(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】サプリメント評価装置およびサプリメント評価方法
(51)【国際特許分類】
G16B 20/20 20190101AFI20231206BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231206BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20231206BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALN20231206BHJP
【FI】
G16B20/20
C12M1/34 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6827
(21)【出願番号】P 2022071162
(22)【出願日】2022-04-06
【審査請求日】2023-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517203073
【氏名又は名称】株式会社プラチナファーマ
(72)【発明者】
【氏名】楊 振楠
(72)【発明者】
【氏名】五條 祐基
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】特許第5905121(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/130103(WO,A1)
【文献】特開2003-223515(JP,A)
【文献】特開2021-040626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0133303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0315512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16B 5/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
G16Q 10/00 - 99/00
C12Q 1/6869
C12M 1/34
C12Q 1/6827
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分を特定する成分特定部と、
前記顧客の生体組織に含まれる、少なくとも前記活性成分の標的となる活性成分受容体について検出した検出塩基配列情報を取得する塩基配列情報取得部と、
前記検出塩基配列情報と前記活性成分受容体に対応する少なくとも1種類の一塩基多型の塩基配列情報とに基づいて、前記生体組織における前記少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否を判定する一塩基多型判定部と、
前記生体組織における前記少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否に基づいて、少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの前記顧客への適合性を示す個別評価値を特定してから、少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの前記個別評価値
から前記サプリメントに対する総合評価値
を算出する評価値算出部と、
前記サプリメント中の前記活性成分の含有量に応じて前記個別評価値を補正するために前記個別評価値に積算される補正係数を示す補正係数情報を、前記サプリメントの単位量当たりの活性成分の含有量の範囲に対応づけて記憶する補正係数記憶部と、
前記補正係数記憶部が記憶する、前記サプリメントに含まれる前記活性成分それぞれの含有量に対応する前記補正係数情報を特定し、前記サプリメントに含まれる少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの個別評価値に、特定した前記補正係数情報が示す補正係数を乗じることにより個別評価値を補正する評価値補正部と、を備
え、
前記評価値算出部は、補正後の前記活性成分それぞれについての前記個別評価値の和を前記サプリメントに対する総合評価値として算出する、
サプリメント評価装置。
【請求項2】
前記個別評価値は、前記生体組織において、前記少なくとも1種類の一塩基多型が存在しない場合、前記少なくとも1種類の一塩基多型が存在する場合に比べて高い、
請求項1に記載のサプリメント評価装置。
【請求項3】
前記個別評価値は、前記生体組織において、前記少なくとも1種類の一塩基多型が存在する場合、前記少なくとも1種類の一塩基多型の前記顧客の生体組織における含有率が高いほど低くなるように設定されている、
請求項1または2に記載のサプリメント評価装置。
【請求項4】
サプリメント評価装置が、顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分を特定するステップと、
前記サプリメント評価装置が、前記顧客の生体組織に含まれる、少なくとも前記活性成分の標的となる活性成分受容体について検出した検出塩基配列情報を取得するステップと、
前記サプリメント評価装置が、前記検出塩基配列情報と前記活性成分受容体に対応する少なくとも1種類の一塩基多型の塩基配列情報とに基づいて、前記生体組織における前記少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否を判定するステップと、
