近傍のpHでも優れた酸化力又は漂白力を得ることができる。
【0047】
〔保存方法〕
本発明は、(A)成分を、酸性の水中で保存する、化合物の保存方法(以下、本発明の保存方法ともいう)を提供する。
本発明の保存方法には、本発明の液体組成物で述べた事項を適宜適用することができる。本発明の保存方法における(A)成分の具体例や好ましい例なども本発明の液体組成物と同じである。本発明の保存方法は、(A)成分や本発明の液体組成物の保存方法であってよい。
【0048】
本発明の保存方法では、酸性の水中、(A)成分の含有量が、例えば、0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、更に1質量%以上、そして、20質量%以下、10質量%以下、更に5質量%以下であってよい。
【0049】
本発明の保存方法では、(A)成分を酸性の水中で保存する。保存に用いる酸性の水は、pHが、例えば、2以上、更に3以上、そして、7未満、更に6以下、更に5以下であってよい。このようなpHにするために、例えば、pH調整剤などの成分を含有することができる。pH調整剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸水素塩、乳酸、コハク酸、グルコン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸などの有機酸、リン酸、ホウ酸、塩酸、硫酸などの無機酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸といったスルホン酸などが挙げられる。pH調整剤は、緩衝能を有する組み合わせで選択されてもよい。なお、このpHは、(A)成分、及び(B)成分などの任意成分を含んだ状態でのpHである。
【0050】
本発明の保存方法は、(A)成分以外の成分の共存下で行うことができる。例えば、本発明の液体組成物で述べた任意成分を酸性の水に添加して保存を行うことができる。
本発明では、操作性に優れる観点から、(B)成分の過酸化水素の共存下で(A)成分を酸性の水中で保存することが好ましい。(B)成分を共存させる場合、本発明の保存方法では、酸性の水中、(B)成分の含有量が、例えば、0.01質量%以上、更に1質量%以上、更に3質量%以上、そして、30質量%以下、更に20質量%以下、更に10質量%以下であってよい。
【0051】
本発明の保存方法は、例えば、本発明の液体組成物、更に酸化剤用である本発明の液体組成物又は漂白剤用である本発明の液体組成物の保存方法として用いることができる。
【0052】
本発明の保存方法では、酸性の水の温度は、特に限定されないが、例えば、0℃以上、更に25℃以上、そして、60℃以下、更に50℃以下であってよい。
【0053】
本発明の保存方法では、保存の期間は、特に限定されないが、例えば、1日以上、更に14日以上、そして、730日以下、更に365日以下であってよい。
【0054】
本発明の保存方法では、例えば、所定の容器に、水と(A)成分と必要に応じて(B)成分その他の任意成分を投入し、液性を酸性、好ましくは前記範囲のpHに調整して、(A)成分を保存することができる。容器の形状、容量などは限定されない。容器は、蓋、栓など、開口の封止手段を有するものが好ましい。
【0055】
上述した実施の形態に加え、本発明は以下の態様を開示する。
<1>
(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、及び水を含有し、酸性である、液体組成物。
【0056】
【化6】
【0057】
〔式1において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0058】
【化7】
【0059】
〔式2において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0060】
【化8】
【0061】
〔式3において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0062】
【化9】
【0063】
〔式4において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0064】
【化10】
【0065】
〔式5において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0066】
<2>
式1~5中、Xは、ハロゲン原子である、更に塩素原子である、<1>に記載された液体組成物。
【0067】
<3>
式1~5中、Rの炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基である、<1>又は<2>に記載された液体組成物。
【0068】
<4>
式1~5中、Rの炭化水素基の炭素数は、1以上、更に6以上、そして、24以下、更に12以下である、<1>~<3>の何れかに記載された液体組成物。
【0069】
<5>
式1~5中、Yは、有機陰イオン及び無機陰イオンから選ばれる陰イオンである、<1>~<4>の何れかに記載された液体組成物。
【0070】
<6>
式1~5中、Yは、pKaが5以下の酸の共役塩基である陰イオンである、<1>~<5>の何れかに記載された液体組成物。
