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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】加振器
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20231206BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20231206BHJP
   H04R 9/06 20060101ALI20231206BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
H02K33/16 A
H04R9/06 Z
H04R9/02 102C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018193029
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2019209315
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2018107249
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 創
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-220363(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0100091(KR,A)
【文献】特開2002-242969(JP,A)
【文献】特開2005-143277(JP,A)
【文献】特開2004-033930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00- 3/04
H02K 33/16
H04R 9/06
H04R 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を規定するフレームと、
前記内部空間においてコイルが巻回されたボビンが前記フレームに固定されるボイスコイルと、
前記コイルの軸線方向に沿って前記内部空間に配置され、前記フレームに両端が支持される軸部材と、
前記軸部材に対して摺動可能に配置され、かつ、前記コイルがその磁気空隙に配置される磁気回路と、
前記内部空間において前記軸線方向に沿った前記磁気回路の一端側と前記フレームの一端側との間に配置される圧縮コイルバネと、を備え、
前記磁気回路は、前記圧縮コイルバネの径方向の内側に配置され、
前記圧縮コイルバネの径方向の内側に、前記磁気回路全体が収まっている、
加振器。
【請求項2】
内部空間を規定するフレームと、
前記内部空間においてコイルが巻回されたボビンが前記フレームに固定されるボイスコイルと、
前記コイルの軸線方向に沿って前記内部空間に配置され、前記フレームに両端が支持される軸部材と、
前記軸部材に対して摺動可能に配置され、かつ、前記コイルがその磁気空隙に配置される磁気回路と、
前記内部空間において前記軸線方向に沿った前記磁気回路の一端側と前記フレームの一端側との間と、前記磁気回路の他端側と前記フレームの他端側との間と、にそれぞれ配置される2つの圧縮コイルバネと、
前記磁気回路から前記軸線方向と直交する周方向の外側に突出する被固定部と、を備え、
前記2つの圧縮コイルバネは、それぞれ、前記被固定部に固定され、前記被固定部を前記軸線方向両側から挟んでいる、
加振器。
【請求項3】
内部空間を規定するフレームと、
前記内部空間においてコイルが巻回されたボビンが前記フレームに固定されるボイスコイルと、
前記コイルの軸線方向に沿って前記内部空間に配置され、前記フレームに両端が支持される軸部材と、
前記軸部材に対して摺動可能に配置され、かつ、前記コイルがその磁気空隙に配置される磁気回路と、
前記内部空間において前記軸線方向に沿った前記磁気回路の一端側と前記フレームの一端側との間に配置される圧縮コイルバネと、を備え、
前記磁気回路は、外径を規定する外径側面に前記軸線方向と直交する周方向に沿って形成される溝を有し、
前記圧縮コイルバネは、内径方向へ突出するように形成された止め輪部を有し、
前記止め輪部は、前記磁気回路の前記溝に嵌合して固定される、
加振器。
【請求項4】
前記磁気回路は、前記圧縮コイルバネの径方向の内側に配置されている、
請求項2又は3に記載の加振器。
【請求項5】
前記圧縮コイルバネは、山部および谷部を交互に等間隔に有する板状鋼線が前記軸部材の周方向に螺旋状に多重に巻回され、かつ、前記軸線方向において前記山部と前記谷部とが接触するように構成されているコイルドウェーブスプリングである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の加振器。
【請求項6】
前記磁気回路は、前記軸部材に対して摺動する軸受を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の加振器。
【請求項7】
前記磁気回路は、
前記軸部材が貫通する貫通孔を有するヨークと、
前記軸部材が貫通する貫通孔を有し、前記ヨークに取り付けられるマグネットと、
前記軸部材が貫通する貫通孔を有し、前記マグネットに取り付けられ、前記ヨークとの間に前記磁気空隙を形成するプレートと、を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の加振器。
【請求項8】
前記磁気回路は、前記軸部材が貫通する貫通孔を有するヨークを有し、
前記被固定部は、
前記磁気回路の前記ヨークから前記軸線方向と直交する周方向の外側に突出するように形成されるフランジ部であり、
前記軸線方向における前記磁気回路の最大厚み寸法D1よりも小さい厚み寸法D2である、
請求項2に記載の加振器。
【請求項9】
前記磁気回路は、前記軸部材が貫通する貫通孔を有するヨークを有し、
前記磁気回路の前記ヨークは、外径を規定する外径側面に前記軸線方向と直交する周方向に沿って形成される溝を有し、
前記被固定部は、前記溝に嵌合する止め輪部材である、
請求項2に記載の加振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気音声信号を振動に変換して、被取付部材に取り付けられて被取付部材を振動させて振動を伝える、または、音波を放射させる加振器に関して、特に、小型であっても大きな振動が得られて、動作が安定する加振器に関する。
