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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】視野妨害監視機能付き検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/20 20060101AFI20231206BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20231206BHJP
   G08B 13/183 20060101ALI20231206BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01V8/20 N
H01H35/00 V
G08B13/183
G01J1/02 W
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019193984
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021067582
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 厳宗
(72)【発明者】
【氏名】細見 直仁
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-069467(JP,A)
【文献】特開平07-174622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0198010(US,A1)
【文献】特開2001-228020(JP,A)
【文献】特開2005-321917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-15/00;99/00
H01H 35/00
G08B 13/183
G01J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーと、
投光素子と、
受光素子と、
導光部と、
を備えた視野妨害監視機能付き検知装置であって、
前記投光素子と前記受光素子の間に近傍遮光構造を備え、
前記近傍遮光構造及び前記導光部は空間S1と空間S2を隔てるように配置されるとともに前記空間S1側から前記空間S2側を見て少なくとも一部が重なるように配置され
記投光素子から投光される光線を、前記導光部の前記カバー外に露出した部分を起点として投光エリアが展開されるように導き、
前記カバー内部において前記投光素子から前記受光素子に前記光線が到達する光路があり、
受光レベルの増減により視野の妨害物を検知することを特徴とする視野妨害監視機能付き検知装置。
【請求項2】
カバーと、
投光素子と、
受光素子と、
導光部と、
を備えた視野妨害監視機能付き検知装置であって、
前記投光素子と前記受光素子の間に後方遮光構造を備え、
前記後方遮光構造は空間S1と空間S2を隔てるように配置され
記投光素子から投光される光線を、前記導光部の前記カバー外に露出した部分を起点として投光エリアが展開されるように導き、
前記カバー内部において前記投光素子から前記受光素子に前記光線が到達する光路があり、
受光レベルの増減により視野の妨害物を検知することを特徴とする視野妨害監視機能付き検知装置。
【請求項3】
カバーと、
投光素子と、
受光素子と、
導光部と、
を備えた視野妨害監視機能付き検知装置であって、
前記投光素子と前記受光素子の間に近傍遮光構造を備え、
前記近傍遮光構造及び前記導光部は空間S1と空間S2を隔てるように配置されるとともに前記空間S1側から前記空間S2側を見て少なくとも一部が重なるように配置され、
前記投光素子から投光される光線を、前記導光部の前記カバー外に露出した部分を起点として投光エリアが展開されるように導き、
前記投光エリアは、前記光線が妨害物に反射することなく前記カバーの透光部を透過し、前記受光素子に到達する投光角度を含み、
受光レベルの増減により視野の妨害物を検知することを特徴とする視野妨害監視機能付き検知装置。
【請求項4】
カバーと、
投光素子と、
受光素子と、
導光部と、
を備えた視野妨害監視機能付き検知装置であって、
前記投光素子と前記受光素子の間に後方遮光構造を備え、
前記後方遮光構造は空間S1と空間S2を隔てるように配置され、
前記投光素子から投光される光線を、前記導光部の前記カバー外に露出した部分を起点として投光エリアが展開されるように導き、
前記投光エリアは、前記光線が妨害物に反射することなく前記カバーの透光部を透過し、前記受光素子に到達する投光角度を含み、
受光レベルの増減により視野の妨害物を検知することを特徴とする視野妨害監視機能付き検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は警備用検知装置の視野妨害監視機能に関する。