【0071】
<7>
式1~5中、Yは、スルホン酸イオン、アルキル硫酸イオン、ハロゲン化物イオン(ヨウ化物イオン(I)を除く)、フルオロホウ酸イオン、フルオロリン酸イオン、イミドイオン、フルオロ酢酸イオン、過塩素酸イオン(ClO4 -)、塩素酸イオン(ClO3 -)、及び亜塩素酸イオン(ClO2 -)から選ばれる陰イオンである、さらに、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(OTf)、パラトルエンスルホン酸イオン(OTs)、メタンスルホン酸イオン(OMs)、メチル硫酸イオン(OSO3Me)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミドイオン((CF3SO2)2N)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、塩素酸イオン(ClO3 -)、及び亜塩素酸イオン(ClO2 -)から選ばれる陰イオンである、<1>~<6>の何れかに記載された液体組成物。
【0072】
<8>
式1~5中、Yは、OTf、OSO3Me、OTs、OMs、Cl、及びBrから選ばれる陰イオンである、<1>~<7>の何れかに記載された液体組成物。
【0073】
<9>
(A)成分は、式1で表される化合物、式2で表される化合物及び式4で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物である、<1>~<8>の何れかに記載された液体組成物。
【0074】
<10>
前記式1中、Xは塩素原子であり、Rは、それぞれ独立に、メチル基であり、YはClである、<1>~<9>の何れかに記載された液体組成物。
【0075】
<11>
前記式2中、Xは塩素原子であり、Rのうち2つはエチル基であり、他の2つはへキシル基であり、YはClである、<1>~<9>の何れかに記載された液体組成物。
【0076】
<12>
前記式3中、Xは塩素原子であり、Rはメチル基であり、YはClである、<1>~<8>の何れかに記載された液体組成物。
【0077】
<13>
前記式4中、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである、<1>~<9>の何れかに記載された液体組成物。
【0078】
<14>
前記式5中、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである、<1>~<8>の何れかに記載された液体組成物。
【0079】
<15>
(A)成分を、0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、更に1質量%以上、そして、20質量%以下、更に10質量%以下、更に5質量%以下含有する、<1>~<14>の何れかに記載された液体組成物。
【0080】
<16>
水を、50質量%以上、更に80質量%以上、更に90質量%以上、そして、99質量%以下、更に95質量%以下、更に90質量%以下含有する、<1>~<15>の何れかに記載された液体組成物。
【0081】
<17>
さらに、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕を含有する、<1>~<16>の何れかに記載された液体組成物。
【0082】
<18>
(B)成分を、0.01質量%以上、更に1質量%以上、更に3質量%以上、そして、30質量%以下、更に20質量%以下、更に10質量%以下含有する、<17>に記載された液体組成物。
【0083】
<19>
(B)成分の含有量の1モル部に対する(A)成分の含有量が1モル部以上、更に22モル部以上、更に33モル部以上、そして、100モル部以下、更に55モル部以下、更に44モル部以下である、<17>又は<18>に記載された液体組成物。
【0084】
<20>
使用時の(B)成分の濃度は、0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、そして、30質量%以下、更に3質量%以下、更に1質量%以下である、<17>~<19>の何れかに記載された液体組成物。
【0085】
<21>
酸化剤用である、<1>~<20>の何れかに記載された液体組成物。
【0086】
<22>
漂白剤用である、<1>~<20>の何れかに記載された液体組成物。
【0087】
<23>
使用時の(A)成分の濃度は、0.0001質量%以上、更に0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、そして、10質量%以下、更に1質量%以下、更に0.1質量%以下である、<1>~<22>の何れかに記載された液体組成物。
【0088】
<24>
25℃におけるpHが、2以上、更に3以上、そして、7未満、更に6以下、更に5以下である、<1>~<23>の何れかに記載された液体組成物。
【0089】
<25>
pH調整剤を含有する、<1>~<24>の何れかに記載された液体組成物。
【0090】
<26>