前記サプリメント評価装置が、前記生体組織における前記少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否に基づいて、少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの前記顧客への適合性を示す個別評価値を特定してから、少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの前記個別評価値
から前記サプリメントに対する総合評価値
を算出するステップと、
前記サプリメント評価装置が、前記サプリメント中の前記活性成分の含有量に応じて前記個別評価値を補正するために前記個別評価値に積算される補正係数を示す補正係数情報を、前記サプリメントの単位量当たりの活性成分の含有量の範囲に対応づけて記憶する補正係数記憶部が記憶する、前記サプリメントに含まれる前記活性成分それぞれの含有量に対応する前記補正係数情報を特定し、前記サプリメントに含まれる少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの個別評価値に、特定した前記補正係数情報が示す補正係数を乗じることにより個別評価値を補正するステップと、を含
み、
前記サプリメント評価装置が、前記サプリメントに対する総合評価値を算出するステップにおいて、補正後の前記活性成分それぞれについての前記個別評価値の和を前記サプリメントに対する総合評価値として算出する、
サプリメント評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サプリメント評価装置およびサプリメント評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品等を提供しようとする個人の遺伝物質中における、提供しようとする化粧品等の活性成分と相互作用する所定のヌクレオチドの位置での一塩基多型(SNP)の存否に基づいて、提供しようとする化粧品等の個人に対する適合性を評価する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、遺伝物質中における化粧品等の活性成分に対応する所定のヌクレオチド位置でのSNPの有無に応じて、成分代謝への影響が大きいほど適合性を示すスコアが高くなるように重み付けを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、化粧品等の個人に対する適合性は、その化粧品等に含まれる活性成分の量によっても個人に対する適合性のスコアが変化しうる。このため、特許文献1に記載された方法のように、単に所定のヌクレオチド位置でのSNPの有無だけを考慮する方法では、個人への適合性を精度良く評価できない虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、サプリメントを購入する人に対するサプリメントの適合性を精度良く評価できるサプリメント評価装置およびサプリメント評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るサプリメント評価装置は、
顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分を特定する成分特定部と、
前記顧客の生体組織に含まれる、少なくとも前記活性成分の標的となる活性成分受容体について検出した検出塩基配列情報を取得する塩基配列情報取得部と、
前記検出塩基配列情報と前記活性成分受容体に対応する少なくとも1種類の一塩基多型の塩基配列情報とに基づいて、前記生体組織における前記少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否を判定する一塩基多型判定部と、
前記生体組織における前記少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否に基づいて、少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの前記顧客への適合性を示す個別評価値を特定してから、少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの前記個別評価値から前記サプリメントに対する総合評価値を算出する評価値算出部と、
前記サプリメント中の前記活性成分の含有量に応じて前記個別評価値を補正するために前記個別評価値に積算される補正係数を示す補正係数情報を、前記サプリメントの単位量当たりの活性成分の含有量の範囲に対応づけて記憶する補正係数記憶部と、
前記補正係数記憶部が記憶する、前記サプリメントに含まれる前記活性成分それぞれの含有量に対応する前記補正係数情報を特定し、前記サプリメントに含まれる少なくとも1種類の前記活性成分それぞれの個別評価値に、特定した前記補正係数情報が示す補正係数を乗じることにより個別評価値を補正する評価値補正部と、を備え、