【背景技術】
【0002】
加振器は、被取付部材に取り付けられて被取付部材を振動させて、振動を伝え、音波を放射させる。動電型の加振器は、電気音声信号を振動に変換するのに、ボイスコイルが配置される磁気空隙を有する磁気回路を備える。マグネットを備える磁気回路が振動する加振器においては、一般的には、ダンパーによって支持された磁気回路が、規定された一つの軸方向を往復して振動することにより、フレームを介して機械的な振動を伝達する。電流が流れるボイスコイルは、一端がフレームに固定されるとともに、磁気空隙内に配置されて磁気回路の振動の駆動力を生じる。
【0003】
上記の様な動電型の加振器では、多くの場合、フレームと、磁気回路の磁気空隙と、ボイスコイルと、振動部を支持するダンパーは、円形であって同心円状に配置される。ここで、これらが同心円状に配置されるのは、動電型スピーカーにおける音声再生の場合と同様である。ダンパーは、サスペンションと呼ばれる場合がある。フレームは、ケース又はカプラ、と呼ばれる場合がある。
【0004】
例えば、従来には、音響放射のための慣性式励振器であって、マグネット組立体と、音響放射体の表面に取付けられ、前記マグネット組立体に対して相対的に動くようになっているカプラと、前記カプラに取付けられたボイスコイル組立体と、前記カプラと前記マグネット組立体とに取付けられ、前記ボイスコイルの近くで、前記カプラに対して前記マグネット組立体を支持するためのサスペンションと、を有し、前記サスペンションが、前記マグネット組立体の重心を通る単一平面内に実質的に配置された片持ち梁状の平坦なアーム型部材であり、それによって前記サスペンションに作用するモーメントを低減するようになっていることを特徴とする慣性式励振器がある(特許文献1)
【0005】
加振器のダンパー又はサスペンションは、ボイスコイル/磁気回路の中心保持を図り、動電型の加振器では、振動系への駆動力および支持力のバランスをとり、アンバランスによる歪や異音を生じさせずに、発生する機械的な振動を大きくするのにあたり、磁気回路の口径よりも比較的に外形寸法の大きいものが用いられる。その結果、磁気回路の大きさに比較して加振器全体が大きくなり易いという問題がある。一方で、大きさが小さい加振器は、相対的に磁気回路が小さくなって結果的に振動が小さくなり易いという問題がある。さらに、加振器のダンパー又はサスペンションにおいて、特に蝶ダンパーと呼ばれる片持ち梁状の平坦なアーム型部材は、振動方向の変位量が大きくなればなるほど強度的に負荷が大きく、また、振動方向と直交する方向に対しても強度的な脆弱性があり、破断しやすいという問題がある。
【0006】
そこで、磁気回路が振動する方向と直交する方向に対して拘束する軸および軸受を設ける加振器が従来から存在する。例えば、磁気回路と、この磁気回路のエアギヤツプ中に位置する駆動コイルと、この駆動コイルが巻かれていて前記駆動コイルの動きをアウタケースに伝えるコイルボビンと、前記磁気回路をアウタケースに支持するダンパーとを備える電気機械振動変換装置において、磁気回路の中心位置に音軸方向に沿って形成された案内孔と、この案内孔に嵌装されていて、端部がアウタケースに連結されている連結部材とを備え、駆動コイルに発生する駆動力を音軸方向にのみ伝達できるように構成したことを特徴とする電気機械振動変換装置がある(特許文献2)。
【0007】
また、従来には、円筒状のフレームの一側端に円筒状の駆動コイルを固定し、該駆動コイルと空隙を介して磁気的に係合する磁性材料からなるカップ状ヨークと円柱状永久磁石とで形成された駆動子を前記フレームの両側端に設けた一対のコイルばねによって前記駆動子が軸方向に振動するように配設したことを特徴とする軸方向駆動の振動体がある(特許文献3)。また、振動型アクチュエータにおいて、コイルスプリングに代えてウェイブスプリングを用いるものがある(特許文献4)。ただし、振動を発生させる加振器では、コイルスプリングに代えてウェイブスプリングを用いるようなものは、従来に無い。
【0008】
【文献】特許第4080870号公報
【文献】実開昭63-158093号公報
【文献】特開2003-220363号公報
【文献】特開2005-143277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、加振器に関し、磁気回路の大きさに比較して加振器全体が大きくならず、小型であっても大きな振動が得られて、動作が安定する加振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加振器は、内部空間を規定するフレームと、内部空間においてコイルが巻回されたボビンがフレームに固定されるボイスコイルと、コイルの軸線方向に沿って内部空間に配置されフレームに両端が支持される軸部材と、軸部材に対して摺動可能に配置されて、かつ、コイルがその磁気空隙に配置される磁気回路と、内部空間において軸線方向に沿った磁気回路の一端側とフレームの一端側との間に配置される圧縮コイルバネと、を備え、圧縮コイルバネが、山部および谷部を交互に等間隔に有する板状鋼線を軸部材の周方向に螺旋状に多重に巻回し、かつ、軸線方向において山部と谷部とが接触するように構成されているコイルドウェーブスプリングである。
【0011】
好ましくは、本発明の加振器は、磁気回路の他端側とフレームの他端側との間に配置される他のコイルドウェーブスプリングをさらに備える。
【0012】
また、好ましくは、本発明の加振器は、コイルドウェーブスプリングが、それぞれその自然長よりも短くなるように付勢されて圧縮された状態で取り付けられている。
【0013】
また、好ましくは、本発明の加振器は、磁気回路が、軸部材に対して摺動する軸受を有する。
【0014】
また、好ましくは、本発明の加振器は、磁気回路が、軸部材が貫通する貫通孔を有するヨークと、軸部材が貫通する貫通孔を有してヨークに取り付けられるマグネットと、軸部材が貫通する貫通孔を有してマグネットに取り付けられてヨークとの間に磁気空隙を形成するプレートと、を有する。
【0015】
また、好ましくは、本発明の加振器は、磁気回路のヨークが、軸線方向における磁気回路の最大厚み寸法D1よりも小さい厚み寸法D2を有し、かつ、軸線方向と直交する周方向の外側に突出するように形成されるフランジ部をさらに備え、コイルドウェーブスプリングがフランジ部に固定される。
【0016】
また、好ましくは、本発明の加振器は、磁気回路のヨークが、軸線方向における磁気回路の最大厚み寸法D1よりも小さい厚み寸法D3を有し、かつ、軸線方向と直交する周方向の内側であって貫通孔の内側に突出するように形成されるフランジ部をさらに備え、コイルドウェーブスプリングがフランジ部に固定される。