pH調整剤は、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸二水素カリウムから選ばれるリン酸水素塩、乳酸、コハク酸、グルコン酸、クエン酸、酢酸、及び酒石酸から選ばれる有機酸、リン酸、ホウ酸、塩酸、及び硫酸から選ばれる無機酸、並びに、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、及びメタンスルホン酸から選ばれるスルホン酸、から選ばれるpH調整剤である、<25>に記載された液体組成物。
【0091】
<27>
<1>~<26>の何れかに記載された液体組成物から調製した処理液を過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、酸化方法。
【0092】
<28>
<1>~<26>の何れかに記載された液体組成物から調製した処理液を過酸化水素の存在下、対象物と接触させる、漂白方法。
【0093】
<29>
前記処理液は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有する、<27>又は<28>に記載された方法。
【0094】
<30>
前記処理液は、(B)成分を、0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、そして、30質量%以下、更に3質量%以下、更に1質量%以下含有する、<27>~<29>の何れかに記載された方法。
【0095】
<31>
前記処理液は、(A)成分を、0.0001質量%以上、更に0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、そして、10質量%以下、更に1質量%以下、更に0.1質量%以下含有する、<27>~<30>の何れかに記載された方法。
【0096】
<32>
前記処理液は、水を、80質量%以上、更に90質量%以上、更に95質量%以上、そして、99.99質量%以下、更に98質量%以下、更に95質量%以下含有する、<27>~<31>の何れかに記載された方法。
【0097】
<33>
前記処理液のpHは、3以上、更に5以上、更に6以上、そして、12以下、更に10以下、更に8以下である、<27>~<32>の何れかに記載された方法。
【0098】
<34>
(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕を、酸性の水中で保存する、化合物の保存方法。
【0099】
【化11】
【0100】
〔式1において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0101】
【化12】
【0102】
〔式2において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0103】
【化13】
【0104】
〔式3において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0105】
【化14】
【0106】
〔式4において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0107】
【化15】
【0108】
〔式5において、Xはハロゲン原子又は-O-Rであり、Rは炭化水素基を表し、Yは陰イオンを表す。〕
【0109】
<35>
前記水中での(A)成分の含有量が、0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、更に1質量%以上、そして、20質量%以下、10質量%以下、更に5質量%以下である、<34>に記載された保存方法。
【0110】
<36>
(A)成分を、pHが、2以上、更に3以上、そして、7未満、更に6以下、更に5以下の水中で保存する、<34>又は<35>に記載された保存方法。
【0111】
<37>
(A)成分を保存する水は、pH調整剤を含有する、<34>~<36>の何れかに記載された保存方法。
【0112】
<38>
pH調整剤は、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸二水素カリウムから選ばれるリン酸水素塩、乳酸、コハク酸、グルコン酸、クエン酸、酢酸、及び酒石酸から選ばれる有機酸、リン酸、ホウ酸、塩酸、及び硫酸から選ばれる無機酸、並びに、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、及びメタンスルホン酸から選ばれるスルホン酸、から選ばれるpH調整剤である、<37>に記載された保存方法。
【0113】
<39>
(A)成分を、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕の共存下で保存する、<34>~<38>の何れかに記載された保存方法。
【0114】
<40>
前記水中での(B)成分の含有量が、0.01質量%以上、更に1質量%以上、更に3質量%以上、そして、30質量%以下、更に20質量%以下、更に10質量%以下である、<39>に記載された保存方法。
【0115】
<41>
前記保存方法は、<1>~<26>の何れかに記載された液体組成物、更に酸化剤用である前記液体組成物又は漂白剤用である前記液体組成物の保存方法である、<34>~<40>の何れかに記載された保存方法。
【0116】
<42>
酸性の水の温度は、0℃以上、更に25℃以上、そして、60℃以下、更に50℃以下である、<34>~<41>の何れかに記載された保存方法。
