(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】矯正用靴下、及び、足矯正用サポータ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20231206BHJP
A41B 11/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A41B11/00 D
(21)【出願番号】P 2021187412
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2021-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521503237
【氏名又は名称】株式会社スペーレン
(73)【特許権者】
【識別番号】521503248
【氏名又は名称】山下 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】▲斉▼藤 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】関口 勝久
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】黄 貴▲広▼
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3210355(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0315831(US,A1)
【文献】特開2020-012210(JP,A)
【文献】米国特許第5257969(US,A)
【文献】特開2018-16934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00-02
A61F 13/06
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2趾、第3趾、及び、第4趾を嵌入するための袋部を備える矯正用靴下であって、
弾性を有するとともに、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記袋部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部を備え
、
前記第1引張部は、装着されたときに、第2中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されるとともに、第4中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されている矯正用靴下。
【請求項2】
踵骨を覆う踵骨部と、
弾性を有するとともに、左右両側から、足背上の、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、舟状骨及び立方骨で画定される領域に向かって延び、装着されたときに、前記踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部と、を備える請求項1に記載の矯正用靴下。
【請求項3】
第2趾、第3趾、及び、第4趾を嵌入するための袋部を備える矯正用靴下であって、
弾性を有するとともに、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記袋部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部と、
踵骨を覆う踵骨部と、
弾性を有するとともに、
左右両側から、足背上の、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、舟状骨及び立方骨で画定される領域に向かって延び、装着されたときに、前記踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部と、を備え
る矯正用靴下。
【請求項5】
足に装着される足矯正用サポータであって、
弾性を有し、
第2趾、第3趾、及び、第4趾に対して装着する第1装着部と、
前記第1装着部に対して連結され、且つ、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記第1装着部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部と、を備え、
前記第1引張部は、装着されたときに、第2中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されるとともに、第4中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されている足矯正用サポータ。
【請求項6】
足に装着される足矯正用サポータであって、
弾性を有し、
第2趾、第3趾、及び、第4趾に対して装着する第1装着部と、
前記第1装着部に対して連結され、且つ、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記第1装着部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部と
、
踵骨を覆う踵骨部と、
弾性を有するとともに、左右両側から、足背上の、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、舟状骨及び立方骨で画定される領域に向かって延び、装着されたときに、前記踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部と、を備える足矯正用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足趾の役割を確立した上で、足のアーチを形成し、足のアーチが独立かつ協調的に動くことを目的とする矯正用靴下、及び、足矯正用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