【背景技術】
【0002】
敷地内や室内への侵入者を検知する受動型赤外線検知装置の視野妨害を監視するため、投光素子から発せられた近赤外線が検知装置に接近する妨害物により反射し、その反射光を受光することで妨害物の存在を検知する機能(視野妨害監視機能)を持つものがある。
【0003】
受動型赤外線検知装置が侵入者を検知したときは、同じ敷地内に設置された警備室や、異なる敷地に設置された警備会社の運営する警備センターなどに警報信号が送信される。視野妨害監視機能により妨害物を検知した場合も同様に視野妨害検知信号が送信される。
【0004】
受動型赤外線検知装置は、人から発する遠赤外線により、空間中に立体的に形成される警戒エリアへの人の侵入を検知するものであり、遠赤外線検知素子又はサーモパイルその他人体検知素子や、レンズ又は反射鏡、一部の波長のみを透過する光学フィルターなどにより構成される光学系を備えるが、視野妨害監視機能に係る光学系やその機能に関連する構造により、検知素子への光路が遮られるために受動型赤外線検知装置の人体検知感度が低下してしまうことがある。
【0005】
受動型赤外線検知装置の検知機能を損なわないようにするとともに検知素子の視野を監視するため、光ファイバーによる導光部を備えるものが考案されているが、実際には光ファイバーやその支持構造により受動型赤外線検知装置の光路を遮られるため人体検知感度は低下する(特許文献1)。
【0006】
受動型遠赤外線検知素子への入光領域から外れた領域に投光側及び受光側に導光部材を備えるものが考案されているが(特許文献2)、この文献に記載のものは、レンズへの塗料の塗布や接着テープのようなものの接触のみを想定したものであり、これにより、レンズに接触しない状態で設置された妨害物を検知できるかどうかは不明である。また、導光部材を用いてはいるものの、投光素子と受光素子の間の遮光はどのようになっているか明確に開示されておらず、カバー内での光線の反射についても言及が無いため、投光素子から投光された光線が、カバー内を反射して受光素子へ入光する量が十分に少なくなるよう制限されているかどうかは不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-86152号公報
【文献】特開2001-228020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
検知装置の人体検知の検知感度が低下しない視野妨害監視機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために本発明の視野妨害監視機能付き検知装置は、カバーと、投光素子と、受光素子と、導光部と、を備えた視野妨害監視機能付き検知装置であって、前記投光素子と前記受光素子の間に近傍遮光構造を備え、前記近傍遮光構造及び前記導光部は空間S1と空間S2を隔てるように配置されるとともに少なくとも一部が重なるように配置され、前記投光素子から投光される光線を、前記導光部の前記カバー外に露出した部分を起点として投光エリアが展開されるように導き、受光レベルの増減により前記カバーに接近する妨害物を検知することを特徴とするものである。
【0010】
また、かかる課題を解決するために本発明の視野妨害監視機能付き検知装置は、カバーと、投光素子と、受光素子と、導光部と、を備えた視野妨害監視機能付き検知装置であって、前記投光素子と前記受光素子の間に後方遮光構造を備え、前記後方遮光構造は空間S1と空間S2を隔てるように配置され、前記投光素子から投光される前記光線を、前記導光部の前記カバー外に露出した部分を起点として投光エリアが展開されるように導き、受光レベルの増減により前記カバーに接近する妨害物を検知することを特徴とするものである。
【0011】
前記カバー内部において前記投光素子から前記受光素子に前記光線が到達する光路があることが好ましい。
【0012】
また、前記投光エリアは、前記光線が妨害物に反射することなく前記カバーの透光部を透過し、前記受光素子に到達する投光角度を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の検知装置によれば、視野妨害監視機能に係る部品を検知素子の光路に備える必要がないため、視野妨害監視機能を備えることにより検知装置の人体検知感度が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る視野妨害監視機能付き検知装置の構成例の断面図である。
図2】従来技術に係る視野妨害監視機能付き検知装置の構成例の断面図である。
図3】本発明に係る視野妨害監視機能付き検知装置の構成例の外観図である。
図4】本発明に係る視野妨害監視機能付き検知装置の受光レベルεの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
【0016】