【0117】
<43>
保存の期間は、1日以上、更に14日以上、そして、730日以下、更に365日以下である、<34>~<42>の何れかに記載された保存方法。
【0118】
<44>
<1>~<26>の何れかに記載された液体組成物の、酸化剤の製造のための使用。
【0119】
<45>
<1>~<26>の何れかに記載された液体組成物の、漂白剤の製造のための使用。
【0120】
<46>
(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕を0.01質量%以上5質量%以下、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕成分を0.01質量%以上10質量%以下、及び水を80質量%以上99.99質量%以下含有し、酸性である、液体組成物。
【0121】
【化16】
【0122】
〔式1において、Xは塩素原子であり、Rは、それぞれ独立に、メチル基であり、YはClである。〕
【0123】
【化17】
【0124】
〔式2において、Xは塩素原子であり、Rのうち2つはエチル基であり、他の2つはへキシル基であり、YはClである。〕
【0125】
【化18】
【0126】
〔式3において、Xは塩素原子であり、Rはメチル基であり、YはClである。〕
【0127】
【化19】
【0128】
〔式4において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0129】
【化20】
【0130】
〔式5において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0131】
<47>
(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕、及び水を含有し、酸性である液体組成物から調製した処理液を、対象物と接触させる、酸化方法又は漂白方法であって、
前記処理液はpHが5以上10以下であり、
前記処理液は(A)成分を0.0001質量%以上1質量%以下含有し、
前記処理液は(B)成分を0.001質量%以上3質量%以下含有し、
前記処理液は水を80質量%以上99.99質量%以下含有する、
酸化方法又は漂白方法。
【化21】
【0132】
〔式1において、Xは塩素原子であり、Rは、それぞれ独立に、メチル基であり、YはClである。〕
【0133】
【化22】
【0134】
〔式2において、Xは塩素原子であり、Rのうち2つはエチル基であり、他の2つはへキシル基であり、YはClである。〕
【0135】
【化23】
【0136】
〔式3において、Xは塩素原子であり、Rはメチル基であり、YはClである。〕
【0137】
【化24】
【0138】
〔式4において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0139】
【化25】
【0140】
〔式5において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0141】
<48>
(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕、及び水を含有し、酸性である液体組成物から調製した、酸化用又は漂白用の処理液であって、
前記処理液は25℃でのpHが5以上10以下であり、
前記処理液は(A)成分を0.0001質量%以上1質量%以下含有し、
前記処理液は(B)成分を0.001質量%以上3質量%以下含有し、
前記処理液は水を80質量%以上99.99質量%以下含有する、
酸化用又は漂白用の処理液。
【化26】
【0142】
〔式1において、Xは塩素原子であり、Rは、それぞれ独立に、メチル基であり、YはClである。〕
【0143】
【化27】
【0144】
〔式2において、Xは塩素原子であり、Rのうち2つはエチル基であり、他の2つはへキシル基であり、YはClである。〕
【0145】
【化28】
【0146】
〔式3において、Xは塩素原子であり、Rはメチル基であり、YはClである。〕
【0147】
【化29】
【0148】
〔式4において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0149】
【化30】
【0150】
〔式5において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0151】
<49>
(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物を0.0001質量%以上1質量%以下、(B)過酸化水素を0.001質量%以上3質量%以下、及び水をを80質量%以上99.99質量%以下含有し、25℃でのpHが5以上10以下である、酸化用又は漂白用の処理液。
【0152】
【化31】
【0153】
〔式1において、Xは塩素原子であり、Rは、それぞれ独立に、メチル基であり、YはClである。〕
【0154】
【化32】
【0155】
〔式2において、Xは塩素原子であり、Rのうち2つはエチル基であり、他の2つはへキシル基であり、YはClである。〕
【0156】
【化33】
【0157】
〔式3において、Xは塩素原子であり、Rはメチル基であり、YはClである。〕
【0158】