先行研究の通り、健康で正常な足には、内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3種類がある。内側縦アーチは、第1中足骨の骨頭から踵骨にかけて形成される凸状の足内側(つまり母趾側)のアーチをいい、外側縦アーチは、第5中足骨の骨頭から踵骨にかけて形成される凸状の足外側(つまり小趾側)のアーチをいい、横アーチは第1中足骨の骨頭から第5中足骨の骨頭にかけて形成される凸状のアーチをいう。これら3種類のアーチがあることにより、足裏の土踏まずは、母趾球、小趾球、踵の3点を結ぶ三角ドームのような形態となる。この三角ドーム形状により、足の指で地面を蹴り前へ前進する駆動性と、体重を分散し衝撃を吸収する緩衝性が獲得できる。
しかし、アーチの再生が不十分であると、下記のように「衝撃の吸収」、「バランスの保持」、「推進力の獲得」という足の役割を担うことができなくなる。
【0003】
(1)衝撃吸収の低下について
歩行時の接地は踵の踵骨から接地する。
踵から接地することで、踵の軟部組織で衝撃が吸収され、さらに背屈筋の遠心性収縮によって吸収される。しかし、内側縦アーチや外側縦アーチ等の形成が不十分であると、背屈筋の遠心性収縮が起きず、その結果衝撃を十分に吸収することができなくなる。
(2)バランスの保持の低下ついて
また、先行研究によると、横アーチによって足底による免震機能の強化、バランス機能が向上すると報告されている。横アーチの高さは、外反母趾や内反小趾など、足の変形にも深く関わりがある。そのため、横アーチの形成が不十分であると、バランスの保持が低下してしまう。
(3)推進力の獲得の低下について
母趾の役割は、多くの先行研究でも推進力の獲得であると言われている。母趾は全足趾の中で最も表面積が大きく、出力ならびに入力するのに効率がいい。さらに、健常な人の歩行では、もっとも遅く離地するのが母趾である。
表面積が大きく、最後まで地面に接地している母趾で推進力を獲得する事は理にかなっている。そして、三角ドーム形状があることで、より効率的に母趾による推進力を確保することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再表第2020/021622号公報
【文献】特開2016-107041号公報
【文献】特開2017-023706号公報
【文献】登録実用新案第3167322号公報
【文献】特開2008-161344号公報
【文献】特開2003-299685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの課題を解決するために、テーピングを使うことが考えられるが、装着の煩わしさや違和感、外観等の問題から実用的とは言えない。
一方で従来より、特殊な機能が付与されたサポータや様々な靴下が提案されている。
そこで、本発明の目的は、足趾の役割を確立した上で、足のアーチを形成し、アーチが独立かつ協調的に動くことができる矯正用靴下、及び、足矯正用サポータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、本発明の第1の矯正用靴下の特徴は、第2趾、第3趾、及び、第4趾を嵌入するための袋部を備える矯正用靴下であって、弾性を有するとともに、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記袋部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部を備え、前記第1引張部は、装着されたときに、第2中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されるとともに、第4中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されている点にある。
【0007】
当該構成によれば、第1引張部により第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節が上方に牽引され、両側の母趾及び小趾に対して第2趾、第3趾、及び、第4趾が持ち上げられる状態になる。これにより、横アーチを再生させることができ、足裏のバランス機能を向上させることができる。
また、当該構成によれば、第2及び第4中足骨基節骨間関節が第3中足骨基節骨間関節向きにも牽引されるため、より効果的に横アーチを再生させることができる。
【0008】
第1の矯正用靴下の一つの態様として、踵骨を覆う踵骨部と、弾性を有するとともに、左右両側から、足背上の、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、舟状骨及び立方骨で画定される領域に向かって延び、装着されたときに、前記踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部と、を備えてもよい。
【0009】
当該構成によれば、第1引張部により袋部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張るとともに、第2引張部により踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張ることで、当該靴下を装着した足に対し、足長を短縮させる方向の力が働く。これにより、足裏の外側縦アーチと内側縦アーチを再生させることができ、足裏全体の機能を向上させることができる。
【0010】
本発明の第2の矯正用靴下の特徴は、第2趾、第3趾、及び、第4趾を嵌入するための袋部を備える矯正用靴下であって、弾性を有するとともに、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記袋部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部と、踵骨を覆う踵骨部と、弾性を有するとともに、装着されたときに、前記踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部と、を備える点にある。
【0011】
当該構成によれば、第1引張部により第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節が上方に牽引され、両側の母趾及び小趾に対して第2趾、第3趾、及び、第4趾が持ち上げられる状態になる。これにより、横アーチを再生させることができ、足裏のバランス機能を向上させることができる。