図1(a)及び図1(b)、図1(c)は本発明による視野妨害監視機能付き検知装置の同一の構成例の断面図である。この検知装置100では、プリント基板180がベース150とシャーシ160で挟まれて固定され、プリント基板180の上に投光素子110、受光素子120、人体検知素子190が実装されている。また、これらは、ベース150と半円筒形のカバー170に覆われ、導光部130は、投光素子110の上部からカバー170の外側に露出するように固定されている。カバー170の一部は人体検知素子190で用いる波長の光線後述する光線Rを透過する透光材により形成されたカバーの透光部171となっている。
【0017】
投光素子110から投光される光線Rについて、カバー170の外を通る光路α(α1~α3)とカバー170の内を通る光路β(β1、β2)の主に2つに分け、光路αについては図1(a)、光路βについては図1(b)に示し、説明する。図1(a)と図1(b)は同じ検知装置100であり、光路などを説明するために分けている。また、光線Rが導光部130やカバーの透光部171を透過する際には空気中との境界において屈折するが、図や説明においては省略する。また、本実施形態においては検知エリア(図示しない)を構成するため検知素子190を4つ備えるが、説明を簡単にするため図1においては1つだけ図示する。
【0018】
図1(c)は図1(a)の導光部130周辺を拡大した図である。導光部130はカバーの透光部171より高い位置まで形成されている。
【0019】
空間S1は検知装置100内部の空間を導光部130、近傍遮光構造142、後方遮光構造141のいずれか又はそれらの組み合わせにより隔てられた空間の内、投光素子110側の空間である。空間S2は受光素子120及び人体検知素子190を含む空間であり、人体検知感度を高めるべく人体検知素子190に大きい光学系を備えるために空間S1と比較して広い空間とする必要がある。
【0020】
光路αはカバー170の外側の妨害物Aの有無を判断するために用いられる。カバー170の外側の広範囲に光線Rを照射する必要がある。投光素子110から投光された光線Rは、導光部130を通りカバー170外に達し、導光部130のカバー170の外側に露出した部分から出る際に屈折する。これにより、当該部分を起点とした、カバーの透光部171を覆うような投光エリアTが展開される。妨害物Aが接近したときは、光路α2を通る光線Rが反射し、光路α3を通る光線Rが受光素子120に到達する。
【0021】
光路α1は投光素子110から投光され導光部130に透過し、導光部130からカバー170の外側へと透過する光線Rの光路である。光路α2は導光部130から出てカバー170の外側に投光され、妨害物Aに到達するまでの光線Rの光路である。光路α3は妨害物Aにより反射し、カバーの透光部171を透過し受光素子120に到達する光線Rの光路であって、カバーの透光部171を透過し空間S2に到達した後にカバー170の内側やプリント基板180、シャーシ160などで反射した後に受光素子120に到達する光線Rの光路も含む。
【0022】
光路δ1はカバーの透光部171に付着する妨害物C(破線により図示)の有無を判断するために用いられる。光路δ1はカバーの透光部171より高い位置からカバーの透光部171の内側に向けて投光され、妨害物Cが無ければカバーの透光部171を透過し、受光素子120に到達するが、妨害物Cがあれば光路δ1が遮断されることにより、受光素子120に到達する光線Rが変動し、妨害を検知する。
【0023】
光路βはカバー170内部の妨害物B(破線により図示)の有無を判断するために用いられる。投光素子110から投光され、検知装置100内部で反射し、受光素子120に到達する。警備が解除されているときにカバー170内部に妨害物Bを詰められると、警備を開始した後の人体検知が妨害されてしまうため、光路βを経由する光線Rが変動した場合であっても妨害を検知する。
【0024】
光路β1は近傍遮光構造142及び後方遮光構造141を透過するか、近傍遮光構造142と後方遮光構造141との間隙を通過して空間S2に達する光線Rの光路であり、例えば、投光素子110から投光され導光部130などで反射した後に前述の通り空間S2に達する光線Rの光路も含む。光路β2は空間S2に達した後受光素子120に到達する光線Rの光路であって、空間S2に達した後に、カバー170の内側やプリント基板180、シャーシ160などで反射し、受光素子120に到達する光線Rの光路も含む。
【0025】
近傍遮光構造142又は後方遮光構造141を透過するか、近傍遮光構造142と後方遮光構造141との間隙を通過するときに光線Rが減衰するため、減衰した光線Rが通る光路であることを表すため光路を破線で示す。
【0026】
光路β3は投光素子110から投光され空間S1に到達する光線Rの光路であり、例えば、投光素子110から投光され導光部130などで反射した後に空間S1に到達する光線Rの光路も含む。光路β4は空間S1のいずれかにおいて反射し、導光部130、近傍遮光構造142及び後方遮光構造141を透過するか、導光部130、近傍遮光構造142及び後方遮光構造141の間隙を通過して空間S2に到達する光線Rの光路である。空間S2に到達した後は、前述の光路β2の通りであるため説明を省略する。