【化34】
【0159】
〔式4において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0160】
【化35】
【0161】
〔式5において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0162】
<50>
(A)下記式1~式5で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(A)成分という〕、(B)過酸化水素〔以下、(B)成分という〕、及び水を含有し、酸性である液体組成物を用いた、酸化用又は漂白用の処理液の製造方法であって、
前記処理液は25℃でのpHが5以上10以下であり、
前記処理液は(A)成分を0.0001質量%以上1質量%以下含有し、
前記処理液は(B)成分を0.001質量%以上3質量%以下含有し、
前記処理液は水を80質量%以上99.99質量%以下含有し、
任意に前記液体組成物と水とを混合することを含む、
酸化用又は漂白用の処理液の製造方法。
【化36】
【0163】
〔式1において、Xは塩素原子であり、Rは、それぞれ独立に、メチル基であり、YはClである。〕
【0164】
【化37】
【0165】
〔式2において、Xは塩素原子であり、Rのうち2つはエチル基であり、他の2つはへキシル基であり、YはClである。〕
【0166】
【化38】
【0167】
〔式3において、Xは塩素原子であり、Rはメチル基であり、YはClである。〕
【0168】
【化39】
【0169】
〔式4において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0170】
【化40】
【0171】
〔式5において、Xは塩素原子又は臭素原子であり、Rはメチル基であり、YOTfである。〕
【0172】
実施例
実施例及び参考例で用いた評価化合物(一部)は、以下の合成例で製造したものである。合成は、それぞれ、ナスフラスコを用いて行った。
【0173】
(1)合成例1
実施例2の評価化合物である2-クロロ-3-メチルチアゾール-3-イウム トリフルオロメタンスルホネート〔2-chloro-3-methylthiazol-3-ium trifluoromethanesulfonate〕を、次のように合成した。
【0174】
0.5g(4.18mmol)の2-クロロチアゾールのジクロロメタン(8.36mL)溶液に対し、1.03g(6.27mmol, 1.5 eq.)のトリフルオロメタンスルホン酸メチルを加え、室温(25℃)で5時間撹拌した。反応終了後、反応液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた粗生成物をジエチルエーテルを用いて洗浄し、2-クロロ-3-メチルチアゾール-3-イウム トリフルオロメタンスルホネート〔2-chloro-3-methylthiazol-3-ium trifluoromethanesulfonate〕を1.09g(3.8mmol, 収率92%)得た。この反応のスキームは以下の通りである。
【0175】
【化41】
【0176】
2-クロロ-3-メチルチアゾール-3-イウム トリフルオロメタンスルホネートの1H NMRの測定結果は次の通りであった。
1H NMR(400 MHz, D2O) δ = 8.09(1H, d, J = 4.4 Hz), 7.98 (1H,d, J = 4.4 Hz), 4.05 (3H, s) ppm.
なお、1H NMRの測定条件は、以下の通りであった(以下同様)。
1H NMR測定条件>
・装置:Vnmr 400MR DD2(Agilent社製)
・測定温度:25℃
・待ち時間:10秒
・積算回数:8回
・観測範囲:6410.3Hz
・パルス:45°
・データポイント:65536
【0177】
(2)合成例2
実施例3の評価化合物である2-ブロモ-3-メチルチアゾール-3-イウム トリフルオロメタンスルホネート〔2-bromo-3-methylthiazol-3-ium trifluoromethanesulfonate〕を、次のように合成した。
【0178】
0.5g(3.05mmol)の2-ブロモチアゾールのジクロロメタン(6.1mL)溶液に対し、0.75g(4.57mmol, 1.5 eq.)のトリフルオロメタンスルホン酸メチルを加え、室温(25℃)で5時間撹拌した。反応終了後、反応液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた粗生成物をジエチルエーテルを用いて洗浄し、2-ブロモ-3-メチルチアゾール-3-イウム トリフルオロメタンスルホネート〔2-bromo-3-methylthiazol-3-ium trifluoromethanesulfonate〕を0.93g(2.83mmol, 収率93%)得た。この反応のスキームは以下の通りである。
【0179】
【化42】
【0180】
2-ブロモ-3-メチルチアゾール-3-イウム トリフルオロメタンスルホネートの1H NMRの測定結果は次の通りであった。
1H NMR(400 MHz, D2O) δ = 8.14(1H, d, J = 4.4 Hz), 8.05(1H,d, J = 4.4 Hz), 4.08 (3H, s) ppm.
