(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】コーヒーチェリーを含むコーヒー組成物
(51)【国際特許分類】
A23F 5/14 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A23F5/14
(21)【出願番号】P 2022153077
(22)【出願日】2022-09-07
【審査請求日】2022-09-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-24
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522377468
【氏名又は名称】AI商事株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石垣 泰伸
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】加藤 友也
【審判官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-519415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎コーヒー豆粉砕物
90~95質量%、乾燥コーヒーチェリー粉砕物5~
10質量%を含有するコーヒー組成物を、パックの容量が6gから1kgである常圧パックにパック詰めした、パック詰めコーヒー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、嗜好飲料として世界中で大量に消費されており、その風味向上や健康機能、地域資源保護等の点から、多様な製品が知られている。例えば、特許文献1には、焙煎したコーヒー豆に大豆を混合した、大豆ブレンドコーヒーが記載されており、特許文献2には、コーヒーチェリーの乾燥させた果肉及び/又は外皮を焙煎したコーヒー豆に添加する、コーヒー組成物を製造するための方法が記載されている。
【0003】
一方で、コーヒーの楽しみ方も多様化しており、消費者は家庭で、焙煎コーヒー豆粉砕物(いわゆる、「レギュラーコーヒー」)を、フィルターをセットしたドリップ容器に入れ、そこへお湯を注いでドリップすることで美味しいコーヒーを淹れて、その味わいを楽しむ人が多い。また、手軽に美味しいコーヒーを味わうことができることから、焙煎コーヒー豆粉砕物をパック詰めした、パック詰めコーヒーが消費者に好まれている。
消費者はパック詰めコーヒーを味わう際には、まずパックを開封した時のコーヒー豆の外観と香り、次にドリップする時の泡立ち等の外観と立ち上る香り、そして淹れたコーヒーを飲む時のコーヒー抽出物の外観と風味、と各場面でコーヒーの美味しさを味わっている。その全てがコーヒーを味わう「おいしい」体験に含まれる。
【0004】
特許文献1~2に記載のコーヒー組成物においては、抽出されたコーヒーの風味や健康機能について着目しているものの、パック詰めコーヒーとして美味しいコーヒーを提供することは考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-152845号公報
【文献】特表2007-519415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、手軽に美味しいコーヒーを味わうことができるコーヒー組成物、パック詰めコーヒー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、焙煎コーヒー豆粉砕物70~97質量%、乾燥コーヒーチェリー粉砕物3~30質量%を含有する、コーヒー組成物とすることで、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下の事項を含んでいる。
〔1〕焙煎コーヒー豆粉砕物70~97質量%、乾燥コーヒーチェリー粉砕物3~30質量%を含有する、コーヒー組成物。
〔2〕前記〔1〕に記載のコーヒー組成物をパック詰めした、パック詰めコーヒー組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費者が手軽に美味しいコーヒーを味わうことができる、コーヒー組成物が提供される。また、パックを開封した時、ドリップする時、コーヒー抽出物を飲む時の各場面において、外観と風味が良好なコーヒー組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のコーヒー組成物は、焙煎コーヒー豆粉砕物70~97質量%、乾燥コーヒーチェリー粉砕物3~30質量%を含有する。
焙煎コーヒー豆粉砕物と、乾燥コーヒーチェリー粉砕物を含有することで、豊かなフルーティー感をもったコーヒーを得ることができる。
【0010】
焙煎コーヒー豆粉砕物は、コーヒー豆(コーヒー生豆)を焙煎、粉砕することで製造することができる。