【0017】
また、好ましくは、本発明の加振器は、磁気回路のヨークが、外径を規定する外径側面に軸線方向と直交する周方向に沿って形成される溝を有し、溝に嵌合する止め輪部材をさらに備え、コイルドウェーブスプリングがヨークの溝に嵌合して固定される止め輪部材に固定される。
【0018】
また、好ましくは、本発明の加振器は、磁気回路のヨークが、外径を規定する外径側面に軸線方向と直交する周方向に沿って形成される溝を有し、コイルドウェーブスプリングが、内径方向へ突出するように形成された止め輪部を有し、止め輪部がヨークの溝に嵌合して固定される。
【0019】
以下、本発明の作用について説明する。
【0020】
本発明の加振器は、内部空間を規定するフレームと、内部空間においてコイルが巻回されたボビンがフレームに固定されるボイスコイルと、コイルの軸線方向に沿って内部空間に配置されフレームに両端が支持される軸部材と、軸部材に対して摺動可能に配置されて、かつ、コイルがその磁気空隙に配置される磁気回路と、内部空間において軸線方向に沿った磁気回路の一端側とフレームの一端側との間に配置される圧縮コイルバネと、を備える。
【0021】
したがって、この加振器は、フレームに両端が支持される軸部材を備えるので、振動する磁気回路を軸部材に対して摺動可能に中心保持することができ、動作が安定する。また、磁気回路は、軸部材に対して摺動する軸受を有し、軸部材が貫通する貫通孔を有するヨークと、軸部材が貫通する貫通孔を有してヨークに取り付けられるマグネットと、軸部材が貫通する貫通孔を有してマグネットに取り付けられてヨークとの間に磁気空隙を形成するプレートと、を有するように構成するのが好ましい。
【0022】
ここで、本発明の加振器の圧縮コイルバネは、山部および谷部を交互に等間隔に有する板状鋼線を軸部材の周方向に螺旋状に多重に巻回し、かつ、軸線方向において山部と谷部とが接触するように構成されているコイルドウェーブスプリングである。加振器は、磁気回路の他端側とフレームの他端側との間に配置される他のコイルドウェーブスプリングをさらに備えるのが好ましく、また、コイルドウェーブスプリングは、それぞれその自然長よりも短くなるように付勢されて圧縮された状態で取り付けられているのが好ましい。コイルドウェーブスプリングは、通常のコイルばねでは塑性変形してしまうような大きな力が圧縮する方向に加わる場合にも、板状鋼線同士が密着して変位を止める変位の制限機能を発揮する。したがって、磁気回路が大きく変位するような場合にも、動作を安定させることができる。
【0023】
加振器の磁気回路のヨークは、軸線方向における磁気回路の最大厚み寸法D1よりも小さい厚み寸法D2を有し、かつ、軸線方向と直交する周方向の外側に突出するように形成されるフランジ部をさらに備え、コイルドウェーブスプリングがフランジ部に固定されるようにすればよい。コイルドウェーブスプリングの内側に磁気回路が収まるようになるので、加振器の軸線方向における厚み寸法を小さく抑えて、振動する磁気回路の大きさに比較して形状が小型であり、大きな振動が得られる加振器を構成することができる。
【0024】
また、加振器の磁気回路のヨークは、軸線方向における磁気回路の最大厚み寸法D1よりも小さい厚み寸法D3を有し、かつ、軸線方向と直交する周方向の内側であって貫通孔の内側に突出するように形成されるフランジ部をさらに備え、コイルドウェーブスプリングが内周側のフランジ部に固定されるようにしてもよい。コイルドウェーブスプリングが磁気回路の貫通孔の内側に収まるようになるので、加振器の軸線方向における厚み寸法を小さく抑えて、振動する磁気回路の大きさに比較して形状が小型であり、大きな振動が得られる加振器を構成することができる。
【0025】
また、加振器の磁気回路のヨークは、外径を規定する外径側面に軸線方向と直交する周方向に沿って形成される溝を有し、溝に嵌合する止め輪部材をさらに備え、コイルドウェーブスプリングがヨークの溝に嵌合して固定される止め輪部材に固定されるようにしてもよい。ヨークの溝に嵌合して固定される止め輪部材は、コイルドウェーブスプリングの内径方向へ突出するように形成された止め輪部に代えることもできる。磁気回路のヨークに周方向の外側に突出するフランジ部を設ける場合よりも、加振器の製造が容易になり、低コストにすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の加振器は、磁気回路の大きさに比較して加振器全体が大きくならない加振器を構成して、小型であっても大きな振動が得られて、動作が安定する加振器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の好ましい実施形態による加振器について説明する図である。(実施例1)
図2】本発明の好ましい実施形態による加振器の内部構造について説明する図である。(実施例1)
図3】本発明の好ましい実施形態による加振器のコイルドウェーブスプリングについて説明する図である。(実施例1)
図4】本発明の他の好ましい実施形態による加振器について説明する図である。(実施例2)
図5】本発明の他の好ましい実施形態による加振器について説明する図である。(実施例3)
図6】本発明の他の好ましい実施形態による加振器の内部構造について説明する図である。(実施例3)
図7】本発明の他の好ましい実施形態による加振器の内部構造について説明する図である。(実施例4)
図8】本発明の他の好ましい実施形態による加振器の内部構造について説明する図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態による加振器について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0029】
図1および図2は、本発明の好ましい実施形態による加振器1について説明する図である。具体的には、図1は、被取付対象の部材である平板2に取り付けられた加振器1の斜視図である。また、図2は、加振器1の図1におけるA-O-A’断面における内部構造を示す断面図である。なお、本発明の説明に不要な一部の構成については、図示及び説明を省略する。もちろん、加振器1の形態は、本実施例の場合に限定されない。
【0030】