【0027】
光路βを通る光線Rは十分に小さくなるようにしなければ、妨害物Aを検知する感度が確保できない。
【0028】
光路β1を通る光線Rの一部はカバーの透光部171を透過して光路γ(γ1、γ2)を通るが、光路α2、α3と同様に妨害物Aの検知に用いられる。光路γ1は近傍遮光構造142及び後方遮光構造141を透過するか、近傍遮光構造142と後方遮光構造141との間隙を通過して空間S2に到達し、カバーの透光部171を透過し、妨害物Aに反射するまでの光線Rの光路である。光路γ2は前述のα3の通りであるため説明を省略する。
【0029】
これらの光線Rのうち受光素子120に到達したものをA/D変換し、検知装置100に組み込まれた図示しないマイクロコンピュータへ入力したものが受光レベルεである。受光レベルεは、ある範囲の電圧を分割して表現される。例えば、電圧範囲0~3.3Vを10Bit(1,024段階)などの分解能により表現される。
【0030】
遠赤外線を利用する人体検知装置などであれば、人体検知素子190として焦電素子を用いることができ、近赤外線を用い投光素子と受光素子の間が遮断されることを検知する人体検知装置であれば、人体検知素子190としてLEDやフォトダイオードを用いることができる。人体検知素子190及びレンズなどの光学系は、目的とする検知エリアの形状を実現すべく、ベース150とカバー170内部の任意の位置に固定される。検知素子190はカバーの透光部171を通してカバー170外部に視野を拡げており、本実施形態においてはカバーの透光部171はポリエチレンを用いたフレネルレンズとなっており光学系の一部を兼ねている。
【0031】
シャーシ160の一部は光路βを遮光するため、カバー170との間隙が狭まるように後方遮光構造141及び近傍遮光構造142を形成する。
【0032】
導光部130はアクリルやポリカーボネートなどの樹脂材料、その他一般的な光学材料、硝材を用いることができるが価格面から樹脂が望ましい。本実施形態においてはアクリルにより形成される。
【0033】
導光部130は投光素子110の直上からカバー170の外に達しており、光線Rを内部で直進、または内部で反射させながらカバー170の外側へと導く。導光部130の中へ透過した光線Rの大部分は全反射により前述の通りカバー170の外側へと導かれるが、光線Rの一部はカバー170内部で境界面を透過し導光部130の外へ放出する。この放出された光線Rは光路β2と同様に後方遮光構造141に遮光されるが、その一部は受光素子120に到達するため光路β2に含まれるものとして扱う。
【0034】
投光素子110から投光された光線Rの一部は導光部130内部へと透過せずに反射する。この反射光は光路β1又はβ3に含まれるものとして扱う。
【0035】
近傍遮光構造142は投光素子110の近傍に、導光部130の端部より高い位置まで形成(空間S1側から見たときに導光部130と少なくとも一部が重なるように配置)することにより、小さい構造により効果的に光路β1を遮光できる。導光部130の受光素子120側の面と近傍遮光構造142は接触していることが望ましいが組み立て工程上の都合により間隙を設ける場合には、近傍遮光構造142をより高くすることで遮光効果を高めることができる。間隙を設けたとしても近傍遮光構造142は高さ3~5mm程度と十分に小さい構造とすることができるため人体検知素子190の光路を遮ることなく効果的に光路β1を遮光できる。
【0036】
本実施形態においては近傍遮光構造142及び後方遮光構造141、カバー170(カバーの透光部171を除く)は、ABS等の一般的な樹脂材料を用いる。
【0037】
近傍遮光構造142により反射した光線Rは、導光部130に透過し光路α1を通りカバー170外に投光されるか、空間S1に反射し光路β3に含まれる。
【0038】
空間S1において光線Rは反射を繰り返すため様々な角度から、光路β4(空気中と導光部130の境界面では光は屈折するがここでは省略する。)で示すように導光部130に光線Rが照射され、導光部130を透過し、β2の一部となって受光素子120に到達する。このように空間S1から空間S2に到達する光路β4を通る光線Rを遮光するためには、後方遮光構造141が有効である。
【0039】
カバーの開閉を検知するタンパー機能を有している検知装置においては、警備システムの警戒を解除しているときでもタンパーの監視を行う運用方法をとっており、妨害物Bを検知する必要がない場合がある。このときはカバー170と後方遮光構造141の間隙を閉じ、即ち光路βを閉ざすことで、光路αのダイナミックレンジを拡げることにより視野妨害検知感度が高まり、誤動作の低減や、視野妨害検知感度を保ったまま投光素子110の投光電力を下げられるという効果や、検知距離を伸長するため投光素子110の投光電力を上げても受光レベルεに占める光路β2を通ってくる光線Rを十分に小さい値とすることができるという効果が得られる。