また、第1引張部により袋部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張るとともに、第2引張部により踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張ることで、当該靴下を装着した足に対し、足長を短縮させる方向の力が働く。これにより、足裏の外側縦アーチと内側縦アーチを再生させることができ、足裏全体の機能を向上させることができる。
【0012】
第1及び第2の矯正用靴下の一つの態様として、前記第1引張部の足先とは反対側の部分と前記第2引張部の足背側の部分とが、足背上の、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、舟状骨及び立方骨で画定される領域内で連結していてもよい。
【0013】
当該構成によれば、第1引張部の足先とは反対側の部分と第2引張部の足背側の部分とが連結することで、より効率的に第1引張部及び第2引張部による引張強さを高めることができる。これにより、足長を短縮させる方向の力を高めることができ、足裏の外側縦アーチと内側縦アーチをより効果的に再生させることができる。
また、第1引張部と前記第2引張部との連結部位が、かかる領域内にあることにより、第1引張部及び第2引張部による引張強さ及び引張方向がより効果的なものになり、これにより、足裏の外側縦アーチと内側縦アーチをより効果的に再生させることができる。
【0014】
本発明の第1の足矯正用サポータの特徴は、足に装着される足矯正用サポータであって、弾性を有し、第2趾、第3趾、及び、第4趾に対して装着する第1装着部と、前記第1装着部に対して連結され、且つ、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記第1装着部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部と、を備え、前記第1引張部は、装着されたときに、第2中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されるとともに、
第4中足骨基節骨間関節を上方且つ第3中足骨基節骨間関節向きに牽引するように構成されている点にある。
【0015】
当該構成によれば、第1の矯正用靴下と同様の作用効果を得ることができる。
【0016】
本発明の第2の足矯正用サポータの特徴は、足に装着される足矯正用サポータであって、弾性を有し、第2趾、第3趾、及び、第4趾に対して装着する第1装着部と前記第1装着部に対して連結され、且つ、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節を上方に牽引するように、前記第1装着部を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る第1引張部と、踵骨を覆う踵骨部と、弾性を有するとともに、左右両側から、足背上の、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、舟状骨及び立方骨で画定される領域に向かって延び、装着されたときに、前記踵骨部を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部と、を備える点にある。
【0017】
当該構成によれば、第2の矯正用靴下と同様の作用効果を得ることができる。
また、本発明の第1又は第2の矯正用靴下の一態様として記載した構成は、本発明の第1又は第2の足矯正用サポータにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る矯正用靴下を装着した状態を足背側から見たときの説明斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る矯正用靴下により、横アーチが再生される状態を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る矯正用靴下を装着した状態を足内側から見たときの説明斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る矯正用靴下により、横アーチが再生される状態を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態に係る矯正用靴下により、横アーチが再生される状態を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態に係る足矯正用サポータを装着した状態を足背側から見たときの説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、本実施形態に係る矯正用靴下1は3本趾靴下であり、第2趾11、第3趾12、及び、第4趾13を嵌入するための中間袋部2と、中間袋部2の左右両側に、母趾10を嵌入するための母趾袋部3と小趾14を嵌入するための小趾袋部4とを備えている。
【0020】
また、矯正用靴下1は、弾性を有するとともに、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節15,16,17を上方に牽引するように、中間袋部2を、足先とは反対側で、且つ、足背(足の甲)に沿う方向に向けて引張る第1引張部5を備えている。
具体的には、本実施形態では、第1引張部5は、その足先側の部位6が、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節15,16,17上に沿うように設けられ、そこから内側楔状骨18、中間楔状骨19、外側楔状骨20、舟状骨21及び立方骨22に向かって延びる帯状の形状で形成している。そして、第1引張部5は、繊維の編み方や素材等によって弾性を持たせており、装着されたときに伸長して、中間袋部2に対して、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う張力が発生する(つまり、中間袋部2を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張る)ように構成している(