本実施例の加振器1は、全体形状を定めるフレーム3およびフランジ部材6を備え、略円筒形状の内部空間内に内磁型の磁気回路10を備える動電型の加振器である。加振器1は、平板2に取り付けられて平板2を振動させて、さらに音波を放射させることもできる。音声信号電流がそのターミナル4に入力される加振器1は、図示する中心点Oを通過するZ軸方向に沿って交流的に変化する駆動力を発生させて、平板2を振動させる。加振器1は、フレーム3の底面側が平板2に取り付けられる。例えば、樹脂のような非磁性の部材で形成されるフレーム3では、平板2に設けられる(図示しない)ネジ孔に(図示しない)ネジによりネジ留めされる。
【0031】
フレーム3は、樹脂材料または非磁性の金属材料で形成される凹状の部材であり、その開口部分にフランジ部材6がネジ留めされる構造になっている。フランジ部材6は、同様に樹脂材料または金属材料で形成されて、フレーム3とともに加振器1のフレームを構成する。比較的に小型の加振器1は、中心軸Zを通過するA-’A寸法が約42.0mm、その全高が約23.0mmである。
【0032】
また、フレーム3およびフランジ部材6は、後述する軸部材7をフレームの内部空間に配置し、Z軸方向に沿ってその両端を支持する。軸部材7は、非磁性の金属材料で形成される軸状の部材である。例えば、軸部材7は、直径約3.0mmの丸棒のステンレス鋼である。本実施例のように、軸部材7は、フレームに対して動かないように接着剤などを併用して固定してもよい。
【0033】
内磁型の磁気回路10は、ヨーク12と、磁石であるマグネット13と、プレート14とから構成されている。加振器1の磁気回路10は、入力される電気音声信号を振動に変換するのに、ボイスコイル5が配置される磁気空隙11を有する。円環状の磁気空隙11は、円盤状のプレート14の外周端面と、凹状のヨーク12の内周端面との間に規定されて、マグネット13からの磁力により、強い直流磁界が発生する。
【0034】
磁気回路10は、軸部材7に対して摺動する軸受16を有する。ヨーク12と、グネット13と、プレート14とは、それぞれ軸部材7が貫通する貫通孔を有している。本実施例の場合には、ヨーク12に設けられる貫通孔に軸受16が固定されている。軸受16は、略円筒形状の基体の中央に貫通孔が設けられて、軸部材7が摺動するように貫通する。
【0035】
例えば、軸受16は、粉末冶金法により製造された多孔質の金属体に潤滑油を含浸させた焼結含油軸受である。焼結含油軸受は、軸受内部から摺動面に油がしみ出して潤滑油膜を形成するので、軸部材7に対して滑らかに摺動することができる。一方で、軸部材7および軸受16は、Z軸方向以外の方向には、ほぼ遊び無く動きを拘束する。したがって、磁気回路10は、軸部材7および軸受16により中心保持されて、Z軸方向にのみ振動可能になる。
【0036】
本実施例の場合には、内磁型の磁気回路10の形状寸法は、ヨーク12の形状寸法に支配されており、その最大厚み寸法D1は実質的にヨーク12の全高寸法であって、約10.5mmである。ヨーク12には、Z軸線方向と直交する周方向の外側に一部が突出するようなフランジ部15が形成されている。フランジ部15の厚み寸法D2は約1.6mmであり、上記の厚み寸法D1よりも小さい値となる。外側に突出するフランジ部15には、後述するコイルドウェーブスプリング8および9が固定される。
【0037】
ボイスコイル5は、磁気回路10の磁気空隙11に配置されるコイル5aと、コイル5aが一端側にZ軸方向に巻回されるボビン5bを含む。ボイスコイル5のボビン5bの他端側は、フレーム3の底面側に取り付けられる。なお、フレーム3には、ボイスコイル5のコイル5aから引き出される(図示しない)コイル線が接続するターミナル4が設けられて、音声信号電流が入力される。
【0038】
加振器1は、磁気回路10とフレーム(フレーム3およびフランジ部材6)とを弾性を有して振動可能に連結するコイルドウェーブスプリング8および9を備える。コイルドウェーブスプリング8は、図示する磁気回路10の上側であって、フランジ部材6の側に配置される。また、コイルドウェーブスプリング9は、図示する磁気回路10の下側であって、フレーム3の側に配置される。本実施例の加振器1では、フレーム3およびボイスコイル5が平板2に対して動かないように固定されるので、磁気回路10の磁気空隙11に配置されるコイル5aで発生する駆動力は、相対的に磁気回路10を変位させるように振動させる。
【0039】
つまり、軸部材7および軸受16により中心保持されてZ方向に摺動可能にされた磁気回路10は、コイルドウェーブスプリング8および9がフレームに対して弾性的に支持・連結するので、磁気回路10はZ方向に振動可能になる。磁気回路10は、磁性材であるヨーク12およびプレート14と、磁石であるマグネット13と、から構成されているので、比較的に重量が重くなる。したがって、磁気回路10が振動するのにつれて、駆動力に対する反作用の力が作用して、平板2が振動する。
【0040】
図3は、コイルドウェーブスプリング8および9を説明する図である。本実施例の加振器1では、コイルドウェーブスプリング8および9は、同一のものを共通に使用しているので、以下ではコイルドウェーブスプリング8の構成について説明する。
【0041】
コイルドウェーブスプリング8は、厚さ0.4mm、幅1.65mmのバネ用ステンレス鋼を材料とする板状鋼線を、図示するZ軸方向に直径約34.4mmの螺旋状に多重に8周余り巻回した圧縮コイルバネである。コイルドウェーブスプリング8は、磁気回路10に連結する第1固定部8aと、フレームを構成するフランジ部材6に連結する第2固定部8bと、を有している。巻回しの始端側または終端側に対応する止め輪部分としての第1固定部8aおよび第2固定部8bは、起伏が設けられない板状鋼線が、約1周よりも短い範囲で巻回されて構成される。
【0042】
また、コイルドウェーブスプリング8には、第1固定部8aと第2固定部8bとの間に、弾性変形可能な弾性変形部8cが形成される。弾性変形部8cでは、山部8dおよび谷部8eが交互に等間隔に有するように板状鋼線が整形されている。加えて、螺旋状に多重に巻回されている弾性変形部8cでは、Z軸線方向において山部8dと谷部8eとが接触するように構成されている。
【0043】
山部8d並びに谷部8eは、板状鋼線が直線的に巻回される通常の圧縮コイルバネの場合には、それぞれ板状鋼線には形成されない起伏の部分である。本実施例の場合には、起伏の高さは約0.57mmであり、Z軸の一方方向への隆起を山部8dとする場合に、他方方向へ沈むようになる部分を谷部8eとする。したがって、コイルドウェーブスプリング8の山部8d並びに谷部8eは、見る方向により逆になる場合がある。
【0044】