【0040】
後方遮光構造141及び近傍遮光構造142はシャーシ160の一部として記載するが、異なる部品により取り付けられても良いし、材料については必ずしも光線Rを完全に遮断するものでなくてもよい。例えば、不織布や、樹脂に穴を開けたものでもよい。
【0041】
受光素子120や人体検知素子190は説明を簡単にするためにひとつずつ記載しているが、人体検知素子190が複数あればそれぞれの視野が妨害されたことを検知できるように受光素子120も複数備えることが望ましい。また、投光素子110も受光素子120や人体検知素子190の位置を勘案して、複数備えてもよい。
【0042】
このように構成することにより本発明においては、人体検知素子190を複数備えるためや、人体検知素子190に係る光学系の大きさを確保するために、空間S2を大きくすることができる。また、光路α3を通る光線Rを効率的に取り込み、視野妨害検知感度を高めるために、開口部となるカバーの透光部171を広くすることができる。
【0043】
図2は従来技術による視野妨害監視機能付き検知装置の構成例の断面図である。
【0044】
本発明においては後方遮光構造141及び近傍遮光構造142を備えることで、視野妨害検知感度の向上を実現しているが従来技術に遮光構造を備えると視野妨害検知感度が低下する。以下に、その理由を説明する。
【0045】
まずは図2(a)において、遮光構造144が無い場合について説明する。投光素子110から投光される光線Rはカバーの透光部171を通して妨害物Aで反射して受光素子120に到達する。または、検知装置100内部で反射を繰り返した後にカバー170の外に出て、妨害物Aで反射した後にカバー170の中に入り、受光素子120に到達する。妨害物Aに反射した後にカバー170の中に入った光線Rについては、何度か検知装置100内部で反射した後に受光素子120に到達する場合がある。
【0046】
次に図2(a)において、破線で示す遮光構造144が有る場合について説明する。投光素子110から投光される光線Rはカバー170を通して妨害物Aで反射して、遮光構造144を挟んで受光素子120側の空間S4に入る光線Rと、遮光構造144を挟んで投光素子110側の空間S3に入る光線Rに分かれる。
【0047】
ここで、空間S4に入った光線Rは遮光構造144が無い場合と同様に検知装置100内部で反射を繰り返して受光素子120に到達すると受光レベルεが増加する。しかし、空間S3に入った光線Rは遮光構造144に制限されるため受光素子120に到達し難い。
【0048】
図2(b)に示すように、遮光構造144を投光素子110に近づければ受光素子120側の空間S4が広くなるが、投光素子110から投光される光線Rは遮光構造144によって投光角度が制限されるため、受光素子120側の空間S4のカバー170上では視野妨害検知感度が低下し、投光素子110側の空間のカバー170上でも妨害物Aが受光素子120と反対側に角度がついていれば視野妨害検知感度は低下し、検知が出来るか否か不安定なものとなる。
【0049】
図2(c)に示すように、遮光構造144を受光素子120に近づければ投光素子110側の空間S3が広くなるが、前述の通り、投光素子110側の空間S3に入った光線Rは遮光構造144に制限されるため受光素子120に到達し難いため、視野妨害検知感度は低下する。
【0050】
以上のことから、本発明による検知装置100において、導光部130を備えることにより後方遮光構造141及び近傍遮光構造142の有用性が発揮されることがわかる。
【0051】
図3は検知装置100の外観と投光エリアTの展開を示した外観図である。図3(a)は検知装置100を側面から見た図であり、投光エリアTは、投光素子110から投光された光線Rが導光部130を通り、導光部のカバー170外に露出した部分を起点として光路α2の展開する領域を示している。図3(b)は検知装置100を正面から見た図であり、導光部のカバー170外に露出した部分を起点として投光エリアTがカバーの透光部171及び4つの検知素子190の視野を覆うように展開していることを示している。
【0052】
導光部130から投光角度θ(θ1、θ2)のような角度をつけてカバー170の外に出る光線Rは投光エリアTに示すように展開する。
【0053】
投光角度θ1は、カバー170の外側に展開する。一定の距離に接近する妨害物Aを検知する必要があるため、このように導光部130の光学設計を行う。
【0054】
投光角度θ2は、投光角度θ1を拡げ、光線Rが妨害物Aに反射することなくカバーの透光部171を透過し、受光素子120に到達するようにしたものである。図3において受光素子120を図示しないが、投光エリアT内に配置する。
【0055】