前記評価値算出部は、補正後の前記活性成分それぞれについての前記個別評価値の和を前記サプリメントに対する総合評価値として算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、評価値算出部が、顧客の生体組織における少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否に基づいて、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの顧客への適合性を示す個別評価値を特定してから、少なくとも1種類の活性成分それぞれの個別評価値の和をサプリメントの顧客への適合性を示す総合評価値として算出する。ここで、評価値補正部が、サプリメントにおける少なくとも1種類の活性成分の含有量に基づいて、算出された個別評価値を補正する。これにより、顧客の生体組織における少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否のみならず、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの含有量に基づいて、サプリメントの顧客への適合性を示す総合評価値が決定される。従って、サプリメントを購入する人に対するサプリメントの適合性を精度良く評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るサプリメント評価システムの概略構成図である。
【
図2】実施の形態に係るサプリメント評価システムの機能構成を示す図である。
【
図3】(A)は、実施の形態に係る成分記憶部が記憶する情報の内容を示す図であり、(B)は、実施の形態に係るSNP情報記憶部が記憶する情報の内容を示す図である。
【
図4】(A)は、実施の形態に係る個別評価値記憶部が記憶する情報の内容を示す図であり、(B)は、実施の形態に係る補正係数記憶部が記憶する情報の内容を示す図である。
【
図5】実施の形態に係るサプリメント評価システムの動作を示すシーケンス図である。
【
図6】実施の形態に係るサプリメント評価処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係るサプリメント評価装置について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係るサプリメント評価装置は、顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分を特定する成分特定部と、顧客の生体組織に含まれる、少なくとも活性成分の標的となる活性成分受容体について検出した塩基配列を示す検出塩基配列情報を取得する塩基配列情報取得部と、検出塩基配列情報と活性成分受容体に対応する少なくとも1種類の一塩基多型の塩基配列情報とに基づいて、生体組織における少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否を判定する一塩基多型判定部と、生体組織における少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否に基づいて、少なくとも1種類の活性成分それぞれの顧客への適合性を示す個別評価値を特定してから、少なくとも1種類の活性成分それぞれの個別評価値の和を前記サプリメントに対する総合評価値として算出する評価値算出部と、少なくとも1つのサプリメントにおける少なくとも1種類の活性成分の含有量に基づいて、総合評価値を補正する評価値補正部と、を備える。
【0010】
本実施の形態に係るサプリメント評価システムは、例えば
図1に示すように、サプリメント評価装置1と、検査装置3と、端末装置2と、を備える。サプリメント評価装置1は、検査装置3とともに局所ネットワークNW2に接続されている。局所ネットワークNW2は、ブロードバンドルータ(以下、「BBR」と称する。)8を介して広域ネットワークNW1に接続されている。端末装置2は、広域ネットワークNW1に接続されている。これにより、サプリメント評価装置1と端末装置2とは、局所ネットワークNW2および広域ネットワークNW1を介して互いに通信可能となっている。局所ネットワークNW2は、例えば無線LAN(Local Area Network)であり、広域ネットワークNW1は、例えばインターネットである。
【0011】
端末装置2は、例えば入力部と表示部とを備えるパーソナルコンピュータである。利用者が端末装置2の入力部を介して顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントを示す情報を入力すると、端末装置2は、入力された情報に基づいて、少なくとも1つのサプリメントそれぞれのサプリメント識別情報を含むサプリメント情報を生成する。そして、端末装置2は、生成したサプリメント情報をサプリメント評価装置1へ送信する。また、端末装置2は、サプリメント評価装置1から後述する選出サプリメント情報を取得すると、取得した選出サプリメント情報に基づいて利用者に選出されたサプリメントの内容を通知するための選出サプリメント通知画像を形成し、形成した選出サプリメント通知画像を表示部に表示させる。
【0012】
検査装置3は、PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)法とDNAシーケンシングとを利用して、顧客の生体組織に含まれる、少なくともサプリメントに含まれる活性成分の標的となる活性成分受容体についての複数種類のヌクレオチドの結合順序を示す塩基配列を検出する。この検査装置3は、まず、PCR法により顧客の生体組織に含まれる前述の活性成分受容体の一塩基多型(以下、「SNP」(Single Nucleotide Polymorphism)と称する。)の変異型をDNAポリメラーゼ存在下で増幅させる。次に、検査装置3は、増幅させたSNPと互いに異なる蛍光色素で蛍光標識された4種類のデオキシリボヌクレオチドとを合成することにより得られるDNA断片を電気泳動させることで、生体組織に含まれる活性成分受容体とその活性成分受容体の量とを検出するDNAシーケンシングを実行する。続いて、検査装置3は、検出結果に基づいて、顧客の生体組織に含まれる活性成分受容体の塩基配列を示す塩基配列情報を生成する。そして、検査装置3は、生成した塩基配列情報と、対応する顧客を識別する顧客識別情報と、をサプリメント評価装置1へ送信する。