コイルドウェーブスプリング8の山部8d並びに谷部8eは、螺旋状に巻回されている約1周の間に交互に等間隔に出現する。そして、Z軸線方向において山部8dと谷部8eとが接触するように、構成されている。本実施例の場合には、例えば谷部8eから始まるある1周部分を見ると、約1周の間に3組の山部8d並びに谷部8eが出現して、最初の谷部8eと接触する次の山部8dが最後に出現する。
【0045】
コイルドウェーブスプリング8は、荷重・力がかからない自然長13.0mmの状態において、山部8d並びに谷部8eが接触するように構成されている。コイルドウェーブスプリング8は、圧縮方向に荷重・力が加わる場合には、山部8d並びに谷部8eが常に接触することになる。また、コイルドウェーブスプリング8は、自然長よりも長くなる伸長方向に荷重・力が加わる場合には、山部8d並びに谷部8eが接触せずに離れるように構成されている。
【0046】
したがって、コイルドウェーブスプリング8の弾性変形部8cは、圧縮方向に大きな力が加わって圧縮する場合にも、より大きな力に対応することができ、その結果、閾値を超えて塑性変形する、または、それを超えて破断する、といった不具合を避けることができる。弾性変形部8cの山部8d並びに谷部8eが接触するという振幅制限機能を有しているので、板状鋼線同士が密着して変位を止めるからである。また、現実的な材料・形状・寸法でコイルドウェーブスプリング8を構成すれば、通常のコイルばねでは閾値を超えて塑性変形してしまうような強い圧縮力が加わるような場合にも、山部8d並びに谷部8eが接触するので、山部8d並びに谷部8eの変形によりばねとして正常に機能する。
【0047】
本実施例の加振器1は、上下に配置された2つのコイルドウェーブスプリング8および9の第1固定部により磁気回路10を挟み込んでいる。2つのコイルドウェーブスプリング8および9のそれぞれの他方側である第2固定部は、フレームに固定されている。2つのコイルドウェーブスプリング8および9は、それぞれその自然長よりも短くなるように付勢されて圧縮された状態で、常に伸張する際の復元力が発揮されるように取り付けられている。したがって、磁気回路10の磁気空隙11に配置されるコイル5aで発生する駆動力は、磁気回路10とフレームとを相対的に振動させることができる。
【0048】
コイルドウェーブスプリング8および9の弾性変形部8cは、上記の山部8d並びに谷部8eのような構成に限られない。弾性連結部材10は、それぞれZ軸方向に対して伸縮する弾性変形部8cの山部8d並びに谷部8eの構成を変えることで、弾性変形部8cのバネ定数:固さ/柔らかさ/スティフネス/コンプライアンスを調整することができる。例えば、山部8d並びに谷部8eの起伏の高さおよび長さ、組の数などを変更すると、弾性変形部8cのバネ定数が変化する。コイルドウェーブスプリング8および9は、その弾性変形部8cを、剛性を有する板状鋼線で形成しているので、加振器1の共振周波数f0における共振周波数Qの値を適度に低く抑えることができる利点がある。
【0049】
また、コイルドウェーブスプリング8および9は、基本的には鋼線を螺旋状に多重に巻回した圧縮コイルバネであるので、第1固定部8aと、第2固定部8bと、弾性変形部8cとが、それぞれ略同寸法の外形寸法を有するように形成されている。その結果、コイルドウェーブスプリング8および9は、その全体が略円筒形状になり、その内部側に空間が形成されるので、その空間の内側に磁気回路10および軸7をほぼ収容することができる。
【0050】
具体的には、コイルドウェーブスプリング8および9は、それぞれの一端側がフレームを構成するフランジ部材6またはフレーム3に固定され、それぞれの他端側が磁気回路10を構成するヨーク12のフランジ部15に固定されている。フランジ部15は、ヨーク12の外側に厚み寸法D2だけ突出する部分であるので、厚み寸法D2よりも大きな寸法である最大厚み寸法D1を有する磁気回路10は、コイルドウェーブスプリング8および9の内側にほぼ収まるようになる。
【0051】
もし、仮にコイルドウェーブスプリング8および9の一端側を、最大厚み寸法D1を有する磁気回路10の最上端と最下端に固定するような場合には、加振器1のZ軸線方向における厚み寸法は、コイルドウェーブスプリング8および9の2つ分の自然長と磁気回路10の最大厚み寸法D1とを加算した和の寸法に相当するような大きな寸法になる。ただし、コイルドウェーブスプリング8および9は、圧縮コイルスプリングのほぼ半分の高さで同等の荷重を発生することができるので、加振器1を従来の圧縮コイルスプリングを用いる場合よりも、小型の構成することができる。
【0052】
もし、例えば従来技術のように、ダンパー又はサスペンションのように略平板状の部材をコイルドウェーブスプリング8および9に代えて備え、第1固定部を規定する外径寸法よりも遙かに小さい内径寸法の第2固定部を有するような形状にする加振器であれば、外径寸法が同じであれば内側に収める磁気回路10の大きさが相対的に小さくなってしまう。そのような場合には、磁気回路10が小さくなることにより、発生する駆動力が小さくなり、さらに、磁気回路10の重量が軽くなり、平板2に対して発生させる振動が小さくなり易い。
【0053】
ただし、上記の通りに、コイルドウェーブスプリング8および9は、磁気回路10を構成するヨーク12のフランジ部15に固定されているので、本実施例の加振器1では、Z軸線方向における厚み寸法を、振動する磁気回路10の厚み寸法に対して小さく抑えることができる。言い換えると、本実施例の加振器1では、コイルドウェーブスプリング8および9の内側に収める磁気回路10の大きさを加振器1の全体の大きさに比較して従来よりも相対的に大きくすることができる。その結果、振動する磁気回路10の大きさに比較してフレームの形状が小型であり、大きな振動が得られる加振器1を構成することができる。
【0054】
その一方で、コイルドウェーブスプリング8および9は、弾性変形部8cが内径方向または外径方向への突出がない形状であり、その内側に磁気回路10および軸部材7をほぼ収容するように構成されているので、2つのコイルドウェーブスプリング8および9が加振器1の全体の大きさを定めるようになる。したがって、加振器1では、コイルドウェーブスプリング8および9の内側に収める磁気回路10の大きさを加振器1全体の大きさに比較して従来よりも相対的に大きくすることができる。その結果、小型であっても大きな振動が得られ、動作が安定する加振器1を実現できる。
【0055】
上記のコイルドウェーブスプリング8および9は、単にウエイブスプリングと呼ばれる場合がある。また、コイルドウェーブスプリング8および9は、止め輪部分を含むものでも、含まないものあってもよい。