【0181】
(3)合成例3
実施例4の評価化合物であるN-(クロロ(ジエチルアミノ)メチレン)-N-ヘキシルヘキサン-1-アミニウムクロリド〔N-(chloro(diethylamino)methylene)-N-hexylhexan-1-aminium chloride〕を、次の2段階で合成した。
【0182】
10.94g(59mmol, 2 eq.)のジヘキシルアミンのジクロロメタン(59mL)溶液に対し、5.97g(59mmol, 2 eq.)のトリエチルアミンを加え、これを0℃に冷却した。
そこに4gのジエチルカルバモイルクロリド(29.5mol,1 eq.)を添加し、室温(25℃)で1時間撹拌した。反応終了後、反応液に1Mの塩酸を加えることにより反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を水、及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1→1:1)を用いて精製し、1,1-ジエチル-3,3-ジヘキシルウレア(1,1-diethyl-3,3-dihexylurea)を8.01g(28.16mmol, 収率95%)得た。この反応のスキームは以下の通りである。
【0183】
【化43】
【0184】
1,1-ジエチル-3,3-ジヘキシルウレアの1H NMRの測定結果は次の通りであった。
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ = 3.18-3.09(8H, m), 1.53-1.46 (4H,m), 1.34-1.21 (13H, m), 1.10 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.88 (3H,t, J = 7.2 Hz) ppm.
【0185】
1g(3.52mmol)の1,1-ジエチル-3,3-ジヘキシルウレアのジクロロメタン(1.76mL)溶液を0℃に冷却した。そこにトリホスゲン0.52g(1.76mol, 0.5 eq.)を加え、室温(25℃)で終夜撹拌した。反応終了後、反応液をロータリーエバポレーターで濃縮し、N-(クロロ(ジエチルアミノ)メチレン)-N-ヘキシルヘキサン-1-アミニウムクロリドを1.56g(3.39mmol, 収率quant.)得た。この反応のスキームは以下の通りである。
【0186】
【化44】
【0187】
N-(クロロ(ジエチルアミノ)メチレン)-N-ヘキシルヘキサン-1-アミニウムクロリドの1H NMRの測定結果は次の通りであった。
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ = 4.00-3.95(4H, m), 3.83-3.78(4H, m), 1.81-1.61 (4H, m), 1.32-1.27 (18H, m), 0.87 (6H, m)ppm.