図1中の白色の矢印は、引っ張る力の働く方向を示している)。そして、これにより、第2中足骨基節骨間関節15、第3中足骨基節骨間関節16、及び第4中足骨基節骨間関節17が内側楔状骨18、中間楔状骨19、外側楔状骨20、舟状骨21及び立方骨22に向けて引張られ、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節15,16,17が上方に牽引されるようになっている。
そして、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節15,16,17が上方に牽引されることで、母趾10、小趾14に対して、第2趾11、第3趾12、第4趾13が持ち上げられた状態になる。これにより、
図3に示すように、横アーチ24を再生させることができ、足裏のバランス機能を向上させることができる。
【0021】
また、第1引張部5は、装着されたときに、第2中足骨基節骨間関節15を上方且つ第3中足骨基節骨間関節16向きに牽引するように構成されるとともに、第4中足骨基節骨間関節17を上方且つ第3中足骨基節骨間関節16向きに牽引するように構成されている。
具体的には、本実施形態では、第1引張部5は、足先側の部位6から、足先とは反対側の部位である連結部7にかけて幅狭になるように形成されており、これにより、第2及び第4中足骨基節骨間関節15、17に対し、それぞれ第3中足骨基節骨間関節16向きの方向の力が加わるようになっている。その結果、第1引張部5は、装着されたときに、第2中足骨基節骨間関節15を上方且つ第3中足骨基節骨間関節16向きに牽引するとともに、第4中足骨基節骨間関節17を上方且つ第3中足骨基節骨間関節16向きに牽引するようになっている。
このように、第2及び第4中足骨基節骨間関節15、17がそれぞれ第3中足骨基節骨間関節16向き(すなわち横アーチ24の頂点向き)にも牽引されるため、より効果的に横アーチ24を再生させることができる。
【0022】
なお、第1引張部5は、他の部分も弾性を有している場合には、他の部分よりも伸長したときの張力が強くなるように形成されていると好ましい。また、第1引張部5に弾性を持たせる方法は、繊維の編み方や素材等に限られず、靴下に対して高弾性素材を貼り合わせることで弾性を持たせるなど、公知の方法を採用すればいい。後に述べる第2引張部8も同様である。
【0023】
また、
図1,4に示すように、矯正用靴下1は、踵骨23を覆う踵骨部9と、弾性を有し、且つ、装着されたときに、踵骨部9を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部8と、を備えている。
具体的には、本実施形態では、第2引張部8は、踵骨部9の左右両側から、足背方向(より具体的には内側楔状骨18、中間楔状骨19、外側楔状骨20、舟状骨21及び立方骨22に向かう方向)に向けて延びる帯状の形状で形成している。そして、第2引張部8は、繊維の編み方や素材等によって弾性を持たせており、装着されたときに伸長して、踵骨部9に対して、左右両側から足背方向に引張る張力が発生する(つまり、踵骨部9を左右両側から足背方向に向けて引張る)ように構成している(
図1中の白色の矢印は、引っ張る力の働く方向を示している)。
この構成により、第1引張部5により中間袋部2を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張るとともに、第2引張部8により踵骨部9を左右両側から足背方向に向けて引張ることで、当該靴下1を装着した足に対し、足長を短縮させる方向の力が働く。これにより、
図5,6に示すように、足裏の縦アーチ(外側縦アーチと内側縦アーチ)25を再生させることができ、足裏全体の機能を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態では、第1引張部5の足先とは反対側の部分と前記第2引張部8の足背側の部分とが連結部7において連結している。これにより、より効率的に第1引張部5及び第2引張部8による引張強さを高めることができる。これにより、足長を短縮させる方向の力を高めることができ、足裏の縦アーチ25をより効果的に再生させることができる。
【0025】
さらに、第1引張部5と第2引張部8との連結部7は、足背上の、内側楔状骨18、中間楔状骨19、外側楔状骨20、舟状骨21及び立方骨22で画定される領域内にある上になるようにしている。当該領域内で連結させることで、第1引張部5及び第2引張部8による引張強さ及び引張方向がより効果的なものになり、これにより、足裏の縦アーチ25をより効果的に再生させることができる。また、内側楔状骨18、中間楔状骨19、外側楔状骨20、舟状骨21及び立方骨22はショパール関節を構成する骨の一部であり、ショパール関節は若干の回内、回外、内返し、外返しの作用があるが、当該位置に、弾性を有する第1引張部5と第2引張部8との連結部7をもってくることで、これらの作用を補強することもできる。
【0026】
また、本実施形態では、踵骨部9を、第2引張部8と同じ素材及び同じ編み方で一体に形成し、第2引張部8と同等の弾性を持たせている。これにより、踵骨部9自体にも足の形状に沿って足背に向かう張力が発生し、第2引張部8と踵骨部9とで相まって、人の踵骨23部分をより効果的に足背方向に向けて引張ることが可能になっている。
【0027】
このように、本実施形態の矯正用靴下1によれば、横アーチ24、縦アーチ(外側縦アーチ、内側縦アーチ)25を効果的に再生することができる。
【0028】
また、本実施形態の矯正用靴下1によれば、人の足の特性による縦アーチ25の高さの違いに関わらず、足の剛性を高めることが可能になっている。そして、矯正用靴下1を使用し続けることで、人の足の特性に関わらず、縦アーチ25の高さを中間位に矯正することもできる。
つまり、足の形状は人によって異なり、
図6のような、甲高(足の甲が高い)の人であれば、再生される縦アーチ25はより高位なものになるが、
図5のような甲低(足の甲が低い)の人は、甲高の人よりも再生される縦アーチ25はより低位なものになる。
足の剛性は骨と筋肉によりもたらされるものであるところ、橋などの建造物と同様に、縦アーチ25が高位であるほど、骨による剛性が高まることになる。そして、甲高の人は、矯正用靴下1の第1引張部5及び第2引張部8によって足長が短縮し、これにより再生される縦アーチ25が高位であるため、骨による剛性が効率的に高まり、その結果、足の剛性が高まる。