コーヒー豆の品種は、アラビカ種、カフォネーラ種(ロブスタ種ともいう)、リベリカ種のものを用いることができる。風味の点から、アラビカ種が好ましく、コストの点からカフォネーラ種が好ましい。
コーヒー豆の産地は、ブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、タイ、エチピア、ペルー、ネパール、ジャマイカ等、一般的なコーヒー産地のものを用いることができる。風味や価格、供給量等の点から、適宜に産地を選んで使用することができ、ブレンドしてもよい。外観や風味と、価格や供給性のバランスから、ブラジル、ベトナム、タイ、ネパール産を用いることが好ましい。これらのように比較的低価格で入手できるコーヒー豆に、本発明を適用することで、スペシャルティーコーヒーのような高級感とフルーティー感による「おいしい」コーヒー体験を提供することができる。
【0011】
コーヒー豆(コーヒー生豆)は、コーヒーチェリー(コーヒーノキの果実)の種子の部分であり、コーヒーチェリーから、コーヒー豆を分離して得ることができる。コーヒーチェリーから、コーヒー豆を分離する工程を精製と呼び、乾式精製、湿式精製、半水洗式に分類されている。半水洗式の中には、ハニー精製と呼ばれる方法も含まれる。精製は、生産性及び外観と風味の点から、半水洗式が好ましい。
焙煎は、コーヒー生豆を焙煎機で約175~260℃の温度で約1~25分間、加熱することによって行う。焙煎の度合いは、浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎りの各段階を、所望の外観、風味に応じて選択することができる。外観と風味のバランスから、中煎り、中深煎りが好ましい。
粉砕は、粉砕機で行うことができ、粗(荒)挽き、中挽き、中細挽き、細挽き、極細挽き(全日本コーヒー公正取引協議会の「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約(平成30年5月21日現在)」による)の各段階を、所望の外観、風味に応じて選択することができる。外観と風味のバランスから、粗(荒)挽き、中挽き、中細挽きが好ましい。
【0012】
乾燥コーヒーチェリー粉砕物は、コーヒーチェリーを乾燥、粉砕することで製造することができる。
コスト及び外観と風味のバランスから、乾燥コーヒーチェリー粉砕物は、コーヒーチェリーから、種子(コーヒー豆)を分離した後に、乾燥、粉砕したものが好ましい。
乾燥は、自然乾燥、乾燥機を用いた機械乾燥等を用いることができる。生産性と外観と風味の点から、常温で数日間、自然乾燥させることが好ましい。天日乾燥を行ってもよい。
粉砕は、粉砕機で行うことができ、外観と風味の点から、焙煎コーヒー豆粉砕物と同程度の大きさにすることが好ましい。
【0013】
本発明のコーヒー組成物は、焙煎コーヒー豆粉砕物70~97質量%、乾燥コーヒーチェリー粉砕物3~30質量%を含有するが、コーヒー組成物中の、乾燥コーヒーチェリー粉砕物の含有量は、コーヒー組成物の外観(例えばコーヒー感など)と香り(例えば香ばしさとフルーティーさのバランスなど)、抽出時の外観(例えば、自然な泡立ちなど)と香り(例えば、ロースト感とフルーティー感のバランスなど)、抽出したコーヒーの外観(例えば、クリアに澄んでいるなど)と風味(例えば、酸味・苦味とフルーティーさのバランスなど)の点から、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下が好ましく、風味と外観のバランスにより、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下とすることもできる。コーヒー組成物中の、乾燥コーヒーチェリー粉砕物の含有量は、同様の点から、4質量%以上、5質量%以上、7質量%以上が好ましく、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上とすることもできる。
【0014】
コーヒー組成物中の、焙煎コーヒー豆粉砕物の含有量は、同様の点から、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上が好ましく、90質量%以上、93質量%以上、95質量%以上とすることもできる。コーヒー組成物中の、焙煎コーヒー豆粉砕物の含有量は、同様の点から、96質量%以下、95質量%以下、93質量%以下が好ましく、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下とすることもできる。
【0015】
本発明のコーヒー組成物は、購入や使用のしやすさの点、外観や風味を楽しめる点、品質の維持等の点から、コーヒー組成物をパック詰めした、パック詰めコーヒー組成物とすることができる。パック詰めは、コーヒー組成物をパック(包装袋、包装容器等)に入れて、密封することで行う。