【0188】
なお、実施例1の評価化合物は、下記の化合物(2-Chloro-1,3-dimethylimidazolinium Chloride:富士フイルム和光純薬株式会社製)であった。
【0189】
【化45】
【0190】
<試薬>
実施例及び参考例で用いた試薬は以下の通りである。
・リン酸(85%):富士フイルム和光純薬株式会社製
・リン酸水素二ナトリウム:富士フイルム和光純薬株式会社製
・リン酸二水素カリウム:富士フイルム和光純薬株式会社製
・3-(トリメチルシリル)-1-プロパン-1,1,2,2,3,3-d6-スルホン酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬株式会社製
・エタノール(99.5%):富士フイルム和光純薬株式会社製
・クルクミン:富士フイルム和光純薬株式会社製
・アセトニトリル:富士フイルム和光純薬株式会社製
・過酸化水素(30%):富士フイルム和光純薬株式会社製
( )内は有効分量である。表中の量は、有効分量である。
【0191】
〔実施例〕
<保存安定性の評価>
リン酸とリン酸水素二ナトリウムと重水を用いてpH=2.5のリン酸緩衝液を作製し、これを用いて(B)成分の過酸化水素が3%、表1の(A)成分が26.4mM、3-(トリメチルシリル)-1-プロパン-1,1,2,2,3,3-d6-スルホン酸ナトリウム(標準物質)が3mMの溶液を調製した。この溶液は、前記標準物質を除いた組成が表1の組成(質量%)の液体組成物に相当する。表1の実施例の液体組成物は、酸化剤ないし漂白剤として使用できるものである。液体組成物を作製した直後に1H NMRを測定し、測定後は25℃にて保存した。最初の測定から1時間経過後にもう一度1H NMRを測定した。得られたチャートの標準物質とのピーク比から、評価化合物((A)成分)のピークの減少量を算出し、内部標準法によって(A)成分の残存率の値(%)を求め、保存安定性を評価した。結果を表1に示す。数値が高いほど、保存安定性に優れることを示す。なお、1H NMRの測定条件は、以下の通りであった。
1H NMR測定条件>
・装置:Vnmr 400MR DD2(Agilent社製)
・測定温度:25℃
・待ち時間:10秒
・積算回数:8回
・観測範囲:6410.3Hz
・パルス:45°
・データポイント:65536
【0192】
【表1】
【0193】
〔参考例〕
<酸化力の評価>
イオン交換水を用いて5.29mMの(A)成分(表2)の溶液(A液とする)、イオン交換水と30%過酸化水素とを用いて1765mMの(B)成分の溶液(B液とする)、エタノールを用いて1.32mMのクルクミン溶液を、それぞれ、作製した。リン酸二水素カリウムとリン酸水素二ナトリウムを用いてpH=7.3に調整したリン酸緩衝液18.8mLに対してB液を0.1mL、A液を1mL添加し、10秒間撹拌した後にクルクミン溶液を0.1mL添加し、10分間撹拌した(終濃度は、(A)成分0.264mM、(B)成分8.824mM、クルクミン0.0066mMであった)。10分後、反応液より0.5mLを採取し、これにクエンチ液(0.5Mリン酸水溶液/アセトニトリル=1:1(vol))を0.5mL添加し、サンプル液とした。これをHPLCで定量することで、クルクミンの残存量を求めた。なお、この評価は、表1の液体組成物を中性条件で用いた場合の酸化分解活性を評価する試験に相当する。
HPLCによる定量の結果、表2の液体組成物の中性条件下での酸化分解活性(酸化力(%)、下記式により算出)は表2に示す通りであった。数値が高いほど、酸化分解活性に優れることを示す。なお、HPLCの条件は以下の通りであった。
酸化力(%)=100×[(クルクミンの使用量-クルクミンの残存量)/クルクミンの使用量]
<HPLC条件>
・装置
SHIMAZU CBM-20A
Pump:LC-20A, UV-Vis detector:SPD-20A, PDA detector:SPD-M20A, Column oven:CTO-20A, Auto sampler:SIL-20A
・分析条件
Column:L-column ODS, 150mm×4.6mm, 5μm(一般財団法人 化学物質評価機構)
Oven temperature:40℃, Detector:UV(430nm), Injection volume:10μl, Flow rate:1.0mL/min, Mobile phase:A=50mM phosphoric acid,B=acetonitrile
【0194】
【表2】
【要約】
本発明は、特定の式で表される、特定のウロニウム塩、特定のハロウロニウム塩、及び特定のチアゾリウム塩から選ばれる化合物から選ばれる1種以上の化合物、及び水を含有し、酸性である、液体組成物である。