【0013】
サプリメント評価装置1は、サーバ用コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)と、主記憶部と、補助記憶部と、通信部と、これらを相互に接続するバスと、を備える。CPUは、例えばマルチコアプロセッサである。主記憶部は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを有し、CPUの作業領域として使用される。補助記憶部は、大容量の不揮発性メモリから構成され、サプリメント評価装置1の各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。通信部は、広域ネットワークNW1に接続されている。
【0014】
CPUは、補助記憶部が記憶するプログラムを主記憶部に読み出して実行することにより、
図2に示すように、サプリメント情報取得部111、成分特定部112、塩基配列情報取得部113、SNP判定部114、評価値算出部115、評価値補正部116、選出部117およびサプリメント通知部118として機能する。また、補助記憶部は、成分記憶部131と、塩基配列情報記憶部132と、SNP情報記憶部133と、個別評価値記憶部134と、補正係数記憶部135と、を有する。成分記憶部131は、例えば
図3(A)に示すように、複数種類のサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分を示す成分情報と、その活性成分の標的となる活性成分受容体を示す標的情報と、活性成分それぞれの含有量を示す含有量情報と、を、サプリメントを識別するサプリメント識別情報に対応づけて記憶する。
図3(A)に示す例では、サプリメント識別情報MID[0]で識別される「サプリメントA」が、活性成分としてナイアシン、コラーゲンを含んでおり、ナイアシン受容体が「HM74」、含有量が14mgであることを示している。
【0015】
図2に戻って、塩基配列情報記憶部132は、顧客の生体組織に含まれる、少なくともサプリメントに含まれる活性成分の標的となる活性成分受容体について検査装置3で検出された検出塩基配列情報を、顧客を識別する顧客識別情報に対応づけて記憶する。
【0016】
SNP情報記憶部133は、例えば
図3(B)に示すように、SNPの塩基配列情報を、SNPを識別するSNPID情報と、SNPに対応する活性成分受容体を示す標的情報と、に対応づけて記憶する。
図3(B)に示す例では、ナイアシン受容体「HM74」のSNPの塩基配列情報として、例えばSNPID「rs245726c」で識別されるSNPの塩基配列情報を記憶していることを示している。
【0017】
個別評価値記憶部134は、例えば
図4(A)に示すように、顧客への適合性を示す個別評価値を示す個別評価値情報を、対応する活性成分情報と標的情報と活性成分受容体の遺伝子型とSNPIDとの組合せに対応づけて記憶する。個別評価値は、例えば活性成分の代謝への影響が大きい遺伝子型またはSNPIDほど高くなるように設定されている。
【0018】
補正係数記憶部135は、例えば
図4(B)に示すように、サプリメント中の活性成分の含有量に応じて顧客への適合性を示す個別評価値を補正するために個別評価値に積算される補正係数を示す補正係数情報を、サプリメントの単位量当たりの活性成分の含有量の範囲に対応づけて記憶する。ここで、単位量は、例えば顧客が1日当たりに摂取するサプリメントの量に設定される。
図4(B)に示す例では、サプリメント単位量当たりのナイアシンの含有量が13mg以上17mg未満であれば補正係数が1、即ち、補正を行わない設定とされており、含有量が17mg以上になると、顧客への適合性が低下することを反映して補正係数が0.1に設定されている。
【0019】
図2に戻って、サプリメント情報取得部111は、端末装置2から送信される、顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントを識別するサプリメント識別情報を含むサプリメント情報を取得すると、取得したサプリメント情報に含まれるサプリメント識別情報を抽出する。そして、サプリメント情報取得部111は、抽出したサプリメント識別情報を成分特定部112に通知する。
【0020】
成分特定部112は、サプリメント情報に含まれる顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分を特定する。成分特定部112は、成分記憶部131が記憶する標的情報の中から、サプリメント情報取得部111から通知されるサプリメント識別情報で識別されるサプリメントの成分情報を特定し、特定した成分情報に対応する標的情報を特定する。そして、成分特定部112は、特定した標的情報をSNP判定部114に通知する。
【0021】
塩基配列情報取得部113は、検査装置3から送信される検出塩基配列情報および対応する顧客識別情報を取得すると、取得した検出塩基配列情報および顧客識別情報を互いに対応づけて塩基配列情報記憶部132に記憶させる。
【0022】