また、縦アーチ25の高さは足底筋が強すぎることも一因であるところ、骨による剛性が高まることによって筋肉の負担が減るため、矯正用靴下1を使用し続けることで、次第に、足底筋を適度な強さまで弱めることができる。これにより、縦アーチ25の高さも次第に下がっていき、縦アーチ25の高さを中間位に矯正することもできる。
一方、縦アーチ25が低位な甲低の人の場合、縦アーチ25が高位な人に比べ、縦アーチ25が低位であるが、その分、足長が短縮しがたく、これにより、第1引張部5及び第2引張部8による引張力が強く働いた状態になる(つまり、足長が短縮すると、その分第1引張部5及び第2引張部8も縮むため張力が弱まるが、足長がそこまで短縮しない場合、張力が強く保たれることになる)。その結果、
図5のように、足趾の背屈が生じ、これによる足底筋のエキセントリックな筋緊張によって、筋肉による剛性を高めることができる。これにより、縦アーチ25が低位な甲低の人でも、本実施形態の矯正用靴下1により、足の剛性を高めることができる。
また、足底筋の緊張がもたらされることにより、矯正用靴下1を使用し続けることで、次第に、足底筋を適度な強さまで高めることができる。これにより、縦アーチ25の高さが次第に上がっていき、縦アーチ25の高さを中間位に矯正することができる。
【0029】
また、第1引張部5及び第2引張部8を配置する領域としては、縦アーチ25と骨の形状を最も効率よく強化できるように、第1引張部5については、第2中足骨基節骨間関節15、第3中足骨基節骨間関節16、第4中足骨基節骨間関節17から、内側楔状骨18、中間楔状骨19、外側楔状骨20、舟状骨21及び立方骨22上まで亘らせて配置し、第2引張部8については、踵骨体23から内側楔状骨18、中間楔状骨19、外側楔状骨20、舟状骨21及び立方骨22上まで亘らせて配置するのが好ましい。
【0030】
なお、上述の実施形態は本発明の一態様であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、矯正用靴下1において、母趾袋部3と小趾袋部4を設けず、中央袋部2のみの構成としてもいいし、中央袋部3は第2~4趾11~13のそれぞれの指を入れるための3つの袋で構成してもいい。また、第1引張部5と第2引張部8は連結されていなくてもいいし、両者を連結させる場合でも、連結部7の位置は上記したものに限られず、適宜変更可能である。また、第1引張部5や第2引張部8の構成や、これらを設ける領域や位置も、上記したものに限られず、適宜変更可能である。また、第2引張部8を設けず、第1引張部5のみを設けた構成としてもよい。
【0031】
(第2実施形態)
図7は、本実施形態に係る足矯正用サポータ100を示し、足矯正用サポータ100は、足に装着されるものであり、弾性を有している。また、足矯正用サポータ100は、第1装着部101と、第2装着部102と、第1引張部103、第2引張部104とを備える。
第1装着部101は、第2趾11、第3趾12、及び、第4趾13に対して装着するものであり、輪状に形成されて、その中に第2趾2、第3趾3、及び、第4趾4を挿通するようになっている。第2装着部102は、踵骨23に対して装着するものであり、踵骨23を覆うように形成されている。第1引張部103は、第1装着部101に対して連結され、且つ、装着されたときに、第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節15,16,17を上方に牽引するように、第1装着部103を、足先とは反対側で、且つ、足背に沿う方向に向けて引張るように構成されている。第2引張部104は、第2装着部102に対して連結され、且つ、装着されたときに、第2装着部102を左右両側から足背方向に向けて引張る第2引張部102と、を備える。
この構成によれば、第1引張部103により第2、第3及び第4中足骨基節骨間関節15,16,17が上方に牽引され、両側の母趾10及び小趾14より第2趾11、第3趾12、及び、第4趾13が持ち上げられることになる。これにより、横アーチを再生させることができ、足裏のバランス機能を向上させることができる。また、第1引張部103により第1装着部101を足背に沿う方向に向けて引張るとともに、第2引張部104により第2装着部102を左右両側から足背方向に向けて引張ることで、当該サポータ100を装着した足に対し、足長を短縮させる方向の力が働く。これにより、足裏の外側縦アーチと内側縦アーチを再生させることができ、足裏全体の機能を向上させることができる。
なお、第2装着部102、第1引張部103及び第2引張部104の構成は、それぞれ第1実施形態の踵骨部9、第1引張部5及び第2引張部8の構成と同じであり、第1実施形態でのこれらの説明がそのまま適用される。
【0032】
また、上述の実施形態は本発明の一態様であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、第1装着部101の構成は第2趾2、第3趾3、及び、第4趾4に対して装着できるものであれば、適宜変更可能である。また、第2装着部102も、踵骨23に対して装着できるものであれば、適宜変更可能である。第1引張部103や第2引張部104も、その構成は、上記したものに限られず、適宜変更可能であるし、第2装着部102や第2引張部104を設けず、第1装着部101と第1引張部103のみとし、第1引張部103の他端を足首等の任意箇所に装着する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 矯正用靴下
2 中央袋部
3 母趾袋部
4 小趾袋部
5 第1引張部
6 第1引張部の足先側の部位
7 連結部
8 第2引張部
9 踵骨部
10 母趾
11 第2趾
12 第3趾
13 第4趾
14 小趾
15 第2中足骨基節骨間関節
16 第3中足骨基節骨間関節
17 第4中足骨基節骨間関節
18 内側楔状骨
19 中間楔状骨
20 外側楔状骨
21 舟状骨
22 立方骨
23 踵骨
24 横アーチ
25 縦アーチ(内側縦アーチ、外側縦アーチ)
100 足矯正用サポータ
101 第1装着部
102 第2装着部
103 第1引張部
104 第2引張部