【0056】
本実施例の加振器1は、上記の様にコイルドウェーブスプリング8および9を用いることで小型化が可能である。その結果、加振器1を製造する工程のコストが低減し、品質が安定する利点がある。磁気回路10は、ボイスコイル5に信号電流が流れると、発生する熱により磁気回路10が温度上昇するので、磁気回路10をその内側に収めるコイルドウェーブスプリング8および9は、磁気回路10が蓄える熱を放射する機能を発揮する。
【0057】
一方で、もし、仮に従来技術の鋼線を螺旋状に多重に巻回した圧縮コイルバネを、コイルドウェーブスプリング8および9に代えて用いると、強い圧縮力が加わるような場合に通常のコイルばねでは閾値を超えて塑性変形してしまい、壊れる恐れがある。その場合には、圧縮コイルバネを強い圧縮力に耐えられるように、材料および寸法を大型化して対応する必要があり、その結果、圧縮コイルバネを含む加振器全体が大型化してしまう恐れがある。
【0058】
なお、本実施例の加振器1は、上記の様にコイルドウェーブスプリング8および9を用いているが、いずれか一方のコイルドウェーブスプリングのみを備えるようにしてもよい。コイルドウェーブスプリング8または9は、いずれか一方だけでも圧縮/伸張するコイルバネとして動作するからである。いずれか一方のコイルドウェーブスプリングのみを備える加振器は、さらに小型化を図れる利点がある。
【0059】
また、本実施例の加振器1では、振動方向であるZ軸方向の端部側に磁気回路10が振動可能なように、フレームに両端が支持される軸部材7を備え、さらに磁気回路10が軸部材7に対して摺動する軸受16を有している。ただし、磁気回路10は、軸部材7に対して摺動することができる構成を有していれば、必ずしも軸受16を備えていなくてもよい。軸部材7に対する磁気回路10のZ軸線方向と直交する周方向への動きを、磁気空隙11でのボイスコイル5のコイル5aが磁気回路10に接触しないように規制することができるのであれば、磁気回路10は軸受16を備えなくても軸部材7が貫通する貫通孔を有していればよい。
【0060】
また、本実施例の加振器1では、軸部材7の両端はフレーム3およびフランジ部材6に固定されて支持されているが、フレームに対する軸部材7の支持は、軸部材7がフレームに対して摺動可能なように構成されていてもよい。例えば、フレーム3およびフランジ部材6に、軸部材7を摺動可能に支持する軸受を設けてもよい。その場合には、軸部材7が磁気回路10に固定されるように構成されるのが好ましい。
【実施例2】
【0061】
図4は、本発明の他の好ましい実施形態による加振器1aについて説明する図である。具体的には、図4は、加振器1aの図2と同様のA-O-A’断面における内部構造を示す断面図である。なお、上記実施例の場合と同様に、本発明の説明に不要な一部の構成については、同一の符号を付けて図示及び説明を省略する。もちろん、加振器1aの形態は、本実施例の場合に限定されない。
【0062】
本実施例の加振器1aは、全体の形状が略円筒形状であって、先の実施例の場合に比較して大型のボイスコイル5並びに外磁型の磁気回路10aを備える動電型の加振器である。そこで、加振器1aは、磁気回路10の外周側に設けるフランジ部15にコイルドウェーブスプリング8または9を固定するのではなく、磁気回路10aの内周側にフランジ部17を設けて、ここにコイルドウェーブスプリング18または19を固定している。加振器1aは、(図示しない)平板2に取り付けられて平板2を振動させて音波を放射させる。音声信号電流が入力される加振器1aは、図示する中心点Oを通過するZ軸方向に沿って交流的に変化する駆動力を発生させて、平板2を振動させるのは、先の実施例と同様である。
【0063】
外磁型の磁気回路10aは、ヨークに相当するポール12と、磁石であるマグネット13と、プレート14とから構成されている。加振器1aの磁気回路10aは、入力される電気音声信号を振動に変換するのに、ボイスコイル5が配置される磁気空隙11を有する。円環状の磁気空隙11は、ポール12の凸状の先端部の外周端面と、円環状のプレート14の内周端面との間に規定されて、マグネット13からの磁力により、強い直流磁界が発生する。ポール12のセンターポールには、Z軸が通過する貫通孔が設けられているので、この貫通孔に軸受16が固定されている。軸受16は、略円筒形状の基体の中央に貫通孔が設けられて、軸部材7が摺動するように貫通する。
【0064】
本実施例の場合には、外磁型の磁気回路10の形状寸法は、ポール12の形状寸法に支配されており、その最大厚み寸法D1は実質的にポール12の全高寸法である。ポール12には、Z軸線方向と直交する周方向の内側に一部が突出するようなフランジ部17が形成されて、その中央に貫通孔が形成されている。フランジ部17の厚み寸法D3は、上記の厚み寸法D1よりも小さい値となる。内側に突出するフランジ部17には、コイルドウェーブスプリング18および19が固定される。
【0065】
加振器1aは、磁気回路10aとフレーム(フレーム3およびフランジ部材6)とを相対的に振動可能に、磁気回路10aの内周側のフランジ部17で連結するコイルドウェーブスプリング18および19を備える。コイルドウェーブスプリング18および19は、具体的な形状寸法は異なるものの、基本的には先の実施例のコイルドウェーブスプリング8または9と同様の材料ならび構成を有する。コイルドウェーブスプリング18および19は、同一のものを共通に使用している。
【0066】
本実施例の加振器1aでは、ボイスコイル5およびフレーム3が平板2に対して動かないように固定されるので、磁気回路10aの磁気空隙11に配置されるコイル5aで発生する駆動力は、相対的に磁気回路10aを変位させるように振動させる。軸部材7とコイルドウェーブスプリング18および19が磁気回路10aとフレームとを相対的に振動可能に連結するので、磁気回路10aは振動可能になる。磁気回路10aは、磁性材であるポール12およびプレート14と、磁石であるマグネット13と、から構成されているので、比較的に重量が重くなる。したがって、磁気回路10aが振動するのにつれて、駆動力に対する反作用の力が作用して、平板2が振動する。
【0067】
また、コイルドウェーブスプリング18または19には、先の実施例と同様に、第1固定部と第2固定部との間に、弾性変形可能な弾性変形部が形成される。弾性変形部では、山部および谷部が交互に等間隔に有するように板状鋼線が整形されている。加えて、螺旋状に多重に巻回されている弾性変形部では、Z軸線方向において山部と谷部とが接触するように構成されている。コイルドウェーブスプリングの山部並びに谷部は、螺旋状に巻回されている約1周の間に交互に等間隔に出現する。