SNP判定部114は、成分特定部112から標的情報が通知されると、SNP情報記憶部133が記憶する塩基配列情報の中から、通知された標的情報に対応する塩基配列情報を特定する。ここで、SNP判定部114は、通知された標的情報が示す活性成分受容体に対応する少なくとも1種類の一塩基多型の塩基配列情報を特定する。次に、SNP判定部114は、塩基配列情報記憶部132が記憶する検出塩基配列情報と特定した塩基配列情報とに基づいて、顧客の生体組織における特定した塩基配列情報に対応する少なくとも1種類のSNPそれぞれの存否を判定する。そして、SNP判定部114は、判定結果を示すSNP存否情報を評価値算出部115に通知する。
【0023】
評価値算出部115は、個別評価値記憶部134が記憶する個別評価値情報を参照して、SNP存否情報が示す顧客の生体組織における少なくとも1種類のSNPそれぞれの存否に基づいて、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの顧客への適合性を示す個別評価値を特定する。そして、評価値算出部115は、評価値補正部116による補正後の活性成分それぞれについての個別評価値の和をサプリメントに対する総合評価値として算出する。評価値算出部115は、算出した総合評価値を示す情報を選出部117に通知する。
【0024】
評価値補正部116は、成分記憶部131が記憶する含有量情報を参照して、評価対象であるサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれに対応する補正係数を特定する。そして、評価値補正部116は、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの個別評価値に特定した補正係数を乗じることにより個別評価値を補正し、補正後の個別評価値を示す情報を評価値算出部115に通知する。
【0025】
選出部117は、評価値算出部115から複数のサプリメントそれぞれの総合評価値を示す情報が通知されると、複数のサプリメントの中から総合評価値が最も高いサプリメントを選出する。サプリメント通知部118は、選出されたサプリメントの情報を含む選出サプリメント情報を生成して端末装置2へ送信する。
【0026】
次に、本実施の形態に係るサプリメント評価システムの動作について
図5を参照しながら説明する。まず、利用者が、検査装置3に顧客の生体組織をセットした後、検査装置3に対して顧客の生体組織を分析するための操作を行ったとする。この場合、検査装置3は、PCR法により顧客の生体組織に含まれる前述の活性成分受容体のSNPの変異型をDNAの増幅並びに生体組織に含まれる活性成分受容体とその活性成分受容体の量とを検出するDNAシーケンシングを実行する計測を行う(ステップS1)。次に、検査装置3は、計測終了後、前述の検出塩基配列情報を生成する(ステップS2)。続いて、生成された検出塩基配列情報と顧客識別情報とが、検査装置3からサプリメント評価装置1へ送信される(ステップS3)。一方、サプリメント評価装置1は、検査装置3から送信された検出塩基配列情報を取得すると、取得した検出塩基配列情報と顧客識別情報とを互いに対応づけて塩基配列情報記憶部132に記憶させる(ステップS4)。
【0027】
その後、利用者が、端末装置2の入力部に対して顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントを示す情報を入力する提案サプリメント入力操作を行ったとする。この場合、端末装置2は、入力された情報に基づいて、少なくとも1つのサプリメントそれぞれのサプリメント識別情報を含むサプリメント情報を生成する(ステップS5)。次に、生成されたサプリメント情報が、端末装置2からサプリメント評価装置1へ送信される(ステップS6)。
【0028】
一方、サプリメント評価装置1は、端末装置2から送信されるサプリメント情報を取得すると、取得したサプリメント情報に含まれるサプリメント識別情報に基づいて、顧客に提供しようとする少なくとも1つのサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分を特定する(ステップS7)。続いて、サプリメント評価装置1は、SNP情報記憶部133が記憶する塩基配列情報の中から、通知された標的情報に対応する塩基配列情報を特定する。そして、サプリメント評価装置1は、塩基配列情報記憶部132が記憶する検出塩基配列情報と特定した塩基配列情報とに基づいて、顧客の生体組織における特定した塩基配列情報に対応する少なくとも1種類のSNPそれぞれの存否を判定する(ステップS8)。
【0029】
その後、サプリメント評価装置1は、個別評価値記憶部134が記憶する個別評価値情報を参照して、SNP存否情報が示す顧客の生体組織における少なくとも1種類のSNPそれぞれの存否に基づいて、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの顧客への適合性を示す個別評価値を特定する(ステップS9)。次に、サプリメント評価装置1は、成分記憶部131が記憶する含有量情報を参照して、評価対象であるサプリメントに含まれる活性成分それぞれに対応する補正係数を特定し、サプリメントに含まれる活性成分それぞれの個別評価値に特定した補正係数を乗じることにより個別評価値を補正する(ステップS10)。続いて、サプリメント評価装置1は、補正後の活性成分それぞれについての個別評価値の和をサプリメントに対する総合評価値として算出する(ステップS11)。
【0030】