パックの方法は、常圧パック、真空パック、加圧パックが挙げられる。パック充填の環境雰囲気は、空気のままでもよいし、空気を窒素に置換して、窒素封入パックとしてもよい。コスト及び風味の点から、常圧パック、空気環境でのパックが好ましく、品質劣化を防ぐ点から、真空パック、窒素封入パックが好ましい。また、風味の点から、パック素材は、アルミ蒸着フィルム等の遮光性のものを用いることが好ましい。また、パックにガス抜きのためのガス抜き弁を設けてもよい。
パックの容量は、商品のターゲットや、販売チャネル、陳列方法等によって、コーヒー1杯分の6g、8g、10g、15g程度とすることもできるし、200g、300g、500g、1kg程度とすることもできる。
【0016】
コーヒー組成物には、外観や風味を調整する観点から、焙煎コーヒー豆粉砕物、乾燥コーヒーチェリー粉砕物以外の添加物を含有してもよい。
【0017】
本発明のコーヒー組成物は、お湯又は水で抽出することによって、コーヒーを淹れて、飲用するとよい。抽出方法は、ハンドドリップ、ドリップマシン、コーヒーサイフォン、エスプレッソマシン、プレス式、モカポット、ウオータードリップ等を用いることができる。ハンドドリップで淹れることで、風味を良好に引き出すことができるだけでなく、ドリップの際の泡立ちや立ち上る香りを感じることができ、コーヒーを味わう「おいしい」体験が得られる。ハンドドリップは、紙製や布製のコーヒーフィルターをコーヒードリッパーにセットして、コーヒー組成物を計り入れ、そこへお湯を注いで、コーヒーを抽出する。
【実施例】
【0018】
焙煎コーヒー豆粉砕物と乾燥コーヒーチェリー粉砕物を表1~2に示す含有量で混合したコーヒー組成物を密封パックして、パック詰めコーヒー組成物を得た。
コーヒー豆は、アラビカ種で、原産地はブラジルまたはタイであり、焙煎は中深煎りで、粉砕は中挽とした。乾燥コーヒーチェリー粉砕物は、コーヒーチェリーから、種子(コーヒー豆)を分離した後に、自然乾燥し、焙煎コーヒー豆粉砕物と同程度の大きさに粉砕したものを用いた。パック詰めは、常圧の空気雰囲気でのパック、または真空パックとした。
コーヒーの抽出は、紙製のコーヒーフィルターを用いて、コーヒー組成物8gに対して120mLのお湯で、ハンドドリップで行った。
【0019】
各サンプルの評価は、パック開封時、ドリップ抽出時、抽出したコーヒーにおける、下記の評価項目について、もっとも良いを5点,もっとも悪いを1点として、5点~1点の5段階の点数をつけ、5人のパネラーの平均点が、5~4は◎、4未満~3は○、3未満~2は△、2未満は×とした。
【0020】
<パック開封時の外観>
5点=自然なコーヒー感があり大変良好
4点=自然なコーヒー感があり良好
3点=自然なコーヒー感がありほぼ良好
2点=コーヒーとして少し違和感あり
1点=コーヒーとして違和感あり
<パック開封時の香り>
5点=香ばしさとフルーティー感がバランスして大変良好
4点=香ばしさとフルーティー感がバランスして良好
3点=香ばしさとフルーティー感がバランスしてほぼ良好
2点=フルーティー感が少し強すぎるか弱すぎてややバランスが悪い
1点=フルーティー感が強すぎるか弱すぎてバランスが悪い
<ドリップ抽出時の外観>
5点=自然な泡立ちで大変良好
4点=自然な泡立ちで良好
3点=自然な泡立ちでほぼ良好
2点=泡立ちが少し不自然
1点=泡立ちが不自然
<ドリップ抽出時の香り>
5点=ロースト感とフルーティー感のバランスが大変良好
4点=ロースト感とフルーティー感のバランスが良好
3点=ロースト感とフルーティー感のバランスがほぼ良好
2点=フルーティー感が少し強すぎるか弱過ぎてややバランスが悪い
1点=フルーティー感が強すぎるか弱過ぎてバランスが悪い
<抽出したコーヒーの外観>
5点=クリア感があり大変良好
4点=クリア感があり良好
3点=クリア感がありほぼ良好
2点=わずかにくもり感あり
1点=くもり感あり
<抽出したコーヒーの風味>
5点=酸味・苦味とフルーティーさのバランスが大変良好
4点=酸味・苦味とフルーティーさのバランスが良好
3点=酸味・苦味とフルーティーさのバランスがほぼ良好
2点=フルーティーさが少し強すぎるか弱すぎてややバランスが悪い
1点=フルーティーさが強すぎるか弱すぎてバランスが悪い
【0021】
【0022】
【0023】
表1~2に示すように、焙煎コーヒー豆粉砕物70~97質量%、乾燥コーヒーチェリー粉砕物3~30質量%を含有するコーヒー組成物は、パック開封時、ドリップ抽出時、抽出したコーヒーにおける、外観及び風味のバランスが良好なコーヒー組成物であった(実施例1~10)。一方、乾燥コーヒーチェリー粉砕物が3質量%未満では(比較例1,3)風味が劣っており、乾燥コーヒーチェリー粉砕物が30質量%を超えるものは(比較例2,4)は外観と風味が劣っていた。
【要約】
【課題】手軽に美味しいコーヒーを味わうことができるコーヒー組成物、パック詰めコーヒー組成物を提供すること。
【解決手段】コーヒー組成物は、焙煎コーヒー豆粉砕物70~97質量%、乾燥コーヒーチェリー粉砕物3~30質量%を含有するものである。
【選択図】なし