【0068】
したがって、コイルドウェーブスプリング18または19の弾性変形部は、圧縮方向に大きな力が加わって圧縮する場合にも、より大きな力に対応することができ、その結果、閾値を超えて塑性変形する、または、それを超えて破断する、といった不具合を避けることができる。本実施例の加振器1aは、上下に配置された2つのコイルドウェーブスプリング18および19により磁気回路10aを挟み込んでいる。2つのコイルドウェーブスプリング18および19のそれぞれの他方側は、フレームに固定されている。2つのコイルドウェーブスプリング18および19は、それぞれその自然長よりも短くなるように付勢されて圧縮された状態で、常に伸張する際の復元力が発揮されるように取り付けられている。したがって、磁気回路10aの磁気空隙11に配置されるコイル5aで発生する駆動力は、磁気回路10aとフレームとを相対的に振動させることができる。
【0069】
具体的には、コイルドウェーブスプリング18および19は、それぞれの一端側がフレームを構成するフランジ部材6またはフレーム3に固定され、それぞれの他端側が磁気回路10aを構成するヨーク12の内周側のフランジ部17に固定されている。フランジ部17は、ヨーク12の内周側に厚み寸法D3だけ突出する部分であるので、厚み寸法D3よりも大きな寸法である最大厚み寸法D1を有する磁気回路10aは、コイルドウェーブスプリング18および19の一部を収めて、加振器1aのZ軸線方向における厚み寸法を抑えて小型化を図ることができる。
【0070】
なお、本実施例の加振器1aは、上記の様にコイルドウェーブスプリング18および19を用いているが、いずれか一方のコイルドウェーブスプリングのみを備えるようにしてもよい。いずれか一方のコイルドウェーブスプリングのみを備える加振器は、さらに小型化を図れる利点がある。
【実施例3】
【0071】
図5および図6は、本発明の他の好ましい実施形態による加振器1bについて説明する図である。具体的には、図5は、図2と同様の加振器のA-O-A’断面における内部構造を示す断面図であり、図6はフレームの内側に配置される軸部材7と、コイルドウェーブスプリング8および9と、磁気回路10bのみの展開斜視図である。なお、上記実施例の場合と同様に、本発明の説明に不要な一部の構成については、同一の符号を付けて図示及び説明を省略する。もちろん、加振器1bの形態は、本実施例の場合に限定されない。
【0072】
本実施例の加振器1bは、全体の形状が略円筒形状であって、先の実施例の加振器1と同様に内磁型の磁気回路10bを備える動電型の加振器である。ただし、加振器1bは、磁気回路10bの構成並びにコイルドウェーブスプリング8および9の固定の構造が先の実施例と相違する。磁気回路10の外周側に設けるフランジ部15にコイルドウェーブスプリング8または9を固定するのではなく、磁気回路10bでは外径を規定する外径側面に軸線方向と直交する周方向に沿って形成される溝20を設けて、その溝20に嵌合して固定される止め輪部材21にコイルドウェーブスプリング8または9を固定している。
【0073】
具体的には、内磁型の磁気回路10bでは、ヨーク12に軸線方向における磁気回路の最大厚み寸法D1よりも小さい厚み寸法D2を有し、かつ、軸線方向と直交する周方向の外側に突出するように形成されるフランジ部を形成しておらず、その代わりに切削加工などにより形成するのが容易な溝20を外径側面に設けている。溝20の幅及び深さは、嵌合して固定される止め輪部材21に応じて設定することができる。先の実施例のようにヨーク12に周方向の外側に突出するフランジ部15を設ける場合よりも、ヨーク12の製造が容易になり、低コストにすることができる。
【0074】
磁気回路10bが備える止め輪部材21は、コイルドウェーブスプリング8または9を構成するのと同様の板状鋼線を用いて形成できる。例えば、本実施例の止め輪部材21は、コイルドウェーブスプリング8または9の弾性変形部の内径寸法よりも若干小さい内径寸法を有し、切れ目が1カ所設けられた略環状の部材として形成することができる。止め輪部材21を外側に広げるようにして磁気回路10bを内部に挿入すれば、容易に溝20に止め輪部材21を嵌合して固定させることができる。
【0075】
内磁型の磁気回路10bの形状寸法は、ヨーク12の形状寸法に支配されており、その最大厚み寸法D1は実質的にヨーク12の全高寸法である。ポール12の溝20には、Z軸線方向と直交する周方向の外側に一部が突出するような止め輪部材21が嵌合する。止め輪部材21の厚み寸法D4は、上記の厚み寸法D1よりも遙かに小さい値となる。
【0076】
上述のように、コイルドウェーブスプリング8および9は、弾性変形部8cが内径方向または外径方向への突出がない形状であり、その内側に磁気回路10および軸部材7をほぼ収容するように構成されている。したがって、止め輪部材21の両面には、コイルドウェーブスプリング8の第1固定部8aおよびコイルドウェーブスプリング9の第1固定部9aがそれぞれ固定される。他端側であるコイルドウェーブスプリング8の第2固定部8bは、フレームを構成するフランジ部材6に連結する。また、他端側であるコイルドウェーブスプリング9の第2固定部9bは、フレーム3に連結する。
【0077】
本実施例の加振器1bは、上下に配置された2つのコイルドウェーブスプリング8および9により磁気回路10bを挟み込んでいる。2つのコイルドウェーブスプリング8および9は、それぞれその自然長よりも短くなるように付勢されて圧縮された状態で、常に伸張する際の復元力が発揮されるように取り付けられている。したがって、磁気回路10bの磁気空隙11に配置されるコイル5aで発生する駆動力は、磁気回路10bとフレームとを相対的に振動させることができる。止め輪部材21は、ヨーク12の外周側に厚み寸法D4だけ突出する部分であるので、厚み寸法D4よりも大きな寸法である最大厚み寸法D1を有する磁気回路10bは、コイルドウェーブスプリング8および9の内側にほぼ収まるようになり、小型化が図られる。
【0078】
なお、本実施例の加振器1bは、上記の様にコイルドウェーブスプリング8および9を用いているが、いずれか一方のコイルドウェーブスプリングのみを備えるようにしてもよい。いずれか一方のコイルドウェーブスプリングのみを備える加振器は、さらに小型化を図ることができる利点がある。
【実施例4】
【0079】