その後、サプリメント評価装置1は、総合評価値を算出した少なくとも1つのサプリメントの中から最も総合評価値高いサプリメントを選出する(ステップS12)。次に、サプリメント評価装置1が、選出されたサプリメントの情報を含む選出サプリメント情報を生成し(ステップS13)、生成された選出サプリメント情報が、サプリメント評価装置1から端末装置2へ送信される(ステップS14)。一方、端末装置2は、サプリメント評価装置1から選出サプリメント情報を取得すると、取得した選出サプリメント情報に基づいて、選出サプリメント通知画像を形成して表示部に表示させる(ステップS15)。
【0031】
次に、本実施の形態に係るサプリメント評価装置1が実行するサプリメント評価処理について
図6を参照しながら説明する。このサプリメント評価処理は、利用者がサプリメント評価装置1へ電源を投入した後、サプリメント評価処理を実行するためのプログラムが起動したことを契機として開始される。まず、塩基配列情報取得部113は、検査装置3から送信される検出塩基配列情報および対応する顧客識別情報を取得したか否かを判定する(ステップS101)。ここで、塩基配列情報取得部113は、検出塩基配列情報および対応する顧客識別情報を取得していないと判定すると(ステップS101:No)、後述するステップS103の処理が実行される。一方、塩基配列情報取得部113は、検出塩基配列情報および対応する顧客識別情報を取得したと判定すると(ステップS101:Yes)、取得した検出塩基配列情報および顧客識別情報を互いに対応づけて塩基配列情報記憶部132に記憶させる(ステップS102)。
【0032】
次に、サプリメント情報取得部111は、端末装置2から送信される前述のサプリメント情報を取得したか否かを判定する(ステップS103)。サプリメント情報取得部111が、サプリメント情報を取得していないと判定すると(ステップS103:No)、再びステップS101の処理が実行される。一方、サプリメント情報取得部111は、サプリメント情報を取得したと判定すると(ステップS103:Yes)、サプリメント情報に含まれるサプリメント識別情報を抽出する。そして、成分特定部112は、成分記憶部131が記憶する標的情報の中から、サプリメント情報取得部111から通知されるサプリメント識別情報で識別されるサプリメントの活性成分を特定する(ステップS104)。
【0033】
続いて、SNP判定部114は、塩基配列情報記憶部132が記憶する検出塩基配列情報の中に、サプリメント情報に含まれる顧客識別情報に対応づけられた検出塩基配列情報が存在するか否か判定する(ステップS105)。ここで、SNP判定部114は、塩基配列情報記憶部132が記憶する検出塩基配列情報の中に、サプリメント情報に含まれる顧客識別情報に対応づけられた検出塩基配列情報が存在しないと判定すると(ステップS105:No)、再びステップS101の処理が実行される。一方、SNP判定部114は、塩基配列情報記憶部132が記憶する検出塩基配列情報の中に、サプリメント情報に含まれる顧客識別情報に対応づけられた検出塩基配列情報が存在すると判定すると(ステップS105:Yes)、特定したサプリメントの活性成分に対応する標的情報を特定する。そして、SNP判定部114は、SNP情報記憶部133が記憶する塩基配列情報の中から、成分特定部112により特定された活性成分の標的情報に対応する塩基配列情報を特定し、塩基配列情報記憶部132が記憶する検出塩基配列情報と特定した塩基配列情報とに基づいて、顧客の生体組織における特定した塩基配列情報に対応する少なくとも1種類のSNPそれぞれの存否を判定する(ステップS106)。
【0034】
その後、評価値算出部115は、個別評価値記憶部134が記憶する個別評価値情報を参照して、SNP存否情報が示す顧客の生体組織における少なくとも1種類のSNPそれぞれの存否に基づいて、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの顧客への適合性を示す個別評価値を特定する(ステップS107)。次に、評価値補正部116は、成分記憶部131が記憶する含有量情報を参照して、評価対象であるサプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれに対応する補正係数を特定する。そして、評価値補正部116は、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの個別評価値に特定した補正係数を乗じることにより個別評価値を補正する(ステップS108)。
【0035】
続いて、評価値算出部115は、評価値補正部116による補正後の活性成分それぞれについての個別評価値の和に相当するサプリメントに対する総合評価値を算出する(ステップS109)。その後、選出部117は、評価値算出部115から複数のサプリメントそれぞれの総合評価値を示す情報が通知されると、複数のサプリメントの中から総合評価値が最も高いサプリメントを選出する(ステップS110)。次に、サプリメント通知部118は、選出されたサプリメントの情報を含む選出サプリメント情報を生成して端末装置2へ送信する(ステップS111)。続いて、再びステップS101の処理が実行される。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態に係るサプリメント評価装置1によれば、評価値算出部115が、顧客の生体組織における少なくとも1種類のSNPそれぞれの存否に基づいて、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの顧客への適合性を示す個別評価値を特定する。次に、評価値算出部115は、少なくとも1種類の活性成分それぞれの個別評価値の和をサプリメントの顧客への適合性を示す総合評価値として算出する。