また、投光角度θ2に示すような投光角度θに設定することで、妨害物Aの反射によらず、導光部130から投光された光線Rが光路δ1を通って受光素子120に到達するため、カバーの透光部171への接近時には微細であり妨害物Aとしては検知できない黄砂や鳥の糞などによる汚れが堆積し人体検知性能に不具合が生じる場合に検知することができる。
【0056】
投光角度θ3に示すように、人体検知素子190の視野を覆うように展開すればよく、便宜的に扇形で表示しているが投光エリアの形状はこの形状でなくてもよい。
【0057】
図4は本発明の実施形態を2通りに分けて受光レベルεの変化を示す図である。説明を簡単にするため、この図とその説明においては光路α3にγ2も含まれることとする。
【0058】
図4(a)は投光角度θをθ1としたときの受光レベルεを、左端を原点、右端を最大値として各光路からの受光量を加算し示している。(a)(1)は妨害物の無いときの受光レベルεを示しており、カバー170内部からの反射であるβ2を通る光線Rのみ受光する。
【0059】
妨害物Aが接近すると光路α2を通る光線Rが妨害物Aにより反射し、光路α3を通り受光素子120へと入力されるため、受光レベルεは増加し、閾値である受光レベル(a)(2)を超えた状態で一定時間が経過すると、妨害物Aを検知し、妨害物検知出力を行う。
【0060】
検知装置100の電源が入っていないときに妨害物Bをカバー170内に入れられ、検知素子190の視野が覆われていると、電源の投入後に光路β2を通る光線Rが遮られるために受光レベルεの値が閾値である受光レベル(a)(3)より小さくなり、一定時間が経過すると、妨害物Bを検知し、妨害物検知出力を行う。
【0061】
以上のように妨害物A及びBを検知することができる。
【0062】
カバー170に接触しない、例えば5cm程度離れた妨害物Aを検知するためには投光素子110の投光電力を増やし、光路αを通る光線Rを増やす必要がある。しかし、投光電力を増やすと、同時に光路βを通る光線Rも増えてしまうため、妨害物の無い状態でも閾値(a)(2)を超える、或いは受光レベルεが最大となってしまい、正しく検知できないことは自明である。
【0063】
そこで、投光電力を増やし、光路αを通る光線Rを増やしつつも、光路βを通る光線Rを制限するために、近傍遮光構造142及び後方遮光構造141を設けることで妨害物Aを検知する際の受光レベルεにおけるS/N比を向上させることが本発明における技術的意義のひとつである。
【0064】
図4(b)は投光角度をθ2としたときの受光レベルεを、左端を原点、右端を最大値として各光路からの受光量を加算し示している。受光レベル(b)(1)は妨害物の無いときの受光レベルεを示しており、カバー170内部からの反射であるβ2に、導光部130から直接カバー170に投光され光路δ1を通り受光素子120へと入力される光線Rを加えた受光レベルεである。
図4(a)のときと同様に、妨害物Aが接近すると光路α2を通る光線Rが妨害物Aにより反射し、光路α3を通り受光素子120へと入力されるため、受光レベルεは増加し、閾値である受光レベル(b)(2)を超えた状態で一定時間が経過すると、妨害物Aを検知し、妨害物検知出力を行う。
【0065】
妨害物Cはカバーの透光部171の表面に付着する黄砂や鳥の糞などの小さいものによる汚れが堆積したものであり、妨害物Aとは異なり個々の妨害物が小さいために接近時には妨害物として検知できないものである。
【0066】
妨害物Cの付着があればカバーの透光部171は光線Rを透過しにくくな光路δ1が遮られるため、妨害物Cの付着量に応じて受光レベルεは低下し、閾値である受光レベル(b)(3)に達一定時間が経過すると、妨害物Cを検知し、妨害物検知出力を行う。
【0067】
以上の説明においては、妨害物が存在することにより受光レベルεが増加する場合、あるいは減少する場合の、いずれか一方のみの説明をしたが、妨害物の位置、向き、反射率により受光レベルの増減が反転する場合もあり、いずれにしても基準となる受光レベル(a)(1)及び(b)(1)から増加する方向及び減少する方向の両方に閾値を設け、妨害物検知出力を行うようにすればよい。
【0068】
基準となる受光レベル(a)(1)及び(b)(1)は、検知装置100内部に設けられた光学系の向きや、カバーの透光部171表面に付着した軽微な汚れによっても光路β2を通る光線Rの量が変化するため、カバー170を閉じた後の受光レベルεから、基準となる受光レベル(a)(1)及び(b)(1)を設定する。
【符号の説明】
【0069】
100 検知装置
110 投光素子
120 受光素子
130 導光部
141 後方遮光構造
142 近傍遮光構造
150 ベース
160 シャーシ
170 カバー
171 カバーの透光部
180 プリント基板
190 人体検知素子
T 投光エリア
A、B、C 妨害物
θ 投光角度
R 光線
S1、S2、S3、S4 空間
α、β、γ、δ 光路
ε 受光レベル
図1
図2
図3
図4