図7は、本発明の他の好ましい実施形態による(図示しない)加振器1cのフレームの内側に配置される軸部材7と、コイルドウェーブスプリング28および29と、磁気回路10cのみを示す展開斜視図である。なお、上記実施例の場合と同様に、本発明の説明に不要な一部の構成については、同一の符号を付けて図示及び説明を省略する。もちろん、加振器1cの形態は、本実施例の場合に限定されない。
【0080】
本実施例の加振器1cは、全体の形状が略円筒形状であって、先の実施例の加振器1bと同様の内磁型の磁気回路10cを備える動電型の加振器である。ただし、加振器1cでは、磁気回路10cの構成並びにコイルドウェーブスプリング28および29の構成と、これらの固定の構造が先の実施例の加振器1bと相違する。磁気回路10cは、ヨーク12の外径を規定する外径側面に軸線方向と直交する周方向に沿って形成される溝20を設ける点では、磁気回路10bと一致する。ただし、磁気回路10cは、その溝20に嵌合して固定される止め輪部材21を備えず、その溝20にコイルドウェーブスプリング28または29を直接に固定する。
【0081】
具体的には、コイルドウェーブスプリング28または29は、止め輪部としてのその第1固定部28aまたは29aを、弾性変形部28cまたは29cよりも内径方向に突出させて形成している。その一方で、コイルドウェーブスプリング28または29は、弾性変形部28cまたは29cがその内側に磁気回路10cおよび軸部材7をほぼ収容するように、磁気回路10cの外形寸法よりも大きい内径寸法を有するように構成されている。他端側であるコイルドウェーブスプリング28の第2固定部28b、または、コイルドウェーブスプリング29の第2固定部29bは、弾性変形部28cまたは29cとほぼ同じ内径寸法を有している。
【0082】
したがって、磁気回路10cの溝20には、コイルドウェーブスプリング28の第1固定部28aおよびコイルドウェーブスプリング29の第1固定部29aを嵌合させて固定することができる。第1固定部28a並びに第1固定部29aをそれぞれ外側に広げるようにして磁気回路10bを内部に挿入すれば、容易に溝20にコイルドウェーブスプリング28および29を嵌合して固定させることができる。他端側であるコイルドウェーブスプリング28の第2固定部28bは、フレームを構成するフランジ部材6に連結する。また、他端側であるコイルドウェーブスプリング29の第2固定部29bは、フレーム3に連結する。
【0083】
本実施例の場合には、先の実施例の場合に要した止め輪部材21を省略することができるので、加振器1cは、さらに製造コストを低くすることができる。また、上述のように、コイルドウェーブスプリング28および29は、弾性変形部28cの内側に磁気回路10cおよび軸部材7をほぼ収容するように構成されている。したがって、本実施例の加振器1cは、小型化が図られる。
【実施例5】
【0084】
図8は、本発明の他の好ましい実施形態による(図示しない)加振器1dのフレームの内側に配置される軸部材7と、一つのコイルドウェーブスプリング30と、磁気回路10cのみを示す展開斜視図である。なお、上記実施例の場合と同様に、本発明の説明に不要な一部の構成については、同一の符号を付けて図示及び説明を省略する。もちろん、加振器1dの形態は、本実施例の場合に限定されない。
【0085】
本実施例の加振器1dは、全体の形状が略円筒形状であって、先の実施例の加振器1cと同様の内磁型の磁気回路10cを備える動電型の加振器である。ただし、加振器1dでは、コイルドウェーブスプリング30の構成と、フレームおよび磁気回路10cへの固定の構造が先の実施例の加振器1cと相違する。
【0086】
具体的には、コイルドウェーブスプリング30は、先の実施例におけるコイルドウェーブスプリング28および29を、まるで一体化して構成したようなコイルドウェーブスプリングである。弾性変形部よりも内径方向に突出させて形成する止め輪部としての第1固定部28aおよび29aを連結して、一体の止め輪部31を弾性変形部32の中間部分に形成している。その一方で、コイルドウェーブスプリング30は、その弾性変形部32がその内側に磁気回路10cおよび軸部材7をほぼ収容するように、磁気回路10cの外形寸法よりも大きい内径寸法を有するように構成されている。また、コイルドウェーブスプリング30の上方端側である第2固定部33、または、下方端側である第2固定部34は、弾性変形部32とほぼ同じ内径寸法を有している。
【0087】
つまり、コイルドウェーブスプリング30は、筒状の弾性変形部32の高さ方向の中間部分で、内径寸法が小さくなる止め輪部31が形成されている。したがって、磁気回路10cの溝20に、コイルドウェーブスプリング30の第1固定部31を嵌合させて固定することができる。第1固定部31をそれぞれ外側に広げるようにして磁気回路10cを内部に挿入すれば、容易に溝20にコイルドウェーブスプリング30を嵌合して固定させることができる。コイルドウェーブスプリング30の第2固定部33は、フレームを構成するフランジ部材6に連結する。また、他端側であるコイルドウェーブスプリング30の第2固定部34は、フレーム3に連結する。
【0088】
本実施例の場合には、2つのコイルドウェーブスプリングを一体化して構成したコイルドウェーブスプリング30を用いて部品点数を削減できるので、加振器1dは、さらに製造コストを低くすることができる。また、上述のように、コイルドウェーブスプリング30は、弾性変形部32の内側に磁気回路10cおよび軸部材7をほぼ収容するように構成されている。したがって、本実施例の加振器1dは、小型化が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の加振器は、上記実施例のような内磁型の磁気回路10、10b、10、c、10dまたは外磁型の磁気回路10aを備えるものに限らず、反発型の磁気回路などを備える加振器であってもよい。また、被取付対象の部材である平板2に取り付けられて音声を再生させる加振器に限らず、被取付対象に対して振動を加える加振器であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1、1a、1b 加振器
2 被取付部材
3 フレーム
4 ターミナル
5 ボイスコイル
6 フランジ部材
7 軸部材
8、9 コイルドウェーブスプリング
10、10a 磁気回路
11 磁気空隙
12 ヨーク
13 マグネット
14 ポール
15、17 フランジ部
16 軸受
18、19、28、29、30 コイルドウェーブスプリング
20 溝
21 止め輪部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8