ここで、評価値補正部116が、サプリメントにおける少なくとも1種類の活性成分の含有量に基づいて、算出された総合評価値を補正する。これにより、顧客の生体組織における少なくとも1種類の一塩基多型それぞれの存否のみならず、サプリメントに含まれる少なくとも1種類の活性成分それぞれの含有量に基づいて、サプリメントの顧客への適合性を示す総合評価値が決定される。従って、サプリメントを購入する人に対するサプリメントの適合性を精度良く評価できる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の各実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、活性成分受容体のSNPが存在する場合の個別評価値について、顧客の生体組織に含まれるSNPの含有率について複数の含有率範囲を設定し、各含有率範囲について異なる個別評価値を設定してもよい。この場合、例えばSNPの含有率が高い範囲ほど個別評価値が低くなるように設定することができる。
【0038】
実施の形態において、個別評価値について、標的情報が示す活性成分受容体が、活性成分の直接的標的の場合の個別評価値が間接的標的の場合の個別評価値に比べて高くなるように設定してもよい。
【0039】
実施の形では、選出部117が複数のサプリメントの中から総合評価値が最も高いサプリメントを選出し、サプリメント通知部118が、選出されたサプリメントの情報を含む選出サプリメント情報を生成して端末装置2へ送信する例について説明した。但し、これに限らず、例えば、総合評価値に基づいて、SNPに起因した特定の栄養素の血中濃度の低下の可能性があること、或いは、BMIが高い傾向、海馬が小さく記憶力が低い可能性がある等の顧客の生体組織の分析結果に対する評価を顧客に提供するためのコメント情報を生成して端末装置2へ送信するコメント通知部(図示せず)を更に備えるものであってもよい。
【0040】
実施の形態では、顧客の生体組織に含まれる、サプリメントに含まれる活性成分の標的となる活性成分受容体について塩基配列を検出する検査装置として、PCR法とDNAシーケンシングとを利用するものを使用する例について説明した。但し、検査装置としては、これに限定されるものではなく、検査装置3が、DNAマイクロアレイを利用して、顧客の生体組織に含まれる、少なくともサプリメントに含まれる活性成分の標的となる活性成分受容体についての複数種類のヌクレオチドの結合順序を示す塩基配列を検出するものであってもよい。ここで、DNAマイクロアレイは、ガラス基板またはSi基板上に、前述の活性成分受容体の野生型と完全マッチ二重鎖を形成できる、即ち、野生型に対して完全に相補的な塩基配列を持つ一本鎖のプローブと、活性成分受容体のSNPの変異型に相補的な塩基配列を持つプローブと、が、アレイ状に固定されたものである。検査装置3は、蛍光式測定法、電気化学的測定法により、顧客の生体組織を含む溶液に浸漬させた後のDNAマイクロアレイについて、生体組織に含まれる活性成分受容体と完全マッチ二重鎖を形成するプローブの場所と、その場所における完全マッチ二重鎖の形成量と、を検出する。或いは、検査装置3が、インベーダ法、一本鎖構造多型解析手法、対立遺伝子に特異的なプライマPCR分析法、対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析法等を利用する装置を採用してもよい。
【0041】
また、本発明に係るサプリメント評価装置1の各種機能は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、ネットワークに接続されているコンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、コンピュータシステムが読み取り可能な非一時的な記録媒体(CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等)に格納して配布し、当該プログラムをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行するサプリメント評価装置1を構成してもよい。
【0042】
また、コンピュータにプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムは、通信回線の掲示版(BBS(Bulletin Board System))にアップロードされ、通信回線を介してコンピュータに配信されてもよい。そして、コンピュータは、このプログラムを起動して、OS(Operating System)の制御の下、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、コンピュータは、上述の処理を実行するサプリメント評価装置1として機能する。
【0043】
以上、本発明の各実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、顧客に適したサプリメントを提案するためのサプリメント評価装置として好適である。
【符号の説明】
【0045】
1:サプリメント評価装置、2:端末装置、3:検査装置、8:BBR、111:サプリメント情報取得部、112:成分特定部、113:塩基配列情報取得部、114:SNP判定部、115:評価値算出部、116:評価値補正部、117:選出部、118:サプリメント通知部、131:成分記憶部、132:塩基配列情報記憶部、133:SNP情報記憶部、134:個別評価値記憶部、135:補正係数記憶部、NW1:広域ネットワーク、NW2:局所ネットワーク